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特許拒絶査定不服審判

2017-003933

半導体装置用フィルム、及び、半導体装置の製造方法

審判番号
2017-003933
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-092992外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年03月17日
審決日
2018年07月10日
公報発行日
2018年10月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 92992「半導体装置用フィルム,及び,半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開,特開2016-213236〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成27年4月30日の特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。 平成28年 4月20日:手続補正書 平成28年 4月20日:早期審査に関する事情説明書 平成28年 7月 5日:拒絶理由通知(起案日) 平成28年 8月31日:意見書 平成28年 8月31日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 平成28年10月 4日:最後の拒絶理由通知(起案日) 平成28年11月24日:意見書 平成28年12月15日:拒絶査定 (以下「原査定」という。) 平成29年 3月17日:審判請求 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 「【請求項1】 長尺のセパレータと, 前記セパレータ上に,1列に所定の間隔をあけて配置された複数のダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムと, 前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムよりも外側に配置され,且つ,前記セパレータの長辺を含むように,前記セパレータ上に積層された外側シートと を備え, 前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムは,ダイシングテープと,前記ダイシングテープ上に,前記ダイシングテープからはみ出ない態様で積層されたフリップチップ型半導体裏面用フィルム(ただし,前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムは,平面視で多角形状である場合を除く)とを有する構成であり, 前記セパレータと前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムとは,前記セパレータと前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとを貼り合わせ面として積層されており, 前記外側シートの最も幅の狭い部分の長さをG,前記セパレータの長辺から前記ダイシングテープまでの長さをFとしたとき,前記Gが,前記Fの0.2倍~0.95倍の範囲内であり, 前記ダイシングテープの直径をBとしたとき,前記Bが,270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)であることを特徴とする半導体装置用フィルム。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし6に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 1.国際公開第2014/157426号 2.特開2007-288170号公報 3.特開2014-135337号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には,以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同じ。) 「技術分野 [0001]本発明は,例えば半導体保護を目的とする保護膜形成用フィルムが粘着シート上に形成されてなる保護膜形成用複合シートであって,特に,保護膜形成用フィルムとダイシングテープの機能を兼ね備えた保護膜形成用複合シートに関する。 背景技術 [0002]従来,フェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式において,半導体チップは,バンプなどの電極が形成されたチップ表面が基板等に対向されて接合される一方で,チップ裏面が剥き出しとなるため,保護膜によって保護されている。保護膜は,例えば樹脂コーティング等によって形成されていたが,近年,保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付することにより形成される手法も採用されつつある。 また,半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作成する際,半導体ウエハを固定するために,半導体ウエハの裏面にダイシングテープが貼付されることが広く知られている。 [0003]保護膜形成用フィルムとダイシングテープは,製造コストの低減や工程の簡略化等を目的として一体にされ保護膜形成用複合シートとして使用されることがある。保護膜形成用複合シートは,具体的には,基材の上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートの粘着剤面に,保護膜形成用フィルムが貼付されて構成される(特許文献1~4等参照)。<途中省略> [0005]上記保護膜形成用複合シートは,ロール状にされ,或いは枚葉シートの積層品として搬送,使用されるのが一般的であり,その場合,保護膜形成用複合フィルム上には保護用の剥離フィルムが貼付されている。 <途中省略> [0008]本発明は,以上の問題点に鑑みてされたものであり,剥離フィルムを剥離する際の粘着剤層と保護膜形成用フィルム間の層間剥離を防止しつつ,チップ不良を生じさせることなく保護膜付きの半導体チップをピックアップできるようにする保護膜形成用複合シートを提供することを課題とする。」 