特許拒絶査定不服審判
2017-001274
置換ジフェニル誘導体
- 審判番号
- 2017-001274
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-558302外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月30日
- 審決日
- 2017年09月27日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クリエイティブ セラポーティクス ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
- 分類
- P18 .536-Z (C07C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-558302「置換ジフェニル誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/122969、平成26年 7月 3日国内公表、特表2014-515734〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2012年3月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年3月16日(DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月21日に手続補正書が提出され、同年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶査定がされ、平成29年1月30日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成28年9月6日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された事項、並びに平成28年1月26日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2及び4に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明1」~「本願発明4」といい、これらをまとめて「本願発明」ともいう。)
「【請求項1】
【化1】
の化学式で示される化合物(18)であって、この化学式において、
Xは、COであり、
3R,6Rは、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-、ハロゲン、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、且つ、
4R,5Rは、それぞれお互いに独立しており、-N=N-N(R2)2基又は-OSO2Y基であり、ここで、
Yは、OH又はN(R1)2であり、
R1は、水素、メチル又はエチルであり、
R2は、メチル又はエチルであるものを有し、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(R2)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、その塩、その遊離酸、その溶媒和物、その塩の溶媒和物、又は、その遊離酸の溶媒和物。
【請求項2】
【化2】
で示される4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシベンゾフェノンを有することを特徴とする請求項1記載のジフェニル誘導体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のジフェニル誘導体を製造する方法において、前記ジフェニル誘導体が、
【化3】
化学式(2)で示されるアミノフェニル誘導体を具備することを特徴とするものであり、
この化学式(2)において、
Xは、COであり、
3R,6Rは、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-、ハロゲン、ニトロ、シアノ、又は、-OSO2Y基であり、
4R,5Rは、それぞれお互いに独立しており、-NH2基又は-OSO2Y基であり、
Yは、OH又はN(R1)2であり、且つ、
R1は、水素、メチル又はエチルであると共に、
総合分子(2)当たり、1つ又は2つの-NH2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置され、低い温度で、強酸の存在において、ジアゾ化剤によってジアゾ化され、下記する化学式(3)のジアゾニウム塩を形成することが条件となり、
【化4】
この化学式3において、
Xは、COであり、
3R,6Rは、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-、ハロゲン、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、
4R,5Rは、それぞれお互いに独立しており、-N2+An-基又は-OSO2Y基であり、
An-は、ハロゲンアニオン(Cl-、Br-)又は1/2硫酸塩(SO42-)アニオンであり、
Yは、OH又はN(R1)2であり、且つ、
R1は、水素、メチル又はエチルであると共に、
