特許拒絶査定不服審判
2017-005823
膜厚測定方法、測定装置、膜厚変化測定方法および測定装置
- 審判番号
- 2017-005823
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-075100外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月24日
- 審決日
- 2017年12月04日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人 千葉大学
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【請求人】関西ペイント株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-75100「膜厚測定方法、測定装置、膜厚変化測定方法および測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月7日出願公開、特開2013-205252〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
この審判事件に関する特許出願(以下、「本願」という。)は、平成24年3月28日にされたものである。その後、平成28年1月6日に特許請求の範囲についての補正がされ、さらに、同年8月17日に特許請求の範囲についての補正がされた。そして、平成29年1月19日付けで拒絶査定がされ、同24日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年4月24日に拒絶査定不服審判が請求された。
2 原査定の概要
本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は、いずれも、下記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願の請求項7ないし請求項10に係る発明は、いずれも、下記の引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平10-325795号公報
引用文献2:特開平9-145327号公報
引用文献3:特開平2-297008号公報
引用文献4:特開2006-38533号公報
3 本願発明
本願の請求項1ないし請求項10に係る発明は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載された事項により特定されるものである。特に、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
顔料を含む塗膜に光源からの光を照射し、前記塗膜からの反射光を含む干渉光の強度を検出することにより、前記塗膜の膜厚を測定する方法であって、
光源からの光を参照光と前記塗膜への入射光とに分岐する分岐ステップと、
前記参照光の光学距離を調整して、前記塗膜からの反射光と前記参照光とを干渉せしめる干渉ステップと、
前記塗膜からの反射光と前記参照光との干渉による複数の強度信号を検出する検出ステップと、
検出した複数の前記強度信号の隣接するピーク間の間隔から、前記塗膜の膜厚を計算する膜厚計算ステップとを含み、
前記塗膜が紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂であり、前記光源からの前記光が、波長1300nm~2000nmの範囲内の近赤外光である、膜厚測定方法。」
4 引用文献に記載された発明等
(1)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、改良された多層シート状プラスチックの厚さ測定装置に関し、特に多層に形成されているシート状プラスチックの各層の厚さを非連続的又は連続的(インライン)に測定するための有効な装置を提供する。」
「【0023】
【実施例】以下に実施例によって、図面に基づいて更に詳述するが、本発明が該例に制約を受けるものではない。
【0024】前記多層シートの厚さ測定装置において、本発明の低コヒーレントな光源による測定原理を図1の光路図によって説明する。該光源には低コヒーレント光源2を用い、ここから発せられた低コヒーレント光は、集光レンズでコリメートされて平行光になり、ビームスプリッタ4によって2つの平行光に振幅分割される。分割された第1の分岐光は、第1焦点レンズを通って、多層シート7に導かれるが、その際各層の境界面で反射が起こり、それは測定光8となって反射する。他の分割された第2の分岐光は、第2焦点レンズによって、可動鏡面11に入射し反射する。これは参照光12となる。各々反射した測定光8と参照光12とは、再びビームスプリッタ4に戻り合成光13となって、受光レンズを通って受光素子15に導かれ光電変換される。更にこれは受光回路により干渉光による信号が検出され、更に包絡線検波等の処理を得て演算部に導かれ、ここで多層シートの各層厚に換算される。
【0025】ここで低コヒーレント光として使用される低コヒーレント光源2は、特に中心波長及びスペクトル半値幅に制限を受けるものではないが、次のような問題が発生する場合があるので、コヒーレンス長が10μm~40μmとなるような中心波長及びスペクトル半値幅を有する低コヒーレント光源であることが望ましい。…(以下略)…」
「【0029】また図1の測定原理を取り入れて、これを装置化した場合の主要部をとって、これを断面図で示したものが図2である。ここで、1は筐体、3は低コヒーレント光源2から発せられるコヒーレント光をコリメートする集光レンズ、5はビームスプリッタ4による第1分岐光を集光させる第1焦点レンズである。」
