特許拒絶査定不服審判
2017-006100
電子写真用部材
- 審判番号
- 2017-006100
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-157767
- 請求日
- 2017年04月27日
- 審決日
- 2017年11月27日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友理工株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人あいち国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 黒瀬 雅一
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 森次 顕
- 分類
- P18 .113-Z (G03G) / P18 .121-Z (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-157767「電子写真用部材」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-130318〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、本願は、平成25年7月30日(優先権主張平成24年11月30日)の出願であって、平成29年1月11日付けで手続補正書が提出され、同年1月26日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年4月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成29年4月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。)
なお、上記平成29年4月27日付け手続補正書により、請求項1は、補正されなかった。
「表層を有し、電子写真装置に用いられる電子写真用部材であって、
上記表層は、該表層の骨格を形成するマトリックスポリマーと、該マトリックスポリマー中に添加されており、上記表層表面に存在して上記表層表面を改質する表面改質剤とを有しており、
上記表面改質剤は、分子内に、シリコーン基を有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位とフッ素含有基を有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位とを含む共重合体であり、
上記マトリックスポリマー100質量部に対し、上記表面改質剤の添加量が0.01質量部以上40質量部以下であることを特徴とする電子写真用部材。」
第3 引用刊行物
原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前である平成15年1月18日に頒布された刊行物である特開2003-3032号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)
1 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の(A)~(E)を必須成分とすることを特徴とする導電性組成物。
(A)下記の(a)~(c)を用いてなる共重合体。
(a)フッ素化(メタ)アクリレート。
(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート。
(c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート。
(B)フッ素化オレフィン系樹脂。
(C)(メタ)アクリル系樹脂。
(D)イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂の少なくとも一方からなる硬化剤。
(E)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
【請求項2】 請求項1記載の導電性組成物の硬化塗膜からなる表層を有することを特徴とする導電性ロール。」
2 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性組成物およびそれを用いた導電性ロールに関するものである。」
3 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記シリコーングラフトアクリル系ポリマーは、図6に示すように、直鎖状のアクリル系ポリマー主鎖51に、シリコーンマクロモノマーがグラフト重合してなるシリコーン側鎖52を備えた構造であり、シリコーンの表面エネルギーが小さいため、シリコーン側鎖52が表面側にいわば起立した状態で偏在分布している。したがって、上記シリコーングラフトアクリル系ポリマーを主成分とする導電性組成物を用いて表層を形成してなる導電性ロールは、帯電性の高いシリコーンが表層表面に高濃度で分布しているため、表層表面に出るSi元素量が多く、その制御が困難である。その結果、上記導電性ロールは、初期のトナー帯電性には優れているが、そのためにトナーやトナー外添剤であるシリカに電荷が蓄積しやすく、耐久時の帯電性の低下が著しいため高画質を維持できず耐久性に劣るとともに、耐久時にトナーフィルミングが発生するためトナー離型性にも劣るという難点がある。また、上記表層用材料である導電性組成物には、導電剤としてカーボンブラックを用いているが、このカーボンブラックはビーズミルのようなもので分散され、初期的には問題ないが、経時により分散していたカーボンブラックの再凝集が起きて、電気抵抗のばらつきが大きくなり、高画質画像の出力で不具合が生じる。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、トナー離型性に優れ、かつ、電気抵抗のばらつきが小さい導電性組成物およびそれを用いた導電性ロールの提供をその目的とする。」
