特許拒絶査定不服審判
2017-011443
ロアリンクのクランクピン連結構造
- 審判番号
- 2017-011443
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-174148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月02日
- 審決日
- 2018年05月25日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (F02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-174148「ロアリンクのクランクピン連結構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日出願公開、特開2015- 42849、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月26日の出願であって、平成29年2月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月16日に手続補正がされ、平成29年6月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年8月2日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2012-241852号公報
2.特開2012-26384号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2009-180276号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成29年3月16日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ピストンにピストンピンを介して一端が連結されたアッパリンクと、このアッパリンクの他端にアッパピンを介して連結され、かつクランクシャフトのクランクピンに連結されたロアリンクと、一端が機関本体側に揺動可能に支持され、他端が上記ロアリンクにコントロールピンを介して連結されたコントロールリンクと、を備えてなる内燃機関のピストンクランク機構における上記ロアリンクと上記クランクピンとの連結構造であって、
上記ロアリンクは、上記クランクピンに嵌合する中央のクランクピン軸受部と、上記アッパピンを支持するアッパピン用ピンボス部と、上記コントロールピンを支持するコントロールピン用ピンボス部と、を有し、
上記アッパピン用ピンボス部および上記コントロールピン用ピンボス部は、それぞれ二股状をなし、上記クランクピン軸受部の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、
軸受メタルが装着されるクランクピン軸受部は、周方向において、クランクピンからの荷重入力が相対的に大きい第1の部位と相対的に小さい第2の部位とを有し、
上記第2の部位では、軸方向中央部の剛性が軸方向両端部の剛性に比べて低く、上記軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形しており、
上記第1の部位の軸方向中央部の剛性は、上記第2の部位の軸方向中央部の剛性よりも高く、
上記クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている、ロアリンクのクランクピン連結構造。」
また、本願発明2ないし5は、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものである。
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2012-241852号公報)には、図面(特に、図1、図2及び図4を参照。)とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア 「【0015】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による複リンク式エンジン100の構成を説明する。図1は、第1実施形態による複リンク式エンジン100の概略構成図である。図2は、複リンク式エンジン100が備える圧縮比可変機構20のロアリンク200の正面図である。
【0016】
図1に示すように、複リンク式エンジン100は、車両用の直列4気筒エンジンである。複リンク式エンジン100は、ピストン10の上死点位置を変化させて圧縮比を変更可能な圧縮比可変機構20を備える。
【0017】
圧縮比可変機構20は、ピストン10とクランクシャフト30を連結するためのアッパリンク21及びロアリンク200と、ロアリンク200の姿勢を制御するためのコントロールリンク22と、を備える。
【0018】
