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特許拒絶査定不服審判

2017-013552

ヘッドアップディスプレイ装置

審判番号
2017-013552
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-196374外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年09月12日
審決日
2018年07月17日
公報発行日
2018年09月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (B60K) / P18 .537-WY (B60K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-196374「ヘッドアップディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月9日出願公開、特開2016-68576、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月26日の出願であって、平成28年12月26日付け(発送日:平成29年1月10日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成29年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年6月30日付け(発送日:平成29年7月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年9月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、平成30年4月20日付け(発送日:平成30年4月24日)で当審より拒絶の理由が通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)され、その指定期間内の平成30年6月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年6月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1及び4に係る発明は、以下の引用文献AないしDに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 拒絶の理由を発見しない請求項 平成29年2月22日付け手続補正書による補正後の請求項2-3、5-6に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。 引用文献等一覧 A.特開2012-179935号公報 B.特開2004-168230号公報 C.特開平10-142550号公報(周知技術を示す文献) D.特開平8-244495号公報(周知技術を示す文献) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1(進歩性)本願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1 ・引用文献1ないし4 ・請求項2及び3 ・引用文献1ないし5 ・請求項4 ・引用文献1ないし6 2(サポート要件)本願の請求項2ないし4に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3(明確性)本願の請求項1ないし4に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 引用文献等一覧 1.特開2014-126716号公報 (当審において新たに引用した文献) 2.特開2012-163705号公報 (当審において新たに引用した文献) 3.特開2012-179935号公報 (原査定の引用文献A) 4.特開2004-168230号公報 (原査定の引用文献B) 5.特開2012-35784号公報 (当審において新たに引用した文献) 6.特開2009-126249号公報(当審において新たに引用した文献) 第4 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成30年6月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下の通りのものと認める。 「【請求項1】 反射部材に表示光を投射して、虚像により運転者に情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置において、 第1表示画像及び複数の第2表示画像に対応する前記表示光を出射して、第1表示面に前記第1表示画像の虚像を表示するとともに、それぞれが前記第1表示面よりも運転者側に存在する複数の第2表示面に複数の第2表示画像の虚像を表示する表示装置と、 前記表示装置と前記運転者のアイポイントとの間の光路中に配置されて、前記表示装置から出射した表示光の光路長を調整する複数の光路長調整手段と、を有し、 前記第1表示面は、水平面となる基準面に対して垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記第1表示画像の虚像が視認される面であり、 前記複数の第2表示面は、それぞれが前記基準面に垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記複数の第2表示画像の虚像が視認される面であり、前記運転者の前後方向に沿って階層的に並んでおり、 前記第1表示画像は、当該第1表示画像単独で所定の情報を表示し、 前記複数の第2表示画像は、当該複数の第2表示画像を組み合わせることにより所定の情報を表示し、 前記複数の光路長調整手段は、前記第1表示面及び前記複数の第2表示面までの距離に応じて、前記第1表示画像及び前記複数の第2表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。 