「[0071][保護膜形成用複合シートの具体的構成] 以下,保護膜形成用複合シートの具体的構成について詳細に説明する。 本発明では,保護膜形成用フィルムは,例えば,被着体である半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」ともいう)と同一形状,又はウエハより大きい形状を有しており,好ましくは円形に形成される。粘着剤層は,例えば,保護膜形成用フィルムよりも一回り大きく形成され,粘着剤層の外周部には,保護膜形成用フィルムが積層されない領域(外周領域)がある。このように,粘着剤層が一回り大きい場合,粘着剤層の外周部は,後述するように,保護膜形成用複合シートがリングフレームに固定されるときに,リングフレームに貼付される領域になる。 なお,粘着剤層の外周部には,保護膜形成用フィルムを取り囲むように再剥離粘着剤層が設けられてもよい。この場合,保護膜形成用複合シートは,再剥離粘着剤層を介してリングフレームに固定されることになる。 [0072]再剥離粘着剤層は,公知の再剥離型粘着剤で形成される。再剥離型粘着剤は,リングフレームに貼付された後,リングフレームから外す際にリングフレーム上に糊残りが発生しないものであれば特に制限はない。具体的には,アクリル系粘着剤,ゴム系粘着剤,シリコーン系粘着剤等が使用可能である。また,再剥離粘着剤層は,通常環状であるが,C字形状等の環状の一部が欠けた形状であってもよい。再剥離粘着剤層は,単層でもよいし,複数層からなってもよい。 [0073]また,本発明では,粘着剤層が複数層から構成される場合,基材側の粘着剤層が,保護膜形成用フィルムに接する粘着剤層よりも一回り大きく形成されることが好ましい。この場合,基材側の粘着剤層の外周部が,リングフレームに貼付される領域になる。 [0074][保護膜形成用複合シートの使用方法] 本発明の保護膜形成用複合シートは例えば以下のように使用されるものである。 本発明では,まず,保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを剥がし,保護膜形成用複合シートの外周部をリングフレームに貼付する。ここで,リングフレームに貼付されるのは,再剥離粘着剤層が設けられる場合には,再剥離粘着剤層であるが,再剥離粘着剤層がない場合には,粘着剤層が直接リングフレームに貼付される。 その後,リングフレームに固定された保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムの中央部分に,被着体であるウエハを貼付する。次いで,ウエハと保護膜形成用フィルムの積層体は一体的にダイシングされ,保護膜形成用フィルム付きの半導体チップとして個別化される。個別化された半導体チップは,コレット等の汎用手段によりピックアップされる。 ここで,保護膜形成用フィルムは,熱硬化されることにより,保護膜となるものであるが,通常,保護膜形成用フィルムは,ピックアップされた後に熱硬化され,その熱硬化により裏面に保護膜を有する半導体チップ(保護膜付きチップ)を得ることができる。ただし,本発明では,保護膜形成用フィルムは,ピックアップされる前に熱硬化されるものであってもよい。 [0075]以上のようにして得られた保護膜付きチップは,フェースダウン方式で基板等の上に実装することで半導体装置を製造することができる。また,保護膜付きチップは,ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することによっても,半導体装置を製造することもできる。 [0076][保護膜形成用複合シートの具体例] 次に,図2~7を用いて,保護膜形成用複合シートの具体例,及びその使用方法を説明する。 図2では,基材11の上に粘着剤層12が設けられるとともに,これら基材11及び粘着剤層12からなる粘着シート16を分断するように環状の切れ込み17が入れられ,切り込み17の内側が本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する。切り込み17の外側はカス部となる。保護膜形成用複合シート10の粘着剤層12の上には,粘着剤層12より一回り小さい保護膜形成用フィルム13が設けられ,粘着剤層12の外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となる。保護膜形成用フィルム13の上に設けられた剥離シート14は,粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13の両方に貼付される。 この保護膜形成用複合シート10は,剥離フィルム14が剥離され,剥離フィルム14が上記カス部とともに除去された後,図3に示すように,リングフレーム18に粘着剤層12の外周部が貼付され,これにより,リングフレーム18に固定される。リングフレーム18に固定された保護膜形成用複合シート10は,その保護膜形成用フィルム13にウエハ19が貼付され,その後,上記したダイシング工程,ピックアップ工程が行われるものである。 [0077]図4に示す保護膜形成用複合シート10では,保護膜形成用フィルム13が設けられない粘着剤層12の上面に,再剥離粘着剤層15が積層される点で図1の構成と異なり,剥離フィルム14は,保護膜形成用フィルム13及び再剥離粘着剤層15に貼付されている。また,切り込み17は,基材11,粘着剤層12に加えて再剥離粘着剤層15も分断しており,本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する切り込み17の内側では,再剥離粘着剤層15は,保護膜形成用フィルム13を取り囲む円環状となる。この保護膜形成用複合シート10では,図5に示すように,再剥離粘着剤層15がリングフレーム18に貼付されることにより,リングフレーム18に固定される。 [0078]図6では,基材11の上に第1の粘着剤層12Aが設けられるとともに,これら基材11及び第1の粘着剤層12Aを分断するように環状の切れ込み17が入れられ,切り込み17の内側が本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する。