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特許無効審判

2022-800003

作業機

審判番号
2022-800003
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2016-141321
登録番号
6285990
請求日
2022年01月28日
審決日
2024年03月29日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】松山 株式会社
  • 【請求人代理人】樺澤 聡
  • 【請求人代理人】山田 哲也
  • 【被請求人】小橋工業 株式会社
  • 【被請求人代理人】高橋 雄一郎
  • 【被請求人代理人】林 佳輔
  • 【被請求人代理人】望月 尚子
  • 【被請求人代理人】阿部 実佑季
  • 【被請求人代理人】福永 健司
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 前川 慎喜
  • 審判官 住田 秀弘
分類
P1113.111-Y (A01B) / P1113.112-Y (A01B) / P1113.121-Y (A01B) / P1113.152-Y (A01B) / P1113.161-Y (A01B) / P1113.536-Y (A01B) / P1113.537-Y (A01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第123条、特許法第36条、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第123条第1項第6号、特許法第2条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第6285990号発明「作業機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 被請求人は、平成27年9月4日に、発明の名称を「作業機」とする特願2015-174637号を特許出願(優先権主張平成27年8月12日。以下、「本件優先日」ということがある。)し、平成28年3月10日に、その一部を新たな出願とした特願2016-46843号を特許出願し、平成28年7月19日に、さらにその一部を新たな出願とした特願2016-141321号を特許出願し、平成30年2月9日に、特許庁から特許第6285990号(以下「本件特許」という。)として設定登録を受けた。 これに対して、請求人から令和4年1月28日付で請求項1に係る発明についての特許に対して、無効審判の請求がなされたところ、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年 1月28日 :審判請求書・検証申出書の提出 同年 4月22日 :無効審判答弁書の提出 同年 8月26日 :上申書(1)の提出[被請求人] 同年 8月30日 :上申書の提出[請求人] 令和 5年 3月16日付け:審理事項通知 同年 3月27日 :上申書(2)の提出[請求人] 同年 4月25日 :口頭審理陳述要領書の提出[請求人] 同年 5月11日 :口頭審理陳述要領書の提出[被請求人] 同年 5月24日 :上申書(3)の提出[請求人] 同年 5月24日 :第1回口頭審理 以下、請求人提出の審判請求書、口頭審理陳述要領書、令和4年8月30日付け上申書、令和5年3月27日付け上申書(2)、令和5年5月24日付け上申書(3)を、それぞれ、 「請求書」、「請求人陳述要領書」、「請求人上申書1」、「請求人上申書2」、「請求人上申書3」といい、 被請求人提出の無効審判答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書を、それぞれ、 「答弁書」、「被請求人陳述要領書」、「被請求人上申書1」ということがある。 また本件特許に係る出願の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と合わせて「本件明細書等」ということがある。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」ということがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。 (A~Iの分説は、請求人による。以下、それぞれ、「構成G」などということがある。) 「【請求項1】 A 走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、 B 前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、 C 前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、 D 前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、 E 前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有し、 F 前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 G 前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、 H 前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにすることを特徴とする I 作業機。」 第3 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、 特許第6285990号発明の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、 審判費用は被請求人の負担とする、 との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(請求書、請求人陳述要領書、請求人上申書1ないし3)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証を提出している。 〔無効理由〕 (1)無効理由1(新規性、進歩性) 本件発明は、本件特許の原出願の優先日前に公然知られた発明又は公然実施された検甲第1号証に係る発明と同一であるから、特許法第29条第1項第1号・第2号に該当し、特許を受けることができない。 また、仮に同一ではないとしても、本件発明は、検甲第1号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2(拡大先願) 本件発明は、本件特許の原出願の日前の他の特許出願であって本件特許の原出願後に出願公開された先願である特願2015-21893号(特開2016-28566号公報:甲第18号証)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (3)無効理由3(実施可能要件) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない。 したがって、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (4)無効理由4及び5(サポート要件違反その1及びその2) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。 したがって、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (5)無効理由6(明確性要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。 したがって、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (7)無効理由7(冒認) 本件発明は、発明者ではない者であって特許を受ける権利を承継しない者の特許出願(冒認出願)に対して特許されたものである。 したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第6号に該当し、無効とすべきである。 2 証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:夏季展示会開催日程の御案内と御協力のお願い、株式会社関東甲信クボタ北関東事業所、2015年4月27日 甲第2号証:夏季展示会参加申込書、松山株式会社 甲第3号証:展示会についてのご連絡の件、株式会社関東甲信クボタ、2015年6月23日 甲第4号証:農機新聞、平成27年7月21日、1頁、12頁 甲第5号証:「元氣農業応援フェア2015inつくば」チラシ 甲第6号証:2015年元氣農業応援フェアレイアウト 甲第7号証:請求人の展示ブースを撮影した写真 甲第8号証の1:報告書、松山株式会社内田、2015年7月13日 甲第8号証の2:報告書、松山株式会社渡辺、2015年7月13日 甲第8号証の3:報告書、松山株式会社荻原、2015年7月13日 甲第8号証の4:報告書、松山株式会社廣世、2015年7月13日 甲第8号証の5:報告書、松山株式会社荻原、2015年7月13日 甲第8号証の6:報告書、松山株式会社荻原、2015年7月22日 甲第8号証の7:報告書、松山株式会社牛山、2015年7月19日 甲第9号証:納品書(品名:SKS2000-0S ♯1007)、松山株式会社関東営業所、平成27年7月10日 甲第10号証:納品書(品名:SKS2000-4SD ♯1007)、松山株式会社関東営業所、平成28年3月9日 甲第11号証:受領書(SKS2000-4SD ♯1007)、松山株式会社関東営業所、平成28年3月9日 甲第12号証:証明書、山口美一、平成29年12月15日 甲第13号証:報告書、松山株式会社小林茂喜、平成30年1月31日 甲第14号証:「ニプログランドロータリーSKSシリーズ」カタログ、松山株式会社、2015年6月 甲第15号証:納品書(品名:グランドロータリーSKSシリーズ(新版))、カシヨ株式会社、2015年6月16日 甲第16号証:請求書(品名:グランドロータリーSKSシリーズ(新版))、カシヨ株式会社、2015年6月30日 甲第17号証:農機新聞、平成27年7月7日、16頁 甲第18号証:特開2016-28566号公報 甲第19号証:「ニプログランドロータリーSKS1800/2000 1800D/2000D 取扱説明書」、松山株式会社、2015年7月 甲第20号証:”ニプロのグランドロータリーその他「元氣農業応援フェア」”、[online]、2015年9月29日、水戸市大場町・島地区農地・水・環境保全会、2018年9月6日、インターネット <URL:http://oba-shima.mito-city.com/2015/09/29/niplo/> 甲第21号証:売掛台帳(山口美一宛)、有限会社小野瀬農機店、平成29年1月16日印刷 甲第22号証:報告書、松山株式会社小林茂喜、令和3年11月5日 甲第23号証:証明書、服部 泰、令和3年11月9日 甲第24号証:陳述書、松山株式会社荻原剛、令和3年11月25日 甲第25号証の1:「動画1」(撮影対象:検甲第1号証)、令和3年11月30日 甲第25号証の2:「動画2」(撮影対象:検甲第1号証)、令和3年11月30日 甲第25号証の3:「動画3」(撮影対象:検甲第1号証)、令和3年11月30日 甲第25号証の4:「動画4」(撮影対象:検甲第1号証)、令和3年12月1日 甲第26号証:無効2018-800039号 令和3年10月7日付け審決 甲第27号証:本件特許に係る出願(特願2016-141321号)の審査過程における平成29年8月23日付け意見書 甲第28号証の1:「インナーパイプ」設計図、松山株式会社、2014年11月21日 甲第28号証の2:「アウターパイプ」設計図、松山株式会社、2014年11月25日 甲第28号証の3:「タンブラ」設計図、松山株式会社、2015年1月8日 甲第28号証の4:「レバー」設計図、松山株式会社、2014年11月25日 甲第28号証の5:「レバー板」設計図、松山株式会社、2014年11月21日 甲第28号証の6:「GS-S150-1100」(ガススプリング)設計図、松山株式会社、2013年6月25日 甲第29号証の1:報告書、松山株式会社荻原、2015年7月15日 甲第29号証の2:報告書、松山株式会社小林、2015年7月21日 甲第29号証の3:報告書、松山株式会社廣世、2015年7月21日 甲第29号証の4:報告書、松山株式会社福井、2015年7月21日 甲第29号証の5:報告書、松山株式会社福留、2015年7月21日 甲第30号証:陳述書、小橋工業株式会社中谷公紀、平成30年10月6日 甲第31号証:本件特許に係る出願(特願2016-141321号)の審査過程における面接記録、平成29年8月17日 甲第32号証:電子メール(服部 泰から松山株式会社山本 誠宛)、2019年1月10日 甲第33号証:証明書(2)、服部 泰、令和5年3月8日 甲第34号証:陳述書、樺沢特許事務所弁理士山田哲也、令和5年3月1日 甲第35号証:報告書「無効2017-800039の件」、樺沢特許事務所弁理士樺澤聡、平成30年10月31日 甲第36号証の1ないし7:甲第20号証の記事中の写真のファイル情報 甲第37号証:「家族で楽しむこども農業雑誌 のらのら 2017春号」、一般社団法人農山漁村文化協会、2017年3月1日、第20巻第1号(改題22号)、表紙、64~65頁、裏表紙 甲第38号証:無効2018-80039号に係る平成30年12月25日付け審理事項通知書 甲第39号証:「トラクター、作業機を選ぶ時は... 機械のマッチングを確認しましょう!」、[online]、パンフレット、生物系特定産業技術研究支援センター、2003年11月、インターネット <URL:https.//www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/matching/matching_files/ iam_pub0403. pdf> 甲第40号証:特開2013-215185号公報 甲第41号証:特開2006-325526号公報 甲第42号証:無効2018-80039号に係る平成31年4月5日付け上申書(2)(松山株式会社) 甲第43号証:陳述書(2)、小橋工業株式会社三浦謙二、平成31年2月5日 検甲第1号証説明書:ニプログランドロータリーSK2000(製造番号1007) 甲第1号証ないし甲第31号証及び検甲第1号証説明書は請求書に、甲第32号証ないし甲第37号証は請求人上申書2に、甲第38号証ないし甲第43号証は請求人陳述要領書にそれぞれ添付されて提出された。 以下、「甲第1号証」等をその数字により「甲1」等と、また検甲第1号証説明書を「検甲1説明書」ということがある。 3 請求人の具体的な主張 請求人の具体的な主張は、主に以下のとおりである。 (当審注:以下、「〇1」は、〇の中に1の丸数字を意味する。他の数字も同じ。原文中の太字、傍点、下線等は省略。) (1)無効理由1(新規性、進歩性)について <請求書> 「ア 検甲第1号証の公知公用について <夏季展示会> 〇1 展示日:2015年(平成27年)7月11日、12日、18日、19日 〇2 展示会名:元氣農業応援フェア 2015 in つくば 〇3 開催場所:株式会社クボタの筑波工場 (茨城県つくばみらい市坂野新田10) 松山株式会社製の「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」である検甲第1号証は、甲第1号証ないし甲第12号証等からみて明らかなとおり、上記の夏季展示会(以下、単に「展示会」という。)で展示され、その後、有限会社小野瀬農機店を介して山口美一氏に販売されたものである。 したがって、検甲第1号証は、本件特許の出願前(原出願日の平成27年8月12日よりも前)に展示会に展示されることによって公然実施されたものであり、かつ、その際に不特定人によって公然知られたものである。 ここで、甲第6号証は展示会レイアウト図であり、この展示会において、請求人の展示ブース(図中「松山」と表示)の隣が、被請求人の展示ブース(図中「小橋」と表示)であった。 また、請求人の展示ブースを撮影した写真(甲第7号証や甲第20号証)からみても明かなように、請求人の展示ブースを訪れた見学者は、検甲第1号証のエプロンを持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であった。 そして、実際に、見学者が検甲第1号証(検甲第1号証に係る作業機)のエプロンを持ち上げる行為を行うことにより検甲第1号証のアシスト機構を体感していた(甲第23号証、甲第24号証等)。 さらに、請求人と被請求人の展示ブースが隣同士であったことや、展示会の報告書(甲第8号証の1~7)及び陳述書(甲第24号証)の内容によれば、被請求人の社員(開発部員も含む)や一般の見学者が検甲第1号証の構成を実際に知ったことは明らかである。 また、請求人の展示ブースでは、検甲第1号証のカタログ(甲第14号証)を見学者に配布し、当該カタログに記載された内容(例えばガススプリングを利用して従来の約半分の力で持ち上げることが可能になったこと)等を見学者に対して説明していた(甲第7号証、甲第20号証、甲第24号証等)。 当該カタログは、請求人の展示ブースを撮影した写真(甲第7号証や甲第20号証)にも写っている。 イ 検甲第1号証に係る発明について 検甲第1号証の構成は、別紙添付の検甲第1号証説明書に記載されたとおりであるから、検甲第1号証に係る発明は、次のとおりである(以下、その発明を「検甲1発明」という)。 「<検甲1発明> A:走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、 B:前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、 C:前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、 D:前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、 E:前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有し、 F:前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 G:前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、 H:前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにする I:作業機。」 ここで、検甲1発明が構成Gを備えることは、各支点の位置関係のほか、報告書(甲第13号証、甲第22号証)及び動画(甲第25号証の1ないし4)の内容等からみて明らかである。 また、別件の無効2018-800039号の無効審判(以下、「別件無効審判」という)の審決(甲第26号証、以下では「別件審決」という)における判断(構成Gは当業者の技術常識である等)からみても、検甲1発明が構成Gを備えたものであることは明らかである。 なお、動画でのエプロンの動きを一見すれば、検甲第1号証の検証(証拠調べ)を再度行うまでもなく、検甲1発明が構成Gを備えることは明らかであるが、念のため、その動画について、次の「ウ」で詳細に説明しておく。 ウ 動画について 動画1ないし3は検甲第1号証を展示会と同じ「スタンド姿勢(前傾約30°)」に設定して撮影を行い、動画4は別件無効審判の平成30年10月30日の検証(証拠調べ)と同じ「作業姿勢」に設定して撮影を行った。 具体的には、動画1は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオン状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画2は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画3は、「スタンド姿勢」、「アシストオフ状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画4は、「作業姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 そして、まず、動画1の内容からみても明らかなように、展示会において、見学者は検甲第1号証のエプロンの斜め後方(パネルの横のスペース)に立ってそのエプロンを片手でも持ち上げることができた。甲第20号証のブログ記事を書いたブログの管理人も、このようにしてエプロンを片手で持ち上げる行為を行っていた(甲第23号証)。 加えて、動画2ないし4の内容からみても明らかなように、展示会において、見学者はエプロンを持ち上げるのに要する力がエプロン角度の増加に伴って徐々に減少すること、換言すると、だんだんと軽くなること、を感じることができた。 すなわち、動画2をみると、エプロン角度20°付近で手を離した場合には、エプロンは素早く下方回動するが、エプロン角度50°付近で手を離した場合には、エプロンはゆっくり下方回動する。このような挙動(持ち上げ初期と終期とで互いに異なる挙動)は、動画3及び動画4でのエプロンの動きとは明らかに異なる。 しかも、エプロン角度60°付近までエプロンを持ち上げた場合、動画2ではエプロンから手を離しても、エプロンは下方回動せず、停止状態となるが、動画3や動画4では停止状態にならない。 動画2において、このようにエプロンが停止状態になるのは、構成Gの要する力がエプロン角度の増加に伴って徐々に減少しているからに他ならない。 なお、動画2におけるエプロンの停止状態は、ロック装置(その概略説明図を参照)のストッパーピンによるものではない。このため、エプロンを軽く押し下げるだけで、エプロンはゆっくり下方回動し、元の下降状態に戻る。 [図:0001410817000001.jpg] 甲第19号証の取扱説明書の第39頁に説明があるとおり、エプロン(均平板)がロック装置のストッパーピンでロックされた場合には、均平板を少し持ち上げることによって、ストッパーピンを連結ロッドの孔から抜く必要がある。 [図:0001410817000002.jpg] 上述したとおりであり、動画2~4におけるエプロンの動き(挙動)からみて、展示会で見学者が検甲第1号証のエプロンの持ち上げに伴ってだんだんと軽くなる感覚を感じることができたことは、明らかといえる。 また、展示会での展示状況は、見学者がそのだんだんと軽くなる感覚を感じることができた状況(そのおそれのある状況も含む)であったことは、もはやいうまでもない。 したがって、展示会での展示の際に、検甲第1号証は構成Gを有していたものであり、かつ、当該構成Gはその展示によって不特定の者によって技術的に理解される状況で実施されたものであるから、検甲1発明は構成Gを備えたものである。 そもそも、別件審決の判断によれば、構成Gは当業者の技術常識であるから、その技術常識的な構成Gは、検甲1発明の構成として当然認定できる。」(請求書8頁3行~13頁最下行) <請求人上申書1> 「・・・被請求人が引用した別件判決による事実認定には多くの点で誤りがあり、その誤った事実認定を前提として、本件無効審判の判断がなされることは当然許されず、・・・特に、例えば別件判決による〇1ないし〇8等の事実認定・・・が誤りであることは、「スタンド姿勢」での検証によって明らかとなる。 ・・・展示会においてパネルの横のスペースに立っても、不安定な状態ではなく、特に危険を感じることもなく、エプロン(均平板)を持ち上げることができたという事実について確認できる。 [図:0001410817000003.jpg] [動画1(甲第25号証の1)のスクリーンショット] さらにいうと、甲第22号証の報告書の測定結果と甲第25号証の2(動画2)におけるエプロンの挙動とに整合性があることや、展示会で見学者が構成Gの「徐々に減少すること」(換言するとエプロンがだんだんと軽くなること)を認識することが可能(少なくとも知り得る状況)であったこと等も、「スタンド姿勢」で検証すれば容易に確認できる。 そして、現時点では、その展示会から7年以上も経過しており、経年劣化でガススプリングの反発力が低下しているが、それでも「スタンド姿勢」での検証なら、甲第22号証の測定結果と同様、「徐々に減少する」結果になることを確認できる。 なおいうまでもないが、公然実施については、エプロンがだんだんと軽くなることを見学者(甲20のブログの管理人等)が現実に認識したという事実までは必ずしも必要ではなく、そのことを見学者が「知り得る状況」で検甲第1号証の作業機が展示されていた事実で足りる。 【別件判決による誤った事実認定〇1ないし〇8】 「〇1 「甲103は、本件訴訟が提起された後の令和3年(2021年)11月5日に測定された結果を示すものであり、約6年半前の平成27年(2015年)7月に開催された本件展示会における検甲1の状態を示すものとは認められないから、甲103によって、本件展示会における検甲1の構成が認められるとはいえない。」(別件判決の第45頁) 〇2 「甲103の測定結果は、甲106の2に撮影された作業機の挙動とは整合しないものと認められ、その測定結果に信用性があるとは認められない。」(別件判決の第46頁) 〇3 「甲105に記載された上記の態勢は、パネル上に乗っていたり、パネルの横の狭いスペースに立っているなど、不安定な状態を前提とするものであり、エプロンを持ち上げるときの自然な態勢とは異なる不自然なものであって、このような態勢で見学者がエプロンを持ち上げるならば、十分な力が入れられずに持ち上げに失敗したり、持ち上げに失敗した見学者に重量のあるエプロンが当たって見学者の安全を害することが容易に想定されるものであって、そのようなことが展示会において行われていたとは考え難い。」(別件判決の第48頁) 〇4 「そのような不安定な状態における不自然な態勢において、「エプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という効果をよく体感できるものとは考え難い。」(別件判決の第48頁) 〇5 「本件展示会において、見学者が、エプロンを跳ね上げるのに要するカが、本件発明の構成要件Gに記載された技術的思想の内容であるエプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能であったとは認められない」(別件判決の第48頁) 〇6 「甲106の1ないし4(動画1ないし4)は、本件訴訟が提起された後の令和3年11月30日に撮影された時の検甲1の状態を示すものであり、約6年半前の平成27年(2015年)7月に開催された本件展示会における検甲1の状態を示すものとは認められないから、甲106の1ないし4によって、本件展示会における検甲の構成が認められるとはいえない。」(別件判決の第49頁) 〇7 「甲103は甲106の2と矛盾する内容であって、その測定結果を信用することはできず、検甲1が、エプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少するという本件発明の構成要件Gを備えていたことを認めるに足りる証拠はない。」(別件判決の第49頁) 〇8 「検甲1発明は、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という構成(本件発明の構成要件Gに相当する。)を備えていたとは認められないし、少なくとも本件発明が検甲1発明により公然知られたとも公然実施されたとも認めることできないので、検甲1発明がそのような構成を備えないとした本件審決による検甲1発明の認定に誤りはない。」(別件判決の第49頁)」 ここで、付言しておくと、別件無効審判において、特許庁合議体は、被請求人に対して検証前に、「報告書(甲第13号証)に記載された測定方法で良いか検討して下さい。」と要請して、「作業姿勢」での検証で正しいかを確認した。 これに対し、被請求人は、甲第13号証に記載の測定方法を十分に検討したうえで、「作業姿勢」に同意した。その「作業姿勢」(耕うん姿勢)は、「スタンド姿勢」とは前傾角度が約30度以上も異なる(下写真を参照)。 別件無効審判における前回の検証時(平成30年10月30日)に、「スタンド姿勢」での検証が行われていれば、構成Gの要する力が徐々に減少する結果が得られていた。 前回の検証結果が「略一定」(作業姿勢)であったことから、作業機の姿勢に応じて変化する重カトルクの影響によって、今回の検証では「徐々に減少」(スタンド姿勢)の結果が得られ、検甲第1号証が構成Gを備えたものであることが明らかとなる。 なお、令和4年4月22日付け答弁書の第14頁には、「確かに、「Fs」の計算式(以下、単に「計算式」ということがある)中の重カトルク(Tw)は作業機の姿勢に応じて変化する。」とあり、被請求人も重カトルクが作業機の姿勢に応じて変化することを認めている。 [図:0001410817000004.jpg] [前回の検証時の写真002] [図:0001410817000005.jpg] [甲第22号証中の写真3] 」(請求人上申書1の2頁14行~6頁下から3行) <請求人上申書2> 「本件無効審判において、被請求人が提出した乙第3号証の別件判決の第48頁をみると、 「甲105(請求人注:本件無効審判では甲第24号証)に記載された上記の態勢は、パネル上に乗っていたり、パネルの横の狭いスペースに立っているなど、不安定な状態を前提とするものであり、エプロンを持ち上げるときの自然な態勢とは異なる不自然なものであって、このような態勢で見学者がエプロンを持ち上げるならば、十分な力が入れられずに持ち上げに失敗したり、持ち上げに失敗した見学者に重量のあるエプロンが当たって見学者の安全を害することが容易に想定されるものであって、そのようなことが展示会において行われていたとは考え難い。」・・・ と記載されている。 しかし、以下に述べるとおり、甲第32号証ないし甲第37号証からみて、別件判決の上記事実認定は誤りであり、展示会において見学者による均平板の持ち上げ行為(少なくともアシスト機構のアシストオン状態において均平板を持ち上げる行為)は行われていた。 (1)まず、ブログの管理人が請求人従業員宛てに送信した電子メールである甲第32号証には、請求人従業員による「Nさんは均平板(後ろに垂れ下がったアシストされているカバー)を持ち上げたり下ろしたりしてましたか。服部様のご記憶で結構ですのでお教えいただけたらと思います。」という質問に対する回答として、 「Nさんはアシストを切ったり入れたりして重さを比べていたと思います僕もそれは試したと思います」 と記載されている。 したがって、上記記載からみて明らかなとおり、展示会において、検甲第1号証の均平板(エプロン)の下方にパネルが置いてあっても、見学者(少なくともNさんやブログの管理人)は、実際に均平板を持ち上げてアシストオン状態のアシスト機構を体感していた。 そして、その体感の際に、見学者は、甲第33号証の証明書(2)にあるように、特に危険を感じることなく安全に、アシスト機構のアシストオン状態における均平板を右手だけで持ち上げていた。 特に、この証明書(2)の証明内容からみて、屋外で定期的に開催される一般的な農機展示会の一つであった「元氣農業応援フェア 2015inつくば」の展示会での検甲第1号証の展示状況は、均平板の下方にパネルが置いてあっても、見学者がアシスト機構のアシストオン状態における均平板を持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であったことは明らかであって、上記の如く見学者による均平板の持ち上げ行為が行われていた事実がある。 なおいうまでもないが、ブログの管理人による甲第32号証(電子メール)及び甲第33号証(証明書(2))は、請求人とは利害関係がない第三者による客観的証拠である。 (2)また、別件無効審判の検証時において、請求人代理人(検甲第1号証の指示説明者)は、甲第34号証の陳述書にあるように、革靴を履いてスーツを着た格好のまま、自然な姿勢で、安全に均平板を右手だけで持ち上げていた。 そして、その際に、請求人代理人は、甲第35号証の報告書の第2頁第29行~第31行の記載からも明らかなように、特許庁審判官(合議体)に対して、パネルの横のスペースに立った状態(実際にパネルを置いてその横に立った状態ではないが略同じ位置に立った状態)で、“安全に”、均平板後方から均平板を片手でも持ち上げることができることを説明した。 したがって、当該説明を受けた特許庁審判官は、その事実を覚えているはずであり、またその請求人代理人による持ち上げ行為が安全を害することが容易に想定されるものであったならば、審判官立ち会いの検証の場で、そのような危険な行為を行うことを許可しなかったはずである。 (3)さらに、検甲第1号証のカタログ(甲第14号証)には、「洗車や爪交換で均平板を上げる時にガススプリングを利用して従来の約半分の力で持ち上げることが可能になりました。」と記載されている。 それゆえ、検甲第1号証の均平板を持ち上げる時の力は、従来の約半分のカで足りるのであるから、従来とは異なり、必ずしも両手で持ち上げる必要はない。 したがって、展示会において、パネルが均平板の下方に置いてあっても、見学者が右側配置のアシスト機構の後方位置、すなわち均平板の左右方向中央位置ではなく、アシスト機構のレバーを右手で操作し易い右寄りの位置に立った状態で、そのレバーを右手で操作してアシストオン状態に切り換えた後、その右寄りの立ち位置のまま、右手だけで均平板を持ち上げることが可能であったことは明らかといえる。 そして、パネルが均平板の下方に置いてあっても、甲第20号証のブログ記事中の写真(下参照)のとおり、そこに写った「Nさんの手」は、アシスト機構のレバーに後方側から届いており、Nさんはレバー操作によりアシストを切ったり入れたりして、均平板の重さを比べていたのである。 [図:0001410817000006.jpg] [甲第20号証の第2頁中段の写真] (4)また、パネルが均平板の下方に置いてあっても、見学者であるNさんが、少なくともアシスト機構のアシストオン状態時に、均平板を持ち上げたり下ろしたりしていた事実は、甲第20号証のブログ記事中の複数枚の写真からみて明らかであって、そのことはファイル情報である甲第36号証の1ないし7からも裏付けられる。 すなわち、ブログの管理人から入手した写真のファイル情報(甲第36号証の1ないし7)によれば、 甲第20号証のブログ記事中の各写真の撮影日時は、 〇1 甲第36号証の1~3では「2015年7月12日午前10時52分」、 〇2 甲第36号証の4では「2015年7月12日午前11時03分」、 〇3 甲第36号証の5では「2015年7月12日午前11時04分」、 〇4 甲第36号証の6では「2015年7月12日午前11時06分」、 〇5 甲第36号証の7では「2015年7月12日午前11時07分」である。 加えて、甲第36号証の1~3では均平板が持ち上げられた状態」であり、甲第36号証の4では均平板が下ろされた状態であり、甲第36号証の5及び6では均平板が持ち上げられた状態であり、甲第36号証の7では均平板が下ろされた状態となっている。 