特許拒絶査定不服審判
2017-003021
消音器
- 審判番号
- 2017-003021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-166036
- 請求日
- 2017年03月01日
- 審決日
- 2018年03月05日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三浦工業株式会社
- 【請求人代理人】信末 孝之
- 【請求人】ダイハツディーゼル株式会社
- 【請求人代理人】信末 孝之
- 【請求人】常石造船株式会社
- 【請求人代理人】信末 孝之
- 審判長/審判官
- 審判長 冨岡 和人
- 審判官 八木 誠
- 審判官 金澤 俊郎
- 分類
- P18 .121-WZ (F01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-166036「消音器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年3月31日出願公開、特開2016-41917〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月18日の出願であって、平成28年6月29日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月1日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年11月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年3月1日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、その後、当審において、平成29年8月28日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月27日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、出願当初の明細書、平成29年3月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
筒状体の内部に2枚の半円形板状の案内部材を交差して配置した、径よりも全長の方が長い旋回室と、前記旋回室を通過する流体を媒体として伝わる音波が孔を通して導入される共鳴室とを有する消音器であって、
前記2枚の案内部材のうち一方が、前記旋回室の入口から出口まで全長に亘って上昇するように配置されており、
前記2枚の案内部材のうち他方が、前記旋回室の入口から出口まで全長に亘って下降するように配置されていることを特徴とする消音器。」
第3 引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された米国特許出願公開第2002/0121404号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、「METHOD AND APPARATUS FOR IMPROVED NOISE ATTENUATION IN A DISSIPATIVE INTERNAL COMBUSTION ENGINE EXHAUST MUFFLER」(内燃機関の消音マフラーにおける騒音減衰のための装置及び方法)について、次の事項が図面(特に、図3参照。)とともに記載されている。
(1)“[0044] The present invention relates to mufflers for internal combustion engines. The invention overcomes the problems presented in conventional known mufflers through an innovative incorporation of specially configured elements, including components composed of metal fiber, or metallic felt, as described herein.
[0045] The primary function of the perforated tube duct in a conventional dissipative muffler is to convey sound waves from the exhaust flow to the surrounding annular chamber, which is filled with acoustically absorptive porous material. By acting as a liner in contact with the porous media (which shall be considered "rigid" as opposed to "flexible" since it is usually compressed between the perforated metal and the chamber wall), the perforated metal also affects the net absorption coefficient of the combination. It is known that such a combination of "resistive screen" and rigid porous media has a high absorption coefficient for mid to high frequencies (i.e., greater than 250 Hertz). It has also been determined that as the normalized flow resistance (R/ρc) of the screen is increased from zero to one, absorption coefficient dramatically improves for frequencies less than 250 Hz, while the absorption coefficient for higher frequencies drops almost negligibly.