総合分子(3)当たり、1つ又は2つのジアゾニウム基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置され、且つ、
得られたジアゾニウム塩(3)が、下記する化学式4のジアルキルアミンと反応することが条件となるものであり、且つ、
得られたジアゾニウム塩(3)が、
【化5】
この化学式(4)のジアルキルアミンと反応することが条件となるものであり、
この化学式(4)において、R2はメチル又はエチルであり、さらに、酸結合剤の存在において、得られた化合物からの塩の調合がなされ、さらにこれらの塩からヒドロキシル基且つ/又は酸性基の解放が行われることを特徴とする方法。
【請求項4】
付加的に1つ以上の薬理学的に受容可能な補助剤又は支持剤とともに、請求項1又は2に記載のジフェニル誘導体、その塩、その溶媒和物、又は、その塩の溶媒和物の少なくとも1つを含有することを特徴とする薬剤。」
第3 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、平成28年5月31日付け拒絶理由通知における以下の理由1を含むものである。この理由1は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、要約すると下記で示したとおりのものである。
記
一般に、物の構造や名称からその物をどのように作り、どのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野(例:化学物質)に属する発明については、当業者がその発明の実施をすることができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要であり、また、一般に、化合物の構造だけから特定の医薬用途に使用し得るかどうかを予測することは困難であることから、薬理試験結果の記載のない場合には、当該化合物が実際にその医薬用途に使用し得るかどうかについて、当業者が予測することは困難であると認められる。
本願の発明の詳細な説明には、中間体や本願発明の化合物の一部について、その合成方法や精製方法が一応記載されているものの、本願発明の化合物は、薬剤として使用し得るかが不明なものであり、発明の実施をするのに当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると認められるから、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
第4 当審の判断
当審は、原査定の拒絶理由のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1 特許法第36条第4項第1号について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
2 特許請求の範囲の記載について
上記「第2」に記載したとおりである。
3 発明の詳細な説明の記載について
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0003】
トリアゼン置換ジフェニル誘導体が公知である。このように、特許文献1(DE1793115A1)、特許文献2(DE2147781A1)及び特許文献3(WO2004/106358A1)は、トリアゼン基によって置換されたジフェニル誘導体、例えばスルホン酸又はオキシカルボン酸基をとりわけ開示する。
【0004】
トリアゼン誘導体は、過去数十年において、それらの細胞増殖抑制性の効果について総合的に検査されている。これらの従来のトリアゼン細胞増殖抑制剤は、アルキル化薬の群に属し、それらの厳密な副作用及び毒性のせいで、広い臨床用途を見いだせないでいた。例外は、モノメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド(MTIC)のプロドラッグであるダカルバジンであり、主にホジキンリンパ腫及び軟部組織肉腫と闘うために使用される(癌治療報告60,205-211(1976))。ダカルバジンの光感受性及び特に白血球減少及び血小板減少が特に重要であるその副作用によって、多くのアリルアルキルトリアザンがより強力でより良い耐トリアゼンを合成することを目的として研究されている(癌治療報告60:125-134(1976);J.Med.Chem.23,1052-1024、(1980))。これらに取り組みに代えて、たとえそれらが、骨髄細胞の枯渇、神経毒性及び肝臓毒性、嘔吐、脱毛及び発疹のような著しい副作用と関連したとしても、ダカルバジン及びテモゾロマイドが、グリア芽腫の治療の臨床的使用において唯一残されたトリアゼンを古いものにしている。
【0005】
乳ガンの場合の選択された使用を目的とした選択されたトリアザンの耐性課題を克服するための最初の試みは、特許文献1(DE1793115A1)及び特許文献2(DE2147781A1)に記載されている。
【0006】
選択されたトリアザンの深刻な副作用を克服するための第2の試みは、特許文献3(WO2004/106358A1)に記載されている。いくつかの公知のトリアザンの深刻な副作用は、オキシカルボン酸基の導入によって減少すると言われている。しかしながら、腎臓への望ましくない副作用によって、それらは、長期間の使用に適当でない。」
(b)「【0008】
