特許無効審判
2022-800051
耕耘爪
- 審判番号
- 2022-800051
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2020-025218
- 登録番号
- 6877790
- 請求日
- 2022年06月09日
- 審決日
- 2023年11月06日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】松山 株式会社
- 【請求人代理人】樺澤 聡
- 【請求人代理人】山田 哲也
- 【被請求人】小橋工業 株式会社
- 【被請求人代理人】高橋 雄一郎
- 【被請求人代理人】林 佳輔
- 【被請求人代理人】阿部 実佑季
- 【被請求人代理人】福永 健司
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1113.537-Y (A01B) / P1113.113-Y (A01B) / P1113.121-Y (A01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第123条第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6877790号発明「耕耘爪」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6877790号(以下「本件特許」という。平成25年10月18日を出願日とする特願2018-122389号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年2月18日に新たな特許出願としたもの。登録日:令和3年5月6日、請求項の数:7)の特許請求の範囲の請求項1~7に係る特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 6月 9日:審判請求書提出
令和 4年 9月 8日:無効審判答弁書提出
令和 5年 3月30日:審理事項通知(起案日)
令和 5年 4月25日:口頭審理陳述要領書提出(請求人)
令和 5年 5月26日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
令和 5年 6月20日:上申書提出(請求人)
令和 5年 6月20日:上申書提出(被請求人)
令和 5年 6月20日:第1回口頭審理
なお、請求人提出の審判請求書、口頭審理陳述要領書、上申書、被請求人提出の無効審判答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書を、それぞれ、請求書、請求人要領書、請求人上申書、答弁書、被請求人要領書、被請求人上申書ということがある。
第2 本件特許発明について
1 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(1A~7Bの分説記号は、請求人による。)
「【請求項1】
1A:耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
1B:前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
1C:前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している
1E:ことを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
2A:前記硬質合金部は、前記縦刃部及び前記横刃部における、前記縦刃部に対して前記横刃部が湾曲する方向と逆側の面に設けられている
2B:ことを特徴とする請求項1に記載の耕耘爪。
【請求項3】
3A:前記縦刃部と前記横刃部との境界線と刃縁との交点は、前記取付基部の延びる方向に前記取付基部から最も離れている
3B:ことを特徴とする請求項1又は2に記載の耕耘爪。
【請求項4】
4A:前記耕耘軸は、畦塗り機の旧畦を耕耘して土盛りを行う前処理部に用いられるものである
4B:ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の耕耘爪。
【請求項5】
5A:前記取付基部が装着される取付部の耕耘軸の回転方向の一方側を覆うと共に前記取付基部から縦刃部側に延びるように形成され、前記耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体の内面に付着した土を除去する土除去部材を備えた
5B:ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の耕耘爪。
【請求項6】
6A:前記耕耘爪は、前記耕耘軸の軸方向に配置された複数の耕耘爪のうち、前記耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体の後板部に隣接する位置に配置され、前記横刃部は、前記耕耘軸の軸方向のうち前記カバー体の後板部とは反対方向に湾曲する
6B:ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の耕耘爪。
【請求項7】
7A:前記耕耘爪の回転半径は、前記耕耘軸の軸方向に配置された前記複数の耕耘爪のうち、前記カバー体の後板部とは反対方向に隣接する他の耕耘爪の回転半径より大きい
7B:ことを特徴とする請求項5又は6に記載の耕耘爪。
第3 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(請求書、請求人要領書、請求人上申書参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出している。
〔無効理由〕
(1)無効理由1(新規性、進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、5号証(甲第3号証及び甲第5号証)若しくは甲第4、5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明、甲第3、5号証若しくは甲第4、5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)無効理由2(新規性、進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第11号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1及び2は、甲第11号証に記載された発明に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第11号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第11号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第11号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第11号証に記載された発明及び甲第3、5号証(甲第3号証及び甲第5号証)若しくは甲第4、5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明、甲第3、5号証若しくは甲第4、5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(3)無効理由3(新規性、進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第12号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1及び2は、甲第12号証に記載された発明に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第12号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第12号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第12号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第12号証に記載された発明及び甲第3、5号証(甲第3号証及び甲第5号証)若しくは甲第4、5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明、甲第3、5号証若しくは甲第4、5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(4)無効理由4(新規性、進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第13号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1及び2は、甲第13号証に記載された発明に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第13号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第13号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第13号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第13号証に記載された発明及び甲第3、5号証(甲第3号証及び甲第5号証)若しくは甲第4、5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明、甲第3、5号証若しくは甲第4、5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(5)無効理由5(新規性、進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第14号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1及び2は、甲第14号証に記載された発明に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第14号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第14号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第14号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第14号証に記載された発明及び甲第3、5号証(甲第3号証及び甲第5号証)若しくは甲第4、5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明、甲第3、5号証若しくは甲第4、5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(6)無効理由6(進歩性違反)
本件発明1及び2は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明3は、甲第6号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明4及び5は、甲第6号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明6は、甲第6号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術事項及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