・・・中略・・・
[0047] Fiber metal, on the other hand, provides a solution. Due to its structure of small-diameter fibers in a dense but still porous arrangement, a fiber metal screen can be easily manufactured to possess a normalized flow resistance of around 1.0 in a thin and lightweight sheet. For example, at 0.125" in thickness, the Technetics FM109(R) standard fiber metal sheet is only twice as thick as the commonly-used 16-gauge (0.063") perforated metal screen, but has the same mass per unit area. Therefore, in this invention fiber metal is substituted for perforated metal to improve acoustical absorption in the lower frequency range, and yield an identically-sized muffler that reduces more low-frequency noise.”(段落[0044]ないし[0047])
[0044] 本発明は、内燃機関のマフラーに関連する。本発明は、ここに説明する金属繊維、または金属フェルトから成る部品を含む特別に構成された要素を革新的に組み込むことにより、従来のマフラーに存在する課題を解決する。
[0045] 従来型消音マフラーの穴あきチューブダクトの基本的機能は、排気流中の音波を多孔質性吸音材で満たされた周囲の環状チャンバーに伝えることである。穴あき金属は、多孔質媒体(通常は穴あき金属とチャンバー壁の間に圧縮されているため「弾性体」ではなく「剛体」として見なされる)と接するライナーとして機能するため、その組み合わせにおける正味吸音率にも影響する。「抵抗性スクリーン」と剛体の多孔質媒体の組み合わせは、中ないし高周波帯(すなわち250ヘルツ超)の吸音率が高いことが知られている。また、スクリーンの正規化流れ抵抗(R/ρc)が0から1に増えるにつれて、250ヘルツ未満の周波数帯に対する吸音率が劇的に向上する一方で、それより高い周波数帯の吸音率はほんのわずかしか低下しないことが知られている。
・・・中略・・・
[0047] 一方、繊維金属は解決策を提供する。高密度ながら多孔質性を持つ小径繊維の構造により、正規化流れ抵抗およそ1を示す薄くて軽量なシート状の繊維金属スクリーンが容易に製造できる。例えば、Technetics FM109R標準繊維金属シートは厚さ0.125インチであり、一般的に使われている16ゲージ(0.063インチ)穴あき金属スクリーンの2倍程度の厚さでありながら、単位面積当たりの質量は同じである。そのため本発明においては、穴あき金属を繊維金属に置き換えることで、低周波数帯における吸音を改善し、同一サイズでありながら低周波数ノイズをより多く低減するマフラーを実現する。(当審による仮訳。以下同様。また、下線は、理解のための一助として当審で付与した。以下同様。)
(2)“[0058] FIG. 3 depicts and embodiment of the invention also having an inlet port ( 17 ) fluidically connected to an outlet port ( 18 ) by a fiber metal duct ( 19 ), the duct ( 19 ) forming the inner wall of an annular chamber ( 20 ) filled with one or more layers of acoustically absorbent fill such as fiberglass. The outer casing ( 22 ) of ( 20 ) is solid and is closed on each end by a solid endcap ( 23 , 25 ). The end caps ( 23 , 25 ) have muffler ports ( 17 , 18 ) respectively, and are attached to the casing ( 22 ) by some form of mechanical fastener ( 24 ). In this embodiment of the invention, the duct ( 19 ) surrounds a helical insert ( 21 ) composed of a highly flow resistive and highly acoustically transparent material, such as fiber metal. This configuration of the invention achieves improvements in noise attenuation that are impossible with prior art materials and methods relying on linear occlusion.”(段落[0058])