本願発明の目的は、有害な副作用が無いと同時に改善された有効性を有する長期間治療に最適な殺腫瘍活性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、(i)少なくとも一つのジアルキルトリアゼニル基、(ii)分子毎に、少なくとも1つのスルホオキシ基且つ/又は少なくとも1つのスルファモイルオキシ基を含むことを特徴とするジフェニル誘導体、且つ、その塩、溶媒和物、及びこれら塩の溶媒和物を見出した。
【0010】
本願発明の新しいジフェニル誘導体は、特に皮膚、前立腺および睾丸の腫瘍および同様に知られた活性化合物(特許文献1,2及び3)と比較して性ホルモンに依存する標的器官の腫瘍に対する選択された抗癌剤として、重要な標的器官(結腸、肺、肝臓、膵臓、腎臓)の腫瘍の場合の大きく完全された抗癌効果を有する。同様の公知の活性化化合物と比較して、それらは、事実上有害な副作用なしに、またこれによって長期間治療に最適である。
【0011】
それらの高い有効性と結合したより良い認容性によって、それらは、端座医療法としても、また他の抗癌剤、腫瘍特異性抗体又は本願発明による化合物に架橋剤を介して結合される抗体との結合においても、医学的に使用される。
【0012】
細胞内に、それらは、腫瘍細胞の制御不能な複製代謝作用を停止させ、増殖阻害/殺腫瘍の効果的原理を遊離し、腫瘍の退行を導く。
【0013】
本願発明に係るジフェニル誘導体は、人間及び動物のための薬剤に、活性化合物として使用される。」
(c)「【0015】
本願発明の目的について、下記する化学式1の置換ジフェニル誘導体が参照される。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、Xは、環a及びbの間の直接C-C結合、CH2、CHOH、CO、S、SO、SO2、-N=N-、-CR7=CR8-、又は、環aの近接する2つの炭素原子とともにピラノン環を形成する二価の-C(O)-C*=CH-O-ラジカルであり、環bが
、このラジカルのC*原子に配置されるものであり、
R3,R6は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-であり、ここでアルキルは、好ましくはメチル又はエチルであり、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、
R4,R5は、それぞれお互いに独立しており、-N=N-N(R2)2基又は-OSO2Y基であり、
R7は、水素、メチル、エチル又はラジカルR9,R10によって置換され、R7を有する炭素原子に直接結合されるフェニルラジカルであり、
R8は、水素、エチル、CN、NO2、-CH2CH2-ハロゲン(F,Cl,Br,I)又はCH2CH2OHであり、
R9,R10は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシであり、ここでアルキルは、好ましくはメチル又はエチルであり、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ、-N=N-N(R2)2基又は-OSO2Y基であり、
Yは、OH又はN(R1)2であり、
R1は、水素、メチル又はエチルであり、且つ、
R2は、メチル又はエチルであると共に、
総合分子(1)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(R2)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、及び、その塩、遊離酸、溶媒和物、並びに、これらの塩の溶媒和物、これらの遊離酸の溶媒和物。」
(d)「【0117】
4.原子又は二原子基によって非架橋又は架橋された化学式(18)のジフェニル誘導体
【0118】
本願発明によれば、化学式(1)は、下記する化学式(31)の形においても存在することができる。
【0119】
【化31】
【0120】
化学式(18)において、
Xは、直接C―C結合、CH2,CHOH、CO、S,SO、SO2、又は-N=N-であり、
R3,R6は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-であり、ここでアルキルは、好ましくはメチル又はエチルであり、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、
R4,R5は、それぞれお互いに独立しており、-N=N-N(R2)2基又はOH基であり、
Yは、OH又はN(R1)2であり、
R1は、水素、メチル又はエチルであり、且つ、
R2は、メチル又はエチルであると共に、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(R2)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、且つ、その塩、遊離酸、溶媒和物、且つこれらの塩の溶媒和物及びこれらの遊離酸の溶媒和物が示される。
【0121】
化学式(18)の化合物が参照される。ここで、
Xは、CH2、CO、SO、又はSO2であり、
R3,R6は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキル-S-、C1-C4-アルキル-SO-、C1-C4-アルキル-SO2-であり、ここでアルキルは、好ましくはメチル又はエチルであり、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、
