特許拒絶査定不服審判
2017-017601
冷凍機複合型間接気化式空調装置及び冷凍機複合型間接気化式空調方法
- 審判番号
- 2017-017601
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-220045外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月28日
- 審決日
- 2018年10月22日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社アースクリーン東北
- 【請求人代理人】藤木 博
- 【請求人代理人】吉川 まゆみ
- 分類
- P18 .121-Z (F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-220045「冷凍機複合型間接気化式空調装置及び冷凍機複合型間接気化式空調方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 89966〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成27年11月10日の出願であって、平成28年12月13日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成29年2月17日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成29年4月5日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成29年8月8日に意見書が提出されたが、平成29年4月5日付けで通知された拒絶の理由により平成29年8月25日付けで拒絶査定され、これに対して平成29年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成29年2月17日の手続補正書により補正された特許請求の範囲と明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認められる。
「気化現象を生じさせるためのウエット・チャネルと、被冷却空気を通すドライ・チャネルとが、前記ウエット・チャネルの側に水を保持する湿潤層が設けられた水を透さない仕切部材を介して形成された空調コア部と、
熱媒体を減圧することにより温度を下げ吸熱させる蒸発器、及び、熱媒体を加圧することにより温度を上げ発熱させる凝縮器を有するヒートポンプとを備え、
前記蒸発器は、前記ウエット・チャネルにおける気化現象及び熱交換により、前記ドライ・チャネルにおいて冷却された空気を更に冷却して、空調対象室内に直接給気するように配置され、
前記凝縮器は、前記ウエット・チャネルを通過した空気を加温し、空調対象室外に直接排気するように配置され、
前記ウエット・チャネルを通過した空気で前記凝縮器から吸熱することにより、空調対象室外の空気で吸熱する場合よりも前記凝縮器から吸熱する空気の温度を低くし、ヒートポンプの効率を高める
ことを特徴とする冷凍機複合型間接気化式空調装置。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された実願昭48-38615号(実開昭49-141649号)のマイクロフィルムに記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4 引用例
(1) 本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭48-38615号(実開昭49-141649号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a) 「内部に冷媒圧縮機を収納した本体、この本体内の所定位置に配設され互いに直交する方向に排気通路と吸気通路とを交互に形成した熱交換器、上記排気通路と吸気通路の吹出面にそれぞれ対向して設けられた室内側と室外側の熱交換器と送風機を備え、上記吸気通路を通過する室外空気を、上記排気通路を通過する室内空気によつて熱交換するようにしたことを特徴とする空気調和装置。」(明細書1頁5~13行:「2.実用新案登録請求の範囲」)
