特許拒絶査定不服審判
2017-017829
2つの蒸気供給ラインを有する蒸気タービンを運転する方法
- 審判番号
- 2017-017829
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-535395
- 請求日
- 2017年12月01日
- 審決日
- 2018年09月07日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 金澤 俊郎
- 審判官 粟倉 裕二
- 分類
- P18 .113-Z (F01D) / P18 .121-Z (F01D) / P18 .571-Z (F01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-535395「2つの蒸気供給ラインを有する蒸気タービンを運転する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月26日国際公開、WO2015/024769、平成28年9月15日国内公表、特表2016-528437〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014(平成26)年8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年8月23日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年 1月29日:国内書面
平成28年12月27日付け:拒絶理由通知
平成29年 4月 4日:意見書
平成29年 4月 4日:手続補正書
平成29年 8月21日付け:拒絶査定
平成29年12月 1日:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を、「本件補正」という。)
平成29年12月 1日:審判請求
平成30年 1月18日:上申書
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1) 平成29年12月1日提出の手続補正書により補正された(以下、「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1ないし4は、以下のとおりである。
「【請求項1】
蒸気タービン(2)を運転する方法であって、該蒸気タービンは、前記蒸気タービン(2)に接続された第1蒸気供給ライン(5)、および第2蒸気供給ライン(6)、ならびにまた前記第1蒸気供給ライン(5)に配置された第1バルブ(3)、および前記第2蒸気供給ライン(6)に配置された第2バルブ(4)を備え、
前記第1バルブ(3)および/または前記第2バルブ(4)が振動する場合に、第1時点において、前記第1バルブ(3)を閉方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を開方向に調整し、前記第1時点の後の第2時点において、前記第1バルブ(3)を前記開方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を前記閉方向に調整することを特徴とする、方法。
【請求項2】
許容できないバルブ振動を検出するために、第1加速度センサが前記第1バルブ(3)に配置され、かつ第2加速度センサが前記第2バルブ(4)に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸気タービン(2)への所定の全蒸気質量流が実現されるように、前記第1バルブ(3)および前記第2バルブ(4)が閉方向および開方向に調整される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第3、第4、およびさらなるバルブを有し、それらが非対称に操作される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)ないし3は、以下のとおりである。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「【請求項1】
蒸気タービン(2)を運転する方法であって、該蒸気タービンは、前記蒸気タービン(2)に接続された第1蒸気供給ライン(5)、および第2蒸気供給ライン(6)、ならびにまた前記第1蒸気供給ライン(5)に配置された第1バルブ(3)、および前記第2蒸気供給ライン(6)に配置された第2バルブ(4)を備え、