切り込み17の外側はカス部となる。保護膜形成用複合シート10の第1の粘着剤層12Aの上には,第1の粘着剤層12Aより一回り小さい第2の粘着剤層12B,保護膜形成用フィルム13がこの順に設けられ,第1の粘着剤層12Aの外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となる。保護膜形成用フィルム13の上に設けられた剥離シート14は,保護膜形成用フィルム13及び第1の粘着剤層12Aの両方に貼付される。 この保護膜形成用複合シート10は,図7に示すように,リングフレーム18に第1の粘着剤層12Aの外周部が貼付され,リングフレーム18に固定されるものである。 [0079][保護膜形成用複合シートの製造方法] 以下,保護膜形成用複合シートの製造方法を説明する。 <保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体の作製> 上記保護膜形成用フィルムを構成する各成分を適宜の割合で,適当な溶媒中で又は無溶媒で混合してなる保護膜形成用組成物を,剥離フィルム上に塗布乾燥し,剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成する。次いで,この保護膜形成用フィルムにさらに剥離フィルムを貼付して,剥離フィルム/保護膜形成用フィルム/剥離フィルムの三層構造からなる保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体を得る。保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体は,適宜巻き取り巻収体として保管,運搬等してもよい。なお,以上の工程においては,剥離フィルムを貼付する工程は省略し,保護膜形成用フィルムを露出したままとしてもよい。 [0080]<粘着シートの作製> 粘着剤層を構成する各成分を適宜の割合で,適当な溶媒中で又は無溶媒で混合してなる粘着剤組成物を,剥離フィルム上に塗布し乾燥することで,剥離フィルム上に粘着剤層を形成し,その後,粘着剤層に基材を貼り合わせることで,剥離フィルム付き粘着シートを得る。剥離フィルム付き粘着シートは,適宜巻き取り巻収体として保管,運搬等してもよい。 また,粘着剤組成物を,剥離フィルム上に塗布する代わりに,直接基材に塗布して粘着剤層を形成し,その後,粘着剤層にさらに剥離フィルムを貼り合せて,剥離フィルム付き粘着シートとしてもよい。この場合には,剥離フィルムを貼り合わせる工程は省略して粘着剤層は露出したままでもよい。 [0081]<貼り合わせ> その後,保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体から必要に応じて一方の剥離フィルムを剥離するとともに,剥離フィルム付粘着シートから必要に応じて剥離シートを剥離し,粘着シートの粘着剤層面に,保護膜形成用フィルムを貼り合わせて,保護膜形成用複合シートを作製することができる。 [0082]<型抜き加工> 上記保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体は,必要に応じて型抜き加工が施された後に,粘着シートに貼り合わされてもよい。 型抜き加工は,上記保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体を,一方の剥離フィルムと,保護膜形成用フィルムを切断するように,ウエハと同サイズもしくは一回り大きい例えば円形にハーフカットし,その後,一方の剥離フィルムの全てと保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形よりも外に存在するものを除去することで行われる。これにより,剥離フィルム上に,円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが形成されてなる,保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを得ることができる。 ハーフカットは,通常,先に除去すべき一方の剥離フィルムの側から刃を入れる。また,通常,保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムは,長尺状のものであって,円形の保護膜形成用フィルムが長手方向に多数設けられ,例えば,巻き取られて巻収体とされる。 この保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを,保護形成用フィルム側が粘着剤層に接するように,粘着シートに貼り合わせ,その後切り込みを入れることで,図2に示す保護膜形成用複合シートを得ることができる。」 「実施例 [0085]以下,実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが,本発明はこれらの例によって制限されるものではない。 [0086]本発明における測定方法,評価方法は以下のとおりである。 <途中省略> [0090]<保護膜形成用複合シート貼付試験> リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,ウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した。その際の保護膜形成用複合シートの状況を下記の基準OKおよびNGで目視評価した。 OK・・・(試験を10シート行った時に粘着シートからの保護膜形成用フィルムの剥がれまたは浮きが見られない) NG・・・(試験を10シート行った時に粘着シートからの保護膜形成用フィルムの剥がれまたは浮きが1シート以上発生する) [0091]<ピックアップ試験> [加熱硬化前] リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した後,ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ,チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は,10シートに対して行った。 <ピックアップ試験> [加熱硬化後] リンテック社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付したものを130℃2時間加熱して保護膜形成用フィルムを硬化させた。その後,ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ,チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は,10シートに対して行った。」 「[0093]実施例1 [保護膜形成用組成物の調整] 以下の組成(質量比)のメチルエチルケトン溶液(固形濃度50質量%)を調整し,保護膜形成用組成物とした。 <途中省略> [0094][保護膜形成用フィルムの作製] まず,剥離フィルム(1)(SP-PET381031,リンテック社製,38μm)に,保護膜形成用組成物を,乾燥後の厚さが25μmとなるようにナイフコーターで塗工し,その後乾燥して保護膜形成用フィルムを作製した。次いで,保護膜形成用フィルムに,剥離フィルム(2)(SP-PET381130,リンテック社製,38μm)を積層し,保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体として巻き取った。得られた保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体の巻収体は,300mmの幅に裁断したものであった。 上記で作成した巻収体の幅方向における中央に,剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように,直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施した。その後,剥離フィルム(2)の全て及び保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形の外に存在するものを除去した。これにより,剥離フィルム(1)上に,円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが多数形成された,保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを得た。 [0095][粘着剤組成物の調整] 以下の組成のメチルエチルケトン溶液(固形濃度30質量%)を調整し,粘着剤組成物とした。 <途中省略> [0096][粘着シートの作製] 剥離フィルム(3)(SP-PET381031,リンテック社製,38μm)上に粘着剤組成物をナイフコーターで塗工し,乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布乾燥した。次に,乾燥後の粘着剤層に,コロナ処理を施したポリプロピレンフィルム(三菱樹脂株式会社製,80μm)からなる基材を積層し,剥離フィルム付き粘着シートを作製した。得られた剥離フィルム付き粘着シートは,巻き取り,かつ300mmの幅に裁断して巻収体とした。 次いで,剥離フィルム付き粘着シートから剥離フィルム(3)を除去して得た粘着シートを,上記で得られた保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側に貼り合わせた。その後,その重ねあわせた積層体に,内径270mm,外径290mmの環状の切り込みを入れ,図2に示す保護膜形成用複合シートを得た。」 「[請求項1]基材上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートと,前記粘着剤層に貼付された保護膜形成用フィルムと,前記保護膜形成用フィルムの粘着剤層に貼付された面と反対側の面に貼付された剥離フィルムとを備え, 試験片巾25mm,剥離角度180度,測定温度23℃,引張速度300mm/minで測定したときの前記保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの間の剥離力最大値をα(mN/25mm),前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最小値をβ(mN/25mm),前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最大値をγ(mN/25mm)とすると,α,β,γが以下の(1)~(3)の関係を有する保護膜形成用複合シート。 β≧70   ・・・(1) α/β≦0.50 ・・・(2) γ≦2000 ・・・(3)」 ・以下の図2は,引用文献1に記載された発明の保護膜形成用複合シートの具体例を示す断面図(A),及び平面図(B)を示す。 2 引用発明 したがって,引用文献1には,引用文献1の請求項1に記載された発明の実施例1として以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。) 「基材上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートと,前記粘着剤層に貼付された保護膜形成用フィルムと,前記保護膜形成用フィルムの粘着剤層に貼付された面と反対側の面に貼付された剥離フィルム(1)とを備え, 試験片巾25mm,剥離角度180度,測定温度23℃,引張速度300mm/minで測定したときの前記保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの間の剥離力最大値をα(mN/25mm),前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最小値をβ(mN/25mm),前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最大値をγ(mN/25mm)とすると,β≧70,α/β≦0.50,γ≦2000の関係を有する保護膜形成用複合シートであって, 剥離フィルム(1)に,所定の組成の保護膜形成用組成物を塗工し,その後乾燥して保護膜形成用フィルムを作製する工程と, 保護膜形成用フィルムに,剥離フィルム(2)を積層し,保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体として巻き取る工程であって,得られた保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体の巻収体は,300mmの幅に裁断したものである工程と, 