特許拒絶査定不服審判
2017-012678
半導体装置の製造方法
- 審判番号
- 2017-012678
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-519032外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月28日
- 審決日
- 2018年12月25日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .113-WY (H01L) / P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-519032「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日国際公開,WO2015/173906,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2014年5月14日を国際出願日とする出願であって,平成29年1月30日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年3月22日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成29年5月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年9月13日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成30年11月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-8に係る発明は,以下の引用文献A-Dに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開平5-198707号公報
B.特開2014-36046号公報
C.特開昭62-150755号公報
D.特開平8-37270号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-8に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるか,あるいは,以下の引用文献1-5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,あるいは,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭58―138039号公報
2.特開平5-198707号公報(拒絶査定時の引用文献A)
3.特開平8-37270号公報(拒絶査定時の引用文献D)
4.特開2006-313801号公報
5.特開2012-28512号公報
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成30年11月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
(a)半導体素子(6a)が搭載されたダイパッド(4a)を有するリードフレーム(4)を準備する工程と,
(b)金型(9)内の底面において,破砕状の第1樹脂(7)を配置する工程と,
(c)破砕状の前記第1樹脂(7)が前記ダイパッド(4a)の下側に接触するように,前記リードフレーム(4)を前記金型(9)内に配置する工程と,
(d)前記金型(9)内において破砕状の前記第1樹脂(7)の上側に液状の第2樹脂(8)を充填する工程と,
(e)破砕状の前記第1樹脂(7)および前記第2樹脂(8)を硬化させることで成型する工程と,
を備える,半導体装置の製造方法。」
なお,本願発明2-6は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明7は,本願発明1の「リードフレーム(4)」を,「複数の半導体素子(6a)が搭載された個片化される前の絶縁基板(14)」に置き換えて更に減縮した発明である。
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
(1)当審拒絶理由で引用した引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「2. 特許請求の範囲
(1) 金型のキヤビテイに半導体装置の放熱板裏面を押圧してキヤビテイに溶融樹脂を注入する樹脂モールド工程において,前記キヤビテイの内面と放熱板裏面の間に予め樹脂パウダーを介在させておいて樹脂注入を行うようにしたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。」(第1ページ左列第4行目―第11行目)