R4,R5は、それぞれお互いに独立しており、-N=N-N(CH3)2基又は-OSO2Y基であり、
Yは、OH又はN(R1)2であり、
R1は、水素、メチル又はエチルであり、且つ、
R2は、メチル又はエチルであるとともに、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(CH3)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、及び、その塩、遊離酸、溶媒和物、並びに、これらの塩の溶媒和物及びこれらの遊離酸の溶媒和物が示される。
【0122】
化学式(18)の特別な化合物が参照される。ここで、
Xは、CH2、CO、SO、又はSO2であり、
R3,R6は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、CH3S、CH3SO-、CH3SO2-、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ又は-OSO2Y基であり、
R4,R5は、それぞれお互いに独立しており、-N=N-N(CH3)2基又は-OSO2Y基であり、且つ、
Yは、OH又はNH2であると共に、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(CH3)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、及び、その塩、遊離酸、溶媒和物、並びに、これらの塩の溶媒和物及びこれらの遊離酸の溶媒和物が示される。
【0123】
さらに、化学式(18)の特別な化合物が参照される。ここで、
Xは、CH2、CO、SO、又はSO2であり、
R3,R6は、それぞれお互いに独立しており、水素、ヒドロキシ、メチル、フッ素、塩素、臭素又は-OSO2Y基であり、
R4は、水素、
R5は、-N=N-N(CH3)2基であり、且つ、
Yは、OH又はNH2であると共に、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(CH3)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、且つ、その塩、遊離酸、溶媒和物、且つこれらの塩の溶媒和物及びこれらの遊離酸の溶媒和物が示される。
【0124】
化学式(18)の特に特別な化合物が参照される。ここで、
Xは、CH2、CO、SO、又はSO2であり、
R3は、2,3又は4位置にあるヒドロキシ、メチル、塩素、又は臭素であり、
R4は、2,3又は4位置にある-OSO2Y基であり、
R5は、4’位置にある(CH3)2N-N=N基であり、
R6は、2’、3’又は5’位置にある水素、メチル、フッ素、塩素、又は臭素であり、
Yは、OH又はNH2であると共に、
総合分子(18)当たり、1つ又は2つの-N=N-N(CH3)2基及び1つ又は2つの-OSO2Y基が、芳香環のいずれかの環炭素に配置されることが条件となるジフェニル誘導体、及び、その塩、遊離酸、溶媒和物、並びに、これらの塩の溶媒和物及びこれらの遊離酸の溶媒和物が示される。
【0125】
二原子又は三原子基によって架橋されたもっとも好ましいジフェニル誘導体は、下記する化合物を含む。
【0126】
4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ヒドロキシ-2’-ソジオスルホオキシベンゾフェノン
【0127】
【化32】
【0128】
4-(3-3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ヒドロキシ-3’-ソジオスルホオキシベンゾフェノン
【0129】
【化33】
【0130】
4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-3’-ヒドロキシ-4’-ソジオスルホオキシベンゾフェノン
【0131】
【化34】
【0132】
4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ-3’-スルファモイルオキシベンゾフェノン
【0133】
【化35】
【0134】
4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ-ジフェニルメタン
【0135】
【化36】
【0136】
2-クロロ-4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ(ジフェニルスルホン)
【0137】
【化37】
【0138】
及びそれらの塩、遊離酸、溶媒和物及びこれらの塩の溶媒和物且つこれらの遊離酸の溶媒和物。
【0139】
特別な例として、4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ-ベンゾフェノンが参照される。
【0140】
【化38】
【0141】
化合物(18)の合成のための開始材料は公知のものであり、GB1371969によって記載された方法によって生成され、そこに記載されたタイプのヒドロキシトリアゼン誘導体(19)を、たとえば、下記する反応スキーム(21)において例として示されたような化学式(20)で示される最終製品に転換することによって、化合物(18)の合成に使用される。
【0142】
【化39】
【0143】
