意匠拒絶査定不服審判
2017-008245
非接触型データキャリア
- 審判番号
- 2017-008245
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2016-006666外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月07日
- 審決日
- 2018年01月24日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- D18 .3 -WY (H6-5)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法10条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第10条第1項、意匠法第14条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2016- 6666「非接触型データキャリア」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 本願意匠
本願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を3年間秘密にすることを請求して,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成28年(2016年)3月28日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「非接触型データキャリア」であり,本願意匠の形態は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」と記載されている(別紙第1参照)。
第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2016-6665の意匠。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとの理由であって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,願書記載の本意匠(意願2016-6665)に類似する意匠とは認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当せず,意匠登録を受けることができません。
この意匠登録出願の意匠は,登録を受けようとする部分の当該物品における位置及び形状が該本意匠と顕著に相違します。」
第3 手続きの経緯
上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠と本意匠が類似する意匠であり,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当する旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされた。
請求人は,同査定を不服として平成29年(2017年)6月7日に審判を請求し,原査定を取り消し本願意匠を登録すべきとの審決を求めたが,同年12月22日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。
第4 当審の判断
以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。
1 本意匠
本意匠に係る出願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を3年間秘密にすることを請求し,物品の部分について意匠登録を受けようとして,本願と同日の平成28年(2016年)3月28日に意匠登録出願がなされ,同年12月22日に意匠権の設定の登録がなされて,平成29年(2017年)1月30日に意匠公報が発行されている。
本意匠の意匠に係る物品は,本意匠に係る出願の願書の記載によれば「非接触型データキャリア」であり,本意匠の形態は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本意匠部分」という。)である。」と記載されている(別紙第2参照)。
2 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型データキャリア」であり,本意匠の意匠に係る物品も「非接触型データキャリア」であるから,本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分は,正面(又は背面)において,「第1のスルーホール」及び「第2のスルーホール」並びに両者の間の(又は両者を繋ぐ)メインアンテナである点と,「第3のスルーホール」及び「第4のスルーホール」並びに前者から延伸した(又は両者の間の)ブースターアンテナである点で用途及び機能が共通する。また,本願部分の正面(又は背面)における「第1のスルーホール」及び「第2のスルーホール」並びに両者の間の(又は両者を繋ぐ)メインアンテナから成る大きさ及び範囲は,右上(又は左上)に角丸長方形状で区画された大きさ及び範囲である点で引用部分のそれとほぼ共通し,「第3のスルーホール」及び「第4のスルーホール」並びに前者から延伸した(又は両者の間の)ブースターアンテナから成る大きさ及び範囲も同様であるから,両部分の大きさ及び範囲は共通する。
他方,正面又は背面において左上と右上の2箇所に表された両部分の位置については,本願部分は上部の中央寄りにほぼ平行状に配されているのに対して,引用部分は上部の両端部(左上角部と右上角部)に逆ハ字状に配されている点で,差異が認められる。
(3)本願部分と本意匠部分の形態
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
両部分の形態には,以下の共通点が認められる。
(A)正面左上部分の形態についての共通点
本願の願書添付図面中の「A-A部のB-B部分拡大図」に表された本願部分の形態と,本意匠に係る出願の同図に表された本意匠部分の形態を比較すると,「第3のスルーホール」と「第4のスルーホール」が小円形孔として形成されており,「第3のスルーホール」の周囲から下方に向けてブースターアンテナが延伸して,「第4のスルーホール」の近傍で屈曲しており,屈曲部までのブースターアンテナが等幅に表されて,「第4のスルーホール」の近傍で屈曲している。また,「第4のスルーホール」周囲のブースターアンテナが略ドーナツ状に表されている。
(B)正面右上部分の形態についての共通点
本願の願書添付図面中の「A-A部のC-C部分拡大図」に表された本願部分の形態と,本意匠に係る出願の同図に表された本意匠部分の形態を比較すると,「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」が小円形孔として形成されており,両者の周囲のメインアンテナが略ドーナツ状に表されている。また,「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」の間には,複数の等幅のメインアンテナが等間隔に配されている。
(C)背面左上部分の形態についての共通点
本願の願書添付図面中の「D-D部のE-E部分拡大図」に表された本願部分の形態と,本意匠に係る出願の同図に表された本意匠部分の形態を比較すると,「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」が小円形孔として形成されており,両者を繋ぐメインアンテナがほぼ等幅に表されている。
(D)背面右上部分の形態についての共通点
本願の願書添付図面中の「D-D部のF-F部分拡大図」に表された本願部分の形態と,本意匠に係る出願の同図に表された本意匠部分の形態を比較すると,「第3のスルーホール」と「第4のスルーホール」が小円形孔として形成されており,「第4のスルーホール」の周囲のブースターアンテナが略ドーナツ状に表されている。また,「第3のスルーホール」と「第4のスルーホール」の間には,複数の等幅のブースターアンテナが等間隔に配されている。
イ 差異点
一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。
(a)正面左上部分の形態についての差異点