前記第1バルブ(3)および/または前記第2バルブ(4)が振動する場合に、第1時点において、前記第1バルブ(3)を閉方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を開方向に調整し、前記第1時点の後の第2時点において、前記第1バルブ(3)を前記開方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を前記閉方向に調整し、
前記蒸気タービン(2)への所定の全蒸気質量流が実現されるように、前記第1バルブ(3)および前記第2バルブ(4)が閉方向および開方向に調整されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
許容できないバルブ振動を検出するために、第1加速度センサが前記第1バルブ(3)に配置され、かつ第2加速度センサが前記第2バルブ(4)に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3、第4、およびさらなるバルブを有し、それらが非対称に操作される、請求項1又は2に記載の方法。」
2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を本件補正後の請求項1とし、本件補正前の請求項2を引用する請求項3を本件補正後の請求項2とし、本件補正前の請求項3を引用する請求項4を本件補正後の請求項4とするとともに、本件補正前の請求項1及び請求項2を削除するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
したがって、本件補正は、適法になされたものである。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、(1)本願の請求項1、3及び4に係る発明は、本願の原出願の優先日(以下、「本願の優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、(2)本願の請求項1、3及び4に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開昭63-115208号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献
ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-115208号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は理解の一助のために当審で付した。以下同様。)
(ア)「 (産業上の利用分野)
本発明は蒸気タービンプラントに設けられる蒸気加減弁の制御装置に係り、特に蒸気加減弁の異常振動発生防止に有効な蒸気加減弁の開度制御装置に関する。」(2ページ左上欄3ないし7行)
(イ)「 (従来の技術)
第3図に多段蒸気タービンを用いた火力発電プラントのサイクル構成例を示している。
蒸気タービン1は高圧タービン2、中圧タービン3おび低圧タービン4を有し、その出力軸5に発電機6が連結されている。そして、ボイラ7で発生した主蒸気が主蒸気管8を介して高圧タービン2に流入した後、戻し管9を介してボイラ7に戻されて再び高温に加熱され、再熱蒸気となって再熱蒸気管10を介して中圧タービン3に流入し、その後、連絡配管11を介して低圧タービン4に流入し、復水器12で復水となり、給水管13を介して給水ポンプ13aによりボイラ7に再び供給されるようになっている。
このような閉サイクル構成において、主蒸気管8には主蒸気止め弁14および蒸気加減弁15が設けられ、また再熱蒸気管10には再熱蒸気止め弁16およびインターセプト弁17が設けられている。
(中略)
これに対し、蒸気加減弁15は蒸気タービンの回転数または出力を所定値に精度よく制御するために通常運転中、継続使用され、蒸気流量の加減を行なう。したがって、蒸気加減弁15は高温、高圧蒸気に晒され、苛酷な条件の下で使用されることになる。特に近年、原子力発電プラントの稼動率が高くなり、その占有率が増大するにつれて、一般の火力発電プラントは負荷調整用として運用されることが多くなっている。この場合、運用負荷については中央給電指令に従うため、火力発電プラントの蒸気加減弁の使用条件は、さらに苛酷さを増している。