ここで、Yは化学式(18)に関する例において指摘された意味を有する。」
(e)「【0144】
本願発明は、さらに1分子あたり(i)少なくとも1つのジアルキルトリアゼニル基と、(ii)少なくとも1つのスルホオキシ基且つ/又はスルホモイルオキシ及びそれらの塩を含むジフェニル誘導体、且つ薬剤を製造するための、好ましくはエストロゲンに依存する組織の癌の、特に生殖器官の且つ黒色腫のエストロゲン受容体陰性及びエストロゲン受容体陽性腫瘍の治療のためのこれらの化合物の使用を提供する。
【0145】
本願発明の好ましい具体例において、本願発明の置換ジフェニル誘導体は、モノクローナル抗体と組み合わせて使用されるものである。
【0146】
本願発明によれば、腫瘍細胞における高い選択性を有するモノクローナル抗体を使用することが参照される(Discovery Medicine, Alain Beck, 「The next generation of Antibody-drug Conjugates Comes of Age」、2010年10月16日)。
【0147】
本願発明の置換ジフェニル誘導体は、モノクローナル抗体に結合され、腫瘍細胞に導入される。
【0148】
通常状態において、本願発明のジフェニル誘導体と前記モノクローナル抗体は、(抗体に対するジフェニル誘導体で)0.5:1~4:1の割合で使用される。
【0149】
モノクローナル抗体は、それ自体公知である。モノクローナル抗体は、1つのB-リンパ球に戻る細胞株から製造され、1つのエピトープ(たとえば腫瘍細胞)に向けられる免疫学的活性プロテインである。
【0150】
本願発明の化合物は、たとえば、乳癌(マーマカースィノマ)、子宮癌(エンドメトリウムカースィノマ、コーパスカースィノマ)、子宮頸癌、卵巣癌(オヴァリアンカースィノマ)、膣癌、前立腺癌、皮膚癌、黒色腫(マリグナメラノーマ)のような腫瘍の治療に使用することができる。
【0151】
本願発明は、さらに癌治療のために少なくともひとつのさらなる化学療法剤と併用した本願発明の化合物の使用を提供するものである。したがって、本願発明の化合物は、癌又は腫瘍の治療において公知の化学療法剤と併用して、且つ/又は化学治療の間化学療法剤と併用して使用されることできるものである。
【0152】
化学療法において使用される別の薬剤と併用して使用することができる化学療法剤の例は、たとえばキーワード「併用療法」(第23頁第1行目~第30頁大18行)で検索されるWO2007/061978において、又はUS2007/135424A1(段落153~171)に記載されている。」
(f)「【0153】
投与に関するこれらの方法について、活性化合物は、適当な投与形式において投与することができる。経口投与について、活性化合物をすぐに放出する公知の投与形式、且つ/又は、改良された形式において、たとえば錠剤(コートされていない錠剤及びコートされている錠剤、たとえば胃液に対して抵抗を有するコーティングを有する錠剤又はフィルムコート錠)、カプセル、糖衣錠、顆粒、丸薬、粉末、乳剤、懸濁液、及びエアロゾルが適している。
【0154】
非経口投与は、(静脈、動脈、心臓内、髄腔内、又は管腔内の)吸収段階、又は(筋肉内、皮下、皮内、経皮、腹腔内の吸収を含んだ吸収段階で生じる。非経口投与に最適な投与形式は、とりわけ溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥及び無菌粉末の形の注射若しくは点滴投与である。
【0155】
その他の投与方法についての最適な形式は、たとえば、(粉末、吸入具、噴霧器を含む)吸入薬剤、点鼻剤/溶液、噴霧、舌側に、舌下に又は口内に投与される錠剤又はカプセル、座薬、耳及び目薬、ペッサリー、水性懸濁液(ローション、振られる混合液)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、乳液、ペースト、粒状にされる粉末、又はインプラントである。
【0156】
活性化合物は、記載された投与形式に、それ自体公知の方法で変換されるものである。これは、不活性、無害な、薬学的に適当な補助剤を使用して効果を有するものである。これらは、それ自体、支持剤(たとえば微結晶性セルロース)、溶剤(たとえば液体ポリエチレングリコール)、乳化剤(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム)、分散液(たとえば、ポリビニルピロリドン、合成又は天然バイオポリマー(たとえばアルブミン)、安定剤(たとえばアスコルビン酸のような抗酸化物質)、着色剤(たとえば酸化鉄のような無機顔料)、又は香味料、且つ/又は香料を含むものである。
【0157】
非口径投与の場合、約1~40mg/Kgの量、好ましくは約2.5~15mg/Kgの量を投与することが適当である。経口投与の場合、その量は、体重の1Kg当たり約1~70mgであり、好ましくは約1~50mgである。
【0158】
それにもかかわらず、体重、投与方法、活性化合物に対する個々の対応、調合の種類及び投与する時点又は間隔に依存する上述した量から離れることも必要である。このように、ある場合には、上述した下限量を使用することが十分であると同時に、別の場合には、上述した上限量を使用することが十分である。相対的に大きい量の投与の場合、これらを一日にわたって数回に分けることが適当である。
【0159】