【請求項2】 前記複数の第2表示画像は、当該表示画像の左右の輪郭線が所定の消失点に応じて設定されるパース線に沿うようにそれぞれ描画されることを特徴とする請求項1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置。 【請求項3】 前記複数の第2表示画像は、奥側から手前側にかけて画像の濃度が薄くなるように描画されることを特徴とする請求項1又は2に記載されたヘッドアップディスプレイ装置。」 第5 特許法第29条第2項(進歩性)についての判断 1 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献1(特開2014-126716号公報)には、「表示装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線部は当審が付した。以下同様。)。 ア「【0012】 表示装置1は、車両のフロントパネルIP内に収納されている。表示装置1は、光源2と、表示パネル3と、ミラー4と、導光部10とを含む。光源2は、例えば、LED(Light Emitting Diode)であるが、これに限定されるものではない。表示パネル3は、液晶表示パネルであるが、これに限定されるものではない。ミラー4は凹面鏡である。導光部10は、表示パネル3とミラー4との間に設けられる。導光部10は、表示パネル3の表示面3PEから照射された光を導いてミラー4に照射し、画像Pを投影する。表示装置1は、フロントウインドウW及びミラー4と対向する位置に、開口部5を有している。 【0013】 表示パネル3の表示面3PEに表示されている画像Pは、導光部10に入射した後、導光部10からミラー4に照射され、投影される。導光部10を介して表示パネル3から投影された画像Pは、ミラー4によって反射されて、開口部5を通過してフロントウインドウWに投影される。ミラー4は、画像Pを拡大してフロントウインドウWに投影する。運転者DRは、フロントウインドウWを通して、表示パネル3が投影した画像Pの虚像PGを視認する。本実施形態において、虚像PGは、路面RDと平行に近い状態で表示される。これは、ミラー4と対応する部分が階段状に形成されている導光部10が、画像Pをミラー4に投影するためである。導光部10の構造は後述する。虚像PGが路面RDと平行に近い状態又は平行な状態で表示されることにより、運転者DRからは、虚像PGが路面上に表示されているように見える。このため運転者DRの焦点位置の移動が少なくなる。」 イ「【0018】 <1-2.導光部の詳細> 図3は、本実施形態に係る表示装置が備える導光部及び表示パネルの側面図である。図4は、導光部が備える光ファイバーを示す図である。図5は、表示パネルの表示面に表示される画像を示す図である。図6は、導光部の照射部を示す図である。図7は、本実施形態に係る表示装置が表示する虚像を示す図である。図中の符号Dは下方(重力の作用方向、すなわち鉛直方向)を表し、符号Uは上方(鉛直方向とは反対方向)を表す(以下同様)。 【0019】 導光部10は、表示パネル3の表示面3PE側に設けられる。導光部10は、入射部PIと、照射部PEとを有する。入射部PIは、表示面3PEと平行かつ表示面3PEに対向する。照射部PEは、入射部PIから入射した光を照射する。照射部PEは、入射部PIと平行である。照射部PEは、複数の照射面PEa、PEb、PEc、PEdを有する。複数の照射面PEa、PEb、PEc、PEdは、入射部PIと直交する方向における位置が、表示パネル3の表示面3PEの位置に応じて異なる。すなわち、複数の照射面PEa、PEb、PEc、PEdは、入射部PIからの距離が、表示パネル3の表示面3PEの位置に応じて異なる。」 ウ「【0022】 本実施形態において、それぞれの導光部材10a、10b、10c、10dは、図4に示す光ファイバー11を複数束ねたものである。光ファイバー11の一方の端面が入射面PIa、PIb、PIc、PIdとなり、他方の端面が照射面PEa、PEb、PEc、PEdとなる。表示パネル3の表示面3PEから射出し、入射面PIa、PIb、PIc、PIdから入射した光は、複数の光ファイバー11内で反射を繰り返しながら、照射面PEa、PEb、PEc、PEdから照射する。このような構造により、表示パネル3の表示面3PEに表示された画像は、導光部10の照射部PEに浮かび上がって見える。 【0023】 複数の導光部材10a、10b、10c、10dは、それぞれ、入射面PIa、PIb、PIc、PIdと、照射面PEa、PEb、PEc、PEdとの距離が、上方Uから下方Dに向かうにしたがって短くなっている。このため、導光部10は、表示パネル3の表示面3PEの上方Uから下方Dに向かって、照射面PEa、PEb、PEc、PEdの位置が、この順に表示面3PEに表示に近くなる。すなわち、それぞれの照射面PEa、PEb、PEc、PEdの位置は、下方Dから上方Uに向かって表示面3PEから遠くなる。それぞれの導光部材10a、10b、10c、10dは、照射面PEa、PEb、PEc、PEd毎に、光ファイバーの長さが異なっている。」 エ「【0027】 導光部10は、照射部PEが有する照射面PEa、PEb、PEc、PEdが、上方Uから下方Dに向かって、この順に表示面3PEからの距離が遠くなっている。したがって、照射面PEa、PEb、PEc、PEdの順に、図1に示すミラー4までの光路長は長くなる。その結果、導光部10は、図1に示す光路K2の光路長k2を、光路C2の光路長c2と比べて光路J2の光路長j2よりも短くすることができるので、導光部10を備える表示装置1は、虚像PGを、路面と平行に近い状態又は平行に表示することができる。例えば、導光部10を備える表示装置1は、図7に示すように、運転者DRに近い手前側から離れるにしたがって、表示される画像の大きさが小さくなる、略台形形状の虚像PGを表示することができる。このように、導光部10を備えた表示装置1は、路面上に適切に虚像を表示することができる。」 オ 上記ウ及びエ並びに図1及び図3からみて、導光部材10a、10b、10c、10dは、表示パネル3から出射した光の光路長を調整するものといえる。 カ 上記ウ及びエ並びに図1及び図3からみて、導光部材10a、10b、10c、10dは、フロントウインドウWまでの距離に応じて、画像Pに対応するそれぞれの光について光路長を相違させるものといえる。 