特許拒絶査定不服審判
2017-002930
実装基板及び発光装置の製造方法
- 審判番号
- 2017-002930
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-542576外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月28日
- 審決日
- 2018年01月30日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャープ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-542576「実装基板及び発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日国際公開、WO2015/056590〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年10月6日(優先権主張2013年10月15日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月22日に手続補正(自発)がなされ、同年9月12日付け拒絶理由通知(同年9月20日発送)に対して、同年11月18日に手続補正がなされたが、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年2月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、同年10月31日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月15日に手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年12月15日付けの手続補正により補正された請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「基体と、
前記基体に配置された発光素子と、
前記発光素子を封止する封止部材とを備え、
前記封止部材は、粒子状の赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含み、
前記赤色蛍光体は、前記緑色蛍光体に対して、質量比で、2倍以上5倍以下の量でMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を含み、
前記封止部材の上面は、前記Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部を少なくとも一部に有する、発光装置、および、
発光装置が実装される基板を備え、
前記発光装置は、前記発光装置の光出射面に対して垂直な面が、前記基板に実装されている実装基板。」
第3 刊行物の記載
(1)当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である
特開2011-35306号公報(平成23年2月17日公開)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の実装領域を含む底部が形成され、かつ、内面が前記発光素子から出射された光の反射面となる、前記底部と繋がった側壁が連続して形成された、第1リード端子と、
前記第1リード端子に離隔して設けられた第2リード端子と、
前記第1リード端子および前記第2リード端子を支持し、前記第2リード端子の一部および前記第1リード端子の前記実装領域を露出させるキャビティが形成された樹脂部と
を備え、
前記第1リード端子には、前記側壁の上端から連続して延設された鍔部が形成され、
前記鍔部の上面の一部は、前記鍔部の外周端近傍において、前記樹脂部に覆われている、発光装置。
【請求項2】
……
【請求項10】
前記キャビティ内に、前記発光素子から出射された光の波長を変化させる波長変換部材が設けられた、請求項項1から8のいずれかに記載の発光装置。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
……
【0014】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、反射面に発生する樹脂バリを防止して、発光素子の輝度の低下を抑制しつつ、リード端子と樹脂部との接合を強化して、廉価で装置の信頼性を向上させることができる、発光装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に基づいた実施の形態における発光装置について図を参照して説明する。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光装置の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。図1,2に示すように、本発明の実施の形態1に係る発光装置1は、発光素子である発光ダイオードチップ2、樹脂部3、ボンディングワイヤ4、第1リード端子10、第2リード端子20を含んでいる。
【0050】
発光ダイオードチップ2は、第1リード端子10に形成された凹部5の内部に収容されて実装されている。発光ダイオードチップ2は、ボンディングワイヤ4により第1リード端子10および第2リード端子20にそれぞれ接続されている。樹脂部3には、キャビティ6が形成されている。発光ダイオードチップ2には、幅0.3mm、長さ0.6mmのGaN系青色発光ダイオードチップを用いた。
【0051】
……
【0053】
側壁14は、樹脂部3のキャビティ6が位置する側に向かうに従って、凹部5の開口が広がるように、底部13の面に対して、僅かに傾斜して形成されている。本実施形態においては、凹部5の形状は、短辺0.4mm、長辺1mm、深さ0.2mmとした。キャビティ6の形状は、短辺0.6mm、長辺2.4mm、深さ0.3mmとした。
【0054】
……
【0072】
本実施の形態に係る発光装置1では、第1リード端子10の底部13および側壁14により形成される凹部5の内部に、発光ダイオードチップ2から出射された光の波長を変換させる図示しない波長変換部材が設けられている。波長変換部材には、緑蛍光体として、(Si・Al)6(O・N)8:Eu、赤蛍光体として、CaAlSiN3:Euを含有させたシリコン樹脂を用いた。また、樹脂部3のキャビティ6内に、図示しない透光性モールド部材を設けた。透光性モールド部材として、上記の蛍光体を含まない、凹部5に充填したシリコン樹脂を用いてもよい。
【0073】
凹部5に充填したシリコン樹脂の硬化条件は、硬化時間1時間、温度80℃とした。キャビティ6に充填した透光性モールド部材の硬化条件は、硬化時間5時間、温度150℃とした。
