特許拒絶査定不服審判
2017-003264
信号の飛行時間を用いる改善された距離の測定
- 審判番号
- 2017-003264
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-563055外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月06日
- 審決日
- 2018年04月09日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】特許業務法人M&Sパートナーズ
- 分類
- P18 .121-WY (G01S) / P18 .113-WY (G01S) / P18 .537-WY (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-563055「信号の飛行時間を用いる改善された距離の測定」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日国際公開、WO2014/195161、平成28年 9月23日国内公表、特表2016-529471、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年5月26日(パリ条約による優先権主張 2013年6月4日(以下、「優先日」という。) 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月27日付けの拒絶理由通知に対して、平成28年9月2日付けで手続補正がなされたが、平成28年11月2日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年3月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年11月20日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年2月5日付けで手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-27に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明27」という。)は、平成30年2月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-27に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、本願発明17及び本願発明27は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第1のデバイス及び第2のデバイスを有し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの距離を測定するために飛行時間に基づく距離の測定を行うシステムであって、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さ及び得られる飛行時間の測定回数のうち、少なくとも、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さが前記距離の測定に必要とされる精度のレベルに従って決定され、
前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される、当該システム。」
「【請求項17】
第1のデバイスと第2のデバイスとの距離を測定する方法であって、
前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの距離を測定するために飛行時間に基づく距離の測定を行うステップを有し、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さ及び得られる飛行時間の測定回数のうち、少なくとも、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さが前記距離の測定に必要とされる精度のレベルに従って決定され、
前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される、当該方法。」
「【請求項27】
デバイスであって、前記デバイスは、
他のデバイスとの通信を可能にするトランシーバ回路と、
前記デバイスと前記他のデバイスとの距離を測定するために飛行時間に基づく距離の測定を行う処理ユニットであって、前記距離の測定に必要とされる精度のレベルに従って、
前記飛行時間に基づく距離の測定の間に前記トランシーバ回路により送られる信号の長さ及び得られる飛行時間の測定回数のうち、少なくとも、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に前記トランシーバ回路により送られる信号の長さを決定する当該処理ユニットと
を有し、
前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記デバイス及び前記他のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される、デバイス。」
本願発明2-16は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明18-26は、本願発明17を減縮した発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-327956号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【0001】