本願発明はさらに、少なくとも1つの薬理学的に許容範囲にあるキャリア、補助薬、又は溶剤とともに、本願発明に係る少なくとも1つの化合物を含む薬理学的な合成物を提供することにある。これらは、通常の薬理学的なキャリア、補助薬又は溶剤である。本が発明に係る薬理学的合成物は、たとえば、静脈、腹腔内、筋肉内、膣内、口内、皮膚、皮下、皮膚粘膜、経口、直腸、経皮、局所、皮内、胃内、又は皮内の投与であり、且つ、たとえば錠剤、タブレット、胃液に対する抵抗を有するタブレット、フィルムタブレット、コートタブレット、経口用抑制製剤、皮下又は(特に絆創膏のような)皮膚投与、デポー製剤、糖衣錠、プラグ、ゲル、軟膏、シロップ、吸入パウダー、顆粒、座薬、エマルジョン、分散液、マイクロカプセル、マイクロ製剤、ナノ製剤、リポソーム製剤、カプセル、胃液に対する抵抗を有するカプセル、粉末、吸入パウダー、微結晶質製剤、吸入スプレー、細粉、ドロップ、点鼻薬、鼻用スプレー、エアゾール、アンプル、溶液、ジュース、懸濁液、エマルジョン、点滴溶液、又は注射溶液等、の形で存在するものである。」
(g)「【実施例4】
【0281】
4.原子もしくは2原子基によって非架橋又は架橋されたジフェニル誘導体(18)
開始材料
例4.1: 3-メチル-4-ニトロ-4’-(3-メチル-二トロベンゾイルオキシ)ベンゾフェノール
【0282】
【化86】
【0283】
フェネトール122g(1mol)と、3-メチル-4-塩化ニトロベンゾイル(2mol)400gと、1,2-ジブロモエタン1500gとの混合物は、反応容器に配置される。塩化アルミニウム400gが(発熱のため)少しずつ15-20℃で、付加されると同時に冷却される。その反応混合物は、20℃~30℃、40℃~80℃で、それぞれ2時間段階的に撹拌される。
製造: 反応混合物を0℃まで冷却し、ゆっくりと氷1.6kgに導入する。それから、濃塩酸100mlを反応混合物に付加して撹拌し、停止させる。その上澄み溶液を移し、吸引によって固体生成物をろ過し、水で洗浄する。
アセトン400mlで、ろ過された残留物をスラリー状にし、0℃まで冷却し、吸引によってろ過して乾燥する。
精製:ニトロプロパンから再結晶化する。
【0284】
例4.2: 4-ヒドロキシ-3‘-メチル-4’-ニトロベンゾフェノン
【0285】
【化87】
【0286】
4-ニトロ-4‘-(4-ニトロベンゾイルオキシ)ベンゾフェノン(例4.1)322g(1mol)が、水1.3リットル、エタノール200ml、及び水酸化ナトリウム85gにおいて、固体が溶解するまで加熱される。
製造: この反応混合液は、活性炭/珪藻土を介して吸引で熱ろ過される。Onko0640が、濃塩酸120mlの追加によってろ過物から4-ニトロ安息酸とともに沈殿される。固体が、吸引でろ過され、水で洗浄される。ろ過残留物は、炭酸水素ナトリウム140g及び水900mlとともに70℃で1時間撹拌され、吸引で熱ろ過され、熱水4mlで洗浄され乾燥される。
【0287】
例4.3: 4-アミノ-3-メチル-4’-ヒドロキシベンゾフェノン
【0288】
【化88】
【0289】
4-ヒドロキシ-3’-メチル-4-ニトロベンゾフェノン(例4.2)が、エタノール200mlに溶解される。80℃で、水40mlと硫酸ナトリウム35gの溶液が、ゆっくり滴下で追加されると同時に撹拌される。それに続いて反応溶液が2時間環流される。
製造:反応溶液は、水1リットルに注ぎ、20℃まで冷却され、沈殿生成物が、吸引でろ過され、乾燥され、トルエンから再結晶化される。
【0290】
例4.4: 4-ヒドロキシ-4’-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)ベンゾフェノン
【0291】
【化89】
【0292】
4-アミノ-3-メチル-4‘-ヒドロキシベンゾフェノン57g(0.25mol)が、濃塩酸75ml及び水400mlからなる溶液に溶解される。水25mlと亜硝酸ナトリウム17.25gが、0~5℃の温度でゆっくりと滴下で付加されると同時に撹拌される。それから、このジアゾニウム塩溶液は、0~5℃の温度で、滴下により、炭酸ナトリウム75g、水150ml及び40%濃度水性ジメチルアミン溶液35gから生成される溶液に追加されると同時に撹拌される。その混合物は、1時間撹拌され、沈殿固形物が吸引でろ過され、乾燥され、n-ヘキサン/トルエンから再結晶化される。
【0293】
最終生成物
例4.5:4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ(ジフェニルスルホン)
【0294】
【化90】
【0295】
4-ヒドロキシ-4’-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-(ジフェニルルスルホン)4g(0.01mol)と重硫酸ナトリウム3.3g(0.15mol)が、ジメチルホルムアルデヒド20mlとテトラヒドロフラン25mlに混合され、室温で30時間撹拌される。それから、1N水性炭酸ナトリウム20mlが、この反応混合物に付加され、この混合物が撹拌され、固形物が吸引でろ過され、そしてこのろ過物が、必要とされる最小限の量の水に溶解され、活性炭を介してろ過され、そのろ過物が、ロータリーエバポレータで凝縮され、その残留物が、メタノール/水又は塩化ナトリウム溶液から再結晶化される。
下記するものが、同様の方法において調合される。
【0296】
例4.6: 4-(3,3-ジメチルトラゼニル-1)-2’-ソジオスルホオキシベンゾフェノン
