特許拒絶査定不服審判
2017-003457
RFタグ、およびその製造方法
- 審判番号
- 2017-003457
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-004581外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月08日
- 審決日
- 2017年12月25日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】オムロン株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人アイミー国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 4581「RFタグ、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月28日出願公開、特開2014-137628、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月15日の出願であって、平成28年9月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年11月18日付けで手続補正がされ、平成29年1月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月8日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年1月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-7に係る発明は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-5に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2011-211748号公報
2.特開平11-11060号公報
3.特開2011-108002号公報
4.特開2008-21080号公報
5.特開2006-31599号公報
第3 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成29年3月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板と、
板状であって、前記回路基板に実装された前記回路部品を収容可能に板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記回路部品を前記貫通孔に収容し、前記回路基板の前記一方面と板厚方向の一方面を対向させるようにして配置される一次成形体と、
前記回路部品が収容された前記貫通孔内の空間を封止する樹脂製の封止材と、
前記回路基板の他方面側から前記一次成形体の他方面側に連なって、板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うよう構成されており、射出成形によって形成される二次成形体とを含み、
前記回路部品が収容された貫通孔を有する前記一次成形体の材質は、磁性体を含む材質であり、
前記回路基板の前記回路部品が実装された反対側の面にパターンコイルが設けられる、
RFタグ。
【請求項2】
前記二次成形体は、前記回路基板の板厚方向の他方面の全面、および前記一次成形体の板厚方向の他方面の全面を覆うようにして設けられる、請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記二次成形体は、前記回路基板と前記一次成形体とが対向する領域を除いて、前記回路基板、および前記一次成形体の全面を覆うようにして設けられる、請求項1または2に記載のRFタグ。
【請求項4】
前記貫通孔は、板厚方向に真直ぐに貫通している、請求項1~3のいずれかに記載のRFタグ。
【請求項5】
前記封止材の材質は、シリコーン樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載のRFタグ。
【請求項6】
前記回路部品は、FeRAMまたはEEPROMである、請求項1~5のいずれかに記載のRFタグ。
【請求項7】
板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板と、板状であって、前記回路基板に実装された前記回路部品を収容可能に板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記回路部品を前記貫通孔に収容し、前記回路基板の前記一方面と板厚方向の一方面を対向させるようにして配置される一次成形体と、前記回路部品が収容された前記貫通孔内の空間を封止する樹脂製の封止材と、前記回路基板の他方面側から前記一次成形体の他方面側に連なって、板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うよう構成されており、射出成形によって形成される二次成形体とを含むRFタグの製造方法であって、
前記回路部品が実装された回路基板、および前記貫通孔が形成された一次成形体を準備する工程と、
前記貫通孔内に前記回路部品を収容させて、前記回路基板の前記一方面と前記一次成形体の前記一方面とを対向させるようにして配置させる工程と、
前記貫通孔内に前記樹脂製の封止剤を注入する工程と、