「【0032】9はビームスプリッタ4による第2分岐光を集光させる第2焦点レンズ、10は可動鏡面11を作動させるための可動鏡面駆動部であり、この可動鏡面11を取り付けて平行移動を案内する精密クロスローラガイド等を使ったステージ25およびステージ25に連結して取り付けられた駆動モータ26からなる。駆動モータ26にはリニア超音波モータ、リニアステッピングモータ等のリニアモータがよい。駆動モータ26を駆動させると、可動鏡面11は図1の矢印に示すように、往復動作するので参照光12の光路長を変化させることができる。よって、参照光12の光路長変化のスピードは駆動モータ26を駆動させるスピードによって変化させることができるので、参照光12と測定光8が干渉したときの干渉光による信号の周波数は、可動鏡面11を往復動作させる駆動モータ26のスピードによって決まる。
【0033】尚、可動鏡面11の位置を検出する図示しない可動鏡面位置検出素子は、ポテンショメータ、マイクロメータ、PSD等の素子、または駆動モータ26がパルスで動作させるモータである場合はその発振パルス数で代用できる。この可動鏡面位置検出素子はステージ25に設けられ、可動鏡面11が往復動作するときの位置を検出する。この検出された位置の情報を、図示しないA/D変換器によりディジタル信号に変換して、図示しないコンピュータに導かれる。また、駆動モータ26がパルスで動作させるモータである場合は、その発振パルス数を直接コンピュータに導いて、位置に関する情報としてもよい。また、可動鏡面11の往復動作するスピードが一定であるとみなせば、可動鏡面11が動いた時間にスピードを掛ければ移動距離が求められるので、可動鏡面11の位置に関する情報は図示しないコンピュータ内の演算だけで得ることも可能である。14は合成光13を受光して、受光素子に導くための受光レンズである。」
「【0035】16は受光回路で、ここで干渉光による信号が処理される。19は低コヒーレント光源2を固定するホルダーであり、これには低コヒーレント光源2が温度上昇により劣化することおよび光出力が不安定になることを防止するために、図示しないペルチェ素子を取り付けて低コヒーレント光源2を冷却し、図示しないドライバにより自動温度制御(ATC)、自動出力制御(APC)などの制御がなされている。」
「【0039】多層シート7の各層の厚さは、最終的にはコンピュータによって算出されることになる。つまり、前記受光回路16から導かれた干渉光の包絡線信号をA/D変換したディジタル信号と上記可動鏡面位置検出素子から導かれた可動鏡面11の位置に関する情報から、干渉発生時における、可動鏡面11の位置を特定し、この結果に基づいて多層シート7の各層の厚さが算出される。
【0040】最後に、以上のようにして構成された本発明の多層シート状プラスチックの厚さ測定装置によって、実際に各層の厚さがどのようにして測定されるかを、具体例で説明する。図5は、本発明装置が測定対象とする多層シート7の一例で、これは3種5層からなる全厚300μmの多層シート7aである。具体的には、第1層32と第5層36がナイロン、第2層33と第4層35が接着剤、第3層34がポバールで構成されている。このような多層シート7aが走行中に、その第1層32の側を圧空式非接触抑制具6によって非接触で把持されて、測定光8が入射されると、測定光8は多層シート7aの各境界面37、38、39、40、41および42で反射されビームスプリッタ4に戻る。一方、参照光12は可動鏡面11で反射されてビームスプリッタ4に戻る。このとき、多層シート7aの各境界面に対応する参照光12の光路長は可動鏡面11により変化することができる。図6に、図5の多層シートを測定したときの、受光回路16による干渉光による包絡線信号のピークと多層シート7aの各境界面との関連を示す。図6の横軸は可動鏡面11の位置、縦軸は各境界面における干渉光による包絡線信号の大きさを表す。ここで、各ピーク43、44、45、46、47および48を示す可動鏡面11の位置をL1、L2、L3、L4、L5、L6とし、第1層32と第5層36の屈折率をn1、第2層33と第4層35の屈折率をn2、第3層34の屈折率をn3とし、空気の屈折率を1とすれば、第1層32の厚さd1、第2層33の厚さd2、第3層34の厚さd3、第4層35の厚さd4、第5層36の厚さd5は、各式数2~数6で求めることができる。
【0041】
【数2】
d1=(L2-L1)/n1
【数3】
d2=(L3-L2)/n2
【数4】
d3=(L4-L3)/n3
【数5】
d4=(L5-L4)/n2
【数6】
d5=(L6-L5)/n1」
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
イ 引用文献2に記載された発明
(ア)引用文献2には、多層に形成されたシート状プラスチックの各層の厚さを測定する多層シートの厚さ測定装置が記載されている(【0001】、【0024】)。
(イ)引用文献2に記載された多層シートの厚さ測定装置では、低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光は、集光レンズ3でコリメートされて平行光になり、ビームスプリッタ4によって2つの平行光である第1の分岐光と第2の分岐光とに振幅分割される(【0024】、【0029】、図1、図2)。