(1b) 「この考案は、冷暖房運転はもちろん、室内空気の排気と、室外空気の吸気を同時に行なうことを可能にした空気調和装置に関するものである。
従来のこの種空気調和装置は、一般に室内空気および室外空気をそれぞれ単独に循環させて空気調和を行なうようにしており、室内空気と室外空気を同時に入れ換えるものはない。これは、たとえば夏季の冷房運転時に、室内冷気を排出したり、室外の熱気を室内に吸入して冷房効果を極度に低下させるためである。
この考案は、かかる点に着目してなされたもので、冷房時はもちろん、暖房時においても、吸排気が同時にできる空気調和装置を提供しようとするものである。
すなわち、第1図および第2図に示す一実施例において、(1)はたとえば建物の壁(15)にあけられた開口に装着された空気調和装置の本体で、この本体の両面には空気吸込口(2)(4)および空気吹出口(3)(5)がそれぞれ設けられている。(6)は上記本体(1)内において、平板を介して波板を直交する方向に交互に重積して形成した伝熱性の良好な材料からなる熱交換器で、吸気通路(7)を有する吸込面(7a)は室外側吸込口(4)に対向し、またその吹出面(7b)は室内側吹出口(3)にそれぞれ対向している。そして、上記熱交換器(6)の排気通路(8)を有する吸込面(8a)は室内側吸込口(2)に対向し、またその吹出面(8b)は室外側吹出口(5)に対向するようになされている。(9)は室内側吹出口(3)の内側に配設された室内側送風機、(10)は室外側吹出口(5)の内側に配設された室外側送風機で、この両送風機(9)(10)は吸排気作用を行なわせるために設けられたものである。なお、(11)は上記主体(1)内の所定位置に配設された冷媒圧縮機、(12)は上記熱交換器(6)の吹出面(8b)に対向する位置に設けられた室外側熱交換器、(14)は上記熱交換器(6)の吹出面(7b)に対向する位置に設けられた室内側熱交換器、(13)は上記両熱交換器(12)(14)を直列に接続する毛細管である。
この考案の空気調和装置は上記のように構成されているので、まず、室内側送風機(9)を運転すると、室外側の空気は、室外側吸込口(4)から熱交換器(6)の吸気通路(7)、および室内側熱交換器(14)を経て吹出口(3)から室内に吹出される。
一方、室外側送風機(10)によつて室内の空気は室内吸込口(4)(審決注:「(2)」の誤記。)から熱交換器(6)の排気通路(8)、および室外側熱交換器(12)を経て吹出口(5)から室外に排出されるわけである。
いま、この考案の空気調和装置を夏季の冷房運転に使用する場合、第1図に示すように、熱交換器(6)の排気通路(8)には温度の低い室内空気が流れ、またこの熱交換器(6)の吸気通路(7)には温度の高い室外空気が流れるわけであるが、上記吸気通路(7)を温度の高い室外空気が流れるとき、排気通路(8)を流れる温度の低い室内空気と熱交換することによつて、温度があらかじめ低下するため、室内側熱交換器(14)を通過する室外空気はこれによつて迅速に冷却され、室内には充分に冷却された室外空気が吹き出されるわけである。
なお、第3図に示す他の実施例のように、冷凍回路中に切換弁(16)を挿入したいわゆるヒートポンプ式の空気調和装置によつて、冬季に暖房運転を行なう場合には、室外側吸込口(4)から吸引されて熱交換器(6)の吸気通路(7)を流れる温度の低い室外空気は、上記熱交換器(6)の排気通路(8)を流れる温度の高い室内空気と熱交換することによつて温度上昇し、室内側熱交換器(14)によつて更に加熱されて室内に吹き出されるものである。
この考案の空気調和装置は上述したように、本体(1)内の所定位置に互いに直交する方向に排気通路(8)と吸気通路(7)とを交互に形成した熱交換器(6)と、上記排気通路(8)と吸気通路(7)の吹出面(8b)(7b)に、室内側と室外側の熱交換器(12)(14)および送風機(10)(9)をそれぞれ対向して設けるようにしたから、上記熱交換器(6)の吸気通路(7)を通過する室外空気は、熱交換器(6)の排気通路(8)を同時に通過する室内空気によつて熱交換されるため、夏季の冷房時においては、室外の温度の高い空気は熱交換器(6)によつて冷却され、また冬季の暖房時においては、室外の温度の低い空気は熱交換器(6)によつて温度上昇するもので、冷暖房何れの場合においても、支障なく吸排気が同時にでき、能率のよい空気調和装置を提供することができる優れた実用的効果を有するものである。」(明細書1頁15行~同6頁1行:「3.考案の詳細な説明」)