射出成形により、前記回路基板の他方面側から前記一次成形体の他方面側に連なり、板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うようにして、前記二次成形体を形成する工程とを含み、
前記回路部品が収容された貫通孔を有する前記一次成形体の材質は、磁性体を含む材質であり、
前記回路基板の前記回路部品が実装された反対側の面にパターンコイルが設けられる、
RFタグの製造方法。」
第4 引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-211748号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0028】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1~4を用いて説明する。図1は実施の形態1に係るRFIDタグの構成図、図1(a)はRFIDタグの斜視図、図1(b)は図1(a)を矢印方向に分割した断面図、図2は実施の形態1に係るRFIDタグのモールド前の構成図、図2(a)はRFIDタグの斜視図、図2(b)は図2(a)を矢印方向に分割した断面図、図3は実施の形態1に係るRFIDタグの構成図、図3(a)はRFIDタグの断面図(図3(c)の点線ABの断面に対応。ただし、図3(c)はモールド前のRFIDタグである。)、図3(b)はモールド工程前のRFIDタグの断面図(図3(c)の点線ABの断面に対応)、図3(c)はモールド工程前のRFIDタグの一主面(表面)図、図4は実施の形態1に係るRFIDタグの構成図、図4(a)(b)はRFIDタグの断面図であり、断面の切り方としては、図3(a)(b)と同様である。図1~4において、1は誘電体や誘電体基板などのRFIDタグのコアとなる誘電体基体であり、一主面,他の主面,側面からなる立体形状を成し、各面同士の境界が丸みを帯びていてもよい(後述の誘電体基体10やコーナー部11は、その一例である)。なお、本発明の一例である実施の形態1~5においては、誘電体基体1や後述の誘電体基体10へ後述のICチップ3及びアンテナパターンを実装したものをRFIDタグのコアと称している。また、そのコア(誘電体基体)は、四角柱状のものを使用して実施の形態1~5を説明しているが、形状はこれらに限るものではない。2は誘電体基体1の一主面(表面)に設けられた穴部、3はICチップ、4はICチップ3の一端に電気的に接続され、誘電体基体1の一主面上に配置された第1のアンテナパターン、5はICチップ3の他端に電気的に接続され、誘電体基体1の側面を経由し、誘電体基体1の他の主面(裏面)に亘り配置された第2のアンテナパターンである。」
「【0030】
第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5とで構成されるアンテナパターン(以下、特に説明が無い場合以外は、「アンテナパターン」とは、「第1のアンテナパターン」と「第2のアンテナパターン」との両方を指す)を後述するフィルム基材上に形成してもよい。図1~4にはフィルム基材は図示していないが、アンテナパターンを誘電体基体1に固定する際に、フィルム基材ごと固定してもよい。その場合は、フィルム基材のみに接着層6を接触させてアンテナパターンを固定してもよい。また、充填モールド材9は、モールド材7と同じ材料である必要ないが、モールド材7や誘電体基体1、10と親和性が高いものがよい。もちろん、モールド材7も誘電体基体1、10と親和性が高いものがよい。また、誘電体基体1の一側面とは、4つある側面のうち、ICチップ3からの距離が最も近い誘電体基体1の側面又はこの側面と一辺を共有している側面のいずれかを指す。これは、誘電体基体10でも同様である。以下、側面という表現は、特に注がない限り、アンテナパターンが設けられた一側面を指す。
【0031】
図1に示すRFIDタグは、第1のアンテナパターン4と一端が電気的に接続され、第2のアンテナパターン5と他端が電気的に接続されたICチップ3が挿入された穴部2を有する誘電体基体1の周囲をモールド材によりモールドした構造である。詳しくは、第1のアンテナパターン4は、誘電体基体1の表面に接着層6を介して固定され、第2のアンテナパターン5は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に接着層6を介して固定されている。接着層6は、誘電体基体1と第1のアンテナパターン4及び第2のアンテナパターン5が接触する面の全てに設ける必要は無く、モールド材で誘電体基体がモールドされるまで、第1のアンテナパターン4及び第2のアンテナパターン5を誘電体基体1に固定できる程度の面積(量)のものでよい。もちろん、第1のアンテナパターン4及び第2のアンテナパターン5がフィルム基材に形成されている場合は、接着層6は、誘電体基体1とフィルム基材が接触する面の全てに設ける必要は無いことはいうまでもない。モールド材7によりアンテナパターンを固定するので、接着層の面積をアンテナパターンの面積分抑えることができ、接着層6の材料を減じることが可能である。なお、接着層6は、誘電体基体1側に設けてもよいし、アンテナパターン(フィルム基材)側に設けてもよい。」
「【0034】