「上記半導体装置の製造作業は第4図に示すように複数の半導体装置における放熱板(1)(1)・・・とリード(2)(2)・・・をタイバー(6)で一連一体化したリードフレーム(7)を使つて半導体ペレット(3)(3)・・・のマウント及び金属細線(4)(4)・・・のボンディングが行われ,・・・」(第1ページ右列第13行目―第18行目)
「・・・。ところが,このような製法は放熱板の反りなどの若干の機械的精度のバラツキや,放熱板が金型の爪片に安定した一定の状態で乗り難いことがあつて,放熱板の裏面に形成される樹脂膜の厚さが不均一になつてピンホールができ,絶縁不良をきたすことがある。尚,前記樹脂膜を厚く形成するようにすればピンホールによる絶縁不良は無くなるが,反面放熱板の放熱性が悪くなり,特性に影響が出て好ましくない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,放熱板の裏面に薄い等厚の樹脂膜を通常の金型を使つて簡単に形成し得る方法を提供する。」(第2ページ右上列第19行目―左下列第12行目)
「本発明の特徴は放熱板の裏面を露出させて外装樹脂材をモールド形成する金型のキヤビテイと放熱板の間に予め樹脂パウダーを介在させておいて,キヤビテイに溶融樹脂を注入することである。前記樹脂パウダーの介在手段はリードフレームが装着される側の金型のキヤビテイに樹脂パウダーを予め散布しておくことにより,或は金型に入れる側のリードフレームの放熱板裏面に樹脂パウダーを予め付着させておくことにより行われる。以下,本発明を図面の実施例でもつて説明する。
例えば,本発明を第4図及び第5図に示したリードフレーム(7)と金型(8)(9)を使つた製造方法で説明すると,先ず第6図に示すように下金型(8)の各キヤビテイ(10)(10)・・・の底面にエポキシ樹脂等の樹脂パウダー(11)(11)・・・を定量ずつ散布する。・・・」(第2ページ左下列第13行目―右下列第9行目)
「・・・。次に下金型(9)の各キヤビテイ(10)(10)・・・の底面に散布した樹脂パウダー(11)(11)・・・上に第7図に示すようにリードフレーム(7)の各放熱板(1)(1)・・・の裏面を乗せてリードフレーム(7)を装着し,その後下金型(9)と上金型(8)でリードフレーム(7)を挟持して型締めを行う。而して,上下両金型(8)(9)を内蔵ヒータ(図示せず)で樹脂融点に近い温度(約150~160℃)に加熱した状態でキヤビテイ(10)(10)・・・に溶融樹脂を注入して樹脂モールド成形を行う。すると第8図に示すように,キヤビテイ(10)(10)・・・に注入された溶融樹脂で外装樹脂材(5)(5)・・・が形成される一方で,予め散布された樹脂パウダー(11)(11)・・・が下金型(9)の熱で溶融して放熱板(1)(1)・・・の裏面全域に等厚の樹脂膜(12)(12)・・・となつて固着する。」(第2ページ右下列第13行目―第3ページ左上列第8行目)
(2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は,放熱板の裏面に薄い等厚の樹脂膜を通常の金型により形成する樹脂封止型半導体装置の製造方法に関する。(第1ページ左列第4行目―第11行目,第2ページ右上列第19行目―左下列第12行目)
イ 放熱板(1)(1)・・・とリード(2)(2)・・・をタイバー(6)で一連一体化したリードフレーム(7)を使つて半導体ペレット(3)(3)・・・のマウント及び金属細線(4)(4)・・・のボンディングが行われる。(第1ページ右列第13行目―第18行目)
ウ 下金型(9)の各キヤビテイ(10)(10)・・・の底面にエポキシ樹脂等の樹脂パウダー(11)(11)を散布する。(第2ページ左下列第13行目―右下列第9行目)
エ 下金型(9)の各キヤビテイ(10)(10)・・・の底面に散布した樹脂パウダー(11)(11)・・・上にリードフレーム(7)の各放熱板(1)(1)・・・の裏面を乗せてリードフレーム(7)を装着する。(第2ページ右下列第13行目―第3ページ左上列第8行目)
オ その後,下金型(9)と上金型(8)でリードフレーム(7)を挟持して型締めを行い,上下両金型(8)(9)を加熱した状態でキヤビテイ(10)(10)・・・に溶融樹脂を注入して樹脂モールド成形を行う。(第2ページ右下列第13行目―第3ページ左上列第8行目)
カ キヤビテイ(10)(10)・・・に注入された溶融樹脂で外装樹脂材(5)(5)・・・が形成され,予め散布された樹脂パウダー(11)(11)・・・が下金型(9)の熱で溶融して放熱板(1)(1)・・・の裏面全域に等厚の樹脂膜(12)(12)・・・となつて固着する。(第2ページ右下列第13行目―第3ページ左上列第8行目)
キ さらに,引用文献1の第4図から,「半導体ペレット(3)」は,「リードフレーム(7)」と一連一体で構成されている「放熱板(1)」にマウントされていることを見て取ることができる。
(3)したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ペレットを,放熱板とリードをタイバーで一連一体化したリードフレームにおける放熱板にマウントを行い,
