特許拒絶査定不服審判
2017-002106
電子機器、日時設定方法及びプログラム
- 審判番号
- 2017-002106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-147827
- 請求日
- 2017年02月14日
- 審決日
- 2017年11月07日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カシオ計算機株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 紀史
- 審判官 清水 稔
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .121-Z (G04G) / P18 .113-Z (G04G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-147827「電子機器、日時設定方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 24030〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月18日に出願したものであって、平成28年4月20日付けの拒絶理由通知に対して平成28年6月21日付けで手続補正がなされたが、平成28年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年2月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 平成29年2月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年1月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に、
「【請求項1】
現在の日時を計数する計時手段と、
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
取得された前記現在位置が含まれるタイムゾーンを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定されたタイムゾーンの時差に応じた地方時を求める地方時取得手段と、
を備え、
前記判定手段は、
前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、当該海岸線から所定の距離範囲で海側に前記境界線を変更してタイムゾーンを判定し、
前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っていない場合には、前記境界線通りにタイムゾーンを判定する
ことを特徴とする電子機器。」
とあったところを、
「【請求項1】
現在の日時を計数する計時手段と、
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
取得された前記現在位置が含まれるタイムゾーンを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定されたタイムゾーンの時差に応じた地方時を求める地方時取得手段と、
世界の各区域における地方時設定情報をそれぞれ記憶する記憶手段と、
を備え、
前記判定手段は、
前記現在位置が含まれる区域の前記地方時設定情報を参照して当該現在位置におけるタイムゾーンを判定し、
前記現在位置が含まれる区域内における前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、前記境界線を、当該海岸線の何れかの位置から所定の距離範囲で、起伏の多い海岸線の形状に追従せず、海側に変更してタイムゾーンを判定し、
前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っていない場合には、前記境界線通りにタイムゾーンを判定する
ことを特徴とする電子機器。」
とすることを含むものである(なお、下線は補正箇所を示す。)。
本件補正について検討する。
本件補正前の請求項1の発明特定事項である「電子機器」について、「世界の各区域における地方時設定情報をそれぞれ記憶する記憶手段」を追加し、「判定手段」について、「前記現在位置が含まれる区域の前記地方時設定情報を参照して当該現在位置におけるタイムゾーンを判定し、」と限定し、さらに、本件補正前の請求項1の「前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、当該海岸線から所定の距離範囲で海側に前記境界線を変更してタイムゾーンを判定し」との特定事項を、「前記現在位置が含まれる区域内における前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、前記境界線を、当該海岸線の何れかの位置から所定の距離範囲で、起伏の多い海岸線の形状に追従せず、海側に変更してタイムゾーンを判定し」として、タイムゾーン及び境界線について、限定するものである。
よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。
2 引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2000-512389号公報(平成12年9月19日公表、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
a「1.発明の分野
本発明は高分解能データ入力機構として作用するベゼル又はGPSユニットを介し入力されるデカルト座標に基づいて現地時間を計算する能力をもつ電子腕時計に関する。このデバイスは航空関係者その他の専門家にとって特に有利なものである。」(第6ページ第4-7行)
b「本発明の別の目的はGPSに対応できる世界時間時計を提供することにある。この時計はユーザにより手動式で、又はケーブル、光学又はスペクトラム拡散インタフェースを介し別のGPSユニットにより、正しい時間及び場所の両方について更新可能である。」(第9ページ第21-24行)
c「ユーザがGPSを所有している場合、ユーザはGPSからデカルト座標を入力することができ、又GPSが互換性ある出力を有する場合には、時間を修正しかつ場所情報を時計に転送するために適切なインタフェースによりGPSを時計に対し直接結合できる。」(第10ページ第12-15行)