図3示すRFIDタグは、図1と図2とに示すRFIDタグとは穴部の形状・深さが異なる。図1と図2とに示すRFIDタグの穴部2は、誘電体基体1の表面上にのみ開口を持っていたが、図3に示すRFIDタグの穴部8は、誘電体基体1の表面(一主面)と裏面(他の主面)とを貫通した貫通口で、誘電体基体1の表面と裏面との両方に開口を持っている。したがって、ICチップ3の厚みに関する制約条件が緩和され、選択できるICチップの寸法の自由度が高くなる。穴部8は、穴部2に関する説明と同様に、ICチップ3が挿入可能な寸法となっているので、誘電体基体1上にICチップによる突起が生じない。したがって、誘電体基体1とモールド材7との間に不連続面が生じにくく、温度変化などの設置環境の変化により誘電体基体が膨張・縮小してもアンテナパターンが誘電体基体とモールド材との間にしっかり固定でき、ICチップ3を負荷から保護している。
【0035】
図3(c)に示すように、穴部8の寸法がICチップ3の寸法よりも大きい場合は、ICチップ3に第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5とが接続され、第1のアンテナパターン4及び第2のアンテナパターン5は誘電体基体1に保持されているので、ICチップ3は所定の位置に配置される。この場合、穴部8の内部に残った空気が高温などの要因により膨張することによる誘電体基体1へかかる負荷を軽減するために、穴部8に充填モールド材9を注入して充填し、その中にICチップ3を埋めることで、穴部8の内部の空気を追い出してもよい。この場合のRFIDタグを示したものが図3(a)である。図3(a)に示されるRFIDタグの穴部8は、充填モールド材9が充填されている。一方、図3(b)は、穴部8に充填モールド材9が充填される前の状態を示した図である。また、穴部8に充填する充填モールド材9である樹脂はモールド材7以外のものでもよいことは穴部2と同様であるが、モールド材7と同じ樹脂を使用する場合は、モールド材で接着層6と接触した面と反対側の第1のアンテナパターン4及び第2のアンテナパターン5の面を含む、誘電体基体1の表面及び裏面と誘電体基体1の全ての側面、つまり4面の側面を覆う際に、穴部8の内部の空気を追い出してもよい。ただし、図3(b)(c)のように、穴部8に樹脂を注入するタイミングが、ICチップ3の挿入後であれば、ICチップ3、第1のアンテナパターン4、第2のアンテナパターン5により、図3のICチップ3周辺のように、穴部8が覆われていない部分を樹脂が注入できる程度に空けておく必要がある。もし、樹脂が注入できる程度に誘電体基体1の表面の穴部8開口が覆われていない部分がない場合でも、誘電体基体1の裏面側の穴部8開口に樹脂が注入できる程度に空きがあれば、誘電体基体1の裏面側の穴部8開口から樹脂を注入することは可能である。ここでいう空きとは、第2のアンテナパターン5が誘電体基体1の裏面側の穴部8開口に一部被っている場合だけなく、第2のアンテナパターン5が誘電体基体1の裏面側の穴部8開口に全く被っていない場合も含む。また、穴部8に樹脂を注入するタイミングが、ICチップ3の挿入前であれば、樹脂が注入された後の「穴部」が本実施の形態1に係るRFIDタグの穴部8(穴部2)であるともいえる。」
「【0070】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5について図25~29を用いて説明する。実施の形態5は、実施の形態1及び2に係るRFIDタグの製造方法に関するもので、実施の形態3及び4では説明していなかったモールド工程に関するものである。図25は実施の形態5に係るRFIDタグの製造方法に使用するモールド用金型(下方金型)の断面図、図26は実施の形態5に係るRFIDタグの製造方法に使用するモールド用金型の断面図、図27は実施の形態5に係るRFIDタグの製造方法に使用するモールド用金型に樹脂を注入した断面図、図28は実施の形態5に係るRFIDタグの製造方法のモールド工程図(最終工程)、図28(a)はモールド用金型から取り出されたモールドされたコアの断面図、図28(b)は支持部材が抜かれたモールドされたコアの断面図、図28(c)は支持部材が抜かれた後にできたモールド材7の未充填空間を有するモールドされたコアの断面図、図29は実施の形態5に係るRFIDタグの製造方法に使用するモールド用金型(下方金型)の断面図、図29(a)は図25に図示したコア載置方法の変形例の図、図29(b)は図25に図示したコアとはコア自体が異なる図であり、図25~図29において、19はコアをモールド材7によりモールドするためのモールド用金型の下方金型、20はコアをモールド材7によりモールドするためのモールド用金型の上方金型、21はモールド用金型内の所定の位置にコアを保持するための支持部材、22は上方金型に設けられたモールド材7をモールド用金型に注入するための注入口、23は支持部材21により生じたコアのモールド材7が存在しない部分である未充填空間、24は未充填空間23を封止する封止樹脂である。なお、注入口22は下方金型19側に設けてもよいし、上方金型20と下方金型19との合わせ面に形成するように、上方金型20と下方金型19との合わせ面に注入口となる形状の溝を彫っておいてもよい。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。以下、モールド工程の説明を行う。
【0071】