アッパリンク21は、ロアリンク200とシリンダ11に沿って摺動するピストン10とを連結するリンク部材である。アッパリンク21の上端は、ピストンピン41を介してピストン10に回動可能に連結する。アッパリンク21の下端は、アッパピン42を介してロアリンク200に回動可能に連結する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ロアリンク200は、クランクシャフト30のクランクピン31に回動自在に設けられる2分割構造のリンク部材である。ロアリンク200は、第1リンク部210と、第1リンク部210に締結される第2リンク部220と、を備える。ロアリンク200は、第1リンク部210の角部214に設けられたアッパピン42を介してアッパリンク21と連結し、第2リンク部220の角部224に設けられたコントロールピン43を介してコントロールリンク22と連結する。
【0020】
第1リンク部210は第2リンク部220と当接する当接面(分割面)に半円状の凹部211を有しており、第2リンク部220は第1リンク部210と当接する当接面(分割面)に半円状の凹部221を有している。第1リンク部210に第2リンク部220が締結された状態では、第1リンク部210の凹部211と第2リンク部220の凹部221とによって、クランクシャフト30のクランクピン31を挿通させる挿通孔230が形成される。
【0021】
また、第1リンク部210の凹部211及び第2リンク部220の凹部221には、それぞれ半円状の軸受メタル212、222が設けられる。これら軸受メタル212、222は円弧状の板部材であり、軸受メタル212と軸受メタル222とによって一つの滑り軸受が形成される。
【0022】
第1リンク部210と第2リンク部220とが締結される前の状態では、軸受メタル212にはその周方向端部が第1リンク部210の当接面から突出するクラッシュハイトが設定されており、軸受メタル222にはその周方向端部が第2リンク部220の当接面から突出するクラッシュハイトが設定されている。これら軸受メタル212、222の周方向端部を接触させた状態でクラッシュハイトが0となるように第1リンク部210と第2リンク部220を締結することで、軸受メタル212は第1リンク部210の凹部211の内周面に密着固定され、軸受メタル222は第2リンク部220の凹部221の内周面に密着固定される。
【0023】
上記のように構成されるロアリンク200は、挿通孔230内に配設された軸受メタル212、222を介して、クランクシャフト30のクランクピン31に回動自在に取り付けられる。
【0024】
なお、ロアリンク200では、凹部211、221の外縁に沿う縁部213、223における幅方向厚さと、第1リンク部210及び第2リンク部220の角部214、224における幅方向厚さとが、縁部213、223と角部214、224との間の中央部215、225における幅方向厚さよりも厚くなるように設定されている。
【0025】
図1に示すように、クランクシャフト30は、クランクピン31、ジャーナル32及びカウンターウェイト33とから構成される回転シャフトである。クランクピン31の中心はジャーナル32の中心から所定量偏心している。カウンターウェイト33は、クランクピン31とジャーナル32とを接続するクランクアームに形成され、ピストン運動における振動成分を低減する。
【0026】
コントロールリンク22は、ロアリンク200の姿勢を制御するためのリンク部材である。コントロールリンク22の上端は、コントロールピン43を介してロアリンク200に回動自在に連結する。コントロールリンク22の下端は、コントロールシャフト23の偏心部23Aに回動自在に連結する。
【0027】
コントロールシャフト23は、クランクシャフト30と平行に配置され、シリンダブロックに回転自在に支持される。コントロールシャフト23の偏心部23Aは、コントロールシャフト軸心から所定量偏心した位置に形成される。コントロールシャフト23は、図示しないアクチュエータによって回転駆動される。コントロールシャフト23の回転に伴って、偏心部23Aは、コントロールシャフト軸心を中心として旋回する。」
イ 「【0035】
図4は、軸受メタル212、222が配設される位置近傍におけるロアリンク200の拡大図である。
【0036】
図4の破線L1は、最大トルク発生時の一燃焼サイクルにおいて、クランクシャフト30から軸受メタル212、222に入力する荷重の、軸受メタル内周方向の荷重分布を示す。図4の実線L2は、最大出力発生時の一燃焼サイクルにおいて、クランクシャフト30から軸受メタル212、222に入力する荷重の、軸受メタル内周方向の荷重分布を示す。破線L1及び実線L2の荷重分布に基づいて、軸受メタル212、222は内周方向に沿って、入力荷重が所定値よりも高い高荷重領域Aと、入力荷重が所定値よりも低い低荷重領域Bとに分けることができる。」
ウ 上記アの「ロアリンク200は、第1リンク部210と、第1リンク部210に締結される第2リンク部220と、を備える。」(段落【0019】)及び「第1リンク部210に第2リンク部220が締結された状態では、第1リンク部210の凹部211と第2リンク部220の凹部221とによって、クランクシャフト30のクランクピン31を挿通させる挿通孔230が形成される。」(段落【0020】)の記載並びに図1及び図2の記載から、ロアリンク200は、クランクピン31を挿通させる中央の挿通孔230を有すると認められる。