本件発明7は、甲第6号証に記載された発明、甲第3,5号証(甲第3号証及び甲第5号証)又は甲第4,5号証(甲第4号証及び甲第5号証)に記載された技術事項及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(7)無効理由7(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(8)無効理由8(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1に記載された「略同じ位置」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項4号に該当し、無効とすべきものである。
(9)無効理由9(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1において発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし5及び7についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(10)無効理由10(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(11)無効理由11(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1に記載された「縦刃部の刃付け端部」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(12)無効理由12(分割要件違反に基づく新規性、進歩性違反)
本件特許の出願は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しない。
それゆえ、本件発明1ないし7は、甲第15号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし7は、甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(審理事項通知書の「2.」参照。)
2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等ということがある。)
甲第1号証:特開昭51-28274号公報
甲第2号証:特開昭51-85907号公報
甲第3号証:特開2013-78278号公報
甲第4号証:特開2012-29613号公報
甲第5号証:特開2002-281803号公報
甲第6号証:特開昭55-61703号公報
甲第7号証:応対記録(特願2018-122389号)
甲第8号証:意見書(特願2018-122389号)
甲第9号証:答弁書(無効2020-800102号)
甲第10号証:審決(無効2020-800102号)
甲第11号証:特開昭63-71102号公報
甲第12号証:特開昭51-85905号公報
甲第13号証:特開昭51-85903号公報
甲第14号証:特開昭52-61501号公報
甲第15号証:特開2015-77110号公報
甲第16号証:実願昭51-160121号(実開昭53-77804号)のマイクロフィルム
甲第17号証:実願平2-36612号(実開平3-129002号)のマイクロフィルム
甲第18号証:小橋工業株式会社、「コバシ爪屋のかわら版 第弐号」、平成22年1月作成
甲第19号証:財団法人日本規格協会、「日本工業規格 耕うんづめ JIS B9210-1978」
甲第20号証:坂井純・柴田安雄「トラクタ用ロータリー耕うん刃の設計論(第1報)」、三重大学農学部学術報告 第49号、昭和50年3月、第163~165ページ
甲第21号証:株式会社太陽のホームページの印刷物、<URL>htt
ps://www.k-taiyo.co.jp/blade/hanashi/
甲第22号証:補正の却下の決定(特願2013-217312号)
甲第23号証:登録実用新案第3117466号公報
甲第24号証:特開2006-3445828号公報
上記の甲1~22は請求書に、甲23及び24は請求人要領書にそれぞれ添付して提出されたものである。
3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 甲第1号証の1頁右欄下5行~2頁左上欄4行、2頁左上欄17行~右上欄4行の記載、第1図ないし第3図の図示内容等からみて、この甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されている。
<甲1発明>
「1A:耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
1B:前記縦刃部及び横刃部の刃縁側(刃先の一側面)には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質金属薄板(2)が設けられ、
1C:前記硬質金属薄板(2)の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記硬質金属薄板(2)の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している
1E:耕耘爪。」
ここで、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲第1号証には上記構成1Cが記載されている。
また、甲第1号証における「刃先線(1)´の一側の硬質金属薄板(2)側の磨耗が少なく、他側の鋼材側の磨耗が多くなって、刃先線(1)´が常に尖った良く切れる状態に保たれ」るとの記載からも、甲第1号証に上記構成1Cが記載されていることは明らかである。
(請求書19頁21行~20頁16行)
イ 本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「硬質金属薄板(2)」は本件発明1の「硬質合金部」に相当するため、本件発明1と甲1発明とは、構成1Aないし1Eのすべてで一致しており、本件発明1と甲1発明との間に相違点はない。
したがって、本件発明1は、甲1発明と同一である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、百歩譲って仮に、本件発明1の構成1Cが甲第1号証に記載されていないとしても、甲第1号証に記載された発明において構成1Cのようにすることは、当該構成1Cに基づく効果(技術的意義)もなく、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
しかも、甲第6号証には本件発明1の構成1Cが記載されており、組み合わせの動機付けもあるから、当業者が甲第1号証及び甲第6号証に基づいて本件発明1を容易に想到し得たことは明らかである。
(請求書26頁3~17行)
(2)無効理由2
ア 甲第11号証の2頁右上欄9行~左下欄9行、2頁左下欄15行~右下欄6行の記載、第1図ないし第3図の図示内容等からみて、この甲第11号証には、次の発明(以下、「甲11発明」という)が記載されている。
<甲11発明>
「1A:耕耘軸に取り付けられる取付用の爪柄部(7)と、前記取付用の爪柄部(7)から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
1B:前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質の刃鋼部(3)が設けられ、
1C:前記硬質の刃鋼部(3)の前記取付用の爪柄部(7)側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記硬質の刃鋼部(3)の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している
1E:耕耘爪。」
ここで、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲第11号証には上記構成1Cが記載されている。
また、比較図1からも明らかなように、本件特許の図面と甲第11号証の図面とを比較すると、赤丸のずれ量は、ほとんど差がなく実質的に同じであるから、甲第11号証に上記構成1Cが記載されていることは明らかである。
[図:0001405570000001.jpg]
上図のとおり、本件特許の図面と甲第11号証の図面とで、左右の赤丸のずれ量が実質的に同じであることは、誰がみても一目瞭然である。
(請求書30頁1行~31頁2行)
イ 本件発明1と甲11発明とを対比する。
甲11発明の「取付用の爪柄部(7)」は本件発明1の「取付基部」に相当し、甲11発明の「硬質の刃鋼部(3)」は本件発明1の「硬質合金部」に相当する。
それゆえ、本件発明1と甲11発明とは、構成1Aないし1Eのすべてで一致しており、本件発明1と甲11発明との間に相違点はない。
したがって、本件発明1は、甲11発明と同一である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明に基づいて、又は甲第11号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、百歩譲って仮に、本件発明1の構成1Cが甲第11号証に記載されていないとしても、甲第11号証に記載された発明において構成1Cのようにすることは、当該構成1Cに基づく効果(技術的意義)もなく、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
しかも、甲第6号証には本件発明1の構成1Cが記載されており、組み合わせの動機付けもあるから、当業者が甲第11号証及び甲第6号証に基づいて本件発明1を容易に想到し得たことは明らかである。
(請求書32頁3~18行)
(3)無効理由3
ア 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明
甲第12号証の1頁右欄11行~2頁左上欄下2行、2頁右上欄10~16行の記載、第1図及び第2図の図示内容等からみて、この甲第12号証には、次の発明(以下、「甲12発明」という)が記載されている。
<甲12発明>
「1A:耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃11と、前記縦刃11から連続して延びる横刃12と、を有し、前記縦刃11から前記横刃12に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃11に対して前記横刃12が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘刃1であって、
1B:前記縦刃11及び横刃12の刃縁側には、前記縦刃11から前記横刃12に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金による硬化層2が設けられ、
1C:前記硬化層2の前記取付基部側の端部は、前記縦刃11の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記硬化層2の切っ先側の端部は、前記横刃12の端部近傍に位置している
1E:耕耘刃1。」
ここで、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲第12号証には上記構成1Cが記載されている。
また、甲第12号証の第1図に図示された作用部域Aは、耕耘刃が耕耘機能を果す領域であって、耕耘刃の摩耗に影響なく常に優れた切込み能力を発揮する部分であるから、傾斜状の刃付け面がその作用部域Aの全長にわたって形成されていることは明らかであり、当業者の技術常識にも合致し、よって、甲第12号証に上記構成1Cが記載されていることは明らかである。
さらに、耕耘爪における縦刃部の刃付け端部の位置に関する当業者の技術常識(例えば甲第16号証ないし甲第21号証等)を考慮すると、甲第12号証に上記構成1Cが記載されていることはますます明らかである。
例えば、甲第19号証(JIS規格)中の「付図2」からも明らかなとおり、縦刃部及び横刃部の回転方向前端部には全長にわたって刃付けがされており、「縦刃部の刃付け端部」が耕耘爪における曲線状の回転方向前端部の取付基部側の端部付近に位置することは、当業者の技術常識である。
