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特許無効審判

2016-800010

畦塗り機

審判番号
2016-800010
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2000-323145外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年01月29日
審決日
2016年12月28日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.113-YAA(A01B) / P1123.121-YAA(A01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3252138号発明「畦塗り機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第3252138号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3252138号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成 8年 3月 6日 原出願(特願平8-49354号) 平成12年10月23日 本件出願(特願2000-323145号) 平成13年11月16日 設定登録(特許第3252138号) 平成28年 1月29日 本件無効審判請求 平成28年 4月 8日 審判事件答弁書提出 平成28年 5月16日 審理事項通知(起案日) 平成28年 6月14日 請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成28年 6月28日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成28年 7月 5日 請求人より上申書提出 平成28年 7月12日 口頭審理 平成28年 8月30日 審決の予告(9月2日発送) 平成28年 9月23日 被請求人より訂正請求書及び上申書提出 平成28年11月 4日 請求人より弁駁書提出 平成28年  月  日 補正許否の決定( 月 日発送) 平成28年  月  日 審理終結通知( 月 日発送) 第2 訂正請求について 1 訂正請求の内容 本件無効審判事件の被請求人より平成28年9月23日に提出された訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするものである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体とを具備し、」とあるのを、 「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記側面修復体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付ける複数の修復羽根を備えている」とあるのを、 「前記側面修復体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部の修復して仕上げる複数の修復羽根を備えている」に訂正する。 (3)訂正事項3 発明の詳細な説明の【0007】に、「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体とを具備し、前記側面修復体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付ける複数の修復羽根を備えているものである。」とあるのを、 「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、前記側面修復体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部の修復して仕上げる複数の修復羽根を備えているものである。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に、「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体とを具備し、」とあるのを、 「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に、「前記側面修復体は、回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させた複数の修復羽根を備えている」とあるのを、 「前記側面修復体は、回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させ、この突出させた回転方向の後方側で畔塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げる複数の修復羽根を備えている」に訂正する。 (6)訂正事項6 発明の詳細な説明の【0008】に、「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体とを具備し、前記側面修復体は、回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させた複数の修復羽根を備えているものである。」とあるのを、 「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、前記側面修復体は、回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させ、この突出させた回転方向の後方側で畔塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦を側面部の修復して仕上げる複数の修復羽根を備えているものである。」に訂正する。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「側面修復体」の「回転」について、「水平状の回転軸による」ものに限定し、同じく発明特定事項である「畔塗り機」について、「側面修復体の縮径側端部に連接され、旧畦の上面を修復する上面修復体とを具備」するものに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について 本件特許明細書に、「【0023】・・・また、前記軸受体32の左右の軸受31には左右方向の回転軸33が回転自在に支持され、かつ、この回転軸33は右側に向かって水平状に突出されている。」、「【0024】つぎに、前記回転軸33には泥土を旧畦Bの上面部C及び旧畦Bの側面部Dに沿って塗り付けて旧畦Bを修復する畦塗り体34がボルト35及びナット36にて固着されている。前記畦塗り体34は、前記回転軸33に挿通して固着された軸受筒体37と、この軸受筒体37に一体に連結され前記旧畦Bの側面部Dを泥土を塗り付けて下方に向かって拡開したテーパー状に修復する円錐形状の側面修復体38と、この側面修復体38の縮径側端部に一体に連結され前記旧畦Bの上面部を泥土を塗り付けて水平状に修復する円筒状の上面修復体39と、を有して構成されている。」