意匠拒絶査定不服審判
2025-019353
包装用容器
- 審判番号
- 2025-019353
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2023-002944
- 登録番号
- 1831940
- 請求日
- 2025年12月03日
- 審決日
- 2026年05月26日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】スタシャー インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 【請求人代理人】高橋 秀明
- 【請求人代理人】塚田 晴美
- 審判長/審判官
- 審判長 富永 亘
- 審判官 伊藤 宏幸
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- D18 .4 -WY (F4-4) / D18 .03 -WY (F4-4)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条、意匠法第9条第1項、意匠法第10条の2第1項、意匠法第9条、特許法第112条、意匠法第2条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
意願2023- 2944「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続の主な経緯
本願は、2021年(令和3年)11月5日のアメリカ合衆国への意匠特許出願29/814,511(以下「第一国出願」という。)に基づくパリ条約による優先権の主張を伴って令和4年4月28日に出願された意願2022-009370(以下「原出願」という。)の一部を意匠法第10条の2第1項の規定により分割して新たな意匠登録出願とした、意匠登録第1777021号の意匠を本意匠とする令和5年2月16日の関連意匠の意匠登録出願であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願の意匠は先願の意匠に類似し最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないから、意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないというものであり、原審審査官は、その先願の意匠として、意匠登録第1776971号(意願2023-002942)の意匠及び意匠登録第1777021号(意願2022-009368)の意匠を引用した。(当審注:意匠登録第1777021号の意匠は、意匠登録第1776971号の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けたものである。以下、意匠登録第1777021号(意願2022-009368)の意匠を「引用意匠1」、意匠登録第1776971号(意願2023-002942)の意匠を「引用意匠2」といい、両者を合わせて「引用意匠」という。)
また、原審審査官は、拒絶理由通知書において「この意匠登録出願の原出願には優先権主張の基礎とする第一国出願が記載されていますが、その優先権証明書の中にはこの意匠登録出願と同一の意匠が表されていないためその効果を認めません。」と付記し、拒絶査定書において「意見書で『出願時の書類『SPECIFICATION AND CLAIM OF DESIGN PATENT APPLICATION』中に『The appendix depicts additional embodiments of the claimed ornamental design for a container』と記載されている通り、『APPENDIX』の旨が付された図面において表された意匠も、意匠登録を受けようとする意匠に該当するものであり』と述べられていますが、『The appendix depicts additional embodiments of the claimed ornamental design for a container』は『請求されているデザインの追加的な具体化』といった趣旨であって、それそのものが意匠登録を受けようとするものであるとはいえません。」と付記した。
第2 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の類否
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)と引用意匠は、意匠に係る物品が「包装用容器」で同一であり、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)が類似するものである。
すなわち、上端縁にファスナー部を有し底面を略楕円形状とした、正面視略逆台形状を呈する袋体全体の基本形状は、この種物品において本願出願前から見られるものであるが、太幅のファスナー部を袋体表面からやや盛り上がるような態様で目立つように形成している点、及び、その上方全体に、比較的大きな高さ(幅)を有し左右両端部を不連続とした、前後独立構造の略帯状立ち上がり部を形成している点は、この種物品の先行意匠には見られない新規な特徴といえる。これら共通の特徴は、包装用容器という物品において重要な容器(袋)の密閉度及び開閉作業のしやすさにも直接影響するものであるから、需要者(使用者)の注意を強く引くものであり、袋体全体の基本形状が共通することとも相まって、需要者の美感に強い類似の印象を与えるものとなっている。その余の相違点は類否判断を左右するほどのものではないから、意匠全体として本願意匠と引用意匠の形状等は類似する。
よって、本願意匠は引用意匠に類似する。
2 引用意匠及び本願意匠の判断基準日
引用意匠及び本願意匠はいずれもパリ条約による優先権の主張を伴う意匠登録出願の意匠であり、引用意匠2及び本願意匠は意匠法第10条の2第1項の規定による分割出願の意匠であって、本件審判請求においては特に本願意匠に係る優先権の認否が争われているところ、これらの意匠について、意匠法第9条及び同法第10条の規定の適用に係る判断の基準日(以下「判断基準日」という。)を検討する。
(1)引用意匠1