よって、農業雑誌「のらのら」(甲第37号証)の取材も兼ねてブログの管理人が写真撮影していた、少なくとも「午前10時52分~午前11時07分」の間に、パネルが置かれた状態のまま、Nさんがアシスト機構のアシストオン状態で、少なくとも「均平板の下げ→上げ→下げ」の行為を行っていた事実は、明らかというべきである(別紙添付の参考資料1を参照) しかも、その農業雑誌の第64頁及び第65頁の(「キカイ探検隊」の最終回〇8展示会は農家のお祭り)には、一般的な農機展示会の様子を示すイラストのほか、「展示会は、メーカーが自社の製品を直接農家に知ってもらう大切な機会なんだ。」との記載もあるところ、請求人は自社の新製品のアシスト機能を直接農家(Nさんを含む)に知ってもらうために、その新機能を体験してもらっていたのである。 そして、ブログの管理人による証明書(2)である甲第33号証においても、「〇7 前記展示会は、屋外で定期的に開催される、農家を対象とした一般的な農機展示会であったため、当該展示会に来場した見学者(主として農家)のうち、農機購入に真剣な人は別途商談をしていたが、残りのほとんどの人はお祭り気分、旅行気分で誰もが農機に触れることができる状況であり、農機に触れて咎められるような雰囲気ではなかったこと。そして、私は、このような一般的な農機展示会には何度も行ったことがあるが、展示品の農機に触れることがNGであったことはない。」を「証明いたします。」と記載されている。 よって、この記載からみても、展示会において、見学者がアシスト機構のアシストオン状態における均平板に触れて、実際にその均平板を持ち上げることで新製品のアシスト機能を体験していたことは、明らかというべきである。 なお、別紙添付の参考資料1をみて明らかなように、2015年7月12日の午前10時52分から午前11時07分までの間、請求人の展示ブースにおいて、〇1「ブログの管理人」による新製品の写真撮影と、〇2「Nさん」による均平板の持ち上げ行為が行われていた。 ところが、被請求人従業員の陳述書である甲第30号証には、「私は、平成27年7月12日午前10時ごろから午後2時ごろまでの間、茨城県つくばみらい市で開かれていた「元氣農業応援フェア2015 in つくば」の展示会を訪問しました。・・・少なくとも私が展示会に参加していた時間帯では、他の同業者も一般来場者と思われる人も、新製品の写真撮影をしている様子はなく、他の同業者も一般来場者と思われる人が、新製品のエプロンを持ち上げている様子もありませんでした。」と記載されている。 したがって、被請求人従業員による甲第30号証(陳述書)の陳述内容は、ブログの管理人による甲第20号証(ブログ記事)、甲第32号証(電子メール)、甲第33号証(証明書(2))、甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報)等の客観的証拠に基づく事実とは異なる内容を含んだものであって、明らかに信用性を欠くものである。」(請求人上申書2の2頁2行~7頁5行) <請求人陳述要領書> 「なお、以下では、令和4年1月28日付け審判請求書を「審判請求書」、令和4年4月22日付け答弁書を「答弁書」、令和4年8月30日付け上申書を「上申書(1)」、令和5年3月16日付け審理事項通知書を「通知書」、令和5年3月27日付け上申書(2)を「上申書(2)」という。 また、平成27年(2015年)7月11日、12日、18日及び19日に株式会社クボタの筑波工場において開催された夏季展示会「元氣農業応援フェア2015 inつくば」を「本件展示会」という。 1 無効理由1に関する暫定的見解について ・・・以下に述べるように、主として、甲第8号証の2、甲第13号証、甲第14号証、甲第20号証、甲第22号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第25号証の1ないし4、甲第26号証、甲第32号証ないし甲第37号証等からみて、上記の「展示会の時点において、検甲1作業機が構成要件Gに係る内容を有していたこと、そして当該内容が展示会において公然知られた又は公然実施をされたこと」は明らかである。・・・ (1) 各証拠の記載事項等について ア 甲第8号証の2(展示会の報告書) 甲第8号証の2には、「・・・均平板のワンタッチ跳ね上げ・・・への評価が高く、多くのユーザーが購入を検討してくれる雰囲気がひしひしと伝わってきました。」と記載されている。 本件展示会での検甲第1号証(検甲1作業機)のアシスト機構の評価は、ユーザーである見学者に均平板を持ち上げてもらわなければ得られない。 よって、本件展示会において、見学者が実際に均平板を持ち上げてアシスト機構を体感していたからこそ、高い評価が得られ、上記のような記載となっている。 イ 甲第13号証(報告書) 甲第13号証の第6頁には、均平板であるエプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度の関係を示すグラフのほか、「よって、調査対象物において、工プロン角度が10°から55°の範囲で、エプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少することを確認することができた。」と記載されている。 なお、別件無効審判において平成30年10月30日に行われた検甲第1号証の検証結果が、甲第13号証の報告書における測定結果と同様の結果にならなかったのは、例えばガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下、トラックのエンジンの停止の有無、測定誤差、気温の差等が原因と考えられる。 ウ 甲第14号証(カタログ) 甲第14号証には、均平板らくらくアシスト(アシスト機構)に関し、「洗車や爪交換で均平板を上げる時にガススプリングを利用して従来の約半分の力で持ち上げることが可能になりました。」と記載されている。 この甲第14号証のカタログは、上記記載を宣伝文句として見学者に配布されていたのであるから、見学者に対して実際にアシスト機構を体感してもらうことが本件展示会の目的の一つでもあった。 それゆえ、当該カタログ中の宣伝文句をみて興味を持った見学者(カタログをもらったNさんもその一人)は、その宣伝文句に誘導されて、アシスト機構を積極的に体験したはずである。 このことは、答弁書の第9頁における「見学者は、パンフレット(甲第14号証)の記載に誘導されるように、従来の約半分の力でエプロンを持ち上げることができるようになることを積極的に体験しようとする」との記載からも裏付けられる。 また、後述する甲第38号証(農業雑誌)にも、「展示会は、メーカーが自社の製品を直接農家に知ってもらう大切な機会なんだ。」との記載があり、メーカーである請求人は、自社の新製品のアシスト機能を直接農家に知ってもらうために、見学者には実際にアシスト機構を体感してもらっていた。 エ 甲第20号証(ブログ記事) 甲第20号証には、本件展示会で展示されていた検甲第1号証を撮影した多くの写真のほか、「Nさんに連れて行ってもらった、クボタ筑波工場で行われた、関東甲信越クボタグループの「元氣農業応援フェア」その12、今日はニプロのグランドロータリーその他です。」、「バネがキツくて持ち上がらない均平板がラクに持ち上がるようになる・・・みたいです。」等と記載されている。 なお、甲第20号証のブログ記事の第2頁中段の写真には、「Nさんの手」が写り込んでいる。 オ 甲第22号証(報告書) 甲第22号証の第7頁には、アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフのほか、「今回の調査により、「スタンド姿勢」に設定した調査対象物において、アシスト機構のアシストオン状態では、アシスト操作力(エプロンを跳ね上げるのに要する力)がエプロン角度の増加に伴って一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少することを確認できた。」と記載されている。 ここで、この甲第22号証の報告書の測定結果をみると、エプロン角度60°におけるフォースゲージの値は約17kgfであり、この値は当該報告書記載の測定方法からも明らかなようにエプロンをエプロン角度50°から60°に跳ね上げるのに要する力、すなわち「アシスト操作力」である。また、その測定方法は、別件無効審判において平成30年10月30日に行われた検証時の測定方法と同じであり、被請求人も同意した方法である。 他方、後述する甲第25号証の2(動画2)では、エプロン角度60°付近において手を離してもエプロンは下方回動せず、停止状態となっているが、これは、エプロン角度60°のときにアシスト操作力が「0」となることを示すものではなく、上記測定結果のとおりエプロンが約17kgfの静止摩擦力によって停止していることを示している。 したがって、甲第22号証の報告書の測定結果は、動画2に撮影されたエプロンの挙動と整合している。そもそも、「スタンド姿勢」で検甲第1号証(検甲1作業機)を検証すれば、両者に整合性があることを容易に確認できる。 カ 甲第23号証(証明書) 甲第23号証には、「・・・〇4 私と「Nさん」は、前記製品の均平板の斜め後方に立って、その均平板を片手で持ち上げる行為を行うことにより、前記製品のアシストオン状態のアシスト機構(「均平板らくらくアシスト)を体感したこと。上記〇1ないし〇4の事項に相違ないことを証明いたします。」と記載されている。 キ 甲第24号証(陳述書) 甲第24号証には、「・・・一般の見学者は、新製品の写真撮影をしたり、新製品のアシスト機構(「均平板らくらくアシスト」)のレバーを握って操作して、実際にエプロン(均平板)を上げ下げしていました。また、一般の見学者には、新製品のエプロンの後方に立ってエプロンを持ち上げる行為を行っていただくことにより、新製品のアシストオン状態のアシスト機構を体感していただいておりました。その見学者の中には、別紙添付のブログ記事(甲第20号証)の第1頁や第3頁の写真に写ったパネルの上に乗った状態でエプロンの後方に立ってエプロンを両手で持ち上げていた方もいらっしゃいましたが、多くの方は、パネルの上には乗らずに、エプロンの斜め後方(パネルの横のスペース)に立ってエプロンを両手又は片手で持ち上げていました。」、「また、別紙添付のブログ記事(甲第20号証)の写真に写ったパネルは、私が、いわゆるベニア合板と呼ばれる厚さ12mmの合板に新製品のカタログを貼り付けて作成いたしました。そのパネルの合板は強度があって丈夫なため、傾斜したパネルの下にガタつき防止用の部材を置いた状態で大人1人が乗った程度では破損するようなものではなく、別紙添付のブログ記事(甲第20号証)の写真に写った立置にパネルが傾斜して置いてあった場合でも、見学者はパネルの上に乗って立った状態やパネルの横のスペースに立った状態で、新製品のエプロンを持ち上げていました。」と記載されている。 ク 甲第25号証の1ないし4(動画) 甲第25号証の1(動画1)は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオン状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 甲第25号証の2(動画2)は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 甲第25号証の3(動画3)は、「スタンド姿勢」、「アシストオフ状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 甲第25号証の4(動画4)は、「作業姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 そして、動画1では、本件展示会でのパネルと略同じ大きさの合板がエプロンの下方に置いてあっても、「合板の横のスペース」に立った状態で、自然な姿勢で安全にエプロンを右手だけで持ち上げれることが示されている。 また、動画2では、エプロン角度20°付近で手を離した場合にはエプロンが素早く下方回動するが、エプロン角度50°付近で手を離した場合にはエプロンがゆっくり下方回動するといったエプロンの挙動(持ち上げ初期と終期とで回動速度が異なる挙動)が示されており、この挙動は動画3、4における挙動とは異なる。 しかも、動画2では、エプロン角度60°付近までエプロンを持ち上げた場合には、エプロンは下方回動せず、停止状態となるが、動画3や動画4ではそのような停止状態にはならない。 したがって、動画2は、本件展示会と同じ「スタンド姿勢」において、エプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少することを示している。 なお、「スタンド姿勢」で検証すれば、検甲第1号証のエプロンが動画2と同様の挙動をすることを確認でき、また、合板(パネル)がエプロンの下方に置いてあっても、合板の横のスペースに立って自然な姿勢で安全にエプロンを片手で持ち上げれることも確認できる。 ケ 甲第26号証(別件審決) 甲第26号証の第99頁には、「このように、構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明の具体的内容は、本件無効審判においては、本件発明に係る作業機の構造と力学に関する技術常識に基づいて請求人が提示し、被請求人は、それに基づいて、構成要件Gを実現する具体例をシミュレーションし、構成要件Gが実現できることを具体的に示した。そうすると、構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明は、力学に関する技術常識を勘案し、本件訂正後の請求項1及び本件明細書の記載により把握される本件発明に係る作業機の構造を参照するならば、当業者であれば認識できるものであったと認められる。」と記載されている。 つまり、別件審決は、構成Gの理論的説明(甲第26号証の第97頁の計算式を含む)は、本件明細書に一切記載されていないにもかかわらず、当業者であれば、本件発明に係る作業機の構造を参照すれば力学的な技術常識から認識できると判断した。そして、本件発明に係る作業機の構造は、検甲第1号証に係る作業機の構造と同じである。 よって、別件審決によれば、本件発明の構成Gは、検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項に過ぎない。 また、甲第26号証の第109頁には、「これらのシミュレーションは、コンピュータを用いたものと推認されるが、その実施が特に困難であったとは認められず、上記の結果を得るために過度の試行錯誤が必要であったことを窺わせる事情はない。したがって、前記(2)イ(ウ)の式中の各項目のうち、θ以外の項目について適切な数値の組合せを見出して本件発明に係る作業機を作成して構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を実施するために、当業者は過度の試行錯誤を要しないものと認められる。」と記載されている。 つまり、別件審決は、当業者であれば構成Gを得るために過度の試行錯誤を要しないと判断した。 よって、別件審決によれば、本件発明の構成Gは、当業者にとって過度の試行錯誤を必要としない事項である。 コ 甲第32号証(電子メール) 甲第32号証の第1頁には、請求人従業員による「Nさんは均平板(後ろに垂れ下がったアシストされているカバー)を持ち上げたり下ろしたりしてましたか。服部様のご記憶で結構ですのでお教えいただけたらと思います。」という質問に対する回答(質問から6分後の回答:次頁参照)として、 「Nさんはアシストを切ったり入れたりして重さを比べていたと思います僕もそれは試したと思います」と記載されている。 また、同第2頁には、「ご質問の件ですが、写っている手はNさんの手で、確かこのような機械を買ったばかりと説明の方に話していたように記憶しています このときNさんはカタログを貰っていたかもしれません」と記載されている。 よって、上記電子メール中の文章は、2019年1月10日(本件展示会から約3年半後)に、ブログの管理人が、自らの記憶だけを頼りに自分で書いた文章であることは明白であるから、信用性が極めて高く、本件展示会で2人が均平板を持ち上げてアシスト機構を体感していた事実は明らかである。 [図:0001410817000007.jpg] [甲第32号証の第1頁の一部] 上記の時刻表示からみて明らかなとおり、ブログの管理人は、請求人従業員による「2019年1月10日 午前9時48分」のメールに対して、その6分後の「2019年1月10日 午前9時54分」に返信している. よって、甲第32号証の電子メールは、ブログの管理人が自らの記憶のみに基づいて即座に返信したものであるから、そのメール内容には十分な信用性があり、2人がアシスト機構を体感していた事実は明らかというべきである。 サ 甲第33号証(証明書(2)) 甲第33号証には、以下の記載がある。 「〇1 私は、後述する農業雑誌の取材も兼ねて、令和3年11月9日付け証明書に記載のとおり、2015年(平成27年)の7月12日に株式会社クボタの筑波工場で開催された展示会に行き、松山株式会社の展示ブースで展示されていた製品「ニプログランドロータリーSKS2000」の均平板の斜め後方に立って、その均平板を片手で持ち上げる行為を行うことにより、前記製品のアシストオン状態のアシスト機構(「均平板らくらくアシスト」)を体感した。 その際、均平板の下方には、多数のカタログ等を貼ったパネルが置いてあったが、私は、別紙添付の【写真1】及び【写真2】に写った人と同じように、パネルの上に乗らずにそのパネルの右横のスペースに立ち、均平板の右端部付近を右手で持って、特に危険を感じることなく安全に、アシスト機構のアシストオン状態における均平板を右手だけで持ち上げたこと。 〇2 私と一緒に前記展示会に行った知人の「Nさん」は、均平板の下方にパネルが置いてあっても、アシスト機構のレバーを右手でオンオフ操作し、アシストオンオフにおける均平板の重さ(アシスト機構の効果)を確認していたこと。 〇3 私は、2015年7月12日の午前11時頃に前記製品の写真を撮り、その写真を用いてブログ記事を書いたこと。 〇4 ・・・農家でなくロータリーを使う機会もない農業素人の私が、前記展示会において、初めて均平板の持ち上げを体験したので、その体験を今でも覚えていること。 〇5 私は、上述した経緯で始めたブログのために写真を撮ったり記録をすることが元で、農文協のこども農業雑誌「のらのら」において、「キカイ探検隊」という連載を約2年間持っていたことがあり、当時に前記展示会へ行ったのはその取材という側面もあり、その成果として、別紙添付の農業雑誌「のらのら」2017年春号における「キカイ探検隊」の最終回(〇8 展示会は農家のお祭り)では、前記展示会を参考にして記事を書いたこと。 〇6 前記展示会における前記製品の展示状況は、均平板の下方にパネルが置いてあっても、見学者が均平板を持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であったこと。 〇7 前記展示会は、屋外で定期的に開催される、農家を対象とした一般的な農機展示会であったため、当該展示会に来場した見学者(主として農家)のうち、農機購入に真剣な人は別途商談をしていたが、残りのほとんどの人はお祭り気分、旅行気分で誰もが農機に触れることができる状況であり、農機に触れて咎められるような雰囲気ではなかったこと。 そして、私は、このような一般的な農機展示会には何度も行ったことがあるが、展示品の農機に触れることがNGであったことはない。 上記〇1ないし〇7の事項に相違ないことを証明いたします。」 よって、上記の証明内容からみても明らかなように、均平板の下方にパネルが置いてあっても、本件展示会で見学者による均平板の持ち上げ行為が安全に行われていた事実は明らかである。 また、次の甲第34号証の陳述内容によれば、その事実はますます明らかである。 シ 甲第34号証(陳述書) 甲第34号証には、以下の記載がある。 「・・・私は、検証物の検証の際(要する力の測定後、アシスト機構を取り外して分解する前)に、特許庁審判官が居る前で、実際にパネルを置いてその横に立った状態ではないものの、前記「パネルの横のわずかなスペース」と略同じ位置に立った状態で、均平板の右端部付近を右手で持って、アシスト機構のアシストオン状態における均平板を右手だけで持ち上げました。 その際、不安定な状態(すなわち、均平板を持ち上げようとした際に十分な力が入れられずに持ち上げに失敗したり、持ち上げに失敗して重量のある均平板が身体に当たって安全を害することが容易に想定される状態)であると感じることはなく、自然な姿勢で、安全に均平板を右手だけで持ち上げることができました。 もし、そのような片手での持ち上げ行為が安全を害する危険な行為であるならば、ロータリ作業機を一度も使用したことがなく検証物の操作に慣れていない私が、自ら危険な行為を検証の場で行うはずがありません。 不自然な姿勢による危険を伴う行為であったならば、革靴を履いてスーツを着た格好の私ではなく、検証物の操作に慣れた請求人従業員(下に示す検証時の写真の如く検証に立ち会った請求人従業員は運動靴を履いて作業着を着てヘルメットも被っていました)が、当該持ち上げ行為を行っていたはずである。 そして、私は、別紙添付の平成30年10月31日付け報告書の第2頁第29行~第31行にも記載があるように、特許庁審判官に対して、「パネルの横のスペース」に立った状態で、“安全に”、均平板後方から均平板を片手でも持ち上げることができることを説明しました。 この説明を受けた特許庁審判官にはそのことをご理解いただき、被請求人側からは特に反論がなかったと記憶しております。」 ス 甲第35号証(報告書) 甲第35号証の第2頁には、「アシスト機構を取り外して分解する前に、「パネルの横のスペース」に立った状態で安全にエプロン後方からエプロンを片手でも持ち上げることができることを説明した。」(報告書の第2頁第29行~第31行)と記載されている。 よって、上記の説明を受けた特許庁審判官は、その事実を覚えているはずであり、また、その請求人代理人による持ち上げ行為が安全を害することが容易に想定されるものであったならば、審判官立ち会いの検証の場で、そのような危険な行為を行うことを許可しなかったはずである。 セ 甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報) 甲第36号証の1ないし3には「撮影日時2015年7月12日 10 52」と記載され、甲第36号証の4には「撮影日時 2015年7月12日 11 03」と記載され、甲第36号証の5には「撮影日時 2015年7月12日 11 04」と記載され、甲第36号証の6には「撮影日時 2015年7月12日 11 06」と記載され、甲第36号証の7には「撮影日時 2015年7月12日 11 07」と記載されている。 また、甲第36号証の1ないし3には「均平板が持ち上げられた状態の写真」が掲載され、甲第36号証の4には「均平板が下ろされた状態の写真」が掲載され、甲第36号証の5及び6には「均平板が持ち上げられた状態の写真」が掲載され、甲第36号証の7には「均平板が下ろされた状態の写真」が掲載され、この甲第36号証の7における写真には「Nさんの手」が写り込んでいる。 そして、上申書(2)に添付した「参考資料1」(次頁参照)からみても明らかなように、ブログの管理人が写真撮影していた「午前10時52分~午前11時07分」の間に、パネルが置かれた状態のまま、Nさんがアシスト機構のアシストオン状態で「均平板の下げ→上げ→下げ」の行為を行っていた事実は明らかである。 [図:0001410817000008.jpg] つまり、写真のファイル情報からも明らかなとおり、2015年7月12日の「午前10時52分~午前11時07分」の間に、〇1「ブログの管理人」による新製品の写真撮影と、〇2「Nさん」による新製品の均平板の持ち上げ行為が行われていた。 ところが、被請求人従業員による陳述書(甲第30号証)をみると、「私は、平成27年7月12日午前10時ごろから午後2時ごろまでの間・・・展示会を訪問しました。・・・少なくとも私が展示会に参加していた時間帯では、他の同業者も一般来場者と思われる人も、新製品の写真撮影をしている様子はなく、他の同業者も一般来場者と思われる人が、新製品のエプロンを持ち上げている様子もありませんでした。」とあるが、この陳述内容は上記事実と異なるものであり、信用性がない。 特に、「午前11時07分」の甲第36号証の7における写真(下参照)には、「Nさんの手」が写り込んでおり、一般来場者による新製品の写真撮影と新製品のエプロンの持ち上げが行われていた事実がある。 またそもそも、「午前10時ごろから午後2時ごろまで」の4時間もの間、隅発部のチーム長が昼の休憩もとらずに、他社ブースの新製品の様子をずっと監視しているようなことはあり得ない。 よって、被請求人従業員(開発部のチーム長)の陳述内容は、全く信用性がなく、被請求人の主張の裏付けとはなり得ない。 [図:0001410817000009.jpg] ソ 甲第37号証(農業雑誌) 甲第37号証には、一般的な農機展示会の様子を示すイラストのほか、「展示会は、メーカーが自社の製品を直接農家に知ってもらう大切な機会なんだ。」と記載されている。 この甲第37号証である農業雑誌「のらのら」2017年春号における「キカイ探検隊」の最終回(〇8展示会は農家のお祭り)は、上記甲第33号証にあるように、Nさんと一緒に行った本件展示会(「元氣農業応援フェア 2015inつくば」)を参考にして書いたものである。 そして、そのイラスト(下参照)には、見学者が農機に乗ったり触れたりしている様子も描かれており、このことからも、本件展示会で見学者は均平板に触れて上げ下げしていたといえる。 [図:0001410817000010.jpg] (2) 検甲第1号証が構成Gを有していたことについて 上記「(1)」のうち、甲第13号証(報告書)、甲第22号証(報告書)、甲第25号証の1ないし4(動画)、甲第26号証(別件審決)等からみて、本件展示会の時点で検甲第1号証が構成(構成要件)Gを有していたことは明らかである。特に、動画2(甲第25号証の2)におけるエプロンの挙動に着目すれば、構成Gを有していたことは明らかといえる。 また、「スタンド姿勢」で検証すれば、本件展示会の時点で検甲第1号証が構成Gを有していたことはますます明らかとなる。 (3) 構成Gが本件展示会で公然実施されたことについて ア 上記「(1)」のうち、甲第8号証の2(展示会の報告書)、甲第14号証(カタログ)、甲第20号証(ブログ記事)、甲第23号証(証明書)、甲第24号証(陳述書)、甲第26号証(別件審決)、甲第32号証(電子メール)、甲第33号証(証明書(2))、甲第34号証(陳述書)、甲第35号証(報告書)、甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報)、甲第37号証(農業雑誌)等からみて、構成Gが本件展示会で公然実施されたことは明らかである。 イ 特に、甲第20号証(ブログ記事)、甲第23号証(証明書)、甲第32号証(電子メール)、甲第33号証(証明書(2))、甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報)、及び甲第37号証(農業雑誌)の各証拠は、請求人とは全く利害関係がない第三者による、客観的証拠である。 そして、これら多数の客観的証拠からみて明らかなように、本件展示会において、見学者によるエプロンの持ち上げ行為(少なくともアシスト機構のアシストオン状態においてエプロンを持ち上げる行為)が行われていた。 つまり、検甲第1号証のエプロンの下方に、「パネル」が置いてあっても、見学者(少なくともNさんやブログの管理人)は、アシスト機構のアシストオン状態におけるエプロンを持ち上げてアシスト機構を実際に体感していた。 それゆえ、本件展示会での検甲第1号証の展示状況は、パネルが置いてあっても、見学者がアシスト機構のアシストオン状態におけるエプロンを持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であった。 したがって、検甲第1号証が有していた構成Gは、本件展示会における展示により、見学者である不特定の者(少なくともNさんやブログの管理人)によって技術的に理解される状況又は技術的に理解されるおそれのある状況で実施された構成である。 よって、構成Gは、本件展示会において公然実施されたものであって、検甲1発明として認定すべき構成である。 ウ 加えて、甲第32号証の電子メールには、「写っている手はNさんの手で、確かこのような機械を買ったばかりと説明の方に話していたように記憶しています このときNさんはカタログを貰っていたかもしれません」という記載があり、当該記載からも明らかなように、「Nさん」は、農家であって農業機械の技術分野における当業者である。 よって、本件展示会における検甲第1号証の展示状況は、要する力が徐々に減少するという構成Gが、当業者(少なくともNさん)によって、少なくとも「技術的に理解されるおそれのある状況」であったことは、明らかというべきである。 要するに、検甲第1号証の展示状況は、不特定人である見学者(当業者を含む)が、構成Gを少なくとも「技術的に理解するおそれのある状況」であったことから、その構成Gは本件展示会において公然実施された構成である。 (4) 新規性欠如の無効理由1について 上記のとおりであるから、検甲第1号証に係る発明である検甲1発明は、構成Gを備えたものである。 そして、検甲1発明によれば、検甲第1号証をトラクタの3点リンクに連結して作業を行う「耕うん状態」(図2の作業姿勢)において、「作業者が誤って工プロンを跳ね上げる」(本件明細書の【0037】)という危険を防止できるとの作用効果を奏することができる。 このことは、検甲第1号証を「作業姿勢」にして撮影した動画4(甲第25号証の4)をみれば明らかであり、検甲第1号証において作業者が誤ってエプロンを跳ね上げるようなことはなく、検甲第1号証は同じ作用効果を有するものである。 したがって、本件発明は検甲1発明と同一であり、新規性を有しない。 またそもそも、甲第26号証(別件審決)によれば、構成Gは検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項であるから、検甲1発明は、その技術常識的な構成Gを備えたものである。 この点に関し、別件無効審判における審理事項通知書(甲第38号証)にも、展示会において公然実施された発明の認定に関し、「技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項も、発明の認定の基礎とすることができる」と記載されている(下参照)。 したがって、構成Gは力学的な技術常識を参酌することにより当業者が導き出させる事項であるから、検甲1発明は構成Gを備えたものである。 [図:0001410817000011.jpg] (5) 進歩性欠如の無効理由1(その1)について 上記「(4)」のとおり、検甲1発明は構成Gを備えたものであり、本件発明と同一であるから、両者の間に何ら相違点は存在しない。 ここで百歩譲って、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点に係る構成Gは、そもそも上述した危険を防止できるとの作用効果を有する検甲第1号証において、何ら技術的意義(作用効果)を有さず、当業者にとって設計事項に過ぎない。 すなわち、本件発明の構成Gにおいて、作業機の姿勢及び減少程度は、何ら限定されていない。 この点に関し、答弁書の第14頁には、「確かに、「Fs」の計算式(以下、単に「計算式」ということがある)中の重カトルク(Tw)は作業機の姿勢に応じて変化する。」との記載があり、作業機の姿勢に応じて重カトルクが変化することを被請求人も自認している。 また、答弁書の第28頁には、「「徐々に減少する」との文言は明確である。減少の程度に関係なく、客観的にエプロンの角度が大きくなるにつれて要する力が減少すれば足りることを規定しているためである。」との記載があり、構成Gの減少程度は、図7のグラフの如く「250Nから0N」といった明確に知覚できる比較的大きなものには限定されず、僅かなものも含まれる。 それゆえ、構成Gの減少程度が僅かなものである場合には、例えば爪交換時や洗浄時において、作業機をどのような姿勢に設定するかによって、簡単に構成Gの要する力が「減少変化」から「増加変化」に変わってしまう。 つまり、例えばトラクタの油圧式の3点リンクに作業機を連結した状態で爪交換等を行う場合、作業機の姿勢は、油圧による上げ下げの調節に加えて、3点リンクの種類、トップリンクの長さ変更、トップリンクやリフトロッドの取付穴の位置等といった種々の要因により異なるため、「一定の姿勢」に特定されるものではない。このことは、甲第39号証の第4頁左の「〇10 3点リンクの種類と作業機の姿勢」の記載からも明らかである。 このため、たとえ同じ作業機であっても、それを「特殊3点リンク」に連結した場合には「減少変化」となっていたのに、「標準3点リンク」に連結した場合には「略一定」や「増加変化」となるといった事態が生じ得る(下図参照)。 また、そのような事態は、トラクタの油圧による上げ高さが異なるだけでも生じ得る。なお、その上げ高さは、トラクタの運転席に設けられた作業機昇降レバーの操作によって調整可能である。 したがって、作業機の姿勢及び減少程度が何ら限定されていない構成Gは、何ら技術的意義(作用効果)を有さず、当業者にとって設計事項に過ぎない。 よって、本件発明は進歩性を有しない。 [図:0001410817000012.jpg] [甲第39号証の第4頁中の図] 上図からみて明らかなように、作業機の姿勢は、トラクタの3点リンクの種類(標準3点リンク、特殊3点リンク)によって大きく異なり、また、作業機昇降レバーの操作に基づく上げ高さによっても異なる。 そして、作業機の姿勢変化に伴って重カトルクも変化し、それに応じて、エプロンを跳ね上げるのに要する力も当然変化する。よって、構成Gに格別な技術的意義はない。 またそもそも、甲第26号証(別件審決)によれば、構成Gは検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項であり、しかも、当業者にとって過度の試行錯誤を必要としない事項とされたものであるから、要する力の変化曲線をコンピュータを用いてシミュレーションして構成Gを得る程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。 この点に関して、別件無効審判では、請求人が提示した計算式に基づいて、被請求人は構成Gを実現する具体例を適宜シミュレーションすることにより、支点位置を25°ずらした新たな作業機を設計した。よって、支点位置をずらす程度のことが設計事項であることは明らかである。 しかも、構成Gは、次の「(6)」のとおり周知技術であり、それを裏付ける甲第40号証や甲第41号証は構成Gの採用を示唆するものであるから、検甲1作業機において構成Gを採用することは、当業者にとって設計事項である。 さらに付言すると、被請求人は、答弁書の第25頁において、 「第1に、そもそも本件発明にかかるアシスト機構は、「エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(本件明細書、【0002】)場合に使用されることを想定したものである。 第2に、他方で、耕うんロータを実際に田んぼなどで使用しているとき(耕うん作業時)に耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりすることはあり得ない。 第3に、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能」(本件明細書、【0013】、但し下線を引いた。)