下金型の各キヤビテイの底面に樹脂パウダーを散布し,
下金型の各キヤビテイの底面に散布した樹脂パウダー上にリードフレームの各放熱板の裏面を乗せてリードフレームを装着し,
下金型と上金型でリードフレームを挟持して型締めを行い,上下両金型を加熱した状態でキヤビテイに溶融樹脂を注入し,
キヤビテイに注入された溶融樹脂で外装樹脂材が形成され,予め散布された樹脂パウダーが下金型の熱で溶融して放熱板の裏面全域に等厚の樹脂膜となつて固着する,
半導体装置の製造方法。」
2.引用文献2-5について
(1)当審拒絶理由で引用した引用文献2の図面には,樹脂封止型半導体装置の製造方法において,サイドゲートを備えた金型を用いることが記載されており,このような構造を備えた金型を用いた半導体装置の製造方法は周知であると認められる。
(2)当審拒絶理由で引用した引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 タブおよびこのタブに搭載された半導体チップの全体を覆うモールド樹脂を有する半導体装置であって,タブの周辺部にタブ固定エリアが設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 タブおよびこのタブに搭載された半導体チップの全体を覆うモールド樹脂を有する半導体装置であって,タブとタブ吊りリードの接続部に幅広のタブ固定エリアが設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】 タブおよびこのタブに搭載された半導体チップを金型内で樹脂封止するに際し,上記タブの複数個所を上側固定ピンと下側固定ピンにより上下両方向から定位置に挟持させ,この状態にて金型内への樹脂注入を行い,注入した樹脂が硬化する直前に上記固定ピンを抜くことにより,トランスファーモールド・パッケージ構造を形成することを特徴とする半導体装置製造方法。」
イ そして,引用文献3の上記「固定ピン」は,金型内への樹脂注入を行う際には,タブの複数個所を定位置に挟持し,注入した樹脂が硬化する直前には抜かれるものであるから,「可動」する「ピン」であるといえる。すなわち,前記記載から,樹脂封止型半導体装置の製造方法において,可動ピンを用いることは周知であると認められる。
(3)当審拒絶理由で引用した引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0032】
また,多数個取りの配線基板に対し一つのキャビティを用いて一括モールドし,その後ダイシング等の手法で個片化する方法も実用化されている。そうしたモールド方法にも本発明は適用できる。」
「【0038】
図4は実施の形態2において製造された半導体装置の構造を説明する図であり,図4(a)は半導体装置を透過的にみた上面図,図4(b)はその断面図,図4(c)は下面図である。この構造は,例えば,カードタイプの半導体装置等に用いられる。図5は実施の形態2における半導体装置のモールド方法を説明する工程断面図である。
【0039】
配線基板11にはその上面端部に外部との接続端子となる電極11bを設けており,下面端部には抵抗,コンデンサ,インダクタ等のチップ部品9を搭載している。電極11bは配線パターン11aと導通しており,また,チップ部品9は配線パターン11cと導通している。この配線パターン11aと電極11bとは必要に応じてスルーホール(図示せず)を通じて導通してもよい。尚,ここでチップ部品9はカード等の用途,構成の設計によって必要なければ搭載しなくても良いし,この領域に上面と同様に電極を設けても構わない。
【0040】
配線基板11にはその上面に第1の半導体チップ21,第2の半導体チップ22が搭載され,その下面には第3の半導体チップ23,第4の半導体チップ24が搭載されている。それら半導体チップの具体的な機能としては,例えば,第1の半導体チップ21および第3の半導体チップ23がメモリー,第2の半導体チップ22および第4の半導体チップ24がそのコントローラといった構成が考えられる。
【0041】
それら半導体チップ21,22,23,24はワイヤー3によって配線基板11のボンディングパッド(図示せず)と電気的に接続されており,さらに,それらを外部環境から保護するようモールド樹脂4が配線基板11の両面に成形されている。ボンディングパッドは,配線パターン11a,下面の配線パターン11cと一体に形成されている。尚,半導体チップ21,22,23,24と配線基板11とを電気的に接続する方法は,ワイヤー3に替えてバンプを用いたフリップチップ接続であっても構わない。
【0042】
配線パターン11aおよび11cは,それぞれモールド樹脂4の周縁部における配線パターンの配置領域Aに集中して配置されており,この配線パターンの配置領域Aを跨いでモールド樹脂4の内部と外部と電気的に接続している。
【0043】
