特許拒絶査定不服審判
2017-001459
赤外線信号を提供する方法及び装置
- 審判番号
- 2017-001459
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-518509
- 請求日
- 2017年02月01日
- 審決日
- 2018年08月13日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソノズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山田 卓二
- 【請求人代理人】田中 光雄
- 【請求人代理人】岡部 博史
- 【請求人代理人】中谷 剣一
- 審判長/審判官
- 審判長 北岡 浩
- 審判官 佐藤 実
- 審判官 吉田 隆之
- 分類
- P18 .121-WZ (H04Q) / P18 .537-WZ (H04Q) / P18 .575-WZ (H04Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-518509「赤外線信号を提供する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/192135、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526949〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月18日の出願であって、平成27年2月18日付けで手続補正書が提出され、平成28年1月29日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月27日付けで意見書・手続補正書が提出されたものの、同年9月29日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成29年2月1日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、当審において、同年11月13日付け拒絶理由通知と同時に平成29年2月1日付けの手続補正について補正の却下の決定がされ、平成30年5月10日付けで意見書・手続補正書が提出されている。
第2 本願発明
1.請求項11の記載
平成30年5月10日付け手続補正書によって補正された請求項11には以下のとおり記載されている。
「【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法においてオーディオ再生デバイスが行っている処理を実行する赤外線装置を備える、オーディオ再生デバイス。」
2.請求項1の記載
上記したとおり、請求項11は「請求項1~10のいずれか一項に記載の方法においてオーディオ再生デバイスが行っている処理を実行する赤外線装置を備える・・・」と請求項1~10のいずれか一項を引用する引用形式で記載されている。
ここで、請求項11が引用する請求項1には以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
オーディオ再生デバイスが、第2装置で実行されるコマンドを示す第1信号を、第1装置から受信するステップ、
オーディオ再生デバイスが、コマンドを示す第2信号を、第1信号に基づいて生成するステップ、ここで第2装置にとって、第2信号は第1信号と区別不可能な信号である、
オーディオ再生デバイスが、第2信号を第2装置へ送信するステップ、
を含み、
第2信号が第2装置によって第1信号と区別されずに送信されることにより、第1信号と第2信号とが第2装置でほぼ同時に受信され、第2装置は受信した第1信号と第2信号とを単一信号として処理する、ここで、単一信号は、第1信号と第2信号との和である、
方法。」
3.請求項1を引用する請求項11に係る発明
平成30年5月10日付けの手続補正で補正された、請求項1を引用する請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1の記載と請求項11の記載とを併せて独立形式で記載すると、以下のとおりの発明である。
「オーディオ再生デバイスが、第2装置で実行されるコマンドを示す第1信号を、第1装置から受信するステップ、
オーディオ再生デバイスが、コマンドを示す第2信号を、第1信号に基づいて生成するステップ、ここで第2装置にとって、第2信号は第1信号と区別不可能な信号である、
オーディオ再生デバイスが、第2信号を第2装置へ送信するステップ、
を含み、
第2信号が第2装置によって第1信号と区別されずに送信されることにより、第1信号と第2信号とが第2装置でほぼ同時に受信され、第2装置は受信した第1信号と第2信号とを単一信号として処理する、ここで、単一信号は、第1信号と第2信号との和である、
方法においてオーディオ再生デバイスが行っている処理を実行する赤外線装置を備える、オーディオ再生デバイス。」