【0074】
凹部5に設けたシリコン樹脂により、発光ダイオードチップ2から出射された青色の光の一部が、青色の光より波長の長い赤色または緑色の光に変換される。発光ダイオードチップ2から出射された光をエネルギーの低い長波長光に変換することで、樹脂部3のキャビティ6が形成された内壁に到達する光によって、その内壁が劣化することを抑制することができる。
【0075】
……
【0076】
また、キャビティ6内に、発光ダイオードチップ2から出射された光の波長を変化させる波長変換部材を設けてもよい。このようにした場合にも、発光ダイオードチップ2から出射された光をエネルギの低い長波長光に変換して、樹脂部3のキャビティ6が形成された内壁に到達する光によって、その内壁が劣化することを抑制することができる。」
エ 「【0104】
図11は、本発明の実施の形態1,2に係る発光装置の実装基板への搭載状態を示す斜視図である。図11に示すように、本発明の実施の形態1,2に係る発光装置は、樹脂部3に搭載面7が形成されている。搭載面7と発光装置の実装基板100とを接触させた状態で、第1端子部17,47の第1側面11,41および第2端子部27,57の第1側面21,51が、実装基板100上の電極ランドパターン101とろう材102によって、電気的に接合される。」
オ 図1は、以下のものである。
カ 図11は、以下のものである。
(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献には、
「発光素子と、
前記発光素子の実装領域を含む底部が形成され、かつ、内面が前記発光素子から出射された光の反射面となる、前記底部と繋がった側壁が連続して形成された、第1リード端子と、
前記第1リード端子に離隔して設けられた第2リード端子と、
前記第1リード端子および前記第2リード端子を支持し、前記第2リード端子の一部および前記第1リード端子の前記実装領域を露出させるキャビティが形成された樹脂部と
を備え、
前記キャビティ内に、前記発光素子から出射された光の波長を変化させる波長変換部材が設けられ、
前記第1リード端子には、前記側壁の上端から連続して延設された鍔部が形成され、
前記鍔部の上面の一部は、前記鍔部の外周端近傍において、前記樹脂部に覆われている、発光装置。」(請求項1及び請求項10を参照。)が記載されているものと認められる。
イ 上記(1)イ及びウの記載からして、以下のことが理解できる。
(ア)上記アの「発光素子」は、GaN系青色発光ダイオードチップであってもよいこと。
(イ)上記アの「キャビティ」は、短辺0.6mm、長辺2.4mm、深さ0.3mmであってもよいこと。
(ウ)上記アの「波長変換部材」は、緑蛍光体として(Si・Al)6(O・N)8:Eu及び赤蛍光体としてCaAlSiN3:Euを含有させたシリコン樹脂からなるものであってもよいこと。
ウ 上記(1)エの記載を踏まえて、図1及び図11を見ると、以下のことが理解できる。
上記アの「発光装置」は、キャビティが形成された樹脂部の一方の長辺側が実装基板の表面と接触するように搭載され「光源」として構成されていること。
エ 以上のことから、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「発光装置が実装基板に搭載された光源であって、
前記発光装置は、
GaN系青色発光ダイオードチップと、
前記GaN系青色発光ダイオードチップの実装領域を含む底部が形成され、かつ、内面が前記GaN系青色発光ダイオードチップから出射された光の反射面となる、前記底部と繋がった側壁が連続して形成された、第1リード端子と、
前記第1リード端子に離隔して設けられた第2リード端子と、
前記第1リード端子および前記第2リード端子を支持し、前記第2リード端子の一部および前記第1リード端子の前記実装領域を露出させる、短辺0.6mm、長辺2.4mm及び深さ0.3mmのキャビティが形成された樹脂部と
を備え、
前記キャビティ内に、前記GaN系青色発光ダイオードチップから出射された光の波長を変化させる、緑蛍光体として(Si・Al)6(O・N)8:Eu及び赤蛍光体としてCaAlSiN3:Euを含有させたシリコン樹脂からなる波長変換部材が設けられ、
前記第1リード端子には、前記側壁の上端から連続して延設された鍔部が形成され、
前記鍔部の上面の一部は、前記鍔部の外周端近傍において、前記樹脂部に覆われ、
前記キャビティが形成された樹脂部の一方の長辺側が前記実装基板の表面と接触するように搭載されている、光源。」
第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「キャビティが形成された樹脂部」は、本願発明の「基体」に相当する。
以下、同様に、
「GaN系青色発光ダイオードチップ」は、「発光素子」に、
「シリコン樹脂からなる波長変換部材」は、「封止部材」に、
「赤蛍光体」及び「緑蛍光体」は、それぞれ、「赤色蛍光体」及び「緑色蛍光体」に、
「発光装置」は、「発光装置」に、
「実装基板」は、「基板」に、相当する。
(2)引用発明の「光源」は、実装基板に発光装置を搭載している点で、本願発明の「実装基板」に相当する。
(3)よって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「基体と、
前記基体に配置された発光素子と、
前記発光素子を封止する封止部材とを備え、
前記封止部材は、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含む発光装置、および、
発光装置が実装される基板を備え、
前記発光装置は、前記発光装置の光出射面に対して垂直な面が、前記基板に実装されている実装基板。」
(4)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点>
封止部材に関して、
本願発明は、「粒子状の赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含み、
前記赤色蛍光体は、前記緑色蛍光体に対して、質量比で、2倍以上5倍以下の量でMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を含み、
前記封止部材の上面は、前記Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部を少なくとも一部に有する」のに対して、
引用発明は、緑蛍光体及び赤蛍光体が粒子状であるか否か不明で、赤蛍光体は、「CaAlSiN3:Eu」であり、緑蛍光体に対するその質量比が不明であり、更に、波長変換部材(封止部材)の上面に凸部を有するか否か不明である点。
