特許拒絶査定不服審判
2017-007369
電子デバイスの製造方法、電子デバイス及び発振器
- 審判番号
- 2017-007369
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-010537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月23日
- 審決日
- 2018年10月01日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セイコーインスツル株式会社
- 【請求人代理人】内野 則彰
- 【請求人代理人】谷川 徹
- 分類
- P18 .121-WZ (H03H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 10537「電子デバイスの製造方法、電子デバイス及び発振器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-143559〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成25年1月23日の出願であって,平成28年7月15日付けで拒絶理由が通知され,同年9月20日付けで手続補正書が提出され,平成29年2月20日付けで拒絶査定がなされ,同年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正書が提出されたものである。その後,平成30年6月11日付けで当審が拒絶理由を通知したところ,同年7月30日付けで手続補正書が提出された。
第2 本願発明
平成30年7月30日付けで補正された特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「複数の貫通電極が形成される絶縁性のベース基板と,
前記ベース基板の一方の表面に実装される電子素子と,
前記電子素子を収容し前記ベース基板に接合される蓋体と,を備え,
前記ベース基板は,前記ベース基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と前記端面の周囲の前記表面とにニッケル膜が1μmから5μmの厚さにキャップされたように密着して覆って形成され,さらにその上にニッケル膜及び金属膜が形成された積層構造の外部電極を有し,
前記外部電極と前記表面との界面に金属触媒が形成される電子デバイス。」
第3 当審が通知した拒絶理由
平成30年6月11日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は,この出願の請求項8に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
なお,本願発明は,上記請求項8に係る発明に対応する。
1.特開2012-160778号公報
2.特開2008-263121号公報
3.特開2012-44105号公報
第4 引用文献の記載,引用発明,周知技術等
1 引用文献1及び引用発明
(1)当審拒絶理由で引用された特開2012-160778号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
互いに接合されたベース基板及びリッド基板と,両基板の間に形成された電子部品を封止可能なキャビティと,を備えたパッケージの製造方法であって,
前記ベース基板を厚み方向に貫通する金属芯材を有し,該金属芯材を介して前記電子部品と外部とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程と,
前記ベース基板の上面と前記リッド基板の下面とを互いに重ね合わせた状態で陽極接合し,両基板の間に前記キャビティを画成する接合工程と,
前記ベース基板の下面に導電性材料を被膜して,前記貫通電極に導通する外部電極を形成する外部電極形成工程と,を備え,
前記接合工程と前記外部電極形成工程との間に,前記ベース基板の下面を研磨して,該下面のうちの少なくとも前記外部電極が形成される部分と,前記金属芯材の下端面と,を同時に研磨する研磨工程を行うことを特徴とするパッケージの製造方法。」
イ 「【0029】
(パッケージ)
次に,パッケージ9について詳細に説明する。
図1,図3及び図4に示すように,リッド基板3は,ガラス材料,例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な透明の基板であり,略板状に形成されている。そして,ベース基板2が接合される接合面側には,圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは,両基板2,3が重ね合わされたときに,圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして,リッド基板3は,この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で該ベース基板2に対して陽極接合されている。
【0030】
ベース基板2は,リッド基板3と同様にガラス材料,例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり,図1から図4に示すように,リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで略板状に形成されている。
このベース基板2には,該ベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)30,31と,一対の貫通電極32,33と,が形成されている。」