一方、蒸気加減弁は弁全開時の圧力損失を極力少なくすることが望まれることから、一般にボール弁タイプのものが多く採用されている。ところが、このタイプの弁は絞り度を大きくした場合に弁振動が大きくなる傾向がある。第4図はその一例を示している。弁開度(弁リフト/弁シート径)が0.05~0.07の付近で弁振動がピークとなることが認められる。このような弁振動が生じる原因は、弁座と弁体とで形成される蒸気通路部のうち、最小通路面積部つまりスロート部において不安定な衝撃波が発生し、これによって蒸気流れが乱されるためと考えられる。
このような弁振動が上述した苛酷な使用条件下で継続されると、弁各部の摩耗が促進されたり、場合によっては弁棒が破損するなどして、タービン制御に支障をきたすおそれがある。
ところで、蒸気タービンの初段落のノズル部への蒸気供給部は周方向に複数、例えば4室に区分され、蒸気加減弁はこれらに対応して複数、例えば4個並列に設置され、主蒸気は周方向で一定の領域毎に区分して供給されるようになっている。このような弁の開閉駆動方式としては、全ての弁を同時に開閉する1アドミッション方式と、各弁毎に順次に開閉する多アドミッション方式(4弁の場合は4アドミッション方式)と、これらの折衷方式(4弁の場合は2または3アドミッション方式)とがある。
1アドミッション方式によると初段落のノズルの全周に亘って均一な温度分布が得られるため、この方式は熱応力低減を望む場合に多く採用される。
多アドミッション方式によると弁の絞り損失が少ないため、この方式はタービン効率を重視する場合に多く採用される。
折衷方式はタービン効率と熱応力低減要求度の軽重に応じて採用される。
第5図は多アドミッション方式の場合の弁開度と弁振動との関係を例示したものである。図示の如く、各弁の弁開度が所定値になる度に弁振動値のピークが表われる。このため、多アドミッション方式の場合は多くの負荷域で弁振動が発生することから、特に運用が困難になる。」(2ページ左上欄8行ないし3ページ左上欄8行)
(ウ)「 (発明が解決しようとする問題点)
従来では蒸気タービンへの蒸気供給部に並列に設けられた複数の蒸気加減弁を開度制御する場合、各蒸気加減弁が異常振動域で使用される可能性がある。このような状態での連続使用が行なわれると、弁の摺動部が摩耗したり、弁棒が折損するなど、タービン制御上の支障が生じる問題がある。」(3ページ左上欄9行ないし16行)
(エ)「 〔発明の構成〕
(問題点を解決するための手段)
本発明は、蒸気タービンへの蒸気供給部に並列に設けられた複数の蒸気加減弁をそれぞれ開度制御するものにおいて、前記蒸気タービンの運転条件に基づいて前記蒸気加減弁の開度を設定する開度設定手段と、その開度設定値による弁開度に基づいて蒸気加減弁の弁振動値を見出す弁振動値見出手段と、これにより見出された各弁振動値が異常振動値か否か判断し、異常振動値と判断された場合にその蒸気加減弁の弁振動値が小さくなる方向に修正開度を設定する修正開度設定手段と、開度修正された蒸気加減弁で生じる蒸気流量の過不足分を吸収するために他の蒸気加減弁に補正開度を設定する補正開度設定手段とを有することを特徴とする。」(3ページ左上欄17行ないし右上欄12行)
(オ)「 (作用)
蒸気タービンの運転中、弁振動値見出手段により、常時各蒸気加減弁の弁振動値が見出される。そして、その弁振動値は修正開度設定手段によって異常振動値か否か判断され、異常振動値と判断された場合には修正開度が設定され、この蒸気加減弁の開度は弁振動値が小さくなる方向に修正される。したがって、蒸気加減弁の異常振動が防止され、常に安全な開度で弁使用が行なわれる。
また、修正開度に設定された蒸気加減弁で生じる蒸気流量の過不足分は、補正開度設定手段で設定される他の蒸気加減弁の補正開度によって吸収される。なお、この補正開度が設定される蒸気加減弁に対しても、前記同様に弁振動値の見出および開度修正が行なわれ、異常振動が防止される。
したがって、蒸気タービンへの蒸気供給量は全体として設定値通りに維持されつつ、各蒸気加減弁の異常振動領域での使用が避けられ、常に安定した運用が可能となる。」(3ページ右上欄13行ないし左下欄11行)
(カ)「まず、第1図によって全体構成を説明する。
蒸気タービンへの蒸気供給部に複数、例えば4個並列に設けたボール弁タイプの蒸気加減弁21a~21dを制御対象としている。