(ウ)第1の分岐光は、第1焦点レンズ5を通って測定対象である多層シート7(7a)に導かれ、多層シート7(7a)の各層(ナイロンで構成される第1層32、接着剤で構成される第2層33、ポバールで構成される第3層34、接着剤で構成される第4層35、ナイロンで構成される第5層36)の境界面37ないし42で反射されて測定光8となる(【0024】、【0029】、【0040】、図1、図2、図5)。
(エ)第2の分岐光は、第2焦点レンズ9を通って可動鏡面11に入射し、反射されて参照光12となるが、このとき、可動鏡面11が往復移動して、多層シート7(7a)の各境界面37ないし42に対応する参照光12の光路長を変化させる(【0024】、【0032】、【0040】、図1、図2、図5)。
(オ)それぞれ反射した測定光8と参照光12とは、ビームスプリッタ4に戻って合成光13となり、受光レンズ14を通って受光素子15に導かれて光電変換され、受光回路16によって参照光12と測定光8との干渉光による信号が検出され、包絡線検波等の処理を経て演算部に導かれ、干渉光の包絡線信号と可動鏡面11の位置に関する信号とから特定される、干渉発生時の可動鏡面11の位置に基づいて、多層シート7の各層の厚さが算出される(【0024】、【0032】、【0033】、【0035】、【0039】、図1、図2)。
(カ)具体的には、多層シート7(7a)の各境界面37ないし42における干渉光による包絡線信号がピーク43ないし48を示すときの可動鏡面11の位置をL1ないしL6とし、第1層32ないし第5層36の屈折率をそれぞれn1、n2、n3、n2、n1とすると、第1層32ないし第5層36の厚さd1ないしd5がd1=(L2-L1)/n1、d2=(L3-L2)/n2、d3=(L4-L3)/n3、d4=(L5-L4)/n2、d5=(L6-L5)/n1の関係式を用いて算出される(【0040】、【0041】、図6)。
(キ)以上のことをまとめると、引用文献2には、多層シートの厚さ測定装置によって実施される多層シート7aの各層の厚さ測定方法として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「多層シート7aの各層の厚さ測定方法であって、
低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光を、集光レンズ3でコリメートして平行光とし、ビームスプリッタ4によって2つの平行光である第1の分岐光と第2の分岐光とに振幅分割するステップと、
第1の分岐光を、第1焦点レンズ5を通して多層シート7aに導き、多層シート7aの第1層32ないし第5層36の境界面37ないし42で反射させて測定光8とするステップと、
第2の分岐光を、第2焦点レンズ9を通して可動鏡面11に入射させ、反射させて参照光12とするとともに、可動鏡面11を往復移動させ、多層シート7aの各境界面37ないし42に対応する参照光12の光路長を変化させるステップと、
測定光8と参照光12とをビームスプリッタ4に戻して合成光13とし、受光レンズ14を通して受光素子15に導いて光電変換し、受光回路16によって参照光12と測定光8との干渉光による信号を検出し、包絡線検波等の処理を経て演算部に導き、干渉光の包絡線信号と可動鏡面11の位置に関する信号とから特定される、干渉発生時の可動鏡面11の位置に基づいて、多層シート7の各層の厚さを算出するステップであって、多層シート7aの各境界面37ないし42における干渉光による包絡線信号がピーク43ないし48を示すときの可動鏡面11の位置がL1ないしL6であり、第1層32ないし第5層36の屈折率がそれぞれn1、n2、n3、n2、n1であるとき、第1層32ないし第5層36の厚さd1ないしd5を、d1=(L2-L1)/n1、d2=(L3-L2)/n2、d3=(L4-L3)/n3、d4=(L5-L4)/n2、d5=(L6-L5)/n1の関係式を用いて算出するステップと
を含む厚さ測定方法。」
(2)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0002】
【従来の技術】測定対象物(媒質)の屈折率n(=位相屈折率np)、複屈折、厚さ等の光学特性を非接触に測定する方法は、光学分野において最も基本的な技術の1つである。その代表的なものとしては、エリプソメータ…(中略)…がある。これは、測定対象となる媒質(薄膜)に斜方から光を照射し、主に反射光のP偏光とS偏光の位相変化の差に注目する方法で、媒質の表面で光が反射する際の偏光状態を観測することによって、基板およびその表面に堆積した薄膜の屈折率nと厚さtを測定する方法である。
【0003】また、反射率を用いて媒質の膜厚や屈折率n、吸収係数を測定する反射率解析法もあり特開昭64-75902号公報や特開昭63-128210号公報、特開平3-17505号公報などに開示されている。特開昭64-75902号公報や特開昭63-128210号公報に開示されている反射率解析法は、測定光の入射角変化に伴う反射光強度変化、即ち、反射光強度の入射角依存特性を測定し、その3つの極値の入射角を用いて薄膜の特性値を求める方法である。…(以下略)…」
「【0005】また、各種硬化性樹脂(紫外線硬化、熱硬化、触媒硬化、電子線硬化等)や塗膜の硬化状態もしくは硬化度の評価は、現在、ゲル分率(測定サンプルをメチルエチルケトン等で溶剤抽出し、初期重量と溶剤抽出後の重量の重量変化の比)が最も一般的な指標となっている。しかし、この評価方法は、破壊試験であり、サンプルの作製および評価に長時間を要するものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような状況を踏まえ、ここでは低コヒーレンスな光源を用いた干渉光学系を基本として、集光ビーム照射による媒質の位相屈折率npと厚さtを同時に精密に測定する方法、および偏光子/検光子、偏光ローテータ等の偏光制御を必要とせずに媒質の複屈折を精密に測定する方法、および位相屈折率npと群屈折率ngを同時に精密に測定する方法および上述した方法を用いて、樹脂の硬化性もしくは硬化度を評価する方法を提案する。」
