審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2017-001085

電子機器

審判番号
2017-001085
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-118934外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年01月25日
審決日
2018年08月13日
公報発行日
2018年11月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .537-WZ (H01Q) / P18 .121-WZ (H01Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-118934「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日出願公開,特開2015-159623〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯・本願発明 本願は,2008年7月18日(優先権主張2007年7月18日,2008年2月26日)を国際出願日とする特願2009-523685号の一部を平成24年7月23日に分割した特願2012-162403号の一部を平成24年10月4日に分割した特願2012-221761号の一部を平成26年8月11日に分割した特願2014-163278号の一部を平成27年6月12日に分割した出願であって,平成28年7月14日付けで拒絶理由が通知され,平成28年9月23日付けで手続補正がなされ,平成28年11月4日付けで拒絶査定がされ,平成29年1月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正がなされ,当審により平成29年11月30日に平成29年1月25日付けの手続補正の却下の決定がされるとともに拒絶理由が通知され,平成30年1月25日に手続補正がなされ,平成30年3月26日に最後の拒絶理由が通知され,平成30年5月23日に手続補正がされたものである。 第2.平成30年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年5月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の目的 平成30年5月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は, 「送受信信号を処理する無線ICと, 機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と, を備えた電子機器であって, 前記無線ICはコイルに接続されており, 前記コイルは,前記ケース及び/又は前記金属部品の縁部または隅部の近傍に配置され,前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており, 前記ケース及び/又は前記金属部品はUHF周波数帯の高周波信号を送受信する放射板として機能すること, を特徴とする電子機器。」(以下「補正前発明」という。) から 「送受信信号を処理する無線ICと, 前記無線ICに接続されるコイルと, 機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と, を備えた電子機器であって, 前記コイルは,前記ケース及び/又は前記金属部品の縁部または隅部の近傍に配置され,前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルは,UHF周波数帯の共振周波数を有する共振回路の一部であり, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており, 前記ケース及び/又は前記金属部品は前記UHF周波数帯の高周波信号を送受信する放射板として機能すること, を特徴とする電子機器。」(以下「補正後発明」という。) と補正された。 本件補正は, (1)補正前発明において,電子機器は「送受信信号を処理する無線IC」と「機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品」を備えており,「前記無線ICはコイルに接続されて」いる構成に代えて,電子機器が「送受信信号を処理する無線IC」と「前記無線ICに接続されるコイル」と「機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品」を備えている構成とすること。 (2)補正前発明の「コイル」が,「UHF周波数帯の共振周波数を有する共振回路の一部」であること。 に変更するものである。 (1)の補正について,電子機器の構成要素として「コイル」が追加されたから,電子機器の構成を限定するものである。 (2)の補正について,「コイル」が,「UHF周波数帯の共振周波数を有する共振回路の一部」であることに限定するものである。 したがって,本件補正は,限定的減縮を行う補正である。 2.