蒸気タービンの運転条件に基づいて蒸気加減弁21a~21dの開度を設定する開度設定手段として、タービン出力設定器22および負荷設定器23を設けている。このタービン出力設定器22から出力されるタービン出力信号101と、負荷設定器23から出力される負荷設定信号102とが、加減算器24で演算され、その結果出力される偏差信号103が増幅器25で増幅され、加減弁開度指令信号104が出力される。
加減弁開度指令信号104は各蒸気加減弁21a~21dへの共通指令信号である。この加減弁開度指令信号104が、蒸気加減弁21a~21dに対応する加算器26a~26dにそれぞれ入力されるとともに、異常振動防止装置50に入力される。異常振動防止装置31は弁振動値見出手段、修正開度設定手段および補正開度設定手段等からなり、個々の蒸気加減弁21a~21d毎の開度設定のためのバイアス信号105a~105bを加算器26a~26dにそれぞれ出力する。なお、この異常振動防止装置50については、後に詳述する。
各加算器26a~26dでは、入力される加減算開度指令信号104と各バイアス信号105a~105dとに基づいて演算が行なわれ、各蒸気加減弁21a~21d毎に対応する個別開度指令信号106a~106dが出力される。
個別開度指令信号106a~106dは、弁開度特性アンプ27a~27dにそれぞれ入力され、各蒸気加減弁21a~21dに応じた開度特性、例えば開動タイミング等が設定される。そして、各弁開度特性アンプ27a~27dから弁開度設定信号107a~107dがそれぞれ出力される。
一方、各蒸気加減弁21a~21dには弁体の実開度を検出する位置検出器28a~28dが設けてあり、この各位置検出器28a~28dから弁位置信号108a~108dが出力される。
弁位置信号108a~108dは弁開度設定信号107a~107dとともに加減算器29a~29dにそれぞれ入力され、この各加減算器29a~29dで各弁体の実開度と設定開度との偏差が求められ、弁開度偏差信号109a~109dがそれぞれ出力される。
弁開度偏差信号109a~109dはサーボアンプ30a~30dでそれぞれ増幅され、その増幅されたサーボ弁電気信号110a~110dが蒸気加減弁駆動用の油筒(図示せず)のサーボ弁31a~31dにそれぞれ入力される。ここで、電/油変換が行なわれ、各蒸気加減弁21a~21dが油圧信号111a~111dに基づいてそれぞれ開閉操作される。」(3ページ左下欄15行ないし4ページ右上欄8行)
(キ)「次に、第2図によって異常振動防止装置について説明する。
異常振動防止装置50は前記のように、弁振動見出手段32、修正開度設定手段33および補正開度設定手段34からなる。
弁振動見出手段32は加減弁開度指令信号104に基づく各蒸気加減弁21a~21dの開度に対応する弁振動値を見出すもので、この実施例では、弁開度と弁棒振動との関係から求められた振動特性データに基づいて、加減弁開度指令信号104に対応する弁棒振動値の予測を行なう弁棒振動値予測手段としている。この弁棒振動値予測手段32は弁開度演算器35と、弁棒振動値予測装置36とからなる。弁開度演算器35では、加減弁開度指令信号104によって与えられる負荷量に基づいて弁棒リフト量が演算され、それにより弁開度演算信号201が出力される。また、弁棒振動値予測装置36では、弁開度演算信号201に基づき、弁開度(弁リフト/弁シート径)と弁棒振動値との関係データから弁棒振動値予測が行なわれ、弁棒振動値予測信号202が出力される。
修正開度設定手段33は、弁棒振動値が異常振動値か否か判断し、異常振動値と判断された蒸気加減弁21a~21dの開度を通常振動領域までシフトする修正開度を設定するもので、この実施例では弁棒振動応力計算器37、弁棒アンバランス力計算器38、弁棒静応力計算器39、弁棒疲労強度評価装置40、比較器41およびバイアス演算器41からなる。
弁棒振動応力計算器37には弁棒振動値予測信号202が入力され、予測される弁棒振動値に基づいて、弁棒にどれだけの振動応力が発生するか計算され、その結果として弁棒振動応力信号203が出力される。また、弁棒アンバランス力計算器38には弁開度演算信号201が入力され、予測される弁開度に対応して弁棒に作用する蒸気圧に基づく弁棒アンバランス力が求められ、それに基づく弁棒アンバランス力信号204が出力される。この弁棒アンバランス力信号204が弁棒静応力計算器39に入力され、弁棒アンバランス力に基づいて弁棒に生じる静応力が計算され、その計算値が弁棒静応力信号205として出力される。
