特許拒絶査定不服審判
2017-011329
半導体ウェーハをプラズマ・ダイシングする方法及び装置
- 審判番号
- 2017-011329
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-093180外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月31日
- 審決日
- 2019年02月05日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】プラズマ - サーム、エルエルシー
- 【請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 93180「半導体ウェーハをプラズマ・ダイシングする方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日出願公開,特開2015-179851〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2012年3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月14日,アメリカ合衆国,2012年3月5日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願(以下「原出願」という。)である特願2013-558089号の一部を平成27年4月30日に新たな特許出願とした特願2015-93180号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年 4月30日 :上申書
平成28年 7月 7日付け:拒絶理由通知
平成28年10月12日 :意見書
平成28年10月12日 :手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成29年 3月28日付け:拒絶査定
平成29年 7月31日 :審判請求
平成29年 9月21日 :手続補正書(方式)
平成30年 9月 6日付け:最後の拒絶理由通知
なお,当審において通知した拒絶理由に対して,請求人からは何らの応答もなかったものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基板をプラズマ・ダイシングする方法であって,
壁を有する処理チャンバを供給するステップと,
前記処理チャンバの前記壁に隣接してプラズマ源を供給するステップであって,前記プラズマ源は前記処理チャンバ内でプラズマを生成するステップと,
前記処理チャンバ内に加工物支持部を供給するステップと,
上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有しているステップと,
加工物を形成するために前記基板の前記底面をフレーム上の支持フィルム上に配置するステップと,
前記プラズマ源と前記加工物の間にスクリーンを供給するステップであって,前記スクリーンは前記基板上へのイオン衝撃を低減させ,前記スクリーンは前記基板の加熱を低減させるステップと,
前記プラズマ源によってプラズマを生成するステップと,
前記プラズマ源の下方に配置され,かつ前記加工物の上方に配置された前記スクリーンを用いて,前記プラズマ源で生成されたプラズマによって,前記処理チャンバ内にある前記加工物の前記基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングするステップとを含む方法。」
第3 拒絶の理由
平成30年9月6日付けで当審が通知した最後の拒絶理由は,次のとおりのものである。
本願の請求項1-5に係る発明は,本願の原出願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-4に記載された発明に基づいて,その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
1.国際公開03/071591号
2.特開2003-109942号公報
3.特開2005-260195号公報
4.特開平9-289193号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付した。以下同じ。)
「請求の範囲
1.ストリートによって区画された多数の領域に回路が形成された半導体ウェーハを個々の回路ごとの半導体チップに分割する半導体ウェーハの分割方法であって,
少なくとも該半導体ウェーハの回路面をマスキング部材でマスキングするマスキング工程と,
該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材をレーザ一光線の照射により除去するマスキング部材除去工程と,
該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材が除去された半導体ウェーハに化学的エッチングを施し該ス卜リートを浸食して個々の半導体チップに分割する化学的エッチング処理工程と
から少なくとも構成される半導体ウェーハの分割方法。」(請求の範囲)
「マスキング工程においては,例えば第2図に示すスピンコータ10を用いて半導体ウェーハWの表面にマスキング部材を形成する。スピンコータ10においては,半導体ウェーハWが保持される保持テーブル11は駆動部12に駆動されて回転可能となっており,リング状のフレームFの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープTの粘着面に半導体ウェーハWの裏面が貼着されることによりテープTを介してフレームFと一体となった半導体ウェーハWが,回路面を上にして保持テーブル11に保持される。
そして,保持テーブル11を高速回転させながら滴下部13からレジストポリマー14を半導体ウェーハWの回路面に滴下することにより,第1図Aに示したように,回路面の一面にマスキング部材15がマスキングされる(マスキング工程)。・・・
次にマスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材15のうち,半導体ウェーハWの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去する。
・・・
すべての半導体ウェーハについてマスキング部材除去工程が終了すると,カセット21ごと次の化学的エッチング工程に搬送される。化学的エッチング工程においては,例えば第4図に示すドライエッチング装置30を使用する。
第4図に示すドライエッチング装置30は,レーザー加工装置20から搬送されてきたカセット21からの半導体ウェーハWの搬出及び化学的エッチング工程終了後の半導体ウェーハWのカセット21への搬入を行う搬出入手段31と,搬出入手段31によって搬出入される半導体ウェーハWが収容される搬出入チャンバー32と,ドライエッチングを行う処理チャンバー33と,エッチングガスを処理チャンバー33内に供給するガス供給部34とから概ね構成される。