本発明によれば,本半導体装置をモールドするにあたり,この配線パターンの配置領域Aにモールド金型の切欠き部を設けることで,配線パターン11a,11cに起因する配線基板11表面の凸形状にモールド金型が接触するのを防止し,かつ配線パターン11a,11cの無い平坦な領域をモールド金型が把持することができる。その結果,配線基板11表面の凹凸の段差起因による樹脂漏れや凸形状部への応力集中による配線基板11の破損を防止することが出来る。
【0044】
尚,ここでの配線パターンの配置領域Aは図4で示した3箇所に特に限定されず,モールド樹脂4の流動状態または配線基板11の設計上の観点から最適な形状で設けて構わない。
【0045】
本実施の形態でのモールド方法を図5(a)~(e)に示す。以下,図5(a)~(e)の順で作業の流れを順番に説明する。
まず,図5(a)に上部モールド金型6と下部モールド金型7との間にモールド対象品とタブレット状のモールド樹脂4とをセットする前段階の状態を示す。上部モールド金型6には半導体チップ21,22が収まるキャビティ6bとモールド樹脂4を溶融するカル部6cおよびカル部6cからキャビティ6bまでモールド樹脂4を誘導する通路となるランナー部6dが設けられている。下部モールド金型7には半導体チップ23,24が収まるキャビティ7b,チップ部品9が収まる逃げ部7dが設けられている。ポット部7aやプランジャー8は実施の形態1と同様である。上部モールド金型6と下部モールド金型7およびプランジャー8は通常160℃~190℃程度の温度に保たれており,この熱によってモールド樹脂4が溶融し,また硬化する。
【0046】
次に,図5(b)に示すのは,配線基板11が上部モールド金型6と下部モールド金型7との間に把持され,タブレット状のモールド樹脂4がポット部7aに投入された状態である。ここで,タブレット状のモールド樹脂4は熱により溶融し始める。
【0047】
次に,図5(c)に示すのは,プランジャー8が上昇して溶融したモールド樹脂4がカル部6c,ランナー部6dへと移送され,最終的にキャビティ6bおよびキャビティ7bに充填された状態である。上部モールド金型6のランナー6dから下部モールド金型7のキャビティ7bにモールド樹脂4を移送するには,配線基板11にモールド樹脂4が通過する開口部(図示せず)を設けることで実現する。必要に応じて,下部モールド型7にランナー部を設けても構わない。
【0048】
キャビティ6bおよび7bには,図4で示した配線パターンの配置領域Aに相当する位置に切欠き部6aおよび7cを設けている。切欠き部6aに配線パターン11aを配置し,切欠き部7cに配線パターン11cを配置した配線基板11を用いることで,実施の形態1と同様に樹脂漏れや配線基板11の破損を防止できる。また,切欠き部6aおよび7cはエアベントとして機能することでモールド樹脂4内部のボイドや未充填を抑制し,品質上きわめて有用である。
次に,図5(d)にモールドされた半導体装置を取り出した状態を示す。ここで,モールド樹脂4はカル部6cとランナー部6dとキャビティ部6bが一体化しているため,これら不要の部分を除去することで,最終的に図5(e)に示すモールドを終えた半導体装置を得る。これを筐体に収め,封着することで本半導体装置はそのままカードとして最終製品となる。
【0049】
尚,本実施の形態においても実施の形態1と同じく多数個取りの配線基板や複数枚取りのモールド金型,一括モールド法,リリースフィルムモールド法を適用可能である。
また,本実施の形態において配線基板11には半導体チップを4個搭載していたが,これは半導体装置の内部構成によってもっと多数の半導体チップを平置きまたは積層して搭載しても構わない。もちろん必要に応じてモールド樹脂4の内部にチップ抵抗器等の電子部品を搭載しても構わない。
【0050】
また,本実施の形態において配線基板11は両面基板であったが,これは多層基板であっても構わない。」
イ そして,上記記載から,多数個取りの配線基板に対し一つのキャビティを用いて一括モールドし,その後ダイシング等の手法で個片化する方法は周知であると認められる。
(4)当審拒絶理由で引用した引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0032】
上記した第1封止樹脂18および第2封止樹脂20は,エポキシ樹脂等の樹脂材料,フィラーおよび硬化促進剤等の混合物である。ここで,第1封止樹脂18と第2封止樹脂20とは同じ材料から構成されても良いし,異なる材料から構成されても良い。
【0033】
例えば,第2封止樹脂20に含まれるフィラーの量を,第1封止樹脂18に含まれるフィラーの量よりも多くしても良い。第2封止樹脂20が大量のフィラーを含むことにより,第2封止樹脂20の熱抵抗が低くなる。従って,半導体素子28等の回路素子が動作することにより発生した熱が,回路基板14および第2封止樹脂20を経由して良好に外部に放出される。一方,第1封止樹脂18に含まれるフィラーの量を少なくすることにより,樹脂注入の際に硬いフィラーが回路素子や金属細線34に衝突する頻度が少なくなるので,樹脂封止の工程に於ける回路素子の損傷が抑制される。