本発明は測距方式における目標と受信機間の距離計測を行う距離計測方法及び距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2物体間の距離の計測はレーダ方式、屋内外位置決め方式、ロボット方式、衝突防止、ゲームプレー及びスマートホーム/オフィス配置などの分野に広い応用を有する。距離計測は電磁気、光あるいは音波のような空気中(あるいはたの媒質中)波動伝播の飛行時間を計測することによりなされる。波動伝播速度と飛行時間の掛け算は決定すべき距離を与える。それゆえ、そのような距離計測の精度は到来信号の到達時間(以下、TOAと称する。)または到達時間差(TDOA)の測定精度に依存する。」
「【0026】
図1は、一般的な測距方式用の受信機1のブロック図を示す。アンテナ2は、送信機3からの到来信号を受信し、そしてこれが信号を増幅する増幅段4に送られる。増幅済み信号はエンベロープ検波段6に送られ、そしてこの段の出力はサンプリング及びアナログ/デジタル変換段8にてサンプリング及びデジタル形式に変換される。もっとも簡単な場合で、アナログ/デジタル変換器は、固定の閾値で信号振幅を比較することにより簡単に実行できる1ビットだけを必要とする。サンプリング及びアナログ/デジタル変換段8からの出力は、クロック12により駆動される時間計測段10において更に処理できるデジタル波形である。到来波形の到達推定時間は、受信機から送信機の距離を決定するために距離推定段14に送られ得る。
【0027】
図2(a)は、サンプリング前の到来信号の通常のエンベロープ波形の例を示す。図2(b)は、サンプリングと1ビットAD変換器を用いるデジタル化の後の図2(b)の波形を示す。サンプリング・ステップは、tsによって示される。TOAは、図2(b)に示すこの離散波形から推定され得る。例えば、信号がサンプリング時間4及び5の間に到達すれば、時間4でのデジタル値(1ビットAD出力)は「0」及び時間5では「1」である。従って、TOAはサンプリング時間4と5の間にあることのみが決定できるが、正確なTOAを決定できない。ある推定はTOAが4.5にあると仮定する。しかしながら、真の到達時間がサンプリング時間4と5の間のいずれかにあるとき、そのような推定に係わる時間推定誤差がある。
【0028】
図2(c)は、与えられた波形に対して真のTOAに対して描かれたTOA推定誤差を示す。それは最大TOA推定誤差がts/2であることを示している。誤差はサンプリング・ステップtsを減らすことにより減らすことができる。しかしながら、これは回路を高いクロック・レートで働かせる必要があり、そして高い電力消費を有するような高価格な解決法である。」
「【0033】
図4(a)は、到達信号の立ち上がり部分を計測するために自然のクロックのジッターを利用し、時間推定誤差を減らすために平均計算を利用するエンベロープ検波後の受信済み波形を示す。クロックジッターが図4(b)に示すように[-ts/2,ts/2]の範囲で均一分布と仮定すれば、このゆらいだクロックを用いて計測された立ち上がり部分はそれにより変化する。計測結果を多数回平均化することにより、TOA推定を非常に改善することができる。いくつかの数値例を以下に示す。もし平均化の回数が十分に大であれば、TOA推定誤差は確率法則により0に減少する。」
ここで、段落【0026】には、「アンテナ2」で受信された信号は、「サンプリング及びアナログ/デジタル変換段8にてサンプリング及びデジタル形式に変換される」ことが記載されており、具体的には、段落【0027】に、「サンプリング・ステップ」が「ts」の「サンプリングと1ビットAD変換器を用いるデジタル化の後の図2(b)の波形を示す」、「図2(b)に示すこの離散波形」と記載されていることから、
引用文献1には、「受信した信号は、サンプリング・ステップtsのサンプリングと1ビットAD変換器を用いて離散波形に変換される」ことが記載されているといえる。
よって、上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「電磁気の飛行時間を計測することによりなされる測距方式用の受信機1であって(【0002】、【0026】)、
アンテナ2は、送信機3からの到来信号を受信し(【0026】)、
受信した信号は、サンプリング・ステップtsのサンプリングと1ビットAD変換器を用いて離散波形に変換され(【0026】、【0027】)、
TOA(到達時間)は、この離散波形から推定され、例えば、信号がサンプリング時間4及び5の間に到達すれば、時間4でのデジタル値(1ビットAD出力)は「0」及び時間5では「1」であり、TOAはサンプリング時間4と5の間にあることのみが決定できるが、正確なTOAを決定できず、推定はTOAが4.5にあると仮定されるが(【0002】、【0027】)、最大TOA推定誤差がts/2であるものにおいて(【0028】)、
クロックジッターが[-ts/2,ts/2]の範囲で均一分布と仮定すれば、このゆらいだクロックを用いて計測された立ち上がり部分はそれにより変化し、計測結果を多数回平均化することにより、TOA推定を非常に改善することができる(【0033】)、
測距方式用の受信機1(【0026】)。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-085780号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0031】
図3は移動局10の機能の概要を示す機能ブロック線図である。移動局10は、移動局が電波の送受信を行なうアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31などを有している。・・・」
「【0033】