弁棒振動応力信号203と弁棒静応力信号205とは弁棒疲労強度評価装置40に入力され、振動応力と静応力との全応力(σall)が求められ、その値が弁棒疲労強度評価信号206として出力される。
この弁棒疲労強度評価信号206が比較器41に入力され、全応力が許容応力(σact)と比較され、全応力が許容応力よりも小さい旨(σact-σall>0)の信号207または全応力が許容応力以上である旨(σact-σall≦0)の信号208のいずれかが出力される。
そして、この各出力信号207,208がバイアス演算器41aに入力され、バイアス値の演算が行なわれる。全応力が許容応力よりも小さいときは、バイアス信号105aのバイアス値はゼロであり、加減弁開度指令信号104は修正されない。全応力が許容応力以上となるときは、これを修正するために必要な弁開度に基づくバイアス値αが演算され、バイアス信号105aによって加減弁開度指令信号104が修正される。なお、バイアス値αに対応する弁開度指令信号修正信号209が弁開度演算器35にフィードバックされるようになっている。
また、補正開度設定手段34は、修正される蒸気加減弁(以上の説明では21a)で生じる蒸気流量の過不足分を除去するために次の蒸気加減弁(ここでは21b)の補正開度を設定し、その補正開度信号210を出力するものである。この補正開度信号210は、次の蒸気加減弁21bに対応する弁開度演算器(第2図では省略)に入力される。そして、その蒸気加減弁に対応する弁振動値見出手段、修正開度設定手段および補正開度設定手段(いずれも図示省略)でも前記同様の機能が行なわれ、さらにその後段でも順次同様の機能が行なわれる。
このような構成によれば、各蒸気加減弁21a~21dの開度要求に応じた弁棒振動値が予め予測され、それに基づく応力演算結果に基づいて弁振動が許容応力の範囲内となるように開度制御されるため、蒸気加減弁の弁棒が折損するなどのおそれが除去され、運転時のプラント信頼性が確保できる。
なお、前記実施例では、加減弁開度指令信号104に基づいて振動値を予測し、これにより弁棒評価を行なうようにしたが、弁振動見出手段を各蒸気加減弁の実際振動値を検出する振動検出器とし、その振動値により作用応力を評価するようにしてもよい。このような構成にすれば、実測値を入力とするので、制御精度を向上させることができる。
また、前記実施例では、修正開度を振動応力と静応力との論理演算に基づいて行なうようにしたが、これに代え、修正開度設定手段として、予め弁棒振動応力を評価して、連続使用を避けるべき弁開度域、例えば弁棒リフト域を設定しておき、この弁リフト域との照合によってバイアス値を調整するようにしてもよい。
このような構成にすれば、予め求められた連続使用が許容される弁開度域の中から修正開度が選定されることになるから、演算回路構成が簡略化される。」(4ページ右上欄9行ないし5ページ左下欄11行)
(ク)「〔発明の効果〕
以上のように、本発明によれば、蒸気加減弁の設定開度に対応して弁振動値を見出し、それが異常振動値と判断された場合には弁開度を振動値が小さくなる方向に修正するとともに、その修正による蒸気流量の過不足分を他の蒸気加減弁で補正するようにしたので、蒸気加減弁が異常振動域で使用されることが避けられ、振動に基づく弁の摺動部の摩耗や弁棒破損が防止または抑制でき、タービン制御上の信頼性向上が図れるようになる。」(5ページ左下欄12行ないし右下欄1行)
(ケ)上記(イ)の「蒸気タービンの初段落のノズル部への蒸気供給部は周方向に複数、例えば4室に区分され、蒸気加減弁はこれらに対応して複数、例えば4個並列に設置され、主蒸気は周方向で一定の領域毎に区分して供給されるようになっている。」という記載、上記(カ)の「蒸気タービンへの蒸気供給部に複数、例えば4個並列に設けたボール弁タイプの蒸気加減弁21a~21dを制御対象としている。」という記載から、引用文献に記載された蒸気タービンへの蒸気供給部は複数に区分され、蒸気加減弁はこれらに対応して複数並列に設置されることが分かる。