マスキング部材除去工程が終了した半導体ウェーハWは,搬出入手段31によってカセット21から搬出される。そして,搬出入チャンバー32に備えた第一のゲート35が開き,図5に示す搬出入チャンバー32内に位置付けられた保持部36に半導体ウェーハWが載置される。
第5図に示すように,搬出入チャンバー32と処理チャンバー33とは第二のゲート37によって遮断されているが,第二のゲート37を開いたときは,保持部36が搬出入チャンバー32の内部と処理チャンバー33の内部との間を移動可能となっている。
第6図に示すように,処理チャンバー33には,高周波電源及び同調機38に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極39が上下方向に対峙して配設されており,本実施の形態においては片方の高周波電極39が保持部36を兼ねた構成となっている。また保持部36には,保持された半導体ウェーハを冷却する冷却部40を設けている。
・・・
マスキング部材除去工程が終了した半導体ウェーハWをドライエッチングする際は,搬出入チャンバー32に設けた第一のゲート35を開け,搬出入手段31が半導体ウェーハWを保持して第5図における矢印の方向に移動することにより,搬出入チャンバー32内に位置付けられた保持部36に半導体ウェーハWが,表面を上にして載置される。そして,第一のゲート35を閉じ,搬出入チャンバー32内を真空にする。
次に,第二のゲート37を開いて保持部36が処理チャンバー33内に移動することにより,半導体ウェーハWが処理チャンバー33内に収容される。処理チャンバー33内には,ポンプ42によってエッチングガス,例えば希薄なフッ素系ガスを供給すると共に,高周波電源及び同調器38から高周波電極39に高周波電圧を供給することにより,半導体ウェーハWの表面をプラズマによりドライエッチングする。このとき,冷却部40には冷却水循環器43によって冷却水が供給される。
このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハWの表面のうち,ストリートの上部に被覆されていたマスキング部材は,マスキング部材除去工程において除去されているが,その他の部分はマスキング部材で覆われているため,ストリートのみがエッチング処理により浸食され,第1図Cに示すように,個々の半導体チップCに分割される(化学的エッチング処理工程)。
・・・
このようにして形成された個々の半導体チップCは,回転ブレードを用いて切削により分割されたものではないため,欠けやストレスがない高品質なものとなる。特に,厚さが50μm以下のような薄い半導体ウェーハの場合は,切削して分割する方法によると欠けやストレスが生じやすいので,本発明を利用すると特に効果的である。
また,半導体ウェーハWが,半導体基板の上に極薄の層間絶縁膜が複数積層された多層構造の半導体ウェーハである場合には,レーザー光線を用いることにより,切削時のような衝撃力が層間絶縁膜に加わることがないため,層間絶縁膜が雲母のように剥がれ落ちるおそれもない。
また,ドライエッチング処理は,半導体ウェーハの厚さが厚くなるほど時間がかかることになるが,厚さが50μm以下のような薄い半導体ウェーハであれば,ドライエッチング処理にそれほどの時間を要さないため,生産性を確保することができ,この点においても本発明は有用である。
なお,エッチング処理では除去できないパターン等の被覆層がストリートに形成されている場合には,レジスト膜除去工程においてレーザー光線をその被覆層に照射すれば,その被覆層を除去することができるため,そのようなパターンが形成された半導体ウェーハもエッチングによって分割することができる。」(明細書第5ページ第18行-第10ページ第8行)
(2) したがって,上記記載から,引用文献1には,引用文献1の請求の範囲の「1.」に記載された発明の実施例である以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「少なくとも半導体ウェーハの回路面をマスキング部材でマスキングするマスキング工程と,
ストリートの上部を被覆しているマスキング部材をレーザー光線の照射により除去するマスキング部材除去工程と,
該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材が除去された半導体ウェーハに化学的エッチングを施し該ストリートを浸食して個々の半導体チップに分割する化学的エッチング処理工程と
から少なくとも構成される,ストリートによって区画された多数の領域に回路が形成された半導体ウェーハを個々の回路ごとの半導体チップに分割する半導体ウェーハの分割方法であって,
前記半導体ウェーハは,リング状のフレームの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープの粘着面に半導体ウェーハの裏面が貼着されることによりテープを介してフレームと一体となった半導体ウェーハであり,
前記マスキング部材は,回路面の一面にマスキングされ,その後,マスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材のうち,半導体ウェーハの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去したものであり,
前記化学的エッチング処理工程は,搬出入チャンバーと,ドライエッチングを行う処理チャンバーと,エッチングガスを処理チャンバー内に供給するガス供給部とを含むドライエッチング装置を使用するものであって,前記処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成となっており,
前記搬出入チャンバー内に位置付けられた保持部に半導体ウェーハが,表面を上にして載置され,第一のゲートを閉じ,搬出入チャンバー内が真空にされ,次に,第二のゲートを開いて保持部が処理チャンバー内に移動することにより,半導体ウェーハが処理チャンバー内に収容されるものであり,
このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハの表面のうち,ストリートの上部に被覆されていたマスキング部材は,マスキング部材除去工程において除去されているが,その他の部分はマスキング部材で覆われているため,ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割される半導体ウェーハの分割方法。」
2 引用文献2の記載
(1)引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 所定のガスからコリメートされた10eV以上50eV以下の中性粒子ビームを生成し,
前記中性粒子ビームを被処理物に照射して該被処理物の表面をエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
・・・
【請求項5】 オリフィスが形成されたオリフィス板を介して前記コリメートされた中性粒子ビームを生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエッチング方法。