信号処理部28は、移動局10が電波を発信する際において、例えば電波の発信時刻などの伝送したい情報を、例えばM系列符号やGPSにおいても使用されているGold系列符号(疑似雑音符号(pseudo-noise code;PN信号)ともいう。)などの拡散符号を用いて、スペクトラム拡散などの拡散処理を行ない、発信する信号を生成する。このようなスペクトラム拡散を利用すれば、ある特定の移動局と基地局との通信がある特定の拡散符号を用いて行われている場合に、同じ時刻および同じ周波数において他の移動局と基地局との通信が別の拡散符号を用いて行われる場合であっても、相互の通信が影響を受けることがない。」
「【0037】
図4は、基地局12の機能の概要を示す機能ブロック線図である。基地局12は無線通信部34、信号処理部36、制御部38を有し、これらはそれぞれ前述の移動局10が有する無線通信部26、信号処理部28、制御部30と同様の機能を有する、また、基地局12はこれらの無線通信部34、信号処理部36、制御部38に加え、RSSI取得部46、A/D変換部48、受信時刻測定部42などを有する。・・・」
「【0043】
このようにして得られる、移動局10と基地局12との距離Dと、受信電力PRの値との関係を図示したものが図6である。このように、受信電力PRと移動局10と基地局12との距離とは、一対一に対応する関係にあるので、RSSI値は移動局10と基地局12との距離に関連する距離関連値である。従って、RSSI値を測定するRSSI取得部46は、第1の測距手段に対応する。
【0044】
受信時刻測定部42は、基地局12が受信した電波の受信時刻を測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波と、その受信波を発信する際に行なった拡散処理に用いた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。なお、このような処理を同期検出という。また、受信時刻測定部42は、例えば前記信号処理部36によって受信波が逆拡散処理されることで得られる移動局10による電波の発信時刻についての情報と測定した受信時刻とに基づいて、電波の伝搬時間を算出する。この電波の伝搬時間と移動局10と基地局12との距離とは、電波の速度を乗ずることによって変換することができる、一対一に対応する関係にあるので、電波の伝搬時間は移動局10と基地局12との距離に関連する距離関連値である。従って、受信時刻測定部42は第2の測位手段に対応する。」
「【0050】
このように、測距誤差として許容される最大値αが設定されると、その測距誤差の範囲内で測距を行うことのできる最小の受信電力PRの値であるRTH、あるいはこれに対応する移動局10と基地局12との距離Dの最大のLTHの値が算出される。そこで、判定部50は、RSSI取得部46によって取得されたRSSIの値から変換して得られる受信電力PRの値、あるいはこれに対応する移動局10と基地局12との距離Dに基づいて、RSSI取得部46の実行から受信時刻測定部42の実行に切り換える。これは、後述する測位部56によって用いられる距離関連値を、RSSI取得部46によって取得されるRSSI値から変換して得られる受信電力PRの値から、受信時刻測定部42によって測定される受信時刻に切り換えることに対応する。具体的には、判定部50は、RSSI取得部46によって算出されたRSSIの値から変換して得られる受信電力PRの値が設定された測距誤差として許容される最大値αによって決定される受信電力PRの値RTHを下回っているか、あるいはこれに対応する移動局10と基地局12との距離DがLTHを上回っている場合には、RSSI取得部46の実行から受信時刻測定部42の実行に切り換える。すなわち、前記受信電力の値RTH、あるいはこれに対応する移動局10と基地局12との距離Dの最大のLTHの値は、判定部50における切換判定値に対応する。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-051058号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、参照光を投射して物体まで距離情報を得る距離測定装置に関する。」
「【0014】図2は本発明に係る3次元入力装置のブロック図である。図中の実線矢印はデータの流れを示し、破線矢印は制御信号の流れを示す。3次元入力装置1は、パルス光の送受信のための光学系10、走査機構30、モニタ撮影のための光学系40、各種の電気回路要素、及び動作指定のための入力手段70を備えている。光学系10は、レーザ光源(半導体レーザ)11、光ビームの広がり角を規定する投光レンズ12、光路設定のための反射プリズム13、受光レンズ14、及び光検出器(フォトダイオード)15から構成されている。レーザ光源11は、発光ドライバ21からの電力供給に呼応して100ns程度のパルス幅のパルス光を射出する。パルス光は、投光レンズ12及び反射プリズム13を順に経て走査機構30に入射し、偏向ミラー31で反射して外部へ向かう。外部で反射して偏向ミラー31に戻ったパルス光は受光レンズ14で集光されて光検出器15に入射する。光検出器15は、受光量に応じた振幅の光電変換信号S15を出力する。」
「【0017】3次元入力装置1では、偏向ミラー31を間欠駆動して投射方向を変更する。1つの投射方向の測距を行っている期間において、偏向ミラー31の駆動は一時的に停止され、その投射方向が保持される。偏向ミラー31の一時停止時間は、その投射方向における測定回数の設定値が大きいほど長い。つまり、測定に必要な時間だけ偏向ミラー31を停止させる。測定回数の設定値が0の投射方向については、偏向ミラー31を停止させず実質的に測距を省略する。これにより、走査の所要時間を短縮することができる。」