[図:0001405570000002.jpg]
(請求書36頁5行~37頁末行及び図)
イ 本件発明と先行技術発明との対比
本件発明1と甲12発明とを対比する。
甲12発明の「縦刃11」は本件発明1の「縦刃部」に相当し、以下同様に「横刃12」は「横刃部」に相当し、「耕耘刃1」は「耕耘爪」に相当し、「硬化層2」は「硬質合金部」に相当する。
それゆえ、本件発明1と甲12発明とは、構成1Aないし1Eのすべてで一致しており、本件発明1と甲12発明との間に相違点はない。
したがって、本件発明1は、甲12発明と同一である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲第12号証に記載された発明に基づいて、又は甲第12号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、百歩譲って仮に、本件発明1の構成1Cが甲第12号証に記載されていないとしても、甲第12号証に記載された発明において構成1Cのようにすることは、当該構成1Cに基づく効果(技術的意義)もなく、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
しかも、甲第6号証には本件発明1の構成1Cが記載されており、組み合わせの動機付けもあるから、当業者が甲第12号証及び甲第6号証に基づいて本件発明1を容易に想到し得たことは明らかである。
(請求書38頁3~19行)
(4)無効理由4
ア 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明
甲第13号証の2頁左上欄2~17行、2頁右上欄16行~左下欄下5行の記載、第1図ないし第5図の図示内容等からみて、この甲第13号証には、次の発明(以下、「甲13発明」という)が記載されている。
<甲13発明>
「1A:耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃11と、前記縦刃11から連続して延びる横刃12と、を有し、前記縦刃11から前記横刃12に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃11に対して前記横刃12が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘刃1であって、
1B:前記縦刃11及び横刃12の刃縁側には、前記縦刃11から前記横刃12に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金による硬化層2が設けられ、
1C:前記硬化層2の前記取付基部側の端部は、前記縦刃11の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記硬化層2の切っ先側の端部は、前記横刃12の端部近傍に位置している
1E:耕耘刃1。」
ここで、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲第13号証には上記構成1Cが記載されている。
また、甲第13号証の第1図に図示された作用部域Aは、耕耘刃が本来の機能を果す領域であって、耕耘刃の摩耗に影響なく優れた切込み能力を発揮する部分であるから、傾斜状の刃付け面がその作用部域Aの全長にわたって形成されていることは明らかであり、当業者の技術常識にも合致し、よって、甲第13号証に上記構成1Cが記載されていることは明らかである。
さらに、耕耘爪における縦刃部の刃付け端部の位置に関する当業者の技術常識(例えば甲第16号証ないし甲第21号証等)を考慮すると、甲第13号証に上記構成1Cが記載されていることはますます明らかである。
そもそも、縦刃部の刃付け端部の位置が、「α点の位置」ではなく「II-II線の位置」であると仮定した場合であっても、比較図2のとおり、赤丸のずれ量はほとんど差がなく実質的に同じであるから、甲第13号証に上記構成1Cが記載されていることは、もはやいうまでもない。
[図:0001405570000003.jpg]
なお、甲第13号証の第2図(II-II線断面図)に刃付け面が図示されていることに着目して、上記比較図2では、縦刃部の刃付け端部の位置が少なくとも「II-II線の位置」であると仮定したが、実際は「α点の位置」であることを念のため付言しておく。
(請求書42頁3行~43頁末行)
イ 本件発明と先行技術発明との対比
本件発明1と甲13発明とを対比する。
甲13発明の「縦刃11」は本件発明1の「縦刃部」に相当し、以下同様に「横刃12」は「横刃部」に相当し、「耕耘刃1」は「耕耘爪」に相当し、「硬化層2」は「硬質合金部」に相当する。
それゆえ、本件発明1と甲13発明とは、構成1Aないし1Eのすべてで一致しており、本件発明1と甲13発明との間に相違点はない。
したがって、本件発明1は、甲13発明と同一である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲第13号証に記載された発明に基づいて、又は甲第13号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、百歩譲って仮に、本件発明1の構成1Cが甲第13号証に記載されていないとしても、甲第13号証に記載された発明において構成1Cのようにすることは、当該構成1Cに基づく効果(技術的意義)もなく、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
しかも、甲第6号証には本件発明1の構成1Cが記載されており、組み合わせの動機付けもあるから、当業者が甲第13号証及び甲第6号証に基づいて本件発明1を容易に想到し得たことは明らかである。
(請求書44頁3~19行)
(5)無効理由5
ア 甲第14号証の1頁右欄7行~2頁左欄5行の記載、第1図ないし第3図の図示内容等からみて、この甲第14号証には、次の発明(以下、「甲14発明」という)が記載されている。
<甲14発明>
「1A:耕うん軸(2)に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕うん軸(2)の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕うん軸(2)の回転軸方向の一方に湾曲させた耕うん爪(1)であって、
1B:前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い耐摩耗性部材(4)からなる皮膜(5)が設けられ、
1C:前記皮膜(5)の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、
1D:前記皮膜(5)の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している
1E:耕うん爪(1)。」
ここで、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲第14号証には上記構成1Cが記載されている。
また、比較図3からも明らかなように、赤丸のずれ量は、ほとんど差がなく実質的に同じであるから、甲第14号証に上記構成1Cが記載されていることは明らかである。
[図:0001405570000004.jpg]
上図のとおり、本件特許の図面と甲第11号証(当審注:「甲第11号証」は「甲第14号証」の誤記と認める)の図面とで、左右の赤丸のずれ量が実質的に同じであることは、誰がみても一目瞭然である。
(請求書47頁16行~49頁2行)
イ 本件発明1と甲14発明とを対比する。
甲14発明の「耕うん軸(2)」は本件発明1の「耕耘軸」に相当し、以下同様に「耕うん爪(1)」は「耕耘爪」に相当し、「皮膜(5)」は「硬質合金部」に相当する。
それゆえ、本件発明1と甲14発明とは、構成1Aないし1Eのすべてで一致しており、本件発明1と甲14発明との間に相違点はない。
したがって、本件発明1は、甲14発明と同一である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲第14号証に記載された発明に基づいて、又は甲第14号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、百歩譲って仮に、本件発明1の構成1Cが甲第14号証に記載されていないとしても、甲第14号証に記載された発明において構成1Cのようにすることは、当該構成1Cに基づく効果(技術的意義)もなく、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
しかも、甲第6号証には本件発明1の構成1Cが記載されており、組み合わせの動機付けもあるから、当業者が甲第14号証及び甲第6号証に基づいて本件発明1を容易に想到し得たことは明らかである。
(請求書50頁3~19行)
ウ 甲第14号証記載の発明は、「動力耕うん機等に装備する耕うん爪の改良に関するもの」(甲第14号証の第1頁左欄下4行ないし下3行)である。
そして、その耕うん爪は、甲第14号証の出願人及び被請求人が協力した甲第20号証の学術報告書にも記載されているとおり、土の切削砕土及び反転放擲という2つの機能を発揮するものであって、取付基部(取付部)と、縦刃部(直刃部)と、横刃部(わん曲部)という3つの部分を具備することを前提としたものであり、このことは上述のとおり当業者の技術常識である。
また、甲第14号証の第1図(下図参照)からは、当該第1図に記載された耕耘爪の図面上側の部分である横刃部が、縦刃部に対して図面手前方向(耕耘軸の軸方向)に湾曲していることが看て取れる。このことは、横刃部の先端面が細長い三角形状に描かれていることからも裏付けられる。
したがって、甲第14号証記載の耕耘爪は、本件発明1の「縦刃部」及び「横刃部」に相当する部分を有しており、当業者であれば縦刃部と横刃部の区別も容易である。
(請求人要領書29頁下から3行~30頁末行及び図)
(6)構成1Cについて
ア 構成1Cが各証拠(甲1、甲11~甲14)に記載されていること
無効理由1ないし5についての略同じ位置に関する相違点は、そもそも相違点ではなく、各証拠(甲1、甲11~甲14)に記載されている。
また、耕耘爪における刃付け部の刃付け面の位置に関する当業者の技術常識を勘案すれば、各証拠に構成1Cが記載されている。
以下、各証拠のうち甲13を例に挙げて説明する。
(請求人要領書9頁2~12行)
(ア)構成1Cが甲13に記載されていること
a 縦刃の刃付け端部の位置はα点であること
甲第13号証の第2図ないし第5図(各断面図)からは、刃付け部の傾斜状の刃付け面が縦刃11及び横刃12の表面(縦刃11に対して横刃12が屈曲した側の内側面)の刃縁11b側に形成されていることが看て取れる。
また、甲第13号証の第1図(裏面図)には、回転方向に向かって凸の円弧状に延びる「作用部域A」が両方向矢印で示されている。この作用部域Aは、上記(ア)の記載事項からみて明らかなように、耕耘爪が本来の機能を果す領域であって、優れた切込み能力を発揮する部分である。
それゆえ、その切込み能力を発揮し得る傾斜状の刃付け面は、縦刃11及び横刃12の表面の刃縁11b側における作用部域Aに一致して形成されているはずである。
したがって、甲第13号証の第1図に記載された耕耘爪において、縦刃11の刃付け端部(刃縁11bの取付基部側の端部)の位置は、縦刃11の「α点」(作用部域Aの端部位置)であって、硬化層2の取付基部側の端部の位置と一致している。
上記のことは、甲第13号証の第1図において、「11b(2a)」との記載があることからも明らかである(下図参照)。
すなわち、この「11b(2a)」という記載は、刃付け部の縁である「刃縁11b」の位置が、括弧内の「硬化層2の縁2a」の位置と一致することを意味している。
[図:0001405570000005.jpg]
(請求人要領書17頁2~末行)
b 当業者の技術常識にも合致すること