2 判断
(1)上記<相違点>について検討する。
ア 一般に、蛍光体を樹脂に含有(分散)させる際に「粒子状」とすることは普通になされていることであるから、引用発明において、シリコン樹脂に含有させた「緑蛍光体及び赤蛍光体」を、「粒子状」とすることに何ら困難性は認められない(必要ならば、例えば、特開2012-104814号公報の【0014】及び特開2007-273562号公報の【0059】を参照。)。
イ 引用発明の「光源」は、「GaN系青色発光ダイオードチップ」の青色光、「緑蛍光体」の緑色光及び「赤蛍光体」の赤色光を混色することにより白色光を生成するものであることは、当業者にとって明らかであるところ、赤蛍光体として「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」の採用により演色性等に優れた白色光が得られることは、当審拒絶理由で例示した下記の文献に記載されているように、本願の優先日時点で周知である(以下「周知技術」という。)。
特開2011-14697号公報(請求項7及び【0025】)
特開2010-45328号公報(【要約】及び【0030】)
特開2009-280763号公報(【要約】及び【請求項1】)
ウ してみると、引用発明において、「赤蛍光体」である「CaAlSiN3:Eu」に代えて、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
その際、混色により所望の白色光が得られるように、緑蛍光体と赤蛍光体の含有量を適宜調整しなければならないことは当然のことであるから、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」の含有量を「(Si・Al)6(O・N)8:Eu」の含有量に対して質量比で2倍以上5倍以下とすることは、必要に応じて適宜なし得た設計事項である(例えば、上記特開2010-45328号公報の【0030】には、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを重量比で30:70の割合にすることが記載されている。
また、上記特開2009-280763号公報の【0046】には、緑色系発光蛍光体0.180gに対してK2(Ti0.99Mn0.01)F6(赤色系発光蛍光体)0.42gを混合(約2.3倍)することが記載されている。)。
エ 最後に、本願発明が「封止部材の上面は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部を少なくとも一部に有する」という発明特定事項を備える点について検討する。
本願発明は、「粒子状の赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含み」との発明特定事項を備えているものの、各蛍光体の粒径やその大小関係については、何ら特定されるものではないところ、本願明細書には、封止部材の上面の形状に関連して、以下の記載がある。
「【0035】
封止部材60の上面70の少なくとも一部には、凹凸部71が形成されている。後述の実施例で示すように、本発明者らは、CaAlSiN3:Eu又は(Sr・Ca)AlSiN3:Eu等の赤色蛍光体を用いた場合には封止部材の上面に凹凸部が形成されないのに対し、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いた場合には封止部材の上面に凹凸部が形成されることを確認している。Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体はディスプレイ用途に好適な発光特性を示すので(後述)、封止部材60の上面70の平坦性を調べることによりディスプレイ用途の発光装置として好適な発光装置であるか否かを判断できる。」
「【0040】
しかし、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体は、従来の赤色蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu又は(Sr・Ca)AlSiN3:Eu)等に比べて発光効率に劣る。そのため、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の含有量を従来の赤色蛍光体を用いた場合よりも多くすることにより、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いたことに起因する赤色の色度の低下又は赤色光の発光強度の低下を防止することが好ましい。これにより、封止部材60の上面70では、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体が偏在することとなる。Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体は粒子状に形成されているので、凹凸部71が封止部材60の上面70の少なくとも一部に形成されることとなる。」
「【0049】
(配合量)
赤色蛍光体63は、緑色蛍光体65に対して、質量比で、2倍以上5倍以下含まれていることが好ましい。赤色蛍光体63が緑色蛍光体65に対して質量比で2倍以上含まれていれば、凹凸部71が封止部材60の上面70に形成され易くなる。また、発光効率に優れないMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いたことに起因する赤色の色度の低下又は赤色光の発光強度の低下を防止できる。赤色蛍光体63が緑色蛍光体65に対して質量比で5倍以下含まれていれば、発光装置からの光における赤色光の成分の寄与が大きくなりすぎることを防止できる。より好ましくは、赤色蛍光体63は緑色蛍光体65に対して質量比で2倍以上4倍以下含まれている。」
「【0084】
<評価>
走査型電子顕微鏡を用いて実施例3の発光装置の上面を観察した。その結果を図6(a)に示す。同様に、比較例3の発光装置の上面も観察した。その結果を図6(b)に示す。実施例3では、封止部材の上面には凹凸部が形成されたのに対し、比較例3では、封止部材の上面には凹凸部が形成されなかった。実施例3の色度及び発光強度をそれぞれ比較例3の色度及び発光強度と略同一とするために、実施例3のMn4+付活フッ化物錯体蛍光体の含有量を比較例3の従来のCaAlSiN3:Euの含有量の約10倍とした。そのため、このような結果が得られたものと考えられる。」
上記記載からして、