・・・
【請求項9】 被処理物を保持する保持部と,
真空チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成部と,
前記被処理物と前記プラズマ生成部との間に配置されたオリフィス電極と,
前記真空チャンバ内に前記オリフィス電極に対して上流側に配置された電極と,
前記オリフィス電極と前記電極との間に電圧を印加することで,前記プラズマ生成部により生成されたプラズマからイオンを加速して前記オリフィス電極に形成されたオリフィスを通過させる電圧印加部とを備え,
前記オリフィスを通過して生成されたコリメートされた中性粒子ビームのエネルギーを10eV以上50eV以下にしたことを特徴とするエッチング装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体素子の製造等の微細加工に好適なエッチング方法及びエッチング装置に係り,特にプラズマ中に生成した正イオン又は負イオンを中性化した中性粒子ビームを用いて被処理物を加工するエッチング方法及びエッチング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年,半導体集積回路やマイクロマシーンなどの分野において,その加工パターンが著しく微細化され,高精度の加工が要求される。また,高アスペクト比の加工が要求される。かかる分野の加工においては,プラズマを用いたエッチング装置が広く採用されている。
【0003】このようなプラズマを用いたエッチング装置としては,正イオン,ラジカル粒子等を生成するRIE装置(リアクティブイオンエッチング装置)が知られている。このような正イオン,ラジカル粒子等を被処理物に照射することで,被処理物をエッチングすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】RIE装置を用いたエッチング加工における最大の問題は,高精度と高選択比を両立できないこととチャージアップによるエッチング形状異常である。ここで,選択比とは,エッチングにおいて,マスクや下地材料に対する被加工物のエッチング深さの比率をいう。即ち,被加工物がx(μm)削られるとき,被加工物を保護しているマスクがy(μm)削られる場合には,選択比sは,
s=x/y
で表される。この選択比が大きい程,マスクの損傷が少ないので,高アスペクト比のエッチングが可能となる。しかし,一般に選択比を高めるために,マスクや下地材料には堆積するが,被加工物をエッチングするようなガスの組合せが選択され,また,ラジカルが堆積して側壁保護膜も形成される。過剰に側壁保護膜が形成されると加工形状がテーパ状になり,寸法精度が劣化してしまう。ガスとしてCl2にO2を添加したときのSi/SiO2の選択比は,せいぜい100程度となっており,他の材料に比べると高い組合せであるが,0.1μm以下のデバイスでは300以上の選択の高選択比,高精度化が要望されている。特に,下地ゲート酸化膜に対する高選択比と素子分離段差部での無残渣を同時に達成することが今後の課題とされている。
【0005】また,エッチング形状異常は,電子と正イオンの挙動の違いにより生じる。つまり,ノッチングは,微細なラインとスペースパターンのストライプの外面に面したラインの内側に発生する。低エネルギーのイオンでエッチングする際,微細パターン内部では,電子は基板の負のセルフバイアス電位で減速され,レジスト付近に捕捉されるが,イオンは加速されて下地の酸化膜まで達し,正にチャージアップする。一方,外周囲は電子もイオンも等量が入ってくるので中和されている。このため,微細パターンの内部と外部との間に電位差が発生し,イオンの軌道が曲がるためにノッチングが生じる。
【0006】本発明は,このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので,被処理物にチャージアップやエッチング形状異常を与えることなく,微細パターンに対して高精度の加工と高選択比の加工とを両立することができるエッチング方法及びエッチング装置を提供することを目的とする。」
「【0022】
【発明の実施の形態】以下,本発明に係るエッチング装置の一実施形態について図1及び図2を参照して詳細に説明する。図1は,本発明の一実施形態におけるエッチング装置の全体構成を示す図である。
【0023】図1に示すように,エッチング装置は,中性粒子ビームを生成するビーム生成室1と,半導体基板,ガラス,有機物,セラミックなどの被処理物Xが配置される処理室2とを有する円筒状の真空チャンバ3を備えている。この真空チャンバ3は,ビーム生成室1側が石英ガラス又はセラミックなどにより構成され,処理室2側が金属製のメタルチャンバなどにより構成されている。
【0024】ビーム生成室1の外周には誘導結合型のコイル10が配置されている。このコイル10は,例えば水冷パイプのコイルであり,8mmφ程度の外径を有するコイルが2ターン程度ビーム生成室1に巻回されている。このコイル10は高周波電源20に接続されており,例えば,13.56MHzの高周波電圧がコイル10に印加される。これらのコイル10と高周波電源20とによってプラズマ生成部が構成されている。コイル10に高周波電流を流すことで誘導磁場を生じさせ,磁界の時間変化が電界を誘導し,その電界で電子が加速されてプラズマ30が生成される。
【0025】ビーム生成室1の上部には,ガスを導入するガス導入ポート11が設けられており,このガス導入ポート11はガス供給配管12を介してガス供給源13に接続されている。このガス供給源13からはSF6,CHF3,CF4,Cl2,Ar,O2,N2,C4F8等などのガスが真空チャンバ3内に供給される。
【0026】処理室2には,被処理物Xを保持する保持部21が配置されており,この保持部21の上面に被処理物Xが載置されている。処理室2にはガスを排出するためのガス排出ポート22が設けられており,このガス排出ポート22はガス排出配管23を介して真空ポンプ24に接続されている。この真空ポンプ24によって処理室2は所定の圧力に維持される。
【0027】ビーム生成室1の下端には,グラファイトなどの導電体で形成されたオリフィス板(オリフィス電極)4が配置されており,このオリフィス電極4は直流電源25に接続されている。図2(a)は,オリフィス電極4の斜視図,図2(b)は部分縦断面図である。図2(a)に示すように,オリフィス電極4には多数のオリフィス4aが形成されている。典型的なオリフィス電極4は,オリフィス径1mm,オリフィス長10mm,ピッチ1.4mm間隔で多数のオリフィス4aを配列している。このように,オリフィス電極4によってビーム生成室1と処理室2とを仕切ることができるので,真空ポンプ24によって処理室2の圧力をビーム生成室1の圧力よりも低くすることが可能となる。
【0028】また,ビーム生成室1の上端には,同様に導電体で形成された薄板グリッド状のグリッド電極5が配置されている。このグリッド電極5は直流電源26に接続されている。なお,グリッド電極5はメッシュ網やパンチングメタルなどであってもよく,あるいは穴のない金属板であってもよい。上述した直流電源25と直流電源26とによって,オリフィス電極4とグリッド電極5との間に電圧を印加する電圧印加部が構成されている。」