「【0033】走査中に逐次に得られる測定結果に応じて、以降の測定の精度を自動的に変更することができる。測定精度マップM1に従って走査を進め(図12の#11~#15)、最新の測定結果が注目距離範囲(例えば10m~20m)に該当すれば、当該測定点及びその隣接8近傍の測定点うちで以降に走査される測定点の測定精度レベルを変更する(#16、#17)。レベル変更により測定回数が増えた場合は、増加分の追加測定を行う(#18、#21)。図11では測定精度のデフォルト値がレベル2であり、走査位置の測定点を含む5個の測定点の測定精度がレベル4に変更されている。設定レベルの回数の測定が終われば、測定回数分の受光データを平均して距離データDLを算出する(#19)。最終測定点の測定が完了するまで、この動作を繰り返す(図12の#20、#14)。
【0034】このようにして各測定点の精度レベルを更新していくことで、予め設定した距離範囲内にある対象物の3次元入力が高精度になる。なお、測定結果が注目距離範囲内となった測定点については測定精度を更新せず、その周囲の以後に走査される測定点のみについて測定精度を更新してもよい。測定結果が注目距離範囲内となった測定点のみについて測定精度を更新してもよい。また、測定点及びその近傍に限らず、以後に走査される全ての測定点について測定精度を更新してもよい。」
上記記載から、引用文献3には、次の技術が記載されている。
「参照光を投射して物体まで距離情報を得る距離測定装置において、投射された参照光の走査中に得られる測定結果が注目距離範囲(例えば10m~20m)に該当すれば、当該測定点の測定精度レベルを変更する技術。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2008-533436号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0026】
図1を参照するに、第1装置と第2装置との間の信号の交換について示されている。第1装置1及び第2装置は各々、無線で信号を送受信し、第1クロック及び第2クロック(図示せず)のそれぞれを有する。第1信号3は第1クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t1で第1装置1から送信され、第2クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t2で第2装置2に到達する。第2信号4は第1クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t3で第1装置1から送信され、第2クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t4で第2装置2に到達する。第3信号5は第2クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t5で第2装置2から送信され、第1クロック(図示せず)にしたがって決定される時点t6で第1装置1に到達する。
【0027】
飛行時間ToFは次式を用いて決定される。
ToF=(1/2)((t6-t3)-(t5-t4)x(t3-t1)/(t4-t2))
(1)
式(1)は、各々の装置1、2におけるクロック(図示せず)のクロックレートにおける差を可能にする補正係数、即ち、
(t3-t1)/(t4-t2) (1a)
を有する。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「受信機1」、「送信機3」は、本願発明の「第1のデバイス」、「第2のデバイス」に相当する。
イ 引用発明は、「受信機1」の「アンテナ2」が、「送信機3からの到来信号を受信し」て、「受信機1」が、「TOA推定」を行うのであるから、引用発明の「測距方式」は、「受信機1」及び「送信機3」を有するもので、「受信機1」及び「送信機3」は、「受信機1」と「送信機3」との距離を測定しているといえる。
したがって、引用発明の「電磁気の飛行時間を計測することによりなされる測距方式」は、本願発明1の「第1のデバイス及び第2のデバイスを有し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの距離を測定するために飛行時間に基づく距離の測定を行うシステム」に相当する。
すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「第1のデバイス及び第2のデバイスを有し、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの距離を測定するために飛行時間に基づく距離の測定を行うシステム。」
(相違点1)
本願発明1は、「前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さ及び得られる飛行時間の測定回数のうち、少なくとも、前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さが前記距離の測定に必要とされる精度のレベルに従って決定され」るのに対して、引用発明は、「計測結果を多数回平均化することにより、TOA推定を非常に改善することができる」ことは記載されているが、信号の長さを決定することの特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(2)判断
ア 特許法第29条第2項について
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献3には、参照光を投射して物体まで距離情報を得る距離測定装置において、投射された参照光の走査中に得られる測定結果が注目距離範囲(例えば10m~20m)に該当すれば、当該測定点の測定精度レベルを変更する技術が記載されているが(上記「第3 3」)、上記技術は、参照光を投射し、それを走査することにより物体まで距離情報を得る距離測定装置に関するものであり、第1のデバイスと第2のデバイスとの距離を測定するシステムではなく、引用発明に適用する理由は見当たらない。