第3 拒絶の理由
平成29年11月13日付けで当審が通知した拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由1は、次のとおりのものである。
この出願の請求項11に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-7に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.『IRフラッシャー搭載:テレビの音を変える“サウンドブースター”、
ヤマハ「YAS-101」登場』、ITmedia、
2011年8月10日、(検索日)2017年10月19日、
<URL>http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1108/10/news053.html
2.特開平9-233568号公報
3.特開2010-40509号公報
4.特表2009-520331号公報
5.特開平5-284579号公報
6.登録実用新案第3093887号公報
7.特開2011-41058号公報
第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1
1.1.引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用文献1として引用した『IRフラッシャー搭載:テレビの音を変える“サウンドブースター”、 ヤマハ「YAS-101」登場』、ITmedia、2011年8月10日、(検索日)2017年10月19日、 <URL>http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1108/10/news053.html (以下、「引用文献1」という。) には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
『ヤマハは8月10日、薄型テレビの音を強化する“サウンドブースター”こと「YAS-101」を発表した。サウンドバースタイルの横長ボディーに2つのフルレンジユニットと2つのサブウーファーを内蔵した2.1chシステム。』(第1段落)
『ユニークなのは、赤外線リモコンの信号を中継する「IRフラッシャー」だろう。テレビの手前に設置するサウンドバーは、リモコン信号を遮る可能性が高いため、YAS-101では前方で受けたIR信号をそのまま背面に中継する機能を設けた。テレビのリモコン信号受光部がどこにあるか分らないため、背面には横一列にIRフラッシャーを装備している。』(第3段落)
『「YAS-101」。背面に見える白い線がIRフラッシャーの赤外線送信部』(第3段落下の画像の説明)
1.2.引用発明
上記「1.1.引用文献1の記載事項」について以下検討する。
上記第3段落には「ユニークなのは、赤外線リモコンの信号を中継する「IRフラッシャー」だろう。テレビの手前に設置するサウンドバーは、リモコン信号を遮る可能性が高いため、YAS-101では前方で受けたIR信号をそのまま背面に中継する機能を設けた。テレビのリモコン信号受光部がどこにあるか分らないため、背面には横一列にIRフラッシャーを装備している。」と記載されているから、「赤外線リモコンの信号」、「リモコン信号」、「IR信号」、「テレビのリモコン信号」の4つの信号が記載されているといえる。
引用文献1の「IRフラッシャー」は、「赤外線リモコンの信号を中継する」ものであり、「サウンドバー」の背面に「横一列にIRフラッシャーを装備している」のは、「テレビのリモコン信号受光部がどこにあるか分らない」としても、「サウンドバー」に遮られた「リモコン信号」を「テレビのリモコン信号受光部」に向けて中継するためであることは自明である。
そうすると、引用文献1の「サウンドバー」は、「赤外線リモコン」と「テレビのリモコン信号受光部」との間で、「赤外線リモコンの信号」を中継するものであるから、引用文献1の「赤外線リモコン」を、「テレビ用赤外線リモコン」と称することは任意であり、引用文献1の「赤外線リモコンの信号」、「リモコン信号」、「テレビのリモコン信号」はいずれも、「テレビのリモコン信号受光部」で受信されるための「赤外線リモコン信号」といえる。
また、引用文献1の「サウンドバー」の「前方で受けたIR信号」は、「サウンドバー」に遮られた「リモコン信号」であり、IRは赤外線(infrared)の略称として用いられていることが技術常識であるから、引用文献1の「サウンドバー」の「前方で受けたIR信号」についても、「テレビのリモコン信号受光部」で受信されるための「赤外線リモコン信号」を示している。
以上によれば、引用文献1の「赤外線リモコンの信号」、「リモコン信号」、「IR信号」、「テレビのリモコン信号」はいずれも、「テレビのリモコン信号受光部」で受信されるための「赤外線リモコン信号」であるといえる。