(コ)上記(オ)の「蒸気タービンの運転中、弁振動値見出手段により、常時各蒸気加減弁の弁振動値が見出される。そして、その弁振動値は修正開度設定手段によって異常振動値か否か判断され、異常振動値と判断された場合には修正開度が設定され、この蒸気加減弁の開度は弁振動値が小さくなる方向に修正される。したがって、蒸気加減弁の異常振動が防止され、常に安全な開度で弁使用が行なわれる。」という記載、及び上記(キ)の「異常振動防止装置50は前記のように、弁振動見出手段32、修正開度設定手段33および補正開度設定手段34からなる。・・・弁棒振動応力計算器37には弁棒振動値予測信号202が入力され、予測される弁棒振動値に基づいて、弁棒にどれだけの振動応力が発生するか計算され、その結果として弁棒振動応力信号203が出力される。・・・弁棒振動応力信号203と弁棒静応力信号205とは弁棒疲労強度評価装置40に入力され、振動応力と静応力との全応力(σall)が求められ、その値が弁棒疲労強度評価信号206として出力される。・・・そして、この各出力信号207,208がバイアス演算器41aに入力され、バイアス値の演算が行なわれる。全応力が許容応力よりも小さいときは、バイアス信号105aのバイアス値はゼロであり、加減弁開度指令信号104は修正されない。全応力が許容応力以上となるときは、これを修正するために必要な弁開度に基づくバイアス値αが演算され、バイアス信号105aによって加減弁開度指令信号104が修正される。」という記載から、蒸気タービンの運転中、弁振動値が異常振動値と判断された場合(実施例では、弁棒に発生する全応力が許容応力以上となるとき)には、蒸気加減弁の開度は弁振動値が小さくなる方向に修正され、弁振動値が異常振動値と判断されない場合(実施例では、弁棒に発生する全応力が許容応力より小さいとき)には、加減弁開度指令信号104は修正されないことが分かる。
また、上記(オ)の「また、修正開度に設定された蒸気加減弁で生じる蒸気流量の過不足分は、補正開度設定手段で設定される他の蒸気加減弁の補正開度によって吸収される。なお、この補正開度が設定される蒸気加減弁に対しても、前記同様に弁振動値の見出および開度修正が行なわれ、異常振動が防止される。」という記載から、修正開度に設定された蒸気加減弁(実施例における21a)だけでなく、補正開度設定手段で設定される他の蒸気加減弁(実施例における21b)に対しても弁振動値の見出および開度修正が行なわれることが分かる。
(サ)上記(オ)の「また、修正開度に設定された蒸気加減弁で生じる蒸気流量の過不足分は、補正開度設定手段で設定される他の蒸気加減弁の補正開度によって吸収される。なお、この補正開度が設定される蒸気加減弁に対しても、前記同様に弁振動値の見出および開度修正が行なわれ、異常振動が防止される。したがって、蒸気タービンへの蒸気供給量は全体として設定値通りに維持されつつ、各蒸気加減弁の異常振動領域での使用が避けられ、常に安定した運用が可能となる。」という記載、及び上記(キ)の「補正開度設定手段34は、修正される蒸気加減弁(以上の説明では21a)で生じる蒸気流量の過不足分を除去するために次の蒸気加減弁(ここでは21b)の補正開度を設定し、その補正開度信号210を出力するものである。」という記載から、引用文献に記載された蒸気タービンにおいて、修正開度に設定された蒸気加減弁で生じる蒸気流量の過不足分は、補正開度設定手段で設定される他の蒸気加減弁の補正開度によって吸収され、蒸気タービンへの蒸気供給量は全体として設定値通りに維持されることが分かる。すなわち、蒸気タービンへの所定の蒸気供給量が実現されるように、蒸気加減弁21aおよび蒸気加減弁21bが閉方向および開方向に調整されることが分かる。
イ 引用発明
上記アの記載及び図面の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
<引用発明>
「蒸気タービンを運転する方法であって、該蒸気タービンは、前記蒸気タービンに接続された複数に区分された蒸気供給部、ならびにまた前記蒸気供給部に配置された蒸気加減弁21a、および前記蒸気供給部に配置された蒸気加減弁21bを備え、
前記蒸気加減弁21aおよび/または前記蒸気加減弁21bが振動する場合に、全応力が許容応力以上となるときにおいて、前記蒸気加減弁21aを振動値が小さくなる所定の方向に調整するとともに、前記蒸気加減弁21bを前記蒸気加減弁21aの調整により生じる蒸気流量の過不足を吸収するように調整し、前記全応力が許容応力以上となるときの後の全応力が許容応力よりも小さいときにおいて、前記蒸気加減弁21aを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整するとともに、前記蒸気加減弁21bを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整し、