「【0099】図1は本発明の一実施の形態による位相屈折率および厚さ同時測定、位相屈折率および群屈折率同時測定の基本システム構成図である。ここではまず、本システム構成における光の順路について説明する。光源1から出射された光は、レンズ12aでコリメートされ、光源1からの光を分波・合波する分波・合波手段2に導かれる。光源1は、分波合波手段2で二等分され、その光の一方は直進して駆動手段8に保持搭載された集光レンズ3で、駆動手段5に保持搭載された測定対象物4に集光される。これに対して、他方の光は分波・合波手段2から垂直方向に進み駆動手段7に保持搭載され、振動子9に固定された参照光ミラー6に照射される。振動子9には周波数fでかつ所定振幅の振動が加えられ、参照光ミラー6からの反射光(参照光)を位相変調する。測定対象物4からの反射光(信号光)は、集光レンズ3、分波・合波手段2、レンズ12bを介して受光素子10に入射される。また、参照光ミラー6からの反射光(参照光)は、分波・合波手段2、レンズ12bを介して受光素子10に入射される。受光素子10の検出信号は、検出回路11によってデジタル信号に変換され、そのデータは、PC13で処理される。尚、駆動手段5、7、8は、PC13からの信号によりステージコントローラ14を介して制御されている。
【0207】光源1としては、屈折率および厚さの同時測定、位相屈折率および群屈折率の同時測定において、直線偏光または非偏光あるいはランダム偏光の光を使用でき、複屈折測定、複屈折および厚さ測定において、非偏光あるいはランダム偏光の光を使用できる。光源1の具体例としては、スーパルミネッセントダイオード(SLD)、白色光源(ハロゲンランプやキセノンランプ)からの光をモノクロメータにより特定波長域のみ分光したもの、閾値以下の注入電流で駆動されるレーザダイオード(LD)、発光ダイオード等、可干渉距離が30μm以下のものは、全て使用することができる。また、光源1の波長も限定されるものではなく、紫外光から赤外光まで、可干渉距離が30μm以下のものは、全て使用することができる。ゆえに、白色光源とモノクロメータの組み合わせによる光源1を用いて、短波長から長波長まで光波長の走査を行い、測定対象物(媒質)の波長特性(波長分散)を測定することも可能であるし、また、白色光源をモノクロメータによって分光した光を光源1を用いるものと同様に、発振中心波長が異なる複数個のレーザダイオード等を併用することによって、波長特性(波長分散)を測定することも可能である。尚、光源1の出力は、変動なく安定でかつ、測定対象物からの信号光および参照光ミラーからの参照光を合波・干渉し、検波する受光素子の感度に合わせることが安定した測定の面から見ると好ましい。」
「【0210】測定対象物4は、ガラス(例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等)や高分子(例えば、PMMA、PC、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、メチルメタアクリレート、エポキシ樹脂、ポリフロロアクリレート、シリコン樹脂、メラミン樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、触媒硬化樹脂、熱硬化樹脂等)や結晶材料(例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、サファイヤ、KDP、ADP、方解石等)や透明容器中の液体材料および生体組織(例えば、角膜、水晶体、爪等)等である。ここで、測定対象物4の前面および後面は、必ずしも鏡面である必要はなく、粗面であっても測定可能である。また、測定対象物4としては、前述したガラスや高分子や結晶材料に限定されるものではなく、これらの多層膜であっても良い。さらに、測定対象物4は、光を完全に吸収しない媒質であれば良く、媒質の中に散乱体が介在しているような散乱媒質であっても、反射直進光(信号光)のみを抽出して測定可能である。さらに、測定対象物4は、必ずしも平行平板である必要はなく、前面または後面に傾斜もしくは曲率を持った媒質であっても、測定可能である。」
【図1】
イ 引用文献1に記載された事項
(ア)引用文献1には、低コヒーレンスな光源を用いた干渉光学系を基本とし、集光ビーム照射によって媒質の位相屈折率と厚さとを同時に精密に測定する方法が記載されている(【0006】)。
(イ)光源の波長に限定はなく、紫外光から赤外光まで、可干渉距離が30μm以下のものは全て使用することができる(【0207】)。
(ウ)測定対象物には紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂が含まれ、測定対象物の前面及び後面は粗面であってもよく、媒質の中に散乱体が介在しているような散乱媒質であっても、反射直進光のみを抽出して測定することができる(【0210】)。
(エ)引用文献1に記載された方法は、薄膜の膜厚を測定するための従来技術であるエリプソメータ及び反射率解析法の欠点や、紫外線硬化樹脂及び電子線硬化樹脂を含む各種硬化樹脂並びに塗膜の硬化状態又は硬化度の評価の欠点を踏まえてなされたものであるから(【0002】、【0003】、【0005】)、測定対象物として薄膜又は塗膜が想定されていることは明らかである。