エ 上記アの「上記のように構成されるロアリンク200は、挿通孔230内に配設された軸受メタル212、222を介して、クランクシャフト30のクランクピン31に回動自在に取り付けられる。」(段落【0023】)及び上記イの「図4の破線L1は、最大トルク発生時の一燃焼サイクルにおいて、クランクシャフト30から軸受メタル212、222に入力する荷重の、軸受メタル内周方向の荷重分布を示す。図4の実線L2は、最大出力発生時の一燃焼サイクルにおいて、クランクシャフト30から軸受メタル212、222に入力する荷重の、軸受メタル内周方向の荷重分布を示す。破線L1及び実線L2の荷重分布に基づいて、軸受メタル212、222は内周方向に沿って、入力荷重が所定値よりも高い高荷重領域Aと、入力荷重が所定値よりも低い低荷重領域Bとに分けることができる。」(段落【0036】)の記載並びに図1、図2及び図4の記載から、軸受メタル212、222が配設される挿通孔230は、内周方向において、クランクシャフト300からの入力荷重が所定値よりも高い高荷重領域Aと所定値よりも低い低荷重領域Bとを有する、ロアリンク200のクランクピン31取り付け構造が記載されていると認められる。
(2)引用発明
上記(1)からみて、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ピストン10にピストンピン41を介して上端が連結されたアッパリンク21と、このアッパリンク21の下端にアッパピン42を介して連結され、かつクランクシャフト30のクランクピン31に取り付けられたロアリンク200と、下端がシリンダブロックに支持されるコントロールシャフト23に回動自在に連結し、上端が上記ロアリンク200にコントロールピン43を介して連結されたコントロールリンク22と、を備えてなる複リンク式エンジン100の圧縮比可変機構20における上記ロアリンク200と上記クランクピン31との取り付け構造であって、
上記ロアリンク200は、上記クランクピン31を挿通させる中央の挿通孔230と、上記アッパピン42が設けられた角部214と、上記コントロールピン43が設けられた角部224と、を有し、
軸受メタル212、222が配設される挿通孔230は、内周方向において、クランクシャフト300からの入力荷重が所定値よりも高い高荷重領域Aと所定値よりも低い低荷重領域Bとを有する、ロアリンク200のクランクピン31取り付け構造。」
2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2012-26384号公報)には、図面(特に、図1ないし図3及び図5を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0017】
以下本発明の好ましい実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るリンク機構の一例として、内燃機関の複リンク式ピストン-クランク機構1を示している。この複リンク式ピストン-クランク機構1は、ピストン22とクランクシャフト21とを2つのリンク部材、つまりアッパリンク(第2リンク部材)11と、ロアリンク(第1リンク部材)12と、により連結するとともに、コントロールリンク(第2リンク部材)13を利用してロアリンク12の姿勢を制御することで、ピストン上死点位置、ひいては機関圧縮比(幾何学的な圧縮比)を変更可能なものである。
【0018】
ピストン22は、燃焼圧力を受け、シリンダ20内を往復動する。アッパリンク11の上端は、ピストンピン24を介してピストン22に連結される。アッパリンク11の下端は、アッパピン25を介してロアリンク12の一端に連結される。一端がアッパリンク11に連結されたロアリンク12の他端は、コントロールピン26を介してコントロールリンク13に連結される。
【0019】
ロアリンク12は、ほぼ中央に形成されたクランクピン軸受部101で、クランクシャフト21のクランクピン21bに回転可能に装着されて、このクランクピン21bを中心軸として揺動する。ロアリンク12は、クランクピン21bに組付可能なように、クランクピン21bを挟んで2つの分割部材105,106に分割して構成されており、これらの分割部材105,106が2本のボルト103,104によりクランクピン21bを挟んで共締め固定されている。」
イ 「【0023】
ところで、このような複リンク式ピストン-クランク機構1において、ロアリンク12は、ピストン22が受けた燃焼圧力を、アッパリンク11を介してアッパピン25より受け取り、コントロールピン26を支点とするテコのような動作でクランクピン21bに力を伝達する。つまり、ロアリンク12は、内燃機関の各行程で、クランクピン21b、アッパピン25及びコントロールピン26からそれぞれ方向の異なる大きな荷重を受ける。したがって、ロアリンク12には大きな内力が繰り返し発生するため、ロアリンク全体としてこれに耐え得る強度・剛性が必要とされる。
【0024】
そこで、ロアリンク12とアッパピン25及びコントロールピン26(以下、両者を総称して「連結ピン」とも呼ぶ)とのピン連結方法を、ロアリンク12と連結ピンとが相対回転つまり摺動することなく、両者が一体に固定されたプレスフィット(圧入)方式とすることで、ロアリンク全体としての耐久性を向上させている。