[0058] 図3は、発明の実施形態の1つを示しており、やはり繊維金属ダクト(19)によってアウトレットポート(18)に流体的に接続されたインレットポート(17)を有し、ダクト(19)は1層または複数層から成る繊維ガラスなどの吸音充填材が充填された環状チャンバー(20)の内壁を形成している。(20)のアウターケーシング(22)は剛体であり、剛体のエンドキャップ(23、25)で両端が閉じられている。エンドキャップ(23、25)はそれぞれのマフラーポート(17、18)を有し、何らかの形のメカニカル・ファスナー(24)によってケーシング(22)に固定されている。この発明の実施形態では、繊維金属のように流れ抵抗が高くかつ音響的透明度が高い素材から成るら旋状インサート(21)をダクト(19)が取り囲んでいる。本発明のこの構成により、リニア・オクルージョンに依存した先行技術の素材や手法では不可能であった騒音低減率の改善が達成できる。
(3)上記(1)、(2)及び図面の記載より分かること
ア 上記(1)、(2)及び図3の記載によれば、環状チャンバー(20)には、排気流中の音波が繊維金属ダクト(19)の多孔質性の構造を通して伝わることが分かる。
イ 上記(2)及び図3の記載によれば、繊維金属ダクト(19)の内部に、径よりも全長の方が長い内部空間を有すること、前記空間にら旋状インサート(21)を配置したこと、ら旋状インサート(21)が、前記空間の入口から出口まで全長にわたって配置されていることが分かる。
ウ 上記ア及びイの記載によれば、上記排気流は上記空間を通過することが分かる。
(4)引用発明1
上記(1)ないし(3)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
<引用発明1>
「繊維金属ダクト(19)の内部にら旋状インサート(21)を配置した、径よりも全長の方が長い内部空間と、前記空間を通過する排気流中の音波が繊維金属ダクト(19)の多孔質性の構造を通して伝わる環状チャンバー(20)とを有するマフラーであって、
ら旋状インサート(21)が、前記空間の入口から出口まで全長にわたって配置されているマフラー。」
2 引用文献2の記載事項
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特公昭43-4579号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「流体流動装置」について、次の事項が図面(特に、第1図ないし第3図参照。)とともに記載されている。
(1)「ここに考察中の邪魔板構造48では、第1図並びに第1a図に明白に示す如く、数枚の邪魔板54bと同様に数枚の邪魔板54aが間隔を置いた平行平面内に置かれている。又、各邪魔板の下側先端は、一体のモールディング又は鋳物により、又、半田付け、溶接、セメント付け又は類するもの(邪魔板の成分による)により、隣接の下側の邪魔板対の板の上部先端に衝き合わせ且つ適宜に接続されている。同様に、各邪魔板対の邪魔板の上部先端は、これに対応して隣接の上部邪魔板対の板の下部先端に衝合わせ且つ接続されている。然しながら、後にわかるように、本発明の或る応用例では、一対の邪魔板のみが使用され、或は数対の邪魔板が使用される場合には、隣接対が軸方向に間隔を置き、且つ1対の邪魔板が別の邪魔板対の夫々の板に平行ではない。
第2図に於ける如く、カートリツジ支持スリーブ32の軸方向に見るとき、邪魔板54a並びに54bはスリーブを通る通路の断面積全体を占めていることがわかる。この通路は円形になつているから、明らかに各邪魔板54a並びに54bは楕円の半分となり、楕円の長軸は邪魔板の対向する縁部の共通平面内にある。」(第2ページ右欄第38行ないし第3ページ左欄第13行)
(2)「第3図に示されたマフラー100は所謂直通型であつて、従来のマフラーのやり方に従い断面を円筒状、楕円形又は他の任意の形状とする外側マフラーかこい102を有している。排気管104がマフラーかこいを貫通して延び、管の端部は内燃機関又はマフラーを必要とする他の装置からの排出管に接続するためにかこいの端部を超え或る距離だけ突出している。例えば、第3図に示すマフラーは自動車に使用するために特に設計されたものである。マフラーかこい102の端部は端壁106により閉鎖せられ、この端壁は通常の態様で排気管104に溶接するか或は別途接続されている。
マフラーかこい102の内部に含まれる排気管104の部分は穴を穿たれている。管の穴は適宜の形状並びに配置のものでよい。マフラーかこい102と排気管104との間の環状空間110は音響弱化室を定め、この音響弱化室は以下に論ずる態様で空中に反射される音波エネルギーを弱化するため公知の様式で音響学的に処理せられ或は作られている。簡単にするために、図示のマフラーの室110の音響学的処理は簡単な音響吸収材112を備えている。この音響処理は高周波の弱化に特に有効である。二者択一的に、マフラーの音響室110は特定周波数の音響を弱化するために異る軸方向の間隔を有する仕切りにより数室に軸方向に分割してもよい。斯かる音響処理は低周波の弱化に最も能率的である。これら二つの普通の音響処理を組み合わせてマフラーに使用し広範囲の弱化を行つてもよい。