(オ)以上のことをまとめると、引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「低コヒーレンスな光源を用いた干渉光学系を使用して、測定対象物の厚さを測定することができ、その際、光源の波長は、紫外光から赤外光まで、可干渉距離が30μm以下のものは全て使用することができ、測定対象物は、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の薄膜又は塗膜であってもよく、また、その前面及び後面が粗面であってもよく、さらに、媒質の中に散乱体が介在している散乱媒質であっても、反射直進光のみを抽出して測定可能である。」
(カ)なお、ここでいう干渉光学系とは、具体的には周知のマイケルソン干渉計である(【0099】、図1)。
(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「(産業上の利用分野)
本発明は、不透明薄膜の厚みの光学的測定法に関する。
(従来の技術と発明が解決しようとする課題)
透明な薄膜についての代表的な光学方式の厚み測定法として、光干渉法と赤外吸収法が挙げられる。前者は、光学的に透明な薄膜において、薄膜の表面と裏面における干渉が発生する現象を利用し、その干渉縞と厚みとの関係式から厚みを計算する。後者は、薄膜材料に特有な赤外特性吸収を利用し、厚みと吸光度の関係、いわゆる検量線から厚みを求める。それぞれの利用する波長帯は異なっている。前者は、特性吸収のない透明な波長帯を利用する。後者は、光学薄膜特有の干渉現象を取り除かなければ精密な測定はできない。このように、干渉法と吸光度法は表裏の関係がある。
ところで、光散乱性の粒子を含む薄膜、例えば、不透明なフィルム、あるいは顔料などを含む塗装膜では、光干渉法と赤外吸収法のいずれにも適用限界がある。光散乱性の粒子には、塗膜中の顔料のような入射光の吸収と反射を生じる通常の粒子の他に、塗膜中のカーボン粒子のように可視・赤外入射光を吸収し入射ビームをあまり拡散させないものや、金属粒子のように、入射光を反射しマクロ的に拡散反射に近い状態で拡散するものもある。このような光散乱性の粒子を含む薄膜では、サンプル中の粒子による光散乱現象に伴う光ビームの散乱・減衰と可干渉性の低下によって干渉現象は発生しにくくなる。また、この光散乱による減衰は、赤外特性吸収による減衰と異なるので、赤外吸収スペクトルも歪む。さらに、散乱現象が強くなると、干渉縞は観測されなくなる。一方、吸光度は厚みに比例せず、さらには逆転現象を呈する。すなわち、ベール・ランベルト則が破綻する。このために、両方法とも、これらの問題を解決しなければ、不透明サンプルや塗装膜の厚み測定には適用できず、また適用範囲を拡大できない。
本発明の目的は、不透明な薄膜の光学的測定方法を提供することである。」(第1ページ右下欄第13行ないし第2ページ右上欄第11行)
「干渉法は本来は透明なサンプルに対して適用できる測定法である。」(第3ページ左上欄第2行ないし第3行)
「サンプル1の厚みdは、サンプルの屈折率nがあらかじめわかっていれば、干渉縞とサンプル厚みdの関係式から計算することができる。」(第3ページ右上欄第11行ないし第13行)
「次に、光散乱性の粒子を含む薄膜、例えば、不透明なフィルム、あるいは顔料などを含む塗装膜の場合の干渉法の適用について説明する。これらのサンプルでは、サンプル中の粒子による光散乱現象に伴う光ビームの散乱、減衰と可干渉性の低下によって干渉現象は発生しにくくなる。この光散乱による減衰(以下、散乱・減衰という)は、赤外特性吸収による減衰(以下、吸収・減衰という)とは異なる。また、可視・赤外吸収体であるカーボン粒子を含む黒色ペイント膜でも、同様に透過光量Itが著しく減衰し干渉効果は低下する。
このような不透明なサンプルに対し干渉法の適用を拡大するために光の波長を考慮する必要がある。
光散乱強度は、散乱粒子径aと光波長λとの関係に依存している。粒子径に比べて、波長が大きくなると、第4図に示すように、粒子1’の後方よりも前方に多く散乱される(ミー(Mie)効果と呼ばれている)。すなわち、長波長ほど散乱の影響を受けにくい。従って、光散乱効果の観点からは、可視光より近赤外光、または赤外光を用いるのがよい。実用的な観点からは、光通信に使用されている波長1.3μm帯、あるいは1.5μm帯の半導体レーザを用いるのがよい(しかし、長波長を用いると、膜厚の薄いサンプルに対しては、厚み測定精度が落ちるので、用途による妥協が必要になる。)。」(第3ページ左下欄第5行ないし右下欄第11行)
イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3の前記アの記載によれば、引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「本来は透明なサンプルに対して適用できる厚み測定法である光干渉法を、光散乱性の粒子を含む薄膜、例えば、顔料などを含む塗装膜に適用する場合は、波長が大きくなると粒子の後方より前方に光が多く散乱されるミー効果によって長波長ほど散乱の影響を受けにくいことを利用して、可視光より近赤外光又は赤外光を用いるのがよく、実用的な観点からは波長1.3μm帯又は1.5μm帯の光を用いるのがよい。」
5 対比
(1)対比
本願発明と引用発明と対比すると、以下のとおりである。
ア 引用発明の「多層シート7aの各層の厚さ測定方法」及び「厚さ測定方法」と本願発明の「塗膜の膜厚を測定する方法」及び「膜厚測定方法」とは、「厚さ測定方法」である点で共通し、引用発明の「多層シート7a」と本願発明の「塗膜」とは、厚さ測定の対象となる「測定対象物」である点で共通するから、引用発明の「多層シート7aの各層の厚さ測定方法」及び「厚さ測定方法」と本願発明の「塗膜の膜厚を測定する方法」及び「膜厚測定方法」とは、「測定対象物の厚さを測定する方法」及び「厚さ測定方法」である点で共通する。