引用意匠1は、意願2022-009368の出願当初の願書に添付した図面中に「正面、平面及び右側面を表す図」~「底面図」の表示によって表された「包装用容器」の意匠である。
また、引用意匠1は、意願2022-009368について適法に提出された優先権書類の図面ページ中に「FIG.1」~「FIG.7」の表示により表された「container」の意匠と同一と認められるため、引用意匠1については、第一国出願に基づく優先権が認められる。
よって、引用意匠1の判断基準日は、第一国出願の出願日である令和3年11月5日とすべきである。
(2)引用意匠2
引用意匠2は、その原出願である意願2022-009368の出願当初の願書に添付した図面中に「正面、平面及び右側面を表す図2」~「底面図2」の表示によって表された「包装用容器」の意匠と同一と認められるため、引用意匠2については、原出願の出願日である令和4年4月28日への出願日遡及効が認められる。
また、引用意匠2は、その原出願である意願2022-009368について適法に提出された優先権書類の図面ページ中に「FIG.8」~「FIG.14」の表示により表された「container」の意匠と同一と認められるため、引用意匠2については、第一国出願に基づく優先権が認められる。
よって、引用意匠2の判断基準日は、第一国出願の出願日である令和3年11月5日とすべきである。
(3)本願意匠
本願意匠は、その原出願である意願2022-009370の出願当初の願書に添付した図面中に「斜視図」~「底面図」の表示によって表された「包装用容器」の意匠と同一と認められるため、本願意匠については、原出願の出願日である令和4年4月28日への出願日遡及効が認められる。
一方、第一国出願に基づく優先権の主張について、原審審査官はその効果を認めていないが、請求人は、本願の原出願である意願2022-009370について適法に提出された優先権書類のAPPENDIXページ中に「FIG.C」~「FIG.I」の表示により表された「container」の意匠(以下「請求人主張の意匠」という。)が本願意匠と同一であり、その意匠を本願意匠に係る優先権主張の基礎としている旨を主張するので、この請求人主張の妥当性について検討する。
ア 第一国出願におけるAPPENDIXページの位置付け
本願は第一国であるアメリカ合衆国への意匠特許出願を優先権主張の基礎としたものであるが、同国特許法及び関係法令には、APPENDIXという名称の書類を意匠特許出願における所定の提出書類として位置付ける記述は見当たらない。一方、同国特許商標庁が公表している特許審査便覧(MANUAL OF PATENT EXAMINING PROCEDURE、以下「米国特許審査便覧」という。)には、出願後の補正や継続出願又は分割出願を見据えた出願手続に関して次のような記述がある。(当審注:日本国特許庁ウェブサイトに掲載の日本語訳(第9版、2022年7月更新、2023年2月公開)の一部を引用し、下線は当審合議体が付した。)。
「第1500章 意匠特許
1503 特許法第16章に基づいて提出された意匠特許出願の要素
1503.01 明細書」
「II. 説明
明細書において図面の簡単な説明を超える(明細書における)意匠の説明は一般的には必要ではないが、…。
そのような説明は、要求されることはないが、禁止されず、また、出願人の裁量で、明細書に組み込むか、又は別の紙面に提示することができる。Ex parte Spiegel、 1919 C.D. 112、268 O.G. 741 (Comm’r Pat. 1919) 。」
「(B) 次の形式の陳述は、明細書において許可され得ない:
(2) 図面には開示されていないクレームされている意匠の別の実施態様を記載又は示唆する陳述は、図示されたものの鏡像である、又は図示されたものから明らかとなる形状及び形態を有するものを除き、発行される意匠特許の明細書において許可されない。しかしながら、そのような陳述は、将来的な補正について先行する根拠を提示するために、当初に提出された意匠出願に含ませることができる。また、図面に示された範囲を超えて、クレームされている意匠の範囲を拡大することを意図した陳述は、許可されない。」
「1504.20 特許法第120条に基づく利益」
「¶ 15.26 非仮出願における先の出願の識別-主張される利益」
「…出願人は、先の出願が、特許法第112条(a)…によって要件とされる仕様で発明を開示している場合のみ、特許法第120条に基づいて後日にクレームされる発明に関する先の出願の出願日の利益を主張する権原を有する。すべての継続及び分割出願において、審査官によって特許法第120条に基づく優先権に関する条件が満たされているか否かについての判断がなされるべきである。継続出願及び分割出願におけるクレームされた意匠は、当初の出願に開示されていなければならない。この条件が満たされていなければ、出願は先の出願日の利益を受ける権原を有しておらず、したがって、審査官は出願人が特許法第120条に基づく利益主張の権原を有していない理由を特定することによって当該出願人に対して告知すべきである。…」
上記米国特許審査便覧の記述を踏まえると、同国特許商標庁による公式見解として、同国意匠特許制度においては、(a)出願時に、図面の簡単な説明を超える意匠の説明を明細書の中又は別の紙面において提示することが認められていること、(b)将来的な補正についての根拠を提示するために、図面に開示されていないクレームされている意匠の別の実施態様を記載又は示唆する陳述を当初の出願に含ませることができること、(c)当初の出願に開示されていた意匠については、適法な継続出願又は分割出願の手続により先の出願日の利益を受けた出願をすることができることが、同国における出願人の正当な権利として考慮されていると解される。
そうした前提の下、本願意匠に係る優先権書類のAPPENDIXページには、その説明文中に「Attached hereto and submitted herewith as a part of this application is an Appendix to the Specification, which includes additional images of a container,…」との記載があることから、当該APPENDIXページは、第一国出願の一部として提出されたものであることが認められる。また、当該APPENDIXページが優先権書類の中に現に含まれていることからは、当該APPENDIXページは、第一国官庁である米国特許商標庁によって上記米国特許審査便覧の記述に準拠した手続書類とみなされ、その出願日が認定されたものであることが推認される。