【0297】
【化91】
【0298】
例4.7: 2,6-ジブロモ-4-ソジオスルホオキシ-4’-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-ベンゾフェノン
【0299】
【化92】
【0300】
例4.8: 2,6-ジメチル-4-ソジオスルホオキシ-4’-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-ベンゾフェノン
【0301】
【化93】
【0302】
例4.9: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシビフェニル
【0303】
【化94】
【0304】
例4.10: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ(硫化ジフェニル)
【0305】
【化95】
【0306】
例4.11: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ(ジフェニルスルホキシド)
【0307】
【化96】
【0308】
例4.12: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ソジオスルホオキシ(ジフェニルスルホン)
【0309】
【化97】
【0310】
例4.13:4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-スルファモイルオキシベンゾフェノン
【0311】
【化98】
【0312】
クロロスルホンアミド8.6g(0.075mol)が、0℃で、ジメチルアセトアミド100ml中に4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4’-ヒドロキシベンゾフェノン(例4.6)13.4g(0.05mol)が溶解した溶液に滴下で付加される。この混合物は、0℃で1時間撹拌され、それに続いて室温でさらに12時間撹拌される。飽和水性塩化アンモニウム溶液が、そこに付加され、その混合物が、酢酸エチルで抽出され、硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、溶剤が取り除かれる。その生成物は、シクロヘキサン/酢酸エチルから再結晶化される。
下記するものが、同様の方法において生成される。
【0313】
例4.14: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-2'-スルファモイルオキシベンゾフェノン
【0314】
【化99】
【0315】
例4.15: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4'-スルファモイルオキシ(ジフェニルスルホキシド)
【0316】
【化100】
【0317】
例4.16: 4-(3,3-ジメチルトリアゼニル-1)-4'-スルファモイルオキシ(ジフェニルスルホン)
【0318】
【化101】
」
4 判断
(1)判断の対象の発明について
本願発明のうち、本願発明1は、【化1】で示される化合物の発明であり、本願発明2は、【化2】で示される化合物の発明であり、本願発明3は、本願発明1又は2の化合物を製造する方法の発明であり、そして、本願発明4は、本願発明1又は2の化合物を含有する薬剤の発明であるといえる。
以下では、本願発明1又は2の化合物を含有する薬剤の発明である本願発明4について検討し、判断する。なお、本願発明4の薬剤は、本願発明1又は2の化合物を含有するものであるが、本願発明2の化合物は、本願発明1の【化1】で示される化合物に包含され、本願発明1の化合物を含有する薬剤を検討すれば、同時に本願発明2の化合物を含有する薬剤も検討したことになるので、以下では、本願発明4を、本願発明1の化合物を含有する薬剤として検討する。
(2)本願発明4に関する発明の詳細な説明の記載について
発明の詳細な説明には、本願発明4である本願発明1の化合物を含有する薬剤を使用することに関する記載としては、段落【0003】~【0006】に、トリアゼン置換ジフェニル誘導体が公知であり、トリアゼン誘導体が長年研究されたものの、副作用のため治療に用いることができない背景について記載されている(摘記(a)参照)。また、一般的な記載として、段落【0010】に、本願発明の新しいジフェニル誘導体は、各種腫瘍に対する抗癌剤として使用され、副作用がなく長期間の治療に最適であることが記載され(摘記(b)参照)、また、段落【0144】~【0152】には、各種腫瘍の治療に対して、本願発明のジフェニル誘導体とモノクローナル抗体や化学療法剤とを組み合わせて用いる使用方法が記載されている(摘記(e)参照)。さらに、段落【0153】~【0159】には、薬剤として使用する場合の用量や投与方法について一般的な記載がされている(摘記(f)参照)。