イ 引用発明の「低コヒーレント光源2」は、本願発明の「光源」に相当するから、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」は、本願発明の「光源からの光」に相当する。
ウ 引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光を、集光レンズ3でコリメートして平行光とし、ビームスプリッタ4によって2つの平行光である第1の分岐光と第2の分岐光とに振幅分割するステップ」における「第1の分岐光」は、「第1焦点レンズ5を通して多層シート7aに導」くものであるから、前記アを踏まえると、本願発明の「塗膜への入射光」と、「測定対象物への入射光」である点で共通する。
エ 引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光を、集光レンズ3でコリメートして平行光とし、ビームスプリッタ4によって2つの平行光である第1の分岐光と第2の分岐光とに振幅分割するステップ」における「第2の分岐光」は、「第2焦点レンズ9を通して可動鏡面11に入射させ、反射させて参照光12とする」ものであるから、本願発明の「参照光」に相当する。
オ 前記ウ及びエを踏まえると、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光を、集光レンズ3でコリメートして平行光とし、ビームスプリッタ4によって2つの平行光である第1の分岐光と第2の分岐光とに振幅分割するステップ」と、本願発明の「光源からの光を参照光と前記塗膜への入射光とに分岐する分岐ステップ」とは、「光源からの光を参照光と測定対象物への入射光とに分岐する分岐ステップ」である点で共通する。
カ 引用発明の「光路長」は、本願発明の「光学距離」に相当するから、前記エを踏まえると、引用発明において「第2の分岐光を、第2焦点レンズ9を通して可動鏡面11に入射させ、反射させて参照光12とするとともに、可動鏡面11を往復移動させ、」「参照光12の光路長を変化させる」ことは、本願発明において「参照光の光学距離を調整」することに相当する。
キ 前記ウを踏まえると、引用発明の「第1の分岐光を、第1焦点レンズ5を通して多層シート7aに導き、多層シート7aの第1層32ないし第5層36の境界面37ないし42で反射させ」た「測定光8」と、本願発明の「塗膜からの反射光」とは、「測定対象物からの反射光」である点で共通する。
ク 引用発明において「測定光8と参照光12とをビームスプリッタ4に戻して合成光13とし、受光レンズ14を通して受光素子15に導いて光電変換し、受光回路16によって参照光12と測定光8との干渉光による信号を検出」することは、その前提として「参照光12」と「測定光8」とを干渉させていることが明らかであるから、本願発明において「前記塗膜からの反射光と前記参照光とを干渉せしめる」ことと、「測定対象物からの反射光と参照光とを干渉せしめる」点で共通する。
ケ 前記カないしクを踏まえると、引用発明の「第1の分岐光を、第1焦点レンズ5を通して多層シート7aに導き、多層シート7aの第1層32ないし第5層36の境界面37ないし42で反射させて測定光8とするステップ」及び「第2の分岐光を、第2焦点レンズ9を通して可動鏡面11に入射させ、反射させて参照光12とするとともに、可動鏡面11を往復移動させ、多層シート7aの各境界面37ないし42に対応する参照光12の光路長を変化させるステップ」並びに引用発明において「測定光8と参照光12とをビームスプリッタ4に戻して合成光13とし、受光レンズ14を通して受光素子15に導いて光電変換し、受光回路16によって参照光12と測定光8との干渉光による信号を検出」することと、本願発明の「前記参照光の光学距離を調整して、前記塗膜からの反射光と前記参照光とを干渉せしめる干渉ステップ」とは、「参照光の光学距離を調整して、測定対象物からの反射光と参照光とを干渉せしめる干渉ステップ」である点で共通する。
コ 引用発明の「測定光8と参照光12とをビームスプリッタ4に戻して合成光13とし、受光レンズ14を通して受光素子15に導いて光電変換し、受光回路16によって参照光12と測定光8との干渉光による信号を検出し、包絡線検波等の処理を経て演算部に導き、干渉光の包絡線信号と可動鏡面11の位置に関する信号とから特定される、干渉発生時の可動鏡面11の位置に基づいて、多層シート7の各層の厚さを算出するステップ」は、「多層シート7aの各境界面37ないし42における干渉光による包絡線信号がピーク43ないし48を示すときの可動鏡面11の位置」「L1ないしL6」を用いており、明らかに「参照光12」と「測定光8」との干渉による複数の強度信号を検出しているから、本願発明の「前記塗膜からの反射光と前記参照光との干渉による複数の強度信号を検出する検出ステップ」と、「測定対象物からの反射光と参照光との干渉による複数の強度信号を検出する検出ステップ」である点で共通する。