(1c) 「第1図および第2図は何れもこの考案の一実施例を示すもので、第1図は縦断面図、第2図は熱交換器の一部斜視図である。
また、第3図はこの考案の他の実施例を示す縦断面図である。
なお図中同符号は同一または相当部分を示し、(1)は本体、(6)は熱交換器、(7)は吸気通路、(7b)は吸気通路(7)の吹出面、(8)は排気通路、(8b)は排気通路(8)の吹出面、(9)は室内側送風機、(10)は室外側送風機、(11)は冷媒圧縮機、(12)は室外側熱交換器、(14)は室内側熱交換器である。」(明細書6頁3~13行:「4.図面の簡単な説明」)
(1d) 「
」
(1e) 「
」
(1f) 「
」
(1g) 第1図及び第3図の記載内容を参照すると、室外側の空気は、室外側吸込口(4)から熱交換器(6)の吸気通路(7)、および室内側熱交換器(14)を経て、更に、室内側送風機(9)を経て、吹出口(3)から室内に吹出されること、また、室内の空気は、室内吸込口(2)から熱交換器(6)の排気通路(8)、および室外側熱交換器(12)を経て、更に、室外側送風機(10)を経て、吹出口(5)から室外に排出されることが理解できる。また、第1図に記載のものにおいて、技術常識からして凝縮器として作用する室外側熱交換器(12)は、熱交換器(6)の排気通路(8)を通過した室内空気を加熱することも理解できる。
(1h) これらの事項によれば、引用例1には、特に、第1図に係るものに注目すると、次の発明が記載されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」という。)。
「互いに直交する方向に排気通路と吸気通路とを交互に形成した熱交換器と、
冷媒圧縮機及び室外側熱交換器と室内側熱交換器とを直列に接続する毛細管とを備え、
熱交換器の排気通路を流れる温度の低い室内空気と吸気通路を流れる温度の高い室外空気とが熱交換することによって、室外空気は吸気通路において温度があらかじめ低下するため、室外空気は室内側熱交換器を通過することによって迅速に冷却され、室内側吹出口の内側に配設された室内側送風機を経て、充分に冷却された室外空気が室内に吹き出され、
室外側熱交換器は、熱交換器の排気通路を通過した室内空気を加熱し、室外側吹出口の内側に配設された室外側送風機を経て室外に排出し、
熱交換器の吸気通路を通過する室外空気は、熱交換器の排気通路を同時に通過する室内空気によって熱交換されるため、夏季の冷房時においては、室外の温度の高い空気は熱交換器によって冷却される、能率のよい
空気調和装置。」
(2) 同じく本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に周知技術を示すものとして引用された特開2006-105423号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2a) 「【0001】
本発明は、住宅に設置され、室内と屋外で換気を行う換気装置及びこの換気装置を備えた建物に関し、特に、水の気化熱を利用してエアを冷却する間接気化冷却機能及び24時間換気機能を備えた換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物を冷房する空調装置が提案されているが、水の気化熱を利用してエアを冷却する間接気化冷却装置を備えた空調装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。間接気化冷却装置は、隔壁で仕切られた流路間で顕熱(温度)交換を行う構成で、一方の流路で水の気化熱を利用してエアを冷却すると共に、他方の流路との間で冷熱の授受を行い、他方の流路を通るエアを冷却して、室内等に供給するものである。」
(2b) 「【0026】
<第1の実施の形態の換気装置1Aの構成>
図1は第1の実施の形態の換気装置1Aの一例を示す構成図である。第1の実施の形態の換気装置1Aは、給気ファン2と排気ファン3と間接気化冷却ユニット4を備える。」
(2c) 「【0029】
間接気化冷却ユニット4は、間接気化エレメント11と、給排水装置12とドレンパン13等を備える。間接気化エレメント11は、水の気化熱で冷却されるワーキングエアWAが通るワーキングエア流路11aと、ワーキングエアWAとの間で顕熱(温度)交換が行われるプロダクトエアPAが通るプロダクトエア流路11bを備える。」