d「図8は選択されたデカルト座標に対応する現地時間を決定すべくデータベースにアクセスするのに実行される段階を例示するフローチャートである。」(第11ページ第17-18行)
e「世界時間帯のデータベースは時計内に配置されたマイクロプロセッサによりアクセスされるメモリ内に準備され記憶される。時間帯の輪郭写出と、各国の異なる地域内での日光節約時間の実施とに関し、各国からの関連情報が収集される。アリゾナ州と中央カナダ、アメリカ合衆国及びメキシコの一部分とを含む図3を参照すると、コンパイルされた情報は非常に精確である。内部時間帯24の境界90~98は約1/180度の精度でトレース又は線引きされており、これは最大で赤道における約0.4マイル(約0.6km)と同等である。場合によっては、単一の国又は州内で、日光節約時間が実施されている地域とそうでない地域がある。これらの地域は同様に、別の時間帯として1/180度まできわめて精確に画定される。
データベースはベクトルファイル書式で点として記憶される。世界のデジタルチャート(Digital Chart of the World)、ワールドデータバンクII(World Data Bank II)及び/又はワールドベクトルショアライン(World Vector Shoreline)を含む多くの利用可能な源からのベクトルに基づいて世界のベクトルマップがコンパイルされる。時間帯の境界及び日光節約時間が実施されている地域(対応する開始及び停止の日付と共に)に関する情報が適切な境界を付加することによってベクトルデータベースに付加される。必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定される。」(第13ページ第15行-第14ページ第6行)
f「境界線は隣接する二つの時間帯を互いに分割し、各境界線(日光節約コード及び通し番号を含む)にはそれが分離する二つの時間帯の複合名が与えられる。図3を参照すると、時間帯500M9.0を一例として用いると、各時間帯地域24は一つの多角形である。この時間帯多角形24は隣接する時間帯地域を分離する多数の境界線90~98により境界が定められる。」(第15ページ第5-9行)
g 図2には、時計の文字板の右よりに四角囲いの24の数字が示されている。
h 図8のフローチャートを参照すると、「ユーザがデカルト座標を入力」(29)し、「選択された時間帯」(38)及び「時間帯を決定」(42)を出力することが示されている。
ア 上記aから、引用例には「GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に基づいて現地時間を計算する能力をもつ電子腕時計」の発明が記載されているということができる。
イ 図2には、時計の文字板の右よりに24の数字が示されおり(上記g)、24が日付け表示であることは明らかであるから、引用例に記載の「時計」は、「現在の日時を表示する」ものということができる。
ウ 上記cから、引用例には「GPSが互換性ある出力を有する場合には、適切なインタフェースによりGPSを時計に対し直接結合できる。」ことが記載されている。ここで、上記bの「この時計は‥‥‥ケーブル、光学又はスペクトラム拡散インタフェースを介し別のGPSユニットにより、正しい時間及び場所の両方について更新可能である。」との記載から、「適切なインタフェースによりGPSを時計に対し直接結合できる」ことは、「GPSユニットは、インタフェースにより、時計に対し直接結合され、時計は、GPSユニットにより場所について更新可能である」ものということができる。
エ 上記eの「世界時間帯のデータベースは時計内に配置されたマイクロプロセッサによりアクセスされるメモリ内に準備され記憶される。‥‥‥図3を参照すると、‥‥‥内部時間帯24の境界90~98は約1/180度の精度でトレース又は線引きされており、‥‥‥時間帯の境界‥‥‥に関する情報が適切な境界を付加することによって‥‥‥データベースに付加される。必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定される。」との記載から、「世界時間帯のデータベースは時計内に配置されたマイクロプロセッサによりアクセスされるメモリ内に準備され記憶され、内部時間帯24の境界に関する情報が適切な境界を付加することによってデータベースに付加され、必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定される」ことが記載されているということができる。
ここで、「内部時間帯24」については、引用例において「各時間帯地域24」や「時間帯多角形24」とも表記され、記載がぶれているものの、隣接する時間帯地域を分離する多数の境界線90~98により境界が定められるものであることに変わりはないから、「世界時間帯を構成する時間帯地域」と捉えることができる。
したがって、引用例には、「世界時間帯のデータベースは時計内に配置されたマイクロプロセッサによりアクセスされるメモリ内に準備され記憶され、世界時間帯を構成する時間帯地域24の境界に関する情報が適切な境界を付加することによってデータベースに付加され、必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定される」ことが記載されているということができる。
オ 図8のフローチャートを参照すると、「ユーザがデカルト座標を入力」(29)する以降の処理は、上記eのとおり、プロセッサがデータベースにアクセスして行う処理である。そして、デカルト座標(つまり場所情報)を、図8のように「ユーザ」が「入力」することに代え、「インタフェース」により時計に直接結合されたGPSから入力してもよいことは、上記a~cの記載より明らかである。よって、引用例には、「マイクロプロセッサは、GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地時間を決定すべく世界時間帯のデータベースにアクセスするのに実行され、現地の時間帯を決定する」ことが記載されているということができる。
したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしオを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。
「GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に基づいて現地時間を計算する能力をもつ電子腕時計であって、
時計は、現在の日時を表示し、
GPSユニットは、インタフェースにより、時計に対し直接結合され、時計は、GPSユニットにより場所について更新可能であり、