そして、引用文献1の「前方で受けたIR信号をそのまま背面に中継する」とは、「テレビ用赤外線リモコン」から送信され、「サウンドバー」の前方で受信した赤外線リモコン信号を、そのまま「サウンドバー」背面に装備された「IRフラッシャーの赤外線送信部」から、「サウンドバー」の背面にある「テレビ」へ送信することであり、「IRフラッシャーの赤外線送信部」から送信された赤外線リモコン信号は、「テレビ」で受信されるものであると認められる。
「IRフラッシャーの赤外線送信部」から送信された赤外線リモコン信号は、「テレビ用赤外線リモコン」から送信され、「サウンドバー」の前方で受信した赤外線リモコン信号、「そのまま」であるから、「IRフラッシャーの赤外線送信部」から送信された赤外線リモコン信号と、「テレビ用赤外線リモコン」から送信され、「サウンドバー」の前方で受信した赤外線リモコン信号は、同じ信号といえる。
よって、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「テレビ用赤外線リモコンと、テレビと、前記テレビの手前に設置されるサウンドバーとからなるシステムにおいて、
前記サウンドバーが、前記テレビ用赤外線リモコンから受信した赤外線リモコン信号をそのまま背面に中継する機能を有し、
前記サウンドバーが、前記テレビ用赤外線リモコンから前記テレビに向けて送信される赤外線リモコン信号を受信し、
前記サウンドバーが、前記テレビ用赤外線リモコンから受信した赤外線リモコン信号を中継して、前記サウンドバーの背面に装備されたIRフラッシャーの赤外線送信部により前記テレビへ中継した赤外線リモコン信号を送信することで、前記テレビに送信し、前記サウンドバーが前記送信した赤外線リモコン信号は、テレビ用赤外線リモコンから前記テレビに向けて送信される赤外線リモコン信号と同じ信号であって、テレビで受信されるものである
サウンドバー。」
2.引用文献2
2.1.引用文献2の記載事項
また、当審拒絶理由で引用文献2として引用した特開平9-233568号公報(以下、「引用文献2」という。) には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、赤外線リモコンを備えたリモコン操作機器をリモコン送信機で操作するときの操作性の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】現在多くの電気機器がリモコン操作機器となっている。リモコン操作機器とは、リモコン送信機を備え、このリモコン送信機で遠隔操作が可能な機器である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、赤外線は短い電磁波であるため直進性が強く、何物かに遮られると届かない、また、距離がある程度以上離れると届かないという欠点があった。このため、カラオケボックスなど人の沢山いる場所で操作する場合には、人に遮られてカラオケ装置に赤外線のリモコン信号が届かない場合があった。また、広い部屋で遠くから操作する場合にも装置が反応しないというおそれがあった。
【0004】また、リモコン操作機器は必ず視界の開けた場所に設置する必要があり、設置場所に制限があった。
【0005】この発明は、人が沢山いる場所でも、遠くにリモコン操作機器がある場合でも確実にリモコン送信機で遠隔操作ができるリモコン操作機器およびリモコン中継器を提供することを目的とする。」
「【0011】請求項2~請求項4の発明に係るリモコン中継器は、リモコン送信機が発信したリモコン信号を中継してリモコン操作機器に再送信する。これにより、リモコン送信機とリモコン操作機器の視界が遮断されている場合、両者の距離が遠い場合でもリモコン操作を可能にした。そして、リモコン送信機の赤外線リモコン信号とリモコン中継器の赤外線リモコン信号が並行してリモコン操作機器に受光された場合でも、この信号を正しく認識できるように以下のように構成した。
【0012】請求項2の発明ではリモコン中継器の処理速度を速くして両信号のずれをリモコン信号のパルス幅とリモコン操作機器の受信サンプリング周期以下にした。これにより、リモコン操作機器が両信号を一緒に受信しても波形が崩れず正確に受信することができる。
【0013】請求項3の発明ではリモコン中継器でリモコン信号の1フレームに相当する時間遅延するようにした。これにより、両信号は完全に分離され、リモコン操作機器は、重ならずに両方を受信することができる。