【0025】
図2及び図3を参照して、このようなロアリンク12のピン連結構造について、ここではアッパピン25側の連結構造を例にとって説明する。ロアリンク12の一方の分割部材105には、一対の二股片部31が所定の間隙を隔てて根本部32から二股状に一体的に立設しており、各二股片部31に、円筒面をなす第1軸受部33が貫通形成されている。これら一対の第1軸受部33は、所定の間隙を隔てて同一軸線上に配置されている。一方、アッパリンク11の下端部には円筒面をなす第2軸受部34が貫通形成されている。そして、第2軸受部34を一対の第1軸受部33の間に配置した状態で、これらの第1,第2軸受部34に対してアッパピン25を一方より圧入することによって、アッパピン25のピン両端部35が一対の第1軸受部33に圧入により固定され、かつ、アッパピン25のピン中央部36が第2軸受部34の内周に対して僅かな間隙を隔てて相対回転可能に対向する。つまり、第1軸受部33は、アッパピン25が圧入により固定されるように、圧入前のアッパピン25よりも直径が小さく設定されており、第2軸受部34は、アッパピン25が相対回転可能に挿通するように、圧入前のアッパピン25よりも直径が大きく設定されている。」
ウ 「【0028】
以下、図示実施例を参照して、リンク機構の連結ピン軸受構造における特徴的な構成及びその作用効果について列記する。なお、以下の説明では、アッパピン25とコントロールピン26とを区別する必要がある場合を除き、両者25,26を総称して「連結ピン」とも呼ぶ。また、図5等においては、理解を容易にするために、ピン中央部36の樽型形状への変形を実際のものより誇張して描いている。
【0029】
(1)図5(B)は本発明の第1実施例に係るピン連結構造を示し、図5(A)は比較例に係るピン連結構造を示している。連結ピン25は、第1軸受部33に圧入により固定されることによって、第2軸受部34に相対回転可能に対向するピン中央部36が、軸方向中央部へ向かうに従ってバレル量が拡大するように樽型形状に膨出変形する。ここで、バレル量B1,B2とは、連結ピン25の圧入による径方向寸法の増加分に相当するものであり、詳しくは、第1軸受部33に圧入された連結ピン25の半径L0と、第1軸受部に圧入された連結ピンの中心線から第2軸受部に挿通された連結ピンの外形線までの距離L1,L2と、の差の絶対値(L1-L0,L2-L0)に相当する。
【0030】
そして本実施例では、図5(B)に示すように、この樽型形状に変形したピン中央部36では、所定の荷重作用方向A(図4(C)参照)に対応する大荷重位置(第1の周方向位置)α1における最大のバレル量B1が、少なくとも所定の荷重である大荷重より小さな荷重しか作用しない位置、例えば連結ピン25Aの軸心に対して大荷重位置と反対側に位置する小荷重位置(第2の周方向位置)α2のバレル量B2よりも大きくなるように設定されている。言い換えると、大荷重位置α1のバレル量B1が小荷重位置α2のバレル量B2よりも大きくなるように、圧入前の連結ピン25の形状・寸法が設定されている。
【0031】
このように連結ピン25のピン中央部36のうち、大きな荷重を集中的に受ける大荷重位置α1でのバレル量B1を大きくすることで、その軸方向両端部での荷重の集中(片当たり)を抑制し、かつ、荷重の小さい小荷重位置α2でのバレル量B2を小さくすることで、過大なバレル量によって軸方向中央部に荷重が集中的に作用することを抑制することができる。このように、連結ピンのピン中央部36におけるバレル量を、荷重の周方向分布に応じた形で適正化することで、ピン中央部36の軸方向両端部での荷重の集中(片当たり)や軸方向中央部での荷重の集中を抑制して、耐焼き付き性や潤滑性等を向上することができる。しかも、圧入による固定を利用して連結ピンの樽型形状を適正化しているために、作業工数の増加を招くこともない。但し、本実施例においては、連結ピンの圧入時には、例えばマーキングを施すなどの手法によって、ロアリンク側の第1軸受部と連結ピンとの周方向の位置合わせを行う必要がある。」
エ 上記イの「ロアリンク12の一方の分割部材105には、一対の二股片部31が所定の間隙を隔てて根本部32から二股状に一体的に立設しており」(段落【0025】)の記載並びに図2及び図3の記載から、二股片部31は、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されていると認められる。
オ 上記ウの「第2軸受部34に相対回転可能に対向するピン中央部36が、軸方向中央部へ向かうに従ってバレル量が拡大するように樽型形状に膨出変形する。」(段落【0029】)の記載及び図5の記載から、連結ピン25は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型形状をなしていると認められる。
(2)引用文献2技術
上記(1)からみて、上記引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されていると認められる。
「内燃機関の複リンク式ピストン-クランク機構1におけるロアリンク12とアッパピン25およびコントロールピン26とのピン連結方法において、