独立特許要件 そこで,補正後発明が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることが出来るかどうか)について検討する。 補正後発明の 「コイルは,前記ケース及び/又は前記金属部品の縁部または隅部の近傍に配置され,前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており,」 という構成は,明細書の段落【0107】-【0119】及び図62-図74に記載されている,第49実施例乃至第56実施例においてサポートされている構成である。 ここで,【0108】(下線は当審が付与。)には, 「本第49実施例である無線ICデバイスの動作原理は,図63に示すように,グランド電極181が図示しないリーダライタから発せられた電磁波を受信すると,ループ状電極183に電流が発生する。この電流により発生した磁界φが給電回路基板190のコイル191と磁界結合し,無線ICチップ5を動作させる。このとき,コイル191の片側にのみ磁界φが交差するように電磁結合モジュール1を配置することが好ましい。また,図65に示すように,給電回路基板190内にはコイル191に加えて整合回路/共振回路192を設けてもよい。」 と記載されているから,コイル191は,ループ状電極183に発生した電流による磁界φと磁界結合するためのコイルであって,コイル191に「加えて」整合回路/共振回路192を設けても良いことが記載されているから,「コイル単独」,あるいは「コイルに加えて共振回路を設ける」ことは記載されているものの,「コイル」が「共振回路の一部である」ことは記載されていない。 そして, 第50実施例について記載している段落【0110】に「他の構成は前記第49実施例と同様である。」と, 第51実施例について記載している段落【0112】に「他の構成及び作用は第49実施例と同様である。」と, 第52実施例について記載している段落【0113】に「本第52実施例の作用は前記第49実施例と同様であり,」と, 第53実施例について記載している段落【0114】に「他の構成及び作用は前記第49実施例と同様である。」と, 第54実施例について記載している段落【0115】に「他の構成及び作用は前記第49実施例と同様である。」と, 第55実施例について記載している段落【0116】に「他の構成及び作用は前記第49実施例及び第53実施例と同様である。」と, 第56実施例について記載している段落【0118】に「他の構成は前記第49実施例(図62参照)と同様である。」と, それぞれ記載されるように,第50実施例乃至第56実施例においても,同様である。 したがって,「コイルは,前記ケース及び/又は前記金属部品の縁部または隅部の近傍に配置され,前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており,」 という構成における「コイル」が,「UHF周波数帯の共振周波数を有する共振回路の一部」であることは,明細書に記載されていないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって,補正後発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.請求人の主張について, 請求人は,平成30年5月23日付けの意見書において, 「本願明細書段落0034及び図71の記載に基づいています。具体的には,本願明細書の段落0034の記載から,図71等のコイルも共振回路の一部であることが明らかです。」 と主張しているから,該主張について検討する。 まず,図71について記載した段落【0116】には,上記のとおり,「第49実施例と同様である。」と記載され,「第49実施例」には,コイル191に「加えて共振回路」を設けることは記載されているものの,「コイルが共振回路の一部」であることは記載されていない。 また,段落【0034】は図7に関連した「共振回路の第1例」についての記載であって,コイルであるインダクタンス素子L1,L2は共振回路の一部であると解されるものの,段落【0032】によれば,「外部電極19a(配線電極21a)と磁界的に結合」していて,「前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合」しているのではないから,別の構成を有するコイルについての記載であって,補正後発明における「コイル」が,「共振回路の一部」であるとは認められない。 したがって,請求人の主張は,採用することができない。 4.まとめ 本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成30年5月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成30年1月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「送受信信号を処理する無線ICと, 機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と, を備えた電子機器であって, 前記無線ICはコイルに接続されており, 前記コイルは,前記ケース及び/又は前記金属部品の縁部または隅部の近傍に配置され,前記ケース及び/又は前記金属部品の前記縁部または前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており, 前記ケース及び/又は前記金属部品はUHF周波数帯の高周波信号を送受信する放射板として機能すること, を特徴とする電子機器。」 