【0014】また、請求項4の発明ではリモコン中継器でキャリア周波数を変換するようにした。これにより、リモコン操作機器が両信号を同時に受信してもリモコン送信機の信号とリモコン中継器の信号を分離し、別々に認識することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】図1はこの発明で用いられるリモコン信号のフォーマット例を示す図である。リモコン信号の1フレームは約100msで構成されており、1フレーム内にリーダコード、カスタムコード、コマンドコードが形成されている。各コードは、560μs幅のパルスがどの位置にあるかによってその内容を表すPPM変調(パルス位置変調)で信号化されている。さらに、この560μs幅のパルスは30~40kHzのキャリア周波数で変調されている。リーダコードは等間隔で繰り返されるパルス列で構成されており、約10msの長さである。カスタムコードは約18~36ms程度の長さで16ビットのカスタムコードを表示する。カスタムコードは各リモコン操作機器に個別のコードであり、このコードにより該リモコン信号が自己宛のものか否かを判断することができる。コマンドコードは各機器独自のコマンドを任意バイト長で表現したものであり約30~50ms程度である。機器本体はこのコマンドコードに応じて様々の処理動作を実行する。なお、1フレーム終了後もリモコン送信機のキーを押しつづけた場合には、複数フレームが送信されるが、2フレーム以後はリーダコード部のみが送信される。」
「【0028】図7は、請求項2の発明の実施形態であるリモコン中継器の構成図、および同リモコン中継器の設置形態を示す図である。同図(A)において、リモコン中継器31は、リモコン操作機器33が設置されている部屋の天井など見晴らしのよい視界の開けた場所に設置される。利用者がリモコン操作機器33の傍にいる場合は直接機器33に向けてリモコン送信機32を操作する。利用者がリモコン操作機器33から離れた場所にいる場合には、リモコン中継器31に向けてリモコン送信機32を操作する。
【0029】同図(B)において、リモコン中継器31は、受光部35,整形部36,増幅部37,発光部38からなっている。リモコン送信機32から発射された赤外線リモコン信号は、リモコン中継器31の受光部35に入光する。受光部35はピンフォトダイオードおよび入力アンプで構成されており、この赤外線信号を電気信号に変換する。この電気信号は整形部36に入力される。整形部36は、コンパレータで構成されており、この信号の波形を整形する。波形を整形された信号は増幅制御部37で増幅され発光部38に入力される。発光部38は高輝度赤外線LEDを有しており、入力された信号でこの高輝度赤外線LEDが発光する。この高輝度赤外線LEDはリモコン操作機器33の受光部に向けて設置される。
【0030】ここで、リモコン送信機32-リモコン操作機器33間の視界が(テーブルや人間などで)完全に遮断されている場合やリモコン送信機32-リモコン操作機器33の距離が十分に大きくリモコン送信機32の直接光が機器本体33に到達しない場合には、リモコン中継器31の赤外線信号のみがリモコン操作機器33に入光するが、視界が完全に遮断されていない場合や両者の距離がそれほど離れていない場合には、利用者がリモコン送信機32を操作したとき、このリモコン送信機32が照射した赤外線リモコン信号(元信号)とリモコン中継器31が中継して再送信した赤外線リモコン信号(中継信号)の両方がリモコン操作機器33に入光する場合がある。
【0031】図7のリモコン中継器31は、このような場合でも両信号波形が混ざり合うことによって認識不能にならないよう、受光部35~発光部38までの回路を高速のもので構成している。すなわち、図8に示すように、中継信号は、元信号よりも中継器31の内部処理時間だけ遅れてリモコン操作機器33に入光する。このうち、両信号が重なりあっている部分が信頼性の高い信号であり、どちらか一方のみの部分(斜線部分)は信頼性が低い。そこで、この重なり合った部分のみでリモコン操作機器33が信号を検出できるようにする。上述したようにリモコン信号のパルス幅は560μs程度であり、受信側のサンプリング周期は500μs程度である。そこで、元信号と中継信号の時間差が60μs以下であれば、重なり合った部分が受信側のサンプリング周期である500μs以上の長さを保つことができ、確実な認識が可能になる。そこで、応答の早いオペアンプを用いLEDのドライバをFETで構成することにより、上記応答速度を実現する。
【0032】また、上述したようにリモコン信号のコード本体は約100msで終了する。そこで、リモコン中継器31が受信したリモコン信号を1フレーム遅らせて送信することによって、赤外線信号の波形の重なりをなくすこともできる。このため、リモコン中継器31の整形部36に遅延回路を設けて遅延部として機能させる。図1から明らかなように遅延時間は100msから120ms程度がよい。リモコン操作機器33は、同じ信号を2フレーム連続して受信した場合、後の信号を有効な信号として処理することにより、誤った処理をすることがない。
【0033】図9はこの場合のリモコン操作機器33の動作を示すフローチャートである。s31でリモコン信号を受信するかを監視している。リモコン信号を受信すると、一旦100msウェイトする(s32)。こののち、再度同じ信号を受信するか否かを検出し(s33)。受信した場合は後の(2回目)の信号を解読して(s35)、対応する処理を実行する(s36)。ウェイトののち信号を受信しなかった場合には、リモコン送信機32またはリモコン中継器31のどちらか一方の信号のみが受信されたとしてその信号を解読して(s34)、その信号に対応する処理を実行する(s36)。