アッパピン25用二股片部31およびコントロールピン26用二股片部31は、それぞれ二股状に立設し、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、
連結ピン25は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型形状をなしている技術。」
3.引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2009-180276号公報)には、図面(特に、図1ないし図4を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0013】
図1は、本発明の一実施形態による複リンク式ピストンストローク機構を備えたエンジン1を示す図である。以下、この複リンク式ピストンストローク機構を備えたエンジンを「圧縮比可変エンジン」という。
【0014】
圧縮比可変エンジン1は、ピストン22とクランクシャフト21とを2つのリンク(アッパリンク(第2部材)11、ロアリンク(第1部材)100)で連結するとともに、コントロールリンク(第2部材)13でロアリンク100を制御して圧縮比を変更する。
【0015】
ピストン22は、燃焼圧力を受け、シリンダ20内を往復動する。
【0016】
アッパリンク11の上端は、ピストンピン24を介してピストン22に連結される。一方、アッパリンク11の下端は、アッパピン25を介してロアリンク100の一端に連結される。一端がアッパリンク11に連結されたロアリンク100の他端は、コントロールピン26を介してコントロールリンク13に連結される。なお、コントロールピン26は、後述するように内側コントロールピン(内側連結ピン)26aと外側コントロールピン(外側連結ピン)26bからなる二重構造となっている。
【0017】
ロアリンク100は、ほぼ中央に形成されたクランクピン軸受部101にクランクシャフト21のクランクピン21bを保持する。ロアリンク100は、このクランクピン21bを中心軸として揺動する。ロアリンク100は上下の2部材に分割可能で、2本のボルト103,104によって一体に固定されている。」
イ 「【0022】
そこで、本発明では、ロアリンク100とアッパピン25及びコントロールピン26とのピン連結方法を、ロアリンク100とアッパピン25及びコントロールピン26とが摺動しないプレスフィット(圧入)方式とすることでロアリンク全体としての耐久性を向上させる。以下では、ロアリンク100とコントロールピン26とのピン連結部の構造について詳しく説明する。
【0023】
図2は、コントロールピン26の軸受構造を示す図であり、(a)がロアリンク100とコントロールピン26との連結部周辺の拡大図、(b)が図1のII-II線に沿う断面図である。
【0024】
ロアリンク100の一端部には、図2に示すようにコントロールピン26を支持するコントロールピン軸受部120が二股状に形成される。この対向して二股状に形成されているコントロールピン軸受部120の一方を第1コントロールピン軸受部120aとし、他方を第2コントロールピン軸受部120bとする。第1、第2コントロールピン軸受部120a,120bはそれぞれ略一定の肉厚を有し、その間の空間(以下「コントロールピン軸受部谷間」という)121を挟んで、互いに平行に延びている。
【0025】
コントロールピン26は、まず中空円筒状の外側コントロールピン26bをコントロールピン第1、第2コントロールピン軸受部120a,120bに挿通する。ここで、外側コントロールピン26bの外径から第1、第2コントロールピン軸受部120a、120bの内径を差し引いた値(以下、圧入代という)は、略ゼロとする。そして、外側コントロールピン26bを挿通した状態で、内側コントロールピン26aを外側コントロールピン26bの内側に圧入する。」
ウ 「【0029】
また、一般に、第1、第2コントロールピン軸受部120a、120bのような二股の軸受部にピンを圧入すると、そのピンは圧入部分で径が絞られ、軸受部間では中央部付近が最大径となる樽型に変形する。この変形は片当り等の原因となる。
【0030】
一方、連結ピンによる連結部において、潤滑油の油膜圧力は連結部の中央付近で最大となり、端部に近づくほど低くなる。
【0031】
そこで、圧入代をRe>Rdとすることによって樽型への変形を大きくし、十分な油膜圧力が確保できる中央部付近で外側コントロールピン26bとコントロールリンク13との接触による面圧を高め、油膜圧力が低くなる端面(D部)では面圧を低める。
【0032】
これにより、片当り等の問題を回避し、コントロールピン26(外側コントロールピン26b)とコントロールリンク13との摺動特性が向上し、フリクションの低減や、焼き付き防止等の効果を得ることができる。
【0033】
なお、ロアリンク100とアッパリンク11との連結部も、上述した図2及び図3と同様の構成及び圧入代分布とする。すなわち、アッパピン25は内側アッパピン25aと外側アッパピン25bからなる二重構造であり、内側アッパピン25aの外側アッパピン25bに対する圧入代の長軸方向の分布も、コントロールピン26の内側コントロールピン26aの外側コントロールピン26bに対する圧入代と同様の分布となっている。」