世界時間帯のデータベースは時計内に配置されたマイクロプロセッサによりアクセスされるメモリ内に準備され記憶され、
世界時間帯を構成する時間帯地域24の境界に関する情報が適切な境界を付加することによってデータベースに付加され、必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定され、
マイクロプロセッサは、GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地時間を決定すべく世界時間帯のデータベースにアクセスするのに実行され、現地の時間帯を決定する、
電子腕時計。」
3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明において、「時計は、現在の日時を表示する」「電子腕時計」であるから、現在の日時を計時する手段を備えていることは明らかである。
(2)引用発明において、「GPSユニット」は、「インタフェース」により「時計に対し直接結合」され、「時計は、GPSユニットにより場所について更新可能であ」るとされている。
よって、引用発明において「時計」に「直接結合」され、「場所について更新可能である「GPSユニット」が、本願補正発明の「時計」が備える「現在位置を取得する現在位置取得手段」に相当する。
(3)引用発明の時計は、「GPSユニットにより場所について更新可能であ」るから、引用発明における「GPSユニットを介し入力されたデカルト座標」は、本願補正発明における「取得された前記現在位置」に相当する。
また、引用発明における「時間帯」は、「デカルト座標に対応する現地時間」を決定するものであるから、本願補正発明における「タイムゾーン」に相当する。
そして、引用発明の「マイクロプロセッサ」は、「GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地の時間帯を決定する」ものであるから、本願補正発明における「取得された前記位置が含まれるタイムゾーンを判定する判定手段」に相当する。
(4)引用発明における「現地時間」が、本願補正発明における「地方時」に相当する。また、引用発明における「マイクロプロセッサ」は、「GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地時間を決定すべく世界時間帯のデータベースにアクセスするのに実行され、現地の時間帯を決定」しているから、本願補正発明における「前記判定手段により判定されたタイムゾーンの時差に応じた地方時を求める地方時取得手段」に相当する。
(5)引用発明における「世界時間帯のデータベース」は、「現地の時間帯を決定する」ためのものであって、世界の各区域における地方時設定情報と捉えることができる。よって、引用発明における、「世界時間帯のデータベース」が「準備され記憶され」る「メモリ」が、本願補正発明における、「世界の各区域における地方時設定情報をそれぞれ記憶する記憶手段」に相当する。
(6)上記(5)を踏まえれば、引用発明における「プロセッサ」は、「世界時間帯のデータベース」にアクセスして、現地における「時間帯」を決定しているから、現地の地方時設定情報を参照して、当該現地における時間帯(つまり、本願補正発明における「タイムゾーン」)を判定する、判定手段ということができる。
よって、引用発明において、「マイクロプロセッサは、GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地時間を決定すべく世界時間帯のデータベースにアクセスするのに実行され、現地の時間帯を決定する」ことが、本願補正発明において「前記判定手段は、前記現在位置が含まれる区域の前記地方時設定情報を参照して当該現在位置におけるタイムゾーンを判定」することに相当する。
(7)引用発明は、上記eのとおり、「データベースはベクトルファイル書式で点として記憶され・・・ワールドベクトルショアライン(World Vector Shoreline)を含む多くの利用可能な源からのベクトルに基づいて世界のベクトルマップがコンパイルされる。」ものであるから、引用発明における「世界時間帯のデータベース」には、「ショアライン」(つまり「海岸線」)が含まれているといえる。
よって、引用発明において、「必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定され、マイクロプロセッサは、GPSユニットを介し入力されるデカルト座標に対応する現地時間を決定すべく世界時間帯のデータベースにアクセスするのに実行され、現地の時間帯を決定する」ことと、本願補正発明における「前記判定手段は、」「前記現在位置が含まれる区域内における前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、前記境界線を、当該海岸線の何れかの位置から所定の距離範囲で、起伏の多い海岸線の形状に追従せず、海側に変更してタイムゾーンを判定し、前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っていない場合には、前記境界線通りにタイムゾーンを判定する」こととは、「境界を、当該海岸線から所定の距離範囲で、海側に変更する」点で共通する。
(8)引用発明における「電子腕時計」及びこれと「直接結合」された「GPSユニット」が、次の相違点は除いて、本願補正発明における「電子機器」に相当する。
すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。
<一致点>
「現在の日時を計数する計時手段と、
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
取得された前記現在位置が含まれるタイムゾーンを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定されたタイムゾーンの時差に応じた地方時を求める地方時取得手段と、
世界の各区域における地方時設定情報をそれぞれ記憶する記憶手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記現在位置が含まれる区域の前記地方時設定情報を参照して当該位置におけるタイムゾーンを判定し、
境界を、当該海岸線から所定の距離範囲で、海側に変更する
電子機器。」
<相違点>