刃付け部の刃付け面が作用部域Aに一致して両位置が同じ「α点」に位置することは、当業者の技術常識にも合致する。
つまり、上記「ア」の記載事項からみて、耕耘爪の技術分野において、刃付け部の刃付け面が作用部域Aと略同じ領域、すなわち「縦刃部の取付基部側の端部の位置(α点及びその近傍位置)から横刃部の切っ先側の端部の位置までの領域」にわたって形成されていることは、当業者の技術常識である。
したがって、このような耕耘爪の刃付け面の位置に関する当業者の技術常識(例えば甲第16号証ないし甲第21号証等)を勘案すれば、構成1Cが甲第13号証に記載されていることはますます明らかである。
言い換えると、甲第13号証に接した当業者は、技術常識に基づいて刃付け面が作用部域Aに存在すると認識した上で、硬化層2の取付基部側の端部の位置と縦刃11の刃付け端部の位置とがいずれも同じ「α点」に位置していると理解することになる。
よって、少なくとも甲第13号証は、「略同じ位置」が広義の意味であるか否かにかかわらず、構成1Cが記載された証拠である。
なお、甲第12号証にも同様の図(次頁参照)があるので、この甲第12号証も同様、構成1Cが記載された証拠である。
[図:0001405570000006.jpg]
上記の如く、甲第12号証の第1図においては、「2a(11b)」との記載がある。当該「2a(11b)」との記載は、「硬化層2の縁2a」の位置が、括弧内の「刃縁11b」の位置と一致することを意味している。
(請求人要領書18頁2行~19頁3行)
イ 構成1Cは設計的事項であること
耕耘爪において、傾斜状の刃付け面が形成された刃付け部は、他の部分に比べて薄く、摩耗の進行が早い。それゆえ、その薄い刃付け部の取付基部側の端部付近が、硬質合金部で覆われていなかった場合には、その部分だけがすぐに摩耗して偏摩耗が生じてしまう。
また、耕耘爪において耐摩耗性の向上を図ることは、極めて一般的な課題であるから、偏摩耗を防止して耐摩耗性の向上を図ろうとすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。
したがって、耐摩耗性の向上を図るために、耕耘爪の設計の際に両位置が「略同じ位置」に位置するように設計して、薄い刃付け部の取付基部側の端部を硬質合金部で覆うようなことは、当業者が適宜行う設計的事項に過ぎない。
(請求人要領書19頁5行~20頁6行)
ウ 構成1Cは想到容易であること(甲6の適用)
(ア)動機付けについて
以下に述べるように、甲第6号証記載の構成1Cを各主引用発明に適用する動機付けがある。
すなわち、各主引用発明と、甲第6号証に記載された技術事項とは、いずれも耕耘作業機(ロータリ耕耘装置)の耕耘軸に取り付けられる耕耘爪である点で技術分野が共通しているとともに、その耕耘軸とともに回転しながら土に対して切削砕土及び反転放擲を行う点で作用及び機能が共通し、かつ、硬質合金部によって耐摩耗性の向上を図っている点で課題も共通している。またそもそも、耕耘爪において耐摩耗性の向上を図ることは、極めて一般的な課題(自明な課題)である。
しかも、甲第12号証及び甲第13号証に関していえば、上述のとおり第1図には「2a(11b)」や「11b(2a)」という符号のほか、作用部域Aが両方向矢印で示され、この両方向矢印は硬化層2の長さ寸法も示している。
それに加えて、「耕耘刃の作用部域における外側面に硬化層を突出して形成」(甲12の第2頁右上欄第18行及び第19行)という文言や、「作用部域Aに層設した硬化層2」(甲13の第2頁左下欄第1行)という文言も存在する。
そして、このような符号、両方向矢印および文言は、構成1Cを適用することについての示唆であるといえる。
したがって、上記のことから、甲第6号証記載の構成1Cを各主引用発明(甲1発明、甲11発明、甲12発明、甲13発明及び甲14発明)に適用する動機付けがある。
(請求人要領書20頁8行~21頁3行)
(イ)阻害要因について
甲第6号証における「(a)超硬金属コーテイング7は横刃部5に存在しない」との構成(以下、「構成(a)」という)は、以下に述べるように、各主引用発明に対して甲第6号証記載の構成1Cを適用することを妨げるものではなく、阻害要因は存在しない。
すなわち、甲第6号証には、「超硬金属コーテイング7(硬質合金部)の取付部3側の端部は、縦刃部4の取付部3側の端部(刃付け端部)と略同じ位置に位置」するという構成1Cが記載されている。
そして、この構成1Cは、超硬金属コーテイング7の切っ先側(横刃部5の先端側)の端部の位置に関するものではなく、超硬金属コーテイング7の取付部3側の端部の位置に関する発明特定事項であるから、構成(a)とは直接関係がない。このため、各主引用発明に構成1Cを適用するに際して、構成(a)は何ら影響を与えるものではない。
また、各主引用発明に構成1Cを適用した場合に、当然ながら縦刃部の刃付け端部の耐摩耗性が低下するわけではなく、縦刃部の刃付け端部のみが早期に摩耗することを防止して耐摩耗性が向上するのであるから、その適用は各主引用発明の目的(課題)に反するものではない。
さらに、その適用の際に、甲第6号証記載の「超硬金属コーテイング7」(硬質合金部)を、各主引用発明の「硬質合金部」に替えて適用する必要はない。
要するに、主引用例及び副引用例における両硬質合金部同士を置換(入れ替え)して適用する必要性は全く存在せず、副引用例である甲第6号証に記載された「両位置が略同じ位置に位置する」という技術的思想を、各主引用発明の「硬質合金部」に組み合わせるように適用して、両端部の位置を合わせるだけである。
しかも、各主引用例のいずれをみても、そのような両端部の位置合わせを排斥する記載はない。
したがって、構成(a)は適用できない理由となり得るものではなく、何ら阻害要因は存在しない。
なおこの点に関し、被請求人は、「・・・甲6の「超硬金属コーテイング7」を、甲1において「硬質金属薄板2」に替えて適用すれば、甲1の「平板状の部分(縦刃部)」のみに「超硬金属コーテイング7」が設けられる構成となるため、「縦刃部及び横刃部」に相当する部分に渡って設けることによる作用効果を期待してなされた甲1発明の目的を達成し得なくなる・・・」(答弁書の第13頁)等と主張している。
しかし、甲第6号証記載の「超硬金属コーテイング7」は、そもそも縦刃部の背面に対して着脱可能なものではないため、その「超硬金属コーテイング7」自体を縦刃部の背面から取り外して甲1発明に置換適用するようなことは、当業者であっても着想し得ないことである。
(請求人要領書21頁9行~22頁下から2行)
(7)無効理由6
ア 甲第6号証の1頁右欄9~14行、3頁左欄9~10行の記載、第1図及び第2図の図示内容等からみて、この甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という)が記載されている。
<甲6発明>
「1A:耕耘軸1に取り付けられる取付部3と、前記取付部3から連続して延びる縦刃部4と、前記縦刃部4から連続して延びる横刃部5と、を有し、前記縦刃部4から前記横刃部5に渡って前記耕耘軸1の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部4に対して前記横刃部5が前記耕耘軸1の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪2であって、
1B´:前記縦刃部4の刃縁側には、他の部分よりも硬度が高い超硬金属コーテイング7が設けられ、
1C:前記超硬金属コーテイング7の前記取付部3側の端部は、前記縦刃部4の刃付け端部と略同じ位置(一致した位置)に位置している
1E:耕耘爪。」
甲第6号証の第1図には、「超硬金属コーテイグ7の取付部3側の端部」と「縦刃部4の刃付け端部」とが互いに一致した構成が図示されている。
[図:0001405570000007.jpg]
なお、敢えていうまでもないが、念のため、以下の点を付言しておく。
甲第6号証の第1図からは、「縦刃部4」の「刃付け」された部分は、「縦刃部4」の「刃縁6」側に位置する、線分で区画された略円弧状の部分であること、及び、「縦刃部4の刃付け端部」は、当該略円弧状の部分の「取付部3」側の端部(青丸参照)であることが看て取れる。
(請求書53頁13行~54頁末行)
イ 本件発明1と甲6発明とを対比すると、両者は次の点のみで相違し、それ以外では一致している。
[相違点1]
本件発明1では、「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、」(構成1B)、かつ、「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している」(構成1D)のに対し、甲6発明では、硬質合金部(超硬金属コーテイング7)が縦刃部の刃縁側に設けられている点。
そこで、相違点1について検討する。
相違点1に係る本件発明1の構成(構成1B及び1D)は、上述のとおり甲第12号証ないし甲第14号証等に記載されていることから、本件特許の原出願前の周知技術又は公知技術である。
つまり、縦刃部及び横刃部を備える耕耘爪において、横刃部も含めて摩耗を抑制するために、硬質合金部を縦刃部から横刃部に渡って設けるとともに、その硬質合金部の切っ先側の端部を横刃部の端部近傍に位置させることは、単なる周知技術(少なくとも公知技術)に過ぎない。
そして、甲6発明と当該周知技術又は公知技術とは、いずれも硬質合金部を設ける耕耘爪に関する技術で共通しており、しかも、耐摩耗性の向上を図ることは当該耕耘爪における自明の課題であって、両者の課題も共通しているため、これら両者を組み合わせる動機付けが存在し、他方、それを妨げる阻害要因は存在しない。
それゆえ、甲6発明において、耐摩耗性の向上を図るという自明の課題に基づいて、当該周知技術又は公知技術を適用して、硬質合金部(超硬金属コーテイング7)を縦刃部から横刃部に渡って設けるとともに、その硬質合金部の切っ先側の端部を横刃部の端部近傍に位置させること、すなわち上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術又は公知技術(甲第12号証ないし甲第14号証等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(請求書55頁11行~56頁15行)
ウ 構成1B及び1Dは周知技術または公知技術であること
審判請求書で既に述べたように、構成1B及び1Dは、甲第12号証ないし甲第14号証の記載からみて周知技術又は公知技術であり、かつ、当該周知技術又は公知技術を甲6発明に適用する動機付けも存在する。
なお、構成1B及び1Dが周知技術であることは、例えば以下の甲第23号証及び甲第24号証の記載からみても明らかである。
(請求人要領書23頁2~5、11、12行)
(ア)甲第23号証(登録実用新案第3117466号公報)には、次の記載がある。
すなわち、甲第23号証の【0014】には、「また、図2,図3および図4の断面図で示すように、前記平坦部6における一対の側面6a,6bのうち、上記先端部8が屈曲しない側の側面6aのほぼ全面に耐磨耗性金属層10が被覆されている。尚、図4は、図3中のA-A線の矢視に沿った断面図である。更に、図2,図3および図5の断面図で示すように、先端部8の両側面8a,8bのうち、アール形の凸部である外周辺に位置する刃縁7に沿って、細長い耐磨耗性金属層12がほぼ対称に被覆されている。上記刃縁7は、先端部8の両側面8a,8bの一方を斜めに成形した先尖り辺で、耕耘爪1を土壌の中に進入し易くすると共に、進入した土壌を積極的に砕土・攪拌する。尚、図2,図3中の符号9は、先端部8の先端辺であり、図5は、図3中のB-B線の矢視に沿った断面図である。」と記載されている。
また、図2及び図3は、次のとおりである。
[図:0001405570000008.jpg]
[図:0001405570000009.jpg]
(請求人要領書23頁14行~24頁)
(イ)甲第24号証(特開2006-345828号公報)には、次の記載がある。
すなわち、甲第24号証の【0051】には、「実施例1では、硬化層4は横刃部2および縦刃部1を覆い、窪み部3の浅窪み部34の上隅部34Uが僅かに露出するものとしているが、より良好な耐性強度を持たせる為に全て覆うものとしても良い。」と記載されている。