また、引用文献2又は4は、第1のデバイスと第2のデバイスとの距離を測定するシステムが記載されているが、距離の測定に必要とされる精度のレベルを、第1のデバイス及び第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定されることは、記載されていない。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。
よって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
イ 特許法第29条第1項第3号について
上記「(1)対比」で検討した通り、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明に記載されておらず、実質的な相違点であるから、本願発明1は、引用発明であるとはいえない。
2 本願発明2-16について
本願発明2-16も、上記相違点2に係る本願発明1の「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明17について
本願発明17は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由によって、引用発明であるとはいえず、かつ、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 本願発明18-26について
本願発明18-26も、上記相違点2に係る本願発明1の「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由によって、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
5 本願発明27について
本願発明27も、上記相違点2に係る本願発明1の「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由によって、引用発明であるとはいえず、かつ、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 原査定の拒絶の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
(1)理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
記
・請求項1
・引用文献1
・請求項18,29
・引用文献1
(2)理由3
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項1,18,29
・引用文献1
・請求項2,7,19
・引用文献1-2
・請求項2-4,11-12,19-21,24-25
・引用文献1,3
・請求項5
・引用文献1,3
・請求項9,10,22,23
・引用文献1
・請求項13,26
・引用文献1,4
・請求項14-17,27,28
・引用文献1,4
<引用文献等一覧>
1.特開2007-327956号公報
2.特開2009-085780号公報
3.特開2001-051058号公報
4.特表2008-533436号公報
2 原査定の拒絶の理由についての判断
(1)理由2(特許法第29条第1項第3項)について
平成30年2月5日付け手続補正により補正された請求項1、17、27は、「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」という事項、もしくはそれに対応する事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1、17、27は、引用発明であるとはいえない。
(2)理由3(特許法第29条第2項)について
平成30年2月5日付け手続補正により補正された請求項1-4、6、8-27は、「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」という事項、もしくはそれに対応する事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-4、6、8-27は、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1には「前記飛行時間に基づく距離の測定の間に送られる信号の長さが前記距離の測定に必要とされる精度のレベルに従って決定される」ことは記載されているが、「距離の測定に必要とされる精度のレベル」が、第1のデバイス及び第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定されることは記載されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていない、及び、請求項18、29についても同様であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年2月5日付け手続補正において、請求項1及び17が「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」と補正され、請求項27が「前記距離の測定に必要とされる前記精度のレベルが、前記デバイス及び前記他のデバイスの間の距離が所定の距離にどの程度近いかに従って決定される」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、17、27は、引用発明であるとはいえず、本願発明1-27は、引用発明、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-003264