(2d) 「【0037】
<間接気化エレメントの構成>
図2は間接気化エレメント11の概要を示す説明図で、図2(a)は間接気化エレメント11の全体構成、図2(b)は間接気化エレメント11の要部構成、図2(c)は冷却原理を示す。
【0038】
間接気化エレメント11は、図2(b)に示すように、仕切り21aで仕切られた複数の第1の流路21bを有するドライセル21と、仕切り22aで仕切られた複数の第2の流路22bを有するウェットセル22と、ドライセル21とウェットセル22を仕切る隔壁23とを備える。
【0039】
ドライセル21とウェットセル22は、第1の流路21bと第2の流路22bが直交する向きで、隔壁23を挟んで積層される。
【0040】
隔壁23は、図2(c)に示すように、ポリエチレンフィルム等で形成された防湿フィルム23aと、パルプ等で形成された湿潤層23bを備え、防湿フィルム23aがドライセル21に面し、湿潤層23bがウェットセル22に面する。
【0041】
また、隔壁23は、図2(b)に示すように、一部の第1の流路21bと第2の流路22bを連通させる通気孔23cが形成される。更に、図2(a)に示すように、通気孔23cが形成された第1の流路21bの出口には閉塞部24が形成され、エアが通り抜けないように構成される。
【0042】
これにより、間接気化エレメント11において、ワーキングエア流路11aは、通気孔23cが形成された第1の流路21bの入口から、第1の流路21b、通気孔23c及び第2の流路22bを通り、第2の流路22bの出口へ連通する。また、プロダクトエア流路11bは、通気孔23cが形成されていない第1の流路21bの入口から、第1の流路21bを通りこの第1の流路21bの出口へ連通する。
【0043】
図2(c)を参照に間接気化エレメント11による冷却原理の概要を説明する。ここで、ワーキングエアWAとプロダクトエアPAは直交する向きに流れるが、図2(c)ではワーキングエアWAとプロダクトエアPAの流れる向きを平行に図示している。
【0044】
ワーキングエア流路11aに面した湿潤層23bは、図1に示す給排水装置12によって水が供給される。これにより、ワーキングエア流路11aを通るワーキングエアWAと湿潤層23bの温度差によって水分が気化し、ワーキングエアWAが冷却される。
【0045】
ワーキングエアWAが冷却されると、ワーキングエア流路11aと隔壁23で仕切られたプロダクトエア流路11bを通るプロダクトエアPAは、隔壁23を通して冷熱を受けて冷却される。
【0046】
ここで、隔壁23を構成する防湿フィルム23aは水分を通さないことから、プロダクトエアPAはプロダクトエア流路11bを通過しても絶対湿度が変化しない。なお、ワーキングエアWAは、ワーキングエア流路11aを通過すると高湿度になる。
【0047】
一例として、プロダクトエアPA及びワーキングエアWAの入力温度が30℃、絶対湿度が10g/kg(DA:ドライエア)、相対湿度が約40%RHとした場合、プロダクトエアPAの出口温度は20℃と下がる。なお相対湿度は温度が下がるため約70%RHと上がるが、絶対湿度は10g/kg(DA)であり、変化しない。
【0048】
また、ワーキングエアWAの出口温度は23℃と下がる。但し、絶対湿度は16g/kg(DA)と上がる。」
(2e) 「
」
(2f) 「
」
(2g) 上記記載事項(【0046】)からして、隔壁23を構成する防湿フィルム23aは水分を通さないことから、上記隔壁23は水を透さないものといえる。
(2h) これらの記載事項及び図面の記載内容によれば、引用例2には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる。