また、図1は、次のとおりである。
[図:0001405570000010.jpg]
(請求人要領書25頁2~7行及び図)
(8)無効理由7
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」が不明確であるから、明確性要件を満たしていない。
すなわち、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は、「略」という用語を含むため、どの程度離れた位置までが含まれることになるのか、曖昧で不明確である。
したがって、本件発明1は明確ではなく、また、この本件発明1を引用する本件発明2ないし7も明確ではない。
(請求書59頁2~6、18、19行)
(9)無効理由8
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1に記載された「略同じ位置」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、サポート要件を満たしていない。
すなわち、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」という文言(用語)は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載及び示唆がない。
したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、この本件発明1を引用する本件発明2ないし7も同様である。
(請求書60頁2~6、10、11行)
(10)無効理由9
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1において発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないから、サポート要件を満たしていない。
請求項1の記載をみても、耕耘爪がカバー体に隣接する位置に取り付けられることについて何ら規定(限定)されておらず、当該カバー体の隣接位置以外に取り付けられた場合には、本件明細書の【0042】記載の課題を解決できない。
それゆえ、請求項1には、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものである。
したがって、別件審決の上記判断を前提とすれば、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、この本件発明1を引用する本件発明2ないし5及び7も同様である。
(請求書61頁2~4、12~21行)
(11)無効理由10
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」が不明確であるから、明確性要件を満たしていない。
図7からは、図5のA-A線に沿う断面が把握されるのみで、それ以外の箇所の断面がどのようになっているかは不明である。
しかも、図4(a)及び(b)からは、「刃付け」された部分を有しない第1~第3耕耘爪52,53,54しか看て取れず、そもそも、縦刃部52b,53b,54bに対して「刃付け」がされているか否かが不明である。
それゆえ、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」がどこに位置するのか不明であるから、構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」は不明確である。
したがって、本件発明1は明確ではなく、また、この本件発明1を引用する本件発明2ないし7も明確ではない。
(請求書62頁2~3、11~19、23、24行)
(12)無効理由11
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1に記載された「縦刃部の刃付け端部」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、サポート要件を満たしていない。
すなわち、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」という文言(用語)は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載及び示唆がない。
したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、この本件発明1を引用する本件発明2ないし7も同様である。
(請求書63頁2~6、13~14行)
(13)無効理由12
本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言は、本件明細書のみならず、そもそも原出願(平成25年10月18日に出願された特願2013-217312号:親出願)の出願当初の明細書等にも記載及び示唆がないから、本件特許の出願(孫出願)は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しない。
それゆえ、本件発明1ないし7は、親出願の公開公報である甲第15号証に記載された発明と同一(実質同一)である。
また、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし7は、甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(請求書64頁2~10行)
第4 被請求人の主張と証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張している(答弁書、被請求人要領書、被請求人上申書参照。)。
2 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 甲1には、少なくとも構成1A及び構成1Cが記載されておらず、少なくとも、構成1Cは、周知技術又は公知技術でもなく、当業者の設計的事項でもない。
甲6には、構成1Cが記載されていない。また、仮に、甲6に構成1Cが記載されているとしても、甲1発明に対して甲6発明を適用する動機づけはない。
また、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを備えることにより、答弁書で述べたとおりの作用効果を奏するものである。
したがって、請求人の甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の主張、及び甲1及び6に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書38頁18頁~39頁20行)
イ 甲6の1頁右欄2~6行、3頁左上欄12~17行の記載を参酌すれば、甲6発明は、通常のナタ爪を改良して横刃部5の土壌の放てき性能を向上させるためになされたものであり、土壌の切削作業は、縦刃部4の役割であることが理解できる。つまり、甲6発明は、縦刃部4に切削作業を担わせ、横刃部5に放てき作業を担わせるという甲6発明の耕耘爪に特有の構成に鑑みて、あえて縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7を設けるという構成が採用されていると考えるのが自然である。
「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」との位置関係のみを切り取って甲1発明に甲6発明を適用しようとする請求人主張は、誤りである。
(被請求人要領書13頁4~15行)
(2)無効理由2
ア 甲11には、少なくとも構成1A及び構成1Cが記載されておらず、少なくとも、構成1Cは、周知技術又は公知技術でもなく、当業者の設計的事項でもない。
甲6には、構成1Cが記載されていない。また、仮に、甲6に構成1Cが記載されているとしても、甲11発明に対して甲6発明を適用する動機づけはない。
また、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを備えることにより、答弁書で述べたとおりの作用効果を奏するものである。
したがって、請求人の甲11に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の主張、及び甲11及び6に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書40頁12行~41頁13行)
イ 甲11発明は、「刃部(2)」に「軟質の地鉄部(4)と硬質の刃鋼部(3)とが一体となって構成された鋼板である」「二層鋼板」を使用しているため、刃部(2)全体に刃鋼部(3)が設けられることを必須の構成としている。
したがって、刃部(2)全体に刃鋼部(3)が設けられることを必須の構成とする甲11発明に対し、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられた甲6発明を適用する動機づけはない。
(被請求人要領書13頁19~末行)
(3)無効理由3
ア 甲12には、少なくとも構成1Cが記載されておらず、少なくとも、構成1Cは、周知技術又は公知技術でもなく、当業者の設計的事項でもない。
甲6には、構成1Cが記載されていない。また、仮に、甲6に構成1Cが記載されているとしても、甲12発明に対して甲6発明を適用する動機づけはない。
また、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを備えることにより、答弁書で述べたとおりの作用効果を奏するものである。
したがって、請求人の甲12に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の主張、及び甲12及び6に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書42頁5行~43頁6行)
イ 縦刃の外側面から横刃の外側面に渡って硬化層2を層設することを必須の構成とする甲12発明に対し、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられた甲6発明を適用する動機づけはない。
甲12には、そもそも構成1Cの「縦刃部側の刃付け端部」の位置に関する記載はない。また、甲12には、作用部域Aが両方向矢印で示されているものの、この両方向矢印は、あくまで作用部域Aの範囲を示すものであり、硬化層2の長さ寸法を示すものではない。さらに、作用部域Aを示す両方向矢印や「耕耘刃の作用部域における外側面に硬化層を突出して形成」という文言等の存在が、なぜ構成1Cを適用することについての示唆であるといえるのか理解することができない。これらの記載は、甲12発明において、作用部域Aに属する縦刃11にも横刃12にも硬化層2を設けることが必須の構成であることのみを示すものといえる。したがって、上記請求人主張は、誤りである。
(被請求人要領書14頁15~17行、15頁6~15行)
(4)無効理由4
ア 甲13には、少なくとも構成1Cが記載されておらず、周知技術又は公知技術でもなく、当業者の設計的事項でもない。
甲6には、構成1Cが記載されていない。また、仮に、甲6に構成1Cが記載されているとしても、甲13発明に対して甲6発明を適用する動機づけはない。
また、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを備えることにより、答弁書で述べたとおりの作用効果を奏するものである。
したがって、請求人の甲13に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の主張、及び甲13及び6に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書43頁下から3行~44頁下から3行)
イ 請求人は、甲13の第1図に記載された耕耘爪において、縦刃11の刃付け端部の位置は縦刃11の「α点」(作用部域Aの端部位置)であって、硬化層2の取付基部側の端部の位置と一致している旨主張している。