と記載されていることからみて、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について 訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「複数の修復羽根」について、「旧畦の側面部を修復して仕上げる」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について 本件特許明細書に、「【0048】・・・この複数の修復羽根47の突出部にて畦塗り用の泥土が旧畦Bの側面部Dに対して強く押し込まれて塗り付けられ、泥土が十分に締め固められ旧畦Bの側面部Dが順次修復進行される。」、「【0053】したがって、畦塗り後の畦は十分に締め固められ固く滑らかに整畦されるとともに、この畦塗り後の畦の表面部は整然と仕上げられて見栄えがよく、この畦は簡単に崩れたり、水漏れすることがない状態に整畦される。」と記載されていることからみて、訂正事項2は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について 訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、訂正事項3は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「側面修復体」の「回転」について、「水平状の回転軸による」ものに限定し、同じく発明特定事項である「畔塗り機」について、「側面修復体の縮径側端部に連接され、旧畦の上面を修復する上面修復体とを具備」するものに限定するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について 本件特許明細書に、「【0023】・・・また、前記軸受体32の左右の軸受31には左右方向の回転軸33が回転自在に支持され、かつ、この回転軸33は右側に向かって水平状に突出されている。」、「【0024】つぎに、前記回転軸33には泥土を旧畦Bの上面部C及び旧畦Bの側面部Dに沿って塗り付けて旧畦Bを修復する畦塗り体34がボルト35及びナット36にて固着されている。前記畦塗り体34は、前記回転軸33に挿通して固着された軸受筒体37と、この軸受筒体37に一体に連結され前記旧畦Bの側面部Dを泥土を塗り付けて下方に向かって拡開したテーパー状に修復する円錐形状の側面修復体38と、この側面修復体38の縮径側端部に一体に連結され前記旧畦Bの上面部を泥土を塗り付けて水平状に修復する円筒状の上面修復体39と、を有して構成されている。」と記載されていることからみて、訂正事項4は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について 訂正事項4は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 訂正事項5は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「複数の修復羽根」について、「突出させた回転方向の後方側で畔塗り用の泥土を旧畦に側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げる」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について 本件特許明細書に、「【0048】・・・この複数の修復羽根47の突出部にて畦塗り用の泥土が旧畦Bの側面部Dに対して強く押し込まれて塗り付けられ、泥土が十分に締め固められ旧畦Bの側面部Dが順次修復進行される。」、「【0053】したがって、畦塗り後の畦は十分に締め固められ固く滑らかに整畦されるとともに、この畦塗り後の畦の表面部は整然と仕上げられて見栄えがよく、この畦は簡単に崩れたり、水漏れすることがない状態に整畦される。」と記載されていることからみて、訂正事項5は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について 訂正事項5は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、上記訂正事項4及び5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、訂正事項6は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件特許発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項に特定される、次のとおりのものである(構成要件1A~2Eの分説は、請求人の主張に基づく。)。 「【請求項1】 1A 機枠と、 1B この機枠に回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるロータリーと、 1C このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、 1F この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、 1D 前記側面修復体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部の修復して仕上げる複数の修復羽根を備えている 1E ことを特徴とする畦塗り機。 【請求項2】 2A 機枠と、 2B この機枠に回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるロータリーと、 2C このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付けてこの旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体と、 2F この側面修復体の縮径側端部に連設され、旧畦の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、 2D 前記側面修復体は、回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させ、この突出させた回転方向の後方側で畔塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げる複数の修復羽根を備えている 2E ことを特徴とする畦塗り機。」 第4 当事者の主張 1 請求人の主張、及び提出した証拠の概要 請求人は,特許第3252138号の特許請求の範囲の欄に記載された請求項1及び2に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提示し、以下の主張を行った。 [無効理由] 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件出願の原出願日前に頒布された甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、請求項1及び2に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (第1回口頭審理調書参照。