ウ 「【0039】
(圧電振動子及びパッケージの製造方法)
次に,上述した圧電振動子1の製造方法を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
なお,本実施形態では,ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して,圧電振動子1を一度に複数製造する場合を例に挙げて説明すると共に,同時にパッケージ9の製造方法についても説明する。
・・・中略・・・
【0043】
次に,上記工程と同時或いは前後のタイミングで,後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を,陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
まず,ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に,エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで,ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極32,33を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S32)。ここで,この貫通電極形成工程(S32)について,詳細に説明する。
・・・中略・・・
【0053】
次に,作製した複数の圧電振動片4を,それぞれ引き回し電極36,37を介してベース基板用ウエハ40の上面40aにバンプ接合するマウント工程を行う(S40)。
まず,一対の引き回し電極36,37上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして,圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後,バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより,圧電振動片4は,バンプBに機械的に支持されると共に,マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。よって,この時点で圧電振動片4の一対の励振電極15は,一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ導通した状態となる。
特に,圧電振動片4は,バンプ接合されるので,ベース基板用ウエハ40の上面40aから浮いた状態で支持される。
【0054】
圧電振動片4のマウントが終了した後,ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。
具体的には,図示しない基準マーク等を指標としながら,両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントし,ベース基板用ウエハ40の上面40aとリッド基板用ウエハ50の下面とを互いに重ね合わせる。これにより,マウントされた圧電振動片4が,ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40,50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0055】
次いで,重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ,所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。
具体的には,接合膜35とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると,接合膜35とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ,両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより,圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ,ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図16に示すウエハ体60を得ることができる。
・・・中略・・・
【0063】
これにより,図19に示すように,ベース基板用ウエハ40の下面40bを全面に亘って研磨加工することができ,後述する外部電極38,39が形成される部分と,芯材部7bの露出している下端面と,を同時に研磨することができる。そのため,陽極接合によってベース基板用ウエハ40の下面40bに析出した図示しないNaイオン(陽イオン)の析出物を除去することができると共に,芯材部7bの下端面に図示しない酸化膜が生成されていたとしても該酸化膜を除去することができる。
【0064】
続いて,上記研磨工程(S70)が終了した後,ベース基板用ウエハ40の下面40bに導電性材料を被膜して,一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S80)。
【0065】
特に,上記したように,Naイオンの析出物及び酸化膜を取り除いた状態で,ベース基板用ウエハ40の下面40bに導電性材料を被膜して外部電極38,39を形成することができるので,外部電極38,39の密着性を高めることができ,剥離され難い強固な外部電極38,39とすることができる。」