しかしながら、「作用部域A」は、あくまで「耕耘刃1が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分」(甲13の2頁左上欄6~7行)を示しているにすぎず、刃付け部(甲13の第2図から第5図の断面に現れた傾斜部分)がどの位置からどの位置まで設けられているかとは直接関係しない。また、「耕耘刃が耕土Kとの摩擦により刃縁11aが摩耗して峰縁11c側に後退しても、硬化層2の縁2aが必ず露出しているので、耕耘刃1の摩耗に影響なく優れた切込み能力を発揮する」(甲13の2頁左下欄7~10行)と記載されるように、耕耘刃が摩耗に影響なく優れた切込み能力を発揮するのは、硬化層2の縁2aが必ず露出しているからであって、刃付け部の有無とは関係がない。
また、請求人は、甲13の第1図に関して、この「11b(2a)」という記載は、刃付け部の縁である「刃縁11b」の位置が、括弧内の「硬化層2の縁2a」の位置と一致することを意味している旨主張しているが、「11b(2a)」という符号は、上述の刃付け部が存在する部分(具体的には、第2図から第5図の断面に現れた部分)においては、刃縁11bが硬化層2の縁2aになっていることを意味するにとどまり、刃付け部の端部がどこであるかを意味するものではない。
(被請求人要領書27頁8~22行、28頁4~11行)
ウ 縦刃11の外側面11aにも横刃12の外側面12aにも硬化層2を層設することを必須の構成とする甲13発明に対し、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられた甲6発明を適用する動機づけはない。
また、甲13には、そもそも構成1Cの「縦刃部側の刃付け端部」の位置に関する記載はない。さらに、上述のとおり、請求人は、甲13の第1図において、「11b(2a)」という符号が記載されていること、作用部域Aが両方向矢印で示されていること、及び、甲13には「作用部域Aに層設した硬化層2」(甲13の第2頁左下欄第1行)という文言が存在することなどを根拠として、このような符号、両方向矢印および文言は、構成1Cを適用することについての示唆であると主張しているが、これらの請求人主張が、誤りであることは、上述したとおりである。
(被請求人要領書16頁1~4行、9~16行)
(5)無効理由5
ア 甲14には、少なくとも構成1A及び構成1Cが記載されておらず、少なくとも、構成1Cは、周知技術又は公知技術でもなく、当業者の設計的事項でもない。
甲6には、構成1Cが記載されていない。また、仮に、甲6に構成1Cが記載されているとしても、甲14発明に対して甲6発明を適用する動機づけはない。
また、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを備えることにより、答弁書(13頁16行~14頁6行)で述べたとおりの作用効果を奏するものである。
したがって、請求人の甲14に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の主張、及び甲14及び6に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書45頁14行~46頁16行)
イ 爪ホルダ6側から耕うん爪の切っ先側に渡って刃縁部(3)に重ねて耐摩耗性部材(4)を設けることを必須の構成とする甲14発明に対し、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられた甲6発明を適用する動機づけはない。
なお、「各主引用発明に構成1Cを適用するに際して、構成(a)は何ら影響を与えるものではない」という上記請求人主張が誤りであることは、上述したとおりである。
(被請求人要領書17頁2~9行)
(6)無効理由6
ア 耕耘爪が、本件発明1の構成1B及び構成1Dの両構成を備えることは、周知技術又は公知技術とはいえず、仮に、耕耘爪が構成1B及び構成1Dの両構成を備えることが周知技術又は公知技術であったとしても、当該周知技術又は公知技術を甲6発明に適用する動機づけはない。
したがって、請求人の甲6及び周知技術又は公知技術に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。
(被請求人要領書47頁8~15行)
イ 構成1B及び1Dが周知技術又は公知技術かについて
(ア) 甲12~14の記載からみて、耕耘爪が、本件発明1の構成1B(「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ること)及び構成1D(「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している」こと)の両構成を備えることは、周知技術又は公知技術とはいえない。
構成1Bでは「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側」と特定されているように、硬質合金部が、縦刃部及び横刃部の「刃縁側」に設けられている。これに対し、甲12発明における硬化層2は、横刃12において刃縁11bから峰縁11cに渡って設けられている。すなわち、甲12発明における硬化層2は、「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側」に設けられたものとはいえない。この点については、甲12の第1図と同様の構成を開示する甲13発明においても同様である。
(被請求人要領書17頁16行~18頁4行)
(イ)また、請求人が引用する甲23に記載の耕耘爪1は、そもそも「縦刃部」及び「横刃部」の区別がなく、耐磨耗性金属層10及び12は、「縦刃部」及び「縦刃部から連続して延びる横刃部」に相当する部分に形成されるものとはいえない。また、甲23に記載の耕耘爪1は、平坦部6において刃縁7から峰縁(刃縁7とは反対側の縁)に渡って耐磨耗性金属層10が設けられている。すなわち、甲23に記載された耕耘爪1において、耐磨耗性金属層10及び12は、「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側」に設けられたものとはいえない。
また、請求人が引用する甲24に記載された耕耘爪は、硬化層4が縦刃部1の一部のみを覆う構成となっている。ここで、本件発明1の構成1Bにおける「前記縦刃部から前記横刃部に渡って」との記載は、構成1C及び構成1Dを考慮して解釈すべきであり、構成1Bにおける「硬質合金部」は、「前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置」から「前記横刃部の端部近傍」の位置に渡って設けられていると解釈すべきである。したがって、甲24に記載された耕耘爪において、硬化層4は、「前記縦刃部から前記横刃部に渡って」設けられたものとはいえない。
以上のとおり、請求人が引用する甲23及び24の記載内容を踏まえても、耕耘爪が構成1B及び構成1Dの両構成を備えることは、周知技術又は公知技術であるということはできない。
(被請求人要領書18頁15行~20頁3行)
ウ 耕耘爪に対して耐摩耗性部材として硬質合金部を設ける場合、耕耘爪の用途や役割によって硬質合金部を設ける部位は様々であることが当業者の技術常識である。例えば、甲1発明では、爪の刃先線(1’)が常に尖った良く切れる状態に保たれるように、刃先線(1’)に沿って「平板状の部分及び湾曲した部分」に渡って硬質金属薄板2が設けられている。甲12発明及び甲13発明では、耕耘刃全体が均一的な寿命となるようにするために、作用部域における縦刃の外側面から横刃の外側面に渡って硬化層2が層設されている。甲6発明では、縦刃部4に切削作業を担わせ、横刃部5に放てき作業を担わせるという役割分担に鑑みて、あえて縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7を設けるという構成が採用されている。さらに、上述した甲23発明では、平坦部6において刃縁7から峰縁に渡って耐磨耗性金属層10が設けられ、甲24発明では、横刃部2全体及び縦刃部1の一部の刃縁側に硬化層4が設けられている。これらの文献は、いずれも耕耘爪の用途や役割によって適材適所で様々な部位に硬質合金部を設けることの証左といえる。
このように、「耕耘爪」の技術分野では、爪の用途や役割に応じて硬質合金部の配置を適宜設計することが技術常識であり、単に、技術分野、作用及び機能、又は、課題が共通するという理由だけで周知技術又は公知技術の適用を試みることはない。
上述したとおり、甲6発明は、通常のナタ爪を改良して横刃部5の土壌の放てき性能を向上させるためになされたものであり、縦刃部4に切削作業を担わせ、横刃部5に放てき作業を担わせるという甲6発明の耕耘爪に特有の構成に鑑みて、あえて縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7を設けるという構成が採用されている。これに対し、上記周知技術又は公知技術は、硬質合金部が「縦刃部から横刃部に渡って」設けられることを前提としている。したがって、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられた甲6発明に対し、硬質合金部が「縦刃部から横刃部に渡って」設けられることを前提とする上記周知技術又は公知技術を適用する動機づけはない。
(被請求人要領書21頁2行~22頁4行)
(7)無効理由7
構成1Cの「同じ位置に位置し」との記載は、本件図面の図5及び図6に示されたとおり、「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが、耕耘爪の「硬質合金部」が設けられた面(図6参照)とその反対側の「刃付け」がされた面(図5参照)との表裏で対応する位置に設けられていることを意味する。
ここで、構成1Cの「略同じ位置」とは、字義どおり「おおよそ同じ位置」を意味するものであり、「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが厳密な意味で同じ位置である必要はないものの、同じ位置とは言い難いほど異なる位置となる態様を含まないことを意味する(乙7、41頁21行~42頁6行)。「略同じ位置」に、「同じ位置」を基準にして、どの程度の相違を含むかは、本件明細書及び図面を参酌すれば明らかである。
本件明細書の【0031】には、「取付基部54aの延びる方向」及び「取付基部54aの幅寸法」との関係で「硬質合金部54eの取付基部54a側の端部」の位置が特定されている。この「硬質合金部54eの取付基部54a側の端部」の位置は、図6を参酌すれば、「硬質合金部54e」が取付基部54a側において刃縁と交わる箇所であることを理解することができる。また、技術常識を勘案して図5及び図7を参酌すれば、「縦刃部54bの刃付け端部」の位置は、刃付けがされた部分(図7に示された斜面状の部分)が縦刃部54bにおいて刃縁と交わる箇所であることを理解することができる。このとき、図5及び図6を参酌すれば、「硬質合金部54eの取付基部54a側の端部」の位置と「縦刃部54bの刃付け端部」の位置とが「おおよそ同じ位置」に位置する状態が示されており、この状態が「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いることを意味する。そして、硬質合金部54eの形成や刃付けがされた部分の形成に寸法誤差や設計誤差等が含まれ得ることは、当業者の技術常識であるため、「略同じ位置に位置し」とは、「硬質合金部54eの取付基部54a側の端部」の位置と「縦刃部54bの刃付け端部」の位置との相違が、寸法誤差や設計誤差による相違を含む範囲にとどまることを意味することは明らかである。
したがって、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は明確であり、請求人の本件特許の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たしていないとの主張には理由がない。