前記蒸気タービンへの所定の蒸気供給量が実現されるように、前記蒸気加減弁21aおよび前記蒸気加減弁21bが閉方向および開方向に調整される、方法。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「蒸気タービン」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「蒸気タービン(2)」に相当し、以下同様に、「複数に区分された蒸気供給部」は「第1蒸気供給ライン(5)、および第2蒸気供給ライン(6)」に、「蒸気加減弁21a」は「第1バルブ(3)」に、「蒸気加減弁21b」は「第2バルブ(4)」に、「所定の蒸気供給量」は「全蒸気質量流」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「全応力が許容応力以上となるとき」は、「所定の時点」という限りにおいて、本願発明における「第1時点」に相当し、
引用発明における「振動値が小さくなる所定の方向」は、「所定の方向」という限りにおいて、本願発明における「閉方向」に相当し、
引用発明における「前記蒸気加減弁21aの調整により生じる蒸気流量の過不足を吸収するように調整し」は、「前記所定の方向と反対方向に調整し」という限りにおいて、本願発明における「開方向に調整し」に相当し、
引用発明における「前記全応力が許容応力以上となるときの後の全応力が許容応力よりも小さいとき」は、「前記所定の時点の後のある時点」という限りにおいて、本願発明における「前記第1時点の後の第2時点」に相当し、
引用発明における「前記蒸気加減弁21aを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整する」は、前記蒸気加減弁21aを振動値が小さくなる所定の方向に調整したものを戻すということであるから、「前記第1バルブを前記所定の方向と反対方向に調整する」という限りにおいて、本願発明における「前記第1バルブを前記開方向に調整する」に相当し、
引用発明における「前記蒸気加減弁21bを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整し」は、前記蒸気加減弁21bを前記蒸気加減弁21aの調整により生じる蒸気流量の過不足を吸収するように調整したものを戻すということであるから、「前記第2バルブを前記所定の方向と反対方向の反対方向に調整し」すなわち「前記第2バルブを前記所定の方向に調整し」という限りにおいて、本願発明における「前記第2バルブを前記閉方向に調整し」に相当する。
また、引用発明における「前記蒸気タービンへの所定の蒸気供給量が実現されるように、前記蒸気加減弁21aおよび前記蒸気加減弁21bが閉方向および開方向に調整される」は、本願発明における「前記蒸気タービンへの所定の全蒸気質量流が実現されるように、前記第1バルブおよび前記第2バルブが閉方向および開方向に調整される」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点において一致する。
<一致点>
「蒸気タービンを運転する方法であって、該蒸気タービンは、前記蒸気タービンに接続された第1蒸気供給ライン、および第2蒸気供給ライン、ならびにまた前記第1蒸気供給ラインに配置された第1バルブ、および前記第2蒸気供給ラインに配置された第2バルブを備え、
前記第1バルブおよび/または前記第2バルブが振動する場合に、所定の時点において、前記第1バルブを所定の方向に調整するとともに、前記第2バルブを前記所定の方向と反対方向に調整し、前記所定の時点の後のある時点において、前記第1バルブを前記所定の方向と反対方向に調整するとともに、前記第2バルブを前記所定の方向に調整し、
前記蒸気タービンへの所定の全蒸気質量流が実現されるように、前記第1バルブおよび前記第2バルブが閉方向および開方向に調整される方法。」
そして、本願発明と引用発明は、次の相違点で相違する。
<相違点>
第1バルブ及び第2バルブの調整時期及び調整方向について、
本願発明においては、
「前記第1バルブ(3)および/または前記第2バルブ(4)が振動する場合に、第1時点において、前記第1バルブ(3)を閉方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を開方向に調整し、前記第1時点の後の第2時点において、前記第1バルブ(3)を前記開方向に調整するとともに、前記第2バルブ(4)を前記閉方向に調整」するのに対し、