なお、平成28年11月4日付け弁駁書による請求の理由の補正及び甲第10号証に係る書証の申出は、平成28年  月  日付け補正許否の決定のとおり、許可しない。) [具体的理由] (1)要件1A 甲1において、ミッションケース(1)、伝動ケース(11)、ギヤボックス(9)、カバー体(8)、カバー体(16)及びギヤボックス(17)は、揚土ローター(B)及び羽根状回転体(C)とが回転自在に設けられたフレームないし本体であるから、要件1Aの「機枠」に該当する。よって、要件1Aは甲1に開示されている。 (請求書14頁9~22行) (2)要件1B ア 揚土ローター(B)は、傾斜状に相互に交差させた2枚の揚土羽根(b)(b)によって、畔際の土壌を揚土して案内板(14)に案内させながら畔側面(15a)および畔上面(15b)上に揚土できるように構成されている。畔際の土壌は、「泥土」に相当し、その畔際の土壌は、傾斜状に相互に交差させた2枚の揚土羽根(b)(b)によって、揚土ローター(B)よりも高い位置にある案内板(14)によって畔側面(15a)および畔上面(15b)上に案内され、揚土されることになる。そうすると、揚土ローター(B)は、「泥土を」「跳ね上げる」ことになる。 以上より、揚土ローター(B)は、要件1Bの「畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるロータリー」に該当するから、要件1Bは、本件発明と甲1発明との相違点ではない。 (陳述要領書6頁1~12行) イ 仮に、甲1の揚土ローター(B)が、「泥土を」「跳ね上げる」ものでなかったとしても、「泥土を」「跳ね上げる」「ロータリー」は、甲第3号証~甲第7号証に記載されているように、本件特許出願当時の周知技術である。また、甲1発明の「揚土ローター(B)」と、甲第3号証の「回転軸(15)」と「土跳ね爪(18)」、甲第4号証の「泥土移送装置5」、甲第5号証の「ロータリー耕うん装置1c」、甲第6号証の「ロータリーケース7」及び甲第7号証の「耕耘部11」は、いずれも作用及び機能が共通する。したがって、甲第3号証~甲第7号証に記載の周知技術を技術分野が共通する甲1発明に適用することは当業者にとって容易である。 (陳述要領書6頁15~16行、13頁10行~14頁7行) (3)要件1C ア 「円錐形状」について (ア)甲1において、羽根状回転体(C)は、畔上の揚土を畔側面(15a)に対し第5図に示すようにたたいてなでつけるから、畔の側面を修復する回転体である。そうすると、羽根状回転体(C)は、要件1Cの「側面修復体」に該当する。そして、第5図から明らかなとおり、羽根状回転体(C)は円錐形状であるから、要件1Cの「円錐形状の側面修復体」に該当する。 (請求書16頁16~末行) (イ)「円錐形状」には、厳密な円錐ではなく、円錐に似た形状も含まれるところ、本件特許明細書には、「円錐形状」に関し、「下方に向かって拡開したテーパー状に修復する円錐形状の側面修復体38」([0024])との記載及び図6が示されている。すなわち、「円錐形状」には、図6で示されるような、厳密には「円錐」といえないような形状であっても、畔側面を下方に向かって拡開したテーパー状に修復する形状であれば、「円錐形状」であるといえる。 一方、甲第1号証には、「該回転体(C)は、回動軸(19)に支杆(20)を介して複数の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成し、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけうるように構成する。」(3頁12行~18行)との記載、第1図、第2図及び第5図が示されている。 上記第5図によれば、羽根状回転体(C)は、一つの直線1のまわりに、これと交わるもう一つの直線1’を一まわりさせたときの1’の描く曲面によって構成されている。そして、第1図及び第5図から明らかなとおり、羽根状回転体(C)は、畔側面(15a)を下方に向かって拡開したテーパー状に修復する。本件特許の図6からも明らかなとおり、「円錐形状」とは、厳密な円錐である必然性はない。これらのことから、羽根状回転体(C)は、要件1Cの「円錐形状の側面修復体」に該当するから、要件1Cは、本件発明と甲1発明との相違点ではない。 (陳述要領書14頁23行~17頁9行) (ウ)仮に、被請求人の主張するように、羽根状回転体(C)が四角錐形状であれば、その角ばった形状によって揚土を掻き出してしまうことになるから、「揚土を畔側面上にたたくようになでつける」ことはできない。このように、揚土を畔側面上にたたくようになでつけるという羽根状回転体(C)の作用面から考えても、羽根状回転体(C)が「四角錐形状」であるとする被請求人の主張には理由がない。 (上申書5頁10行~6頁1行) イ 「塗り付けて」について 本件特許の明細書には、「この複数の修復羽根47は弾性体48からなり、この弾性体48の土押込み突部50は修復面42より旧畦Bの側面部D側の外方に向かって突出され側面修復体38の回転方向の後方に向かって突出されていることにより、この弾性体48からなる修復羽根47の弾性修復作用によって畦塗り用の泥土が旧畦Bの側面部Dに対して強く押し込まれて塗り付けられる。」([0049])と記載されている。この記載及び図4から、「塗り付ける」とは、回転方向の後方に向かって突出した複数の修復羽根47によって、泥土が旧畦に対してなすりつけられる作用を意味する。 一方、甲第1号証には、「回転体(C)が矢印(ハ)方向に回転しながら各羽根板(21)により、畔上の揚土を畔側面(15a)に対し第5図に示すようにたたいてなでつける。」、「該回転体(C)は、回動軸(19)に支杆(20)を介して複数の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成し、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけうるように構成する。」との記載、第3図及び第5図が示されている。 第5図の揚土は、「泥土」に相当する。そして、畔側面(15a)は、「旧畦の側面部」に相当する。また、「なでつける」とは、「なでて押しつける。」(乙第2号証)という意味を有し、「押しつける」とは、「強く押す。」(甲第8号証)という意味を有する。 上記の記載及び第3図から、羽根状回転体(C)の回転方向の後方に向かって突出した各羽根板(21)によって、揚上が畔側面(15a)になでて押しつけられれば、揚土は、当然、畔側面(15a)の表面になすりつけられることになる。よって、羽根状回転体(C)が、回転方向の後方に向かって突出した各羽根板(21)によって揚土を畔側面(15a)に対し第5図に示す態様でたたくようになでつけることは、作用面からみても、回転方向の後方に向かって突出した修復羽根47と同様の作用を有するから、「旧畦の側面部に塗り付けて」に相当する。 (陳述要領書18頁9行~20頁13行) ウ 「修復」について 「修復する」とは、「建造物などをつくろい直すこと。」