サ 引用発明の「多層シート7aの各境界面37ないし42における干渉光による包絡線信号がピーク43ないし48を示すときの可動鏡面11の位置がL1ないしL6であり、第1層32ないし第5層36の屈折率がそれぞれn1、n2、n3、n2、n1であるとき、第1層32ないし第5層36の厚さd1ないしd5を、d1=(L2-L1)/n1、d2=(L3-L2)/n2、d3=(L4-L3)/n3、d4=(L5-L4)/n2、d5=(L6-L5)/n1の関係式を用いて算出するステップ」における「L2-L1」、「L3-L2」、「L4-L3」、「L5-L4」及び「L6-L5」は、いずれも本願発明の「検出した複数の前記強度信号の隣接するピーク間の間隔」に相当するから、引用発明のこの「ステップ」と本願発明の「検出した複数の前記強度信号の隣接するピーク間の間隔から、前記塗膜の膜厚を計算する膜厚計算ステップ」とは、「検出した複数の強度信号の隣接するピーク間の間隔から、測定対象物の厚さを計算する厚さ計算ステップ」である点で共通する。
シ 引用発明は「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光を、」「第1焦点レンズ5を通して多層シート7aに導き、多層シート7aの第1層32ないし第5層36の境界面37ないし42で反射させて測定光8と」したものと「参照光12」「との干渉光による信号を検出し、」「多層シート7の各層の厚さを算出する」ものであり、本願発明は「顔料を含む塗膜に光源からの光を照射し、前記塗膜からの反射光を含む干渉光の強度を検出する」ものであるから、前記アないしサを踏まえると、両者は「測定対象物に光源からの光を照射し、測定対象物からの反射光を含む干渉光の強度を検出することにより、測定対象物の厚さを測定する」点で共通する。
(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「測定対象物に光源からの光を照射し、前記測定対象物からの反射光を含む干渉光の強度を検出することにより、前記測定対象物の厚さを測定する方法であって、
光源からの光を参照光と前記測定対象物への入射光とに分岐する分岐ステップと、
前記参照光の光学距離を調整して、前記測定対象物からの反射光と前記参照光とを干渉せしめる干渉ステップと、
前記測定対象物からの反射光と前記参照光との干渉による複数の強度信号を検出する検出ステップと、
検出した複数の前記強度信号の隣接するピーク間の間隔から、前記測定対象物の厚さを計算する厚さ計算ステップとを含む、
厚さ測定方法。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明は、「測定対象物」が「顔料を含む塗膜」かつ「紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂」であり、その「膜厚」を測定するものであるのに対し、引用発明は、「測定対象物」が「多層シート7a」であり、その「各層の厚さ」を測定するものであり、そのため、「光路長を変化させる」「参照光12」(本願発明の「光学距離を調整」する「参照光」に対応する。)も「多層シート7aの各境界面37ないし42に対応する」ものとされている点。
(イ)相違点2
本願発明は、「光源からの光」が「波長1300nm~2000nmの範囲内の近赤外光である」のに対し、引用発明は、「光源からの光」が「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」であり、その波長は特定されていない点。
6 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用発明は、引用文献2に記載された多層シートの厚さ測定装置によって実施される多層シート7aの各層の厚さの測定方法である(前記4(1)イ(キ))。ここで、引用文献2に記載された厚さ測定装置は、引用文献2の【0024】の記載から明らかなように、低コヒーレント光源による干渉を利用して多層シートの各層の厚さを測定する装置であるから、引用発明は、結局のところ、低コヒーレント光源による干渉を利用して多層シートの各層の厚さを測定する方法である。そして、引用文献2に記載された厚さ測定装置の光学系は、引用文献2の【0024】の記載及び図1を参照すれば明らかなように、周知のマイケルソン干渉計で構成されている。
一方、引用文献1には、低コヒーレント光源を用いた干渉光学系を使用して、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の塗膜の厚さを測定することができ、また、その塗膜の前面及び後面は粗面でもよく、さらに、その中に散乱体が介在していてもよいことが記載されている(前記4(2)イ(オ))。しかも、ここでいう干渉光学系とは、具体的には周知のマイケルソン干渉計であるから(前記4(2)イ(カ))、引用文献2に記載された厚さ測定装置の光学系と同じものである。
このように、引用文献1には、引用発明と同じ測定原理(低コヒーレント光源による干渉)及び同じ光学系(マイケルソン干渉計)を用いて、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜の厚さを測定できることが記載されているから、引用文献1に接した当業者には、引用発明において、「多層シート7a」に代えて紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜を測定対象物とする動機付けがあるといえる。
そのようにした結果、測定量が「多層シート7aの各層の厚さ」ではなく、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜の膜厚になることは当然である。また、引用発明において「光路長を変化させる」「参照光12」が「多層シート7aの各境界面37ないし42に対応する」ものとされているのは、「多層シート7aの各層の厚さ」を測定量としているからであり、塗膜の膜厚、すなわち、単一の層の厚さを測定量とする場合には、「光路長を変化させる」「参照光12」がその単一の層(塗膜)の境界面(前面及び後面)に対応するものになることも当然である。