前記巻収体の幅方向における中央に,剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように,直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施す工程と, 剥離フィルム(2)の全て及び保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形の外に存在するものを除去する工程であって,これにより,剥離フィルム(1)上に,円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが多数形成された,保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを得る工程と, 剥離フィルム(3)上に所定の組成の粘着剤組成物を塗工し塗布乾燥する工程と, 乾燥後の粘着剤層に,コロナ処理を施したポリプロピレンフィルムからなる基材を積層し,剥離フィルム付き粘着シートを作製する工程と, 得られた剥離フィルム付き粘着シートを,巻き取り,かつ300mmの幅に裁断して巻収体とする工程と, 剥離フィルム付き粘着シートから剥離フィルム(3)を除去して得た粘着シートを,上記で得られた保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側に貼り合わせる工程と, その重ねあわせた積層体に,内径270mm,外径290mmの環状の切り込みを入れ,当該切り込みの内側の粘着剤層の上には,粘着剤層より一回り小さい保護膜形成用フィルムが設けられ,粘着剤層の外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となり,保護膜形成用フィルムの上に設けられた剥離シート(1)は,粘着剤層及び保護膜形成用フィルムの両方に貼付されるものであり,前記切り込みの外側はカス部となる保護膜形成用複合シートを得る工程とを含む方法によって作製された保護膜形成用複合シート。」 3 引用文献2の記載 引用文献2には,以下の事項が記載されている。 「【0017】 ダイボンドダイシングシートの大きさに制限は無い。半導体ウェハ4を接着剤層2に積層できる大きさであることが好ましく,ダイシング用リングを粘着剤層3a及び保護フィルム3bに貼り付けできるような大きさであることが好ましい。 一例を挙げると使用される半導体ウェハが8インチの場合,半導体ウェハ直径はおよそ200mm,ダイシング用リングは通常210mm~300mm程度である。貼り付け工程などでのずれを考慮し,接着剤層2の大きさ(接着剤層が円形の場合は,直径)は210mm~250mm程度が好ましい。さらに粘着剤層3a及び保護フィルム3bは接着剤層2よりも面積が大きく,接着剤層2とは重なり合わない周縁部3aを有する。粘着剤層3a及び保護フィルム3b(それぞれ円形の場合は,直径)は220mm~300mm程度が好ましい。したがって,8インチの半導体ウェハに使用されるダイボンドダイシングシートの大きさ(下記のラベル状の場合は,一辺の長さ,テープ状の場合はテープの幅)は,基材を含め220mm~350mm程度が好ましい。ダイボンドダイシングシートの大きさは,半導体ウェハのサイズに応じて適宜変更することができる。 さらに,ダイボンドダイシングシートは,一組の接着剤層2と,この接着剤層2よりも一回り広く大きく,そして接着剤層2とは重なり合わない周縁部を有する粘着剤層3aと,その粘着剤層3aに重なり合ってこれを保護する保護フィルム3bとをこの順に含む積層体(以下,ラベルともいう。)が,基材(シート)1の片面に1個配置された「ラベル状」の形態として提供することができる。また,一組の接着剤層と粘着剤層と保護フィルムとをこの順に含む積層体が,長尺の基材1の片面に島状に複数個配置されてロール状に巻かれた「テープ状」の形態として提供することもできる。」 4 引用文献3の記載 引用文献3には,以下の事項が記載されている。 「【0048】 半導体ウエハ加工用シートが長尺剥離フィルムに貼合された連続体では,半導体ウエハ加工用シートが存在する部分の厚みは,半導体ウエハ加工用シートと長尺剥離フィルムとの合計厚であり,半導体ウエハ加工用シートが存在しない部分の厚みは,長尺剥離フィルム厚みのみとなる。したがって,連続体の厚みは不均一になる。このような厚みが不均一な連続体をロール状に巻き取ると,厚みの不均一によって,巻圧が不均一になり,ロールの巻崩れが起こることがある。また,巻圧が高い部分では,半導体ウエハ加工用シートに巻痕が生じることもある。したがって,連続体においては,厚みを均一にすることが好ましい。このため,略円形の半導体ウエハ加工用シートの外側には,粘着シートから少しの間隔を空け,長尺剥離フィルムの短手方向の両縁部13に沿って,半導体ウエハ加工用シートと同じ程度の厚さの周辺テープ6が貼合されてなることが好ましい。ここで,略円形の粘着シート11と周辺テープ6との間隔は,1~20mm程度であることが好ましく,2~10mm程度であることが特に好ましい。周辺テープ6により,厚みの不均一を解消することで,上記の不具合を回避できる。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 1 引用発明の「剥離フィルム(1)」は,本願発明の「セパレータ」に相当する。そして,引用発明の「剥離フィルム(1)」は,巻き取られ,300mmの幅に裁断した巻収体となるから,「長尺」といえる。 2 引用文献1には,「[0002]従来,フェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式において,半導体チップは,バンプなどの電極が形成されたチップ表面が基板等に対向されて接合される一方で,チップ裏面が剥き出しとなるため,保護膜によって保護されている。保護膜は,例えば樹脂コーティング等によって形成されていたが,近年,保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付することにより形成される手法も採用されつつある。