封止部材の上面の「凸部」は、赤色蛍光体として、従来のCaAlSiN3:Eu等を用いず、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いることとするとともに、緑色蛍光体に対して赤色蛍光体(Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体)を「質量比で2倍以上含まれるものとする」ことにより、赤色蛍光体が当該上面に偏在して、自ずと形成されるものであると解される。
つまり、本願発明の上記発明特定事項の「封止部材の上面は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部を少なくとも一部に有する」との構成は、その前段の発明特定事項である「封止部材は、粒子状の赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含み、前記赤色蛍光体は、前記緑色蛍光体に対して、質量比で、2倍以上5倍以下の量でMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を含み」との構成を備えるものとすることで、自ずともたらされる構成であると解される。
オ してみると、赤色蛍光体として、「CaAlSiN3:Eu」に代えて、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」を用いることとした引用発明の「シリコン樹脂からなる波長変換部材」の上面には、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部が形成されることは明らかである。
カ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の構成を備えるものとすることは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(2)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。
3 平成29年12月15日提出の意見書について
(1)請求人は、意見書の「(3-1)『実装基板』の発明の進歩性」において、以下のように主張するので、この点について検討する。
ア 「審判官殿が周知技術1として挙げられた特開2011-14697号公報、特開2010-45328号公報、特開2009-280763号公報には、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いることは記載されてはいます。しかしながら、これらの文献には、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いたことに起因して赤色の色度の低下又は赤色光の発光強度が低下してしまうことについて何ら問題意識がなく、まして、この赤色の色度の低下、赤色光の発光強度の低下を防止するために、封止部材の上面に凸部が形成されるまでMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を多く配合することは、何ら教示も示唆もされていません。」(第2頁後段)
しかしながら、引用発明において、「シリコン樹脂からなる波長変換部材」における緑蛍光体と赤蛍光体の含有量を適宜調整しなければならないことは当然のことである。
そして、上記「2(1)エ」で検討したように、本願発明の発明特定事項である「封止部材の上面は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部を少なくとも一部に有する」との構成は、その前段の発明特定事項である「封止部材は、粒子状の赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも含み、前記赤色蛍光体は、前記緑色蛍光体に対して、質量比で、2倍以上5倍以下の量でMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を含み」との構成を備えるものとすることで、自ずともたらされる構成であると解されることから、引用発明の「シリコン樹脂からなる波長変換部材」の上面には、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体の粒子に応じた凸部が形成されることは明らかである。
イ 「また、審判官殿は、補正後の請求項1に盛り込まれた数値範囲よりも狭い数値範囲で蛍光体の含有量について規定する請求項4(本願発明4)について、『緑色蛍光体と赤色蛍光体の含有量は、それぞれの発光効率等を勘案して適宜決定し得ることである(例えば、上記周知技術1で例示した「特開2010-45328号公報の〔0030〕ないし〔0034〕を参照。)。』と述べています。しかしながら、周知技術1には、数多くの赤色蛍光体が列挙されており、特に、上述のようにMn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いる場合に、多く配合する必要があることについて何ら教示、示唆するものではありません。」(第3頁上段)
しかしながら、上記特開2010-45328号公報の【0030】における「赤色蛍光体3」が、【発明が解決しようとする課題】及び【0034】の記載からして、4価のマンガン付活フッ化4価金属塩蛍光体、すなわち、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」であることは明らかであるから、【0030】に記載された「緑色蛍光体7と赤色蛍光体3とを30:70の割合(重量比)で混合したものをシリコーン樹脂中に分散し(シリコーン樹脂と蛍光体との比率は1.00:0.25)波長変換部を作製する。」ことは、「緑色蛍光体」と「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」とを30:70の割合(重量比)で混合することを意味しているといえる。
また、上記「2(1)ウ」で検討したように、上記特開2009-280763号公報の【0046】にも、緑色系発光蛍光体0.180gに対してK2(Ti0.99Mn0.01)F6(赤色系発光蛍光体)、すなわち、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体」0.42gを混合(約2.3倍)することが記載されている。
してみると、周知技術を示すために例示した上記文献には、「Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いる場合に、多く配合する必要があること」が示唆されている。
(2)よって、請求人の主張は、上記「2」における判断を左右するものではない。
4 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-002930