【0034】一方、赤外線を変調するキャリア周波数を変えることで2つの信号を識別可能にすることもできる。図10はこの例を示す図である。」
2.2.引用文献2
引用文献2の記載について以下検討する。
引用文献2の段落【0001】に「この発明は、赤外線リモコンを備えたリモコン操作機器をリモコン送信機で操作するときの操作性の向上に関する。」、段落【0003】に「赤外線は短い電磁波であるため直進性が強く、何物かに遮られると届かない、また、距離がある程度以上離れると届かないという欠点があった。このため、カラオケボックスなど人の沢山いる場所で操作する場合には、人に遮られてカラオケ装置に赤外線のリモコン信号が届かない場合があった。」、段落【0005】に「この発明は、人が沢山いる場所でも、遠くにリモコン操作機器がある場合でも確実にリモコン送信機で遠隔操作ができるリモコン操作機器およびリモコン中継器を提供することを目的とする。」、段落【0011】に「リモコン送信機とリモコン操作機器の視界が遮断されている場合、両者の距離が遠い場合でもリモコン操作を可能にした。」と記載されているから、引用文献2の記載は、赤外線リモコンを備えたリモコン操作機器をリモコン送信機で操作するときに、リモコン送信機とリモコン操作機器の視界が遮断されている場合でもリモコン操作を可能とするリモコン操作機器およびリモコン中継器を提供することを目的としているといえる。
引用文献2の段落【0029】に「リモコン中継器31は、受光部35,整形部36,増幅部37,発光部38からなっている。」、段落【0030】に「リモコン送信機32が照射した赤外線リモコン信号(元信号)とリモコン中継器31が中継して再送信した赤外線リモコン信号(中継信号)の両方がリモコン操作機器33に入光する場合」、段落【0031】に「このような場合でも両信号波形が混ざり合うことによって認識不能にならないよう、受光部35~発光部38までの回路を高速のもので構成している。」と記載されているから、引用文献2には
、「中継する機能」として「リモコン送信機が照射した赤外線リモコン信号(元信号)と、リモコン中継器が中継して再送信した赤外線リモコン信号(中継信号)の両方がリモコン操作機器に入光された場合でも、両信号波形が混ざり合うことによって認識不能にならないよう、高速に中継する機能を設け」ることが記載されているといえる。
また、引用文献2の段落【0031】には、リモコン中継器の内部処理時間に関して、「中継信号は、元信号よりも中継器31の内部処理時間だけ遅れてリモコン操作機器33に入光する。このうち、両信号が重なりあっている部分が信頼性の高い信号であり、どちらか一方のみの部分(斜線部分)は信頼性が低い。そこで、この重なり合った部分のみでリモコン操作機器33が信号を検出できるようにする。上述したようにリモコン信号のパルス幅は560μs程度であり、受信側のサンプリング周期は500μs程度である。そこで、元信号と中継信号の時間差が60μs以下であれば、重なり合った部分が受信側のサンプリング周期である500μs以上の長さを保つことができ、確実な認識が可能になる。そこで、応答の早いオペアンプを用いLEDのドライバをFETで構成することにより、上記応答速度を実現する。」と記載されている。
また、 引用文献2の段落【0015】には「リモコン信号の1フレームは約100msで構成され」ることが記載されている。
ここで、リモコン信号は、複数のパルス信号から構成されていることが技術常識であって、引用文献2においても、リモコン信号が約100msであるのに、リモコン信号のパルス幅は560μs程度であって、リモコン操作機器33に入光する元信号と中継信号の時間差は60μs以下である。
つまり、両信号が重なりあっている500μs以上の長さは、リモコン信号を構成する各パルスについての重なり合った部分を示しており、リモコン信号全体に対する、中継器の内部処理時間は0.06%程度であるから、「元信号と中継信号とがリモコン操作機器でほぼ同時に入光される」といえる。
したがって、引用文献2には、赤外線リモコンを備えたリモコン操作機器をリモコン送信機で操作するときに、リモコン送信機とリモコン操作機器の視界が遮断されている場合でもリモコン操作を可能とする「中継する機能」として「リモコン送信機が照射した赤外線リモコン信号(元信号)と、リモコン中継器が中継して再送信した赤外線リモコン信号(中継信号)の両方がリモコン操作機器に入光された場合でも、両信号波形が混ざり合うことによって認識不能にならないよう、高速に中継する機能を設け、元信号と中継信号とがリモコン操作機器でほぼ同時に入光される」という技術的事項が記載されている。
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「サウンドバー」、「テレビ」、「テレビ用赤外線リモコン」は、本願発明における「オーディオ再生デバイス」、「第2装置」、「第1装置」に含まれる。