まず、図25に示すように、モールド用金型の下方金型19にコアを設置するのだが、この際に、コアをモールドして構成されるRFIDタグのコアを所定の位置に配置するために、下方金型19に棒状の支持部材21を載置して、その上にコアを置く。次に、図26に示すように、下方金型19の開口上に上方金型20を載せて、下方金型19と上方金型20とを型締めを行う。ここで、型締めによりモールド用金型内に形成された空間がRFIDタグの外形となる。換言すると、モールド用金型内に形成された空間に支持部材21とコアとが入れることが可能であれば、コアを構成する誘電体基体1、ICチップ3、アンテナパターンのスペックが変更になったとしても、モールド用金型の寸法や内部の形状を変更する必要がないことになる。ただし、コアをモールドするモールド材7の厚みが薄くなり過ぎるような形状・寸法のコアである場合は、モールド用金型内に形成された空間に支持部材21とコアとが入れることが可能であっても、この限りではない。また、モールド材7の厚みの変化により、前述した誘電体基体1、10とICチップ3のスペックが変わることと同様で、RFIDタグとしてのアンテナ性能が変わってしまう可能性があり、アンテナパターンの寸法を変更、ICチップ3とのアンテナパターンとの整合をとるためにアンテナパターンそのものの形状を変更する必要がある場合もある。
【0072】
型締め後、図27に示すように注入口22からモールド材7である熱可塑性の樹脂を注入し、モールド用金型内の空間をモールド材7で満たす。モールド材7が固化した後に、モールド用金型の型締めを外して、上方金型20と下方金型19とを分離して、加硫を行い、モールドされたコア(RFIDタグ)を取り出す。なお、モールド用金型に注入されるモールド材7の勢いで支持部材21によるコアの支持状態が崩れないように、支持部材21の形状や配置を選択する必要があることはいうまでもない。また、支持部材21はモールドされたRFIDタグの外形を構成するものではないので、モールドされたRFIDタグの外形に関係なく支持部材21の形状を選択できる。もちろん、支持部材21の形状は棒状以外の形状でもよいし、図示されるように2本でなくてもよい。
【0073】
図28(a)は、モールド用金型から取り出されたモールドされたコア(RFIDタグ)である。このモールドされたコアから、図28(b)のように支持部材21を引き抜き、その引き抜くことにより生じたモールド材7の未充填空間23を図28(c)のように封止樹脂24で塞ぐことにより、RFIDタグが完成する。封止樹脂24はコアをモールドしたモールド材7と同じものを使用することが理想的であるが、必ずしも同じである必要はない。ここで、説明した封止樹脂24による未充填空間23の封止とモールド工程との関連を説明すると、図28をモールド工程図(最終工程)という説明を行ったが、未充填空間23のあるなしに関わらずモールドされたコアは、RFIDタグとしては動作が可能であるので、未充填空間23の封止をモールド工程に含めなくてもよい。もちろん、未充填空間23の封止を含めたモールド工程としてもよい。なお、コア単体でもRFIDタグとして動作は可能あるが、対環境性面での脆弱性は否定できないことはいうまでもない。
【0074】
モールド用金型に注入する熱可塑性の樹脂であるモールド材7の熱や注入による流圧によりICチップ3の破損・故障のおそれがある場合は、ICチップ3から注入口22への距離を離したり、前述のように、注入口22の設ける位置を変更したりすることにより、モールド材7のICチップ3への影響を低減させることができる。これは、アンテナパターンにも同様のことがいえる。また、注入口22が図26及び27のような場所で固定した場合は、図29(a)のように、ICチップ3が実装された誘電体基体1の表面(一主面)を下方金型19の底面に対向するようにコアをおいてモールド工程を行えばよい。さらに、図29(b)のように、誘電体基体1の一側面にICチップ3を実装したコアでモールド工程を行えば、よりモールド材7のICチップ3への影響を低減させることができる。
【0075】
以上のようなモールド工程により、ICチップ3による突起がない誘電体基体1、10とモールド材7との間に不連続面が生じにくく、温度変化などの設置環境の変化により誘電体基体が膨張・縮小してもアンテナパターンが誘電体基体1、10とモールド材7との間にしっかり固定できる。なお、フィルム基材16を有するアンテナパターンを貼り付けたコアをそのままモールドしてもよいし、モールドする前にアンテナパターンを残し、コアからフィルム基材16を除去してもよい。また、モールド用金型を使用するので、所望の外形・外寸のRFIDタグが得られる。さらに、支持部材21を使用することにより、所望のRFIDタグの外形・外寸に対応する内部構造を有する一つの金型(モールド用金型)でモールド工程が行える。」
(2)引用発明
以上の記載(特に、下線部)及び図1、図3、図25-28を参照すると次のことがいえる。
【0031】、【図1】の記載によれば、引用文献1には、「第1のアンテナパターン4と一端が電気的に接続され、第2のアンテナパターン5と他端が電気的に接続されたICチップ3が挿入された穴部2を有する誘電体基体1の周囲をモールド材によりモールドした構造であり、第1のアンテナパターン4は、誘電体基体1の表面に固定され、第2のアンテナパターン5は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に固定されているRFIDタグ」が記載されている。また、【0034】、【0035】の記載によれば、図3には、上記図1のRFIDタグとは穴部の形状・深さが異なる穴部8を有するRFIDタグが記載され、該RFIDタグは、「RFIDタグの穴部8は、誘電体基体1の表面と裏面とを貫通した貫通口であり、穴部8は、ICチップ3が挿入可能でICチップ3が所定の位置に配置され、穴部8に樹脂を注入して充填し、その中にICチップ3が埋められて」いるものである。