2.当審の拒絶理由 一方,当審において平成29年11月30日付けで通知した拒絶理由の概要は,本願発明は,特開平11-25244号公報(以下「引用例1」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 3.引用例記載の発明 引用例1(下線は当審が付与。)には, 「【請求項1】 アンテナコイルを有する非接触データキャリアパッケージにおいて,前記アンテナコイルの周囲に該アンテナコイルの放射面と一部重ねて導電性部材を配置してなることを特徴とする非接触データキャリアパッケージ。」 「【0002】 【従来の技術】非接触データキャリアシステムは,物品等に取り付けられる非接触デーキャリアと呼ばれる応答器と,ホスト側に接続される質問器とで構成され,これら応答器と質問器との間で,磁気,誘導電磁界,マイクロ波(電波)等の伝送媒体を介して非接触で交信を行う点を特徴とする。 【0003】非接触データキャリアシステムの情報伝送方式には電磁結合方式,電磁誘導方式,マイクロ波方式,光通信方式等がある。これらの方式の中で,電磁結合方式,マイクロ波方式によるものは,質問器からの伝送信号のエネルギーを応答器の駆動電力として用いることができる。このため,電池を駆動源とする場合のように,電池の寿命が近付いてきたことによる応答能力の劣化や使用限界に至る心配がないという更なる利点を有している。」 「【0017】図1は本実施形態の非接触データキャリアパッケージの構成を示す平面図,図2はその断面図である。 【0018】これらの図において,1は非接触データキャリアの内部部品であり,この内部部品1は例えば樹脂被覆の施された銅線等からなるアンテナコイル2と,図5に示した応答器(非接触データキャリア)20の各機能部(送受信アンテナを除く)を内蔵したICチップが実装された基板3から構成される。この非接触データキャリアの内部部品1は,樹脂製フィルム4によって全面被覆が施された導電性シート5と重ね合わされ,さらに外装樹脂6によって全体を包囲するように一体化されている。 【0019】導電性シート5にはアンテナコイル2の放射面の外形に対応した形状の第1の切欠部5aが設けられており,この第1の切欠部5aからアンテナコイル2の放射面の中心部分のみが露出するように,非接触データキャリアの内部部品1と導電性シート5とを重ね合わせることで,アンテナコイル2の周囲にアンテナコイル2の放射面と一部重ねて導電性シート5を配置した構成の非接触データキャリアパッケージを実現している。 【0020】また,導電性シート5には第1の切欠部5aの他に,この第1の切欠部5aから導電性シート5の末端に亘る第2の切欠部5bが設けられている。 【0021】ここで,導電性シート5の材料としては,アルミニウム,銅,銀などを挙げることができるが,導電性に優れるものならば何でもよい。 【0022】樹脂製フィルム4は,導電性シート5の腐食防止のために導電性シート5を気密に封止するためのものである。その材料としては,密封性,耐薬品性に優れているポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミドフィルム樹脂等が挙げられる。 【0023】このように本実施形態の非接触データキャリアパッケージは,アンテナコイル2の周囲にアンテナコイル2の放射面と一部重ねて導電性シート5を配置した構成をとるものであり,このように構成したことにより,導電性シート5の面積,形状,厚さ,およびアンテナコイル2との位置関係等の各種パラメータを最適に選択することでアンテナコイル2の放射効率を高めることができ,交信距離を飛躍的に引き延ばすことが可能である。」 「【0025】 【実施例】次に,本発明の具体的な実施例を説明する。 【0026】(実施例1)図3,図4に示すように,直径0.07mmの銅線を用いて,内径10mm,外形18mm,厚さ1.2mmの円形コイルを作製しアンテナコイル2とした。次に,アンテナコイル2の両端を,記憶素子などの回路素子を実装した8mm角の基板3の端子にはんだ付けし,アンテナコイル2と回路素子を電気的,物理的に接合した。 【0027】一方,電気伝導性のあるシートとして,厚さ0.05mmのアルミ箔を46×76mmの長方形状に加工した後,一つのコーナから16×16mmの位置を中心とする半径6mmの円形の穴(第1の切欠部5a)を開け,さらにそのコーナから16×16mmの正方形部分を切り取って(第2の切欠部5b),こうして製作された導電性シート5をポリエチレンフィルム4により包囲した。 【0028】次に,アンテナコイル2の放射面の中心部を含む一部が円形穴(第1の切欠部5a)から露出するように両者を重ね合わせた後,全体を塩化ビニールシート6により包囲し,非接触データキャリアパッケージとした。 