特許拒絶査定不服審判
2017-001950
ペロブスカイト薄膜及び太陽電池の製造方法
- 審判番号
- 2017-001950
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-225154外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月09日
- 審決日
- 2018年01月05日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-225154「ペロブスカイト薄膜及び太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-211213、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年(2014年)11月5日(パリ条約による優先権主張 2014年4月29日 台湾)の出願であって、平成27年8月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月25日付けで意見書が提出され、平成28年3月29日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年9月30日付け(送達 同年10月11日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないいし3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1:J. Burschka et al., Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells, NATURE, 2013年7月10日, Vol.499, pp.316-319
2:特開2014-49596号公報
3:国際公開第2014/020499号
第3 本願発明
(1)本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成29年2月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板に第1溶液を回転塗布して膜を形成するステップと、
前記第1溶液からなる膜に第2溶液を回転塗布して、前記第1溶液と前記第2溶液を反応させることでペロブスカイト薄膜を形成するステップとを備え、
前記ペロブスカイト薄膜の一般式はABX3で示され、
前記第1溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの一方が含まれ、前記第2溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの他方が含まれことを特徴とする、ペロブスカイト薄膜の製造方法。」
(2)なお、本願発明2ないし7の概要は以下のとおりである。
ア 本願発明4は、ペロブスカイト薄膜の製造方法の発明である本願発明1に、導電基板を用意するステップ、導電基板に第1キャリア輸送層を形成するステップ、ペロブスカイト薄膜に第2キャリア輸送層を形成するステップ、及び、第2キャリア輸送層に電極層を形成するステップとを付加して、ペロブスカイト薄膜を活性層とする太陽電池の製造方法に減縮した発明である。
イ 本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5ないし7は、本願発明4を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(なお、訳は当審が付した。)。
ア 「Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells」(表題)
(高効率のペロブスカイト増感太陽電池に至る堆積順)
イ 「Following pioneering work, solution-processable organic-inorganic hybrid perovskites―such as CH3NH3PbX3 (X=Cl,Br,I) ―have attracted attention as light-harvesting materials for mesoscopic solar cells. So far, the perovskite pigment has been deposited in a single step onto mesoporous metal oxide films using a mixture of PbX2 and CH3NH3X in a common solvent.」(316頁左欄1~6行)
(以下の先導的な研究では、溶液処理可能な有機-無機ハイブリッドペロブスカイト-いわゆるCH3NH3PbX3(X=Cl,Br,I)-がメゾスコピック太陽電池の集光性素材として注目を集めている。これまでのところ、ペロブスカイト色素は、PbX2とCH3NH3Xを共通の溶媒に混合した溶液を用いて、メソ多孔質の金属酸化薄膜に一つのステップで堆積されていた。)
ウ 「Device fabrication.
Patterned transparent conducting oxide substrates were coated with a TiO2 compact layer by aerosol spray pyrolysis. A 350-nm-thick mesoporous TiO2 layer composed of 20-nm-sized particles was then deposited by spin coating. The mesoporous TiO2 films were infiltrated with PbI2 by spin-coating a PbI2 solution in DMF (462mgml-1) that was kept at 70℃. After drying, the films were dipped in a solution of CH3NH3I in 2-propanol (10mgml-1) for 20s and rinsed with 2-propanol. After drying, the HTM was deposited by spin-coating a solution of spiro-MeOTAD, 4-tert-butylpyridine, lithium bis (trifluoromethylsulphonyl) imide and tris (2-(1H-pyrazol-1-yl) -4-tert-butylpyridine) cobalt (III) bis (trifluoromethylsulphonyl) imide in chlorobenzene. Gold (80nm) was thermally evaporated on top of the device to form the back contact. For the fabrication of the best-performing devices, slightly modified conditions were used. First, PbI2 was spin-cast for 5s instead of 90s and, second, the samples were subjected to a ' pre-wetting' by dipping in 2-propanol for 1-2s before being dipped in the solution of CH3NH3I and 2-propanol. For all measurements, devices were equipped with a 0.285-cm2 metal aperture to define the active area.」(319頁左欄2~17行)