しかしながら、これらの記載は、本願発明1の化合物が、薬剤のうち一般的に抗癌剤として使用することが記載されているだけであって、薬理試験結果のデータと共に明示的に抗癌剤として使用することを記載したものではない。そして、化学物質の技術分野は、化学物質の化学構造とその化学物質の機能や特性との関係を理解することが困難な技術分野であり、上記のように本願の発明の詳細な説明に一般的に本願発明1の化合物が抗癌剤として使用できることが記載されていたとしても、実際に抗癌剤としての薬理試験方法及び薬理試験結果がデータと共に記載されていなければ、抗癌剤としての使用することが理解できるように記載されているとはいえないところ、上記本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1の化合物が薬剤のうち抗癌剤として使用した薬理試験方法及び薬理試験結果がデータと共に記載されていないから、本願の発明の詳細な説明には、本願発明1の化合物が薬剤として使用することが理解できるように記載されているとはいえない。
また、発明の詳細な説明には、本願発明1の具体的な化合物が、一般的な製造方法と共に記載され(摘記(c)(d)参照)、実施例として、一部の化合物についての具体的な製造方法及び具体的な化合物は記載されている(摘記(g)参照)が、これらの記載は、あくまで本願発明1の具体的な化合物及びその製造方法について記載したものであって、3R、6Rに広範な選択肢を有する本願発明1の化合物全体が薬剤として一定の有用性をもって使用する方法が記載がされているわけではない。
そして、本願出願時の技術常識をみても、トリアゼン誘導体が長年の研究でも副作用のために治療に用いることができなかったという技術背景を考慮すると、本願発明1の化合物が抗癌剤を含めた薬剤として使用できることが明らかであるといえない。したがって、本願発明4に対応した本願発明1の化合物が抗癌剤を含めた薬剤として使用することができることは、当業者であっても過度の試行錯誤を必要とするものであるといえる。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年1月30日付けの審判請求書において、本願発明1の化合物の使用方法について、本願の出願時においては、本願発明のベンゾフェノン化合物の効果を証明する完全な薬理試験データ等は有していなかったが、予備的な試験においてその効果の示唆があり、特定の化合物を選定できたこと、そして、予備的な試験の結果について確認し続けたデータを、平成28年9月6日付けの意見書において記載して、本願発明1の化合物は、副作用が非常に少なく、抗腫瘍効果を有する旨を主張しているので以下検討する。
(4)審判請求人の主張の検討
平成28年9月6日付けの意見書(以下「意見書」という。)には、本願発明1に含まれる化合物(平成29年1月30日付けの審判請求書によると、以下の化学構造を有する
4-スルホオキシ-4’-(3,3ジメチルトリアゼニル-1)ベンゾフェノンであるといえる。)(以下「化合物A」という。)を用いた薬理試験方法及び薬理試験結果がデータと共に記載されており(意見書第2頁第24行~第7頁グラフ5の下3行)、これらの試験結果をみると、本願発明1の一般式(18)で示される化合物の1つである化合物Aは、低い細胞毒性、抗腫瘍活性を有することが一応理解できる。
しかしながら、そもそも意見書には、この薬理試験結果の作成者及び作成日が記載されていないものが記載されており、意見書に記載された薬理試験結果のみから、本願出願時に化合物Aに関し抗癌剤として使用することが技術常識であったとはいえないことは明らかである。
また、上述したとおり、意見書における薬理試験結果の作成時期は不明であるが、その内容を検討をしてみると、審判請求人は審判請求書において、本願出願時には、予備的な試験により、本願発明1の化合物が、効果の示唆があることを把握し、予備的な試験の結果について確認の研究を続けた結果、効果を奏するデータを得て意見書に記載した、と説明している。したがって、意見書に記載された薬理試験結果は、本願出願時に得られていたと主張する予備的な試験の結果の後に研究を続けた結果、本願出願後に確認されたものであると解することができ、本願出願時に得られていたものとはいえない。
さらに、審判請求人が本願出願時に把握していたと主張する「予備的な試験」の「効果」が、本願明細書はもちろん、意見書や審判請求書にも示されていないのであるから、上記薬理試験結果をあらかじめ示されていた示唆に基づく裏付け記載として採用することはできない。また、審判請求人の主張のみから、本願出願時に本願発明1の化合物に関し薬剤として使用することが、すでに技術常識であったとはいえないことはいうまでもない。
そして、意見書に記載した薬理試験結果を根拠に、発明の詳細な説明に本願発明1の化合物が薬剤として使用することが記載されていると一応解したとしても、あくまで、本願発明1の化合物の一部である化合物Aについてだけの薬理試験結果が示されているにすぎず、化学物質の技術分野は、化学物質の化学構造とその化学物質の機能や特性との関係が理解することが困難な技術分野であることからすると、本願発明1で特定される化合物の全体に渡って薬剤として使用できることが理解できるとまではいえないから、発明の詳細な説明には、本願発明1で特定される化合物の全体に渡って、本願発明4の薬剤として使用することが理解できるように記載されているとはいえない。
(5)まとめ
したがって、本願の発明の詳細な説明には、当業者が本願発明4の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されたとはいえず、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
第5 むすび
以上のとおり、この特許出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-001274