【0029】そして導電性シートを設けない点を除いて同一条件で作製された非接触データキャリアパッケージと本実施例の非接触データキャリアパッケージとで交信距離を比較したところ,導電性シートのパッケージの交信距離は210mmであったのに対して,本実施例のパッケージの交信距離は260mmまで交信距離が伸びた。」 【図3】 の記載がある。 【0002】及び【0003】によれば,「非接触データキャリアシステム」は,「マイクロ波」を介して非接触で交信を行うものを含むから,「マイクロ波を介して非接触で交信を行う非接触データキャリアシステム」が記載されているといえる。 【0018】によれば,内部部品1は,アンテナコイル2と応答器20の各機能部(送受信アンテナを除く)を内蔵したICチップが実装された基板3から構成されている。 また,ICチップと送受信アンテナであるアンテナコイル2が接続されていることは自明である。 さらに,内部部品1は導電性シート5と重ね合わされ,外装樹脂6によって全体を包囲されているから,導電性シート5は,外装樹脂6の内部,すなわち,非接触データキャリアパッケージの内部に配置されているといえる。 具体的な実施例が記載された図3と段落【0025】-【0029】を参照すれば, アンテナコイル2は,直径0.07mmの銅線を用いて,内径10mm,外形18mm,厚さ1.2mmの円形コイルを作製したものであり, 導電性シート5は,厚さ0.05mmのアルミ箔を46×76mmの長方形状から,一つのコーナから16×16mmの位置を中心とする半径6mmの円形の穴を開け,さらにそのコーナから16×16mmの正方形部分を切り取って製作されたものであり, アンテナコイル2の放射面の中心部を含む一部が円形穴から露出するように重ね合わせている。 すなわち,アンテナコイル2は導電性シート5の隅部の近傍に配置されており,アンテナコイル2の一部は,平面視で,導電性シート5に重なっていることが明らかである。 また,アンテナコイル2の両端は,記憶素子などの回路素子を実装した8mm角の基板3の端子にはんだ付けされているから,回路素子とアンテナコイル2が接続されていることは自明である。 さらに,導電性シート5をポリエチレンフィルム4により包囲し,アンテナコイルを重ね合わせた後,全体を塩化ビニールシート6により包囲し,非接触データキャリアパッケージとしているから,導電性シート5は,非接触データキャリアパッケージの内部に配置されているといえる。 そして,該実施例によれば,交信距離が伸びたことが記載されている。 上記によれば,段落【0017】-【0023】の記載は,図1及び図2について記載されているものの,その詳細な実施例が図3とともに段落【0025】-【0029】に記載されていると認められるから,図3と段落【0017】-【0023】の記載をもとに,引用発明を認定することができる。 したがって,引用例1には, 「マイクロ波を介して非接触で交信を行う非接触データキャリアシステムにおいて, 送受信アンテナを除く応答器20の各機能部を内蔵したICチップと, 非接触データキャリアパッケージ内部に配置された導電性シート5と, 前記導電性シート5の材料は,アルミニウム,銅,銀などであり, を備えた非接触データキャリアパッケージであって, 前記ICチップはアンテナコイル2に接続されており, 前記アンテナコイル2は,前記導電性シート5の隅部の近傍に配置され,前記導電性シート5は前記アンテナコイル2との位置関係等の各種パラメータを最適に選択することで前記アンテナコイル2の放射効率を高めることができ, 前記アンテナコイル2の一部は,平面視で,前記導電性シート5に重なっていること を特徴とする非接触データキャリアパッケージ。」(以下,「引用発明」という。) が記載されている。 4.本願発明と引用発明の対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「導電性シート5」は,アルミニウム,銅,銀などを材料としているから,本願発明の「金属部品」に含まれる。 引用発明の「非接触データキャリアパッケージ」は,本願発明の「電子機器」に含まれる。 引用発明の「アンテナコイル2」は,本願発明の「コイル」に相当する。 引用発明の「送受信アンテナを除く応答器20の各機能部を内蔵したICチップ」は,送信アンテナを除く機能を内蔵しているから,応答器20が送受信する送受信信号を処理しているICチップであるといえる。 引用発明の「非接触データキャリアパッケージ内部に配置された導電性シート5」は,本願発明の「機器内部に配置された金属部品」に含まれるから,「機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品」に含まれる。 引用発明の「アンテナコイル2は,導電性シート5の隅部の近傍に配置され」は,本願発明の「前記コイルは,前記金属部品の隅部の近傍に配置され」ているといえる。 引用発明の「アンテナコイル2は,導電性シート5に重なって」は,本願発明の「前記コイルのコイル導体の一部は,前記コイルのコイル軸が延びる方向から見たときに,前記金属部品に重なって」に含まれる。 引用発明のアンテナコイル2は,導電性シート5の隅部と重なっているから,アンテナコイル2と導電性シート5の隅部が磁気結合することは自明である。 