(装置製作。
パターンが形成された透明な導電性の酸化物基板を、エアゾールスプレー熱分解を用いてTiO2の詰まった層で覆った。その後、20nmサイズの粒子からなる厚さ350nmのメソ多孔質TiO2層をスピンコーティングによって堆積した。70℃に維持されたDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(462mgml-1)PbI2溶液をスピンコーティングして、メソ多孔質TiO2薄層にPbI2を浸透させた。乾燥させた後、前記薄層をCH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液に20秒間浸けて、そして、2-プロパノールで洗浄した。乾燥させた後、spiro-MeOTAD、4-tert-ブチルピリジン、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及び、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)のベンゼン溶液をスピンコーティングすることで、HTM(正孔輸送材料)を堆積した。バックコンタクトを構成する素子の上に金(80nm)を熱蒸着した。最高効率の素子を製造するため、若干の修正条件を使用した。1つ目は、PbI2のスピンキャストを90秒間に代えて5秒間とした点、そして、2つ目は、試料は、CH3NH3Iと2-プロパノールの溶液に浸ける前に、2-プロパノールに1~2秒浸けられて事前湿潤された点である。すべての測定のために、素子は活性領域を定義するための0.285-cm2の金属開口を設けた。)
(2)上記「(1)」「イ」によれば、PbX2とCH3NH3Xを混合してペロブスカイト色素CH3NH3PbX3(X=Cl,Br,I)を堆積させた点が記載されているから、上記「(1)」「ウ」に記載された「装置製作」においても、PbI2とCH3NH3Iを混合してペロブスカイト色素CH3NH3PbI3を堆積させるものであるといえる。
また、上記「(1)」「ウ」にはペロブスカイト増感太陽電池の装置製作の工程が記載されているから、ペロブスカイト増感太陽電池の装置製作方法が記載されているといえる。
したがって、上記(1)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「パターンが形成された透明な導電性の酸化物基板を、エアゾールスプレー熱分解を用いてTiO2の詰まった層で覆い、
その後、20nmサイズの粒子からなる厚さ350nmのメソ多孔質TiO2層をスピンコーティングによって堆積し、
70℃に維持されたDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(462mgml-1)PbI2溶液をスピンコーティングして、メソ多孔質TiO2薄層にPbI2を浸透させ、
乾燥させた後、前記薄層をCH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液に20秒間浸けて、そして、2-プロパノールで洗浄し、乾燥させた後、spiro-MeOTAD、4-tert-ブチルピリジン、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及び、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)のベンゼン溶液をスピンコーティングすることで、HTM(正孔輸送材料)を堆積し、
バックコンタクトを構成する素子の上に金(80nm)を熱蒸着したことにより製造した、
上記PbI2と上記CH3NH3Iを混合してペロブスカイト色素CH3NH3PbI3を堆積させた、
ペロブスカイト増感太陽電池の装置製作方法。」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本願発明は光電変換層に有機無機混成ペロブスカイト化合物及び無機ペロブスカイト化合物を用いた固体接合型光電変換素子に関する。」
イ 「【0035】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの薄膜は、ペロブスカイト化合物Aを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。」
ウ 「【0043】
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の第2半導体層は、ペロブスカイト化合物Bを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。」
エ 「【0053】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の第2半導体層は、ペロブスカイト化合物Cを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。」
オ 「【0074】
(4)第1半導体層の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に透明導電層〔インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)〕をコートした透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq)上に、スクリーン印刷法により導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して集電線を形成した。バッファ層は、上記透明導電性基板の集電線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC-600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布し、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して形成した。バッファ層を形成した透明導電性基板のバッファ層形成面に、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
バッファ層を形成した透明導電性基板上に、有機無機混成ペロブスカイト化合物A〔CH3NH3PbBr3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH3)2NCHO〕溶液を0.2μmフィルター付きのシリンジで所定量滴下し、スピンコートした後、60度の熱風循環式オーブン中で10分間加熱乾燥して、第1半導体層を作製した。
【0075】
(5)第2半導体層の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に透明導電層〔インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)〕をコートした透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq)上に、スクリーン印刷法により導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して集電線を形成した。バッファ層は、上記透明導電性基板の集電線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC-600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布し、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して形成した。バッファ層を形成した透明導電性基板のバッファ層形成面に、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液を、バッファ層を形成した透明電極基板上に、0.2μmフィルター付きのシリンジで所定量滴下し、スピンコートした後、60度の熱風循環式オーブン中で10分間加熱乾燥して、無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI3〕からなる第2半導体層を作製した。