マフラーを貫流する排気ガス中に存する音波エネルギーは排気管104の中に置かれた邪魔板114により音響弱化室110の中に反射される。この邪魔板構造は第1図並びに第2図の分離装置中の邪魔板と同一であり軸方向に間隔を置いた邪魔板対116を有し、各々は1対の角度を成して配置された邪魔板116a並びに116bを備えている。
第1図並びに第2図の邪魔板構造48の如く、邪魔板構造114は実際に2重螺旋構造を定め、この構造は第3図のマフラーでは排気管104を貫流する排気の螺旋流を誘起する。その結果、マフラー100を通る排気ガスの流路の有効長さは従来の直通式マフラーを通る排気ガス流路の長さよりも可成り長い。この様にして、マフラー内部に排気ガスが停留する有効時間が従来の直通型マフラー中の排気ガスの停留時間よりも増大せられ、これにより背圧をさして増やすことなく、このマフラー中で優良は音響弱化が行われる。
勿論、明らかに、排気管104内の瓦斯のうず巻き運動が瓦斯に遠心力を生じ、この遠心力が炭素粒子の如き瓦斯中の高密度の物質を排気管104の孔108を通じ半径方向に外方に追いやり音響弱化室110の中に入れる。斯くして、このマフラーから出る排気ガスは従来のマフラーから出る排気ガスよりも相当に清浄である。その上、排気ガス中に巻き込まれた火花はマフラー中を挿束せられ消され、これにより従来知られている如くこの火花が火災を発生することを避ける。排気瓦斯中に巻込まれた湿気は遠心力により音響室110の中に追いやられる。所望とあれば、この湿気を室から排出するためにマフラーのかこい102に孔(図示せず)を設けてもよい。斯くして、このマフラーが第1-2図に公表された型式の遠心分離装置として作用することがわかる。」(第4ページ左欄第4行ないし右欄第21行))
(3)「第3図に示されたマフラーでは、邪魔板構造114は、邪魔板116bの如く、すべての邪魔板116aが相互に平行であり且つ排気管104の長手方向の軸に対し同一角度で傾斜した単一の一体装置を有している。併しながら、邪魔板は板から音波の反射角の処に置き、異る音波周波数の場合にマフラーの音響弱化効率を変えるようにしてもよい。邪魔板構造の軸に垂直な平面に対し大きな角度に据付けられた邪魔板は流体流に対する抵抗が小さく、従つて、より小さな角度即ち邪魔板軸に対し垂直に近く据付けられた邪魔板より小なる背圧を生ずる他方に於いて、より大きな角度で据付けられた邪魔板は流路の長さを増大する。この設計フアクターは本発明の使用に際し有利に使うことができる。
或る場合には、マフラーの排気管に沿い間隔を置いて配置せられ且つ排気流に対し異る角度で配置された邪魔板を有する数個の対をなす邪魔板を使用してもよい。
第1図並びに第2図の遠心分離装置の邪魔板構造48と第3のマフラーの邪魔板構造114とは種々と態様で作ることが出来る。例えば、これらの構造の邪魔板は薄板から打ち出してもよいし又別々に作り先端に先端を又縁部に縁部を接続して邪魔板構造を作つてもよい。第1図並びに第2図の邪魔板構造48の場合の如く邪魔板構造が別別の軸又は管又は類するものを取巻いている場合には、邪魔板は相互に取付けるよりも寧ろ個々に軸又は管に取付けてもよい。」(第5ページ左欄第36行ないし右欄第17行)
(4)上記(1)ないし(3)及び図面の記載より分かること
ア 上記(1)ないし(3)及び第1図ないし第3図の記載によれば、邪魔板構造114は邪魔板構造48と同一の構造であり、一対の邪魔板のみが使用されるとの記載からみて、マフラー100は、排気管104の中に一対の楕円の半分となる邪魔板116a及び116bのみを角度を成して配置する部分空間を有すること、及び、一対の邪魔板116a及び116bのうちの一方が、前記空間の入口から出口まで上昇するように配置されており、一対の邪魔板116a及び116bのうちの他方が、前記空間の入口から出口まで下降するように配置されていることが分かる。
イ 上記(2)、上記ア及び第3図の記載によれば、上記空間を貫流する排気ガス中に存する音波エネルギーが穴を通じて音響弱化室110の中に反射されることが分かる。
(5)引用発明2
上記(1)及び(4)を総合すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
<引用発明2>
「排気管104の中に一対の楕円の半分となる邪魔板116a及び116bのみを角度を成して配置した部分空間と、前記空間を貫流する排気ガス中に存する音波エネルギーが穴を通じて中に反射される音響弱化室110とを有するマフラー100であって、
一対の邪魔板116a及び116bのうちの一方が、前記空間の入口から出口まで上昇するように配置されており、
一対の邪魔板116a及び116bのうちの他方が、前記空間の入口から出口まで下降するように配置されているマフラー100。」
第4 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とする場合
本願発明と引用発明1とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明1における「繊維金属ダクト(19)」は、本願発明における「筒状体」に相当し、以下同様に、「ら旋状インサート(21)」は「案内部材」に、繊維金属ダクト(19)の「内部空間」は「旋回室」に、「排気」は「流体」に、「排気流中の音波」は「流体を媒体として伝わる音波」に、「繊維金属ダクト(19)の多孔質性の構造」は「孔」に、「伝わる」ことは「導入される」ことに、「環状チャンバー(20)」は「共鳴室」に、「マフラー」は「消音器」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1における「ら旋状インサート(21)が、前記空間の入口から出口まで全長にわたって配置されている」ことは、本願発明における「2枚の案内部材のうち一方が、旋回室の入口から出口まで全長に亘って上昇するように配置されており、2枚の案内部材のうち他方が、旋回室の入口から出口まで全長に亘って下降するように配置されていること」と、「案内部材が、旋回室の入口から出口まで全長に亘って配置されていること」という限りにおいて一致している。