「給気と排気とが熱交換を行う換気装置において、水の気化熱で冷却されるワーキングエアWAを通すワーキングエア流路11aと、プロダクトエアPAを通すプロダクトエア流路11bとが、前記ワーキングエア流路11aの側に水を保持する湿潤層23bが設けられた水を透さない隔壁23を介して形成され、前記ワーキングエア流路11aにおける気化現象及び熱交換により、前記プロダクトエア流路11bを通るプロダクトエアPAを冷却し、プロダクトエア流路11bを通過したプロダクトエアPAの出口温度を、プロダクトエアPAの入口温度よりも低くする間接気化冷却ユニット4。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、本願発明の「熱媒体を減圧することにより温度を下げ吸熱させる蒸発器、及び、熱媒体を加圧することにより温度を上げ発熱させる凝縮器を有するヒートポンプ」と引用発明の「冷媒圧縮機及び室外側熱交換器と室内側熱交換器とを直列に接続する毛細管」とについて検討する。冷凍回路の技術常識からして、引用発明の「冷媒」は本願発明の「熱媒体」に相当し、引用発明の「室外側熱交換器」は「凝縮器」として機能し冷媒を加圧することにより温度を上げ発熱させるものであり、同様に「室内側熱交換器」は「蒸発器」として機能し冷媒を減圧することにより温度を下げ吸熱させるものであるし、更に、「冷媒圧縮機及び室外側熱交換器と室内側熱交換器とを直列に接続する毛細管」は全体で「ヒートポンプ」として機能するから、結局、引用発明の「冷媒圧縮機及び室外側熱交換器と室内側熱交換器とを直列に接続する毛細管」は本願発明の「熱媒体を減圧することにより温度を下げ吸熱させる蒸発器、及び、熱媒体を加圧することにより温度を上げ発熱させる凝縮器を有するヒートポンプ」に相当している。
次に、本願発明の「前記蒸発器は、前記ウエット・チャネルにおける気化現象及び熱交換により、前記ドライ・チャネルにおいて冷却された空気を更に冷却して、空調対象室内に直接給気するように配置され」る態様と引用発明の「熱交換器の排気通路を流れる温度の低い室内空気と吸気通路を流れる温度の高い室外空気とが熱交換することによって、室外空気は吸気通路において温度があらかじめ低下するため、室外空気は室内側熱交換器を通過することによって迅速に冷却され、室内側吹出口の内側に配設された室内側送風機を経て、充分に冷却された室外空気が室内に吹き出され」る態様とについて検討する。空調機器の技術常識からして、引用発明の「室外空気が室内に吹き出され」る態様は、本願発明の「空調対象室内に」「給気する」態様に相当し、本願発明の「ドライ・チャネル」と引用発明の「吸気通路」とは、少なくとも(空調対象)室内に給気される被冷却空気が熱交換によって冷却される「通路」であるから、「冷却通路」の限りにおいて一致し、本願発明の「ウエット・チャネル」と引用発明の「排気通路」とは、「冷却通路」中の流体と少なくとも熱交換する流体が通過する「通路」であるから、「熱交換通路」の限りにおいて一致し、引用発明の「室内側熱交換器」は「充分に冷却された室外空気が室内に吹き出され」るように「配置され」ているので、結局、両者は、「蒸発器は、熱交換通路における熱交換により、冷却通路において冷却された空気を更に冷却して、空調対象室内に給気するように配置され」る態様の限りにおいて一致している。
また、本願発明の「前記凝縮器は、前記ウエット・チャネルを通過した空気を加温し、空調対象室外に直接排気するように配置され」る態様と引用発明の「室外側熱交換器は、熱交換器の排気通路を通過した室内空気を加熱し、室外側吹出口の内側に配設された室外側送風機を経て室外に排出(し)」する態様とについて検討すると、引用発明の「室内空気を加熱」する態様は本願発明の「空気を加温」する態様に相当し、引用発明の「室外に排出」する態様は本願発明の「空調対象室外に」「排気する」態様に相当し、引用発明の「室外側熱交換器」は「室内空気を加熱」するように「配置され」ているので、結局、両者は、「凝縮器は、熱交換通路を通過した空気を加温し、空調対象室外に排気するように配置され」る態様の限りにおいて一致している。
さらに、本願発明の「気化現象を生じさせるためのウエット・チャネルと、被冷却空気を通すドライ・チャネルとが、前記ウエット・チャネルの側に水を保持する湿潤層が設けられた水を透さない仕切部材を介して形成された空調コア部」と引用発明の「互いに直交する方向に排気通路と吸気通路とを交互に形成した熱交換器」とについて検討する。熱交換器の技術常識を考慮すると、両者の熱交換に関しては既に検討したとおりであり、本願発明の「空調コア部」と引用発明の「熱交換器」とは熱交換を行うものとの観点の限りにおいて「熱交換部」として一致しているから、結局、両者は、「熱交換通路と、被冷却空気を通す冷却通路とが、形成された熱交換部」の限りにおいて一致している。