(2)したがって,上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
・近年,半導体集積回路やマイクロマシーンなどの分野において,その加工パターンが著しく微細化され,高精度の加工が要求され,また,高アスペクト比の加工が要求されており,かかる分野の加工においては,正イオン,ラジカル粒子等を生成するRIE装置(リアクティブイオンエッチング装置)が広く採用されていること。
・このようなRIE装置を用いたエッチング加工には,高精度と高選択比を両立できないこととチャージアップによるエッチング形状異常という問題があること。
・中性粒子ビームを生成するビーム生成室と,半導体基板,ガラス,有機物,セラミックなどの被処理物Xが配置される処理室とを有する円筒状の真空チャンバを備えているエッチング装置であって,
前記ビーム生成室は,その外周には誘導結合型のコイルが配置されており,これらのコイルと高周波電源とによってプラズマ生成部が構成され,前記コイルに高周波電流を流すことで誘導磁場を生じさせ,磁界の時間変化が電界を誘導し,その電界で電子が加速されてプラズマを生成するものであり,
前記ビーム生成室の下端には,グラファイトなどの導電体で形成されたオリフィス板(オリフィス電極)が配置されており,このオリフィス電極は直流電源に接続されているエッチング装置を用いることによって,前記問題が解決されること。
3 引用文献3の記載
(1)引用文献3には,図面とともに,以下の記載がある。
「【請求項1】
Cl原子もしくはF原子を含むプラズマを生成するプラズマ生成室と,
前記プラズマ生成室の上流側に設けられた上流側電極と,
前記上流側電極に直流電圧を印加する直流電源と,
前記上流側電極と対向して前記プラズマ生成室の下流側に設けられ,前記プラズマからイオンを引き出す下流側電極であって,該イオンを中性化して高速中性粒子ビームを生成するアパーチャーが複数形成された下流側電極と,
前記下流側電極に高周波電力を印加する高周波電源と,
前記下流側電極の下流に設けられた処理室であって,被加工基板を保持するステージを有する処理室とを備えたことを特徴とするエッチング装置。」
「【背景技術】
【0002】
従来より,半導体集積回路の微細加工にプラズマエッチングが広く用いられている。すなわち,反応性の高い元素を含むエッチングガスを用いて減圧下で低温プラズマを生成し,プラズマ中のラジカルやイオンによって半導体基板を加工する。プラズマ状態では,ラジカルやイオンといった活性種は非常に高いエネルギー状態であるため,液相や気相中での熱化学的反応では生じない反応が生じ,また減圧下での処理であるため,エッチング生成物は容易に揮発・脱離するために非常に効率的に基板のエッチングを行うことが可能となる。
一般に,ラジカルはプラズマ中を自由に拡散するため,ラジカルによるエッチングは等方的に進行する。一方,イオンは基板表面に生じるイオンシースの電界によって基板表面に対して垂直に入射するため,イオンによるエッチングは異方的に進行する。エッチング材料,エッチング特性及び目的により放電条件を変化させ,ラジカルとイオンの密度比を制御する必要があるが,比較的イオンによる効果が顕著になる条件でエッチングを行うことにより微細パターンの形成が可能となる。
【0003】
しかしながら,プラズマエッチングには原理的に回避できない問題がある。
一般的に,低温プラズマ中では正電荷を有するイオンと負電荷を有する電子が多数存在し,また電子衝突による原子分子の励起・脱励起により短波長の紫外線が放射される。この紫外線の照射を受けた基板表面では,チャージアップによるゲート絶縁膜の絶縁破壊や,ゲート電極の形状異常が生じてしまう。さらに,高エネルギーのイオンや紫外線の照射により,ゲート絶縁膜中に欠陥が生じたり,ゲート絶縁膜/シリコン界面に固定電荷や界面準位が生じてしまう。さらに,紫外線の照射により基板の極表面の温度が上昇するため,レジスト材料の変質及び変形が生じてしまう。これらの現象により,半導体集積回路の製造歩留まりや信頼性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため,中性粒子ビームを用いたエッチング装置及びエッチング方法が提案されている(例えば,特許文献1参照。)。」
「【0013】
実施の形態1.
図1は,本発明の実施の形態1によるエッチング装置を説明するための断面図である。
図1に示すエッチング装置は,Cl原子若しくはF原子16を含むプラズマ15を生成する誘導結合型(ICP)のプラズマ生成室1と,基板6をエッチングする処理室4とを有する。
【0014】
プラズマ生成室1の外周には,3ターンのコイル型アンテナ7が巻かれている。アンテナ7は,パルス変調放電(後述)が可能なRF電源11に接続されている。プラズマ生成室1上流側にガス導入口17が設けられ,該導入口17から所望の混合比率でCl2とSF6の混合ガス(以下「Cl2/SF6混合ガス」という。)が導入される。導入されたCl2/SF6混合ガスは,上流側電極8において分岐され,シャワー状にプラズマ生成室1内に導かれる。プラズマ生成室1の上下には2つのグラファイト製の電極2,8が対向配置されている。下流側電極2によってプラズマ生成室1と処理室4とが分離されている。上流側電極8はDC電源9に接続され,下流側電極2はRF電源(高周波電源)10に接続されている。RF電源10は,周波数が数100kHz~数MHzの高周波電力を出力するものである。上流側電極8と下流側電極2との間に生じる電位差により,プラズマ15中の正及び負イオン12をドリフト及び加速可能である。下流側電極2には,プラズマ15から引き出されたイオン12を中性化するために,基板6に対して垂直方向に貫通する微細孔(以下「アパーチャー」という。)13が複数形成されている。イオン12がアパーチャー13を通過する際,イオン12がアパーチャー13の内壁と浅い角度で接触して電荷交換を行うことにより中性化され,高速中性粒子ビーム5が生成する。
【0015】
処理室4内にはステージ3が設けられ,このステージ3上に加工対象である基板6が保持される。基板6には,シリコン膜(Poly-Si膜)が形成され,その上にマスクとしてのレジストパターンが形成されている(後述)。下流側電極2のアパーチャー13を通過することにより生成された高速中性粒子ビームが被加工基板6表面に入射する。
基板6裏面とステージ3表面との間には,10Torr前後の圧力でヘリウムガスが供給され,温度制御されたステージ3と基板6との間で該ヘリウムガスを介して熱交換を行う。
処理室4の底部(下流側)には排気口18が設けられ,該排気口18はコンダクタンスバルブ19を介して排気ポンプ(図示せず)に接続されている。プラズマ生成室1の圧力は0.5~1Pa程度が好適であり,処理室4の圧力は0.05~0.1Pa程度が好適である。
【0016】
次に,上記エッチング装置の動作について説明する。