キ 上記イ及び図5からみて、画像Pは複数の画像Pであるといえる。 以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ミラー4に光を投射して、虚像PGにより運転者に情報を表示する表示装置において、 複数の画像Pに対応する前記光を出射して、フロントウインドウWに複数の虚像PGを表示する表示パネル3と、 前記表示パネル3と運転者DRとの間の光路中に配置されて、前記表示パネル3から出射した光の光路長を調整する複数の導光部材10a、10b、10c、10dとを有し、 前記複数の導光部材10a、10b、10c、10dは、フロントウインドウWまでの距離に応じて、前記複数の画像Pに対応するそれぞれの前記光について光路長を相違させる表示装置。」 (2)引用文献2 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献2(特開2012-163705号公報)には、図面(特に、図1、図3、図4及び図6参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア「【0040】 画像生成部30は、ドットマトリクス方式の液晶パネル30aを有している。液晶パネル30aは、長手方向を有する板状である。液晶パネル30aは、表示画面の板面方向に沿って配列された複数の画素を制御することにより、情報表示像11の表示態様に対応する表示画像31を透過部分として形成する。液晶パネル30aは、液晶パネル照明部20から放出された光を表示画像31に透過させることにより、情報表示像11として結像される光を生成する。液晶パネル30aの板厚方向は、第一レンズ23及び第二レンズ24の光軸OA1,OA2に対して、僅かに傾斜している。尚、第一レンズ23及び第二レンズ24の光軸OA1,OA2に沿う方向であって、表示画像31を透過する光の進行方向を、以下、透過方向TD1という。」 イ「【0055】 インジケータフィルム50は、透過方向TD1と直交する方向において画像生成部30と並列に配置されている。インジケータフィルム50は、インナーケース60によって保持されている。インジケータフィルム50は、液晶パネル30aの長手方向の外縁に沿って帯状に延伸している。インジケータフィルム50は、透光性の樹脂材料によって形成された薄板状の部材である。インジケータフィルム50には、印刷等によって、橙色光透過部51が形成されている。 【0056】 橙色光透過部51は、インジケータ表示像13の表示色及び形状等の表示態様に対応している。橙色光透過部51における光の透過率は、液晶パネル30aに形成される表示画像31の光の透過率よりも高い。具体的に、橙色光透過部51は、黒色の遮光性の印刷と、オレンジ色として視認される周波数帯の光を主に透過させる透光性の印刷とをインジケータフィルム50の基材に施すことにより、形成されている。橙色光透過部51を形成している印刷は、延伸方向に沿って中央部から両端部に向かうに従い、オレンジ色から黒色に徐々に変化している。これにより、水平方向の中央部から両端部に向かって次第に輝度の漸減するグラデーションを有するインジケータ表示像13(図2(a)等参照)が結像される。 【0057】 インジケータフィルム50は、発光ダイオード41から放出され、導光プリズム42によって導光された光を、橙色光透過部51に透過させる。橙色光透過部51を透過する光の透過方向TD2は、画像生成部30の透過方向TD1に沿っている。以上のようにして、インジケータフィルム50は、インジケータ表示像13として結像される光を、インジケータ表示像13の表示態様に対応するように生成する。」 ウ「【0063】 ここまで説明した本実施形態によれば、ウィンドシールド90から情報表示像11までの光路の距離LP1(図3 実線の矢印を参照)は、ウィンドシールド90から、凹面鏡76及び平面鏡78を経て、画像生成部30までの距離に一致する。また、ウィンドシールド90からインジケータ表示像13までの光路の距離LP2(図3 破線の矢印を参照)は、ウィンドシールド90から、凹面鏡76及び平面鏡78を経て、インジケータフィルム50までの距離に一致する。画像生成部30及びインジケータフィルム50から出射された光が互いに実質的に同一の光路を経ることにより、光路の距離LP1と光路の距離LP2との差は、低減される。以上により、情報表示像11及びインジケータ表示像13を視認する視認者は、少ない視点移動によって、これら情報表示像11及びインジケータ表示像13を知覚することができる。」 エ 上記ア、イ及び図1からみて、情報表示像11とインジゲータ表示像13はウィンドシールド90内の異なる表示面に表示されているといえる。 オ 上記ア及びイ並びに図3、図4及び図6からみて、液晶パネル30aからウィンドシールド90にいたる光の進行方向である透過方向TD1の距離と、インジケータフィルム50からウィンドシールド90にいたる光の進行方向である透過方向TD2の距離は相違するといえる。 以上から、上記引用文献2には次の技術が記載されていると認められる。 「情報表示像11の表示面に情報表示像11を表示するとともに、インジゲータ表示像13の表示面にインジゲータ表示像13を表示し、ウィンドシールド90から液晶パネル30aまでの透過方向TD1の距離とウィンドシールド90からインジケータフィルム50までの透過方向TD2の距離が相違する技術。」 (3)引用文献3 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献3(特開2012-179935号公報)の段落【0038】ないし段落【0042】及び図2の記載からみて、当該引用文献3には、「虚像の表示面を基準面(水平面)に対し略垂直とする技術」が記載されていると認められる。 (4)引用文献4 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献4(特開2004-168230号公報)の段落【0008】ないし段落【0011】及び図2の記載からみて、当該引用文献4には、「虚像の表示面を基準面(水平面)に対し略垂直とする技術」が記載されていると認められる。 (5)引用文献5 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献5(特開2012-35784号公報)の段落【0027】ないし段落【0034】並びに図5及び図7の記載からみて、当該引用文献5には、「リスト41は、垂直方向に立ち上がって表示する技術」が記載されていると認められる。 (6)引用文献6 平成30年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された引用文献6(特開2009-126249号公報)の段落【0027】ないし段落【0032】及び図1ないし図4の記載からみて、当該引用文献6には、「上部21uから車両前方Fr手前に相当する下部21dに向けて画像の濃度が薄くなるように描画される技術」が記載されていると認められる。 2 対比・判断 (1)本願発明1 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「ミラー4」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「反射部材」に相当し、以下同様に、「光」は「表示光」に、「虚像PG」は「虚像」に、「表示装置」は「ヘッドアップディスプレイ装置」に、「表示パネル3」は「表示装置」に、「運転者DR」は「運転者のアイポイント」に、「複数の導光部材10a、10b、10c、10d」は「複数の光路長調整手段」にそれぞれ相当する。 そして、後者の「複数の画像Pに対応する前記光を出射して、フロントウインドウWに複数の虚像PGを表示する表示パネル3」と前者の「第1表示画像及び複数の第2表示画像に対応する前記表示光を出射して、第1表示面に前記第1表示画像の虚像を表示するとともに、それぞれが前記第1表示面よりも運転者側に存在する複数の第2表示面に複数の第2表示画像の虚像を表示する表示装置」とは、「複数の表示画像に対応する前記表示光を出射して、複数の表示面に複数の表示画像の虚像を表示する表示装置」という限りで一致する。 同様に、後者の「複数の導光部材10a、10b、10c、10dは、フロントウインドウWまでの距離に応じて、前記複数の画像Pに対応するそれぞれの前記光について光路長を相違させる」と前者の「複数の光路長調整手段は、前記第1表示面及び前記複数の第2表示面までの距離に応じて、前記第1表示画像及び前記複数の第2表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させる」とは、「複数の光路長調整手段は、前記複数の表示面までの距離に応じて、複数の表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させる」という限りで一致する。 したがって、両者は、 「反射部材に表示光を投射して、虚像により運転者に情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置において、 複数の表示画像に対応する前記表示光を出射して、複数の表示面に複数の表示画像の虚像を表示する表示装置と、 前記表示装置と前記運転者のアイポイントとの間の光路中に配置されて、前記表示装置から出射した表示光の光路長を調整する複数の光路長調整手段と、を有し、 前記複数の光路長調整手段は、前記複数の表示面までの距離に応じて、前記複数の表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させるヘッドアップディスプレイ装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 前者の表示装置は「第1表示画像及び複数の第2表示画像に対応する前記表示光を出射して、第1表示面に前記第1表示画像の虚像を表示するとともに、それぞれが前記第1表示面よりも運転者側に存在する複数の第2表示面に複数の第2表示画像の虚像を表示する」ものであり、さらに「前記第1表示面は、水平面となる基準面に対して垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記第1表示画像の虚像が視認される面であり、前記複数の第2表示面は、それぞれが前記基準面に垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記複数の第2表示画像の虚像が視認される面であり、前記運転者の前後方向に沿って階層的に並んでおり、前記第1表示画像は、当該第1表示画像単独で所定の情報を表示し、前記複数の第2表示画像は、当該複数の第2表示画像を組み合わせることにより所定の情報を表示」するのに対し、後者の表示パネル3はかかる構成を備えていない点。 [相違点2] 前者の複数の光路長調整手段は、「前記第1表示面及び前記複数の第2表示面までの距離に応じて、前記第1表示画像及び前記複数の第2表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させる」のに対し、後者の「複数の導光部材10a、10b、10c、10d」は、かかる構成を備えていない点。 相違点1について検討する。 引用文献2記載の技術は、「情報表示像11の表示面に情報表示像11を表示するとともに、インジゲータ表示像13の表示面にインジゲータ表示像13を表示し、ウィンドシールド90から液晶パネル30aまでの透過方向TD1の距離とウィンドシールド90からインジケータフィルム50までの透過方向TD2の距離が相違する技術。」である。 本願発明1と引用文献2記載の技術とを対比すると、後者の「情報表示像11」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「第1表示画像」に相当し、以下同様に、「情報表示像11の表示面」は「第1表示面」に、「インジゲータ表示像13」は「第2表示画像」に、「インジゲータ表示像13の表示面」は「第2表示面」に相当する。 