(2)上記(1)に摘記した各記載事項及び図面,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一対の貫通電極が形成されガラス材料からなるベース基板と,
前記ベース基板の上面にバンプ接合される圧電振動片と,
前記圧電振動片を収容しベース基板と陽極接合されるリッド基板と,を備え,
前記ベース基板は,その下面に,前記一対の貫通電極と電気的に接続され,前記ベース基板との密着性を高めた,導電性材料を被膜して形成された外部電極を有する,
パッケージ。」
2 引用文献2
(1)同じく当審拒絶理由で引用された特開2008-263121号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0101】
また,ヒートシンクを搭載することで高放熱の半導体装置に実現することができる。
(半導体装置の製造方法)
図12Aから図12Lは,本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造法を工程順に示す断面図である。本実施形態の製造方法は,図1に示したような第1実施形態の半導体装置を製造するためのものである。
・・・中略・・・
【0106】
フルアディティブ法は,基板上に無電解めっき触媒を吸着させた後に,レジストでパターンを形成し,このレジストを絶縁膜として残したまま触媒を活性化し,無電解めっき法により絶縁膜の開口部に金属を析出させることで所望の配線パターンを得る方法である。
・・・中略・・・
【0111】
また,ビア19の位置に予め通電用のポストを形成したあとに絶縁層21を形成し,研磨・研削により絶縁層21表面を削って通電用ポストを露出させてビア19を形成する方法が用いられても構わない。また,下記に示す上層配線20と同じ工程でビア19を形成しても良い。
【0112】
さらに,ビア19上に,例えば,サブトラクティブ法,セミアディティブ法またはフルアディティブ法等の方法により上層配線20を形成する。
上層配線20としては,例えば,銅,銀,金,ニッケル,アルミニウム,およびパラジウムからなる群から選択された少なくとも1種の金属もしくはこれらを主成分とする合金が用いられる。特に,電気抵抗値およびコストの観点から,上層配線20を銅により形成することが望ましい。本実施形態では,セミアディティブ法を用い,上層配線20には銅が用いられている。」
(2)上記(1)に摘記した記載事項及び図面,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献2には,次の技術事項が記載されていると認められる。
「ニッケルからなる金属の配線パターンと,ビアが形成された絶縁層の表面との界面に触媒を形成して,前記金属の無電解めっきを行うこと。」
3 周知技術
(1)特開2004-6944号公報(以下,「周知例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0007】
ところで,この種の配線基板1のパッド11をなすメタライズ層には上記したようにニッケルメッキがかけられるが,そのメッキ層の厚さは,従来,1μm程度が耐蝕性において必要十分な厚さとされていた。また,厚すぎればメッキ後に発生する内部応力によりメタライズ層が剥離する危険性が高くなるなどかえって問題が発生しやすく,さらに,メッキ工数(メッキ処理時間)などの生産効率上ないしコスト上からして一般には厚くても1.5μmまでとするのが適切とされ,したがってその標準的な厚さは,1~1.5μmの範囲とされていた。」
イ 「【0012】
本発明において,ニッケルメッキ層の厚さを2.5μm以上としたのは,これより薄いと,下地メタライズ層が部分的に露出し,メッキ層にピンホールができハンダが濡れない部分が残存し,その部分に起因してボイドが形成されるためである。一方,ニッケルメッキ層の厚さが8μmを超えるようだと,メッキ析出時にメッキ層に発生する内部応力やセラミックや下地メタライズ層とメッキ層との熱膨張係数の違いに起因して,そのメッキ後において下地メタライズ層の密着性の低下や密着不良(剥離や基板との間のクラックの発生)を招いてしまい,この面において接続信頼性を低下させる危険性が増大する。本発明において,ニッケルメッキ層の厚さは2.5~8μmとすればよいが,好ましくは,3~7μmの範囲とするとよい。この範囲では,ボイドの発生率も低く,しかも内部応力による下地メタライズ層の剥離の危険性も一層低減できるからである。
【0013】
なお,ニッケルメッキは,電気的に独立したパッドには無電解メッキやバレルメッキによることになるが,相互に電気的導通が確保されているようなパッドでは電解メッキとすることができる。ただし,その厚さはいずれにおいても,2.5~8μmの範囲であればよく,好ましくは3~7μmの範囲である。また,ここにニッケルメッキには,Ni-Bメッキ,Ni-Pメッキ,Ni-Coメッキ等のNi合金メッキも含む。
【0014】
ここで無電解メッキによってニッケルメッキ層を形成する場合には,少なくともNi-Bメッキによってニッケルメッキ層の最表面を形成するのが好ましい。具体的にはニッケルメッキ層全体をNi-Bメッキによって形成するのが好ましく,その他,ニッケルメッキ層のうち下層をNi-Pメッキなどによって形成し,その後,Ni-Bメッキにより最表層を形成してもよい。Ni-Bメッキによって形成されたNi-Bメッキ層はハンダ濡れ性に優れるからである。
【0015】
また,ニッケルメッキ層の上には,何も設けないようにしてもよいが,厚さ0.01~1μm,さらに好ましくは0.03~0.1μmの金(Au)メッキ層を形成するのが好ましい。金メッキ層により下層(下地)となるニッケルメッキ層(以下,下地ニッケルメッキ層若しくは下地ニッケル(層)ともいう)の酸化防止ができ,ハンダ濡れ性を向上及び安定化させ得るからである。」