すなわち,引用発明の「アンテナコイル2」は,「前記金属部品の前記隅部と磁気結合して」いるといえる。 引用発明の「アンテナコイル2の一部は,平面視で,導電性シート5に重なって」いることは,本願発明の「前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品に重なって」いることに含まれるから,「前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なって」いることに含まれる。 平成30年5月23日付けの意見書によれば,「放射板として機能する」ことは「放射効率を高める」ことであると解される。 そして,引用発明の「導電性シート5」は「アンテナコイル2との位置関係等の各種パラメータを最適に選択することでアンテナコイル2の放射効率を高めることができ」るから,アンテナコイル2の「放射板として機能している」といえる。 そうすると,引用発明の「導電性シート5」は,「マイクロ波を介して非接触で交信を行う非接触データキャリアシステム」における放射板として機能しているから「マイクロ波を送受信する」放射板として機能しているといえる。 よって,本願発明の「前記ケース及び/又は前記金属部品はUHF周波数帯の高周波信号を送受信する放射板として機能する」と,引用発明の「導電性シート5は前記アンテナコイル2との位置関係などの各種パラメータを最適に選択することで前記アンテナコイル2の放射効率を高める」は,いずれも「前記金属部品は所定の周波数帯の信号を送受信する放射板として機能する」点で共通する。 したがって,本願発明と引用発明は, 「送受信信号を処理する無線ICと, 機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と, を備えた電子機器であって, 前記無線ICはコイルに接続されており, 前記コイルは,前記金属部品の隅部の近傍に配置され,前記金属部品の前記隅部と磁界結合しており, 前記コイルの一部は,平面視で,前記金属部品及び/又は前記ケースに重なっており, 前記金属部品は所定の周波数帯の信号を送受信する放射板として機能すること, を特徴とする電子機器。」 で一致し, 一致点の,放射板が送受信する「所定の周波数帯の信号」について,本願発明は,「UHF周波数帯の高周波信号」であるのに対し,引用発明は,「マイクロ波」である点,で相違する。 5.相違点の検討 「マイクロ波」に関し, 「初歩から学ぶマイクロ波応用技術,財産法人産業創造研究所 マイクロ波応用技術研究会編,株式会社工業調査会発行,(2004年6月20日)」の1頁,13頁に 「マイクロ波(振動数3×108~3×1010)」, 「マイクロ波と呼ばれる電界と磁界の振動数の厳密な定義はないが,おおむねその周波数は10億(1×109)Hz以上,3兆Hz以下とされている。103はk(キロ),106はM(メガ),109はG(ギガ),1012はT(テラ)を用いるので,マイクロ波は1GHz以上,3THz以下の周波数範囲ということになる。なお,マイクロ波の下限周波数はきちっと決まっている訳ではなく,300MHz以上のUHF帯と呼ばれる周波数帯以上の周波数をマイクロ波と呼ぶこともある。また,マイクロ波周波数の中で,30GHz以上の周波数は特にミリ波と呼ばれる。」 と記載され, 「電子通信用語辞典,社団法人電子情報通信学会編,コロナ社発行,(昭和59年11月30日)」の769頁,235頁,327頁に 「マイクロ波 約1GHz~10GHzにわたる周波数に対する通称。(注)公式に定義されたものではなく,当初は極超短波の意味に用いられていた。」 「極超短波 ultra high frequency」 「周波数帯の区分 RRでは次のように区分し,呼称することとしている。 (中略) (注)2.記号に対するfull spellおよび日本語の通俗的な呼称は次のとおり。(中略)UHF:ultra high frequenty(極超短波)」 と記載されているから,公式な定義は無いものの,300MHzから30GHzの周波数,特に1GHzから10GHzの周波数をマイクロ波と呼ぶことが一般的であって,当初はUHFの意味に用いられていたことが技術常識である。 一方,UHF周波数帯は,300MHzから3GHzの周波数であることも技術常識である。 そうすると,当初はマイクロ波とUHFとは同じ意味であり,一般的な周波数としても,マイクロ波を1GHzから10GHzの周波数とした場合には,1GHzから3GHzの周波数がマイクロ波とUHF周波数帯で重なっており,マイクロ波が300MHzから30GHzの周波数を示す場合には,マイクロ波はUHF周波数帯のすべてを含んでいる。 すなわち,マイクロ波とUHF周波数帯は,一致あるいは一部が重なった周波数帯であるといえる。 そうすると,引用発明における「マイクロ波」に代えて「UHF周波数帯」で送受信すること,すなわち,「放射板」として「UHF周波数帯の高周波信号を送受信する」放射板とすることは,容易に想到しうることである。 6.請求人の主張について 「前記コイルは,UHF周波数帯の共振周波数を有する共振回路の一部であり,」に関し,「コイル」は「アンテナ」であるから,明細書の段落【0108】の「共振回路192」を設けない場合であっても,所定の共振周波数を有することが技術常識であることを前提として,本願発明における「コイル」が所定の共振周波数を有するのであれば,当該技術常識により引用発明の「アンテナコイル2」も当然に共振周波数を有する。 したがって,本願発明の「コイル」と引用発明の「アンテナコイル2」に違いは無いから,本願発明と引用発明の対比における相違点の判断は同じである。 7.まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-001085