また、後者の「ウィンドシールド90から液晶パネル30aまでの透過方向TD1の距離とウィンドシールド90からインジケータフィルム50までの透過方向TD2の距離が相違する」ことと、前者の「第1表示面及び複数の第2表示面までの距離に応じて、第1表示画像及び複数の第2表示画像に対応するそれぞれの前記表示光について光路長を相違させること」とは、「第1表示面及び第2表示面までの距離に応じて、第1表示画像及び第2表示画像に対応するそれぞれの表示光について光路長を相違させること」という限りで一致する。 そして、引用文献2記載の技術を本願発明の用語を用い整理すると、引用文献2記載の技術は、以下の事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)ということができる。 「第1表示面に第1の表示画像を表示するとともに、第2の表示面に第2の表示画像を表示し、第1表示面及び第2表示面までの距離に応じて、第1表示画像及び第2表示画像に対応するそれぞれの表示光について光路長を相違させる技術。」 してみると、引用文献2記載の技術事項は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における、「第1表示面に第1の表示画像を備えるものの、第2の表示面に第2の表示画像を表示」する事項を備えるものの、「複数の」第2の表示面及び「複数の」第2の表示画像を備えず、さらに、「前記第1表示面は、水平面となる基準面に対して垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記第1表示画像の虚像が視認される面であり、前記複数の第2表示面は、それぞれが前記基準面に垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記複数の第2表示画像の虚像が視認される面であり、前記運転者の前後方向に沿って階層的に並んでおり、前記第1表示画像は、当該第1表示画像単独で所定の情報を表示し、前記複数の第2表示画像は、当該複数の第2表示画像を組み合わせることにより所定の情報を表示」する事項を備えていない。 そうすると、このような本願発明1の発明特定事項を全て備えていない引用文献2記載の技術事項を引用発明に適用しても、上記相違点1にかかる本願発明1の発明特定事項にはならない。 したがって、引用発明及び引用文献2記載の技術事項を総合しても、上記相違点1にかかる本願発明1の発明特定事項を容易になし得ることはできない。 また、引用文献3記載の技術ないし引用文献6記載の技術においても、相違点1にかかる本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。 したがって、相違点2の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術事項、又は引用発明及び引用文献2記載の技術ないし引用文献6記載の技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)本願発明2及び本願発明3について 本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本願発明2及び本願発明3は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載の技術事項、又は引用発明及び引用文献2記載の技術ないし引用文献6記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断 平成30年6月13日の手続補正により、特許法第36条第6項第1号の拒絶の理由の対象であった補正前の請求項2が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 特許法第36条第6項第2号(明確性)の判断 平成30年6月13日の手続補正により、請求項1の「第1の表示画像、「複数の第2の表示画像」、「第1表示面」及び「第2表示面」について、「第1表示面に前記第1表示画像の虚像を表示するとともに、それぞれが前記第1表示面よりも運転者側に存在する複数の第2表示面に複数の第2表示画像の虚像を表示する」、及び「前記第1表示面は、水平面となる基準面に対して垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記第1表示画像の虚像が視認される面であり、前記複数の第2表示面は、それぞれが前記基準面に垂直で、かつ当該基準面に沿って表示される前記複数の第2表示画像の虚像が視認される面であり、前記運転者の前後方向に沿って階層的に並んでおり、前記第1表示画像は、当該第1表示画像単独で所定の情報を表示し、前記複数の第2表示画像は、当該複数の第2表示画像を組み合わせることにより所定の情報を表示」と補正された結果、「第1の表示画像」と「複数の第2の表示画像」の機能の相違、及び「第1表示面」と「第2表示面」が意図するもの、特に「第1表示面」及び「第2表示面」と「虚像」との関係が明確になったので、この拒絶の理由は解消した。 第8 原査定についての判断 平成30年6月13日の補正により、補正後の請求項1ないし3は、第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点1にかかる技術的事項を有するものとなった。当該第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点1にかかる技術的事項は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献3)、引用文献B(当審拒絶理由における引用文献4)、引用文献C及び引用文献Dには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1ないし3は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしDに基いて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第9 むすび 以上のとおり、当審が通知した理由及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-013552

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