最後に、本願発明の「冷凍機複合型間接気化式空調装置」と引用発明の「空気調和装置」とについて検討すると、空調機器の技術常識からして、両者は換気と共に冷房を行うものとの観点の限りにおいて「空調装置」として一致している。
(1)一致点
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点において一致している、
「熱交換通路と、被冷却空気を通す冷却通路とが、形成された熱交換部と、
熱媒体を減圧することにより温度を下げ吸熱させる蒸発器、及び、熱媒体を加圧することにより温度を上げ発熱させる凝縮器を有するヒートポンプとを備え、
前記蒸発器は、熱交換通路における熱交換により、冷却通路において冷却された空気を更に冷却して、空調対象室内に給気するように配置され、
前記凝縮器は、熱交換通路を通過した空気を加温し、空調対象室外に排気するように配置される、
空調装置。」
(2)相違点
そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
ア 相違点1
「熱交換通路と、被冷却空気を通す冷却通路とが、形成された熱交換部」に関し、本願発明では、「気化現象を生じさせるためのウエット・チャネルと、被冷却空気を通すドライ・チャネルとが、前記ウエット・チャネルの側に水を保持する湿潤層が設けられた水を透さない仕切部材を介して形成された空調コア部」であり、それに伴い、「蒸発器」が「前記ウエット・チャネルにおける気化現象及び熱交換により、前記ドライ・チャネルにおいて冷却された空気を更に冷却」するものであり、「凝縮器」が「前記ウエット・チャネルを通過した空気を加温」するものであり、「空調装置」が「冷凍機複合型間接気化式空調装置」であって、「前記ウエット・チャネルを通過した空気で前記凝縮器から吸熱することにより、空調対象室外の空気で吸熱する場合よりも前記凝縮器から吸熱する空気の温度を低くし、ヒートポンプの効率を高める」ものであるのに対し、引用発明では、「互いに直交する方向に排気通路と吸気通路とを交互に形成した熱交換器」であって、それに伴い、「蒸発器」が「室内側熱交換器」であって「熱交換器の排気通路を流れる温度の低い室内空気と吸気通路を流れる温度の高い室外空気とが熱交換することによって、室外空気は吸気通路において温度があらかじめ低下するため、室外空気は室内側熱交換器を通過することによって迅速に冷却され、室内側吹出口の内側に配設された室内側送風機を経て、充分に冷却された室外空気が室内に吹き出され」るものであり、「凝縮器」が「室外側熱交換器」であって「室外側熱交換器は、熱交換器の排気通路を通過した室内空気を加熱し、室外側吹出口の内側に配設された室外側送風機を経て室外に排出」するものであり、「空調装置」が「空気調和装置」であって、「熱交換器の吸気通路を通過する室外空気は、熱交換器の排気通路を同時に通過する室内空気によって熱交換されるため、夏季の冷房時においては、室外の温度の高い空気は熱交換器によって冷却される、能率のよい」ものである点。
イ 相違点2
「蒸発器」が「空気」を「空調対象室内に給気するように配置され」「凝縮器」が「空気」を「空調対象室外に排気するように配置され」る点に関し、本願発明では、「直接」給排気するのに対し、引用発明では、「室外側吹出口の内側に配設された室外側送風機を経て」、及び「室内側吹出口の内側に配設された室内側送風機を経て」給排気する点。
6 判断
(1)相違点1について
相対的に低温の室内空気と高温の室外空気との間で熱交換を行う換気装置において、気化現象を生じさせつつ室内空気を通す流路(本願発明の「ウエット・チャネル」に相当する。以下同様である。)と、室外空気(「被冷却空気」)を通す流路(「ドライ・チャネル」)とを、前記気化現象を生じさせる側(「ウエット・チャネルの側」)に水を保持する湿潤層が設けられた水を透さない隔壁(「仕切部材」)を介して形成した、間接気化冷却機能を備える「空調用コア部」と呼べるものであって、水の気化熱を利用して冷却を行うことで、水の気化熱を利用しない単に室内空気と室外空気との間で熱交換を行う換気装置よりも給気する室外空気をより冷却できるものは、本願の出願日前に周知の技術である(引用例2に記載の技術的事項を参照。以下「周知技術」という。)。