ステージ3上に基板6を保持した後,ガス導入口17からプラズマ生成室1内にCl2/SF6混合ガスを供給する。そして,RF電源11からコイル型アンテナ7に周波数が13.56MHzの高周波を印加する。該高周波は,RFオン時の電子密度が1×1011cm-3程度以上となる電力とする。これにより,上記混合ガスを解離及びイオン化してプラズマ15を生成する。この際,RF電源11により,RFオン時間とRFオフ時間をそれぞれ50μsec前後としたパルス変調放電を行うことが好適である。パルス変調放電によりプラズマ中の電子の数を減少させて,イオンの中性化率を向上させることができる。また,パルス変調放電では,RFオフ時間(パルスオフ時間)にプラズマ15中の電子のエネルギーが数十μsecの時定数で減衰し,低エネルギーの電子がプラズマ15中で解離したハロゲン原子16に付着して負イオンを効率的に生成する。
【0017】
次に,DC電源9から上流側電極8に-100V程度の直流電圧を印加すると共に,RF電源10から下流側電極2に数10W~数100W程度の高周波電力(周波数:600kHz)を印加する。これにより,正及び負のイオン(例えば,Cl-,F-,SF3+,Cl2+)イオン12がドリフトし,上流側電極8から下流側電極2に向かってイオン12が加速され,100~200eV程度の運動エネルギーでプラズマ生成室1から引き出される。引き出されたイオン12は下流側電極2のアパーチャー13を通過する際に中性化され,高速中性粒子ビーム14が基板6表面に入射することにより,中性粒子ビーム14によるエッチングが行われる。」
「【0023】
以上説明したように,本実施の形態1では,ハロゲン元素を含むエッチングガスをプラズマ生成室1においてパルス変調放電により解離・イオン化し,上流側電極8に直流電圧を印加すると共に下流側電極2にRFバイアス(高周波電力)を印加することにより,高い中性化率を保ったままエネルギーと電流密度が高い高速中性粒子ビームが得られる。これにより,エッチングレート及び垂直加工性が高いエッチング装置及びエッチング方法を提供することが可能である。」
(2)したがって,上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
・従来より,半導体集積回路の微細加工にプラズマエッチングが広く用いられているが,一般的に,低温プラズマ中では正電荷を有するイオンと負電荷を有する電子が多数存在し,また電子衝突による原子分子の励起・脱励起により短波長の紫外線が放射され,この紫外線の照射を受けた基板表面では,チャージアップによるゲート絶縁膜の絶縁破壊や,ゲート電極の形状異常が生じてしまい,さらに,高エネルギーのイオンや紫外線の照射により,ゲート絶縁膜中に欠陥が生じたり,ゲート絶縁膜/シリコン界面に固定電荷や界面準位が生じてしまうこと,さらに,紫外線の照射により基板の極表面の温度が上昇するため,レジスト材料の変質及び変形が生じてしまうことという現象により,半導体集積回路の製造歩留まりや信頼性が低下してしまうという問題があったこと。
・前記の問題を解決するため,中性粒子ビームを用いたエッチング方法が提案されていること。
・プラズマを生成するプラズマ生成室と,
前記プラズマ生成室の上流側に設けられた上流側電極と,
前記上流側電極に直流電圧を印加する直流電源と,
前記上流側電極と対向して前記プラズマ生成室の下流側に設けられ,前記プラズマからイオンを引き出す下流側電極であって,該イオンを中性化して高速中性粒子ビームを生成するアパーチャーが複数形成された下流側電極と,
前記下流側電極に高周波電力を印加する高周波電源と,
前記下流側電極の下流に設けられた処理室であって,被加工基板を保持するステージを有する処理室とを備えたことを特徴とするエッチング装置であって,
前記プラズマ生成室の外周には,3ターンのコイル型アンテナが巻かれており,
前記下流側電極によってプラズマ生成室と処理室とが分離されており,
前記下流側電極には,プラズマから引き出されたイオンを中性化するために,基板に対して垂直方向に貫通する微細孔(以下「アパーチャー」という。)が複数形成されている,
エッチング装置を用いて,
引き出されたイオンを,下流側電極のアパーチャーを通過する際に中性化し,高速中性粒子ビームを,基板表面に入射することにより,中性粒子ビームによるエッチングを行うことによって,
エッチングレート及び垂直加工性が高いエッチング方法が提供されること。
4 引用文献4の記載
(1)引用文献4には,図面とともに,以下の記載がある。
「【請求項12】 導入された気体からプラズマを生成するプラズマ生成工程と,
生成されたプラズマをプラズマの解離度を低下させつつ輸送するプラズマ輸送工程と
輸送されてきたプラズマにより被処理物に対して所定の処理を行なうプラズマ処理工程とを備えていることを特徴とするプラズマ処理方法。」
「【従来の技術】近年,プラズマ応用技術は半導体をはじめとする基幹産業において広く使用されている。特に,プラズマを利用して行なう,ドライエッチングによる微細加工,薄膜形成又は表面改質処理等のプロセス技術は,半導体デバイス製造上のキーテクノロジーとなっている。
【0003】従来,プラズマを用いるプロセス技術を実現する装置としては,平行平板型のRIE(Reactive Ion Etching) 装置に代表される容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively coupled Plasma )装置,平行平板型RIE装置に磁場を加えE×Bドリフトによる電子加速を利用するMERIE(Magnetron Enhanced RIE)装置,及び平行平板型RIE装置の2つの平行平板電極間に第3の電極を設けたトライオードRIE装置等が知られている。
【0004】これらの装置は数Pa以上の圧力領域で使用されている。また,数10Pa以下の低圧力領域においてはECR(Electron Cycrotron Resonanc)を利用したECRプラズマ装置が使用されている。また,実際の半導体のプロセス技術には適用されてはいないが,荷電粒子ビーム励起又はレーザ等の光励起を利用したプラズマ装置や,ホロー電極を用いたプラズマ装置等も知られている。さらに,近年では,数Pa以下の定圧領域において容易に高密度且つ高解離なプラズマが生成可能な誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma) 装置,誘導結合プラズマ生成手段に磁場印加を組み合わせた有磁場誘導結合プラズマ装置,1/4波長アンテナ又は1/2波長アンテナ等のアンテナによる高周波輻射を用いる輻射アンテナプラズマ装置,高周波回転磁界による電子加速を利用するプラズマ装置,ランダウ減衰による電子加速機構を利用したヘリコン波プラズマ(HEW:Helicon Wave Plasma)装置,表面波プラズマやスロットアンテナを利用したECRプラズマ装置等が開発されている。」
「【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前記従来のプラズマ処理装置及び処理方法においては,プラズマ処理に用いられるプラズマの解離度は,プラズマ生成手段におけるプラズマ源(結合方式:ICP,ECR,HWP等)により略決まってしまい自由に変えることは困難である。特に最近の高密度プラズマを発生するプラズマ源により生成されるプラズマは解離度が高く,プラズマ処理に適しない場合があるという問題がある。