【0076】
(6)光電変換素子の作製
第1半導体層の塗膜層形成面を上面として、アルミ製吸着板上に真空ポンプを使って固定し、液状の光硬化型封止剤((株)スリーボンド製)を自動塗布ロボットにより塗膜パターンの外周部分に塗布した。自動貼り合せ装置を用いて、第2半導体層の塗膜形成面を第1半導体層の塗膜形成面に密着させて減圧環境中で重ね合せて貼合した。透明基板側からメタルハライドランプにより光照射を行って、封止剤を固化して封止層を形成した。取出し電極部分に導電性銅泊テープ(CU7636D、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を貼ることで固体接合型光電変換素子を作製した。
【0077】
(7)固体接合型光電変換素子の評価
光源として、150Wキセノンランプ光源装置にAM1.5Gフィルターを装着した擬似太陽光源(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)を用いた。光量は、1sun(約10万lux AM1.5G、100mWcm-2(JIS C 8912のクラスA))に調整した。作製した固体接合型光電変換素子をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。同様にバイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流データとして、変換効率を求めた。固体接合型光電変換素子の変換効率は4.5%であった。得られた変換効率は、従来知られている色素増感太陽電池と同等の変換効率であり、本願発明の光電変換素子は良好な光電変換能を有することがわかる。
【0078】
[2]実施例2
第2半導体層を形成するペロブスカイト化合物として、有機無機混成ペロブスカイト化合物C〔CH3NH3SnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液を単独で用いた点を除き、実施例1と同様とした。
【0079】
(2)固体接合型光電変換素子の評価
実施例1と同様とした。変換効率は4.8%であった。第2半導体層として、有機無機混成ペロブスカイト化合物C〔CH3NH3SnI3〕を用いても、得られた変換効率は、従来知られている色素増感太陽電池と同等の変換効率であり、本願発明の光電変換素子は良好な光電変換能を有することがわかる。
【0080】
[3]実施例3
第2半導体層を形成するペロブスカイト化合物として、無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液と有機無機混成ペロブスカイト化合物C〔CH3NH3SnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液とを5:1の割合で用いた点を除き、実施例1と同様とした。
【0081】
(1)第2半導体層の作製
無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液と有機無機混成ペロブスカイト化合物C〔CH3NH3SnI3〕のアセトニトリル〔CH3CN〕溶液とを5:1の割合で調合した溶液を、0.2μmフィルター付きのシリンジで所定量滴下し、スピンコートした後、60度の熱風循環式オーブン中で10分間加熱乾燥し、無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI3〕および有機無機混成ペロブスカイト化合物C〔CH3NH3SnI3〕からなる第2半導体層を作製した点を除き、実施例1と同様の方法で光電変換素子を作製した。」
(2)上記(1)によれば、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ペロブスカイト化合物からなる半導体層は、ペロブスカイト化合物を有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる点。」
3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている(なお、訳は特表2015-530738号公報に基づいて当審が付した。)。
ア 「15. A method of preparing a solid state solar cell, the method comprising the steps of:
- providing a conducting support layer (2) on which a surface-increasing scaffold structure (3) is provided;
- applying one or more organic-inorganic perovskite layer (4) on said scaffold structure or on a protective layer that may be present on said scaffold structure by any one or more selected from spin-coating, dip-coating and spray-coating; and,
- applying a counter electrode.」(特許請求の範囲)
(【請求項15】
固体太陽電池を調製する方法であって、以下の各ステップを含む方法。
その上に表面を増加させるスカフォールド構造(3)が提供されている導電性支持層(2)を提供すること、
スピンコーティング、ディップコーティングおよびスプレーコーティングから選択されるいずれか1つまたは2つ以上により該スカフォールド構造上に、または該スカフォールド構造上に存在できる保護層上に、1つまたは2つ以上の有機無機ペロブスカイト層(4)を適用すること、
対電極を適用すること。)
イ 「In the methods of the invention, the perovskite layer may be applied by any one or more selected from drop casting, spin-coating, dip-coating and spray-coating, for example. 」(17頁最下行~18頁1行)
(本発明の方法において、ペロブスカイト層は、例えば、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスプレーコーティングから選択されるいずれか1種または2種以上によって適用されることができる。)
ウ 「The method of the invention comprises the step of applying one or more organic -inorganic perovskite layer on said scaffold structure. The perovskite layer may be applied by any suitable process. According to an embodiment, the one or more perovskite layers are applied by any one or a combination of drop costing, spin-coating, dip-coating and spray-coating. 」(22頁最下行~23頁3行)