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決356件(株式会社村田製作所)
  • 2025-014717拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンデンサアレイ
    同じ当事者: 株式会社村田製作所
  • 2025-005043拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)液晶ポリマーフィルム、導体層付き液晶ポリマーフィルム、及び、積層基板
    同じ当事者: 株式会社村田製作所
  • 2025-001579拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)ケース及びシール
    同じ当事者: 株式会社村田製作所
  • 2025-012443拒絶査定不服審判 / 2026-07-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)コイル部品
    同じ当事者: 株式会社村田製作所
  • 2025-011725拒絶査定不服審判 / 2026-07-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層セラミックコンデンサ
    同じ当事者: 株式会社村田製作所
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2019-014819拒絶査定不服審判 / 2021-02-18 / 請求不成立プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータおよびそれと通信する方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2018-003326拒絶査定不服審判 / 2019-12-18 / 請求不成立RFIDリーダに適用可能なアレイアンテナシステムおよびアルゴリズム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2018-001122拒絶査定不服審判 / 2019-03-20 / 請求不成立マルチバンドアンテナ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2020-700014異議申立 / 2020-06-30 / 請求成立(取消)車載用アンテナ装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-002156拒絶査定不服審判 / 2023-02-20 / 請求不成立積層型パッチアンテナ
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)134件(121・H01Q、537・H01Q)
  • 2025-006965拒絶査定不服審判 / 2026-05-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)身体装着用医療デバイスのためのバッテリアンテナ配置
    共通の審決分類: 121・H01Q、537・H01Q
  • 2023-006396拒絶査定不服審判 / 2024-11-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)アンテナ構造及び移動端末
    共通の審決分類: 121・H01Q、537・H01Q
  • 2022-009234拒絶査定不服審判 / 2024-04-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)ソフトウェア制御のアンテナ
    共通の審決分類: 121・H01Q、537・H01Q
  • 2022-005899拒絶査定不服審判 / 2022-12-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)螺旋アンテナ及び処理方法
    共通の審決分類: 121・H01Q、537・H01Q
  • 2021-011001拒絶査定不服審判 / 2022-10-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)電気回路および電気回路の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01Q、537・H01Q

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存