4 「【0007】すなわち、本発明者らは、トナー離型性に優れ、かつ、電気抵抗のばらつきが小さい導電性ロールを得るべく、表層用材料を中心に鋭意研究を重ねた。そして、フッ素化(メタ)アクリレート(a)を用いてなる特定の共重合体(A成分)とフッ素化オレフィン系樹脂(B成分)とを併用すると、フッ素成分によりトナー離型性が向上することを突き止めた。また、表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック(E成分)を用いると、カーボンブラックの表面がポリマーにて覆われているため、カーボンブラック表面の官能基が露出することがなく、それゆえに極性がなくなり分散性が向上し、カーボンの凝集を抑制でき、電気抵抗のばらつきが小さくなることを突き止めた。その結果、特定の共重合体(A成分)とフッ素化オレフィン系樹脂(B成分)と(メタ)アクリル系樹脂(C成分)と特定の硬化剤(D成分)と特定のカーボンブラック(E成分)とを必須成分とする導電性組成物を用いて表層を形成してなる導電性ロールを用いると、所期の目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。」
5 「【0020】上記特定の共重合体(A成分)と、フッ素化オレフィン系樹脂(B成分)と、(メタ)アクリル系樹脂(C成分)とを混合してなるベースポリマーにおいて、各成分の配合割合は、A成分が0.5~15重量%、B成分が15~85重量%、C成分が10~75重量%の範囲に設定することが相溶性の点からも好ましい。ただし、A成分とB成分とC成分の合計は100重量%である。」
6 「【0024】上記硬化剤(D成分)の配合割合は、上記ベースポリマー(A成分+B成分+C成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して1~100部の範囲が好ましく、特に好ましくは5~50部である。すなわち、硬化剤(D成分)が1部未満であると、低摩擦化効果に劣る傾向がみられ、逆に100部を超えると、塗膜硬度が上がりすぎ、回転トルクの上昇につながるからである。」
7 「【0043】上記ポリマーグラフトカーボンまたはポリマー被覆カーボン(E成分)の配合割合は、上記ベースポリマー(A成分+B成分+C成分)100部に対して、5~100部の範囲が好ましく、特に好ましくは10~80部である。すなわち、上記ポリマーグラフトカーボンまたはポリマー被覆カーボン(E成分)の配合割合が5部未満であると、カーボンのもっている導電性を発現できず、逆に100部を超えると、ポリマーグラフトカーボンまたはポリマー被覆カーボンが高充填とされることで、塗膜の高硬度化につながり、ロール回転トルク上昇や塗膜割れの原因となるからである。」
8 「【0061】〔特定の共重合体(A成分)〕アクリル酸の部分フッ素化アルキルエステル(a)と、メタクリル酸のシリコーンアルキルエステル(b)、メチルメタクリレート(c)とを、a/b/c=10/15/75の重量混合比で共重合してなる共重合体(Mn=10,000)
【0062】〔フッ素化オレフィン系樹脂(B成分)〕
フッ化ビニリデン-4フッ化エチレン共重合体(Mn=100,000)
【0063】〔(メタ)アクリル系樹脂(C成分)〕
ポリメチルメタクリレート(OH価:0.5KOHmg/樹脂g)
【0064】〔(メタ)アクリル系樹脂(C成分)〕
ポリメチルメタクリレート(OH価:1KOHmg/樹脂g)
【0065】〔硬化剤(D成分)〕
イソシアネート系硬化剤(大日本インキ化学工業社製、バーノックDB980K)
【0066】〔硬化剤(D成分)〕
ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ化学工業社製、スーパーベッカミンJ-820-60)」
9 「【0072】〔表層用材料の調製〕上記特定の共重合体(A成分)10部と、フッ素化オレフィン系樹脂(B成分)40部と、(メタ)アクリル系樹脂(C成分)50部とからなるベースポリマー100部に、硬化剤(D成分)25部と、ポリマーグラフトカーボン(E成分)39部とを配合し、前述の方法に従い混練した後、これを有機溶剤に分散させて表層用材料である導電性組成物(コーティング液)を調製した。
【0073】〔現像ロールの作製〕軸体となる芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした金型内に、最内層用材料である導電性シリコーンゴム(X34-264 A/B、信越化学工業社製)を充填した後、所定の条件で加熱架橋を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿って最内層が形成されたベースロールを作製した。ついで、上記最内層の外周面に上記中間層用材料(コーティング液)を塗布して中間層を形成した後、さらにこの中間層の外周面に沿って上記導電性組成物(コーティング液)を塗布し、150℃×60分の条件で加熱架橋して表層を形成した。このようにして、最内層(厚み5mm)の外周面に中間層(厚み20μm)が形成され、さらにその外周面に表層(厚み20μm)が形成されてなる3層構造の導電性ロールを作製した。最内層の電気抵抗は8×104 Ω、硬度(Hs:JIS A)は35であり、中間層の電気抵抗は8×104 Ω、硬度(Hs:JIS A)は73であった。なお、上記各層の電気抵抗はSRIS 2304に準じて測定した。
【0074】
【実施例2~8】下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合してなる表層用材料(導電性組成物)を用いる以外は、実施例1と同様にして現像ロールを作製した。
【0075】
【表1】
」
10 「【0095】