【0014】そこで,プラズマの解離度を低下させるために,プラズマ源に印加する高周波電力を小さくすることが考えられるが,高密度プラズマを発生するプラズマ源においては,印加電力を小さくするとプラズマ密度が急激に低下してしまい,所望密度のプラズマを得ることは困難である。従って,プラズマ源に印加する高周波電力を小さくする方法は,生成されるプラズマの解離度を制御性良く安定に低下させる目的には適しない。
【0015】プラズマの解離度が適切でないと,プラズマの組成,例えば,プラズマ中に生成されるラジカル(活性種)及びイオンの種類と量,各種ラジカルの生成比,各種イオンの生成比,ラジカルとイオンとの生成比,並びにラジカル,イオン及び電子の生成密度又は生成密度比等を適切にすることができない。
【0016】もっとも,導入するガスの種類又は導入流量比を制御することにより,プラズマの組成を変える方法は従来より行なわれてきたが,これらの方法は,あくまでもプラズマの解離度が決定された上でプラズマ組成を制御することを目的とするものであって,プラズマの解離度が制御できないときに,導入するガスの種類又は導入流量比を制御しても,プラズマ組成を制御できる範囲は狭いものになってしまう。
【0017】以上説明したように,プラズマの解離度が制御できない場合,被処理物に供給される,ラジカル及びイオンの種類,並びにラジカル,イオン,電子の量及び比率を制御することは極めて困難である。このため,プラズマエッチング,プラズマCVD,プラズマ表面処理等のプラズマ処理の制御は非常に難しいという第1の問題がある。
【0018】従来のプラズマ処理装置によるプラズマ処理において,プロセス条件の安定領域又は適用可能範囲は極めて狭い。特に,ドライエッチングの場合,イオンアシストエッチングという反応機構を主に利用して異方性形状の微細パターンの形成を行なっている。イオンアシストエッチングとは,被処理物の被エッチング表面にプラズマ等により生成されたラジカルを吸着させた後,ラジカルが吸着した被エッチング表面に,プラズマシース領域で加速され運動エネルギー(以下,イオンエネルギーと略す。)を得たイオンを飛来させて非弾性衝突を行なわせ,この非弾性衝突により失われた熱エネルギーにより,被エッチング表面に吸着していたラジカル,飛来したイオン又はこれらが分解した原子若しくは分子が被エッチング表面の原子と反応し,反応生成物が脱離して除去されることにより進行する反応を利用したエッチング技術である。このイオンアシストエッチングを制御するためには,被エッチング表面にプラズマから供給されるラジカルやイオンの種類若しくは量,ラジカルとイオンとのバランス及びイオンエネルギーを制御する必要がある。
【0019】被エッチング表面にプラズマから供給されるラジカルやイオンの種類,量及びバランスは,プラズマ密度,プラズマの解離度及び導入ガスの種類若しくは量等により概ね決定され,イオンエネルギーは,被処理物が保持される試料台(下部電極)に印加されるRFバイアスとしての高周波電力の供給電力により決定される。
【0020】しかしながら,従来のプラズマ処理装置においては,プラズマ源に供給される高周波電力とRFバイアスとして供給される高周波電力とが相互作用するので,プラズマの解離度とイオンエネルギーとを互いに独立して制御できないという第2の問題がある。
【0021】例えば,図14に示す従来のプラズマ処理装置の場合,プラズマから供給されるラジカルやイオンの種類,量,及びラジカルとイオンとのバランスを制御するべく,第2の高周波電源110から供給される電力によりプラズマの生成条件を制御すると,他のプラズマパラメータが大きく影響を受け,イオンの運動エネルギーも変化してしまう。逆に,イオンの運動エネルギーを制御するべく,第1の高周波電源106からRFバイアスとして供給される高周波電力によりプラズマの生成条件を制御すると,やはり他のプラズマパラメータが大きく影響を受け,プラズマから供給されるラジカルやイオンの種類,量及びラジカルとイオンとのバランスが変化してしまう。
【0022】前記に鑑み,本発明は,プラズマ処理に用いられるプラズマの解離度を制御することを第1の目的とし,プラズマの解離度とイオンエネルギーとを独立して制御できるようにすることを第2の目的とする。」
「【0054】
【発明の実施の形態】以下,本発明の各実施形態に係るプラズマ発生装置及びその方法,並びにプラズマ処理装置及びその方法について,図面を参照しながら説明する。
【0055】(第1の実施形態)図1は,本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示しており,図1において,11はプラズマを生成するプラズマ生成室,12はプラズマによって試料に所定の処理を行なうプラズマ処理室であって,プラズマ生成室11及びプラズマ処理室は安全のためにアース電位に固定されている。プラズマ生成室11及びプラズマ処理室12は,通常,ステンレススチール,アルミニウム等により形成されている。アルミニウムにより形成される場合には,表面が鏡面処理されているときや,アルマイト処理等が施されて表面が絶縁されているときがある。
【0056】プラズマ生成室11とプラズマ処理室12とは,互いに独立していると共に,図2(a),(b)に示すような複数の開口部よりなるプラズマ輸送路13を有する板状の連結部材14によって互いに連結されており,プラズマ生成室11で生成された解離度の高いプラズマは,プラズマ輸送路13により解離度を低下されつつプラズマ処理室12に輸送される。連結部材14を構成する材料としては,ステンレススチール,アルミニウム等の金属板,これらの金属板に絶縁性薄膜をコーテイング若しくは溶射したもの,又はこれらの金属板の表面に陽極酸化によりアルマイト処理を施したもの等が用いられる。また,連結部材14を構成する材料として,半導体シリコンに不純物がドープされてなるシリコン等の半導体材料,パイロリックカーボン又は導電性のセラミックを用いてもよい。このように連結部材14が導電性材料により形成される場合には,プラズマ生成室11とプラズマ処理室12とは電気的に接続されて同電位に保たれる。また,連結部材14を構成する材料として,アルマイト等のセラミック材料,石英等の無機系材料,又はフッ素炭化水素化合物等の有機系材料を用いてもよい。このように連結部材14が絶縁性材料よりなる場合には,連結部材14は電気的に浮遊状態で使用される。
【0057】プラズマ生成室11には,気体を導入するための気体導入手段15が設けられており,該気体導入手段15には,図示しないコンピュータ制御されたマスフローコントローラによるガス供給手段を備えている。また,プラズマ処理室12には,気体等を排出するための排気手段16が設けられており,該排気手段16は,図示しないターボ分子ポンプ,該ターボ分子ポンプの後段に設けられたドライポンプ又はロータリーポンプ,及びコンピュータと連動可能な排気制御装置から構成されているが,排気手段16としては,これらに限らない。