(甲第8号証)であるところ、第5図に示すとおり、羽根状回転体(C)は、畔側面(15a)に土壌をたたくようになでつけることによって、下方に拡開した所定の形態の畔の状態になるように畔側面(15a)を繕い直す作用を有している。そうすると、「羽根状回転体(C)」は、畔側面(15a)を「修復する」に該当する。 (陳述要領書20頁14行~21頁1行) (4)要件1D 甲1において、羽根状回転体(C)には、回動軸(19)を介して複数の羽根板(21)が固設され、各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成されており、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけるのであるから、羽根状回転体(C)は、その回転方向の後方側に後退角を有する複数の羽根板(21)によって、泥土を畔側面に対してたたくようになでつける。たたくようになでつけることは、押し込んで塗り付けることと同義である。そうすると、複数の羽根板(21)を備える羽根状回転体(C)は、要件1Dの「回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付ける複数の修復羽根を備えている」といえる。 (請求書19頁19~末行) (5)要件1E 甲1には、「本考案は、畔塗り機における畔塗り整形装置に関する。」との記載があることから、要件1Eの「畦塗り機」が開示されている。 (請求書21頁2~4行) (6)要件2A~2C及び2E 要件2A~2C及び2Eで関しては、それぞれ本件発明1の要件1A~1C及び1Eと同一の要件であるから、甲1に開示されていることは、上記で述べたとおりである。 (請求書21頁20~末行) (7)要件2D 甲1において、羽根状回転体(C)には、回動軸(19)を介して複数の羽根板(21)が固設され、各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成されており、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけるのであるから、羽根状回転体(C)は、その回転方向の後方側に後退角を有して畔側面(15a)に突出させた各羽根板(21)によって、泥土を畔側面に対してたたくようになでつけることになる。そうすると、複数の羽根板(21)を備える羽根状回転体(C)は、要件2Dの「回転方向の後方側を旧畦の側面部側に突出させた複数の修復羽根を備えている」といえる。 (請求書22頁21行~23頁2行) [証拠方法] 甲第1号証:実願昭51-125984号(実開昭53-42911号)のマイクロフィルム 甲第2号証:東京地方裁判所 平成26年(ワ)第24958号事件 平成27年4月20日付け原告第5準備書面 甲第3号証:特開昭51-85918号公報 甲第4号証:特開昭51-96419号公報 甲第5号証:実願昭49-116915号(実開昭51-44618号)のマイクロフィルム 甲第6号証:特開昭51-91101号公報 甲第7号証:実公昭49-38178号公報 甲第8号証:広辞苑 第六版、株式会社岩波書店、2008年1月11日、334,335,394,395,1330,1331,2162,2163頁 甲第9号証:東京地方裁判所 平成26年(ワ)第24958号事件 平成26年9月24日付け訴状 2 被請求人の主張、及び提出した証拠の概要 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提示し、無効理由に対する以下の反論を行った。 (1)要件1A 甲1発明の揚土ローター(B)は、泥土を跳ね上げるものではない。 なお、周知技術(甲第3号証ないし甲第7号証)に基づいて揚土ローター(B)を「泥土を跳ね上げるもの」にすることが当業者にとって容易想到であるという請求人の主張に対しては、特に意見はない。 (陳述要領書4頁下から2行~5頁3行) (2)要件1B ア 甲第1号証の第1図及び第3図からみて、甲1発明の羽根状回転体(C)は、略平板状をなす4枚の羽根板(21)を備え、これら4枚の羽根板(21)は、平面視四角状をなすように配置されている。 それゆえ、羽根状回転体(C)は、「円錐形状」ではなく、「四角錐形状」である。 また、甲第1号証には、羽根状回転体(C)を円錐形状にする旨の記載も示唆も無いから、甲1発明において、羽根状回転体(C)の形状を「四角錐形状」から「円錐形状」に変更することは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (陳述要領書6頁1行~7頁5行) イ 請求人は、第5図を円錐形状の根拠としているが、「円錐」と「四角錐」とでその各形状を示す側面図は異ならないから、側面図である第5図は、羽根状回転体(C)が円錐形状であることの根拠にはなり得ない。 (陳述要領書10頁24行~11頁3行) (3)要件1C ア 「修復」とは、「建造物などの、傷んだ箇所を直して、もとのようにすること。」(乙第1号証)という意味を有する用語であるから、本件発明の「側面修復体」とは、「もとの新畦(所定の形態の畦)の状態になるように側面部を仕上げるもの」(修復=仕上げ)であると解される。 これに対し、甲1発明の羽根状回転体(C)は、整形板(D)による仕上げ(修復)の前処理として泥土をなでつけるものに過ぎず、側面部を修復(仕上げ)するものではなく、本件発明の「側面修復体」とは異なる。 また、甲第1号証には、羽根状回転体(C)で側面部を修復する旨の記載も示唆もなく、甲1発明において側面部を修復(仕上げ)するのは、整形板(D)の側面整形板(D1)である。 したがって、甲1発明において、泥土をなでつけうるように構成した羽根状回転体(C)を、本件発明の「側面修復体」の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 また、本件発明によれば、側面修復体とは別の側面整形板(D1)を用いることなく、「ロータリーにて跳ね上げられた畦塗り用の泥土を複数の修復羽根にて旧畦の側面部に対して強く押し込んで塗り付けることができ、旧畦の側面部に対して崩れ落ちないように泥土を十分に締め固めることができる(【0054】)という甲1発明では奏し得ない格別な作用効果を奏することができる。 (陳述要領書7頁13行~8頁末行) イ 請求人は、「『修復』とは、先に述べたとおり、『建造物などをつくろい直すこと。』(甲第8号証)という程度の意味を有するにすぎないのであって、本件発明1及び2における『修復羽根』や『側面修復体』は、畔を作り直す作用を有するものであれば足り、それ自体が修復の最終工程を担っている必然性はない。・・・羽根状回転体(C)が畔を作り直す作用を有していれば、『側面修復体』に該当する。」と主張する。 しかしながら、上述したとおり、「修復」とは、「建造物などの、傷んだ箇所を直して、もとのようにすること。」(乙第1号証)という意味を有する用語である。 また、本件明細書の【0053】には「・・・畦塗り後の畦の表面部は整然と仕上げられて見栄えがよく・・・」との記載があるところ、本件明細書において、側面修復体によって畦の表面部のうち側面部が仕上げられることが明記されている。 