(【0108】
本発明の方法は、該スカフォールド構造上に1つまたは2つ以上の有機無機ペロブスカイト層を適用する工程を含む。このペロブスカイト層は、任意の好適な工程によって適用されることができる。ある態様によれば、1つまたは2つ以上のペロブスカイト層は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスプレーコーティングのいずれか1つまたはそれらの組み合わせによって適用される。)
(2)上記(1)によれば、引用文献3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ペロブスカイト層は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスプレーコーティングのいずれか1つまたはそれらの組み合わせにより形成される点。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「パターンが形成された透明な導電性の酸化物基板を、エアゾールスプレー熱分解を用いてTiO2の詰まった層で覆い、その後、20nmサイズの粒子からなる厚さ350nmのメソ多孔質TiO2層をスピンコーティングによって堆積し、70℃に維持されたDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(462mgml-1)PbI2溶液をスピンコーティングして、メソ多孔質TiO2薄層にPbI2を浸透させ」るステップは、本願発明1の「基板に第1溶液を回転塗布して膜を形成するステップ」に相当する。
イ 引用発明の「乾燥させた後、前記薄層をCH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液に20秒間浸け」るステップは、本願発明1の「前記第1溶液からなる膜に第2溶液を回転塗布して、前記第1溶液と前記第2溶液を反応させることでペロブスカイト薄膜を形成するステップ」と、「前記第1溶液からなる膜に第2溶液を」作用「するステップ」の点で一致する。
ウ 引用発明の「DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(462mgml-1)PbI2溶液」及び「CH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液」は、本願発明1の「前記第1溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの一方が含まれ、前記第2溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの他方が含まれ」る点と,
「前記第1溶液の溶質は、BX2が含まれ、前記第2溶液の溶質は、AXが含まれ」る点で一致する。
また、引用発明の「ペロブスカイト色素」は「CH3NH3PbI3」で示される点は、本願発明1の「ペロブスカイト薄膜の一般式はABX3で示され」る点に相当する。
エ 引用発明の「ペロブスカイト色素CH3NH3PbI3」は「PbI2とCH3NH3Iを混合して」「堆積させた」ものであるから、「PbI2」と「CH3NH3I」を混合して反応させることでCH3NH3PbI3を堆積させるものであるといえる。
そうすると、引用発明の「PbI2とCH3NH3Iを混合して」「堆積させた」「ペロブスカイト色素CH3NH3PbI3」は、本願発明1の「前記第1溶液と前記第2溶液を反応させることでペロブスカイト薄膜を形成するステップ」に相当する。
オ 引用発明の「ペロブスカイト増感太陽電池の装置製作方法」は、本願発明1の「ペロブスカイト薄膜の製造方法」に相当する。
カ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「基板に第1溶液を回転塗布して膜を形成するステップと、
前記第1溶液からなる膜に第2溶液を作用させて、前記第1溶液と前記第2溶液を反応させることでペロブスカイト薄膜を形成するステップとを備え、
前記ペロブスカイト薄膜の一般式はABX3で示され、
前記第1溶液の溶質は、BX2が含まれ、前記第2溶液の溶質は、AXが含まれる、
ペロブスカイト薄膜の製造方法。」
(相違点)
「第1溶液と第2溶液を反応させ」、「ペロブスカイト薄膜を形成するステップ」において、本願発明1は、「第1溶液からなる膜に第2溶液を回転塗布」するのに対し、引用発明は「前記薄層をCH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液に20秒間浸け」るものである点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明は、「薄層をCH3NH3Iの2-プロパノール(10mgml-1)溶液に20秒間浸け」るものであるため、ペロブスカイト薄膜の形成において調整し得るパラメータは、溶液の組成、濃度及び時間などである。
これに対して、本願発明1は、回転塗布によるものであるため、溶液の組成、濃度及び時間に加え、回転塗布の速度のパラメータを個別に調整し得るものであり、後記(3)に摘記したような効果を奏するものである。
そうすると、引用文献2、3に記載されているように、ペロブスカイト化合物からなる半導体層をスピンコーティング法によって形成することが周知の技術事項であっても、スピンコーティング法は、ペロブスカイト化合物を塗布材料として層状に形成する手段として周知であることにとどまり、第1溶液と第2溶液を反応させペロブスカイト薄膜を形成する手段としてまで周知であるものではなく、当業者が、引用発明の「CH3NH3Iと2-プロパノールの溶液に浸け」る構成に代えて、引用文献2、3の記載のスピンコーティング法を採用して上記相違点に係る本願発明1の構成を容易に想到することができたとは認められない。
(3)本願発明の効果について
本願発明は、回転塗布(スピンコーティング法)を採用することにより、「【発明の効果】上記に述べるように、本発明に係るペロブスカイト薄膜及び太陽電池の製造方法は、第1溶液と第2溶液の二段階の回転塗布を利用してペロブスカイト薄膜(ABX3)を形成するものであり、第1溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの一つが含まれ、第2溶液の溶質は、少なくともAX、またはBX2のうちの一つが含まれる。この方法でペロブスカイト薄膜を製造することによって、高価な蒸発器を必要とせずに、時間とコストを節減することができる。更に、溶液と回転塗布過程における各パラメーターを調整して、AX及びBX2の計量、並びにペロブスカイト薄膜の形成速度を正確に制御することで、ペロブスカイト薄膜の品質を制御して、品質のより良いペロブスカイト薄膜を製造することができるため、ペロブスカイト薄膜を活性層とする太陽電池の電力変換効率を更に高められる。」(本願の発明の詳細な説明の段落【0016】)という、溶液に浸ける方法に比べて顕著な効果が認められる。
2 本願発明2~7について
本願発明2~7も、本願発明1の「前記第1溶液からなる膜に第2溶液を回転塗布して、前記第1溶液と前記第2溶液を反応させることでペロブスカイト薄膜を形成するステップ」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-001950