してみると、本願発明と引用発明1とは、
「筒状体の内部に案内部材を配置した、径よりも全長の方が長い旋回室と、前記旋回室を通過する流体を媒体として伝わる音波が孔を通して導入される共鳴室とを有する消音器であって、
前記案内部材が、前記旋回室の入口から出口まで全長に亘って配置されている消音器。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、「2枚の半円形板状の」案内部材を「交差して」配置しており、「2枚の」案内部材「のうち一方」が、旋回室の入口から出口まで全長に亘って「上昇するように」配置されており、「2枚の」案内部材「のうち他方」が、旋回室の入口から出口まで全長に亘って「下降するように」配置されているのに対し、
引用発明1は、ら旋状インサート(21)が、前記空間の入口から出口まで全長にわたって配置されている点(以下、「相違点1」という。)。
そこで、上記相違点1について検討する。
本願発明及び引用発明2は、消音器という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明と引用発明2とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明2における「排気管104の中」は、本願発明における「筒状体の内部」に相当し、以下同様に、「一対の」「邪魔板116a及び116bのみ」は「2枚の」「案内部材」に、「楕円の半分となる」は「半円形板状の」に、「角度を成して」は「交差して」に、「部分空間」は「旋回室」に、「貫流する」ことは「通過する」ことに、「排気ガス」は「流体」に、「排気ガス中に存する音波エネルギー」は「流体を媒体として伝わる音波」に、「穴を通じて」は「孔を通して」に、「中に反射される」ことは「導入される」ことに、「音響弱化室110」は「共鳴室」に、それぞれ相当する。
してみると、引用発明2は、本願発明の用語を用いると、以下のものとなる。
「筒状体の内部に2枚の半円形板状の案内部材を交差して配置した旋回室と、前記旋回室を通過する流体を媒体として伝わる音波が孔を通して導入される共鳴室とを有する消音器であって、
前記2枚の案内部材のうち一方が、前記旋回室の入口から出口まで上昇するように配置されており、
前記2枚の案内部材のうち他方が、前記旋回室の入口から出口まで下降するように配置されている消音器。」
引用発明1及び引用発明2は、消音器という同一の技術分野に属するものであり、流体を案内部材によって旋回させるという機能も共通し、消音器としての全体構造も共通し、引用文献2には、前記「第2」の「2 (3)」で摘記されるように、邪魔板の据付け角度が設計事項であることが記載されていることから、引用発明1において、引用発明2を適用し、ら旋状インサート(21)を一対の邪魔板116a及び116bに置き換えて、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明1及び引用発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 引用発明2を主引用発明とした場合
本願発明と引用発明2とを対比すると、前記「1」のとおりであるから、両者は、
「筒状体の内部に2枚の半円形板状の案内部材を交差して配置した旋回室と、前記旋回室を通過する流体を媒体として伝わる音波が孔を通して導入される共鳴室とを有する消音器であって、
前記2枚の案内部材のうち一方が、前記旋回室の入口から出口まで上昇するように配置されており、
前記2枚の案内部材のうち他方が、前記旋回室の入口から出口まで下降するように配置されている消音器。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本願発明は、旋回室が「径よりも全長の方が長」く、案内部材が、旋回室の入口から出口まで「全長に亘って」上昇又は下降するように配置されているのに対し、引用発明2は、一対の邪魔板116a及び116bのみを配置した部分空間が径よりも全長の方が長いのか否か不明であり、一対の邪魔板116a及び116bが、部分空間の入口から出口まで全長に亘って上昇又は下降するように配置されているのか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。
そこで、上記相違点2について検討する。
引用発明2及び引用発明1は、消音器という同一の技術分野に属するものであり、流体を案内部材によって旋回させるという機能も共通し、消音器としての全体構造も共通する。また、引用文献2には、前記「第2」の「2 (3)」で摘記されるように、邪魔板の据付け角度が設計事項であることが記載されている。
そうしてみると、引用発明2において、引用発明1を適用し、上記空間を径よりも全長の方が長くして、案内部材を旋回室の入口から出口まで全長に亘って上昇又は下降するように配置することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明2及び引用発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
上記第2ないし第4で述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003021