とあるように、本件発明にかかるアシスト機構の効果は、エプロンが下降状態にあるときに生じ得る問題を解決することである。」と主張している。 要するに、構成Gの技術的意義(作用効果)は、耕うん作業時ではなく、爪交換時や洗浄時において、エプロンが下降状態にあるときに生じ得る問題(誤った跳ね上げによる危険)を解決することである旨、主張している。 しかし、本件明細書には、爪交換時や洗浄時においてエプロンが下降状態にあるときの作業機の姿勢について、何ら記載されていない。 つまり、構成Gの技術的意義(作用効果)が生じる前提条件である「爪交換時や洗浄時における作業機の姿勢」は、本件明細書において何ら特定されていない。 また、その爪交換時や洗浄時における作業機の姿勢は、上述のとおり甲第39号証からみても明らかなように、種々の要因により異なるため、様々である。 したがって、本件発明の構成Gは何ら技術的意義(作用効果)を有さず、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。 よって、本件発明は進歩性を欠くものである。 (6) 進歩性欠如の無効理由1(その2)について また、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点に係る構成Gは、甲第26号証(別件審決)のほか、以下に説明する甲第40号証及び甲第41号証からみて周知技術に過ぎない。 ア 甲第40号証(特開2013-215185号公報) 甲第40号証には、次の記載がある。 すなわち、【0023】には、「次に、エプロン跳ね上げ補助機構40について、図1、図2(a)、図2(b)を参照しながら説明する。エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、前側がシールドカバー22の上方に設けられた支点軸部44に回動自在に支持され後側がエプロン25の上方へ延びてエプロン25の上方に回動自在に接続されて支点軸部44を中心として上下方向に回動自在なリンクプレート41と、前側がシールドカバー22の上面に設けられた支持板43に前後方向に移動自在に支持され、後側がリンクプレート41の支点軸部44と同軸上に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(a)、図2(b)参照)と、前側が支持板43にガススプリング50の前側とともに移動自在に支持され、後側がリンクプレート41に回動自在に接続されたリンクアーム部材60とを有してなる。」と記載されている。 【0025】には、「リンクプレート41の後側には、前後方向に延びる長孔41bが形成されている。この長孔41bにはブラケット座26の側面に突出して設けられた連結軸部28が挿通されている。この連結軸部28を介してリンクプレート41とエプロン25とが連結されて、詳細は後述するが、リンクプレート41の上方への回動によってエプロン25の跳ね上げを補助することができる。」と記載されている。 【0027】には、「リンクプレート41の突出部41aの上部には、図2(a)に示すように、リンクプレート41に直交する方向に延びる軸部45が挿着さている。この軸部45は、リンクプレート41を中央にしてリンクプレート両側に略同一長さを有して突出している。この軸部45の両端部にリンクアーム部材60の後端部が回動自在に接続されている。つまり、軸部45の両端部に一対のリンクアーム部材60が接続されている。」と記載されている。 【0039】には、「ガススプリング50のロック状態が解除されると、作業者はエプロン25を把持して上方へ引き上げる。作業者によるエプロン25の引き上げ時には、図4に示すように、ガススプリング50が伸長して、そのロッド側端部50aに接続された可動軸部46が支持板43の長孔43aの前側に移動する。そして、当接板73aの前端部に、リンクアーム部材60の前端部が当接し(図4参照)、さらに、作業者がエプロン25を引き上げると、当接板73aの前端部は、リンクアーム部材60の前端部によってさらに前方へ押され、やがてロック板73は、軸部71を支点として下方へ回動し、ロック位置側へ附勢された状態(ロック待機状態)になるとともに、エプロン25の引き上げが終了する(図5参照)。」と記載されている。 【0040】には、「このとき、一対のリンクアーム部材60が前側に移動し、リンクプレート41が支点軸部44を回動支点として前側に回動する。その結果、ガススプリング50の弾性力が、連結軸部28及びブラケット座26を介してエプロン25に作用して、エプロン25の上方への回動を附勢する。このため、作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」と記載されている。 確かに、この【0040】には、「作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」としか明記されていない。 しかし、エプロン跳ね上げ補助機構40は、後述のとおり、「第3種てこ」(約1.5倍の倍力機構)を利用したものであるから、作業者がエプロン25を跳ね上げるのに要する力(従来に比べて小さな力)は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が十分に高いといえる。 また、図3及び図4は、次のとおりである。 [図:0001410817000013.jpg] [甲第40号証の図3](赤文字等は請求人が付した。以下でも同様) [図:0001410817000014.jpg] [甲第40号証の図4] [図:0001410817000015.jpg] [参考図1] ここで、上記の参考図1中の(a)は図3に対応する説明図であり、同(b)は図4に対応ずる説明図である。 この参考図1に示すように、甲第40号証記載のエプロン跳ね上げ補助機構40(FTE240のアシスト機構)は、「第3種てこ」として作用するリンクプレート41を有している。 つまり、このリンクプレート41は、支点軸部44を「支点」、軸部45を「カ点」、連結軸部28を「作用点」とする、第3種の「てこ」である。 また、このリンクプレート41には、長孔41bが形成されていることから、「支点」及び「作用点」間の距離が変化する。 そして、「力点」に働く力については、ガススプリング50のバネ定数は、参考図2(次頁参照)の如く他の弾性部材に比べて小さく、広範囲のストロークにわたって略一定の弾性力が得られるため、「f1≒f2」となる。 他方、「作用点」に働く力については、エプロン角度が大きくなるに従って、「作用点」が「支点」に近づくため、「F1<F2」となる。 つまり、ガススプリング50の弾性力に基づくアシストカは、エプロン角度の増加に応じて徐々に増加する。 そして、甲第40号証記載の作業機を前傾姿勢(下図参照)とした場合には、重カトルクの変化も加わり、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。 よって、甲第40号証には、構成Gが実質的に記載されている。 換言すると、甲第40号証に接した当業者は、力学的な技術常識を勘案することにより構成Gを認識できるから、この構成Gは甲第40号証の記載から自明な事項である。 [図:0001410817000016.jpg] [参考図2] [図:0001410817000017.jpg] [甲第40号証の図3(前傾させた状態)] イ 甲第41号証(特開2006-325526号公報) 甲第41号証には、次の記載がある。 すなわち、【0017】には、「また図8は、前記作業機1の全体側面図を示し、同作業機1は、ロータリカバー25に対し、軸芯P回りに上下揺動自在に枢着して設けたリヤカバー26を持ち上げ方向に付勢可能なガススプリング27によって支持するように構成している。このガススプリング27はリヤカバー26とサイド耕転伝動ケース4との間に装着支持している。これによって、リヤカバーの持ち上げ力が軽減され、付着した泥土の除去作業が容易に行える。」と記載されている。 また、図8は、次のとおりである。 [図:0001410817000018.jpg] [甲第41号証の図8] そして、甲第41号証の図8における作業機の姿勢は「作業姿勢」であるが、例えばトラクタの3点リンクの油圧による持ち上げにより作業機を前傾させて前傾姿勢(下図参照)とした場合には、重カトルクの変化により、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。 よって、甲第41号証には、構成Gが実質的に記載されている。 換言すると、甲第41号証に接した当業者は、力学的な技術常識を勘案することにより構成Gを認識できるから、この構成Gは甲第41号証の記載から自明な事項である。 [図:0001410817000019.jpg] [甲第41号証の図8(前傾させた状態)] ウ 重カトルクは作業機の姿勢に応じて変化する 構成Gの要する力(Fs)に関し、甲第26号証(別件審決)の第97頁第4行には、次の計算式が示されている。 [図:0001410817000020.jpg] この計算式において、アシストトルク(Ta=Fg・sinθa)は、摩擦抵抗等を考慮しなければ基本的に作業機の姿勢の影響を受けない。 これに対し、重カトルク(Tw=Rw・W・sinα)は、作業機の姿勢の影響を直に受けるため、作業機の姿勢に応じて変化する。 より具体的に説明すると、参考図3(次頁参照)に示すように、エプロンの重心位置には鉛直下向きの重力Wが作用し、この重心位置と第1の支点とを結んだ直線の鉛直方向に対する角度がaで、重心位置及び第1の支点間の距離がRwであるから、第1の支点を中心とする重カトルクは、次の式で表される。 「Tw=Rw×Wsinα」である。 そして、その重カトルクは、エプロンの重心位置が第1の支点と同じ高さのとき、つまり「a=90°」のとき、「sin90°=1」であるから、そのときが最大であり、その最大値は「T′w=Rw×W」となる。 その後、エプロンの重心位置が第1の支点を超えると、エプロン角度の増加に応じて、sinαの値が徐々に小さくなるため、重カトルクも徐々に減少する。 したがって、上述したように、甲第40,41号証記載の作業機を前傾姿勢(例えばα=90°)とした場合には、エプロンの跳ね上げに伴って重カトルクが徐々に減少するため、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。 エ 本件発明は進歩性を有しない 上記のとおりであるから、構成Gは、少なくとも甲第26号証、甲第40号証及び甲第41号証からみて周知技術(技術常識)に過ぎない。 したがって、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点は当業者にとって容易想到なものであるから、本件発明は進歩性を有しない。 [図:0001410817000021.jpg] [参考図3] 2 検甲第1号証の検証に関する暫定的見解について ・・・しかし、上記「1(3)」で述べたように、本件発明の構成(構成要件)Gは本件展示会において公然実施されたものである。 また、上申書(1)で述べたように、別件二次判決(乙第3号証)による事実認定には多くの誤りがあり、正しい事実認定をするためにも、検証が必要である。 したがって、本件展示会の際の姿勢と同じ「スタンド姿勢」で、検甲第1号証の検証を行うべきである。また、本件展示会でエプロンの下方に置いてあったパネルと略同じ大きさの「合板」(甲第25号証の1である動画1に写った合板)や、当時と同じ新品のガススプリングの用意もある。 ただし、別件無効審判において、請求人は、検甲第1号証に係る作業機について、「検証物(作業機の姿勢は、検証時の測定姿勢である作業姿勢を0°とし、前傾15°、30°、45°の15°毎の値を計算した」ところ、要する力が徐々に減少するグラフ(次頁参照)が得られ、「スタンド姿勢であれば、検甲第1号証における要する力(アシスト有りのFs)は、全範囲にわたって大幅に減少し」たことを確認した(甲第42号証の第28頁ないし第31頁を参照)。 よって、検甲第1号証は、前回の検証とは異なる「スタンド姿勢」であれば、構成Gを備えることが明らかであるから、再度の検証は必ずしも必要なものではない点を付言しておく。 [図:0001410817000022.jpg] [甲第42号証の第31頁の図1] 」(請求人陳述要領書3頁4行~36頁上の図面) <請求人上申書3> 「 [図:0001410817000023.jpg] [図:0001410817000024.jpg] [図:0001410817000025.jpg] [図:0001410817000026.jpg] [図:0001410817000027.jpg] [図:0001410817000028.jpg] [図:0001410817000029.jpg] [図:0001410817000030.jpg] [図:0001410817000031.jpg] 」(請求人上申書3添付スライド資料1~9頁) (2)無効理由2(拡大先願)について <請求書> 「甲第18号証(先願明細書)には、次の事項が記載されている・・・ また、上記【0106】ないし【0108】は、耕転爪の交換や整地体の洗浄等のメンテナンス時において、作業者が持上アシスト手段をアシストオン状態にして整地体の持ち上げを行う場合についての記載であるが、その場合における「作業機の姿勢」は何ら特定されていない。 そして、別件無効審判で請求人が提示した「Fs」の計算式(以下、単に「計算式」ということがある)中の重力トルク(Tw)は作業機の姿勢に応じて変化することから、作業機の姿勢によっては「徐々に減少する」ことになる。このような重カトルク(Tw)に関する事項は、当業者にとっての力学的な技術常識である(別件審決の第25頁を参照)。 したがって、甲第18号証(先願明細書)には、次の発明(以下、「甲18発明」という)が記載されている。 「<甲18発明> A:走行機体(トラクタ)の後部に装着され、耕うんロータ(耕転体3)を回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機(農作業機1)において、 B:前記作業機は前記走行機体と接続されるフレーム(機体2)と、 C:前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロン(整地体4)と、 D:前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリング(ガススプリング91)を含むアシスト機構(持上アシスト手段8)とを具備し、 E:前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材(長尺体93)及び第2の筒状部材(移動体111)と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構(操作レバー90及びレバー規制板125等で構成されたロック手段)とを有し、 F:前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 G:前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、 H:前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにする I:作業機。」 そもそも、別件審決の判断によれば、構成Gは当業者の技術常識であって当業者が導き出せる事項であるから、その技術常識的な構成Gは、甲第18号証に記載されているに等しい事項である。 つまり、別件審決(甲第26号証)の第99頁には、構成Gは当業者の技術常識である旨が記載されており、当業者にとって技術常識に属する構成Gは先願明細書(甲第18号証)に記載されているに等しい事項に過ぎない。」(請求書15頁3行~23頁最下行) <請求人陳述要領書> 「3 無効理由2に関する暫定的見解について 無効理由2に関し、通知書の第3頁には「請求人の、構成要件Gは周知技術であるとの主張の証拠は、甲第26号証(別件審決)のみと理解します。」と記載されている。 しかし、上記「1(6)」で述べたように、構成(構成要件)Gが甲第26号証(別件審決)のほか、甲第40号証及び甲第41号証の記載事項からみて周知技術である。 したがって、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点は実質的な相違点ではなく、また少なくとも課題解決のための具体化手段における微差である。 特に、上述のとおり作業機の姿勢及び減少程度が何ら限定されていない構成Gには技術的意義(作用効果)がないので、その相違点は周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差であることは明らかというべきである。」(請求人陳述要領書36頁1行~最下行) (3)無効理由3(実施可能要件)について <請求書> 「ア 構成Gは実施不可能である 本件発明は、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」との構成Gを備えており、この構成Gは、図7のグラフを根拠としている。 そして、構成Gの根拠である図7のグラフは、「出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果」(本件明細書の【0028】)である。 また、図7のグラフの滅少傾向は、「上記実施例の各支点の位置関係」(本件明細書の【0028】)によるものである。 しかし、本件明細書に記載された各支点の位置関係を備えた作業機において、どのような構成のガススプリング(フリーピストンタイプ)を使用すれば、図7のグラフ(約250Nの減少量)を得られるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できないから、当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。 また、図7のグラフは、本件明細書の【0028】の記載によれば、被請求人が製造販売する作業機を用いた実測結果であるが、別件無効審判において、被請求人は、図7のグラフが第1の作業機(第3の支点を25°もずらした後知恵の作業機であり、本件明細書には記載されていないもの)なるものを用いた計算結果であるかのような主張をしており、図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことを示す証拠を何一つ提出していない。 そして、構成Gの根拠である図7のグラフを得たという当時の作業機自体及びそれに関する資料が現在存在しない以上、図7のグラフは、一体どのような作業機を用いた実測結果であるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できない。 それゆえ、図7のグラフは、本件明細書の記載に基づかない作業機の実測結果であり、構成Gの根拠にはなり得ない。よって、根拠がない構成Gは当業者であっても実施不可能である。 イ 被請求人の主張 (ア) 別件無効審判での主張 被請求人は、別件無効審判において、 「オ 本件特許の図7のデータについて 出願時において本件発明の実施品が存在しなかったという主張であれば、物の発明については、その物が現実に製造されあるいはその物を製造するための最終的な製作図面が作成されていることまでは必ずしも必要でなく、その物の具体的構成が設計図面によって示され、当該技術分野における通常の知識を有する者がこれに基づいて最終的な製作図面を作成しその物を製造することが可能な状態になっていれば、発明としては完成しているというべきである(最高裁判所第二小法廷判決1986年10月3日、昭和61年(オ)第454号「ウォーキングビーム式加熱炉事件」)から、物の発明の完成について現に実施品が存在することは不要である。」(別件審決の第58頁)と主張した。 要するに、被請求人は、本件特許の原出願時において、図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が存在することは不要である旨を躊躇なく主張している。 そして、この被請求人の主張によれば、図7のグラフは、本件発明の実施品である当時の作業機を用いた実測結果ではなく、そもそも本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であるから、その図7のグラフは構成Gの根拠ではなく、構成Gは本件発明の構成ではない。 したがって、本件発明の構成Gが実施不可能であることは明らかである。 また、請求人のデータ検証によると、図7のグラフは本件発明の実施品ではない被請求人製品の「FTE240」の実測結果である可能性が高い。 被請求人がその当時、すでに製造販売していた当該「FTE240」のアシスト機構(下図参照)は、てこ(リンクプレート)を利用したものであるから、本件明細書の【0028】中の「てこの原理」の説明とも整合する。 [図:0001410817000032.jpg] (イ) 意見書での主張 また、被請求人は、意見書(甲第27号証)において、 「ここで、請求項1の「エプロン角度が増加する所定角度範囲内」とは、「エプロン角度が増加し得る全範囲(エプロンが最も下降した状態(0°)からエプロンが最も上昇した状態まで)における、全ての角度において」という意味です。[図7]では0°近傍と60°近傍において右肩下がりのグラフになっていない部分がありますが、[図7]は出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果である([0028])ところ、荷重(N)の測定開始直後の0°付近と、荷重(N)が0に達した直後の60°付近において、測定誤差が生じているに過ぎません。」(意見書の第2頁)と主張した。 要するに、被請求人は、図7のグラフが当時の作業機(本件発明の実施品)を用いた実測結果であることを自ら強調している。 それゆえ、この被請求人の主張からみても、構成Gが実施可能であるというためには、その構成Gの根拠たる図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことが当然の前提となる。 しかし、別件無効審判において、被請求人はそのことを示す証拠を何も提出しておらず、実施可能要件の立証責任を放棄している。 したがって、本件発明に係る当時の作業機が実際に存在していたことが立証されない限り、たとえ当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。」(請求書25頁7行~28頁下から5行) (4)無効理由4(サポート要件違反その1) <請求書> 「つまり、サポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に対して発明の詳細な説明による根拠(裏付け)があるかどうかである。 繰り返しになるが、別件無効審判において、被請求人は、図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことを示す証拠を何一つ提出していない。 また、別件無効審判での被請求人の主張によれば、図7のグラフは、当時の作業機を用いた実測結果ではなく、本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であるから、構成Gの根拠にはなり得ない。 それゆえ、本件明細書の発明の詳細な説明中の【0028】及び図7のグラフは構成Gの根拠ではなく、本件明細書中に構成Gの根拠が存在しない。 したがって、構成Gは、本件発明の実施品とは異なる他の作業機に係る構成であって、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。」(請求書29頁8~19行) (5)無効理由5(サポート要件違反その2) <請求書> 「本件発明の課題は、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすること」(本件明細書の【0013】)である。 そして、この課題を解決するための手段として、発明の詳細な説明には、 「・・・エプロンを跳ね上げるのに要する力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能」な構成のみが記載されている(本件明細書の【0037】)。 つまり、上記課題の解決手段として、発明の詳細な説明の記載から把握できるのは、耕うん作業時の作業姿勢(耕うん作業時の作業機の傾き)において要する力が徐々に減少するアシスト機構のみである。 この点に関し、発明の詳細な説明をみても、図7のグラフを得た際の測定方法に関する記載がないため、その図7のグラフは、上記【0037】の記載からみても、「作業姿勢」での測定結果と考えるのが自然である。 他方、請求項1には、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」としか規定されておらず、作業機の姿勢が何ら規定(限定)されていない。 それゆえ、耕うん作業時の作業姿勢とは異なる姿勢によって要する力が「徐々に増加する」場合には、上記課題を解決することができない。 したがって、本件特許の請求項1には、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されておらず、本件発明は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えたものである。 ここで付言すると、被請求人は、審査官との面接(下参照、甲第31号証)や意見書(甲第27号証)の第9頁において、【0037】に記載の「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり」という効果を奏する旨を主張している。 この主張からみても、請求項1の記載は、耕うん作業時の作業姿勢において、要する力が徐々に減少するアシスト機構に限定されなければならない。・・・ [図:0001410817000033.jpg] 」(請求書30頁7行~31頁最下行) (6)無効理由6(明確性要件違反) <請求書> 「ア 構成Gは不明確である 本件発明の構成Gは、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という発明特定事項であるが、この構成Gは、少なくとも以下の点から不明確である。 〇1 「要する力」は、エプロンに作用する重力トルクの影響により作業機の姿勢に応じて大きく変化するが、構成Gにおいて作業機の姿勢は何ら特定されておらず不明である。 〇2 「徐々に減少する」とは、どの程度の滅少(減少量)までを含むのか不明であるから、構成Gの範囲が不明確である。 〇3 「要する力」の滅少程度が「一般的な作業者が感じることができる程度」であるとした場合でも、作業者(人間)が感じ取れる感覚には個人差があるから、構成Gの範囲が不明確である。 〇4 「所定角度範囲」とは、どの範囲を意味するのか明らかではなく、構成Gの範囲が不明確である。 〇5 「徐々に減少する」とあるが、図7のグラフは「約250Nから約0Nへ急激に減少」する」ものであり、「徐々に」の意味が不明である。 〇6 図7のグラフは本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であるから、構成Gはその根拠及び基準が不明であり、その結果、構成Gの範囲が不明確である。 〇7 「要する力」はベクトル量であるが、その方向が何ら特定されていない。 〇8 本件明細書には測定方法に関する記載が皆無で、そもそも「要する力」の測定方法が不明であるから、構成Gも不明である。 被請求人は、当該測定方法が本件明細書に記載されていないことを利用して、次に述べるように主張を翻した。 上記した〇1の点に関し、別件無効審判において、被請求人が作業姿勢(耕うん姿勢)に同意したため、検甲第1号証の検証(平成30年10月30日の証拠調べ)はその作業姿勢で行われたが、その後、被請求人は、突然、「作業姿勢」ではなく、「スタンド姿勢」であると主張を翻した。 このように被請求人自身が明らかに混乱しており、構成Gが不明確あることは、もはやいうまでもない。 また、このような被請求人の対応は不誠実であり、平成30年10月30日に「スタンド姿勢」で検証が行われていたら、被請求人にとって不利な検証結果となり、別件審決の結諭も異なっていた。 さらにいうと、構成Gの「要する力」は、その方向や作業機の姿勢等の測定条件によって大きく変化するものであるから、本来、そのような測定条件を含む測定方法が本件明細書に記載されていなければならないが、その測定方法の記載は皆無であり、構成Gが不明確であることは明らかである。 イ 別件審決の判断 本件発明の構成Gに関し、別件審決(二次審決)は、一次審決とは異なり、構成Gを実施する際の作業機の姿勢は、図2に図示された作業姿勢には限定されず、スタンド姿勢を含む「作業機全体が地上に引き上げられた状態(前傾)」でもよく、かつ、構成Gの要する力の減少程度は、図7のグラフの程度には限定されず、「一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少する」程度で足りると判断した。 したがって、この別件審決の判断を前提とした場合、本件発明の構成Gの範囲は広過ぎて不明であり、構成Gが不明確であることは明らかである。 特に、構成Gにおける作業機の姿勢が、「作業姿勢」や「スタンド姿勢」等でもよい、というのであれば、作業機の姿勢に応じて重カトルクが変化して構成Gの要する力が減少したり増加したりする。 すなわち、構成Gの「要する力」は、エプロンに作用する重カトルク(Tw)の影響を直に受けるため、エプロンを跳ね上げる際の「作業機の姿勢」を変えることによって、エプロン角度が増加するごとにエプロンを跳ね上げるのに要する力が増加する場合や減少する場合等、いかようにも調整できる。 これでは、本件特許の特許請求の範囲の記載から本件発明を特定できず、その内容を明確に把握することは、当業者であっても到底不可能である。 ウ 被請求人の主張 ・・・被請求人は、審査官との面接や意見書において、【0037】に記載の「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり」という効果を奏する旨を主張している。なお、甲第31号証の面接記録をみると、当該効果の内容について審査官は理解した旨の記載もある。 しかし、請求項1の記載をみても、構成Gにおける作業機の姿勢は、その耕うん状態である「作業姿勢」に限定されておらず、請求項1の記載と前記効果の主張との間に整合性がない。 よって、このような点からも、請求項1の記載は不明確である。」(請求書32頁5行~34頁下から5行) (7)無効理由7(冒認) <請求書> 「本件特許公報には、発明者として「岡本孝志」、「阿部徹」、「藤原昇」、「小澤英樹」、「中谷公紀」、「滝口貴智」及び「藤原伸明」が記載されている。 しかし、これら7名の者は、別件審決で当業者の技術常識と判断された構成Gの理論的説明(計算式を含む)を提示できなかった。 それゆえ、別件審決の判断によれば、当該7名は、“当業者の技術常識(一般人も知っている力学的な技術常識)を欠いた者”に該当することから、そもそも当業者ではなく、本件発明の真の発明者にはなり得ない。 また、意見書(甲第27号証)には、エプロンを跳ね上げるのに要する力はエプロン荷重からアシストカを引いた差分である等といった完全に誤った説明があるだけで、請求人が提示した正しい計算式は見当たらず、その正しい計算式を理解認識してなかった7名は、決して真の発明者ではない。 もし、彼らが真の発明者というならば、当該意見書において正しい計算式を提示していたはずであるが、当該意見書の内容は、本件発明の技術的意味を十分理解した真の発明者であれば間違うはずのない事項を多く含んでおり、当業者であっても理解に苦しむ。 しかも、別件無効審判において、被請求人は、社員7名が発明したという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことを示す証拠を何一つ提出していない。 一個人による趣味的な発明ならともかく、明治43年創業の農業機械メーカーである被請求人の社員7名が発明者として記載されているにもかかわらず、研究開発の段階から発明が完成するまでの当時の資料(例えば研究開発ノート、技術成果報告書、設計図等)等が全くないということは、通常あり得ない。 加えて、以下の多くの点からみても、明らかに本件発明は冒認である。 〇1 本件特許の図面と検甲第1号証説明書の写真とを並べて見比べると、両者のアシスト機構は、全く同じである。 [図:0001410817000034.jpg] [図:0001410817000035.jpg] 特に、ロック機構の操作レバーについては、その形状や向きのみならず、長さ寸法、太さ寸法、傾斜角度等も含めて、すべて一致している。 〇2 本件特許の原出願日(原出願の優先日:平成27年8月12日)は、展示会の約1ヶ月後であるところ、1ヶ月程度あれば、展示会での写真をもとに図面を作成して出願が可能である。 〇3 展示会において、請求人の展示ブースの隣が被請求人の展示ブースであった(甲第6号証)。そして、請求人の展示ブースを撮影した写真(甲第7号証)の右下の角付近には、被請求人のカタログやパネル(「サイバーハロー」)が写り込んでおり、両者の展示ブース間の距離はそれほど近かった。このため、被請求人の展示ブースから検甲第1号証を撮影することは可能であった。 〇4 被請求人は、「展示会において被請求人の社員数人が請求人の展示ブースを訪れて検甲第1号証に示す作業機を見たこと」(別件審決の第41頁)を自認しており、その社員が検甲第1号証のアシスト機構を撮影していた可能性もある(甲第24号証)。 〇5 報告書(甲第8号証の1~5)等にもあるように、被請求人の営業部員に加えて、被請求人の開発部員も検甲第1号証を見に来ていた。 〇6 被請求人が製造販売する作業機(「FTE240」)の「クイックアシスト」は、本件発明の「アシスト機構」とはその構成が全く異なる。 〇7 被請求人が提出した意見書(甲第27号証)における「要する力」の曲線の設計理論の説明は、当業者であっても理解に苦しむ内容で、力学の視点からみても根本的に間違っている。 〇8 請求人のデータ検証によれば、図7のグラフのデータは、「FTE240」の測定データである可能性が高く、その「FTE240」のアシスト機構であれば本件明細書の【0028】中の「てこの原理」の説明とも整合する。 〇9 当時の作業機(本件発明の実施品)は現在存在せず、当時の作業機に関する資料もなく、当時の作業機の存在を示す証拠が何も残っていない。 〇10 別件無効審判において、特許庁合議体からの「測定に用いた装置類」についての説明の要請に対して被請求人は当時の作業機の構成について何ら具体的な説明を行っていない。図7のグラフのデータを得たというフリーピストンタイプのガススプリングの仕様も依然不明なままである。 〇11 被請求人が、甲第13号証の報告書に記載された「作業姿勢」の測定方法に同意したため、その「作業姿勢」で平成30年10月30日に検証が行われたが、その後別件無効審判の途中で「スタンド姿勢」であると主張を翻した。 〇12 また別件無効審判の途中で、支点位置を「25°」もずらした「第1の作業機」を突如持ち出した。その「第1の作業機」は本件明細書に記載がなく、「25°」のずれによって構成Gの要する力が大きく変化する。 