そうすると、本願意匠に係る優先権書類に関する限り、当該APPENDIXページについても、第一国出願における当初の出願の一部を構成すると認めるべきものといえる。
イ 請求人主張の意匠と本願意匠の対比
請求人主張の意匠と本願意匠を対比すると、「container」と「包装用容器」とで具体的表記は異なるものの、意匠に係る物品は同一と認められる。
また、図面に表された内容を見る限り、その形状は同一と認められる一方、請求人主張の意匠には全体に青みがかった色彩が表されているのに対し、本願意匠にはグレースケール以外の色相が表されていない点において、色彩が相違している。この点に関し、請求人主張の意匠が表されたAPPENDIXページ中の説明文には、次の記載が含まれている。
「The inventor(s) regard their design as that shown in the Figures in the Specification and Appendix …」
「…, the inventor(s) reserve the right to create line drawings from any of the color images disclosed herein or to otherwise disclaim the specific color of any figure. Additionally, the inventor(s) reserve the right to convert the color images disclosed herein as greyscale images.」
上記記載からは、発明者は、明細書とAPPENDIXページの図に表されたとおりのものを自身の意匠とみなしていること、及び、発明者は、開示したカラーの図から線図を作成し、色彩を非請求とし又はその図をモノクロの図に変換する権利を留保する旨の意思表示をしていることが認められ、これを換言すれば、当該APPENDIXページにカラーの図を用いて表された意匠は、第一国出願の当初時点においては、色彩を伴う意匠として表されていたことが合理的に認定できる。
ウ 優先権の認否
パリ条約の同盟国の国内法令により正規の国内出願とされる全ての出願、すなわち、結果のいかんを問わず、当該国に出願をした日付を確定するために十分な全ての出願は、優先権の基礎とすることができ(パリ条約第4条A)、正規の国内出願となし得る手続の内容及び国内法令による正規の国内出願かどうかについての判断は、第一国官庁の専権事項として当該国の法令等に基づく判断が行われるべきものである。
また、意匠についての優先期間は6か月であり、優先権主張の基礎とすることができるのはパリ条約の同盟国における最初の出願であることからすると(同条C)、先の国内出願の出願日の利益を受けた事後的な分割出願等の手続によって優先期間が不当に拡大されてしまう事態は避けなければならないのであるから、先の国内出願の出願日の利益を受けることができる意匠については、それが最初に開示された当初の出願の日付をもって優先権の認否を判断すべきである。
そして、パリ条約による優先権は、優先期間内に行われた他の出願等によって不利な取扱いを受けず、また、第三者に対していかなる権利等も生じさせない強大な効果を伴うものであることからすると(同条B)、優先権が認められるか否かは、第一国出願の意匠と我が国に出願された意匠が同一といえるかどうかを判断の基準とし、その判断においては、我が国意匠法における意匠の定義(意匠法第2条第1項)を前提に、意匠に係る物品及び当該物品の形状等の同一性が実質的に担保されていることを、第一国の法令等も考慮して判断すべきである。
これを本願について見ると、上記アのとおり、本願意匠に係る優先権書類に関する限り、APPENDIXページ中に開示された意匠も優先権の基礎とすることができると解するのが相当であるから、APPENDIXページ中に開示された意匠であることのみを理由として優先権を認めないとすることはできない。
一方、上記イのとおり、優先権書類のAPPENDIXページにカラーの図を用いて表された意匠は、第一国出願の当初時点において色彩を伴う意匠として表されていたと認められるところ、請求人主張の意匠と本願意匠とでは、意匠に係る物品全体の色彩が相違している。この種物品の意匠においては、容器(袋体)を無色又は有色とするものがあり、その色彩の有無や具体的な色相の違いによって需要者の美感に与える印象が変わり得ることに鑑みると、この色彩に係る相違は、意匠の形状等を同一の範囲を超えて異ならしめているものといえる。
そうすると、本願意匠について提出された第一国出願の優先権書類中には本願意匠と同一の意匠が表されているとはいえないから、本願意匠については第一国出願に基づく優先権を認めることができない。
エ 小括
以上の検討によれば、本願意匠については、原出願への出願日遡及効は認められるものの、第一国出願に基づく優先権は認められないから、その判断基準日は、原出願の出願日である令和4年4月28日とすべきである。
3 原査定における拒絶の理由の妥当性
上記1及び2によれば、原査定における拒絶の理由のとおり、令和4年4月28日を判断基準日とする本願意匠は、令和3年11月5日を判断基準日とする先願の引用意匠に類似するため、意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないものであったが、請求人は、令和8年1月19日の手続補正書において願書に本意匠の表示を追加し、本願意匠を意匠登録第1777021号の意匠(引用意匠1)を本意匠とする関連意匠とした。
よって、意匠法第9条第1項の規定による拒絶の理由は既に解消しており、本願意匠には同法第10条第1項の規定が適用される。
第3 結び
以上のとおりであって、原査定の拒絶の理由をもって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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