上記のことから、「修復」という文言を含む「側面修復体」及び「修復羽根」は、側面部を仕上げるものであって、畦塗り作業の最終工程を担うものである。 したがって、甲1発明の羽根状回転体(C)は、畦塗り作業の最終工程を担うものではないから、本件発明の「側面修復体」には該当しない。また同様に、甲1発明の羽根板(21)は、畦塗り作業の最終工程を担うものではないから、本件発明の「修復羽根」には該当しない。 (陳述要領書13頁3~21行) (4)要件1D ア 本件発明の「修復羽根」は、「側面修復体」と同様、「修復」という文言を含むため、「もとの新畦(所定の形態の畦)の状態になるように側面部を仕上げるもの」(修復=仕上げ)であると解される。 これに対し、甲1発明の羽根板(21)は、整形板(D)による仕上げ(修復)の前処理として泥土をなでつけるものに過ぎず、側面部を修復(仕上げ)するものではなく、本件発明の「修復羽根」とは異なる。 つまり、甲1発明の羽根板(21)は、本件発明の「修復羽根」とは異なり、側面部を修復するように泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けるものではない。 また、甲第1号証には、羽根板(21)によって側面部を修復する旨の記載も示唆もなく、甲1発明において側面部を修復(仕上げ)するのは、整形板(D)の側面整形板(D1)である。 したがって、甲1発明において、泥土をなでつけうるように構成した羽根状回転体(C)の羽根板(21)を、本件発明の「修復羽根」の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (陳述要領書9頁8~末行) イ 本件発明の「修復羽根」は、「修復」という文言を含むため、側面部を仕上げるものであって、畦塗り作業の最終工程を担うものである。 他方、甲1発明では、整形板(D)が畦塗り作業の最終工程を担っているから、羽根板(21)は、その最終工程の前処理として、泥土をなでつけるものに過ぎない。 仮に、甲1発明の羽根板(21)が、本件発明の「修復羽根」と同様、最終工程を担うものであるとしたら、整形板(D)の側面整形板(D1)の存在意義がない。 したがって、甲1発明の羽根板(21)は、畦塗り作業の最終工程を担うものではないから、本件発明の「修復羽根」には該当しない。 なお、甲1発明における「なでつける」とは、「なでて押しつける」(乙第2号証)の意味であるから、「“なでる”という手段方法によって、押しつける」という意味である。 そうすると、甲1発明の羽根板(21)は、泥土を“なでる”、つまり泥土と軽く接触することによって(強引に強く押し込む動作ではなく、軽く接触する動作によって)、泥土を側面部に押しつけるものである。 したがって、甲1発明の羽根板(21)は、「泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗りつける」ものではない。 よって、仮に、請求人がいうように「修復」が「仕上げ」(修復の最終工程)まで意味しなかったとしても、甲1発明の羽根板(21)は、本件発明1の「(泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗りつける)修復羽根」には該当しない。 (陳述要領書14頁1~末行) (5)本件訂正発明1と甲1発明について ア 本件訂正発明1と甲1発明との相違点 本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点1] 本件訂正発明1は、円錐形状の側面修復体が水平状の回転軸によって回転するものであって、この円錐形状の側面修復体の縮径側端部には上面修復体が連設されているのに対し、 甲1発明は、羽根状回転体(C)が鉛直状の回転軸(19)によって回転するものであり、また、上面整形板(D2)を有した整形板(D)は、羽根状回転体(C)とは分離して設けられており、羽根状回転体(C)とともに回転するものではない点。 [相違点2] 本件訂正発明1では、複数の修復羽根は、旧畦の側面部に対して泥土を押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げるものであるのに対し、 甲1発明では、複数の羽根板(21)は、整形板(D)による畔の仕上げの前処理として、畔側面に対して泥土をたたくようになでつけるものに過ぎず、仕上げるものではない点。 (上申書8頁3~末行) イ 相違点の検討 上述した相違点について検討すると、上記相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成は、甲第1号証のほか、甲第3号証ないし甲第7号証にも記載及び示唆がなく、当業者が容易に想到し得る構成ではない。 本件訂正発明1と甲1発明とでは、畦塗り機としての構造が大きく異なっていることから、甲1発明の基づいて、上記相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって容易想到でないことは明らかである。 (上申書4頁2~8行) [証拠方法] 乙第1号証:デジタル大辞泉 「修復/修覆 シュウフク」の項の写し 乙第2号証:デジタル大辞泉 「撫で付ける ナデツケル」の項の写し 乙第3号証:デジタル大辞泉 「撫でる ナデル」の項の写し 乙第4号証:大辞林 第三版 「押し込む・押込む おしこむ」の項の写し 乙第5号証:大辞林 第三版 「押し付ける・押付ける おしつける」の項の写し 第5 無効理由に対する当審の判断 1 各甲号証の記載事項について (1)甲第1号証 本件特許の原出願の出願前(以下、単に「出願前」という。)に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。 ア 「1.考案の名称 畦塗り機における畦塗り整形装置 2.実用新案登録請求の範囲 走行車により牽引される揚土ローターにより畔際の土壌を畔側に揚上するとともにその後方の整形板により畔塗りを行なう構成の畔塗り機において、前記揚土ローターと整形板との間に、揚土ローターによる畔側の揚土を畔側面上にたたくようになでつけることができる羽根状回転体を装設してなる畦塗り整形装置。」(明細書1頁2~11行) イ 「3.考案の詳細な説明 本考案は、畔塗り機における畔塗り整形装置に関する。 すなわち、走行車により牽引される揚土ローターにより畔際の土壌を畔側に揚土するとともにその後方の整形板により畔塗りを行なう構成の畔塗り機において、整形板により畔塗りをする前に、揚土ローターにより畔に揚上された泥土を畔側面にたたくようになでつけて、塗りつける泥土の密度を大にしてひび割れや水溶解がしないよう、かつ泥土が畔に良好に密着するようにして、確実に畔塗りができるよう提供するものである。」(明細書1頁12行~2頁3行) ウ 「第1図は畔塗り機全体の側面図を示し、前方における走行車(A)は、ミツシヨンケース(1)の下部両側に両側車輪(2)(2’)の車軸部(3)(3’)を延設し、ミツシヨンケース(1)の前方にエンジン(E)を搭載するとともに機体後方にハンドル(4)を延出して構成する。 