〇13 設計図(甲第28号証の1~6)は、請求人が甲第18号証の出願前に試作した試作機のアシスト機構に関するものであるが、本件特許公報に記載された7名の者が真の発明者というのであれば、このような開発時の設等が残っているはずである。 〇14 報告書(甲第29号証の1~5)のとおり、平成27年7月に各地で行われた他の展示会においても、被請求人の社員(開発部員を含む)が「ニプログランドロータリーSKS」をわざわざ見に来ていた。その際に被請求人の社員がアシスト機構を撮影した可能性も十分あり得る。 〇15 別件審決(甲第26号証)の判断に従うと、それら7名は当業者の技術常識を欠いた者であって当業者ではない。 しかも、それら7名のうち、少なくとも一人(「中谷公紀」氏)は、検甲第1号証の外観を見たことを認めている(甲第30号証)。 ここで、その甲第30号証の陳述書には、「少なくとも私が展示会に参加していた時間帯では、他の同業者も一般来場者と思われる人も、新製品の写真撮影をしている様子はなく、他の同業者や一般来場者と思われる人が、新製品のエプロンを持ち上げている様子もありませんでした。」との記載があり、この記載によれば、中谷公紀氏(開発部 開発設計グループ チーム長)は7月12日午前10時ごろから午後2時ごろまでの時間帯の間ずっと、検甲第1号証を見ていたことになるが、展示会で開発部のチーム長たる者が他社のブースを4時間もの間、昼食も取らずに監視するようなことは通常あり得ないし、たとえそうだったとしても、当該記載の陳述内容は、ブログの管理人である第三者による客観的な証明書(甲第23号証)の証明内容と明らかに矛盾するものであって、全く信用できない。 さらに、その甲第30号証の陳述書には、「私は、新製品について、請求人の従業員に直接質問したり、請求人の従業員から説明を受けたりすることはなく、既述の通り、外観を見るにとどめましたが、一般来場者と思われる他の見学者に対しては、請求人の従業員が新製品について説明している様子が見られました。請求人の従業員が、他の見学者に説明している内容を聞くと、・・・具体的な力の変化までは説明されていませんでした。」との記載もあり、この記載によれば、中谷公紀氏は請求人の従業員による説明の声を聞くことができた距離に居たことになり、上記〇3でも述べたが両者の展示ブース間の距離はそれほど近く、被請求人の展示ブースから検甲第1号証のアシスト機構を撮影した可能性は十分あり得る。 〇16 別件無効審判において、構成Gに関する正しい理論的説明(「Fs」の計算式を含む)を提示したのは、「被請求人」ではなく、「請求人」である。 すなわち、別件審決(甲第26号証)の第99頁には、「このように、構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明の具体的内容は、本件無効審判においては、本件発明に係る作業機の構造と力学に関する技術常識に基づいて請求人が提示し、被請求人は、それに基づいて、構成要件Gを実現する具体例をシミュレーションし、構成要件Gが実現できることを具体的に示した。」との記載があり、構成Gの理論的説明の具体的内容を請求人が提示したことが明記されている。 また、「Fs」の計算式は、別件審決(甲第26号証)の第97頁に示された下記の式であり、この式(等号か不等号かが異なる点は除く)も請求人が提示したものである。そして、上記第99頁にも記載されているように、被請求人は、それに基づいて構成Gを実現する具体例をシミュレーションしたに過ぎない。 [図:0001410817000036.jpg] 〇17 甲第31号証の面接記録に添付された面接資料をみても、上記計算式を含む構成Gに関する正しい理論的説明の具体的内容(力学に関する技術常識に属する内容であり、本来ならば出願人が提示すべき技術的内容)の記載はなく、そのような面接資料は、特許要件を欠く発明について特許を受けるべく審査官を欺くために作成されたものであったとも考えられる。 〇18 別件無効審判で被請求人が提出した要領書(2)中の説明は、「本件発明の技術的意味を十分理解した者であれば、間違うはずのない説明事項」(一次審決)を含んだものであり、本件特許公報の7名は本件発明の技術的意味を十分理解した者ではない。 〇19 甲第4号証の農機新聞の第12頁の左上側に「新潟クボタ 1万人動員で盛況 クボタサマーフェア2015」と記載されているところ、この大盛況であった展示会において、被請求人の開発担当者が「ニプログランドロータリーSKS」を隅々まで見学していた(甲第29号証の1)。 〇20 当該農機新聞の第12頁の中央上側には、次頁に示す写真が掲載されている。そして、当該写真をみると、見学者が勝手にトラクタ(「スペシャル機」)に乗り込んでおり、このように当該展示会では、見学者が実際に展示品に触れてそれを体感できる状況にあった。 [図:0001410817000037.jpg] [甲第4号証の農機新聞の第12頁の中央上側の写真]」(請求書35頁16行~41頁下から6行) <請求人陳述要領書> 「4 冒認に関する無効理由7について 冒認における立証責任は、特許権者である被請求人にある(知財高裁平成18年1月19日判決、平成17年(行ケ)第10193号)。 しかし、被請求人は、冒認でないことを示す証拠を何も提出しておらず、その立証責任を果たしていない。 したがって、以下に示す本件図面(図2、図4)及び検甲第1号証説明書の写真(写真4、写真10)からみても明らかなとおり、本件発明は検甲第1号証に係る発明を冒認したものであるから、本件特許は冒認に関する無効理由7を有する。 [図:0001410817000038.jpg] すなわち、前頁に示した本件図面と写真とを見比べると、両者のアシスト機構は、操作レバーの形状等も含めて同じ構成である。 もし、被請求人の社員が本件図面に図示されたアシスト機構を自ら発明したのであれば、甲第28号証の1ないし6のような「設計図」が存在するはずであるが、被請求人は、そのような設計図等の証拠を何一つ提出していない。 本件図面のアシスト機構に関する研究開発の段階から発明が完成するまでの資料(研究開発ノート、設計図、技術成果報告書、発明届出書等)が存在しないということは、通常あり得ない。 特に、本件明細書の【0028】には、図7のグラフに関して「・・・出願人が製造販売する絣うん作業機を用いて実測した結果である・・・」とあるのに、その製造販売に係る作業機のアシスト機構に関する資料が全く存在しないということはあり得ないので、被請求人は当該資料を提出すべきである。 ここで、別件無効審判では、図7のグラフのデータが提出された(甲第43号証)が、当該データのみが残っているというのは不自然である。また、その甲第43号証の陳述書(2)には「当時の測定に用いた作業機は・・・現在存在しません。」とあり、自ら発明というアシスト機構に関する資料のみならず、当時の作業機も現在存在しないというのは極めて不自然である。さらに、当該陳述書(2)には、当時の作業機の構造を示す写真や図面等は添付されておらず、データがどのようなアシスト機構によるものかも不明である。 しかも、別件無効審判の口頭審理の際に、被請求人は、審判官から「市販品のガススプリングを用いたアシスト機構で図7のグラフを得られるかどうか疑問です。実際には、どんな特性のガススプリングを用いたのですか。」との質問を受けたにもかかわらず、それに対して何ら回答しておらず、当時の作業機のアシスト機構に用いた市販品のガススプリングの特性(仕様)も、未だに不明なままである。 そして、当時の作業機のアシスト機構に関する資料(ガススプリングの特性を明らかにするものを含む)を提出できないというのであれば、被請求人の社員がたまたま偶然に全く同じ構成のアシスト機構を同時期に発明したとは到底考えられないことからしても、本件図面は、本件展示会(甲第29号証の1~5の報告書に記載の他の展示会も含む)で撮影した写真をもとに、作成されたものであるといわざるを得ない。 特に、本件発明の発明者の一人として記載されている「中谷公紀」氏は、検甲第1号証の外観を見たこと等を認めており(甲第30号証)、本件展示会で検甲第1号証のアシスト機構を撮影していた可能性はあり得る。 また、検甲第1号証と同じ新製品の「ニプログランドロータリーSKS2000」を展示した他の展示会(甲第29号証の1~5)においては、被請求人の社員に対して、請求人の新製品の写真撮影やそれに触れることを「NG」にしていなかったことからも、その際に、被請求人の社員が請求人の新製品のアシスト機構を撮影したりそれを体感したりしていた可能性は十分あり得る。 さらに、請求人のデータ検証によれば、図7のグラフのデータは、「FTE240」のデータである可能性が高く、その「FTE240」のアシスト機構(甲第40号証記載のアシスト機構)であれば、本件明細書の【0028】中の「てこの原理」の説明のほか、市販品のガススプリングを用いたアシスト機構で図7のグラフを得られることや、その得たデータが残っていることとも整合する。 したがって、本件展示会や他の展示会で、被請求人の社員が検甲第1号証の写真を撮り、その写真をもとに本件図面を作成し、かつ、「FTE240」に関するデータを図7のグラフとして本件特許の出願に至った可能性は高く、当該出願は冒認出願である。 よって、本件特許は、冒認に関する無効理由7を有する。 また、冒認に関する無効理由に関し、被請求人は、答弁書の第30頁で、「検甲1発明が構成Gを有するか否かはさておき、展示会において、見学者は検甲1発明から構成Gに関する知識を得ることは不可能であった。」と主張している。 しかし、検甲第1号証の展示状況は、不特定人である見学者(当業者を含的)が構成Gを少なくとも「技術的に理解するおそれのある状況」であって、見学者が検甲第1号証から構成Gに関する知識を得ることは可能であったから、被請求人の主張は事実と異なるものであり、明らかに失当である。」(請求人陳述要領書37頁1行~40頁7行) <請求人上申書3> 「 [図:0001410817000039.jpg] [図:0001410817000040.jpg] [図:0001410817000041.jpg] [図:0001410817000042.jpg] 」(請求人上申書3添付スライド資料10~13頁) 第4 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、 本件審判の請求は成り立たない 審判費用は請求の負担とする との審決を求め、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。 2 証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 乙第1号証:無効2018-80039号に係る平成30年10月30日第1回口頭審理及び証拠調べ調書 乙第2号証:知財高裁令和2年(行ケ)第10049号判決文 乙第3号証:知財高裁令和3年(行ケ)第10137号判決文 乙第1号証及び乙第2号証は答弁書に、乙第3号証は被請求人上申書1にそれぞれ添付されて提出された。 以下、「乙第1号証」等をその数字により「乙1」等ということがある。 3 被請求人の具体的な主張 (1)無効理由1(新規性、進歩性)について <答弁書> 「第1 検甲第1号証にかかる作業機の性能を見学者が体感できたことは証明されていないこと ・・・甲第20号証などから見学者が検甲第1号証に係る作業機のエプロンを持ち上げる行為を行うことにより検甲第1号証の均平板らくらくアシストを体感できる状態にあったということはできない。 第2 仮に、見学者が検甲第1号証にかかる作業機にかかる均平板らくらくアシストを体感していたとしても、構成Gを認識することは不可能であること 1 甲第13号証、甲第22号証、甲第25号証の1ないし4について ・・・ (3)第25号証の1ないし4、甲第22号証における各測定は、検甲第1号証にかかる作業機が展示会の時と同じ状態であったということはできないこと しかしながら、甲第25号証の1ないし4、甲第22号証における各測定は、検甲第1号証にかかる作業機が展示会において展示された日から約6年半も経過した後に行われたものである。 したがって、甲第25号証の1ないし4、甲第22号証における各測定時点における検甲第1号証にかかる作業機の擢動部の錆や消耗品であるガススプリングの経年劣化の要素、消耗品であるガススプリングや各種部品の交換も想定され、甲第25号証の1ないし4、甲第22号証における各測定は、検甲第1号証にかかる作業機が展示会の時と同じ状態であったということはできない。・・・ (4)展示会においては、見学者は、せいぜいエプロンを跳ね上げるのに要する力は従来の約半分になることしか認識できないこと ・・・ しかし、もし仮に、甲第25号証の1ないし4、甲第22号証における各測定結果は正しく、見学者が検甲第1号証にかかる作業機にかかる均平板らくらくアシストを体感できる状態にあったとしても、・・・見学者はせいぜい均平板らくらくアシストを利用することでエプロンを跳ね上げるのに要する力が従来の約半分とすることを理解したに過ぎず、徐々に軽くなることまで認識したということはできないことは明らかである。・・・ (5)甲第13号証について 請求人は、甲第13号証に基づき、検甲第1号証にかかる作業機は、作業姿勢であってもエプロンを跳ね上げるのに要する力が徐々に減少することが確認できたと主張している。 しかしながら、検甲第1号証にかかる作業機は、別件無効審判の第1回口頭審理及び証拠調べにおいて、作業姿勢におけるエプロンを跳ね上げるのに要する力が測定されたところ、別件無効審判の第1回口頭審理及び証拠調べ調書に示された測定結果(乙第1号証)は、甲第13号証の測定結果とは異なるプロファイルを示している。 各測定結果を表にまとめると以下の表1のとおりとなる。なお、エプロンの角度(°)は、小数点以下は四捨五入をして整数に丸めた。 [図:0001410817000043.jpg] 上記表1からも明らかなとおり、甲第13号証の測定結果は、別件無効審判の第1回口頭審理及び証拠調べ調書に示された測定結果(乙第1号証)とは数値自体は勿輪、エプロン角度に応じたフォースゲージ(kgf)の値の傾向も大きく異なる。 ・・・ そうすると、別件無効審判の第1回口頭審理及び証拠調べ調書(乙第1号証)の測定結果とは大きく異なる甲第13号証の測定結果に基づき、展示会が開催された日において、検甲第1号証にかかる作業機は、作業姿勢であっても要する力が徐々に減少するものであったということもできない。 2 構成Gは、別件無効審判の審決(甲第26号証)における判断に基づいて技術常識ということはできないこと 請求人は、「別件の無効2018-800039号の無効審判(以下、「別件無効審判」という)の審決(甲第26号証、以下では「別件審決」という)における判断(構成Gは当業者の技術常識である等)からみても、検甲1発明が構成Gを備えたものであることは明らかである。」(10頁15~18行)などと主張する。 ・・・別件無効審判の審決(甲第26号証)の上記記載は実施可能要件の充足性を論じるなかでの議論であり、あくまで、「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し」という到達目標が「発明の詳細な説明」によってあらかじめ示されているということを前提に、発明の詳細な説明に示された作業機の構造から到達目標に達することができるか(「実施可能要件を満たすか」)を論じているのである。目的地が示された人にその目的地に行けるかどうかを問うのと、目的地さえ示されていない人が必然的にその目的地に到達するかというのは全く別問題である。・・・ したがって、当業者は、検甲1発明にかかる作業機から構成Gを導出することはできない。」(答弁書3頁15行~14頁6行) <被請求人陳述要領書> 「6-2-2.検証の必要性はないこと ・・・まず、構成要件Gにかかる構成が公然実施されたか否か、次に、検証することで公然実施された当時の検甲1作業機の構成要件Gを認定することができるか否かに基づき検討すべきである。 6-2-2-2-1.構成要件Gにかかる構成が公然実施されたといえるか否かについて 構成要件Gにかかる構成が公然実施されたか否かであるが、以下に説明するとおり、いずれの証拠からも構成要件Gにかかる構成は実施されていない。 ア 甲8の2(展示会の報告書) 均平板( エプロン)のワンタッチ跳ね上げの評価が高いからといって、展示会においてユーザがエプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で検甲1作業機の均平板( エプロン)を持ち上げていたということにはならない。・・・ イ 甲13(報告書) 甲13は、平成30年1月31日に実施された調査であって、展示会時点における検甲1作業機の状態を示すものではない。ガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下、トラックのエンジンの停止の有無、測定誤差、気温の差等により、展示会時点における検甲1作業機の状態を再現することはできないためである。 この点は、請求人が「なお、別件無効審判において平成30年10月 0日に行われた検甲第1号証の検証結果が、甲第13号証の報告書における測定結果と同様の結果にならなかったのは、例えばガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下、トラックのエンジンの停止の有無、測定誤差、気温の差等が原因と考えられる。」(令和5年4月25日付口頭審理陳述要領書、4頁下4~末行)と述べるとおりである。 ウ 甲14(カタログ) ・・・甲14には、請求人が引用するように、従来の約半分の力で持ち上げることが可能になったことが記載されているだけで、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に軽くなることなど記載されていない。・・・ エ 甲20(ブログ記事) ・・・甲20 は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で検甲1作業機の均平板( エプロン) を持ち上げていたことを示す証拠にはならず、構成要件Gにかかる構成が実施されたことを示す証拠にはならない。 オ 甲23(証明書) ・・・仮に「Nさん」と呼ばれる人物や服部泰と名乗る人物がなんらかの均平板の持ち上げ操作を行ったとしても、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において持ち上げるのに必要な力が徐々に減少することを認識することが可能な状態で検甲1作業機の均平板(エプロン)を持ち上げていたことを示すものではない。・・・ カ 甲24(陳述書) ・・・甲24は構成要件Gにかかる構成が公然実施されたことを示す証拠にはならない。 キ 甲26(別件審決) 別件審決は、あくまで本件明細書等により認められる本件発明にかかる作業機の構造から構成要件G を認識できると判断したものである。検甲1作業機の実物を見て構成要件Gを認識できると判断したものではない。・・・ ク 甲32(電子メール) ・・・甲32は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で見学者が検甲1作業機の均平板(エプロン)を持ち上げていたことを示す証拠にはならない。 ケ 甲33(証明書(2)、甲34(陳述書)及び甲35(報告書) ・・・甲33、甲34及び甲35は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で見学者が検甲1作業機の均平板( エプロン) を持ち上げていたことを示す証拠にはならない。 コ 甲36の1ないし7(写真のファイル情報)、及び甲37 ・・・甲36の1ないし7、及び甲37は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で見学者が検甲1作業機の均平板(エプロン) を持ち上げていたことを示す証拠にはならない。 サ 小括 以上のとおり、いずれの証拠も、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少することを認識することが可能な状態で見学者が検甲1作業機の均平板(エプロン)を持ち上げていたことを示すものではない。したがって、展示会において、構成要件G にかかる構成が公然実施されたということはできない。 6-2-2-2-2 .検証することで公然実施された当時の検甲1作業機の構成要件Gを認定することができるか否かについて ・・・現時点で検証しても公然実施された当時の検甲1作業機の構成要件Gを認定することはできない。 さらに、請求人自身、別件無効審判において行われた平成30年10月30日に行われた検甲1の検証結果が平成30年1月31日に行なわれた測定結果と異なる理由として、〇1ガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下、〇2気温差を挙げている。 経年劣化の観点でいえば、現在は令和5年5月であり、別件無効審判において行われた検甲1 の検証から7年は過ぎようとしている。検甲1作業機のガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下は、平成30年10月30日に比べ、著しく進んでいることは明らかである。経年劣化によるガス反力の低下した状態のままの検甲1作業機はもちろん、新たにガススプリングにガスを充填する、または取り換えられた検甲1作業機はいずれも、公然実施された当時の検甲1作業機ということはできない。 また、気温も影響するとなると、ますます、後から検甲1作業機を検証したところで、公然実施された当時の検甲1作業機が構成要件Gに対応する構成を備えていたか否かを示すことはできないことは明らかである。 答弁書の10頁下11行~11頁末行で述べたとおり、検甲1作業機の測定結果は、時々で大きく異なり、この事実も、後から検甲1作業機を検証したところで、公然実施された当時の検甲1作業機が構成要件Gに対応する構成を備えていたか否かを示すことはできないことを示している。 ・・・ 6-3-1 .新規性欠如の無効理由1について(口頭審理陳述要領書、21頁1~末行) 検甲1発明は、いずれの証拠によっても構成要件Gを備えたものということはできない。 また、構成Gは検甲1の構造を参照した当業者の技術常識的な事項でもない。・・・したがって、本件発明は、新規性欠如の無効理由1は有しない。 6-3-2.進歩性欠如の無効理由1(その1)(口頭審理陳述要領書、22頁1行~25頁末行)はないこと ・・・調整によっては、エプロン角度が増加する所定角度範囲内でエプロンを跳ね上げるのに要する力を「徐々に軽く」させるのか、「略一定」とするのか、「増加を僅かなもの」とするのかを実現できる中で、出願人は、「徐々に減少」させるという発明の目的を見出し、本件発明の構成により実現した。 したがって、構成要件G は、当業者にとって設計事項であるということなどできない。本件発明は進歩性を有するものである。 6-3-3.進歩性欠如の無効理由1(その2)(口頭審理陳述要領書、26頁1行~34頁末行)はないこと ア 甲40 (特開2013-215185号公報)について 請求人も認めるように、甲40には「この【0040】には、「作業者は小さな力でエプロン2 5を跳ね上げることができる。」としか明記されていない。」(口頭審理陳述要領書、27頁下6 ~ 下5行)。甲40にはエプロン角度が増加する所定角度範囲内でエプロンを跳ね上げるのに要する力を「徐々に軽く」させることは記載されていない。・・・ エプロン角度が増加する所定角度範囲内でエプロンを跳ね上げるのに要する力を「徐々に軽く」させることは記載されていない甲40から、構成要件Gが周知技術であるということはできない。 イ 甲41(特開2006-325526号公報)について 甲41には、甲40と同様に、リヤカバーの持ち上げ力が軽減されることは記載されているが、リヤカバーを持ち上げる力を「徐々に軽くする」ことは記載されていない。・・・ したがって、構成要件Gが、甲41から自明であるということはできない。 ウ 重力トルクは作業機の姿勢に応じて変化する(口頭審理陳述要領書、33頁)について 重力トルクは、作業姿勢に応じて変化するかもしれない。 しかしながら、・・・エプロンを跳ね上げるのに要する力を徐々に軽くするという技術思想がなければ、・・・エプロンを跳ね上げるのに要する力をエプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少させるアシスト機構(均平板らくらくアシスト)を実現することはできない。」(被請求人陳述要領書4頁13行~24頁3行) (2)無効理由2(拡大先願)について <答弁書> 「第1 別件無効審判の審決(甲第26号証)における判断を参酌しても、甲第18号証に記載の発明における持ち上げアシスト手段の作用として「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」させるものであることは技術常識ということはできないこと ・・・したがって、エプロンを跳ね上げるのに要する力を徐々に軽くするという技術思想が記載されていない甲18発明には、構成要件Gに対応する構成の記載はないし記載されているに等しい事項ということもできない。・・・ 第2 甲第18号証に記載されている事項によれば、持ち上げアシスト手段の作用として「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し」ということはできないこと 甲第18号証には、アシスト機構に関し、「なおこの例においても 整地体4はガススプリング91の付勢力のみによって最上げ位置まで上方回動しないため、作業者が最上げ位置まで人力で少し持ち上げる必要があるが、この際、ガススプリング91は、自由長(最大長さ)にはなっておらず、整地体4を上方側へ付勢しているため、作業者は、軽い人力で整地体4を最上げ位置まで持ち上げることが可能である。」(甲第18号証、【0108】、但し下線を引いた。)とあり、エプロンの持ち上げの初期段階ではガススプリング91の付勢力で持ち上げられ、最上げ位置まで上げる場合に作業者の人力が必要になることが記載されている。 すなわち、甲第18号証には、ガススプリング91の付勢力でエプロンをある程度持ち上げ、最上げ位置までエプロンを上げる場合には軽い人力が必要となるアシスト機構が記載されているだけであって、エプロンを跳ね上げるのに要する力を徐々に軽くするという技術思想を示唆する記載すらない。」(答弁書14頁13行~18頁19行) (3)無効理由3(実施可能要件)について <答弁書> 「第1 優先日前の力学に関する技術常識、明細書の記載及び図面に基づけば、構成要件Gを実施することは可能であること 請求人は、「そして、構成Gの根拠である図7のグラフは、「出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果」(本件明細書の【0028】)である。また、図7のグラフの減少傾向は、「上記実施例の各支点の位置関係」(本件明細書の【0028】)によるものである。しかし、本件明細書に記載された各支点の位置関係を備えた作業機において、どのような構成のガススプリング(フリーピストンタイプ)を使用すれば、図7のグラフ(約250Nの減少量)を得られるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できないから、当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。」(25頁11~下8行)などと主張する。 ところで、実施可能要件は、出願当時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、当業者が発明を実施することができる程度に明細書等が記載されているか否かで判断される。当然ながら、ここにいう発明とは特許請求の範囲に記載された発明である。 一方、図7のグラフは本件発明の例示である実施例における測定結果をプロットしたものである。そして、本件発明は、その特許請求の範囲の記載からも明らかなとおり、図7のグラフどおりの性能を有するアシスト機構がそのまま規定されたものではない。図7のグラフで示されたアシスト機構の性能は、本件発明の一例に過ぎない。 したがって、図7のグラフどおりの性能を有するアシスト機構を製造する具体的な方法の記載が明細書に記載がないことをもって、実施可能要件を満たさないということはできない。 ・・・優先日前の力学に関する技術常識、明細書の記載及図面に基づけば、構成要件を実施することは可能であるといえる。 第2 当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に出願時に存在していたか否かは、実施可能要件を判断するうえでは関係のない事項であること 請求人は、「そして、構成Gの根拠である図7のグラフを得たという当時の作業機自体及びそれに関する資料が現在存在しない以上、図7のグラフは、一体どのような作業機を用いた実測結果であるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できない。それゆえ、図7のグラフは、本件明細書の記載に基づかない作業機の実測結果であり、構成Gの根拠にはなり得ない。よって、根拠がない構成Gは当業者であっても実施不可能である。」(26頁1~7行)、「したがって、本件発 明に係る当時の作業機が実際に存在していたことが立証されない限り、たとえ当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。」(28頁下7~下5行)などと主張している。 しかしながら、そもそも発明に係る作業機が出願前において、発明に係る作業機が出願前に存在していたか否かは、技術的に製造不可能なために実際に存在していなかった場合はともかく、実施可能要件を判断するうえで無関係な事項である。 ・・・したがって、発明に係る作業機が出願前に存在していなかったことを理由に実施可能要件を満たさないという請求人の主張は失当である。」(答弁書18頁下から6行~22頁9行) (4)無効理由4(サポート要件違反その1) <答弁書> 「第1 明細書に記載の図が本件発明の他の作業機を用いた実測結果であることはサポート要件違反の根拠とはなり得ないこと 請求人は、「本件明細書の発明の詳細な説明中の【0028】及び図7のグラフは構成Gの根拠ではなく、本件明細書中に構成Gの根拠が存在しない。したがって、構成Gは、本件発明の実施品とは異なる他の作業機に係る構成であって、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。」(29頁下8 ~下5行)などと主張する。 しかしながら、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かの判断は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明と実質的に対応しているか否か、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、あるいは、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否かを検討してなされるべきものである。 したがって、請求人が主張するように、仮に明細書に記載の図が本件発明と構成を異にする他の作業機を用いた実測結果であるとしても、そのことはサポート要件違反の根拠とはなり得ない。 第2 本件発明はサポート要件を満たすこと 前述のとおり、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、あるいは、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否かを検討することにより判断されるべきものである。 本件明細書に記載の発明の解決すべき課題は、「ロータリ作業機は走行機体と接続されるフレームと、フレームの後方に設けられ、フレームに固定された支点(第1の支点)を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能なエプロンを有している。エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(本件明細書、【0002】)ところ、アシスト機構が作用する力を調整することで、エプロンを跳ね上げるのに要する力を徐々に小さくなるようにし、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることをなくし、相当程度の力をもって(ただし、アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることができるようにする(本件明細書、【0037】を参照。)ことである。 本件発明には、アシスト機構について、構成要件G「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、」が規定されている。 アシスト機構は、エプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少するように補助するものであり、アシスト機構により、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることをなくし、一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることができるようにすることを実現していることは明らかである。 したがって、構成要件Gを有する本件発明は、上記本件明細書に記載の発明の課題を解決できるから、サポート要件を満たすことは明らかである。」(答弁書22頁17行~24頁5行) (5)無効理由5(サポート要件違反その2) <答弁書> 「第1 本件発明の課題は、耕うん作業時の作業姿勢においてエプロンを跳ね上げるのに要する力が徐々に減少するものに限定する理由はないこと 請求人は、「つまり、上記課題の解決手段として、発明の詳細な説明の記載から把握できるのは、耕うん作業時の作業姿勢(耕うん作業時の作業機の傾き)において要する力が徐々に減少するアシスト機構のみである。」(30頁下11~下9行)、「「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり」という効果を奏する旨を主張している」(31頁5~7行)から、「それゆえ、耕うん作業時の作業姿勢とは異なる姿勢によって要する力が「徐々に増加する」場合には、上記課題を解決することができない。」(30頁下2~末行)などと主張する。 確かに、本件明細書の【0037】には、「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から」との記載はあるが、重要な点はエプロンが下降した状態にあるときに、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げないようにする点である。 「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げる」とは、以下の理由から耕うん作業時(耕うん爪が土壌を耕し又は撹拌している状態)の作業姿勢を意味しない。 第1に、そもそも本件発明にかかるアシスト機構は、「エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(本件明細書、【0002】)場合に使用されることを想定したものである。 