エ 上記イの「ロアリンク100の一端部には、図2に示すようにコントロールピン26を支持するコントロールピン軸受部120が二股状に形成される。この対向して二股状に形成されているコントロールピン軸受部120の一方を第1コントロールピン軸受部120aとし、他方を第2コントロールピン軸受部120bとする。第1、第2コントロールピン軸受部120a,120bはそれぞれ略一定の肉厚を有し、その間の空間(以下「コントロールピン軸受部谷間」という)121を挟んで、互いに平行に延びている。」(段落【0024】)との記載及び図1ないし図4の記載から、コントロールピン軸受部120は、二股状に形成され、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されていると認められる。
オ 上記ウの「一般に、第1、第2コントロールピン軸受部120a、120bのような二股の軸受部にピンを圧入すると、そのピンは圧入部分で径が絞られ、軸受部間では中央部付近が最大径となる樽型に変形する。」(段落【0029】)及び「圧入代をRe>Rdとすることによって樽型への変形を大きくし、十分な油膜圧力が確保できる中央部付近で外側コントロールピン26bとコントロールリンク13との接触による面圧を高め、油膜圧力が低くなる端面(D部)では面圧を低める。」(【0031】)との記載並びに図3の記載から、コントロールピン26は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型をなしていると認められる。
(2)引用文献3技術
上記(1)からみて、上記引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3技術」という。)が記載されていると認められる。
「エンジン1の複リンク式ピストンストローク機構におけるロアリンク100とコントロールピン26とのピン連結方法において、
コントロールピン軸受部120は、二股状に形成され、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、
コントロールピン26は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型をなしている技術。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、引用発明の「ピストン10」は本願発明1の「ピストン」に相当し、以下同様に、「ピストンピン41」は「ピストンピン」に、「アッパリンク21」は「アッパリンク」に、「アッパピン42」は「アッパピン」に、「クランクシャフト30」は「クランクシャフト」に、「クランクピン31に取り付けられ」ることは「クランクピンに連結され」ることに、「ロアリンク200」は「ロアリンク」に、「シリンダブロックに支持されるコントロールシャフト23」は「機関本体側」に、「回動自在に連結」することは「揺動可能に支持され」ることに、「コントロールピン43」は「コントロールピン」に、「コントロールリンク22」は「コントロールリンク」に、「複リンク式エンジン100」は「内燃機関」に、「圧縮比可変機構20」は「ピストンクランク機構」に、「上記ロアリンク200と上記クランクピン31との取り付け構造」は「上記ロアリンクと上記クランクピンとの連結構造」に、「挿通させる」ことは「嵌合する」ことに、「挿通孔230」は「クランクピン軸受部」に、「上記アッパピン42が設けられ」ることは「上記アッパピンを支持する」ことに、「角部214」は「アッパピン用ピンボス部」に、「上記コントロールピン43が設けられ」ることは「上記コントロールピンを支持する」ことに、「角部224」は「コントロールピン用ピンボス部」に、「軸受メタル212、222」は「軸受メタル」に、「配設される」ことは「装着される」ことに、「内周方向」は「周方向」に、「クランクシャフト300からの入力荷重」は「クランクピンからの荷重入力」に、「所定値よりも高い」ことは「相対的に大きい」ことに、「高荷重領域A」は「第1の部位」に、「所定値よりも低い」ことは「相対的に小さい」ことに、「低荷重領域B」は「第2の部位」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「アッパリンク21」の「上端」及び「下端」は、本願発明1の「アッパリンク」の「一端」及び「他端」に相当し、同様に、「コントロールリンク22」の「下端」及び「上端」は「コントロールリンク」の「一端」及び「他端」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「ピストンにピストンピンを介して一端が連結されたアッパリンクと、このアッパリンクの他端にアッパピンを介して連結され、かつクランクシャフトのクランクピンに連結されたロアリンクと、一端が機関本体側に揺動可能に支持され、他端が上記ロアリンクにコントロールピンを介して連結されたコントロールリンクと、を備えてなる内燃機関のピストンクランク機構における上記ロアリンクと上記クランクピンとの連結構造であって、
上記ロアリンクは、上記クランクピンに嵌合する中央のクランクピン軸受部と、上記アッパピンを支持するアッパピン用ピンボス部と、上記コントロールピンを支持するコントロールピン用ピンボス部と、を有し、