(a-1)両部分の「A-A部のB-B部分拡大図」を比較すると,本願部分のブースターアンテナの屈曲は直角状であって左方に曲がっており,屈曲部の外方に,やや離れて「第4のスルーホール」が配されているが,本意匠部分の屈曲は鈍角状であって右方に曲がっており,屈曲部の内方に,近接して「第4のスルーホール」が配されている。
(a-2)本願部分の延伸したブースターアンテナの幅は,「第3のスルーホール」周囲のブースターアンテナの最大径よりもやや小さく表されており,最大径箇所から幅が漸次小さくなってブースターアンテナの延伸部分に連続しているが,本意匠部分ではそのような幅の変化はない。
(b)正面右上部分の形態についての差異点
両部分の「A-A部のC-C部分拡大図」を比較すると,「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」の間に配されたメインアンテナは,本願部分では4本であり,各メインアンテナが直線状に形成されているが,本意匠部分では5本であり,各メインアンテナが波状に形成されている。
(c)背面左上部分の形態についての差異点
(c-1)両部分の「D-D部のE-E部分拡大図」を比較すると,「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」を繋ぐメインアンテナが,本願部分では中央やや下寄りで鈍角状に左方に屈曲しているが,本意匠部分では屈曲していない。
(c-2)本願部分の「第1のスルーホール」と「第2のスルーホール」の中間のメインアンテナの幅は,両者の周囲のメインアンテナの最大径よりもやや小さく表されており,最大径箇所から幅が漸次小さくなってメインアンテナの中間部分に連続しているが,本意匠部分ではそのような幅の変化はない。
(d)背面右上部分の形態についての差異点
(d-1)両部分の「D-D部のF-F部分拡大図」を比較すると,「第3のスルーホール」と「第4のスルーホール」の間に配されたブースターアンテナは,本願部分では4本であり,各ブースターアンテナが直線状に形成されているが,本意匠部分では5本であり,各ブースターアンテナが波状に形成されている。
(d-2)本願部分では,「第4のスルーホール」の周囲から上方に向けてブースターアンテナが延伸して,最下段のブースターアンテナに近接した箇所で直角状に左方に屈曲しているが,引用部分では,そのようなブースターアンテナの延伸や屈曲はない。
3 類否判断
(1)意匠に係る物品
前記認定したとおり,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
前記認定したとおり,用途及び機能並びに大きさ及び範囲は共通するものの,両部分の位置は異なっており,特に,中央寄り-両端部,ほぼ平行状-逆ハ字状の位置の差異(向きの差異を含む)は,需要者が一見して気付く差異であるから,非接触型データキャリアの物品分野においてありふれた範囲内の差異であるとはいい難い。
(3)非接触型データキャリアの意匠の類否判断
非接触型データキャリアは電子機器を構成する部品であるから,その需要者には,非接触通信に係る専門業者や,電子機器を製造する者も含まれると考えられる。したがって,非接触型データキャリアの意匠の類否判断においては,そのような需要者を念頭において,物品の全方向から観察される個々の具体的態様を評価するとともに,それらの評価を総合して全体として形態を評価する。
(4)両部分の形態の共通点の評価
両部分の形態の共通点のうち,基板にスルーホールを設けて,その周囲に配線パターンを略ドーナツ状に形成すること,及び配線パターンを等幅で等間隔に配することは,非接触型データキャリアの物品分野の意匠においては,例を挙げるまでもなくありふれているから,非接触型データキャリアの物品分野の意匠の需要者はこれらの共通点に注意を払うとはいい難い。そうすると,共通点(A),(B)及び(D)で指摘したスルーホール周囲の略ドーナツ状のアンテナ形状や,共通点(B)及び共通点(D)で指摘した2つのスルーホールの間に複数の等幅のアンテナが等間隔に配されている形状に係る共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいというべきである。
(5)両部分の形態の差異点の評価
これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,正面左上部分の形態についての差異点(a-1)で指摘した,両部分のブースターアンテナの屈曲の角度と方向の差異(直角状か鈍角状か,左方か右方かの差異),及び屈曲部と「第4のスルーホール」との位置関係(外方か内方か,やや離れているか近接しているかの差異)は,需要者が一見して気付く差異であるから,需要者が両部分を観察する際に異なる視覚的印象を抱くこととなる。したがって,差異点(a-1)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,背面左上部分の形態についての差異点(c-1)で指摘した,メインアンテナが中央やや下寄りで鈍角状に左方に屈曲しているか否かの差異も,上記同様に需要者が両部分を観察する際に異なる視覚的印象を抱くこととなるので,差異点(c-1)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,正面右上部分の形態についての差異点(b)と背面右上部分の形態についての差異点(d-1)については,アンテナの本数の差異(4本か5本かの差異)は需要者に別異の印象を与えないとしても,直線状(本願部分)か波状(本意匠部分)かの差異は,差異点(d-2)で指摘した「第4のスルーホール」周囲から延伸して屈曲するブースターアンテナの有無の差異とあいまって,両部分を観察する看者が抱く視覚的印象に変化を加えているというべきであり,差異点(b)及び差異点(d)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(a-2)及び差異点(c-2)で指摘した,延伸した又は中間のアンテナの幅がスルーホール周囲のアンテナの最大径よりもやや小さく表されて,最大径箇所から幅が漸次小さくなってアンテナの延伸部分又は中間部分に連続しているか否かの差異は,その最大径と延伸部分又は中間部分の幅の差は僅かであり,両部分を観察する需要者に別異の印象を与えるほどではないので,差異点(a-2)及び差異点(c-2)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
したがって,上記(a)ないし(d)の差異点を総合すると,差異点(a-2)及び差異点(c-2)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,それ以外の差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響が大きいことから,形態の差異点は,総じて両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(6)総合判断
以上のとおり,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼし,形態の差異点が共通点を圧するということができる。
(7)小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両部分の用途及び機能並びに大きさ及び範囲も共通するが,両部分の位置の差異はありふれた範囲内の差異であるとはいい難く,両部分の形態についても,差異点は共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。
4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。
したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しない。
そして,前記第3のとおり,本願は,平成29年(2017年)12月22日に願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。
第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであって,願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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