【0034】
また,第1封止樹脂18に含まれるフィラーの種類と,第2封止樹脂20に含まれるフィラーの種類を異ならせても良い。例えば,第2封止樹脂20に含まれるフィラーとしてアルミナ(Al2O3)を採用し,第1封止樹脂18に含まれるフィラーとしてシリカ(SiO2)を採用しても良い。第2封止樹脂20に含まれるフィラーとして熱伝導性に優れるアルミナを採用することにより,第2封止樹脂20を経由した放熱の効果が向上される。更に,耐湿性に優れるシリカを,第1封止樹脂18に含まれるフィラーとして採用することにより,第1封止樹脂18を経由して外部から水分が侵入することが抑制されるので,第1封止樹脂18により封止される回路素子のショートが防止される。
【0035】
更にまた,両樹脂に含まれるフィラーの形状を異ならせても良い。具体的には,球状の形状を呈するフィラーを第1封止樹脂18に充填し,破砕形状を呈するフィラーを第2封止樹脂20に充填する。第1封止樹脂18に含まれるフィラーの形状を球形状とすることにより,射出成形の工程で第1封止樹脂18に含まれるフィラーが回路素子に接触しても,回路素子に傷がつくことが抑制される。更に,第2封止樹脂20に含まれるフィラーを破砕形状とすることにより,フィラーの表面と樹脂成分とが接触する面積が増大するので,フィラーを経由した熱の伝導が良好と成る。
【0036】
更に,第2封止樹脂20を構成する樹脂材料に含まれる硬化促進剤の量を,第1封止樹脂18を構成する樹脂材料に含まれる硬化促進剤より少なくしても良い。このようにすることで,第2封止樹脂20の効果に必要とされる硬化時間が長くなり,樹脂封止の工程にて第1封止樹脂18と第2封止樹脂20とが両者の境界で混合させる。この結果,両樹脂の界面での耐圧性および耐湿性の劣化が抑制される。この事項は,図5を参照して後述する。
【0037】
ここで,第1封止樹脂18と第2封止樹脂20との境界は,回路基板14の側面を被覆する部分に位置している。両者の境界部分は封止樹脂16の他の部分と比較すると,耐圧性および耐湿性に若干劣る。従って,この境界部分を回路基板14の下面に配置すること,封止樹脂16の下面がヒートシンクに密着した場合,境界部分を経由して回路基板14とヒートシンクとがショートする恐れがある。一方,回路基板14の側面は外部と接触する場合が少ないので,ショートする危険性が小さい。」
イ そして,上記記載から,「第1封止樹脂」と「第2封止樹脂」の特性を,必要に応じて選択することは適宜なし得たことであると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「半導体ペレット」は,本願発明1の「半導体素子」に相当し,また,前記「半導体ペレット」は,リードフレームと一連一体化した放熱板にマウントされるから,引用発明の「放熱板」,「リードフレーム」は,それぞれ,本願発明1の「ダイパッド」,「リードフレーム」に相当する。
そうすると,引用発明の「半導体ペレットを,放熱板とリードをタイバーで一連一体化したリードフレームにおける放熱板にマウントを行い」は,本願発明1の「(a)半導体素子が搭載されたダイパッドを有するリードフレームを準備する工程」に相当する。
イ 引用発明の「下金型」と「上金型」で構成される金型は,本願発明1の「金型」に相当する。
また,引用発明の「キヤビテイ」は,本願発明1の「金型内」に相当する。
さらに,引用発明の「パウダー」と,本願発明1の「破砕状の第1樹脂」とは,「粒状」である点で一致する。
しかも,引用発明の「樹脂パウダー」は,下金型の各キヤビテイの底面に配置されるから,本願発明1の「第1樹脂」に相当する。
そうすると,引用発明の「下金型の各キヤビテイの底面に樹脂パウダーを散布し」は,本願発明1の「『金型内の底面において』,『第1樹脂を配置する工程』」に相当する。
ウ 引用発明は,「樹脂パウダー」上に「放熱板」の裏面を乗せて「下金型」に「リードフレーム」を装着するものであるから,引用発明の「樹脂パウダー」は「放熱板」の下側に接触していることは明らかである。
そうすると,引用発明の「下金型の各キヤビテイの底面に散布した樹脂パウダー上にリードフレームの各放熱板の裏面を乗せてリードフレームを装着し」は,本願発明1の「前記第1樹脂が前記ダイパッドの下側に接触するように,前記リードフレームを前記金型内に配置する工程』」に相当する。
エ 引用発明においては,キヤビテイに溶融樹脂を注入するのであるから,キヤビテイに注入された時点において,樹脂は,溶融状態,すなわち液状であると認められる。
すなわち,引用発明の「溶融樹脂」は,本願発明1の「液状の第2樹脂」に相当する。
そうすると,引用発明の「下金型と上金型でリードフレームを挟持して型締めを行い,上下両金型を加熱した状態でキヤビテイに溶融樹脂を注入し」は,本願発明1の「『前記金型内において』『前記第1樹脂の上側に液状の第2樹脂を充填する工程」に相当する。