ウ 「【0022】
そして,本発明に係る配線基板の製造に当たっては,ニッケルメッキ層に金メッキ層若しくは金ニッケル層を形成する場合も含め,ニッケルメッキ層の厚さが2.5~8μm好ましくは3~7μmとなるように,そのニッケルメッキを複数回に分けてかけるのが好ましい。すなわち,こうしたニッケルメッキ層の厚さは1回のメッキでも得ることができるが,複数回でその厚さとなるようにメッキをかけ,複数のニッケルメッキ層とするのがより好ましい。複数回に分けてメッキをかけた場合には同じ厚さを1回でかけた場合に比べ,下地メタライズ層の被覆がより具合良くなされ,その露出を略皆無とし得る結果,ボイドの発生数を一層低減できるからである。
【0023】
なお,このように複数回に分けてニッケルメッキをかける際には,各回のニッケルメッキ層の厚さをなるべく一定に設定するのがメッキ作業上から好ましい。またメッキの密着安定化のためやメッキ層の内部応力の緩和のため,複数回に分けたニッケルメッキ工程の間に,少くとも1回の加熱処理工程を含めるとよく,好ましくはその加熱処理は,各回のメッキ後(次回のメッキの前)ごとにするとよい。このようにすることで,メッキのブリスター(フクレ)や下地メタライズ層の剥離(ハガレ)の防止に有効だからである。」
(2)特開2000-114422号公報(以下,「周知例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】この種の電子部品用パッケージは,例えばアルミナセラミックなどからなるパッケージ本体(以下,単に本体ともいう)の底面側に,例えば無酸素銅からなる放熱部材がAg-Cu共晶合金でロー(ろう)付けされて構成される。このようなパッケージは,放熱部材のロー付け後,酸化(腐食)防止等のため,本体のボンディングパッド(以下,パッドともいう)などの金属面(メタライズ面)及び放熱部材の露出面(放熱面)にニッケルメッキ(以下,Niメッキともいう)及び金メッキ(以下,Auメッキともいう)がかけられるのが普通である。
【0003】ここにNiメッキは,耐蝕性さらにはAuメッキとの密着性を確保するためにかけられるのであるが,ピンホールの発生を防ぎ耐蝕性を高めるためには,なるべく厚めにかけるのが好ましく,この種のパッケージ部品では一般に2.5~7.0μmの厚さとされるのが普通である。しかし,このように一度に厚くかける場合には,メッキ後に発生する内部応力によりパッドなどをなすメタライズ層が剥離する危険性が高くなることや,そのNiメッキ自体の密着性が低下したり,フクレ(ブリスター)が発生する危険性が高くなり,パッケージの製品不良を招いてしまう。このため,Niメッキは複数回に分けてかけるのが好ましいとされている。
【0004】そして複数回に分けてかける場合には,耐蝕性さらには生産効率(メッキ処理時間)やコスト面から,1回のメッキ厚は従来0.5~1.3μmの範囲とされるのがこの種の製品にかかわるメッキ技術における常識とされていた。そして,このようなメッキ工程では同メッキの密着性を高めるなどのため,1回目のNiメッキの後に,放熱部材のロー付け温度以下で例えば800℃でロー付けした場合には500~700℃で加熱処理(以下,熱処理ともいう)をし,その後2回目のNiメッキをかけていた。」
(3)特開2007-63633号公報(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0032】
図1および図2によく表れているように,配線層31,32上には,半導体チップ4の端子部40や回路基板2の端子パッド20と電気的に接続する部位に,下地めっき層35,36および表面めっき層37,38が形成されている。」
イ 「【0037】
下地めっき層35,36は,固溶体層35B,36Bを含む合計の厚さT1が3~8μmに形成するのが好ましい。これは,下地めっき層35,36の厚みが不当に小さい場合には,下地めっき層35,36によって配線層31,32を確実に被覆できず,表面めっき層37,38を配線層31,32に充分強固に被着させることができない場合がある一方,下地めっき層35,36の厚みが不当に大きい場合には,下地めっき層35,36の内部応力に起因して,配線層31,32から下地めっき層35,36自体が剥離したり,配線層31,32が絶縁基体30から剥離したりすることを適切に抑制できない場合があり,また生産性,経済性が必要以上に悪化するからである。
【0038】
なお,図示した下地めっき層35,36は,単一の合金層35A,36Aおよび固溶体層35B,36Bからなる構成であったが,下地めっき層は,最上層(表面めっき層37,38と接する表層部)が固溶体層35B,36Bであればよく,その他のめっき層を含んだ構成であってもよい。この場合のめっき層は,単一成分(微量成分を含有する場合を含む)からなるめっき層であっても,複数成分からなる合金めっき層であってもよい。
【0039】
すなわち,下地めっき層31,32の厚さを5μm以上とする場合,一度にこの厚さまで下地めっき層31,32(固溶体層35B,36Bが形成されていない状態)を被着させるよりも,いったん薄く(1~2μm程度の厚さで)1次の下地めっき層(図示せず)を被着させた後,所定の厚さまで2次以降のめっき層(図示せず)を被着させるようにすることが望ましい。
【0040】
これにより,各下地めっき層31,32の内部で応力を分散させることができるため,下地めっき層31,32の厚みが大きい場合であっても,内部応力に起因する不具合を効果的に防止することができる。
【0041】