そして、引用発明の「互いに直交する方向に排気通路と吸気通路とを交互に形成した熱交換器」と、上記周知技術に係る「空調用コア部」とは、室内空気を排気し室外空気を給気するものにおいて排気と給気との間で熱交換をすることにより給気を冷却する機能を備える装置として共通するものである。また、引用発明は、蒸発器として機能する室内側熱交換器を通過する空気の温度を熱交換器によってあらかじめ低下させることで、室内に充分に冷却された室外空気を吹き出すものであるところ、「冷房効果を極度に低下させ」ないように「能率のよい空気調和装置を提供することができる」ことが、引用例1に記載されている。したがって、引用例1には、引用発明の室内側熱交換器を通過する空気の温度を低下させることで、冷房効果・能率をよくできることが示唆されているといえる。そして、室内側熱交換器が冷却する給気空気の温度が低い場合、冷却のための負荷、すなわちヒートポンプの負荷が少ないから、所定の温度に冷却された給気空気にするための能率が高まることは技術的に自明である。そうすると、冷房効果・能率をよりよくするとの普遍的な技術的課題に基づき、引用発明において、室内側熱交換器を通過する空気の温度をより低下させるように、「熱交換器」に替えて上記周知技術に係る「空調用コア部」を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、凝縮器として機能する室外側熱交換器の冷却の観点からすると、その冷却用の空気の温度が低いほどヒートポンプの効率を高めることは技術常識といえるところ、引用発明は、「熱交換器の吸気通路を通過する室外空気は、熱交換器の排気通路を同時に通過する室内空気によって熱交換されるため、夏季の冷房時においては、室外の温度の高い空気は熱交換器によって冷却される」のであるから、室外側熱交換器を冷却するための排気通路を通過した空気の温度は、室外空気の温度よりも低いといえる。そうすると、引用発明は「排気通路を通過した空気で室外側熱交換器から吸熱することにより、室外空気で吸熱する場合よりも室外側熱交換器から吸熱する空気の温度を低くし、ヒートポンプの効率を高める」ものといえる。そして、引用発明の「熱交換器」に替えて上記周知技術に係る「空調用コア部」を適用することで、室内空気は水の気化熱を利用して冷却され温度が低下するから、結局、「ウエット・チャネルを通過した空気で室外側熱交換器(凝縮器)から吸熱することにより、室外空気(空調対象室外の空気)で吸熱する場合よりも前記室外側熱交換器(凝縮器)から吸熱する空気の温度を低くし、ヒートポンプの効率を高める」ことも技術的に自明である。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明の「熱交換器」に替えて上記周知技術に係る「空調用コア部」を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
空気調和装置において、送風機の配置は、空気流路の範囲内で当業者が適宜設定し得る事項である。そうすると、引用発明において、室内側送風機の位置を蒸発器よりも上流側の所定の位置、例えば室外側吸込口と吸気通路の吸込面の間の位置とし、室外側送風機の位置を凝縮器よりも上流側の所定の位置、例えば室内側吸込口と排気通路の吸込面の間の位置とすることにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)本願発明の効果について
そして、本願発明の効果は、本願明細書の記載をみても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものと認められる。
なお、請求人は、審判請求書において、「(c)また、本願発明によれば、ウエット・チャネルにおいて気化した空気で凝縮器の熱を奪うので、凝縮器から吸熱する空気の温度を空調対象室外の温度よりも低くすることができ、ヒートポンプの効率を高めることができる。」と主張しているが、該効果は、本願発明の「前記ウエット・チャネルを通過した空気で前記凝縮器から吸熱することにより、空調対象室外の空気で吸熱する場合よりも前記凝縮器から吸熱する空気の温度を低くし、ヒートポンプの効率を高める」との発明特定事項について上記「(1)相違点1について」において検討したものと同様であって、当業者の予測を上回るような格別に顕著な効果とみることはできず、請求人の上記主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-017601