引用発明における、テレビ用赤外線リモコンからテレビに向けて送信される「赤外線リモコン信号」は、テレビを操作するためのコマンドで形成される信号であることが技術常識であるから、本願発明における「第2装置で実行されるコマンドを示す第1信号」に含まれる。
引用発明における、サウンドバーがテレビへ送信する「赤外線リモコン信号」は、テレビ用赤外線リモコンからテレビに向けて送信される「赤外線リモコン信号」と同じ信号を送信するものであるから、本願発明における、「第1信号に基づいて生成」され、「第2装置にとって」「第1信号と区別不可能な信号である」、「第2装置によって第1信号と区別され」ない、「第2装置へ送信」される「コマンドを示す第2信号」に含まれる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「オーディオ再生デバイスが、第2装置で実行されるコマンドを示す第1信号を、第1装置から受信するステップ、
オーディオ再生デバイスが、コマンドを示す第2信号を、第1信号に基づいて生成するステップ、ここで第2装置にとって、第2信号は第1信号と区別不可能な信号である、
オーディオ再生デバイスが、第2装置によって第1信号と区別されない第2信号を第2装置へ送信するステップ、
を実行する、オーディオ再生デバイス。」
(相違点)
(相違点1)
「第2信号」が、「第1信号と」「第2装置でほぼ同時に受信され」るのに対し、引用発明は、第1信号との受信の時間差について特定されていない点。
(相違点2)
「オーディオ再生デバイスが行っている処理を実行する」のが、本願発明は「赤外線装置」であるのに対し、引用発明は、オーディオ再生デバイスが行っている各処理を実行する、「IRフラッシャー」等の機構を備えるものの、「赤外線装置」としてひとまとまりになっていない点。
(相違点3)
「第2装置」が、本願発明は「受信した第1信号と第2信号とを単一信号として処理する、ここで、単一信号は、第1信号と第2信号との和である」のに対し、引用発明は、「第2装置」が行っている処理について特定されていない点。
第6 判断
上記相違点について判断する。
相違点1について
引用文献2は、リモコン送信機とリモコン操作機器の視界が遮断されている場合でもリモコン操作を可能とすることを目的として、リモコン送信機が発信したリモコン信号を中継してリモコン操作機器に再送信するという技術的事項に属するものである。
一方、引用発明は、テレビの手前に設置するサウンドバーは、リモコン信号を遮る可能性が高いため、サウンドバーでは前方で受けたIR信号をそのまま背面に中継するという技術的事項に属するものであって、リモコンが送信した赤外線リモコン信号と、「IRフラッシャー」が送信した赤外線リモコン信号とが、テレビのリモコン信号受光部で受信されるということが、排除されていないといえる。
よって、引用発明と、引用文献2に記載された技術的事項とは共通するものである。
引用発明の「サウンドバー」の「中継する機能」は、どのような中継を行うかの記載はないが、「中継する機能」として、引用文献2に記載された技術的事項を適用して、「サウンドバー」の送信する赤外線リモコン信号が、テレビ用赤外線リモコンからテレビに向けて送信された赤外線リモコン信号と同じ信号であっても、両信号波形が混ざり合うことによって認識不能にならないよう、高速に中継し、「テレビ」でほぼ同時に受信される構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
相違点2について
引用発明において、「IRフラッシャー」等の各処理を実行する機構をひとまとまりにし、「赤外線装置」と称することは、設計的事項にすぎない。
相違点3について
相違点3に係る本願発明の「第2装置は受信した第1信号と第2信号とを単一信号として処理する、ここで、単一信号は、第1信号と第2信号との和である」点において、処理を実行するのは「第2装置」であって、「オーディオ再生デバイス」が実行する処理等を特定するものではない。
そうすると、引用発明の「サウンドバー」と、本願発明の「オーディオ再生デバイス」とは、記載上、表現上の相違があるものの、構造、機能等に差異はないから、本願発明に記載された「第2装置」(他のサブコンビネーション)に関する事項が、「オーディオ再生デバイス」(サブコンビネーション)の発明の構造、機能等を何ら特定していないと認められる。
したがって、上記相違点3は実質的なものとはいえない。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献1,2から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は引用文献1,2に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-001459