また,上記1次のめっき層等,最上層以外の下地めっき層は,いったん被着させた後,最上層の下地めっき層を被着させる前に,少なくとも1回,熱処理することが好ましい。これにより,内部応力を緩和し,下層として位置する下地めっき層との密着性(熱拡散性)を向上させることができる。
【0042】
表面めっき層37,38は,配線層31,32および下地めっき層35,36の酸化腐食を防止するためのものであり,その厚みT2が0.3~1.5μmに形成されている。この表面めっき層37,38は,たとえば金や白金などの耐食性に優れる金属により形成されている。」
(4)例えば周知例1~3の各記載(上記(1)~(3))から,次の技術事項は周知技術と認められる。
「外部電極等をニッケル等の膜及び金等の金属膜からなる積層構造で形成する際,応力の低減のため,めっきにより形成されるニッケル等の膜を複数の層とすること。」
4 技術常識
(1)例えば周知例1(上記3(1)の特に段落【0007】,【0012】を参照),周知例2(同(2)の特に段落【0003】,【0004】を参照),周知例3(特に上記3(3)イを参照)の各記載からも明らかなように,「金属膜の厚さの上限及び下限を,応力及び耐食性を考慮して決定すること。」は技術常識(以下,「技術常識1」という。)である。
(2)例えば特開2000-313927号公報(段落【0003】等参照),特開平9-59778号公報(段落【0002】等参照)の各記載からも明らかなように,「無電解めっきの触媒として,金属触媒を用いること。」は技術常識(以下,「技術常識2」という。)である。
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「一対の貫通電極」は,複数の貫通電極である。
引用発明の「ガラス材料」,「圧電振動片」は,それぞれ,絶縁性材料,電子素子の一種であり,引用発明の「バンプ接合」,「陽極接合」は,それぞれ,実装,接合の一形態である。
引用発明の「リッド基板」,「パッケージ」は,それぞれ本願発明の「蓋体」,「電子デバイス」に相当する。
引用発明の「外部電極」が,「ベース基板」の「下面に」,「前記一対の貫通電極と電気的に接続され,前記ベース基板との密着性を高めた,導電性材料を被膜して形成された」ものであることと,本願発明の「外部電極」が「前記ベース基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と前記端面の周囲の前記表面とにニッケル膜が1μmから5μmの厚さにキャップされたように密着して覆って形成され,さらにその上にニッケル膜及び金属膜が形成された積層構造の」ものであることとは,引用文献1の図3等も考慮すると,外部電極が,ベース基板の他方の表面に露出する貫通電極の端面と前記端面の周囲のベース基板の表面とに導電性材料の膜がキャップされたように密着して覆って形成されたものであることにおいて,共通している。
2 したがって,本願発明と引用発明とは以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)「複数の貫通電極が形成される絶縁性のベース基板と,
前記ベース基板の一方の表面に実装される電子素子と,
前記電子素子を収容し前記ベース基板に接合される蓋体と,を備え,
前記ベース基板は,前記ベース基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と前記端面の周囲の前記表面とに導電性材料の膜がキャップされたように密着して覆って形成された外部電極を有する,
電子デバイス。」
(相違点)一致点の「導電性材料の膜」が形成された「外部電極」に関し,本願発明は,「ニッケル膜が1μmから5μmの厚さに」「形成され」,「さらにその上にニッケル膜及び金属膜が形成された積層構造の」ものであるとともに,「前記外部電極と前記表面との界面に金属触媒が形成される」ものであるのに対し,引用発明は,それらの特定がない点。
3 そこで,上記相違点について検討する。
引用発明の「外部電極」は「導電性材料を被膜して形成された」ものであるところ,被膜形成の具体化のために,引用文献2に記載の技術事項である「ニッケルからなる金属の配線パターンと,ビアが形成された絶縁層の表面との界面に触媒を形成して,前記金属の無電解めっきを行うこと」(上記第4の2(2))を適用して,引用発明の「外部電極」が,ベース基板の他方の表面に露出する貫通電極の端面と前記端面の周囲の前記表面とにニッケル膜がキャップされたように密着して覆って形成されたものとするとともに,前記外部電極と前記表面との界面に触媒が形成されるものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
その際,周知技術(上記第4の3(4))及び技術常識1(同4(1))に基づき,引用発明の「外部電極」を,上記ニッケル膜,その上に形成されたニッケル膜及び金属膜からなる,積層構造のものとするとともに,前者のニッケル膜の厚さの上限及び下限を応力及び耐食性に基づいて設定することは,上記技術事項の適用において当業者が適宜採用し得る程度のことであり,ここで,上限及び下限の具体的な数値は設計的事項である。
また,上記界面に形成される無電解めっきの触媒が金属触媒であることは,技術常識2(上記第4の4(2))から明らかである。
4 また,本願発明の作用効果は,引用発明,引用文献2に記載の技術事項,周知技術及び技術常識1,2から当業者が予測できる程度のものである。
第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献2に記載の技術事項,周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-007369