本願補正発明は、「判定手段」が、「前記現在位置が含まれる区域内における前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、前記境界線を、当該海岸線の何れかの位置から所定の距離範囲で、起伏の多い海岸線の形状に追従せず、海側に変更してタイムゾーンを判定し、前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っていない場合には、前記境界線通りにタイムゾーンを判定する」のに対し、引用発明は「世界時間帯を構成する時間帯地域24の境界に関する情報が適切な境界を付加することによってデータベースに付加され、必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離を海岸線における時間帯変更のために設定され」るものの、本願補正発明のような特定がない点。
4 判断
上記相違点について検討する。
(1)まず、上記相違点に係る本願補正発明の構成のうち、「判定手段」が、「前記現在位置が含まれる区域内における前記タイムゾーンの境界線が海岸線に沿っている場合には、前記境界線を、当該海岸線の何れかの位置から所定の距離範囲で」、「海側に変更してタイムゾーンを判定する」構成(以下、「構成ア」という。)について、容易想到性を判断する。
ア 上記「3」(7)で述べたとおり、引用発明における「世界時間帯のデータベース」に付加された「境界」には、「ショアライン」(つまり「海岸線」)が含まれていることは明らかである。
イ すると、引用発明における「世界時間帯を構成する時間帯地域24の境界に関する情報が適切な境界を付加することによってデータベースに付加され、必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離を海岸線における時間帯変更のために設定され」とは、より状況に則していいかえると、「更新」された「場所」における「時間帯地域」の「境界」が、「ショアライン」(つまり「海岸線」)に沿っている場合には、「必要であれば、12海里境界又は別の許容可能な距離といった海岸線からの距離が海岸線における時間帯変更のために設定され」ること、を意味するものといえる。
よって、引用発明において、「GPSユニット」により「更新」された「場所」に対応する「現地の時間帯」を「決定する」にあたり、「現地の時間帯」の「境界」が「ショアライン」(つまり「海岸線」)に沿っている場合に、「12海里境界」「といった海岸線からの距離を海岸線における時間帯変更のために設定」すること、つまり、「ショアライン」(つまり、「海岸線」)からの「12海里境界」を、「時間帯地域」の「境界に関する情報」としてデータベースに付加しておくことは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ さらに、ある条件を満たしたときに、本来の数値に補正値を加味した値を出力する場合において、予め、補正値を加味した値を記憶手段に記憶しておき、当該記憶手段から補正値を加味した値を出力することも、本来の数値を取得後に、演算により補正値を加味した値を出力することも、ともに当業者に良く知られた技術であるから、引用発明において上記イで述べた構成を採用するにあたり、「ショアライン」(つまり「海岸線」)からの「12海里境界」を「データベース」に付加しておくことに代え、「マイクロプロセッサ」が、
(ア)「境界」が「ショアライン」(つまり「海岸線」に沿っている場合には、データベースに付加された「時間帯地域」の「境界」を、「ショアライン」(つまり「海岸線」)から「12海里境界」に変更して「現地の時間帯」を決定し、
(イ)「境界」が「ショアライン」(つまり「海岸線」)に沿っていない場合には、データベースに付加された「適切な境界」情報による「時間帯地域」によって、「現地の時間帯」を決定し、
上記相違点に係る本願補正発明の「構成ア」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)次に、相違点に係る本願補正発明の構成のうち、海岸線に沿った「境界」の海側への変更を、「起伏の多い海岸線の形状に追従せず」とする構成(以下、「構成イ」)という。の容易想到性について判断する。
ア 引用発明における「12海里境界」が「領海」の外縁を意味していることは、社会的な常識に属する事項である。
イ また、領海の外縁を、適当な点を結ぶ直線で表現することは、例えば国連海洋法条約第7条に「海岸線が著しく曲折しているか又は海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所においては、領海の幅を測定するための基線を引くにあたって、適当な点を結ぶ直線基線の方法を用いることができる。」と規定されている(インターネット:<URL:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H8-1059_2.pdf>参照。)ように、周知の事項である。
そして、「境界に関する情報」について、その形状を直線的に表現するほど、必要となる情報量が少なくて済むことはいうまでもないことであるから、引用発明において、「ショアライン」(つまり「海岸線」)の形状が、仮に起伏の多い形状であったとしても、「12海里境界」を、上記周知の事項に倣い、適当な点を結ぶ直線で表現して、本願補正発明における「構成イ」の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(3)上記(1)、(2)における判断を総合すれば、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(4)なお、本願補正発明における「構成ア」を、仮に、本願明細書の段落【0048】に記載されているような、「タイムゾーン」の「設定」自体を変更する意味に解したとしても、かかる構成とすることは、上記「(1)」の「ア」及び「イ」で述べたとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるから、上記相違点についての容易想到性の結論に影響しない。
(5)そして、上記<相違点>における、本願補正発明の「構成ア」、「構成イ」を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
(6)したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年2月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。
2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-002106