(被請求人要領書48頁12行~49頁19行)
(8)無効理由8
上述したとおり、本件明細書及び本件図面には、構成1Cについて、「略同じ位置」との記載の意味を当業者が理解できる程度に記載されている。また、本件発明1は、耕耘時の抵抗を減らしつつ、耕耘爪の摩耗を防止するための構成として、硬質合金部で縦刃部の刃付け部を覆うものである(乙7、41頁10~20行)。より具体的には、答弁書で述べたとおり、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを有することにより、耕耘抵抗の増加を避けつつ、くびれ摩耗を防ぐという作用効果を奏することができる。
したがって、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求人の本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないとの主張には理由がない。
(被請求人要領書50頁2~12行)
(9)無効理由9
請求人は、「請求項1の記載をみても、耕耘爪がカバー体に隣接する位置に取り付けられることについて何ら規定(限定)されておらず、当該カバー体の隣接位置以外に取り付けられた場合には、本件明細書の【0042】記載の課題を解決できない」(審判請求書61頁12~15行)と主張している。
しかしながら、本件発明1は、畦塗り機ではなく、耕耘爪の発明であり、物としての「耕耘爪」を構成する要素を発明特定事項として記載すれば足りる。また、上述したとおり、本件発明1は、耕耘時の抵抗を減らしつつ、耕耘爪の摩耗を防止するための構成として、硬質合金部で縦刃部の刃付け部を覆うものである(乙7、41頁10~20行)。より具体的には、本件発明1は、構成1B、構成1C及び構成1Dを有することにより、耕耘抵抗の増加を避けつつ、くびれ摩耗を防ぐという課題を解決することができる。
ここで、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆はなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断する(乙7、43頁16~23行)。
本件についてみると、本件発明1の構成1A、構成1B、構成1C、構成1D及び構成1Eは、本件明細書及び本件図面から十分に理解できるものであり、本件発明1は「発明の詳細な説明に記載された発明」であるといえる。また、当業者であれば、本件明細書及び本件図面を参酌することにより、上述した「耕耘抵抗の増加を避けつつ、くびれ摩耗を防ぐ」という課題が構成1B、構成1C及び構成1Dにより解決できる課題であることを理解することができる。すなわち、本件発明1は「発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである」といえる。
したがって、本件発明1には、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されているため、請求人の本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないとの主張には理由がない。
(被請求人要領書50頁16行~51頁下から4行)
(10)無効理由10
上述したとおり、技術常識を勘案して図5及び図7を参酌すれば、「縦刃部の刃付け端部」の位置は、刃付けがされた部分(図7に示された斜面状の部分)が縦刃部において刃縁と交わる箇所であることを理解することができる。より詳細に説明すると、図7からは「硬質合金部54e」は設けられていない側の刃縁部には斜面状の部分があることを読み取ることができ、技術常識を勘案すれば、この斜面状の部分が刃付けがされた部分であると理解することができる。このことを踏まえると、図5において刃縁部に位置する弓状の区画が「刃付けがされた部分」であって、「刃付けがされた部分」が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「刃付け部の刃付け端部」であると理解することができる。
また、上述のとおり、本件図面は、「硬質合金部54e」が設けられていない側の刃縁部に「刃付けがされた部分」が設けられていることを示す図7と、「硬質合金部54e」が設けられていない側の面を示す図5とを参酌することにより、図5において刃縁部に位置する弓状の区画が「刃付けがされた部分」であって、「刃付けがされた部分」が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「刃付け部の刃付け端部」であると理解することができる。
また、請求人は、「図4(a)及び(b)からは、「刃付け」された部分を有しない第1~第3耕耘爪52、53、54しか看て取れず、そもそも、縦刃部52b、53b、54bに対して「刃付け」がされているか否かが不明である」(審判請求書62頁14~16行)と主張している。
しかしながら、本件図面の図4(a)及び図4(b)は、前処理部50の全体構成を説明するための図であり、単に、硬質合金部54eの図示を省略しているにすぎない。上記請求人主張は、第3耕耘爪54の縦刃部54bに硬質合金部54eが設けられることを開示している他の部分(例えば、本件図面の図6等)の記載を考慮していない点で誤りである。
(被請求人要領書52頁2行~53頁21行)
(11)無効理由11
上記(11)で述べたとおり、当業者が本件明細書及び本件図面の記載を参酌すれば、「縦刃部の刃付け端部」は、図5に示された「刃付けがされた部分」が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「刃付け部の刃付け端部」であることを理解することができる。
したがって、「縦刃部の刃付け端部」は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求人の本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないとの主張には理由がない。
(被請求人要領書54頁1~8行)
(12)無効理由12
請求人は、「本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言は、本件明細書のみならず、そもそも原出願(平成25年10月18日に出願された特願2013-217312号:親出願)の出願当初の明細書等にも記載及び示唆がないから、本件特許の出願(孫出願)は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しない。それゆえ、本件発明1ないし7は、親出願の公開公報である甲第15号証に記載された発明と同一(実質同一)である。また、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし7は、甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである」(審判請求書64頁2~10行)と主張している。
しかしながら、構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言が本件明細書及び本件図面に記載されていることは上述のとおりであり、原出願の出願当初の明細書及び図面は、本件特許の明細書及び図面と同じである(乙3、乙4)。
したがって、構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言は、本件明細書のみならず、原出願の出願当初の明細書等にも記載されたものであり、請求人の本件特許の出願(孫出願)は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しないとの主張には理由がない。
(被請求人要領書54頁10行~55頁2行)
(13)証拠に「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部の位置」及び「前記縦刃部の刃付け端部の位置」が記載されているかについて
甲1、11~14発明は、「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部の位置」及び「前記縦刃部の刃付け端部の位置」の両位置自体が不明である。
この点に関し、請求人は、「耕耘爪における刃付け部の刃付け面の位置(縦刃部の刃付け端部の位置を含む)に関する当業者の技術常識(例えば甲第16号証ないし甲第21号証等)を勘案すれば、各証拠に構成1Cが記載されていることはますます明らかである」(請求人の口頭審理陳述要領書9頁6~9行)、「上記「ア」の記載事項からみて、耕耘爪の技術分野において、刃付け部の刃付け面が作用部域Aと略同じ領域、すなわち「縦刃部の取付基部側の端部の位置(α点及びその近傍位置)から横刃部の切っ先側の端部の位置までの領域」にわたって形成されていることは、当業者の技術常識である」(請求人の口頭審理陳述要領書18頁4~7行)などと主張している。
しかしながら、請求人が引用する各証拠(甲16~21)は、単に、「なた爪」を開示しているにすぎず、請求人が主張する技術常識(耕耘爪の技術分野において、刃付け部の刃付け面が作用部域Aと略同じ領域、すなわち「縦刃部の取付基部側の端部の位置(α点及びその近傍位置)から横刃部の切っ先側の端部の位置までの領域」にわたって形成されていること。)を裏付けるものではない。また、甲18~21には、刃付け部に関する説明すらなく、仮に、甲18~21の図面から刃付け部の位置が読み取れたとしても、甲16~21は、なた爪には任意の位置から任意の位置まで刃付け部が設けられるということを開示しているにすぎない。したがって、甲16~21を根拠とする技術常識に関する上記請求人主張は、誤りである。
以上のとおり、なた爪において、刃付け部の取付基部側の端部の位置は、爪によって様々であり、当業者において、技術常識として、特定の位置にあると認識されるものではない。
したがって、甲1、11~14には、技術常識を勘案しても、「前記縦刃部の刃付け端部の位置」及び「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部の位置」の両位置が実質的に記載されている、又は、自明な事項であるといえる証拠は存在しない。
(被請求人要領書4頁末行~6頁8行)
(14)証拠に構成1Cが記載されているかについて
ア 請求人による「構成1Cが各証拠に記載されている」という主張の根拠は、「構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味である」という点に尽きる。この点について、請求人が主張する「広義の意味」が何を意味するかは、依然として不明である。
本件発明1の「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いるという構成(構成1C)は、本件特許明細書及び本件図面(特に、図5及び図6)に開示された、「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが耕耘爪の「硬質合金部」が設けられた面とその反対側の「刃付け」がされた面との表裏で対応する位置に設けられていることを意味する(甲10、74頁12~15行)。ここで「略同じ位置」とは、字義どおり「おおよそ同じ位置」を意味するものであり、「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが厳密な意味で同じ位置である必要はないものの、同じ位置とは言い難いほど異なる位置となる態様を含まないこと(寸法誤差、設計誤差等による、ある程度の相違を含む範囲にとどまること)を意味する。
構成1Cの「略同じ位置」の意味については、本件特許明細書及び本件図面の記載を参酌して上述したとおり解釈すべきであり、当該解釈に基づけば、甲1、11~14には、「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いることが実質的に記載されている、又は、自明な事項であるといえる証拠は存在しない。