【発明の効果】以上のように、本発明の導電性組成物を用いてなる導電性ロールは、フッ素化(メタ)アクリレート(a)を用いてなる特定の共重合体(A成分)とフッ素化オレフィン系樹脂(B成分)とを併用しているため、フッ素成分によりトナー離型性が向上する。また、カーボンブラックの表面がポリマーにて覆われたポリマーグラフトカーボンまたはポリマー被覆カーボン(E成分)を用いているため、カーボンブラック表面の官能基が露出することがなく、それゆえに極性がなくなり分散性が向上し、カーボンの凝集を抑制でき、電気抵抗が均一化され、ロール全体でも非常に安定した電気抵抗値となり、高画質化に対応することができる。とともに、上記ポリマーグラフトカーボンまたはポリマー被覆カーボン(E成分)を用いることにより表層表面が平滑となり、トナーの外添剤であるシリカに電荷が付着するのを防止することもできる。さらに、硬化剤(D成分)としてイソシアネート系硬化剤もしくはアミノ樹脂を用いることにより、表面硬度を適度に上げて摩擦係数を下げることができるため、ロール回転トルクダウンによる省エネルギー、トナー帯電防止効果に優れる。」
11 上記1及び8から、【請求項1】の「(a)フッ素化(メタ)アクリレート」、「(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート」、及び「(c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート」は、それぞれ、【0061】の「アクリル酸の部分フッ素化アルキルエステル(a)」、「メタクリル酸のシリコーンアルキルエステル(b)」、及び「メチルメタクリレート(c)」に対応していることはあきらかである。
上記1乃至11から、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「下記の(A)~(E)を必須成分とする導電性組成物の硬化塗膜からなる表層を有する導電性ロール。
(A)下記の(a)~(c)を用いてなる共重合体であって、
(a)フッ素化(メタ)アクリレート。
(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート。
(c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート。
フッ素化(メタ)アクリレート(a)と、ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(b)、(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート(c)とを、a/b/c=10/15/75の重量混合比で共重合してなる共重合体。
(B)フッ素化オレフィン系樹脂。
(C)(メタ)アクリル系樹脂。
(D)イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂の少なくとも一方からなる硬化剤。
(E)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。」
第4 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
1 後者の「表層」、及び「導電性ロール」は、それぞれ、前者の「表層」、及び「電子写真装置に用いられる電子写真用部材」に相当する。
2 本願発明の「マトリックスポリマー」について、本願の明細書には、「マトリックスポリマーは、上記役割を果たすことができれば特に限定されるものではなく、各種の樹脂やゴム(ゴムにはエラストマーも含まれる、以下省略)を用いることができる。これらは1種または2種以上併用することができ、電子写真用部材の用途等に応じて最適な材料を選択することができる。」(【0019】参照。)、及び「上記樹脂としては、例えば、各種の熱可塑性樹脂や、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合ポリマーなどを用いることができる。上記樹脂としては、具体的には、例えば、…フッ素樹脂…ポリハロオレフィン類…などを用いることができる。」(【0020】参照。)と記載されている。
ここで、後者の「(B)フッ素化オレフィン系樹脂」は、熱可塑性樹脂であって、フッ素樹脂、ポリハロオレフィン類といえることは技術常識であるから、後者の「(B)フッ素化オレフィン系樹脂」は、前者の「マトリックスポリマー」に相当する。
3 また、本願発明の「マトリックスポリマー」について、本願の明細書には、「マトリックスポリマー11は、具体的には、熱可塑性ポリウレタンと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーよりなる。」(【0066】参照。)とも記載されている。
ここで、後者の「(C)(メタ)アクリル系樹脂」は、刊行物の「上記シリコーングラフトアクリル系ポリマーは、図6に示すように、直鎖状のアクリル系ポリマー主鎖51に、シリコーンマクロモノマーがグラフト重合してなるシリコーン側鎖52を備えた構造であり、シリコーンの表面エネルギーが小さいため、シリコーン側鎖52が表面側にいわば起立した状態で偏在分布している。」(【0003】参照。)、「〔(メタ)アクリル系樹脂(C成分)〕ポリメチルメタクリレート(OH価:0.5KOHmg/樹脂g)」(【0063】参照。)、及び【図6】の記載より、水酸基(OH基)をもつことがあきらかである。また、本願発明の「(D)イソシアネート系硬化剤」は、イソシアネート基(NCO基)をもつ。そして、ポリウレタンとは、イソシアネート基と水酸基を有する化合物の重付加により生成されるものであるから、後者の「(C)(メタ)アクリル系樹脂」と「(D)イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂の少なくとも一方からなる硬化剤」とは、マトリックスポリマーの原材料といえる。そして、刊行物の「導電性組成物(コーティング液)を塗布し、150℃×60分の条件で加熱架橋して表層を形成した。」(【0073】参照。)との記載から、導電性ロールは、加熱加橋されて形成されるものであるから、後者の「(C)(メタ)アクリル系樹脂」と「(D)イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂の少なくとも一方からなる硬化剤」からなる表層は、前者の「マトリックスポリマー」に相当する。