第2に、他方で、耕うんロータを実際に田んぼなどで使用しているとき(耕うん作業時)に耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりすることはあり得ない 第3に、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能」(本件明細書、【0013】、但し下線を引いた。)とあるように、本件発明にかかるアシスト機構の効果は、エプロンが下降状態にあるときに生じ得る問題を解決することである。 ここで、エプロンの下降状態について、本件明細書には以下の記載がある。 「このエプロン跳ね上げアシスト機構141にはロック機構153が備えられている。このロック機構153はエプロン130が下降した状態(図2)において、支点151と支点152との距離を縮める方向の力を作用させないようにする。」(本件明細書、【0021】、但し下線を引いた。) [図:0001410817000044.jpg] 「第3に、本発明の実施例によれば、エプロンが下降した状態(すなわち、耕うん時の状態である。エプロンが跳ね上がった状態の時間よりもはるかに長い時間においてこの状態が維持される。)において、ガススプリングのピストンロッドが、シリンダーよりも下方に位置する。」(本件明細書、【0036】) 上記本件明細書の記載によれば、エプロンが下降した状態を耕うん時の状態として記載している。つまり、耕うん時の状態とはエプロン自体が下降した状態であることを意味し、実際に田んぼで作業している状況、すなわち、耕うん作業時(耕うん爪が土壌を耕し又は撹拌している状態)までも含めて記載されているわけではない。エプロン自体が下降した状態は、耕うん時の側面図である上記図8(本件明細書の図2)により端的に示されている。 そうすると、「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げる」における「耕うん状態においてエプロンが下降した状態」とはエプロン自体が取りうる姿勢のうち、上記図8のようにエプロンが下降した状態であることを意味すると解すのが合理的であり自然である。 したがって、「耕うん状態においてエプロンが下降した状態」を、耕うん作業時の作業姿勢と解することは、技術常識にも反する理解で不合理である。 ・・・「耕うん状態においてエプロンが下降した状態」を、耕うん作業時の作業姿勢と解する不合理な解釈に基づいて、「請求項1の記載は、耕うん作業時の作業姿勢において、要する力が徐々に減少するアシスト機構に限定されなければ」(31頁8~9行)サポート要件を満たさない、という請求人の主張は誤りである。」(答弁書24頁14行~27頁16行) (6)無効理由6(明確性要件違反) <答弁書> 「第1 構成要件Gは明確であること 請求人は、構成要件Gについて〇1~〇8の理由(32頁9行~33頁3行)を挙げて明確ではないと主張している。 しかしながら、いずれの理由によっても構成要件Gは明確でないということはできない。 〇1について(32頁9~11行)であるが、重カトルクは作業機の姿勢(地面に対する角度)によって変わるかもしれないが、その点を積極的に特許請求の範囲の文言にして構成要件Gを規定しなければならない理由はない。・・・ 〇2について(32頁12~13行)であるが、「徐々に減少する」との文言は明確である。減少の程度に関係なく、客観的にエプロンの角度が大きくなるにつれて要する力が減少すれば足りることを規定しているためである。 〇3について(32頁14~16行)であるが、そもそも構成要件Gにはそのような限定はない。また、「要する力」の減少程度が「一般的な作業者が感じることができる程度」であるとしても、エプロンを跳ね上げるのに要する力の客観的な値に鑑みれば、「要する力」の減少程度が「一般的な作業者が感じることができる程度」であると評価することは可能である。・・・ 〇4について(32頁17~18行)であるが、エプロンの地面に対する角度及び最上位の姿勢(傾き)は、設計によって変わりうるものである。そして、本件発明はエプロンを下降状態から跳ね上げる際に、跳ね上げるのに要する力をアシストするものである。一方、特定の角度範囲におけるアシスト機構の作用を問題にしないと、公知文献などとの関係で新規性・進歩性を主張できないという事情もない。 したがって、「所定角度範囲」との文言は本件発明の技術思想の観点から不明確ということはできない。 〇5について(32頁19~20行)であるが、「徐々に」の意味を踏まえると、少なくとも減少の程度に関係なく、客観的にエプロンの角度が大きくなるにつれて要する力が減少すれば足りる。 〇6について(32頁下3~末行)であるが、明確性違反とは、文言が意味するところが不明というものである。図7のグラフは本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であることは構成要件Gが不明確であると判断する理由を構成しない。 〇7について(33頁1行)であるが、「要する力」はベクトル量であるからといって、その方向を規定しなければ「要する力」が不明であるという理由はない。 〇8について(33頁2~3行)であるが、「要する力」自体は明確である。なぜなら、「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力」と規定されているためである。」(答弁書27頁下から9行~27頁9行) (7)無効理由7(冒認) <答弁書> 「第1 展示会において、見学者は検甲1発明にかかる作業機から構成Gに関する知識を得ることができない以上、冒認出願はあり得ないこと 請求人は、本件発明は冒認出願にかかる発明であることを、〇1~〇20の理由(36頁下2行~41頁8行)を挙げて主張している。 しかしながら、そもそも冒認出願とは、冒認者による出願にかかる発明と真の発明者の発明とが同一発明の場合に成立するものである。いずれも展示会当日において見学者が知り得た検甲1発明にかかる均平板らくらくアシストの構成と本件発明とを対比し、その同一性を証明するものではない。・・・ (i)見学者が検甲第1号証に係る作業機のエプロンを持ち上げることにより検甲第1号証にかかる作業機の均平板らくらくアシストを体感していたということはできない、 (ii)仮に、見学者が検甲第1号証にかかる作業機にかかる均平板らくらくアシストを体感していたとしても、構成Gを認識することは不可能である以上、展示会当日において見学者が知り得た検甲1発明にかかる均平板らくらくアシストの構成が構成Gであったということはできない。 したがって、本件発明は冒認出願にかかる発明であるということはできない。」(答弁書29頁15行~30頁3行) <被請求人陳述要領書> 「そもそも、本件発明と検甲1発明とは、構成要件Gの有無という相違点があるのであるから、冒認出願の主張は失当である。」(被請求人陳述要領書24頁10~11行) 第5 証拠について 1 主に無効理由1(新規性、進歩性)に関し、検甲1作業機についての検甲1説明書、並びに測定・撮影、パンフレット及び取扱説明書 (1)検甲1説明書 検甲第1号証に係る検証物である作業機「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」(以下、「検甲1作業機」ということがある。)について請求人が提出した説明書である検甲1説明書には、以下の記載がある。 ア 本文 「1 写真及び図面の説明 【写真1】は「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」(以下、「作業機」という)の全体を後方から撮影した写真である。 【写真2】は作業機の銘板を撮影した写真である。 【写真3】は作業機の全体を側方から撮影した写真(アシストオフ)である。 【写真4】は作業機の要部を側方から撮影した写真(アシストオフ)である。 【写真5】は作業機の要部を斜め上方から撮影した写真(アシストオフ)である。 【写真6】は作業機の全体を側方から撮影した写真(アシストオン)である。 【写真7】は作業機の要部を側方から撮影した写真(アシストオン)である。 【写真8】は作業機の要部を斜め上方から撮影した写真(アシストオン)である。 【写真9】はアシストオフ状態のアシスト機構を後斜め上方から撮影した写真である。 【写真10】はアシストオフ状態のアシスト機構を後方から撮影した写真である。 【写真11】はアシストオン状態のアシスト機構を後方から撮影した写真である。 【写真12】はアシストオン状態のアシスト機構(ゴムキャップを取り付けた状態)を後方から撮影した写真である。 【写真13】は作業機から取り外して分解したアシスト機構を撮影した写真である。 【図1】はアシストオフ状態のアシスト機構を示す側面図である。 【図2】はアシストオン状態のアシスト機構を示す側面図である。 なお、各写真は松山株式会社の社員(小林茂喜)が撮影したもので、【写真1】ないし【写真11】の撮影日は平成30年2月22日で、【写真12】及び【写真13】の撮影日は平成30年4月6日である。 また、【写真1】ないし【写真11】は第1の筒状部材の端部からゴムキャップを取り外した状態で撮影したものである。 2 構成の説明 (1) 検甲第1号証である「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」は、走行機体(トラクタ)の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機である。 そして、前記作業機は、前記走行機体と接続されるフレームと、前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンとを具備している。 また、前記作業機は、前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構を具備している。 (2) 前記アシスト機構は、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有している。 (3) 前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続されている。前記ガススプリングは、その一端がピンによって前記第1の筒状部材に接続され、かつ、その他端がピンによって前記第2の筒状部材に接続されている。 (4) 前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が、前記第3の支点を回動中心とし、前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する。つまり、作業者からみれば、エプロン角度の増加に伴って前記エプロンの荷重がだんだんと軽くなる。 (5) 前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにする。前記ロック機構は、操作レバーと、この操作レバーの回動を規制するレバー規制板を有している。 以上」(検甲1説明書1頁2行~3頁9行) イ 写真 【写真1】~【写真13】は以下のものである。 [図:0001410817000045.jpg] [図:0001410817000046.jpg] [図:0001410817000047.jpg] [図:0001410817000048.jpg] [図:0001410817000049.jpg] [図:0001410817000050.jpg] [図:0001410817000051.jpg] [図:0001410817000052.jpg] [図:0001410817000053.jpg] [図:0001410817000054.jpg] [図:0001410817000055.jpg] [図:0001410817000056.jpg] [図:0001410817000057.jpg] ウ 図面 【図1】及び【図2】は以下のものである。 [図:0001410817000058.jpg] (2)甲13 松山株式会社 小林茂喜による平成30年1月31日付け報告書である甲13には、以下の事項が記載されている ア 「「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」に関して、エプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少することを確認するために、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度の関係を調査しましたので、以下のとおりご報告いたします。 1 調査日・調査場所 平成30年1月29日(月曜) 松山株式会社本社 長野県上田市塩川5155番地 2 調査対象物 「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007))」 ・・・ 4 調査方法(エプロンを跳ね上げるのに要する力の測定方法) 〇1 調査対象物をトラクタの後部に装着し、機体における所定面が水平になるようにトップリンクを調節することで調査対象物を作業姿勢に設定した・・・ 〇2 調査対象物のエプロンに取り付けたチェーンに、クレーンのフックをフォースゲージを介して連結した(写真4、5を参照)。 〇3 調査対象物のアシスト機構をオン状態に設定した後、クレーンでエプロンを徐々に持ち上げた。 この際に、角度計でエプロン角度(5°ごとの回動角度)を測定しながら、フォースゲージで各エプロン角度におけるエプロンを跳ね上げるのに要する鉛直方向への力を測定した(写真6を参照)。 〇4 調査対象物のアシスト機構を取り外し、アシストがない状態で前記〇3と同様にエプロンを跳ね上げるのに要する鉛直方向への力の測定を行った(写真7を参照)。」(甲13の1頁下から10行~5頁3行) イ 「4 調査結果 [図:0001410817000059.jpg] 前記〇3及び〇4の測定結果から、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度の関係は、上記グラフのとおりであった。 よって、調査対象物において、エプロン角度が10°から55°の範囲で、工プロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少することを確認することができた。 以上」(甲13の6頁全文) (3)甲14 本件優先日以前に発行された、「ニプログランドロータリーSKSシリーズ」のカタログである甲14には、以下の記載がある。(甲14には頁番号が付されていないため、便宜上、その1枚目を1頁とし、以下順に頁番号を付加する。頁番号が付されていない甲号証、乙号証について、以下同様。) ア 「 [図:0001410817000060.jpg] 」(甲14の1頁) イ 「 [図:0001410817000061.jpg] 」(甲14の2頁) ウ 「 [図:0001410817000062.jpg] 」(甲14の3頁) エ 「 [図:0001410817000063.jpg] 」(甲14の4頁) (4)甲19 本件優先日以前に発行された、「ニプログランドロータリーSKS1800/2000 1800D/2000D」の取扱説明書である甲19には、以下の記載がある。 ア 「 [図:0001410817000064.jpg] 」(甲19の37頁右欄下側) イ 「 [図:0001410817000065.jpg] [図:0001410817000066.jpg] 」(甲19の38頁左欄) ウ 「 [図:0001410817000067.jpg] 」(甲19の38頁右欄上側) エ 「 [図:0001410817000068.jpg] 」(甲19の38頁右欄下側) オ 「 [図:0001410817000069.jpg] [図:0001410817000070.jpg] 」(甲19の39頁左欄) カ 「 [図:0001410817000071.jpg] 」(甲19の39頁右欄) (5)甲22 松山株式会社 小林茂喜による令和3年11月5日付け報告書である甲22には、以下の事項が記載されている ア 「「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」に関して、スタンド姿勢で、アシスト操作力(エプロンを跳ね上げるのに要する力)がエプロン角度の増加に伴って徐々に減少することを確認するために、アシスト操作力とエプロン角度の関係を調査しましたので、以下のとおりご報告いたします。 1 調査日時・調査場所・気温 令和3年11月1日 午前10時30分~午前12時00分 松山株式会社本社 長野県上田市塩川5155番地 気温 14℃~22℃(写真1、2を参照) ・・・ 2 調査対象物 「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」 ・・・ 4 調査方法(アシスト操作力の測定方法) 〇1 調査対象物をスタンドに装着し、そのスタンドによる支持で調査対象物をスタンド姿勢(入力軸が水平に対して約30°前傾した状態)に設定した(写真3~6を参照)。・・・ 〇2 調査対象物のエプロンに取り付けたチェーンに、トラックに搭載されたクレーンのフックをフォースゲージを介して連結した(写真7、8を参照)。 〇3 調査対象物のアシスト機構をアシストオン状態(写真9に示すアシスト有の状態)にして、クレーンでエプロンを徐々に持ち上げた。 この際、角度計でエプロン角度(約10゜毎の回動角度)を測定しながら、フォースゲージで各エプロン角度における鉛直方向のアシスト操作力を測定した。なお、測定は2回行った。フォースゲージの数値を読む際は、トラックのエンジンを止めて行った。 〇4 調査対象物のアシスト機構をアシストオフ状態(写真10に示すアシスト無の状態)にして、同様にアシスト操作力を測定した(但し測定は1回)。 なお、写真撮影は「山本誠」が行い、クレーン操作は平成30年10月30日の検証(証拠調べ)と同じく「黒田将仁」が行った。」(甲22の1頁下から11行~5頁最下行) イ 「5 調査結果 上記〇3及び〇4の測定データは、以下のとおりである。 [図:0001410817000072.jpg] ・・・ したがって、アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフは、以下のとおりである。 このグラフからみて明らかなように、アシスト操作力は、「アシスト有1」(オレンジ色線)の場合には約26キロから約17キロまで徐々に減少し、「アシスト有2」(青色線)の場合には約25キロから約17キロまで徐々に減少した。 [図:0001410817000073.jpg] よって、今回の調査により、「スタンド姿勢」に設定した調査対象物において、アシスト機構のアシストオン状態では、アシスト操作力(エプロンを跳ね上げるのに要する力)がエプロン角度の増加に伴って一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少することを確認できた。 以上」(甲22の6頁1行~7頁最下行) (6)甲25 検甲1作業機を撮影した動画1~4(動画1~3は令和3年11月30日撮影、動画4は令和3年12月1日撮影)である甲25の1~4は、請求人によれば、 「動画1ないし3は検甲第1号証を展示会と同じ「スタンド姿勢(前傾約30°)」に設定して撮影を行い、動画4は別件無効審判の平成30年10月30日の検証(証拠調べ)と同じ「作業姿勢」に設定して撮影を行った。(以下、「甲25撮影」ということがある。) 具体的には、動画1は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオン状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画2は、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画3は、「スタンド姿勢」、「アシストオフ状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。 動画4は、「作業姿勢」、「アシストオン状態」及び「ロックオフ状態」におけるエプロンの持ち上げの様子を撮影したものである。」(請求書10頁下から3行~11頁8行) これら動画から、以下の事項が看取できる。 ア 動画2(甲25の2)において、エプロンは、エプロン角度20°付近まで持ち上げて手を離したときよりも、同50°付近まで持ち上げて手を離したときの方がゆっくりした下方回動状態となった。さらに同60°付近まで持ち上げて手を離したときは、下方回動せず停止状態となった。 イ 動画3及び動画4(甲25の3及び4)において、エプロン角度60°付近まで持ち上げて手を離しても、停止状態とならなかった。 (7)乙1(及び甲26) 検甲1作業機である「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」を検証した調書である乙1(「無効2018-80039号に係る平成30年10月30日第1回口頭審理及び証拠調べ調書」)には、以下の記載がある。 なお、無効2018-800039号に係る令和3年10月7日付け審決である甲26(61頁下から11行~64頁「別紙」)にも、平成30年10月30日の証拠調べとして、下記アの「【1】」~「【6】」、及び下記イの「別紙」と同様の内容が記載されている。 ア 本文 「1.検証の目的物 検甲第1号証のロータリ作業機「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号1007)」・・・ 4.検証の結果 ロータリ作業機は、以下の構成を有する。 【1】作業機の全体構成 走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させる作業機であって[写真001、写真002、写真003、写真004]、 走行機体と接続される主フレームと[写真005、写真006]、 耕耘ロータの上方を覆うシールドカバーと[写真007]、 シールドカバーの後方に設けられ、シールドカバーの後端に固定された第1の支点を中心にして上下方向に回動可能であるエプロンと[写真008、写真009]、 主フレームに設けられた第1の台座に固定された第2の支点と、エプロンから上方に突出した第2の台座に固定された第3の支点との間に設けられた内側の第1の筒状部材と外側の第2の筒状部材と、を具備し[写真010、写真011]、 エプロンを最下段まで降ろした状態で、第1の筒状部材の長孔が129mm現れ[写真012]、該長孔を介して第1の筒状部材の内部に部材が見えており[写真013]、 エプロンを最上段まで上げた状態で、第1の筒状部材の長孔が、17.77mm現れている[写真014]。 【2】第1の筒状部材と第2の筒状部材の構成 (2-1) 第1の筒状部材と第2の筒状部材を作業機から外して分解し[写真015、写真016、写真017、写真018、写真019、写真020、写真021、写真022]、各筒状部材を測定した数値は、以下のとおり。 第2の筒状部材の穴と第1の突部との距離:18.2cm[写真023、写真024]。 第1の筒状部材の両端の穴間の距離:46.2cm[写真025、写真026]。 第1の筒状部材の長孔の長さ:15.9cm[写真027]。 第1の筒状部材の長孔の後方側の端部と後方側の穴間の距離:25.3cm[写真028、写真029]。 自然時のガススプリングの両端の孔間の距離:40.5cm[写真030、写真031]。 (2-2) 第1の筒状部材と第2の筒状部材、及び作業機との関係は以下のとおり。 ガススプリングがその中に位置し[写真017、写真018]、 第2の支点及び第3の支点を通る同一軸上で移動可能であって[写真011、写真032]、 第1の筒状部材には、第2の支点とガススプリングの後方側の一端とが接続され[写真011、写真017、写真018]、 第2の筒状部材には、ガススプリングの前方側の他端が、第1の筒状部材の長手方向に延びる長孔を通して接続されており[写真017、写真018]、 第2の支点と第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによってエプロンを跳ね上げる方向に力を作用させるものであって、第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が、第3の支点を回動中心とし、エプロンに第2の台座を介して設けられた第2の突部に接触して第3の支点と第2の支点との距離を縮める方向に変化するものであり、 ガススプリングは、エプロンが下降した地点において収縮するように構成されている[写真033、写真034]。 【3】エプロンを跳ね上げるのに要する力 甲第13号証(報告書)に記載されたとおりの方法により、エプロンをはね上げるのに要する力を測定した。 なお、エプロンを持ち上げる際の角度は10°毎とし[写真035、写真036、写真037]、当該クレーンはトラックに搭載されたものを用い[写真038、写真039、写真040、写真041、写真042]、フォースゲージの数値を読む[写真040]際は、トラックのエンジンを止めて行った。 エプロンの角度、フォースゲージの値、第2の支点と第3の支点間の距離、測定時の気温は別紙のとおり[写真043、写真044、写真045、写真046、写真047、写真048、写真049、写真050、写真051]。 【4】銘板 作業機の側面に取り付けられ、上から順に、「ニプロ グランドロータリー」、「型式 SKS2000」、「区分」、「製造元 松山株式会社」、「製造番号 1007」と記載されている[写真002、写真052]。 【5】シール1 シールドカバーの左上面にシール1が貼着され、該シール1の左上に「作業姿勢の目安」、左中段に「ニギリの下に穴が5個半見える位置でゲージ輪止ピンがホルダーの上穴で深さ約12cmの耕耘が出来ます。」、右上に「この面が水平になるようにトップリンクを調節して下さい。」と記載され、中央に作業機の図が記載されている[写真008、写真053]。 【6】シール2 シールドカバーの右上面にシール2が貼着され、該シール2には、 「 らくらくアシストの使い方 均平板のはね上げ ○1 ストッパーピンのレバーを「ロック」にします。 ○2 らくらくアシストのレバーを「はね上げ」にします。 ○3 ストッパーピンが自動的にロックするまで均平板を持ち上げます。 均平板を下ろすとき ○1 ストッパーピンのレバーを「フリー」にします。 ○2 均平板を少し持ち上げると、自動的にストッパーピンが抜けます。 ○3 均平板を最後まで押し上げてらくらくアシストのレバーを「耕耘」にします。 ○4 均平板を動かしてらくらくアシストが作動していないことを確認します。」 と記載され、右側に「らくらくアシスト」と「ストッパーピン」の図が記載されている[写真054、写真055]。」(乙1の1頁下から13行~3頁下から3行) イ 別紙 「 [図:0001410817000074.jpg] 」(乙1の24頁) (8)検甲1発明 上記(1)の検甲1説明書の説明に基づき、検甲1作業機は、少なくとも次の発明(以下「検甲1発明」という。)を備えるものと認定する。(a~h、iの分説は、当審において付与。以下、それぞれ、「構成a」などということがある。) 但しここでは、当事者間に争いがある、エプロンを跳ね上げるのに要する力に関する構成、すなわち、本件発明の構成Gに対応する構成については、後に検討することとして検甲1発明の構成から省き、それ以外の構成について認定する。 〔検甲1発明〕 「a 走行機体(トラクタ)の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機であって、 b 前記作業機は、前記走行機体と接続されるフレームと、 c 前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンとを具備し、 d 前記作業機は、前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構を具備しており、 e 前記アシスト機構は、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有し、 f 前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 前記ガススプリングは、その一端がピンによって前記第1の筒状部材に接続され、かつ、その他端がピンによって前記第2の筒状部材に接続され、 h 前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにするものであり、 前記ロック機構は、操作レバー、この操作レバーの回動を規制するレバー規制板を有している、 i 作業機。」 2 無効理由1(新規性、進歩性)における周知技術 (1)甲40 本件優先日以前に発行された甲40には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方がシールドカバーによって覆われ、シールドカバーの後端部にエプロンが上下方向に回動自在に設けられ、エプロン跳ね上げ補助機構が設けられた耕耘作業機に関する。」 イ 「【0022】 シールドカバー22の前方側には、走行機体の後輪幅に合わせて、作業時に耕耘ロータ20による作業深さを一定にしながら圃場に接して走行する図示しない一対の接地輪が設けられている。シールドカバー22及びエプロン25の上方には、作業者がエプロン25の跳ね上げ操作を行う際に容易にエプロン25を跳ね上げられるエプロン跳ね上げ補助機構40が設けられている。 【0023】 次に、エプロン跳ね上げ補助機構40について、図1、図2(a)、図2(b)を参照しながら説明する。エプロン跳ね上げ補助機構40は、図1及び図2(b)に示すように、前側がシールドカバー22の上方に設けられた支点軸部44に回動自在に支持され後側がエプロン25の上方へ延びてエプロン25の上方に回動自在に接続されて支点軸部44を中心として上下方向に回動自在なリンクプレート41と、前側がシールドカバー22の上面に設けられた支持板43に前後方向に移動自在に支持され、後側がリンクプレート41の支点軸部44と同軸上に回動自在に接続されたガススプリング50(図2(a)、図2(b)参照)と、前側が支持板43にガススプリング50の前側とともに移動自在に支持され、後側がリンクプレート41に回動自在に接続されたリンクアーム部材60とを有してなる。 ・・・ 【0025】 リンクプレート41の後側には、前後方向に延びる長孔41bが形成されている。この長孔41bにはブラケット座26の側面に突出して設けられた連結軸部28が挿通されている。この連結軸部28を介してリンクプレート41とエプロン25とが連結されて、詳細は後述するが、リンクプレート41の上方への回動によってエプロン25の跳ね上げを補助することができる。 ・・・ 【0027】 リンクプレート41の突出部41aの上部には、図2(a)に示すように、リンクプレート41に直交する方向に延びる軸部45が挿着さている。この軸部45は、リンクプレート41を中央にしてリンクプレート両側に略同一長さを有して突出している。この軸部45の両端部にリンクアーム部材60の後端部が回動自在に接続されている。つまり、軸部45の両端部に一対のリンクアーム部材60が接続されている。 【0028】 リンクアーム部材60は、一対の支持板43の内面に対して隙間を有して支持板43に沿って延びている。リンクアーム部材60の後側には、図2(b)に示すように、リンクプレート41の突出部41aに設けられた軸部45を移動自在に支持可能な長孔60aが設けられている。エプロン25の上方への跳ね上げを補助する際には、長孔60の最後端部に軸部45が当接した状態でリンクアーム部材60が前方へ移動し、それに伴って軸部45も前方へ移動することで、リンクプレート41は支点軸部44を中止として前方へ回動する。」 ウ 「【0038】 エプロン跳ね上げ補助機構40がこのような状態にあるときにエプロン25を跳ね上げる場合には、先ず、作業者はロック装置70の操作ハンドル76の把手部76b1を把持して後方側へ引っ張る操作を行う。把手部76b1が後方側へ引っ張られると、回動連結部材76aを介してロック板73が引っ張りばね79の附勢力に抗して前側に回動する。従って、ロック板73は、図3に示すように、上方へ回動して当接板73aの後端部がリンクアーム部材60の前端部から外れて、ガススプリング50のロック状態が解除される。 【0039】 ガススプリング50のロック状態が解除されると、作業者はエプロン25を把持して上方へ引き上げる。作業者によるエプロン25の引き上げ時には、図4に示すように、ガススプリング50が伸長して、そのロッド側端部50aに接続された可動軸部46が支持板43の長孔43aの前側に移動する。そして、当接板73aの前端部に、リンクアーム部材60の前端部が当接し(図4参照)、さらに、作業者がエプロン25を引き上げると、当接板73aの前端部は、リンクアーム部材60の前端部によってさらに前方へ押され、やがてロック板73は、軸部71を支点として下方へ回動し、ロック位置側へ附勢された状態(ロック待機状態)になるとともに、エプロン25の引き上げが終了する(図5参照)。 【0040】 このとき、一対のリンクアーム部材60が前側に移動し、リンクプレート41が支点軸部44を回動支点として前側に回動する。その結果、ガススプリング50の弾性力が、連結軸部28及びブラケット座26を介してエプロン25に作用して、エプロン25の上方への回動を附勢する。このため、作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」 ウ 図面は以下のものである。 (ア)図3は以下のものである。 [図:0001410817000075.jpg] (イ)図4は以下のものである。 [図:0001410817000076.jpg] (2)甲41 本件優先日以前に発行された甲41には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 この発明は、ロータリ耕耘装置におけるロータリ爪への草巻き付きを防止する草巻付防止装置に関する。」 イ 「【0017】 また図8は、前記作業機1の全体側面図を示し、同作業機1は、ロータリカバー25に対し、軸芯P回りに上下揺動自在に枢着して設けたリヤカバー26を持ち上げ方向に付勢可能なガススプリング27によって支持するように構成している。このガススプリング27はリヤカバー26とサイド耕耘伝動ケース4との間に装着支持している。これによって、リヤカバーの持ち上げ力が軽減され、付着した泥土の除去作業が容易に行える。」 ウ 図面は以下のものである。 (ア)図8は以下のものである。 [図:0001410817000077.jpg] 3 無効理由2(拡大先願)における先願 (1)甲18 先願明細書である甲18(甲18に係る先願の出願人及び発明者は、本件特許に係る出願の出願人及び発明者と、同一ではない。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、作業者の負担を軽減できる農作業機に関するものである。 【背景技術】・・・ 【0003】 この従来の農作業機は、トラクタ等の走行車に連結される機体と、この機体に回転可能に設けられ回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、機体に上下方向に回動可能に設けられ耕耘体の後方で整地作業する整地体と、この整地体を最上げ位置にロックするストッパ装置とを備えている。