前記ミツシヨンケース(1)後部のヒツチ(5)にはヒツチ体(6)を介してステー(7)を連設し、右側車輪(2)の後方には前方下部に開口(8’)を設けるとともに下方および右側方を開放したカバー体(8)を配設して、該カバー体(8)の上部に固設したギヤーボツクス(9)を前記ステー(7)の右端部に連結体(10)を介して連設し、前記ミツシヨンケース(1)からギヤボツクス(9)には伝動ケース(11)を伝動連結して構成する。 前記ギヤボツクス(9)内からカバー体(8)の内方に垂直の回転軸(12)を垂設して、該回転軸(12)には揚土ローター(B)を連結するが、該揚土ローター(B)は、回動軸(13)の周囲に2枚の揚土羽根(b)(b)を傾斜状に相互に交差させて1組として取付けるとともに、軸方向に複数組を取付けて構成し、該揚土ローター(B)が畔際の土壌を揚土して上部側方の案内板(14)に案内させながら畔側面(15a)および畔上面(15b)上に揚土できるように構成する。 また、カバー体(8)の後部には右側方を開放するカバー体(16)を連設し、該カバー体(16)の上部に固設したギヤボツクス(17)には前記ギヤボツクス(9)から伝動ケース(18)を伝動連結し、ギヤボツクス(17)内からカバー体(16)の内方には回動軸(19)を垂設して、該回動軸(19)には羽根状回転体(C)を装設するが、該回転体(C)は、回動軸(19)に支杆(20)を介して複数の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成し、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけうるように構成する。 (D)は整形板を示し、該整形板(D)は、畔側面(15a)上に泥土を塗る側面整形板(D1)と、畔上面(15b)上に泥土を塗る上面整形板(D2)とからなり、上面整形板(D2)を支持体(22)を介して上面(審決注:「上面」は「側面」の誤記と認める。)整形板(D1)に取付ける。」(明細書2頁5行~4頁3行) エ 「しかして、畔塗りに際し、右側車輪(2)を畔際にそわせて走行車(A)を矢印(イ)方向に前進させると、該走行車(A)により牽引されて矢印(ロ)方向に回転する揚土ローター(B)が畔際の泥土を揚上して案内板(14)に案内させながら第4図に示すように畔上に揚土する。 次いで追従する回転体(C)が矢印(ハ)方向に回転しながら各羽根板(21)により、畔上の揚土を畔側面(15a)に対し第5図に示すようにたたいてなでつける。 その後に追従する整形板(D)は、回転体(C)により脱水されて密着するようなでつけられた畔側面(15a)上に対し側面整形板(D1)でもつて、また、上面整形板(D2)により畔上面(15b)上に第6図に示すように塗り整形を行なつて畦塗りを行なうことができる。」(明細書4頁7行~5頁2行) オ 第3図、第5図は以下のとおり。 第3図(の左半分) 第5図 カ 第3図をみると、羽根板(21)は、回動軸(19)に4枚固設されており、また、各羽根板(21)は、その回転方向後方側に向かって、回転中心方向に彎曲していることがわかる。 キ 上記アないしカからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「前方における走行車(A)のミツシヨンケース(1)後部のヒツチ(5)にはヒツチ体(6)を介してステー(7)を連設し、右側車輪(2)の後方にカバー体(8)を配設して、該カバー体(8)の上部に固設したギヤーボツクス(9)を前記ステー(7)の右端部に連結体(10)を介して連設し、前記ミツシヨンケース(1)からギヤボツクス(9)には伝動ケース(11)を伝動連結して構成し、 前記ギヤボツクス(9)内からカバー体(8)の内方に垂直の回転軸(12)を垂設して、該回転軸(12)には揚土ローター(B)を連結するが、該揚土ローター(B)は、回動軸(13)の周囲に2枚の揚土羽根(b)(b)を傾斜状に相互に交差させて1組として取付けるとともに、軸方向に複数組を取付けて構成し、該揚土ローター(B)が畔際の土壌を揚土して上部側方の案内板(14)に案内させながら畔側面(15a)および畔上面(15b)上に揚土できるように構成し、 また、カバー体(8)の後部には右側方を開放するカバー体(16)を連設し、該カバー体(16)の上部に固設したギヤボツクス(17)には前記ギヤボツクス(9)から伝動ケース(18)を伝動連結し、ギヤボツクス(17)内からカバー体(16)の内方には回動軸(19)を垂設して、該回動軸(19)には羽根状回転体(C)を装設するが、該回転体(C)は、回動軸(19)に支杆(20)を介して4枚の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有し、回転方向後方側に向かって、回転中心方向に彎曲するようにして構成し、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけうるように構成し、 整形板(D)は、畔側面(15a)上に泥土を塗る側面整形板(D1)と、畔上面(15b)上に泥土を塗る上面整形板(D2)とからなり、上面整形板(D2)を支持体(22)を介して側面整形板(D1)に取付けられることにより、 整形板により畔塗りする前に、揚土ローターにより畔に揚上された泥土を畔側面にたたくようになでつけて、塗りつける泥土の密度を大にしてひび割れや水溶解がしないよう、かつ泥土が畔に良好に密着するようにして、確実に畔塗りができるよう提供する、畦塗り機。」 (2)甲第3号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 「原動機(4)を始動すればこの軸(5)にギヤー(6),チエーンベルト(7)を経て変速ギヤー(8)の入力軸(9)に設けられるギヤー(10)に伝動し、一方の出力軸(11)に設けられるギヤー(12)、チエーンベルト(13)を介してギヤー(14)に伝動しこの回転軸(15)の回転によりこの回転軸(15)に固設されている多数の土跳ね爪(18)が田の土壌(ロ)を掻き起し第4図に示す状態に所定の畦畔位置ラインに沿え縦方向に土壌(ロ)を順次飛散しこれを堆積せしめるものである。」(2頁左上欄4~12行) (3)甲第4号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 「前記泥土移送装置5は、第2図に示す背面視において、上端側を畦畔Aから遠ざかる傾斜状に配設される回転軸6の下端に設けられた回転羽根7で、圃場の泥土を横側方(畦畔A側)へカバー15で案内しながら飛散放出し、引続き上板8で畦畔Aの上部を、側板9で畦畔Aの側部を摺接しながら均平整形するように構成されている。」(1頁右下欄末行~2頁右上欄7行) (4)甲第5号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている 「耕うん装置1cを回転させながら農用トラクターを前進させると、耕うん装置1cの両側部の螺旋ローター2により内側後方へ跳ね飛された土および、耕うん装置1cの中央部の耕うん爪(図面省略)により耕起された土は、共に案内板部3aを通つて畦成形部3bに流れ、畦成形部3bで畦が成形される。」