また,半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作成する際,半導体ウエハを固定するために,半導体ウエハの裏面にダイシングテープが貼付されることが広く知られている。」と記載されている。そして,フェースダウン方式においてバンプなどの電極が形成されたチップ表面を基板等に対向させて接合する半導体チップは「フリップチップ型半導体」である。そうすると,引用発明の「保護膜形成用フィルム」は,本願発明の「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」に相当する。 3 引用発明の「基材上に粘着剤層が設けられてなる粘着シート」であって,「重ねあわせた積層体に,内径270mm,外径290mmの環状の切り込み」によって得られた径が270mmの粘着シートは,引用文献1の「[0001]本発明は,例えば半導体保護を目的とする保護膜形成用フィルムが粘着シート上に形成されてなる保護膜形成用複合シートであって,特に,保護膜形成用フィルムとダイシングテープの機能を兼ね備えた保護膜形成用複合シートに関する。」との記載に照らして,本願発明の「ダイシングテープ」に相当する。 4 引用発明は,「巻収体の幅方向における中央に,剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように,直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施す工程」と,「剥離フィルム(2)の全て及び保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形の外に存在するものを除去する工程」と,「剥離フィルム付き粘着シートから剥離フィルム(3)を除去して得た粘着シートを,上記で得られた保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側に貼り合わせる工程と,その重ねあわせた積層体に,内径270mm,外径290mmの環状の切り込みを入れ,当該切り込みの内側の粘着剤層の上には,粘着剤層より一回り小さい保護膜形成用フィルムが設けられ,粘着剤層の外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となり,保護膜形成用フィルムの上に設けられた剥離シート(1)は,粘着剤層及び保護膜形成用フィルムの両方に貼付されるものであり,前記切り込みの外側はカス部となる保護膜形成用複合シートを得る工程」とを含む。 そうすると,引用発明の「直径220mmの円形の」「保護膜形成用フィルム」と,前記「保護膜形成用フィルム」に貼り合わせた「粘着シート」とからなる積層体は,本願発明の「ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルム」に相当する。 5 引用発明の剥離フィルム(1)に作製された「保護膜形成用フィルム」は,「巻収体の幅方向における中央に,剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように,直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施す工程」によって,前記剥離フィルム(1)上に,「1列に所定の間隔をあけて配置された」ものになる。そうすると,当該「保護膜形成用フィルム」に「粘着シート」を貼り合わせた積層体もまた,前記剥離フィルム(1)上に,「1列に所定の間隔をあけて配置され」るといえる。 6 引用発明の「保護膜形成用フィルム」は「直径220mmの円形」であり,「粘着シート」の径は「270mm」であるから,引用発明は,本願発明の「前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムは,ダイシングテープと,前記ダイシングテープ上に,前記ダイシングテープからはみ出ない態様で積層されたフリップチップ型半導体裏面用フィルム(ただし,前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムは,平面視で多角形状である場合を除く)とを有する構成」を満たす。 7 引用発明は「剥離フィルム(1)に,所定の組成の保護膜形成用組成物を塗工し,その後乾燥して保護膜形成用フィルムを作製する工程」によって作製されるから,本願発明の「前記セパレータと前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムとは,前記セパレータと前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとを貼り合わせ面として積層されており」を満たす。 8 引用発明の「カス部」は,本願発明の「外側シート」に相当する。 9 引用発明は「前記巻収体の幅方向における中央に,剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように,直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施す工程」を含むから,当該工程によって形成された「保護膜形成用フィルム」は,剥離フィルム(1)の幅方向における中央に位置する。 してみれば,前記工程に続く,引用発明の「その重ねあわせた積層体に,内径270mm,外径290mmの環状の切り込みを入れ」る工程において,前記「環状の切り込み」を「300mmの幅」の「積層体」の幅方向における中央で行うことは技術常識に照らして自然なことであり,また,引用文献1の図2の記載にも整合するものである。 そうすると,引用発明の「『環状の切り込み』の外側に配置され,且つ,『300mmの幅』の『剥離フィルム(1)』の長辺を含むように,剥離フィルム(1)上に積層された『カス部』」の最も幅の狭い部分の長さは,(300-290)/2=5mm,剥離フィルム(1)の長辺から径が270mmの粘着シートまでの長さは,(300-270)/2=15mmであり,前記「『環状の切り込み』の外側に配置され,且つ,『300mmの幅』の『剥離フィルム(1)』の長辺を含むように,剥離フィルム(1)上に積層された『カス部』」の最も幅の狭い部分の長さ(5mm)」は,前記「剥離フィルム(1)の長辺から径が270mmの粘着シートまでの長さ(15mm)」の約0.3倍,すなわち,0.2倍~0.95倍の範囲内という条件を満たす。 