【0058】プラズマ処理室12の下部には,下部電極となる試料台17が設けられている。試料台17とプラズマ処理室12とは絶縁体18により互いに絶縁されていると共に,試料台17の表面は薄い絶縁膜によって覆われている。また,試料台17には第1の高周波電源19が接続されており,該第1の高周波電源19の基準電位は,プラズマ処理室12と同じく接地電位である。第1の高周波電源19の周波数は,約100KHz~数10MHz程度であるが,実用的な周波数であれば必ずしもこの限りではない。試料台17の上には,被処理物としての半導体ウェハ(基板)20が載置されており,該半導体ウェハ20は,図示しない機械的又は静電的な保持機構により試料台17に保持されている。」
「【0099】(第3の実施形態)図5は,本発明の第3の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示している。第3の実施形態においては,プラズマ処理室12の試料台18と接地との間に,第1の高周波電源19及び定電圧源25が接続されている点を除いて第1の実施形態と同様であるので,同一の部材については同一の符号を付すことにより説明を省略する。」
「【0110】図7は,本発明の第4の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示している。第4の実施形態においては,第3の実施形態における渦巻状の誘導結合コイル22に代えて,プラズマ生成室11の周壁の外側に巻かれたスパイラル状の誘導結合コイル27が設けられている点,及び気体導入手段15がプラズマ生成室11の頂部に設けられている点を除いては,第3の実施形態と同様であるので,同一の部材については同一の符号を付すことにより,説明を省略する。」
(2)したがって,上記記載から,引用文献4には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
・近年,プラズマ応用技術は半導体をはじめとする基幹産業において広く使用されており,特に,プラズマを利用して行なう,ドライエッチングによる微細加工,薄膜形成又は表面改質処理等のプロセス技術は,半導体デバイス製造上のキーテクノロジーとなっていること。
・従来,プラズマを用いるプロセス技術を実現する装置としては,平行平板型のRIE(Reactive Ion Etching) 装置に代表される容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively coupled Plasma )装置,平行平板型RIE装置に磁場を加えE×Bドリフトによる電子加速を利用するMERIE(Magnetron Enhanced RIE)装置,及び平行平板型RIE装置の2つの平行平板電極間に第3の電極を設けたトライオードRIE装置等が知られていること。
・さらに,近年では,数Pa以下の定圧領域において容易に高密度且つ高解離なプラズマが生成可能な誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma) 装置,誘導結合プラズマ生成手段に磁場印加を組み合わせた有磁場誘導結合プラズマ装置,1/4波長アンテナ又は1/2波長アンテナ等のアンテナによる高周波輻射を用いる輻射アンテナプラズマ装置,高周波回転磁界による電子加速を利用するプラズマ装置,ランダウ減衰による電子加速機構を利用したヘリコン波プラズマ(HEW:Helicon Wave Plasma)装置,表面波プラズマやスロットアンテナを利用したECRプラズマ装置等が開発されていること。
・しかしながら,前記従来のプラズマ処理装置及び処理方法においては,プラズマ処理に用いられるプラズマの解離度は,プラズマ生成手段におけるプラズマ源(結合方式:ICP,ECR,HWP等)により略決まってしまい自由に変えることは困難である。特に最近の高密度プラズマを発生するプラズマ源により生成されるプラズマは解離度が高く,プラズマ処理に適しない場合があるという問題があること。
・プラズマの解離度が制御できない場合,被処理物に供給される,ラジカル及びイオンの種類,並びにラジカル,イオン,電子の量及び比率を制御することは極めて困難であり,プラズマエッチング等のプラズマ処理の制御は非常に難しいという第1の問題があること。
・従来のプラズマ処理装置においては,プラズマ源に供給される高周波電力とRFバイアスとして供給される高周波電力とが相互作用するので,プラズマの解離度とイオンエネルギーとを互いに独立して制御できないという第2の問題があること。
・複数の開口部よりなるプラズマ輸送路を有する板状の連結部材によって互いに連結されると共に,互いに独立したプラズマ生成室とプラズマ処理室とを含むプラズマ処理装置であって,
前記プラズマ生成室で生成された解離度の高いプラズマは,プラズマ輸送路により解離度を低下されつつプラズマ処理室に輸送され,
前記連結部材を構成する材料としては,ステンレススチール,アルミニウム等の金属板,これらの金属板に絶縁性薄膜をコーテイング若しくは溶射したもの,又はこれらの金属板の表面に陽極酸化によりアルマイト処理を施したもの等が用いられ,さらに,連結部材を構成する材料としては,半導体シリコンに不純物がドープされてなるシリコン等の半導体材料,パイロリックカーボン又は導電性のセラミックを用いてもよく,
前記連結部材が導電性材料により形成される場合には,プラズマ生成室とプラズマ処理室とは電気的に接続されて同電位に保たれ,連結部材が絶縁性材料よりなる場合には,連結部材は電気的に浮遊状態で使用され,
前記プラズマ処理室の下部に設けられた試料台の上には,被処理物としての半導体ウェハ(基板)が載置されており,
前記プラズマ生成室の周壁の外側には,巻かれたスパイラル状の誘導結合コイルが設けられたプラズマ処理装置を用いることで,前記の問題が解決されること。
第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
1 引用発明の「搬出入チャンバーと,ドライエッチングを行う処理チャンバーと,エッチングガスを処理チャンバー内に供給するガス供給部とを含むドライエッチング装置」であって,「前記処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成となって」いる「ドライエッチング装置を使用」した「ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割される半導体ウェーハの分割方法」は,本願発明の「基板をプラズマ・ダイシングする方法」に相当する。
2 引用発明の「ドライエッチングを行う処理チャンバー」が,「壁」を有することは自明である。
3 引用発明の「前記マスキング部材は,回路面の一面にマスキングされ,その後,マスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材のうち,半導体ウェーハの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去したものであり」「ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割」される工程は,本願発明の「上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有して」おり,「基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングする」に相当する。