さらに、散乱体が介在した塗膜の一種として顔料を含む塗膜があることは、例えば引用文献3に「光散乱性の粒子を含む薄膜、例えば、不透明なフィルム、あるいは顔料などを含む塗装膜」(第2ページ左上欄第9行ないし第11行)と記載されているとおり、当業者にとって周知である。したがって、測定対象物を、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜から、その一種である顔料を含む塗膜に限定することは、当業者が適宜行い得ることにすぎない。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成は、引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に思い付くものである。
(2)相違点2について
引用文献2に「低コヒーレント光源2は、特に中心波長及びスペクトル半値幅に制限を受けるものではない」(【0025】)と記載され、引用文献1にも光源の波長は紫外光から赤外光まで可干渉距離が30μm以下のものは全て使用できると記載されているとおり(前記4(2)イ(オ))、低コヒーレント光源による干渉を利用した厚さ測定は、紫外光から赤外光までの任意の波長の光で行うことができる。したがって、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」の波長は、本来的に当業者が必要に応じて選択し得るものである。
そして、引用文献3には、本来は透明なサンプルに対して適用できる厚み測定法である光干渉法を、顔料などを含む塗装膜に適用する場合は、実用的な観点からは波長1.3μm帯又は1.5μm帯の光を用いるのがよいことが記載されているから(前記4(3)イ)、引用発明において、「多層シート7a」に代えて紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜を測定対象物とする際に、それに合わせて、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」として、波長1.3μm(=1300nm)帯又は1.5μm(=1500nm)帯の光を用いるようにすることは、引用文献3に記載された事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。
その結果、引用発明が相違点2に係る本願発明の構成を備えるようになることは、明らかである。
7 請求人の主張について
(1)請求人は、引用文献3の発明では不透明薄膜の厚さを光学的に測定しているが、測定対象とする薄膜は塗膜の硬化プロセスを伴う紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂ではないと主張する(平成29年5月19日付け手続補正書(以下、単に「手続補正書」という。)、第3ページ第3行ないし第5行)。
しかし、前記6(1)のとおり、引用発明において紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂の中に散乱体が介在した塗膜を測定対象物とすることは、引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。
したがって、請求人の主張は、当を得ない。
(2)請求人は、紫外線照射によって反応硬化する紫外線硬化塗料の塗膜形成過程を調べるために膜厚の測定が求められるケースでは、本願発明で使用する測定光の波長範囲1300nmないし2000nmは塗料の硬化プロセスに悪影響を与えないという特有の効果を奏するとした上で(手続補正書、第2ページ下から5行目ないし2行目)、このような本願発明の特有の効果は引用文献3の発明では得ることができないし、引用文献1,引用文献2及び引用文献4の発明でも得ることができないと主張する(同、第3ページ第6行ないし第7行)。
しかし、請求人が主張する効果は、本願の明細書に記載も示唆もされていないから、参酌することはできない。
仮にそのような効果があるとしても、それは、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」として波長1.3μm帯又は1.5μm帯の光を用いることによる自明の効果にすぎず、格別なものということはできない。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
(3)請求人は、顔料などを含む塗装膜等を光学的に測定する場合に可視光よりも近赤外光又は赤外光を用いることは周知技術であるとの原査定の認定は、引用文献3のみを根拠とするものであるから、誤りであると主張する。
しかし、前記6(2)のとおり、引用発明の「低コヒーレント光源2から発せられた低コヒーレント光」として、波長1.3μm(=1300nm)帯又は1.5μm(=1500nm)帯の光を用いるようにすることは、引用文献3に記載された事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。顔料などを含む塗装膜等を光学的に測定する場合に可視光よりも近赤外光又は赤外光を用いることが周知技術であるか否かは、この認定を左右するものではない。
したがって、請求人の主張は、当を得ない。
8 むすび
以上に述べたとおり、本願発明は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-005823