10 引用発明の「保護膜形成用複合シート」は,以下の相違点1を除き,本願発明の「半導体装置用フィルム」に相当する。 そうすると,本願発明と引用発明は,以下の構成において一致する。 「長尺のセパレータと, 前記セパレータ上に,1列に所定の間隔をあけて配置された複数のダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムと, 前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムよりも外側に配置され,且つ,前記セパレータの長辺を含むように,前記セパレータ上に積層された外側シートと を備え, 前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムは,ダイシングテープと,前記ダイシングテープ上に,前記ダイシングテープからはみ出ない態様で積層されたフリップチップ型半導体裏面用フィルム(ただし,前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムは,平面視で多角形状である場合を除く)とを有する構成であり, 前記セパレータと前記ダイシングテープ付きフリップチップ型半導体裏面用フィルムとは,前記セパレータと前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとを貼り合わせ面として積層されており, 前記外側シートの最も幅の狭い部分の長さをG,前記セパレータの長辺から前記ダイシングテープまでの長さをFとしたとき,前記Gが,前記Fの0.2倍~0.95倍の範囲内である半導体装置用フィルム。」 本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。 ・相違点1 ダイシングテープの直径Bが,本願発明は,「270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)である」のに対して,引用発明は,「270mm」である点。 第6 判断 ・相違点1について 引用文献1の「[0090]<保護膜形成用複合シート貼付試験>リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,ウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した。その際の保護膜形成用複合シートの状況を下記の基準OKおよびNGで目視評価した。」,「[0091]<ピックアップ試験>[加熱硬化前]リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した後,ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ,チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は,10シートに対して行った。<ピックアップ試験>[加熱硬化後]リンテック社製テープマウンターRAD2700を用いて,各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後,シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ),厚み:150μm]およびリングフレームに貼付したものを130℃2時間加熱して保護膜形成用フィルムを硬化させた。その後,ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ,チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は,10シートに対して行った。」,及び「[0076]・・・この保護膜形成用複合シート10は,剥離フィルム14が剥離され,剥離フィルム14が上記カス部とともに除去された後,図3に示すように,リングフレーム18に粘着剤層12の外周部が貼付され,これにより,リングフレーム18に固定される。リングフレーム18に固定された保護膜形成用複合シート10は,その保護膜形成用フィルム13にウエハ19が貼付され,その後,上記したダイシング工程,ピックアップ工程が行われるものである。」との記載に照らして,引用発明に係る「保護膜形成用複合シート」は,直径:20.32cm(8インチ)のシリコンウエハ,及び,リングフレームに貼付して使用することを前提とした発明であると認められる。 一方,引用文献2の「一例を挙げると使用される半導体ウェハが8インチの場合,半導体ウェハ直径はおよそ200mm,ダイシング用リングは通常210mm~300mm程度である。・・・粘着剤層3a・・・(それぞれ円形の場合は,直径)は220mm~300mm程度が好ましい。との記載に照らして,8インチのウエハに対して使用するリングフレームの径は,「通常210mm~300mm程度」といえる。 してみれば,内径270mm,外径290mmの環状の切り込みを入れる引用発明において,270mmとされている内径を,使用するリングフレームの径に応じて若干大きくして,「270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)」に含まれる寸法,例えば280mmとすることは当業者が適宜なし得た設計事項であり,しかも,本願の発明の詳細な説明の「【0038】ダイシングテープ14の直径Bとしては,例えば,260mm~380mmの範囲内である。」との記載,及び,本願明細書において,実施例1ないし3,及び,比較例1,2が,いずれもB:370mmの場合でしか比較検討されていないことに照らして,270mmに替えて,本願発明で特定する「270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)」という数値範囲を選択したことよる格別の効果を認めることもできない。 さらに,引用文献3には,「半導体ウエハ加工用シートが長尺剥離フィルムに貼合された連続体では,半導体ウエハ加工用シートが存在する部分の厚みは,半導体ウエハ加工用シートと長尺剥離フィルムとの合計厚であり,半導体ウエハ加工用シートが存在しない部分の厚みは,長尺剥離フィルム厚みのみとなる。したがって,連続体の厚みは不均一になる。