(明細書3頁3~9行) (5)甲第6号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 「前記耕耘装置5は、本機4からの動力がロータリーケース7を介して伝達され、このロータリーケース7の両側へ突設横架される耕耘軸8の回転に伴つて耕耘軸8に付設された耕耘爪としての畦盛爪9・・で耕耘土盛りするように構成されている。そして、この畦盛爪9・・は、同一横一側方への土はね出し作用を有するように構成並置されるとともに、土はね出し方向A最外側部に配置される畦盛爪9’のみは、前記土はね出し方向Aと逆方向に土はね出し作用を有すべく構成配置されている。」(2頁左上欄2行~12行) (6)甲第7号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「伝動ケース5の下端には、伝動ケース5の両側方から軸9を突出して、その軸9に耕耘爪10を配列植設して耕耘部11を構成し、かつ、耕耘部11の左右上方位置には、第3図に示すように、中央部Pが高位に両外側部に至るに従つて低位に位置するように構成した耕耘カバー12が固着している。」(2欄15~21行) イ 「あらかじめ耕耘部11で畦立された畦の両肩部Aは第4図に示すように跳ね上げられた土が堆積して壁aが形成されるため、スクレパー18で肩部Aの壁aを削りとる状態にターンバツクル19を伸縮調節してセツトする。」(2欄35行~3欄2行) 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 ア その構成・機能からみて、甲1発明の「伝動ケース(11)」,「ヒッチ体(6)」,「ステー(7)」,「カバー体(8)」,「ギヤーボックス(9)」,「連結体(10)」,「カバー体(16)」,「ギヤボツクス(17)」及び「伝動ケース(18)」をまとめた構成は、本件特許発明1の「機枠」に相当し、同じく「揚土ローター(B)」,「羽根状回転体(C)」及び「整形板(D)」をまとめたものは、「畦塗り機」に相当する。 また、甲1発明の「揚土ローター(B)」,「土壌」と「泥土」,「畔側面(15a)」及び「畔上面(15b)」は、それぞれ、本件特許発明1の「ロータリー」,「泥土」,「旧畦の側面部」及び「旧畦の上面部」に相当する。 イ 甲1発明の「揚土ローター(B)」は、「回動軸(13)の周囲に2枚の揚土羽根(b)(b)を傾斜状に相互に交差させて1組として取付けるとともに、軸方向に複数組を取付けて構成」され、「畔際の土壌を揚土」するものであるから、本件特許発明1の「ロータリー」と同様に、「畦塗り用の泥土を切削」するものである。 また、甲1発明の「揚土」することと、本件特許発明1の「跳ね上げ」ることとは、「揚土」することで共通するから、甲1発明の「ギヤボツクス(9)内からカバー体(8)の内方に垂直の回転軸(12)を垂設して、該回転軸(12)に」「連結」され、「回動軸(13)の周囲に2枚の揚土羽根(b)(b)を傾斜状に相互に交差させて1組として取付けるとともに、軸方向に複数組を取付けて構成し、」「畔際の土壌を揚土」する「揚土ローター(9)」と、本件特許発明1の「この機枠に回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるロータリー」とは、「この機枠に回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して揚土するロータリー」で共通する。 ウ 甲1発明において、「ギヤボツクス(9)内からカバー体(8)の内方に垂直の回転軸(12)を垂設して、該回転軸(12)には揚土ローター(B)を連結」し、「また、カバー体(8)の後部には右側方を開放するカバー体(16)を連設し、該カバー体(16)の上部に固設したギヤボツクス(17)」「内からカバー体(16)の内方には回動軸(19)を垂設して、該回動軸(19)には羽根状回転体(C)を装設」していることから、甲1発明の「羽根状回転体(C)」は、「揚土ローター(B)」の後方に位置し、ギヤボックス(17)に回転自在に設けられることが明らかである。 甲1発明の「垂設し」た「回動軸(19)に」「装設した」「羽根状回転体(C)」「が、泥土を畔側面(15a)上に対したたくようになでつけうるように構成した」ことと、本件特許発明1の「畔塗り用の泥土を水平状の回転軸による回転により旧畔の側面部に塗り付け」ることとは、「畔塗り用の泥土を回転軸による回転により旧畔の側面部に塗り付け」ることで共通する。 甲1発明の「羽根状回転体(C)」と、本件特許発明1の「側面修復体」とは、「側面体」で共通する。 そうすると、上記イに記載した点も加味して、甲1発明の「羽根状回転体(C)」と、本件特許発明1の「側面修復体」とは、「このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて揚土された畔塗り用の泥土を回転軸による回転により旧畔の側面部に塗り付ける側面体」で共通する。 エ 甲1発明の「上面整形板(D2)」は、「畔上面(15b)上に泥土を塗る」ことから、畔上面(15b)を修復するものであって、また、水平状に上面を成形することは明らかである。よって、甲1発明の「畔上面(15b)上の泥土を塗る上面整形板(D2)」は、本件特許発明1の「旧畔の上面部を水平状に修復する上面修復体」に相当する。 オ 上記ウからみて、甲1発明の「羽根状回転体(C)」の「回転方向にも後退角を有」する「4枚の羽根板(21)」と、本件特許発明1の「回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げる複数の修復羽根」とは、「回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畔の側面部に対して塗り付ける複数の羽根」で共通する。 カ 上記アないしオからみて、本件特許発明1と甲1発明とは、 「機枠と、この機枠に回転自在に設けられ、畦塗り用の泥土を切削して揚土するロータリーと、 このロータリーの後方に位置するように前記機枠に回転自在に設けられ、前記ロータリーにて揚土された畦塗り用の泥土を回転軸による回転により旧畦の側面部に塗り付ける側面体と、旧畔の上面部を水平状に修復する上面修復体とを具備し、 前記側面体は、回転方向の後方側で畦塗り用の泥土を旧畦の側面部に対して塗り付ける複数の羽根を備えている畦塗り機。」において一致し、以下の点で相違する。 相違点1:ロータリーが、本件特許発明1は、泥土を跳ね上げるのに対し、甲1発明は、泥土を揚土するものの跳ね上げるものではない点。 相違点2:側面体が、本件特許発明1は、水平状の回転軸により回転し、旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体であって、泥土を押し込んで塗り付けてこの旧畦の側面部を修復して仕上げる複数の修復羽根を備えているのに対し、甲1発明は、水平状ではなく垂設した回転軸により回転するものであって、さらに、旧畦の側面部を修復する円錐形状の側面修復体であって、その修復羽根が泥土を旧畦の側面部に対して押し込んで塗り付けてこの旧畦を修復して仕上げるものか不明な点。 相違点3:上面修復体が、本件特許発明1は、側面修復体の縮径側端部に連設されるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点。 (2)判断 上記相違点1ないし3について検討する。 ア 相違点1について (ア)まず、請求人は、「要件1Bは、本件発明と甲1発明との相違点ではない。」(上記「第3 1(2)ア」参照。)と主張する。 しかし、甲第1号証には、「該揚土ローター(B)が畔際の土壌を揚土して上部側方の案内板(14)に案内させながら畔側面(15a)及び畔上面(15b)上に揚土できるように構成」と記載されているものの、この記載からは、土壌の位置を上方に移動させる程度しか読み取ることができず、土壌を「跳ね上げる」という動作を意味するとは認められない。 よって、甲第1号証には、「泥土を跳ね上げる」ことは記載されておらず、相違点1は実質的な相違点である。 (イ)請求人は、「泥土を跳ね上げるロータリーは、甲第3号証~甲第7号証に記載されているように、本件特許出願当時の周知技術であり、当該周知技術を技術分野が共通する甲1発明に適用することは当業者にとって容易である。」(上記「第3 1(2)イ」参照。)とも主張する。 甲第3号証~甲第7号証をみると、それぞれ、畦塗り部材の前方に設けられ、土を跳ね上げているローターが記載されており、当該ローターは、本件特許の原出願の出願前に周知技術であったことがわかる。そして当該周知技術は、甲1発明と同じく、畦塗り部材の前方に位置し、土を畔側に移動させる機能を有していることから、甲1発明の「揚土ローター(B)」に、上記周知技術である土を跳ね上げるものに替えることは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、被請求人は、「周知技術に基づいて揚上ローター(B)を「泥土を跳ね上げるもの」にすることが当業者にとって容易想到であるという請求人の主張に対しては、特に意見はない。」(上記第2 2(1)」参照。)と、回答している。 イ 相違点2について (ア)まず、相違点2に係る「側面修復体」が「水平状の回転軸により回転」することについて検討すると、畦塗り機の側面修復体を、水平状の回転軸により回転させることは、本件特許の出願前に、公知または周知の技術である。 しかしながら、甲1発明の「羽根状回転体(C)」は、「垂設し」た「回転軸(19)に支杆(20)を介して4枚の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有し、回転方向後方側に向かって、回転中心方向に彎曲するようにして構成し」ていることから、「畔側面(15a)上に対してたたくようになでつけ」る作業は、畔の側方から行うのであるが、上記周知の水平状の回転軸に替えると、上記作業は畔の上方から行うこととなって、「羽根状回転体(C)」の元々の作業が変わってしまうこととなる。 したがって、上記回転軸の方向が単に相違するのみならず、「羽根状回転体(C)」の全体構造及び作業工程にまで影響することとなるから、甲1発明の回転軸(19)を水平状とすることは、当業者にとって困難というべきである。 よって、甲1発明の「羽根状回転体(C)」の回転を、垂設した回転軸によるものから、水平状の回転軸によるものに替えることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)また、相違点2に係る「側面修復体」の「修復羽根」が「旧畦を修復して仕上げる」ことについても検討すると、甲1発明において、「羽根状回転体(C)」は、「整形板により畔塗りする前に、揚土ローターにより畔に揚上された泥土を畔側面にたたくようになでつけて、塗りつける泥土の密度を大にしてひび割れや水溶解がしないよう、かつ泥土が畔に良好に密着するようにして」いることから、甲1発明の「羽根状回転体(C)」は、畔側面の形状に大まかに形成し、かつ、その泥土もある程度締め固めているものと認められる。そうすると、甲1発明の「羽根状回転体(C)」は、畔の側面の形成において、その工程全体のある程度の部分を占めており、実質的に、畔の修復作業を行っているといえる。 しかしながら、「仕上げる」ことは、修復作業の最終工程を意味するものと認められるところ、甲1発明において、「羽根状回転体(C)」による作業の後に、「畔側面(15a)上に泥土を塗る側面整形板(D1)と、畔上面(15b)に泥土を塗る上面整形板(D2)からな」る「整形板(D)」による作業が続いており、その作業の順序と内容からすると、「整形板(D)」による作業が「仕上げる」ことにあたるから、「羽根状回転体(C)」による作業は、「修復」することであるものの、「仕上げる」ことにはあたらない。 そして、甲1発明の「羽根状回転体(C)」を「仕上げる」作業に用いるには、上記「整形板(D)」を省いた上で、「たたくようになでつける」作用をする「羽根状回転体(C)」の構造を替える必要があることから、甲1発明の「羽根状回転体(C)」を「仕上げる」作業に用いることは、当業者が容易になし得たことともいえない。 (ウ)以上のとおり、少なくとも、相違点2に係る「側面修復体」が「水平状の回転軸により回転」すること、及び「側面修復体」の「修復羽根」が「旧畦を修復して仕上げる」ことは、甲1発明が備えるものではなく、かつ当業者が容易になし得たこととはいえないことから、相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 相違点3について 甲1発明の「羽根状回転体(C)」は、「垂設し」た「回転軸(19)」に「装設」されており、その「各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し」ている。そして、畔はその断面形状が台形であるから、「羽根状回転体(C)」の縮径側端部は、その下端にあたることとなり、この「羽根状回転体(C)」の下端に「上面整形板(D2)」を連設することはあり得ない。 また、「羽根状回転体(C)」に対して、回転するものではない「上面整形板(D2)」を連設することは、構造上、極めて困難なことである。 よって、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 3 本件特許発明2について 本件特許発明2は、実質的に、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、かつ「複数の修復羽根」について、「回転方向の後方側を旧畔の側面部側に突出させ」たことに限定するものである。 そうすると、本件特許発明1が、上記2で説示したとおり、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2も、同様に、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、当業者が甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、審判請求人が主張する無効理由及び証拠によって本件特許の請求項1及び2に係る発明を取り消すことはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-800010

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