したがって、引用文献1には、【図3】に示すRFIDタグとして、「第1のアンテナパターン4と一端が電気的に接続され、第2のアンテナパターン5と他端が電気的に接続されたICチップ3が挿入された穴部8を有する誘電体基体1の周囲をモールド材7によりモールドした構造であり、第1のアンテナパターン4は、誘電体基体1の表面に固定され、第2のアンテナパターン5は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に固定されているRFIDタグであって、
RFIDタグの穴部8は、誘電体基体1の表面と裏面とを貫通した貫通口であり、穴部8は、ICチップ3が挿入可能でICチップ3が所定の位置に配置され、穴部8に樹脂を注入して充填し、その中にICチップ3が埋められているRFIDタグ」が記載されている。
また、【0028】、【0070】-【0072】の記載によれば、上記RFIDタグは、「モールド用金型の下方金型19に、誘電体基体1へICチップ3及びアンテナパターンを実装したコアを設置し、下方金型19の開口上に上方金型20を載せて、下方金型19と上方金型20とを型締めを行い、型締め後、注入口22からモールド材7である熱可塑性の樹脂を注入し、モールド用金型内の空間をモールド材7で満たして、モールド材7が固化した後に、モールド用金型の型締めを外して、上方金型20と下方金型19とを分離して、加硫を行い、モールドされたコアを取り出して製造されるもの」である。
さらに、【0030】、【0031】の記載によれば、上記RFIDタグは、「第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5とで構成されるアンテナパターンをフィルム基材上に形成し、アンテナパターンを誘電体基体1に固定する際に、フィルム基材ごと固定してもよい」ものである。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「第1のアンテナパターン4と一端が電気的に接続され、第2のアンテナパターン5と他端が電気的に接続されたICチップ3が挿入された穴部8を有する誘電体基体1の周囲をモールド材7によりモールドした構造であり、第1のアンテナパターン4は、誘電体基体1の表面に固定され、第2のアンテナパターン5は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に固定されているRFIDタグであって、
RFIDタグの穴部8は、誘電体基体1の表面と裏面とを貫通した貫通口であり、穴部8は、ICチップ3が挿入可能でICチップ3が所定の位置に配置され、穴部8に樹脂を注入して充填し、その中にICチップ3が埋められており、
モールド用金型の下方金型19に、誘電体基体1へICチップ3及びアンテナパターンを実装したコアを設置し、下方金型19の開口上に上方金型20を載せて、下方金型19と上方金型20とを型締めを行い、型締め後、注入口22からモールド材7である熱可塑性の樹脂を注入し、モールド用金型内の空間をモールド材7で満たして、モールド材7が固化した後に、モールド用金型の型締めを外して、上方金型20と下方金型19とを分離して、加硫を行い、モールドされたコアを取り出して製造されるものであり、
第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5とで構成されるアンテナパターンをフィルム基材上に形成し、アンテナパターンを誘電体基体1に固定する際に、フィルム基材ごと固定してもよい、
RFIDタグ。」
第5 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「ICチップ3」は、本願発明1の「回路部品」に相当するから、本願発明1と引用発明とは「回路部品」を含む点で共通する。
引用発明の「誘電体基体1」(図2を参照すると「板状」といえる)は、本願発明1の「(板状である)一次成形体」に相当し、引用発明は、「RFIDタグの穴部8は、誘電体基体1の表面と裏面とを貫通した貫通口であり、穴部8は、ICチップ3が挿入可能でICチップ3が所定の位置に配置され、穴部8に樹脂を注入して充填し、その中にICチップ3が埋められて」いるものであるから、本願発明1と引用発明とは「板状であって、前記回路部品を収容可能に板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記回路部品を前記貫通孔に収容する一次成形体と、
前記回路部品が収容された前記貫通孔内の空間を封止する樹脂製の封止材」を含む点で共通する。
引用発明は、「穴部8を有する誘電体基体1の周囲をモールド材7によりモールドした構造」であり、「モールド用金型の下方金型19に、誘電体基体1へICチップ3及びアンテナパターンを実装したコアを設置し、下方金型19の開口上に上方金型20を載せて、下方金型19と上方金型20とを型締めを行い、型締め後、注入口22からモールド材7である熱可塑性の樹脂を注入し、モールド用金型内の空間をモールド材7で満たして、モールド材7が固化した後に、モールド用金型の型締めを外して、上方金型20と下方金型19とを分離して、加硫を行い、モールドされたコアを取り出して製造されるもの」である。