このような厚みが不均一な連続体をロール状に巻き取ると,厚みの不均一によって,巻圧が不均一になり,ロールの巻崩れが起こることがある。また,巻圧が高い部分では,半導体ウエハ加工用シートに巻痕が生じることもある。したがって,連続体においては,厚みを均一にすることが好ましい。このため,略円形の半導体ウエハ加工用シートの外側には,粘着シートから少しの間隔を空け,長尺剥離フィルムの短手方向の両縁部13に沿って,半導体ウエハ加工用シートと同じ程度の厚さの周辺テープ6が貼合されてなることが好ましい。ここで,略円形の粘着シート11と周辺テープ6との間隔は,1~20mm程度であることが好ましく,2~10mm程度であることが特に好ましい。周辺テープ6により,厚みの不均一を解消することで,上記の不具合を回避できる。」と記載されている。 そして,引用発明においても,引用文献3に記載された,連続体の厚みの不均一に起因する「巻圧が不均一になり,ロールの巻崩れ」及び「巻圧が高い部分では,半導体ウエハ加工用シートに巻痕が生じる」が好ましくないことは明らかである。 してみれば,引用発明において,「内径270mm,外径290mmの環状の切り込み」の幅をより小さく,例えば5mmとするために,270mmとされている内径を,「270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)」に含まれる寸法,例えば280mmとすることは当業者が適宜なし得た設計事項である。 しかも,本願の発明の詳細な説明の「【0038】ダイシングテープ14の直径Bとしては,例えば,260mm~380mmの範囲内である。」との記載,及び,本願明細書において,実施例1ないし3,及び,比較例1,2が,いずれもB:370mmの場合でしか比較検討されていないことに照らして,270mmに替えて,本願発明で特定する「270~370mm(ただし,Bが270mmの場合を除く)」という数値範囲を選択したことよる格別の効果を認めることもできない。 さらに,引用発明の保護膜形成用複合シートが,切り込みの外側に「カス部」(引用文献3の「周辺テープ6」に相当する。)を有することにより,「半導体ウエハ加工用シートに巻痕が生じることもある」との不具合を解消することが理解されるから,本願発明の巻き痕の転写の抑制という効果は,当業者が予測する範囲内のものと認められる。 したがって,引用発明において,上記相違点1について本願発明の構成を採用することは,当業者が容易にできたことである。 ・審判請求人の主張について 審判請求人は,審判請求の理由において,引用文献1の保護膜形成用複合シートと引用文献2のダイボンドダイシングシートとは,用途が異なるから,引用発明において,用途の全く異なる引用文献2に記載されている寸法を採用するようなことは,当業者であっても行うはずがない旨を主張する。 しかしながら,引用文献1に「半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作成する際,半導体ウエハを固定するために,半導体ウエハの裏面にダイシングテープが貼付されることが広く知られている。」([0002])と記載されているように,半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作成する際,半導体ウエハを固定するために,半導体ウエハの裏面にダイシングテープを貼付すること,および,前記ダイシングテープの端部をダイシング用リングに貼付することは周知の方法といえる。 他方,引用文献1及び引用文献2に記載された発明が,その用途に応じて,半導体ウエハの径と,ダイシング用リングの大きさとの組合せにおいて,前記周知の方法において用いられている組合せと異なるものを採用したことを伺わせる特段の事情を見いだすことはできない。 してみれば,引用文献1及び2に記載された発明は,いずれも,半導体ウエハの径と,ダイシング用リングの大きさとの組合せにおいて周知のものが使用されると理解されるから,引用発明において,引用文献2に記載されている寸法を採用することは,当業者が適宜なし得たことといえる。 したがって,審判請求人の前記主張は採用しない。 さらに,審判請求人は,「引用文献3には,独立請求項に『接着性樹脂層が多角形状』が記載されています。そうすると,引用文献3は,『接着性樹脂層が多角形状』であることを前提とし,その上で,粘着シート11と周辺テープ6との間隔を2~10mm程度とすることが開示されているというべきであり,これを無視して,多角形状以外も含むとするご認定は妥当ではないと言わざるを得ません。」と主張する。 しかしながら,引用文献3の【0048】には,「半導体ウエハ加工用シートが存在する部分の厚み」と,「半導体ウエハ加工用シートが存在しない部分の厚み」との違いにより,「連続体の厚みは不均一にな」り,「このような厚みが不均一な連続体をロール状に巻き取ると,厚みの不均一によって,巻圧が不均一になり,ロールの巻崩れが起こることがある」こと,及び,「巻圧が高い部分では,半導体ウエハ加工用シートに巻痕が生じることもある」ことが記載されており,さらに,このような不具合を回避するための「周辺テープ6により,厚みの不均一を解消すること」という課題解決手段も記載されている。 すなわち,引用文献3の【0048】には,前記不具合が,「半導体ウエハ加工用シートが存在する部分の厚み」と,「半導体ウエハ加工用シートが存在しない部分の厚み」との違いにより起こるとする知見が明記されており,「接着性樹脂層が多角形状」であることによって生じるとは記載されていない。 してみれば,前記記載に接した当業者であれば,ロールの巻崩れ,及び,半導体ウエハ加工用シートの巻痕が,単なる「半導体ウエハ加工用シートが存在する部分の厚み」と「半導体ウエハ加工用シートが存在しない部分の厚み」の違いのみによって生じるものと理解するから,当該知見を引用発明に適用することは容易になし得たことである。 したがって,審判請求人の前記主張は採用しない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明と引用文献2,3に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2017-003933

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