軸受メタルが装着されるクランクピン軸受部は、周方向において、クランクピンからの荷重入力が相対的に大きい第1の部位と相対的に小さい第2の部位とを有する、ロアリンクのクランクピン連結構造。」
<相違点>
本願発明1においては、「アッパピン用ピンボス部およびコントロールピン用ピンボス部は、それぞれ二股状をなし、クランクピン軸受部の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、」
クランクピン軸受部の「第2の部位では、軸方向中央部の剛性が軸方向両端部の剛性に比べて低く、軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形しており、」
クランクピン軸受部の「第1の部位の軸方向中央部の剛性は、上記第2の部位の軸方向中央部の剛性よりも高く、
クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている」のに対し、
引用発明においては、角部214及び角部224、挿通孔230の低荷重領域B及び高荷重領域A、並びにクランクピン31がそのような構成であるか不明である点。
(2)相違点についての判断
引用文献2技術は、「内燃機関の複リンク式ピストン-クランク機構1におけるロアリンク12とアッパピン25およびコントロールピン26とのピン連結方法において、アッパピン25用二股片部31およびコントロールピン26用二股片部31は、それぞれ二股状に立設し、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、連結ピン25は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型形状をなしている技術。」というものである。
引用文献2技術は、「連結ピン25は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型形状をなしている」ものであるが、本願発明1の「クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている」構成を有するものではない。更に、引用文献2技術は、「アッパピン25用二股片部31およびコントロールピン26用二股片部31は、それぞれ二股状に立設し、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されて」いるものであるが、本願発明1の「クランクピン軸受部」の「第2の部位」の「軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形して」いる構成を有するものではない。
引用文献3技術は、「エンジン1の複リンク式ピストンストローク機構におけるロアリンク100とコントロールピン26とのピン連結方法において、コントロールピン軸受部120は、二股状に形成され、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されており、コントロールピン26は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型をなしている技術。」というものである。
引用文献3技術は、「コントロールピン26は、軸方向中央部の径方向寸法が軸方向両端部よりも大きな樽型をなしている」ものであるが、本願発明1の「クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている」構成を有するものではない。更に、引用文献3技術は、「コントロールピン軸受部120は、二股状に形成され、クランクピン軸受部101の軸方向の両端部にそれぞれ接続されて」いるものであるが、本願発明1の「クランクピン軸受部」の「第2の部位」の「軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形して」いる構成を有するものではない。
したがって、引用文献2技術及び引用文献3技術は、相違点に係る本願発明1の構成のうち、少なくとも、「クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている」構成、及び「クランクピン軸受部」の「第2の部位」の「軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形して」いる構成を備えていない。
また、引用発明において、引用文献2技術及び引用文献3技術を適用して、「クランクピンは、軸方向中央部の径が軸方向両端部よりも僅かに大きな樽形をなしている」構成、及び「クランクピン軸受部」の「第2の部位」の「軸受メタルを装着した状態において、該軸受メタルの反力により軸方向中央部が外周側へ変形してメタル軸受面が樽型に変形して」いる構成とする動機付けを見出すことができない。
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし5は、当業者が引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-011443