・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば耕耘体の爪交換や整地体の洗浄等のメンテナンスを行う際に、作業者は、比較的重い整地体を持ち上げる必要があり、この整地体の持ち上げに手間取るおそれがある。 イ 「【図面の簡単な説明】 【0018】 ・・・ 【図24】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機のアシストオフ時の側面図である。 【図25】同上農作業機のアシストオフ時の側面図である。 【図26】同上農作業機のアシストオン時の側面図である。 【図27】同上農作業機のアシストオン時の側面図である。 ・・・ 【図31】同上持上アシスト手段の動作図である。 【図32】同上持上アシスト手段の分解正面図である。 【図33】同上持上アシスト手段の分解側面図である。 ・・・ 【発明を実施するための形態】 【0019】 本発明の第1の実施の形態について図1ないし図12を参照して説明する。 【0020】 図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により圃場上を前方(進行方向)に移動しながら耕耘整地作業(農作業)を行うものである。 【0021】 農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に脱着可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)3と、機体2に左右方向の軸(回動支点)5を中心として上下方向に回動可能に設けられ耕耘体3の後方で整地作業する板状の整地体(均平板)4とを備えている。 【0022】 また、農作業機1は、耕耘体3や整地体4等のメンテナンス時に作業者の人力による整地体4の持ち上げ(上方回動)をアシストする持上アシスト手段8を備えている。持上アシスト手段8は、例えば1本で、農作業機1の一方側である左側の位置において機体2と整地体4との間に設けられている。」 ウ 「【0046】 そして、図3に示すように、例えばメンテナンス時等において、整地体4を軸5を中心として上方に回動させることによって最上げ位置(メンテナンス位置)まで持ち上げると、ストッパ装置53のストッパピン54が連結ロッド55のストッパピン用孔部に自動的に挿入され、その結果、整地体4が最上げ位置に位置決め固定される。」 エ 「【0080】 また、農作業機1の持上アシスト手段8は、例えば図24ないし図33に示す第3の実施の形態のように、伸縮可能な付勢体であるガススプリング91の付勢力を利用して整地体4を上方側に付勢することによって、整地体4の持ち上げをアシストするものでもよい。 【0081】 そして、この持上アシスト手段8は、操作部材である操作レバー90の操作(例えば位置変更である回動)により、ガススプリング91が整地体4を上方側に付勢するアシストオン状態およびガススプリング91が整地体4を上方側に付勢しないアシストオフ状態に選択的に切換可能となっている。 【0082】 すなわち例えば、持上アシスト手段8は、操作レバー90の一方向への回動(例えば下方回動)によってアシストオフ状態(ロック状態)となり、操作レバー90の一方向とは反対方向である他方向への回動(例えば上方回動)によってアシストオン状態(ロック解除状態)となる。 【0083】 ここで、持上アシスト手段8は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)93を有している。 【0084】 長尺体93は、機体2に左右方向の軸37を中心として上下方向に回動可能に設けられている。つまり、機体2の左側のフレームパイプ部18には取付部33が突設され、この取付部33に長尺体93の前端部が軸37を介して回動可能に取り付けられている。 【0085】 長尺体93は、例えば1本の丸パイプのみからなるものであり、この長尺体93の前端部には軸用孔部94が形成され、この軸用孔部94と取付部33の孔部分とに軸37が挿入され、この挿入された軸37を中心として長尺体93が機体2に対して上下方向に回動可能となっている。また、長尺体93の前後方向中間部には、この長尺体93の長手方向に沿った長孔状の案内長孔部95が形成されている。さらに、長尺体93の後端部には、ピン用孔部96が形成されている。 【0086】 そして、長尺体93内にガススプリング91が収納配設されており、その結果、このガススプリング91は、その全体が常に長尺体93によって覆われて保護されている。このガススプリング91は、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部98と、この本体部98内に対して出入りするロッド部99とにて構成されている。 【0087】 ガススプリング91の本体部98の基端部にはピン用孔部100が形成されており、このピン用孔部100および長尺体93のピン用孔部96に挿入された取付ピン101と抜止めピン102とによって、ガススプリング91の本体部98が長尺体93に取り付けられている。 【0088】 また、持上アシスト手段8は、挿通孔部105を有する短筒状(例えば八角筒状)の回動体(タンブラ)106を有している。この回動体106は、整地体4の突出板28の上部における上方突出部分に回動可能に設けられている。 【0089】 回動体106は、挿通孔部105が形成された八角筒状の筒状部107と、この筒状部107の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部108とにて構成され、この各軸状部108が突出板28の取付孔部28aに回動可能に取り付けられている。そして、回動体106は、整地体4に対して左右方向の軸状部108を中心として回動可能となっている。 【0090】 さらに、持上アシスト手段8は、回動体106の挿通孔部105に挿通され長尺体93に対して移動可能(例えばスライド移動可能)な移動体(アウターパイプ)111を有している。この移動体111は、長尺体93の外側(外周側)にこの長尺体93の外周面に沿って前後方向(長尺体の長手方向)にスライド移動可能、つまり摺動可能に配設されている。 【0091】 移動体111は、外周側に回動体106がスライド移動可能に配設された前後方向長手状で円筒状の筒状部112を有し、この筒状部112の前端部にはピン用孔部113が形成されている。そして、そのピン用孔部113、ロッド部99のピン用孔部114および長尺体93の案内長孔部95に挿入された取付ピン115と抜止めピン116とによって、ガススプリング91のロッド部99が移動体111に取り付けられている。このため、移動体111を上方側へ向けて付勢するガススプリング91の伸縮に応じて、移動体111が長尺体93の外周面に沿ってスライド移動する(図31参照)。なおこのとき、取付ピン115が長尺体93の案内長孔部95にて案内される。 【0092】 また、筒状部112の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段8のアシストオン状態時にガススプリング91の付勢力に基づいて回動体106を押し上げる円形環状の回動体当接部である鍔部118が突出状に固設されている。さらに、筒状部112の後端側には、規制板取付部120およびレバー取付部121が固設されている。なお、規制板取付部120は、ねじ孔部122が形成された略L字状のL字板123にて構成されている。レバー取付部121は、互いに離間対向する対をなす対向板124にて構成されている。 【0093】 そして、移動体111の規制板取付部120には、操作レバー90との当接によりこの操作レバー90の必要以上の回動を規制する規制部であるレバー規制板125が取付ねじ126にて取り付けられている。レバー規制板125には、取付孔部127および規制長孔部128が形成されている。 【0094】 また、移動体111のレバー取付部121には、作業者が把持して手動操作する略L字状の操作レバー90がオフ位置(下位置)およびオン位置(上位置)に回動可能に取り付けられている。 ・・・ 【0097】 また一方、レバー規制板125には、操作レバー90をオフ位置およびオン位置のいずれかの位置に位置決めする弾性変形可能な板状の弾性部材である板バネ136が取付手段137にて脱着可能に取り付けられているなお、取付手段137は、例えばボルト138、ナット139およびスペーサ140にて構成されており、レバー規制板125と板バネ136との間には隙間部135が存在している。 ・・・ 【0100】 そして、操作レバー90がオフ位置やオン位置に位置すると、板バネ136は弾性復元力により元の平板状に復帰し、この復帰した板バネ136によって操作レバー90がその所望位置(オフ位置およびオン位置のいずれかの位置)に位置決め保持される。 【0101】 また、図30から明らかなように、操作レバー90がオフ位置に位置した状態では、操作レバー90の一部である当接部90aが長尺体93の後端面93aに対向してこの後端面93aと当接しており、その結果、移動体111の長尺体93に対する移動が規制されている。しかし、操作レバー90をオフ位置からオン位置まで上方側へ回動させると、操作レバー90の当接部90aが長尺体93の後端面93aから離れ、この操作レバー90による移動体111の移動規制が解除される。 【0102】 なお、この図24ないし図33に示す第3の実施の形態に係る農作業機1のその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じである。 【0103】 そして、この第3の実施の形態に係る農作業機1を用いて耕耘整地作業をする作業時には、作業者は、操作レバー90を操作してオフ位置に位置させることによって、持上アシスト手段8をアシストオフ状態に設定する。 ・・・ 【0105】 このとき、操作レバー90の当接部90aが長尺体93の後端面93aと当接することでこの操作レバー90にて長尺体93に対する移動体111の前方移動が規制(つまりガススプリング91の伸びが規制)されているため、回動体106は、整地体4の上下回動に応じて、移動体111に対して前後方向にスライド移動する(図25参照)。つまり、回動体106が移動体111の筒状部112の外周面に沿って前後方向にスライド移動することによって、整地体4が機体2に対して軸5を中心として上下方向に回動する。 【0106】 また一方、例えば耕耘爪24の交換や整地体4の洗浄等のメンテナンス時には、作業者は、操作レバー90を操作してオン位置に位置させることによって、当接部90aを長尺体93の後端面93aから離して、持上アシスト手段8をアシストオン状態に設定する。 【0107】 すると、長尺体93に対する移動体111の前方移動が許容(つまりガススプリング91の伸びが許容)されることとなり、移動体111が鍔部118に当接した回動体106とともに長尺体93に対してガススプリング91の付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体4がガススプリング91の付勢力に基づいて上方へ回動する(図27参照)。 【0108】 そして、作業者が整地体4を最上げ位置まで軽い人力で持ち上げると、ストッパ装置53によって整地体4がその最上げ位置に自動的にロックされる。なお、この例においても、整地体4は、ガススプリング91の付勢力のみによって最上げ位置まで上方回動しないため、作業者が最上げ位置まで人力で少し持ち上げる必要があるが、この際、ガススプリング91は、自由長(最大長さ)にはなっておらず、整地体4を上方側へ付勢しているため、作業者は、軽い人力で整地体4を最上げ位置まで持ち上げることが可能である。 【0109】 このように、第3の実施の形態に係る農作業機1でも、前記第1、2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。 【0110】 すなわち、例えばメンテナンス時等に操作レバー90の操作により持上アシスト手段8をアシストオン状態に切り換えると、このアシストオン状態の持上アシスト手段8が整地体4の持ち上げをアシストするため、作業者は整地体4を最上げ位置まで容易に持ち上げることができ、作業者の負担を軽減できる。 ・・・ 【0112】 さらに、操作レバー90がオフ位置に位置した持上アシスト手段8のアシストオフ状態時には、操作レバー90にて長尺体93に対する移動体111の移動が規制され、この移動が規制された移動体111に対して回動体106が整地体4の動きに応じて移動するため、持上アシスト手段8が整地体4による整地作業に悪影響を及ぼすことがない。 【0113】 また、操作レバー90がオン位置に位置した持上アシスト手段8のアシストオン状態時には、長尺体93に対する移動体111の移動が許容され、この移動が許容された移動体111が長尺体93に対して回動体106とともにガススプリング91の付勢力に基づいて移動するため、そのガススプリング91の付勢力を利用して整地体4の持ち上げを適切にアシストできる。」 オ 図面は以下のものである。 (ア)図24は以下のものである。 [図:0001410817000078.jpg] [図:0001410817000079.jpg] (イ)図25は以下のものである。 [図:0001410817000080.jpg] [図:0001410817000081.jpg] (ウ)図26は以下のものである。 [図:0001410817000082.jpg] [図:0001410817000083.jpg] (エ)図27は以下のものである。 [図:0001410817000084.jpg] [図:0001410817000085.jpg] (オ)図31は以下のものである。 [図:0001410817000086.jpg] (カ)図32は以下のものである。 [図:0001410817000087.jpg] (キ)図33は以下のものである。 [図:0001410817000088.jpg] カ 図24、図25において、軸5は、機体2の後方に設けられ、整地体4の前端部近傍にあることが見て取れる。 図24、図25において、長尺体93及び移動体111は、軸37、軸状部108(取付孔部28a)を通る同一軸上にあることが見て取れる。 キ 図31から、操作レバー90の一方向への回動により、アウターパイプである移動体111の内側に位置するインナーパイプである長尺体93が、移動体111から突出することが妨げられることが見て取れる ク 図32、図33から、ピン用孔部96は長尺体93の下方に開口していることが見て取れる。 ケ 【図面の簡単な説明】によれば、図25は「農作業機のアシストオフ 時の側面図」であって、【0103】に「作業者が、操作レバー90を操作してオフ位置に位置させることによって、持上アシスト手段8をアシストオフ状態に設定する。」、【0104】に「トラクタの走行により農作業機1を進行方向に移動させると、耕耘体3が耕耘作業をし、その後方で整地体4 が整地作業をする。」、【0105】に「このとき、・・・整地体4の上下回動に応じて、移動体111に対して前後方向にスライド移動する(図25参照)。」と記載されていることから、図25の農作業機の位置及び傾きは、耕耘作業時のものであって、持上アシスト手段はアシストオフ時である。 同じく、図27は「農作業機のアシストオン時の側面図」であって、【0106】に「また一方、例えば耕耘爪24の交換や整地体4の洗浄等のメンテナンス時には、作業者は、操作レバー90を操作してオン位置に位置させることによって、・・・持上アシスト手段8をアシストオン状態に設定する。」、【0107】に「すると、長尺体93に対する移動体111の前方移動が許容 (つまりガススプリング91の伸びが許容)されることとなり、・・・その結果、整地体4がガススプリング91の付勢力に基づいて上方へ回動する(図27参照)。」と記載されていることから、図27の農作業機の位置及び傾きは、耕耘爪24の交換や整地体4の洗浄等のメンテナンス時のものであって、持上アシスト手段がアシストオン時である。 また、図25の農作業機の位置と図27の農作業機の位置及び傾きは略同一と看取できるから、メンテナンス時の持上アシスト手段のアシストオン時の作業機の位置及び傾きは、農作業時の農作業機の位置及び傾きと略同じである。 コ 上記アないしケからみて、甲第18号証には以下の発明(以下「甲18発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲18発明] トラクタの後部に脱着可能に連結される機体と、この機体に回転可能に設けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)と、機体の後方に設けられた回動支点を中心として上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体の後方で整地作業する板状の整地体(均平板)とを備えている農作業機であって、 前記回動支点は整地体の前端部近傍にあり、 作業者の人力による整地体の持ち上げ(上方回動)をアシストする持上アシスト手段を備えており、 持上アシスト手段は、操作レバーの一方向への回動(例えば下方回動)によってアシストオフ状態(ロック状態)となり、操作レバーの一方向とは反対方向である他方向への回動(例えば上方回動)によってアシストオン状態(ロック解除状態)となり、 持上アシスト手段は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)、及び回動体の挿通孔部に挿通され長尺体に対してスライド移動可能な移動体(アウターパイプ)を有し、 操作レバーの一方向への回動により、アウターパイプである移動体の内側に位置するインナーパイプである長尺体が、移動体から突出することが妨げられ 長尺体は、機体に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に設けられており、長尺体内にガススプリングが収納配設されており、このガススプリングは、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部と、この本体部内に対して出入りするロッド部とにて構成され、本体部の基端部が長尺体に取り付けられ、 移動体は、外周側に回動体がスライド移動可能に配設された前後方向長手状で円筒状の筒状部を有し、この筒状部の前端部にはガススプリングのロッド部が取り付けられており、このため、移動体を上方側へ向けて付勢するガススプリングの伸縮に応じて、移動体が長尺体の外周面に沿ってスライド移動するようになっており、筒状部の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段のアシストオン状態時にガススプリングの付勢力に基づいて回動体を押し上げる円形環状の回動体当接部である鍔部が突出状に固設されており、 回動体は、筒状部と、この筒状部の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部とにて構成され、この各軸状部が整地体の突出板の取付孔部に回動可能に取り付けられており、 長尺体及び移動体は、左右方向の軸、取付孔部を通る同一軸上にあり、 農作業機が耕耘作業時の位置及び傾きにおいて、持上アシスト手段をアシストオン状態に設定することにより、長尺体に対する移動体の前方移動が許容(つまりガススプリングの伸びが許容)されることとなり、移動体が鍔部に当接した回動体とともに長尺体に対してガススプリングの付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体がガススプリングの付勢力に基づいて上方へ回動する、 農作業機。」 第6 当審の判断 1 無効理由1(新規性、進歩性)について (1)新規性について ア 対比 本件発明と検甲1発明を対比すると、検甲1発明の構成a~h、iは、それぞれ、本件発明の構成A~H、Iに相当することは明らかである。 よって、本件発明と検甲1発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。 <一致点1> 「A 走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、 B 前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、 C 前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、 D 前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、 E 前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有し、 F 前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 H 前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにすることを特徴とする I 作業機。」 <相違点1> 本件発明においては、 「G 前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するのに対し、 検甲1発明は、そのような特定を有しない点。 イ 相違点についての検討・判断 展示会「元氣農業応援フェア 2015 in つくば」(以下、単に「展示会」ということがある。)において、公然知られた又は公然実施されたと請求人が主張する検甲1作業機(に係る発明)が、当該展示会時に、検甲1発明の構成に加え、構成Gに相当する構成を備えていたといえるかどうかについて、検討する。 (ア)エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係についての測定等結果 検甲1作業機における、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を測定等した証拠は、上記第5の1(2)の甲13、(5)の甲22、(7)の乙1の各測定結果、加えて(6)の甲25の1~4の動画(とくに甲25の2)である。 a 甲13 上記第5の1(2)に摘記したとおり、甲13は、平成30年1月29日に、「作業姿勢」で、検甲1作業機のエプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を測定したものであり(以下、この測定を「甲13測定」ということがある。甲22、乙1における測定ついても同様。)、その結果は以下のとおりである。 [図:0001410817000089.jpg] b 甲22 上記第5の1(5)に摘記したとおり、甲22は、令和3年11月1日に、「スタンド姿勢」で、検甲1作業機のエプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係測定したものであり、その結果は以下のとおりである。 [図:0001410817000090.jpg] c 乙1 上記第5の1(7)に摘記したとおり、乙1は、平成30年10月30日に検甲1作業機のエプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を測定したものである(なお、乙1中には、「作業姿勢」での測定との直接的な文言はないが、「作業姿勢」での測定であることについて、両当事者間に争いはない。)その結果は以下のとおりである。 [図:0001410817000091.jpg] d 甲25 上記第5の1(6)に摘記したとおり、甲25の2(動画2)は、令和3年11月30日に、「スタンド姿勢」、「アシストオン状態」で、検甲1作業機のエプロンを持ち上げて手を離したときの状況とエプロン角度との関係を撮影した動画であり、エプロンは、エプロン角度20°付近まで持ち上げて手を離したときよりも、同50°付近まで持ち上げて手を離したときの方がゆっくりした下方回動状態となった。さらに同60°付近まで持ち上げて手を離したときは、下方回動せず停止状態となったことが撮影されている。 (イ)検討 上記(ア)bで示したとおり、甲22測定では、 アシスト機構を備える検甲1作業機について、「スタンド姿勢」において、 エプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する所定角度範囲内(10.1°あるいは10.3°から60.0°)において、エプロン角度約10°ごとに、「アシスト有1」測定で25.8kgf→23.5kgf→21.4kgf→19.8kgf→18.2kgf→17.3kgf、「アシスト有2」測定で24.7kgf→22.5kgf→20.4kgf→19.2kgf→17.5kgf→16.7kgfとの測定結果が得られている。 すなわち、甲22測定により、検甲1作業機は、その測定時点において、エプロンを跳ね上げるのに要する力が徐々に減少したことが示されている。 ここで、検甲1の検証について、第5の1(1)アで摘記したように、検甲1説明書に記載された、検甲1の検証が立証しようとする事実も、要する力が「徐々に減少する」という(検甲1説明書3頁3行)、甲22測定により示された結果と同様のものであるから、あらためて検甲1の検証を行う必要はないと判断した。 そこで次に、展示会時の検甲1作業機においても、甲22測定時と同様の、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を有していたと特定し得るかどうかについて検討する。 甲13測定と乙1測定は、ともに、アシスト機構を備える検甲1作業機について、「作業姿勢」において、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を測定したものである。 しかしながら、両測定結果をみると、甲13測定では、上記(ア)aに示したとおり、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内(10°から55°)において、エプロン角度5°ごとに、24.0kgf→23.1kgf→22.3kgf→21.9kgf→21.0kgf→20.8kgf→20.4kgf→19.8kgf→19.1kgf→19.0kgfと、減少傾向であることが示されたのに反し、 乙1測定では、上記(ア)cに示したとおり、第1回測定で、エプロン角度約20°から約10°ごとに、13.8kgf→13.8kgf→14.0kgf→13.8kgf→14.2kgf、 第2回測定で、エプロン角度約10°から約10°ごとに、13.0kgf→13.6kgf→14.0kgf→14.0kgf→14.1kgf→13.9kgfと、 エプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する角度範囲内において減少するものではないことが示された。 すなわち、この甲13測定と乙1測定から、検甲1作業機においては、ある時点で得られた、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係の測定結果が、他の時点でも同様とは必ずしもいえるものではないことが示されている。ここで、甲13測定と乙1測定は「作業姿勢」によるものであるが、甲22測定のような「スタンド姿勢」での測定であれば事情が異なるという特段の理由もない。よって、展示会ではない時点における、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係の測定結果をもって、展示会時の同関係を特定し得るものではないというべきである。また、甲25撮影についても、同様の理由から、その撮影時における状況をもって、展示会時の状況を特定し得るものではないというべきである。 ウ 請求人の主張について (ア)検甲1作業機が構成Gを有するものであることについての主張 a 請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、以下のように、検甲1作業機が構成Gを有するものである旨の主張を行っている。 「・・・「スタンド姿勢」での検証なら、甲第22号証の測定結果と同様、「徐々に減少する」結果になることを確認できる。」(請求人上申書1の3頁7~9行) 「・・・「作業姿勢」(耕うん姿勢)は、「スタンド姿勢」とは前傾角度が約30度以上も異なる(下写真を参照)。 別件無効審判における前回の検証時(平成30年10月30日)に、「スタンド姿勢」での検証が行われていれば、構成Gの要する力が徐々に減少する結果が得られていた。 前回の検証結果が「略一定」(作業姿勢)であったことから、作業機の姿勢に応じて変化する重カトルクの影響によって、今回の検証では「徐々に減少」(スタンド姿勢)の結果が得られ、検甲第1号証が構成Gを備えたものであることが明らかとなる。」(請求人上申書1の6頁2~9行) 「・・・甲第13号証(報告書)、甲第22号証(報告書)、甲第25号証の1ないし4(動画)、甲第26号証(別件審決)等からみて、本件展示会の時点で検甲第1号証が構成(構成要件)Gを有していたことは明らかである。特に、動画2(甲第25号証の2)におけるエプロンの挙動に着目すれば、構成Gを有していたことは明らかといえる。」(請求人陳述要領書19頁2~7行) 上記主張について検討する。 まず、請求人が「今回の検証で・・・明らかとなる」と述べている、スタンド姿勢において、「構成Gの要する力が徐々に減少する結果」は、「今回の検証」を行うまでもなく、請求人自ら述べるとおり、甲22測定において既に示されていることである。 しかしながら、その甲22測定、さらには甲25撮影により(あるいは、さらなる検証により)その測定あるいは撮影の時点において、検甲1作業機のエプロンを跳ね上げるのに要する力が、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少したことが示されていても、上記イで検討したとおり、その結果をもって、展示会時点での検甲1作業機の、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を特定し得るものとはいえない。 b ここで、上記イで検討した、甲13測定時点と乙1測定時点で異なる測定結果を示す点については、請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、以下のような主張を行っている。 「なお、別件無効審判において平成30年10月30日に行われた検甲第1号証の検証結果が、甲第13号証の報告書における測定結果と同様の結果にならなかったのは、例えばガススプリングの経年劣化によるガス反力の低下、トラックのエンジンの停止の有無、測定誤差、気温の差等が原因と考えられる。」(請求人陳述要領書4頁下から4行~最下行) 上記主張について検討すると、仮に、請求人が主張するとおり諸要因で各時点における測定結果が異なるのであるとしても、そうであるならばなおさら、展示会ではない時点における測定(甲22測定)をもって、展示会時での同関係を特定するのは困難というべきである。 また念のため付け加えれば、甲13測定と乙1測定は作業姿勢における測定であるが、上記第3の3(1)で摘記した請求人の主張をみても、スタンド姿勢における測定であれば、甲13測定と乙1測定のように異なる測定時で異なる測定結果を示すことにならないという理由が説明されているものではない。 (イ)構成Gの公知性、公然実施性について 請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、(甲13、甲22、甲25の1~4以外の)各甲号証を取り上げて、展示会における検甲1作業機に係る発明の、とくに構成Gの公知性、公然実施性に関し、以下のように主張を行っている。 「・・・検甲第1号証は、甲第1号証ないし甲第12号証等からみて明らかなとおり、上記の夏季展示会(以下、単に「展示会」という。)で展示され、その後、有限会社小野瀬農機店を介して山口美一氏に販売されたものである。・・・ ここで、甲第6号証は展示会レイアウト図であり、この展示会において、請求人の展示ブース(図中「松山」と表示)の隣が、被請求人の展示ブース(図中「小橋」と表示)であった。 また、請求人の展示ブースを撮影した写真(甲第7号証や甲第20号証)からみても明かなように、請求人の展示ブースを訪れた見学者は、検甲第1号証のエプロンを持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であった。 そして、実際に、見学者が検甲第1号証(検甲第1号証に係る作業機)のエプロンを持ち上げる行為を行うことにより検甲第1号証のアシスト機構を体感していた(甲第23号証、甲第24号証等)。 さらに、請求人と被請求人の展示ブースが隣同士であったことや、展示会の報告書(甲第8号証の1~7)及び陳述書(甲第24号証)の内容によれば、被請求人の社員(開発部員も含む)や一般の見学者が検甲第1号証の構成を実際に知ったことは明らかである。 また、請求人の展示ブースでは、検甲第1号証のカタログ(甲第14号証)を見学者に配布し、当該カタログに記載された内容(例えばガススプリングを利用して従来の約半分の力で持ち上げることが可能になったこと)等を見学者に対して説明していた(甲第7号証、甲第20号証、甲第24号証等)。 当該カタログは、請求人の展示ブースを撮影した写真(甲第7号証や甲第20号証)にも写っている。」(請求書8頁10行~9頁10行) 「また、展示会での展示状況は、見学者がそのだんだんと軽くなる感覚を感じることができた状況(そのおそれのある状況も含む)であったことは、もはやいうまでもない。 したがって、展示会での展示の際に、検甲第1号証は構成Gを有していたものであり、かつ、当該構成Gはその展示によって不特定の者によって技術的に理解される状況で実施されたものであるから、検甲1発明は構成Gを備えたものである。」(請求書13頁8~14行) 「なおいうまでもないが、公然実施については、エプロンがだんだんと軽くなることを見学者(甲20のブログの管理人等)が現実に認識したという事実までは必ずしも必要ではなく、そのことを見学者が「知り得る状況」で検甲第1号証の作業機が展示されていた事実で足りる。」(請求人上申書1の3頁下から4行~最下行) 「しかし、以下に述べるとおり、甲第32号証ないし甲第37号証からみて、・・・展示会において見学者による均平板の持ち上げ行為(少なくともアシスト機構のアシストオン状態において均平板を持ち上げる行為)は行われていた。」(請求人上申書2の2頁13~16行) 「ア 上記「(1)」のうち、甲第8号証の2(展示会の報告書)、甲第14号証(カタログ)、甲第20号証(ブログ記事)、甲第23号証(証明書)、甲第24号証(陳述書)、甲第26号証(別件審決)、甲第32号証(電子メール)、甲第33号証(証明書(2))、甲第34号証(陳述書)、甲第35号証(報告書)、甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報)、甲第37号証(農業雑誌)等からみて、構成Gが本件展示会で公然実施されたことは明らかである。 イ 特に、甲第20号証(ブログ記事)、甲第23号証(証明書)、甲第32号証(電子メール)、甲第33号証(証明書(2))、甲第36号証の1ないし7(写真のファイル情報)、及び甲第37号証(農業雑誌)の各証拠は、請求人とは全く利害関係がない第三者による、客観的証拠である。 そして、これら多数の客観的証拠からみて明らかなように、本件展示会において、見学者によるエプロンの持ち上げ行為(少なくともアシスト機構のアシストオン状態においてエプロンを持ち上げる行為)が行われていた。 