4 引用発明の「半導体ウェーハ」,「テープ」及び「リング状のフレーム」は,それぞれ本願発明の「基板」,「支持フィルム」及び「フレーム」に相当する。したがって,引用発明の「リング状のフレームの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープの粘着面に半導体ウェーハの裏面が貼着されることによりテープを介してフレームと一体となった半導体ウェーハ」は,本願発明の「加工物」に相当する。
そうすると,引用文献1には,以下の範囲で,本願発明と,一致及び相違する発明が記載されている。
<一致点>
「基板をプラズマ・ダイシングする方法であって,
壁を有する処理チャンバを供給するステップと,
前記処理チャンバ内に加工物支持部を供給するステップと,
上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有しているステップと,
加工物を形成するために前記基板の前記底面をフレーム上の支持フィルム上に配置するステップと,
プラズマ源によってプラズマを生成するステップと,
前記プラズマ源で生成されたプラズマによって,前記処理チャンバ内にある前記加工物の前記基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングするステップと
を含む方法。」
<相違点>
本願発明の処理チャンバが,「前記処理チャンバの前記壁に隣接してプラズマ源を供給するステップであって,前記プラズマ源は前記処理チャンバ内でプラズマを生成するステップ」,「前記プラズマ源と前記加工物の間にスクリーンを供給するステップであって,前記スクリーンは前記基板上へのイオン衝撃を低減させ,前記スクリーンは前記基板の加熱を低減させるステップ」及び「前記プラズマ源の下方に配置され,かつ前記加工物の上方に配置された前記スクリーンを用い」たエッチングするステップとを含む方法によって基板を処理するのに対して,引用発明の「ドライエッチングを行う処理チャンバー」が,「処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成」による処理である点。
第6 判断
上記相違点について,判断する。
引用文献2に記載された技術的事項(上記第4の2(2))における「『ビーム生成室』の『外周』に配置された『誘導結合型のコイル』」,及び,「『ビーム生成室の下端』に配置された『オリフィス板(オリフィス電極)』」は,それぞれ,本願発明の「『処理チャンバ内でプラズマを生成する』『処理チャンバの前記壁に隣接』した『プラズマ源』」,及び,「『前記プラズマ源と前記加工物の間』に供給された『基板上へのイオン衝撃を低減させ』『基板の加熱を低減させる』『スクリーン』」に相当する。
また,引用文献3に記載された技術的事項(上記第4の3(2))における「『プラズマ生成室の外周』に巻かれた『3ターンのコイル型アンテナ』」,及び,「『プラズマ生成室と処理室とが分離』する『プラズマから引き出されたイオンを中性化するために,基板に対して垂直方向に貫通する微細孔(以下「アパーチャー」という。)が複数形成されている』『下流側電極』」は,それぞれ,本願発明の「『処理チャンバ内でプラズマを生成する』『処理チャンバの前記壁に隣接』した『プラズマ源』」,及び,「『前記プラズマ源と前記加工物の間』に供給された『基板上へのイオン衝撃を低減させ』『基板の加熱を低減させる』『スクリーン』」に相当する。
さらに,引用文献4に記載された技術的事項(上記第4の4(2))における「『プラズマ生成室の周壁の外側に』『巻かれたスパイラル状の誘導結合コイル』」,及び,「『互いに独立したプラズマ生成室とプラズマ処理室とを』連結する『複数の開口部よりなるプラズマ輸送路を有する板状の連結部材』」は,それぞれ,本願発明の「『処理チャンバ内でプラズマを生成する』『処理チャンバの前記壁に隣接』した『プラズマ源』」,及び,「『前記プラズマ源と前記加工物の間』に供給された『基板上へのイオン衝撃を低減させ』『基板の加熱を低減させる』『スクリーン』」に相当する。
すなわち,「『処理チャンバ内でプラズマを生成する』『処理チャンバの前記壁に隣接』した『プラズマ源』」,及び,「『前記プラズマ源と前記加工物の間』に供給された『基板上へのイオン衝撃を低減させ』『基板の加熱を低減させる』『スクリーン』」を含む装置を用いたエッチング方法は周知である。
一方,引用発明の「処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成」を備えた装置は,技術常識から,「平行平板型のRIE(Reactive Ion Etching) 装置に代表される容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively coupled Plasma )装置」であると理解される。
してみれば,引用文献2-4に接した当業者であれば,引用発明の半導体ウェーハの分割方法に,「高精度と高選択比を両立できないこととチャージアップによるエッチング形状異常という問題があること」(上記第4の2(2)),「低温プラズマ中では正電荷を有するイオンと負電荷を有する電子が多数存在し,また電子衝突による原子分子の励起・脱励起により短波長の紫外線が放射され,この紫外線の照射を受けた基板表面では,チャージアップによるゲート絶縁膜の絶縁破壊や,ゲート電極の形状異常が生じてしまい,さらに,高エネルギーのイオンや紫外線の照射により,ゲート絶縁膜中に欠陥が生じたり,ゲート絶縁膜/シリコン界面に固定電荷や界面準位が生じてしまうこと,さらに,紫外線の照射により基板の極表面の温度が上昇するため,レジスト材料の変質及び変形が生じてしまうことという現象により,半導体集積回路の製造歩留まりや信頼性が低下してしまうという問題」(上記第4の3(2)),及び「プラズマエッチング等のプラズマ処理の制御は非常に難しい」,「プラズマの解離度とイオンエネルギーとを互いに独立して制御できない」(上記第4の4(2))という問題を見い出すといえる。
また,「エッチングレート及び垂直加工性が高いエッチング方法」(上記第4の3(2))は,引用発明においても,自明の課題である。
してみれば,これらの問題及び課題を解決するために,引用発明において,上記周知のエッチング方法を採用する動機があるから,引用発明において,相違点について本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,その原出願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-4に記載された発明に基づいて,その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-011329