4 後者の「(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート」は、前者の「シリコーン基を有する(メタ)アクリレート」に相当する。
5 後者の「(a)フッ素化(メタ)アクリレート」は、前者の「フッ素含有基を有する(メタ)アクリレート」に相当する。
6 後者の「(A)下記の(a)~(c)を用いてなる共重合体。」は、「(a)フッ素化(メタ)アクリレート。(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート。(c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート。」を用いてなるものであるから、前者の「分子内に、シリコーン基を有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位とフッ素含有基を有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位とを含む共重合体」に相当する。
7 刊行物には、「フッ素化(メタ)アクリレート(a)を用いてなる特定の共重合体(A成分)とフッ素化オレフィン系樹脂(B成分)とを併用すると、フッ素成分によりトナー離型性が向上することを突き止めた。」(【0007】参照。)、及び「【発明の効果】以上のように、本発明の導電性組成物を用いてなる導電性ロールは、フッ素化(メタ)アクリレート(a)を用いてなる特定の共重合体(A成分)とフッ素化オレフィン系樹脂(B成分)とを併用しているため、フッ素成分によりトナー離型性が向上する。」(【0095】参照。)と記載されているから、後者の「(a)フッ素化(メタ)アクリレート」は、「表層表面を改質する」成分といえる。そして、後者の「(a)フッ素化(メタ)アクリレート」は、(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート、及び(c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレートとで共重合体を構成するものであるから、後者の「(A)下記の(a)~(c)を用いてなる共重合体。 (a)フッ素化(メタ)アクリレート。 (b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート。 (c)(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート。」は、「表層表面を改質する表面改質剤」といえる。
8 後者の「(b)ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート」は、共重合体における重量比が15/100であるから、「マトリックスポリマー100質量部に対し、表面改質剤の添加量が0.01質量部以上40質量部以下である」といえる。
したがって、両者は、
「表層を有し、電子写真装置に用いられる電子写真用部材であって、
上記表層は、該表層の骨格を形成するマトリックスポリマーと、上記表層表面を改質する表面改質剤とを有しており、
上記表面改質剤は、分子内に、シリコーン基を有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位とフッ素含有基を有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位とを含む共重合体であり、
上記マトリックスポリマー100質量部に対し、上記表面改質剤の添加量が0.01質量部以上40質量部以下である電子写真用部材。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
[一応の相違点]
本願発明が、「マトリックスポリマー中に添加されており、表層表面に存在して」表層表面を改質する表面改質剤を有しているに対し、引用発明1は、その点が定かでない点。
第5 判断
上記一応の相違点について以下検討する。
刊行物の【0061】~【0066】、及び【0072】~【0075】の記載からみて、〔特定の共重合体(A成分)〕と、(B成分)、及び(C成分)は、それぞれ、独立して表層の材料として混練され、有機溶剤に分散され、加熱加橋されて表層を形成しているものと認められる。
また、刊行物に、(A成分)、(B成分)、及び(C成分)の間に、物理的な結合または化学的な結合が存在することをうかがわせる記載もない。
ここで、本願発明の表面改質剤が「添加」された表層について、本願明細書には「表層形成用材料を調整」(【0078】~【0080】)し、「加熱して硬化させ」て、「表面改質剤を含有する二層構造の現像ロール資料を作製した」(【0081】~【0083】)と記載されている。
そうすると、「表面改質剤」が「添加」されている本願明細書の実施態様を参酌すれば、引用発明の表面改質剤もマトリックスポリマーに添加されているといえる。
また、上記「第4 7」のとおり、フッ素成分が作用するのであるから、フッ素成分が表層表面に存在していることは明らかであるし、フッ素含有基を有する樹脂やシリコーン基を有する樹脂は、他の樹脂と混練すると表面に出ようとする性質があることは周知の事項であることを考慮すれば、引用発明の「(A)下記の(a)~(c)を用いてなる共重合体。」がマトリックスポリマーの表層表面に存在していると推認される。
以上のことから、上記一応の相違点は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に記載されたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-006100