つまり、検甲第1号証のエプロンの下方に、「パネル」が置いてあっても、見学者(少なくともNさんやブログの管理人)は、アシスト機構のアシストオン状態におけるエプロンを持ち上げてアシスト機構を実際に体感していた。 それゆえ、本件展示会での検甲第1号証の展示状況は、パネルが置いてあっても、見学者がアシスト機構のアシストオン状態におけるエプロンを持ち上げてアシスト機構を体感できる状況であった。 したがって、検甲第1号証が有していた構成Gは、本件展示会における展示により、見学者である不特定の者(少なくともNさんやブログの管理人)によって技術的に理解される状況又は技術的に理解されるおそれのある状況で実施された構成である。 よって、構成Gは、本件展示会において公然実施されたものであって、検甲1発明として認定すべき構成である。 ウ 加えて、甲第32号証の電子メールには、「写っている手はNさんの手で、確かこのような機械を買ったばかりと説明の方に話していたように記憶しています このときNさんはカタログを貰っていたかもしれません」という記載があり、当該記載からも明らかなように、「Nさん」は、農家であって農業機械の技術分野における当業者である。 よって、本件展示会における検甲第1号証の展示状況は、要する力が徐々に減少するという構成Gが、当業者(少なくともNさん)によって、少なくとも「技術的に理解されるおそれのある状況」であったことは、明らかというべきである。 要するに、検甲第1号証の展示状況は、不特定人である見学者(当業者を含む)が、構成Gを少なくとも「技術的に理解するおそれのある状況」であったことから、その構成Gは本件展示会において公然実施された構成である。」(請求人陳述要領書19頁10行~20頁最下行) 上記主張について検討する。 上記主張において取り上げられている、(甲13、甲22、甲25の1~4以外の)各甲号証のいずれも、検甲1作業機の実物(に係る発明)が展示会において公然知られた又は公然実施されていたかどうかについてまでのものであって、展示会時に検甲1作業機が構成Gを有していたかどうかを直接示すものではなく、上記主張も、それら各甲号証に、展示会時の検甲1作業機が構成Gを有するかどうかを直接示す部分があることを説明するものではない。よって、上記主張から、構成G(を含む発明)が、展示会において公然知られた又は公然実施されていたとすることはできない。 (ウ)技術常識について 請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、以下のように、技術常識から、構成Gは、検甲1発明の構成として認定できる旨の主張を行っている。 「そもそも、別件審決の判断によれば、構成Gは当業者の技術常識であるから、その技術常識的な構成Gは、検甲1発明の構成として当然認定できる」(請求書13頁下から2行~最下行) 「またそもそも、甲第26号証(別件審決)によれば、構成Gは検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項であるから、検甲1発明は、その技術常識的な構成Gを備えたものである。 この点に関し、別件無効審判における審理事項通知書(甲第38号証)にも、展示会において公然実施された発明の認定に関し、「技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項も、発明の認定の基礎とすることができる」と記載されている(下参照)。 したがって、構成Gは力学的な技術常識を参酌することにより当業者が導き出させる事項であるから、検甲1発明は構成Gを備えたものである。」(請求人陳述要領書21頁13~21行) 上記主張について検討すると、甲26での、新規性、進歩性の判断における説示は、 「本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて、本件発明の構成Gを実施しようとする当業者にとって、過度の試行錯誤を要さないからといって、検甲1発明において、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」の変化の傾向を、「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」ように設定することについて、動機付けや示唆があるということはできないから、上記相違点1に係る本件発明の構成に至ることが、当業者にとって容易というものではない。」(甲26の119頁下から6行~120頁1行) 等のものであって、「構成Gが当業者の技術常識」であると説示されているものではない。 よって、上記主張から、展示会における検甲1作業機(に係る発明)が、「力学的な技術常識を参酌することにより」「構成Gを備えたものである」とすることはできない。 (エ)小括 よって、上記(ア)~(ウ)の請求人の主張により、上記イの判断が左右されるものではない。 エ まとめ 以上のとおり、請求人の提出した証拠からは、検甲1作業機(に係る発明)が、当該展示会時に、構成Gに相当する構成を備えていたことが明らかとはいえない。 よって、展示会において、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を、請求人主張のように「認識することが可能(少なくとも知り得る状況)であった」(請求人上申書1の10頁下から5行)といえるかどうか、言い換えれば、検甲1作業機に係る発明が、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を含めて展示会で公然知られた又は公然実施されたといえるかどうかにかかわらず、本件発明が、展示会において公然知られた又は公然実施された発明であるということはできない。 (2)進歩性について 次に進歩性について検討する。 ア 相違点についての検討・判断 上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本件発明の構成すなわち構成Gについて、検甲1発明をそのように設計変更する動機があることはいずれの甲号証にも示されておらず、また、甲40、甲41を見ても、上記第5の2(1)、(2)に摘記したように、構成Gを採用することは記載も示唆もされていない。 よって、構成Gは、検甲1発明並びに甲40及び甲41に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。 イ 請求人の主張について (ア)甲40及び甲41について 請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、甲40及び甲41について、以下aないしcのように述べ、構成Gは、 「甲第40号証及び甲第41号証からみて周知技術(技術常識)に過ぎない。 したがって、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点は当業者にとって容易想到なものであるから、本件発明は進歩性を有しない。」(請求人陳述要領書30頁6~9行) との主張を行っている。 a 甲40について 「甲第40号証には、次の記載がある。・・・ 【0040】には、「このとき、一対のリンクアーム部材60が前側に移動し、リンクプレート41が支点軸部44を回動支点として前側に回動する。その結果、ガススプリング50の弾性力が、連結軸部28及びブラケット座26を介してエプロン25に作用して、エプロン25の上方への回動を附勢する。このため、作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」と記載されている。 確かに、この【0040】には、「作業者は小さな力でエプロン25を跳ね上げることができる。」としか明記されていない。 しかし、エプロン跳ね上げ補助機構40は、後述のとおり、「第3種てこ」(約1.5倍の倍力機構)を利用したものであるから、作業者がエプロン25を跳ね上げるのに要する力(従来に比べて小さな力)は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が十分に高いといえる。 ・・・甲第40号証記載のエプロン跳ね上げ補助機構40(FTE240のアシスト機構)は、「第3種てこ」として作用するリンクプレート41を有している。 つまり、このリンクプレート41は、支点軸部44を「支点」、軸部45を「カ点」、連結軸部28を「作用点」とする、第3種の「てこ」である。 また、このリンクプレート41には、長孔41bが形成されていることから、「支点」及び「作用点」間の距離が変化する。 そして、「力点」に働く力については、ガススプリング50のバネ定数は、参考図2(次頁参照)の如く他の弾性部材に比べて小さく、広範囲のストロークにわたって略一定の弾性力が得られるため、「f1≒f2」となる。 他方、「作用点」に働く力については、エプロン角度が大きくなるに従って、「作用点」が「支点」に近づくため、「F1<F2」となる。 つまり、ガススプリング50の弾性力に基づくアシストカは、エプロン角度の増加に応じて徐々に増加する。 そして、甲第40号証記載の作業機を前傾姿勢(下図参照)とした場合には、重カトルクの変化も加わり、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。」(請求人陳述要領書26頁6行~30頁9行) b 甲41について 「甲第41号証には、次の記載がある。 ・・・そして、甲第41号証の図8における作業機の姿勢は「作業姿勢」であるが、例えばトラクタの3点リンクの油圧による持ち上げにより作業機を前傾させて前傾姿勢(下図参照)とした場合には、重カトルクの変化により、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。 よって、甲第41号証には、構成Gが実質的に記載されている。 換言すると、甲第41号証に接した当業者は、力学的な技術常識を勘案することにより構成Gを認識できるから、この構成Gは甲第41号証の記載から自明な事項である。」(請求人陳述要領書31頁2行~32頁最下行) c 重力トルクに関して 「構成Gの要する力(Fs)に関し、甲第26号証(別件審決)の第97頁第4行には、次の計算式が示されている。 [図:0001410817000092.jpg] この計算式において、アシストトルク(Ta=Fg・sinθa)は、摩擦抵抗等を考慮しなければ基本的に作業機の姿勢の影響を受けない。 これに対し、重カトルク(Tw=Rw・W・sinα)は、作業機の姿勢の影響を直に受けるため、作業機の姿勢に応じて変化する。 より具体的に説明すると、参考図3(次頁参照)に示すように、エプロンの重心位置には鉛直下向きの重力Wが作用し、この重心位置と第1の支点とを結んだ直線の鉛直方向に対する角度がaで、重心位置及び第1の支点間の距離がRwであるから、第1の支点を中心とする重カトルクは、次の式で表される。 「Tw=Rw×Wsinα」である。 そして、その重カトルクは、エプロンの重心位置が第1の支点と同じ高さのとき、つまり「a=90°」のとき、「sin90°=1」であるから、そのときが最大であり、その最大値は「T′w=Rw×W」となる。 その後、エプロンの重心位置が第1の支点を超えると、エプロン角度の増加に応じて、sinαの値が徐々に小さくなるため、重カトルクも徐々に減少する。 したがって、上述したように、甲第40,41号証記載の作業機を前傾姿勢(例えばα=90°)とした場合には、エプロンの跳ね上げに伴って重カトルクが徐々に減少するため、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少する蓋然性が高いといえる。」(請求人陳述要領書33頁2行~最下行) d 検討 上記aないしcの主張について検討する。 仮に、請求人が主張するように、甲40、甲41の、とくに図面をみて、それら作業機のエプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少し得ると解析し得たとしても、甲40、甲41は、その文章に、エプロンを跳ね上げるのに要する力を、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少させることは記載も示唆もされておらず、その各図面も、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を示すことを目的としたものではない。そのような甲40、甲41をもって、エプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少することが周知技術(技術常識)ということはできず、また、当業者が、そのような甲40、甲41から、エプロンを跳ね上げるのに要する力がエプロン角度の増加に応じて徐々に減少し得ることを解析した上で、検甲1発明をそのように設計変更するという動機もない。 よって、甲40、甲41を検討しても、本件発明が想到容易であるということはできない。 (イ)構成Gが技術的意義(作用効果)を有さないことについて 請求人は、上記第3の3(1)で摘記したように、以下aないしcのように、本件発明の構成Gは技術的意義(作用効果)を有さず、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない旨の主張を行っている。 a 作業機の姿勢及び減少程度について 「・・・すなわち、本件発明の構成Gにおいて、作業機の姿勢及び減少程度は、何ら限定されていない。・・・ それゆえ、構成Gの減少程度が僅かなものである場合には、例えば爪交換時や洗浄時において、作業機をどのような姿勢に設定するかによって、簡単に構成Gの要する力が「減少変化」から「増加変化」に変わってしまう。 つまり、例えばトラクタの油圧式の3点リンクに作業機を連結した状態で爪交換等を行う場合、作業機の姿勢は、油圧による上げ下げの調節に加えて、3点リンクの種類、トップリンクの長さ変更、トップリンクやリフトロッドの取付穴の位置等といった種々の要因により異なるため、「一定の姿勢」に特定されるものではない。・・・ このため、たとえ同じ作業機であっても、それを「特殊3点リンク」に連結した場合には「減少変化」となっていたのに、「標準3点リンク」に連結した場合には「略一定」や「増加変化」となるといった事態が生じ得る(下図参照)。 また、そのような事態は、トラクタの油圧による上げ高さが異なるだけでも生じ得る。なお、その上げ高さは、トラクタの運転席に設けられた作業機昇降レバーの操作によって調整可能である。 したがって、作業機の姿勢及び減少程度が何ら限定されていない構成Gは、何ら技術的意義(作用効果)を有さず、当業者にとって設計事項に過ぎない。 よって、本件発明は進歩性を有しない。・・・ 上図からみて明らかなように、作業機の姿勢は、トラクタの3点リンクの種類(標準3点リンク、特殊3点リンク)によって大きく異なり、また、作業機昇降レバーの操作に基づく上げ高さによっても異なる。 そして、作業機の姿勢変化に伴って重カトルクも変化し、それに応じて、エプロンを跳ね上げるのに要する力も当然変化する。よって、構成Gに格別な技術的意義はない。」(請求人陳述要領書22頁8行~23頁9行) b 検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項であることについて 「またそもそも、甲第26号証(別件審決)によれば、構成Gは検甲第1号証の構造を参照した当業者の技術常識的な事項であり、しかも、当業者にとって過度の試行錯誤を必要としない事項とされたものであるから、要する力の変化曲線をコンピュータを用いてシミュレーションして構成Gを得る程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。 この点に関して、別件無効審判では、請求人が提示した計算式に基づいて、被請求人は構成Gを実現する具体例を適宜シミュレーションすることにより、支点位置を25°ずらした新たな作業機を設計した。よって、支点位置をずらす程度のことが設計事項であることは明らかである。 しかも、構成Gは、次の「(6)」のとおり周知技術であり、それを裏付ける甲第40号証や甲第41号証は構成Gの採用を示唆するものであるから、検甲1作業機において構成Gを採用することは、当業者にとって設計事項である。」(請求人陳述要領書24頁1~12行) c 構成Gが解決する問題について 「さらに付言すると、被請求人は、答弁書の第25頁において、 「第1に、そもそも本件発明にかかるアシスト機構は、「エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(本件明細書、【0002】)場合に使用されることを想定したものである。 第2に、他方で、耕うんロータを実際に田んぼなどで使用しているとき(耕うん作業時)に耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりすることはあり得ない。 第3に、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能」(本件明細書、【0013】、但し下線を引いた。)とあるように、本件発明にかかるアシスト機構の効果は、エプロンが下降状態にあるときに生じ得る問題を解決することである。」と主張している。 要するに、構成Gの技術的意義(作用効果)は、耕うん作業時ではなく、爪交換時や洗浄時において、エプロンが下降状態にあるときに生じ得る問題(誤った跳ね上げによる危険)を解決することである旨、主張している。 しかし、本件明細書には、爪交換時や洗浄時においてエプロンが下降状態にあるときの作業機の姿勢について、何ら記載されていない。 つまり、構成Gの技術的意義(作用効果)が生じる前提条件である「爪交換時や洗浄時における作業機の姿勢」は、本件明細書において何ら特定されていない。 ・・・したがって、本件発明の構成Gは何ら技術的意義(作用効果)を有さず、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。」(請求人陳述要領書24頁13行~25頁最下行) d 検討 上記aないしcの主張について検討する。 まず上記aの主張について、仮に、請求人が主張するとおり、作業機の姿勢等によっては、「構成Gの要する力」が、「略一定」や「増加変化」という状態に転じることがあり得るとしても、そのことにより、作業機が「減少変化」という状態をとること、及び、「減少変化」の状態においての作用効果が否定されるものでもない。 すなわち、「構成Gは、何ら技術的意義(作用効果)を有さ」ないということになるものではなく、よって、請求人の主張を採用することはできない。 次に上記bの主張について、上記(1)ウ(ウ)で検討したとおり、甲26は、新規性、進歩性の判断において、構成Gを「当業者の技術常識的な事項」と説示しているものではない。 また、請求人の主張するように、「請求人が提示した計算式に基づいて、被請求人は構成Gを実現する具体例を適宜シミュレーションすることにより、支点位置を25°ずらした新たな作業機を設計した」としても、別件審決の時点でそれを行われたことをもって、本件優先日前において「支点位置をずらす程度のこと」が単なる設計事項であることが直ちに示されるものではない。 さらに、上記(ア)dで検討したように、甲40、甲41をもって、構成Gが周知技術(技術常識)であることが裏付けられるものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 次に上記cの主張について、まず、この主張で引用されている被請求人の「答弁書の第25頁」の主張は、上記第4の3(5)に摘記したように、新規性・進歩性に関する主張ではなく、「無効理由5(サポート要件違反その2)」に対し、「本件発明の課題は、耕うん作業時の作業姿勢においてエプロンを跳ね上げるのに要する力が徐々に減少するものに限定する理由はない」(答弁書24頁14~16行)旨の、発明の課題解決についての主張をするものであって、構成Gによる「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能」という作用自体を否定するものではない。よって、「構成Gは、何ら技術的意義(作用効果)を有さ」ないものとはいえず、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ)小括 よって、上記(ア)、(イ)の請求人の主張により、上記イの判断が左右されるものではない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、本件発明は、検甲1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、請求人の主張する無効理由1によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項2号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 2 無効理由2(拡大先願)について (1)対比 本件発明と甲18発明とを対比する。 (ア)甲18発明の「農作業機」、「トラクタ」、「耕耘体(ロータリー)」は、それぞれ本件発明の「作業機」、「走行機体」、「耕うんロータ」に相当する。 甲18発明の「機体」は「トラクタの後部に脱着可能に連結される」ものであると共に、耕耘体を回転可能に設けているものであるから、本件発明の「フレーム」に相当する。 甲18発明の「整地体」は、「耕耘体の後方で」、「機体の後方に設けられた回動支点を中心として、上下方向に回動可能に設けられ」ているから、甲18発明の「回動支点」、「整地体」は、それぞれ本件発明の「第1の支点」、「エプロン」に相当する。 甲18発明の「持上アシスト手段」は、「整地体の持ち上げ(上方回動)をアシストする」ので、本件発明の「アシスト機構」に相当する。 (イ)甲18発明の「持上アシスト手段」は、「前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)」及び「長尺体に対してスライド移動可能な移動体(アウターパイプ)」を有していること、及び「長尺体は機体に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に設けられており、長尺体内にガススプリングが収納配設されており、このガススプリングは、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部と、この本体部内に対して出入りするロッド部とにて構成され、本体部の基端部が長尺体に取り付けられ」、また、「移動体は」「前後方向長手状で円筒状の筒状部を有し、この筒状部の前端部にはガススプリン グのロッド部が取り付けられて」いることから、 甲18発明の「長尺体」(インナーパイプ)、「移動体」(アウターパイプ)、「左右方向の軸」、「ガススプリング」、「本体部」、「ロッド部」は、それぞれ本件発明の「第1の筒状部材」、「第2の筒状部材」、「第2の支点」、「ガススプリング」、「シリンダー」、「ピストンロッド」、に相当する。 (ウ)甲18発明の「回動体」は、「筒状部と、この筒状部の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部とにて構成され、この各軸状部が整地体の突出板の取付孔部に回動可能に取り付けられて」いること、及び「移動体」の「筒状部の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段のアシストオン状態時にガススプリングの付勢力に基づいて回動体を押し上げる円形環状の回動体当接部である鍔部が突出状に固設されて」いることから、甲18発明の「取付孔部」は、本件発明の「第3の支点」に相当する。 (エ)甲18発明において「回動支点は整地体の前端部近傍にあ」ることから、整地体の重心が回動支点よりも後方にあることは明らかであり、甲18発明は、本件発明と同じく、(エプロンの)「重心が前記第1の支点よりも後方にある」との構成を有している。 (オ)甲18発明の「長尺体に対する移動体の前方移動が許容(つまりガススプリングの伸びが許容)されることとなり、移動体が鍔部に当接した回動体とともに長尺体に対してガススプリングの付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体がガススプリングの付勢力に基づいて上方へ回動する」との構成から、長尺体が回動可能である「左右方向の軸」と、回動体の軸状部が回動可能である「取付孔部」との距離を変化させる力を作用させることで整地体を跳ね上げる方向に力を作用させていること、及び整地体が下降した場合にはガススプリングは収縮していることは明らかであり、 甲18発明は、本件発明と同様に、「前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し」、「前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力」が作用するとの構成を有している。 (カ)甲18発明の「長尺体は」、「長尺体内にガススプリングが収納配設されており」、「長尺体及び移動体は、左右方向の軸、取付孔部を通る同一軸上にある」ことは、 本件発明の「前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材」とを有していることに相当する。 (キ)甲18発明の「長尺体」は「左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に設けられており」、「ガススプリング」の「本体部の基端部が長尺体に取り付けられ」、「移動体」の「筒状部の前端部にはガススプリングのロッド部が取り付けられて」いることは、 本件発明の「前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され」ていることに相当する。 (ク)甲18発明の「持上アシスト手段は、操作レバーの一方向への回動(例えば下方回動)によってアシストオフ状態(ロック状態)となり、操作レバーの一方向とは反対方向である他方向への回動(例えば上方回動)によってアシストオン状態(ロック解除状態)となり」、「操作レバーの一方向への回動により、アウターパイプである移動体の内側に位置するインナーパイプである長尺体が、移動体から突出することが妨げられ」る構成は、本件発明1の「前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構」に相当し、 そして上記(オ)のとおり、甲18発明は、本件発明と同様に、「前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し」、「前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力」が作用するとの構成を有している点を踏まえると、 甲18発明は、本件発明と同様に、「前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにする」との構成を有している。 (ケ)上記(ア)ないし(ク)からみて、本件発明と甲18発明とは、次の一致点2で一致し、相違点2で相違する。 <一致点2> 「A 走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、 B 前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、 C 前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、 D 前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、 E 前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材及び第2の筒状部材と、前記第2の筒状部材の内側に位置する前記第1の筒状部材が、前記第2の筒状部材から突出することを防止するロック機構とを有し、 F 前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、 H 前記ロック機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにすることを特徴とする I 作業機。」 <相違点2> 本件発明においては、 「G 前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するのに対し、 甲18発明は、そのような特定を有しない点。 (2)相違点についての検討・判断 上記アのとおり、本件発明と甲18発明は相違点2で相違するから、本件発明は、先願明細書に記載された発明ではない。 (3)請求人の主張について 請求人は、上記第3の3(2)で摘記したように、以下のように、構成Gについての主張を行っている。 ア 重力トルクに関して 「そして、別件無効審判で請求人が提示した「Fs」の計算式(以下、単に「計算式」ということがある)中の重力トルク(Tw)は作業機の姿勢に応じて変化することから、作業機の姿勢によっては「徐々に減少する」ことになる。このような重カトルク(Tw)に関する事項は、当業者にとっての力学的な技術常識である(別件審決の第25頁を参照)。」(請求書22頁6~10行) 上記主張について検討すると、仮に、(前提条件によっては)「徐々に減少する」ことを計算式等により導き得たとしても、甲18の構成においてそのように設計されるかについての記載も示唆もないため、そのように設計することまで技術常識の範囲内といえるものではない。 イ 技術常識について (ア)甲26について 「そもそも、別件審決の判断によれば、構成Gは当業者の技術常識であって当業者が導き出せる事項であるから、その技術常識的な構成Gは、甲第18号証に記載されているに等しい事項である。 つまり、別件審決(甲第26号証)の第99頁には、構成Gは当業者の技術常識である旨が記載されており、当業者にとって技術常識に属する構成Gは先願明細書(甲第18号証)に記載されているに等しい事項に過ぎない。」(請求書23頁下から6行~最下行) 上記主張について検討すると、甲26は、拡大先願の判断において「構成Gは当業者の技術常識」であると説示されているものではない。よって、上記主張から、「構成Gは先願明細書(甲第18号証)に記載されているに等しい事項に過ぎない。」とすることはできない。 (イ)甲40及び甲41について 「構成(構成要件)Gが・・・甲第40号証及び甲第41号証の記載事項からみて周知技術である。 したがって、仮に構成Gが相違点であったとしても、この相違点は実質的な相違点ではなく、また少なくとも課題解決のための具体化手段における微差である。」(請求人陳述要領書36頁5~10行) 上記主張について検討すると、甲40、甲41は、その文章に、エプロンを跳ね上げるのに要する力を、エプロン角度の増加に応じて徐々に減少させることは記載も示唆もされておらず、その各図面も、エプロンを跳ね上げるのに要する力とエプロン角度との関係を示すことを目的としたものではなく、そのような甲40、甲41をもって、構成Gが周知技術ということはできない。よって、上記主張から、「この相違点は実質的な相違点ではなく、また少なくとも課題解決のための具体化手段における微差である。」とすることはできない。 ウ 構成Gが技術的意義(作用効果)を有さないことについて 「特に、上述のとおり作業機の姿勢及び減少程度が何ら限定されていない構成Gには技術的意義(作用効果)がないので、その相違点は周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差であることは明らかというべきである。」(請求人陳述要領書36頁11行~最下行) 上記主張について検討するとおり、作業機の姿勢及び減少程度が限定されていないからといて、本件発明が構成Gを有すること、及び、構成Gにより「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないように」(本件明細書段落【0013】)し得ることが否定されるものではない。 すなわち、「構成Gには技術的意義(作用効果)がない」となるものではなく、よって、請求人の主張を採用することはできない。 エ 小括 よって、上記アないしウの請求人の主張により、上記(2)の判断が左右されるものではない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明は、甲18発明と同一ではないから、先願明細書に記載された発明ではない。 したがって、請求人の主張する無効理由2によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項2号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 3 無効理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の考え方について 一般に「方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をすることをいい(特許法2条3項2号),物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同項1号),方法の発明については,明細書にその方法を使用できるような記載が,物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が,それぞれ必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用し,又はその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。」とされている〔平成22年(行ケ)10348号判決参照。〕。 以下、この観点に立って検討する。 (2)検討 上記第3の3(3)に摘記したとおり、請求人の主張する無効理由3は、本件発明の構成Gは実施不可能であるというものである。 そこで、以下、構成Gに関し検討する。 ア 本件発明に係る作業機の構造 本件明細書等によれば、本件発明に係る作業機の構造は、次のとおりと認められる。 (ア)作業機の全体構造 本件発明は、「走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする」「作業機」(構成A)に関するものであり、「前記走行機体と接続されるフレーム」(構成B)と「前記フレームの後方に設けられ」る「エプロン」(構成C)、「前記フレームに固定された」「ガススプリングを含むアシスト機構」(構成D)を具備するものであるところ、本件明細書等の「実施例」(【0016】~【0021】)には、作業機の全体構造を示す図1~図3とともに、フレーム(主フレーム110とシールドカバー120)、耕うんロータ102、エプロン130、エプロン跳ね上げアシスト機構141を具備する「作業機100」の具体的構造が記載されている。 (イ)「ガススプリングを含むアシスト機構」の構造 本件発明の作業機が具備する「アシスト機構」は、「前記フレームに固定された」「第2の支点」と「前記エプロンに固定された」「第3の支点」との間に設けられ、「前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる」ものであるところ(構成D)、本件明細書等の【0021】には、作業機の側面図である図2、図3とともに、アシスト機構141を「支点151」(第2の支点)と「支点152」(第3の支点)との間に設ける具体的構造が記載されている。 (ウ)「エプロン」の構造 本件発明の作業機が具備する「エプロン」は、「前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能」であり、「その(エプロンの)重心が前記第1の支点よりも後方にある」ところ(構成C)、本件明細書等の【0020】には、作業機の側面図である図2、図3とともに、エプロン130を「支点140」(第1の支点)を中心に回動可能とする具体的構造が記載されている。 イ 構成Gを裏付ける理論的説明 力学に関する技術常識を勘案し、前記アの本件発明に係る作業機の構造に照らすと、構成Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を導く理論的説明に関しては、次のとおり認めることができる。 (ア)エプロンを跳ね上げるのに要する力 エプロンを持ち上げるときには、エプロン操作者(作業者)がエプロンの下端に手をかけて力を入れて持ち上げるところ、構成Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力」は、その文言からすると、エプロンの手をかける位置に垂直に上向きにかかる力(Fs)を意味するものと認められる。 そして、エプロンを持ち上げるときにエプロンに加えられる力を検討すると、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)の他、エプロンの重心に鉛直方向に働く重力(W)、第3の支点に、第2の支点の方向に働くアシスト力(Fg)が加えられている。 (イ)第1の支点を中心とするモーメント a エプロンは、第1の支点を中心として回動する構造となっているから、エプロンに加えられる力は、第1の支点を中心とするモーメントとして働く。 b 第1の支点とエプロンを持ち上げる位置(エプロン操作者がエプロンを持ち上げるために手をかける位置)とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をβ、第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をα、第1の支点と第3の支点とを結ぶ直線と、第2の支点と第3の支点とを結ぶ直線がなす角をθaとし、第1の支点を中心とする円の半径と垂直をなす方向に働く力について、エプロンを持ち上げる位置に働く力をFu、第3の支点に働く力をFa、エプロンの重心に働く力をFwとすると、これらの各点において第1の支点を中心とする円の半径と垂直をなす方向に働く力は、次のとおり表される。 Fu=Fs・sinβ Fa=Fg・sinθa Fw=W・sinα このうち、FuとFaは上向きの力であり、Fwは下向きの力である。 c 第1の支点からエプロンを持ち上げる位置までの距離をR、第1の支点から第3の支点までの距離をRa、第1の支点からエプロンの重心までの距離をRwとし、第1の支点を中心とするモーメント(第1の支点からの距離と力の積)について、エプロンを持ち上げる位置のモーメントをTu、第3の支点のモーメントをTa、エプロンの重心のモーメントをTwとすると、これらの各点における第1の支点を中心とするモーメント(第1の支点からの距離と力の積)は、次のとおり表される。 Tu=R・Fu Ta=Ra・Fa Tw=Rw・Fw このうち、TuとTaは上向きのモーメントであり、Twは下向きのモーメントである。 d エプロンを持ち上げる場合には、第1の支点を中心とする上向きのモーメントが下向きのモーメントより大きくなるから、Tu+Ta>Twとなる。これに前記cの各項を当てはめると、次のとおりとなる。 R・Fu+Ra・Fa>Rw・Fw 更にこれに前記bの各項を当てはめると、次のとおりとなる。 R・Fs・sinβ+Ra・Fg・sinθa>Rw・W・sinα これを、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)について整理すると、次のとおりとなる。 Fs>(Rw・W・sinα-Ra・Fg・sinθa) /(R・sinβ) (ウ)エプロン角度 エプロンが、第1の支点を通る直線に対してなす角度をθとし、エプロンが最も下降したときにθ=0°とし、そのときの第1の支点とエプロンを持ち上げる位置とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をβ0、第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をα0とすると、β=θ+β0、α=θ+α0となり、これを前記(イ)dの最後の式に当てはめると、次のとおりとなる。 Fs>(Rw・W・sin(θ+α0)-Ra・Fg・sinθa)/(R・sin(θ+β0)) (エ)「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が、「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成 a 「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)は、前記(ウ)の式で表すことができ、エプロンが持ち上げられるにつれて、エプロン角度θが増加するから(角度θaもエプロンが持ち上げられるにつれて増加するが、その増加割合はエプロン角度θとは異なる。)、構成Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成は、前記(ウ)の式において、Fsが、θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成であると認められる。 b 前記(ウ)の式中の各項目のうち、エプロンの重心に鉛直方向に働く重力W(前記(ア))、第1の支点からエプロンの重心までの距離Rw(前記(イ)c)、第1の支点からエプロンを持ち上げる位置までの距離R(前記(イ)c)、第1の支点から第3の支点までの距離Ra(前記(イ)c)、エプロンが最も下降したとき(θ=0°のとき)の第1の支点とエプロンを持ち上げる位置とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度β0(前記(ウ))、第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度α0(前記(ウ))は、エプロンの重さ、大きさ、形状等により定めることができる。また、第1の支点と第3の支点を結ぶ線と、第3の支点と第2の支点を結ぶ線がなす角度θa(エプロンが持ち上げられるにつれて増加するが、その増加割合はエプロン角度θとは異なる。)について、エプロンが最も下降したとき(θ=0°のとき)の角度θa0も、エプロンの重さ、大きさ、形状等により定めることができる。そして、第3の支点に働くアシスト力(Fg)(前記(ア))は、本件発明の構成要件Dによれば、ガススプリングにより、第2の支点と第3の支点との距離を変化させることによってエプロンを跳ね上げる方向に作用する力であり、ガススプリングの反発力と伸びが適切な特性を有するようなものを選択することにより、設定することができる。 このように、前記(ウ)の式中の各項目のうち、θ以外の項目を適宜設定し、Fsが、θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成を実現することにより、構成Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成は実現されるものと認められる。実施可能なものと認められる。 (3)請求人の主張について 請求人は、上記第3の3(3)で摘記したように、以下のような主張を行っている。 「本件発明は、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」との構成Gを備えており、この構成Gは、図7のグラフを根拠としている。 そして、構成Gの根拠である図7のグラフは、「出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果」(本件明細書の【0028】)である。 また、図7のグラフの滅少傾向は、「上記実施例の各支点の位置関係」(本件明細書の【0028】)によるものである。 しかし、本件明細書に記載された各支点の位置関係を備えた作業機において、どのような構成のガススプリング(フリーピストンタイプ)を使用すれば、図7のグラフ(約250Nの減少量)を得られるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できないから、当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。 ・・・そして、構成Gの根拠である図7のグラフを得たという当時の作業機自体及びそれに関する資料が現在存在しない以上、図7のグラフは、一体どのような作業機を用いた実測結果であるのか、本件明細書の記載を参酌しても全く理解できない。 それゆえ、図7のグラフは、本件明細書の記載に基づかない作業機の実測結果であり、構成Gの根拠にはなり得ない。よって、根拠がない構成Gは当業者であっても実施不可能である。・・ また、請求人のデータ検証によると、図7のグラフは本件発明の実施品ではない被請求人製品の「FTE240」の実測結果である可能性が高い。 ・・・構成Gが実施可能であるというためには、その構成Gの根拠たる図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことが当然の前提となる。 ・・・したがって、本件発明に係る当時の作業機が実際に存在していたことが立証されない限り、たとえ当業者であっても本件発明の構成Gは実施不可能である。」(請求書25頁7行~28頁下から5行) 上記主張について検討する。 まず、上記主張のうち、「図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していた」かという点については、本件発明が実施可能要件を満たすかどうかは、上記(1)で述べた観点により判断されるところ、図7のグラフを得た「当時の作業機」の存在によって判断されるものではない。 そして、「どのような構成のガススプリング(フリーピストンタイプ)を使用すれば、図7のグラフ(約250Nの減少量)を得られるのか」という点についても、本件発明は図7のグラフに示される数値を特定するものではなく、明細書に記載された説明に基づき、当業者が適宜選択し、実施し得るものであるから、本件発明が実施可能要件を満たすか否かという判断を左右するものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明は、本件明細書等の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者が実施可能である。 したがって、請求人の主張する無効理由3によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項4号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 4 無効理由4(サポート要件違反その1)について (1)サポート要件の考え方について 一般に「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」とされている。(平成17年(行ケ)10042号判決参照。) 以下、後記の無効理由5も含め、この観点に立って検討する。 (2)検討 まず、本件発明が、文言上、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であることについては、両当事者に争いはない。 次に、上記第3の3(4)に摘記したように、請求人の主張する無効理由4は、構成Gについてサポート要件を満たさないと主張するものであることを踏まえ、構成Gに関し、本件発明が、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかについて、検討する。 ア 発明の詳細な説明の記載について 本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(以下、本件明細書の発明の詳細な説明を、単に「発明の詳細な説明」という場合がある。) (ア)「【発明の効果】 【0013】 本発明の作業機によれば、安定したアシスト動作が可能であり、ガススプリングの劣化も防止した作業機を提供することができる。また、エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能となる。」 (イ)「【0033】 [実施例による作用効果] 以上の構成により、以下の様な作用効果を奏する。・・・ 【0037】 第4に、本発明の実施例によれば、アシスト機構が作用する力によって、エプロンを跳ね上げるのに要する力が小さくなる。さらに、その力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって(ただし、アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。つまり、エプロンの跳ね上げに要する力を減らすとともに、回転角度が上昇するに従って跳ね上げに要する力が減少していく。」 イ 課題について 上記ア(ア)で摘記した発明の詳細な説明の記載から、構成Gに関係する、本件発明の課題は、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすること」と、把握される(以下、「課題1」という。)。 ウ 課題の解決について 上記ア(イ)で摘記したとおり、発明の詳細な説明には、 「エプロンを跳ね上げるのに要する力が」「所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため」に、 まず「相当程度の力をもって」「一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げ」ることとなり(「その後はますます軽い力で跳ね上げること」となり)、 「作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくな」ることが記載されており、 この記載により、構成Gにより課題1が解決される機序は当業者にとって明らかである。 よって、構成Gを有する本件発明は、課題1を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるといえる。 (3)請求人の主張について 請求人は、上記第3の3(4)で摘記したように、以下のような主張を行っている。 「・・・別件無効審判において、被請求人は、図7のグラフを得たという当時の作業機(本件発明の実施品)が実際に存在していたことを示す証拠を何一つ提出していない。 また、別件無効審判での被請求人の主張によれば、図7のグラフは、当時の作業機を用いた実測結果ではなく、本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であるから、構成Gの根拠にはなり得ない。 それゆえ、本件明細書の発明の詳細な説明中の【0028】及び図7のグラフは構成Gの根拠ではなく、本件明細書中に構成Gの根拠が存在しない。 したがって、構成Gは、本件発明の実施品とは異なる他の作業機に係る構成であって、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。」(請求書29頁8~19行) 上記主張について検討する。 本件発明がサポート要件を満たすかどうかは、上記(1)で述べた観点により判断され、そして上記(2)ウで検討したとおり、構成Gを有する本件発明が、課題1を解決できるとの当業者の認識は、図7のグラフの記載のみを根拠にするものではない。 よって、図7のグラフがいかなる作業機を用いた実測結果であるのかが、本件発明がサポート要件を満たすか否かという判断を左右するものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たす。 したがって、請求人の主張する無効理由4によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項4号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 5 無効理由5(サポート要件違反その2)について (1)サポート要件の考え方について 無効理由5についても、無効理由4においてと同様に、上記4(1)で述べた観点に立って検討する。 (2)検討 上記4(2)で検討したとおり、まず、本件発明が、文言上、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であることについては、両当事者に争いはない。 次に、上記第3の3(5)に摘記したように、請求人の主張する無効理由5は、本件発明は構成Gまでしか規定されておらず、「作業機の姿勢が何ら規定(限定)されていない」ため、課題1を「解決することができない。」ためサポート要件を満たさないという主張であることを踏まえ、構成Gに関し、本件発明が、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかについて、検討する。すると、これも上記4(2)で検討したとおり、構成Gを有する本件発明は、課題1を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。 (3)請求人の主張について 上記第3の3(5)で摘記したように、無効理由5について、請求人は以下のような主張を行っている。 「本件発明の課題は、「エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすること」(本件明細書の【0013】)である。 そして、この課題を解決するための手段として、発明の詳細な説明には、 「・・・エプロンを跳ね上げるのに要する力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能」な構成のみが記載されている(本件明細書の【0037】)。 つまり、上記課題の解決手段として、発明の詳細な説明の記載から把握できるのは、耕うん作業時の作業姿勢(耕うん作業時の作業機の傾き)において要する力が徐々に減少するアシスト機構のみである。 この点に関し、発明の詳細な説明をみても、図7のグラフを得た際の測定方法に関する記載がないため、その図7のグラフは、上記【0037】の記載からみても、「作業姿勢」での測定結果と考えるのが自然である。 他方、請求項1には、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」としか規定されておらず、作業機の姿勢が何ら規定(限定)されていない。 それゆえ、耕うん作業時の作業姿勢とは異なる姿勢によって要する力が「徐々に増加する」場合には、上記課題を解決することができない。 したがって、本件特許の請求項1には、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されておらず、本件発明は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えたものである。 ・・・請求項1の記載は、耕うん作業時の作業姿勢において、要する力が徐々に減少するアシスト機構に限定されなければならない。・・・」(請求書30頁7行~31頁最下行) 上記主張について検討する。 発明の詳細な説明には、上記4(2)アで摘記した記載に加え、以下の記載がある。 「【発明を実施するための形態】 【0015】 以下、図面を参照して本発明の作業機の実施例について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。・・・ 【0016】 〈実施例〉 図1から図6を用いて、本発明の実施例に係る作業機の全体構成及び跳ね上げアシスト機構(補助機構)の構成について説明する。・・・実施例では、作業機の一例として耕うん作業機を用いて本発明の構成を説明するが、本発明に係る作業機は代かき機であってもよく、耕うん作業機又は代かき機以外の作業機であってもよい。」 すなわち、発明の詳細な説明の記載は、課題1の解決手段を、請求人が主張するような「耕うん作業時の作業姿勢(耕うん作業時の作業機の傾き)において要する力が徐々に減少するアシスト機構のみ」に限定するものではなく、また付け加えると、上記4(2)で検討した、構成Gを有する本件発明が課題1を解決できるとの当業者が認識も、とくに「耕うん作業時の作業姿勢(耕うん作業時の作業機の傾き)」を前提条件とするものではない。 そして、上記主張の「発明の詳細な説明をみても、図7のグラフを得た際の測定方法に関する記載がないため、その図7のグラフは、上記【0037】の記載からみても、「作業姿勢」での測定結果と考えるのが自然である。」という点に関しても、上記4(2)、(3)で検討したとおり、構成Gを有する本件発明が、課題1を解決できるとの当業者の認識は、図7のグラフの記載を根拠にするものではなく、よって、図7のグラフの測定条件が、本件発明がサポート要件を満たすか否かという判断を左右するものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たす。 したがって、請求人の主張する無効理由5によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項4号の規定に違反するものとして無効とすることはできない 6 無効理由6(明確性要件違反)について (1)明確性要件の考え方について 一般に「特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない」とされている。(平成21年(行ケ)第10434号判決参照。) 以下、この観点に従って検討する。 (2)検討 上記第3の3(6)に摘記したように、請求人の主張する無効理由6は、構成Gに関連して、明確性要件を満たさないと主張するものであることを踏まえ、特許請求の範囲の構成Gの記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かについて、検討する。 特許請求の範囲の構成Gの記載は、以下のとおりである。 「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し」 この構成Gの記載は、特許請求の範囲の他の記載及び本件明細書の記載を考慮すると、当業者は以下のとおり理解できる。 まず、「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力」とは、 「エプロン」は「フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能」(特許請求の範囲)なものであるから、当業者はその「跳ね上げ回動」をさせるのに要する力と理解できる。 次に、「エプロン角度」、及び、その「増加」とは、 当業者は、エプロンが上記「跳ね上げ回動」する回動の角度、及び、跳ね上げ回動に伴い回動した角度が増加することと理解できる。 そして、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとは、本件明細書段落【0037】の「さらに、その力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。つまり、エプロンの跳ね上げに要する力を減らすとともに、回転角度が上昇するに従って跳ね上げに要する力が減少していく。」という記載も考慮すれば、エプロンを跳ね上げ回動させるのに要する力が、回動の角度が大きくなるに従って減少していくことと理解でき、また、「所定角度範囲内」とは、エプロンの跳ね上げ回動の動作が行われる角度範囲のことと理解できる。さらに、エプロンを跳ね上げるのに要する力の減少について「徐々に」減少とされている点についても、【0037】の記載を考慮すれば、エプロンが「上昇するに従って」跳ね上げに要する力が減少していく、言い換えれば、回動の角度に応じて段々と力が減少していくことと理解できる。 以上のとおり、構成Gの記載に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である点はみられない。 (3)請求人の主張について 請求人は、上記第3の3(6)で摘記したように、構成Gに関連し、以下のような主張を行っている。 「本件発明の構成Gは、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という発明特定事項であるが、この構成Gは、少なくとも以下の点から不明確である。 〇1 「要する力」は、エプロンに作用する重力トルクの影響により作業機の姿勢に応じて大きく変化するが、構成Gにおいて作業機の姿勢は何ら特定されておらず不明である。 〇2 「徐々に減少する」とは、どの程度の滅少(減少量)までを含むのか不明であるから、構成Gの範囲が不明確である。 〇3 「要する力」の滅少程度が「一般的な作業者が感じることができる程度」であるとした場合でも、作業者(人間)が感じ取れる感覚には個人差があるから、構成Gの範囲が不明確である。 〇4 「所定角度範囲」とは、どの範囲を意味するのか明らかではなく、構成Gの範囲が不明確である。 〇5 「徐々に減少する」とあるが、図7のグラフは「約250Nから約0Nへ急激に減少」する」ものであり、「徐々に」の意味が不明である。 〇6 図7のグラフは本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果であるから、構成Gはその根拠及び基準が不明であり、その結果、構成Gの範囲が不明確である。 〇7 「要する力」はベクトル量であるが、その方向が何ら特定されていない。 〇8 本件明細書には測定方法に関する記載が皆無で、そもそも「要する力」の測定方法が不明であるから、構成Gも不明である。 ・・・さらにいうと、構成Gの「要する力」は、その方向や作業機の姿勢等の測定条件によって大きく変化するものであるから、本来、そのような測定条件を含む測定方法が本件明細書に記載されていなければならないが、その測定方法の記載は皆無であり、構成Gが不明確であることは明らかである。 ・・・特に、構成Gにおける作業機の姿勢が、「作業姿勢」や「スタンド姿勢」等でもよい、というのであれば、作業機の姿勢に応じて重カトルクが変化して構成Gの要する力が減少したり増加したりする。 すなわち、構成Gの「要する力」は、エプロンに作用する重カトルク(Tw)の影響を直に受けるため、エプロンを跳ね上げる際の「作業機の姿勢」を変えることによって、エプロン角度が増加するごとにエプロンを跳ね上げるのに要する力が増加する場合や減少する場合等、いかようにも調整できる。 これでは、本件特許の特許請求の範囲の記載から本件発明を特定できず、その内容を明確に把握することは、当業者であっても到底不可能である。 ・・・しかし、請求項1の記載をみても、構成Gにおける作業機の姿勢は、その耕うん状態である「作業姿勢」に限定されておらず、請求項1の記載と前記効果の主張との間に整合性がない。 よって、このような点からも、請求項1の記載は不明確である。」(請求書32頁6行~34頁下から5行) 上記主張について検討する。 まず、上記(1)の観点に基づき、上記(2)で検討したように、構成Gの記載は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確なものではない。 上記〇1他で、作業機の姿勢を特定していないことについて主張されているが、仮に、請求人が上記主張するとおり、エプロンを跳ね上げるのに要する力が、作業機の姿勢に影響を受けるものであったとしても、そのことで、構成Gの、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」すると特定する記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確になる理由はみられない。 上記〇2、〇3で、エプロンを跳ね上げるのに要する力の減少量、程度を特定していないことについて主張されているが、上記(2)で検討したように、「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという(力の減少量、程度を具体的に特定しない)記載に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点はみられない。 上記〇4で、「所定角度範囲内」の範囲について主張されているが、上記(2)で検討したように、エプロンの跳ね上げ回動の動作が行われる角度範囲のことと理解でき、当該記載に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である点はみられない。 上記〇5で、「徐々に」の意味について主張されているが、上記(2)で検討したように、回動の角度に応じて段々と力が減少していくということと理解でき、当該記載に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である点も、本件明細書等の図7と矛盾するような点もみられない。 上記〇6で、本件明細書等の図7に関連して主張されているが、図7は本件発明の一実施例(実測例)を示すまでのものであり、この図7が、「本件発明の実施品ではない他の作業機を用いた実測結果」か否かにより、構成Gの記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確になる理由はみられない。 上記〇7で、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」は「ベクトル量であるが、その方向が何ら特定されていない」と主張されているが、上記(2)での検討も踏まえ、当業者は、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」は、エプロンを跳ね上げの方向(跳ね上げ回動の方向)に動かす力であることは理解でき、記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確にといえるものではない。 上記〇8他で、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」の測定方法について主張されているが、測定方法が特定されていないからといって、数値範囲を限定するものでもない構成Gの記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確にといえるものではない。 よって、請求人の主張により、上記(2)の判断が左右されるものではない。。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明は不明確とはいえないから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たす。 したがって、請求人の主張する無効理由6によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項4号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 7 無効理由7(冒認)について (1)検討 上記第3の3(7)に摘記したように、請求人の無効理由7の主張は、展示会において公然知られた又は公然実施された検甲1作業機に係る発明を根拠にするものである。 しかしながら、本件発明は、上記4(2)で検討したように、課題1を構成Gにより解決するものであるが、他方、展示会において公然知られた又は公然実施された検甲1作業機に係る発明は、上記1で検討したとおり、構成Gを有するとはいえず、すなわち、本件発明と同一といえるものではない。 そして、本件特許は、願書に発明者として「岡本孝志」、「阿部徹」、「藤原昇」、「小澤英樹」、「中谷公紀」、「滝口貴智」及び「藤原伸明」の7名が記載されているものであるが、請求人が、これら7名から本件発明について特許を受ける権利を承継したものではなく、また、請求人が、本件発明と同内容の発明をした他の発明者から、当該同内容の発明について特許を受ける権利を承継したことを裏付ける証拠もない。 そうすると、仮に、請求人が、展示会において公然知られた又は公然実施された検甲1作業機に係る発明の特許を受ける権利を有していたとしても、その発明とは別異の構成Gを具備する本件発明の特許を受ける権利又は本件発明と同内容の他の発明の特許を受ける権利までをも有しているとはいえないから、請求人は、特許法123条2項にいう「同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者」ではなく、本件特許無効審判の請求における無効理由7を理由とする部分については、請求人適格を有するとはいえない。 また、このことについて、上記第3の3(7)に摘記した、請求人の主張を検討しても、展示会において公然知られた又は公然実施された検甲1作業機に係る発明と本件発明とが同一ではない場合について、請求人が請求人適格を有することを裏付けるものではない。 (2)まとめ 以上のとおり、請求人は特許を受ける権利を有する者であるということはできず、請求人は、請求人適格を有さないから、特許法123条2項に適合せず、この理由による無効審判の請求は不適法なものである。 したがって、請求人の主張する無効理由7によっては、請求項1に係る特許は、特許法123条1項6号の規定に違反するものとして無効とすることはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、無効理由1ないし7はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-800003

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  • 2018-800039無効審判 / 2021-10-07 / 請求不成立作業機
    共通の審決分類: 111・A01B、112・A01B、121・A01B、161・A01B ほか1件
  • 2017-800153無効審判 / 2019-12-17 / 請求不成立ロータリ作業機
    共通の審決分類: 112・A01B、121・A01B、537・A01B
  • 2016-800072無効審判 / 2017-01-31 / 請求不成立畦塗り機
    共通の審決分類: 121・A01B、161・A01B、537・A01B
  • 2023-022232拒絶査定不服審判 / 2024-10-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)高稈作物収穫機の行自動アライメント運転システム及び方法
    共通の審決分類: 121・A01B、536・A01B、537・A01B
  • 2016-700979異議申立 / 2017-10-19 / 訂正認容作業機
    共通の審決分類: 121・A01B、161・A01B、537・A01B

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