引用発明においては、
「前記蒸気加減弁21aおよび/または前記蒸気加減弁21bが振動する場合に、全応力が許容応力以上となるときにおいて、前記蒸気加減弁21aを振動値が小さくなる所定の方向に調整するとともに、前記蒸気加減弁21bを前記蒸気加減弁21aの調整により生じる蒸気流量の過不足を吸収するように調整し、前記全応力が許容応力以上となるときの後の全応力が許容応力よりも小さいときにおいて、前記蒸気加減弁21aを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整するとともに、前記蒸気加減弁21bを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整」する点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
引用発明においては、第4図に示されるように、弁開度が0.06の付近で弁振動がピークとなっている。このような小さな弁開度となるのは、タービンの始動時と考えられる。タービンの始動時には、蒸気流量が0から次第に増えていくから、蒸気加減弁21aの弁開度が0から次第に大きくなって0.06に近づいたときに、弁開度0.06の手前で、弁振動値が異常振動値であると判断されることになる。そのとき、蒸気加減弁21aの弁開度は、振動値が小さくなる所定の方向、すなわち閉方向に調整される。そしてそれにより減少した蒸気流量を補うため、上記第4のア(サ)のように、蒸気加減弁21bの弁開度は、上記所定の方向と反対方向、すなわち開方向に調整される。
次に、蒸気タービンへの蒸気供給量がさらに増加し、加減弁開度指令信号の弁開度が0.06を超え、蒸気加減弁21aの全応力が許容応力より小さくなる弁開度の加減弁開度指令信号になると、上記第4のア(コ)のように、バイアス信号105aのバイアス値はゼロとなるから、蒸気加減弁21aの弁開度は、前記所定の方向と反対方向である開方向に調整される。このとき、それにより増加する蒸気流量を補うため、上記第4のア(サ)のように、蒸気加減弁21bの弁開度は、前記所定の方向と反対方向のさらに反対方向、すなわち前記所定の方向である閉方向に調整される。
そうすると、引用発明における「全応力が許容応力以上となるとき」は、本願発明における「第1時点」に相当し、引用発明における「振動値が小さくなる所定の方向」は、本願発明における「閉方向」に相当し、引用発明における「前記蒸気加減弁21bを前記蒸気加減弁21aの調整により生じる蒸気流量の過不足を吸収するように調整し」は、本願発明における「前記第2バルブを開方向に調整し」に相当し、引用発明における「前記全応力が許容応力以上となるときの後の全応力が許容応力よりも小さいとき」は、本願発明における「前記第1時点の後の第2時点」に相当し、引用発明における「前記蒸気加減弁21aを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整する」は、本願発明における「前記第1バルブを前記開方向に調整する」に相当し、引用発明における「前記蒸気加減弁21bを加減弁開度指令信号が修正されない方向に調整し」は、本願発明における「前記第2バルブを前記閉方向に調整し」に相当するといえるから、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
そうすると、本願発明と引用発明とは同一である。
仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、タービン始動時に、蒸気加減弁21aの弁振動値が異常振動値となったときに、蒸気加減弁21aの弁開度を、弁振動が少なくなるように、閉方向に調整することは、引用発明に接した当業者であれば、容易に想到し得たことであり、その後、蒸気タービンへの蒸気供給量がさらに増加して蒸気加減弁21aの弁開度が異常振動値を超えたときに、蒸気加減弁21aの弁開度を、弁振動が少なくなるように、加減弁開度指令信号が修正されない方向、すなわち開方向に調整することも、引用発明に接した当業者であれば、容易に想到し得たことである。
そうすると、仮に上記相違点が実質的な相違点であるとしても、引用発明に基づいて、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-017829