オ 引用発明において,「溶融樹脂」から「外装樹脂材」が形成され,「樹脂パウダー」が「樹脂膜」となり固着されるから,引用発明の「キヤビテイに注入された溶融樹脂で外装樹脂材が形成され,予め散布された樹脂パウダーが下金型の熱で溶融して放熱板の裏面全域に等厚の樹脂膜となつて固着する」は,本願発明1の「前記第1樹脂および前記第2樹脂を硬化させることで成型する工程」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「(a)半導体素子が搭載されたダイパッドを有するリードフレームを準備する工程と,
(b)金型内の底面において,第1樹脂を配置する工程と,
(c)前記第1樹脂が前記ダイパッドの下側に接触するように,前記リードフレームを前記金型内に配置する工程と,
(d)前記金型内において前記第1樹脂の上側に液状の第2樹脂を充填する工程と,
(e)前記第1樹脂および前記第2樹脂を硬化させることで成型する工程と,
を備える,半導体装置の製造方法。」
<相違点>
本願発明1は,金型内の底面において配置する第1樹脂が「破砕状」であり,「破砕状」の前記第1樹脂が前記ダイパッドの下側に接触するように,前記リードフレームが前記金型内に配置され,前記金型内において液状の第2樹脂が,充填されるのが「破砕状」の前記第1樹脂の上側であり,さらに,硬化させることで成型する工程において,「破砕状」の前記第1樹脂が硬化するものであるのに対して,引用発明では,下金型の各キヤビテイの底面に散布されるのは「樹脂パウダー」であり,リードフレームの各放熱板の裏面は「樹脂パウダー」上に装着されるものであって,型締め後にキヤビテイに溶融樹脂を注入する時点での前記「樹脂パウダー」の形状,及び,予め散布された樹脂パウダーが下金型の熱で溶融して放熱板の裏面全域に等厚の樹脂膜となつて固着する際の前記「樹脂パウダー」の形状が明らかでない点。
(2)相違点についての判断
相違点に係る本願発明1の,金型内の底面において配置する第1樹脂が「破砕状」であり,「破砕状」の前記第1樹脂が前記ダイパッドの下側に接触するように,前記リードフレームが前記金型内に配置され,前記金型内において液状の第2樹脂が,充填されるのが「破砕状」の前記第1樹脂の上側であり,さらに,硬化させることで成型する工程において,「破砕状」の前記第1樹脂が硬化するものであるのという構成は,上記引用文献1-5には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,本願発明1は,引用文献1に記載された発明ではなく,さらに,当業者であっても引用発明,引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-7について
本願発明2-7も,本願発明1の,金型内の底面において配置する第1樹脂が「破砕状」であり,前記金型内において液状の第2樹脂が充填されるのが「破砕状」の前記第1樹脂の上側であり,さらに,硬化させることで成型する工程において「破砕状」の前記第1樹脂が硬化するものであるとする構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,本願発明2-7は,引用文献1に記載された発明ではなく,さらに,当業者であっても,引用発明,引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
平成30年11月14日付けの補正により,補正後の請求項1-7は,金型内の底面において配置する第1樹脂が「破砕状」であり,「破砕状」の前記第1樹脂がダイパッド又は複数の半導体素子が搭載された個片化される前の絶縁基板の下側に接触するように,前記リードフレーム又は複数の半導体素子が搭載された個片化される前の絶縁基板が前記金型内に配置され,前記金型内において液状の第2樹脂が,充填されるのが「破砕状」の前記第1樹脂の上側であり,さらに,硬化させることで成型する工程において,「破砕状」の前記第1樹脂が硬化するという技術的事項を有するものとなった。そして,当該金型内の底面において配置する第1樹脂が「破砕状」であり,「破砕状」の前記第1樹脂がダイパッド又は複数の半導体素子が搭載された個片化される前の絶縁基板の下側に接触するように,前記リードフレーム又は複数の半導体素子が搭載された個片化される前の絶縁基板が前記金型内に配置され,前記金型内において液状の第2樹脂が,充填されるのが「破砕状」の前記第1樹脂の上側であり,さらに,硬化させることで成型する工程において,「破砕状」の前記第1樹脂が硬化するものである点は,原査定における引用文献A-Dには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1-7は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-012678