すなわち、引用発明は、穴部8を有する誘電体基体1の周囲全体が、モールド材7である熱可塑性の樹脂を注入してモールドされたものであるから、本願発明1と引用発明は、「前記一次形成体の板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うよう構成されており、射出成形によって形成される二次成形体」を含むといえる点で共通するといえる。
引用発明の「RFIDタグ」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「RFタグ」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「回路部品と、
板状であって、前記回路部品を収容可能に板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記回路部品を前記貫通孔に収容する一次成形体と、
前記回路部品が収容された前記貫通孔内の空間を封止する樹脂製の封止材と、
前記一次成形体の、板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うよう構成されており、射出成形によって形成される二次成形体とを含む、
RFタグ。」
〈相違点〉
相違点1
本願発明1は、「板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板」を含み、「回路基板の前記回路部品が実装された反対側の面にパターンコイルが設けられ」、
そのことに伴い、
「一次形成体」が、「板状であって、前記回路基板に実装された前記回路部品を収容可能に板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、前記回路部品を前記貫通孔に収容し、前記回路基板の前記一方面と板厚方向の一方面を対向させるようにして配置される」ものであり、
「二次成形体」が、「前記回路基板の他方面側から前記一次成形体の他方面側に連なって、板厚方向における前記貫通孔の両側の開口に対応する領域を覆うよう構成されており、射出成形によって形成される」ものであるのに対し、
引用発明は、「板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板」を含まず、「回路基板の前記回路部品が実装された反対側の面にパターンコイルが設けられ」るものではない点。
相違点2
「前記回路部品が収容された貫通孔を有する前記一次成形体」(引用発明でいう「誘電体基体1」)が、本願発明1では、「磁性体を含む材質」であるのに対し、引用発明では、「磁性体を含む材質」ではない点。
第6 当審の判断
まず、上記相違点1について検討する。
本願発明1の「回路基板」は、「板厚方向の一方面に回路部品が実装される」ものであり、「(回路基板の)前記一方面と(板状の一次成形体の)板厚方向の一方面を対向させるようにして配置される」ものであるから、板状の形状を有するものであるといえる。
一方、引用発明は、「第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5とで構成されるアンテナパターンをフィルム基材上に形成し、アンテナパターンを誘電体基体1に固定する際に、フィルム基材ごと固定してもよい」ものであるから、この「フィルム基材」を、本願発明1の上記相違点1に係る構成である「回路基板」に対応付けることは一応考えられる。
しかしながら、引用発明の「フィルム基材」は、その上にアンテナパターンが形成されるものではあるが、一方面にICチップ3(本願発明1でいう「回路部品」)が実装され、その反対側の面にアンテナパターン(本願発明1でいう「パターンコイル」)が設けられるものではない。
また、引用発明において、第1のアンテナパターン4と第2のアンテナパターン5をフィルム基材上に形成し、誘電体基体1にフィルム基材ごと固定すると、第1のアンテナパターン4は、誘電体基体1の表面に固定されるものであるから、この第1のアンテナパターン4が形成されたフィルム基材は、誘電体基体1の表面に固定されるものとなるが、第2のアンテナパターン5は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に固定されるものであるから、この第2のアンテナパターン5が形成されたフィルム基材は、誘電体基体1の表面、側面、裏面に固定されるものとなる。すなわち、上記フィルム基材は、一部は誘電体基体1の表面に固定された板状の形状であるが、他の一部は誘電体基体1の表面、側面、裏面に沿って折り曲げた形状のものであり、このフィルム基材全体は板状の形状を有するものではない。
引用発明において、フィルム基材を採用し、該フィルム基材を、本願発明1のように、一方面に回路部品を実装し、その反対側の面にパターンコイルを設けた、板状の形状を有するものとする動機付けは引用文献1にはない。
また、これらの点は、原査定において引用された他の引用文献2-5を参照しても導くことはできない。
したがって、相違点2、3について検討するまでもなく、本願発明1が、引用発明及び引用文献2-5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願のその余の請求項に記載された発明も、本願発明1と同様の発明特定事項を含むものであるから、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 むすび
したがって、本願は、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003457