(被請求人要領書7頁1~3行、8頁2~12行、17~21行)
イ 甲6には、構成1Cが記載されていない。構成1Cは、構成1Bを前提とした事項であり、「「超硬金属コーテイング7」は「横刃部5」に存在しない」(構成(a))という構成を開示する甲6の記載内容とは、そもそもの前提が異なる。
請求人は、「この構成1Cは、超硬金属コーテイング7の切っ先側(横刃部5の先端側)の端部の位置に関するものではなく、超硬金属コーテイング7の取付部3側の端部の位置に関する発明特定事項であるから、構成(a)とは直接関係がない」と主張する。
しかしながら、構成1Cの「前記硬質合金部」が「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側」に「前記縦刃部から前記横刃部に渡って」設けられた「他の部分よりも硬度が高い硬質合金部」を指す以上、その点を無視することはできない。
また、そもそも構成1Cについての記載も示唆もない主引用発明(甲1、11~14発明)に接した当業者が、縦刃部4のみに超硬金属コーテイング7が設けられているという主引用発明とは全く異なる構成を開示する甲6の記載内容に接したとき、わざわざ「超硬金属コーテイング7の取付部3側の端部」及び「刃縁6の取付部3側の端部」の両位置を「略同じ位置」にするという点のみを副引用発明として抽出する理由がない。甲6の記載内容から、構成1Bという前提を考慮することなく、ことさらに構成1Cに関する記載部分のみを抽出するという行為は、本件発明1の構成1Cを念頭に置いて副引用発明を認定するものであり、いわゆる後知恵に陥ったものといえる。したがって、上記請求人主張は、誤った引用発明の認定に基づくものであり、成り立たない。
(被請求人要領書9頁16行~10頁18行)
(15)構成1Cの想到容易性について
ア 請求人は、「耐摩耗性の向上を図るために、耕耘爪の設計の際に両位置が「略同じ位置」に位置するように設計して、薄い刃付け部の取付基部側の端部を硬質合金部で覆うようなことは、当業者が適宜行う設計的事項に過ぎない」と主張するが、単に、刃付け部を硬質合金部で覆うことにより耐摩耗性の向上を図ろうとすることは当業者が考慮すべき事項であると主張するにとどまり、「硬質合金部の取付基部側の端部の位置」と「縦刃部の刃付け端部の位置」とを略同じ位置にする理由について何ら説明していない。したがって、上記請求人主張は、失当である。
(被請求人要領書9頁5~14行)
第5 証拠の記載
1 甲第1号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲1には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下の各甲号証についても同様。)
ア 「3.発明の詳細な説明
この発明は耕耘機の爪や草刈機の刃板の様に土に大きな力で圧入されたり、土と摩擦されて刃先が摩耗することが甚だしい刃板類(1)の摩耗防止法に関するもので、其の目的とする所は、耕耘機の爪や草刈機の刃板類(1)の刃先線(1)’(当審注:甲1では、「刃先線」に付けられた符号は、「(1)」の「1」の上に「’」が記載されているが、この箇所以降、「刃先線(1)’」に統一して表記する。)に沿う一側面に硬質金属薄板(2)を溶着して取付けることに依つて、刃先の摩耗を少なくし、刃先が常に尖つた状態に保持されて切れ味を長期間失わない耐久力の大なる刃板類(1)を安価に得るにある。」
(1頁左下欄12行~右下欄1行)
イ 「この発明の方法は耕耘機の爪や草刈機の刃板の様な磨耗の激しい刃板類(1)の刃先線(1)(当審注:「刃先線(1)」は「刃先線(1)’」の誤記と認める。)の一側面に(普通は土との摩擦が激しい側面に)タングステン、モリブデン等の更に必要な場合にはコバルト、ニツケル、クローム等の金属の1つ又は1つ以上と鉄との合金又は是等金属と鉄との合金に是等金属の粉末を混有させた鋼より硬い、耐磨耗性の大なる金属に依つて構成される硬質金属薄板(2)を溶着して取付けるものである。」
(1頁右下欄16行~2頁左上欄4行)
ウ 「この実施例に依る耕耘機の爪は、刃先の一側面に硬質金属薄板(2)が溶着して取付けてあるので、刃先の部分に必要な硬度と耐磨耗性とを与えて耐久力が大になり、刃先線(1)’の一側の硬質金属薄板(2)側の磨耗が少なく、他側の鋼材側の磨耗が多くなつて、刃先線(1)’が常に尖つた良く切れる状態に保たれて、従来の高周波焼入れを行つた爪の2倍以上の耐久力を保つことが出来たのである。」
(2頁左上欄17行~右上欄4行)
エ 「4.図面の簡単な説明
第1図はこの発明の実施例に使用した耕耘機の爪を示す平面図。第2図は第1図を下側から見た側面図。第3図は第2図AA’断面図。第4図はこの発明を実施した草刈機の刃板の底面図である。」
(2頁左下欄3~7行)
オ 第1図ないし第3図は次のものである。
・第1図
[図:0001405570000011.jpg]
・第2図
[図:0001405570000012.jpg]
・第3図
[図:0001405570000013.jpg]
カ 上記オの第1図からは、「刃板類(1)」が図面左側の孔が位置する部分と、それに続く図面右側の「硬質金属薄板(2)」が位置する部分とを有することが看て取れる。
また、上記エの記載によれば、「第1図はこの発明の実施例に使用した耕耘機の爪を示す平面図」であるから、第1図の「刃板類(1)」は「耕耘機」に取り付けられるものであり、耕耘機の技術分野における技術常識を踏まえると、第1図から看取される孔が耕耘機の軸への取り付けに用いられることは明らかである。
そうすると、「刃板類(1)」において孔が位置する部分は、耕耘機の軸に取り付けられる取り付け部であるということができる。
キ 上記オの第2図からは、「刃板類(1)」の「硬質金属薄板(2)」が位置する部分が、図中でA-A’線の左側に位置する平板状の部分と、平板状の部分に続く図中のA-A’線の右側で下側へと湾曲した部分とを有する点、及び湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向である点を看取することができる。
してみると、「硬質金属薄板(2)」と平板状の部分及び湾曲した部分の関係については、「刃板類(1)」の平板状の部分及び湾曲した部分には「硬質金属薄板(2)」が設けられているということができる。
ク 上記オの第1図において、平板状の部分と湾曲した部分の関係についてみる、湾曲した部分は、平板状の部分からみて、平板状の部分の「刃先線(1)’」とは反対方向に湾曲していることが看取できる。
ケ 上記オの第1図は、「硬質金属薄板(2)」が表されていることから、「硬質金属薄板(2)」がある側の平面図であることが理解できる。そうすると、第1図からは、「硬質金属薄板(2)」がある側では「硬質金属薄板(2)」の切っ先側の端部が「湾曲した部分」の端部に位置することが看取できる。
(2)上記(1)を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、撥音及び拗音は小書きの仮名に改めた。以下の各甲号証についても同様。)。
「耕耘機の軸に取り付けられる取り付け部と、取り付け部に続く平板状の部分と、平板状の部分に続く湾曲した部分とを有し、
湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向であり、
磨耗の激しい刃板類の刃先線の土との摩擦が激しい一側面に鋼より硬い、耐磨耗性の大なる金属に依って構成される硬質金属薄板を溶着して取付け、
硬質金属薄板は平板状の部分及び湾曲した部分に設けられており、
湾曲した部分は、平板状の部分からみて、平板状の部分の刃先線とは反対方向に湾曲しており、
硬質金属薄板がある側では硬質金属薄板の切っ先側の端部が湾曲した部分の端部に位置している、
耕耘機の爪。」
2 甲第11号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲11には、次の記載がある。
ア 「2.特許請求の範囲
トラクター用耕耘爪において、その本体部(1)には中鋼板を使用し、刃部(2)には二層鋼板を使用して一体となし、且つ当該二層鋼板の刃鋼部(3)はトラクター機巾の中心線に対して外側に面し地鉄部(4)は内側に面して回転するように構成し、刃部(2)に使用した鋼板の摩耗差を利用したことを特徴とする構造のトラクター用耕耘爪。」
(1頁下左欄3~11行)
イ 「(A)産業上の利用分野
本発明は農業用トラクターの耕耘爪の改良に関するものである。」
(1頁左下欄14~16行)
ウ 「第1図は本発明爪の拡大横断面説明図であり第2図は側面図であるが、本発明爪は爪の本体部(1)には中鋼板を使用し、刃部(2)には二層鋼板を使用して両鋼板(1)(2)を例えば圧延などによって一体化して爪を構成する。
二層鋼板(2)は軟質の地鉄部(4)と硬質の刃鋼部(3)とが一体となって構成された鋼板であるが、本体部(1)にたいする接合はトラクター機巾の中心線に対して刃鋼部(3)が外側に面するように、又地鉄部(4)は内側に即ち中心線に面するように本体(1)の中鋼板と一体化して構成した構造からなっている。然るときはトラクターの耕耘機部は、爪の地鉄部(4)が内側に面し、刃鋼部(3)は外側に面して耕耘回転するように多数の爪が配設された構造となる。(5)は中鋼と二層鋼板の接合一体部である。第2図は本発明爪の一例でその側面図であり、第3図は平面図であるがその(6)は取付用のボルト穴で、(7)は取付用の爪柄部である。又刃部(2)には多少の刄(2’)を形成してある。」
(2頁右上欄9行~左下欄9行)
エ 「水田或は畑地の耕耘をするときはすでに述べた従来の爪と異なり刃部(2)は二層鋼板となっているから爪の土壌耕耘による刃部(2)の摩耗は、刃鋼部(3)と地鉄部(4)とではその摩耗率が異るから地鉄部(4)が摩耗率が高く早く摩耗し、刃鋼部(3)は摩耗率が低いので遅く滅耗するので、刃部(2)は、従来の中鋼一枚の爪の丸形摩耗形状にたいして第1図(B)に示すように刃部二層鋼板は尖刃状をなして摩耗する。即ち摩耗度の差によって尖刃が形成されこの状態は刃鋼部(3)が摩耗によって消滅する迄継続して形成される。」
(2頁左下欄15行~右下欄6行)
オ 「4.図面の簡単な説明
図面は実施例を示すもので、第1図(A)は第2図X-X線部における拡大断面説明図で(B)は使用による尖刀化を示すものである。
第2図は爪の内側側面図であり、
第3図は平面図。」
(3頁左下欄15~最下行)
カ 第1図ないし第3図は次のものである(なお、第2図は昭和62年1月30日付け手続補正書(方式)による補正後のものである。)。
・第1図
[図:0001405570000014.jpg]
・第2図
[図:0001405570000015.jpg]
・第3図
[図:0001405570000016.jpg]
キ 上記アの記載によると「耕耘爪」は「トラクター用」であり、上記ウの記載によると「(6)は取付用のボルト穴で、(7)は取付用の爪柄部である」から、「ボルト穴(6)」及び「爪柄部(7)」は「耕耘爪」の「トラクター」への取付に用いられるものであって、耕耘機の技術分野における技術常識を踏まえると、当該「ボルト穴(6)」が「トラクター」の軸への取付に用いられることは明らかであり、「取付用の爪柄部(7)」はトラクターの軸への取付用であるといえる。
ク 上記カの第2図からは、「爪」には、「爪柄部(7)」に続く部分があり、上記カの第3図を併せみると、「爪柄部(7)」に続く平板状の部分と、平板状の部分に続く湾曲した部分を有する点、及び湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向である点をを看取することができる。
また、第2図から、「爪」は、その峰側は「本体部(1)」からなり、その「刄(2’)」側は「刃部(2)」からなるものであり、上記ウによれば「爪の本体部(1)には中鋼板を使用し、刃部(2)には二層鋼板を使用して両鋼板(1)(2)を例えば圧延などによって一体化して爪を構成する。」とあるから、「爪」は、峰側の中鋼板を使用した本体部(1)と刄(2’)側の二層鋼板を使用した刃部(2)からなることが看取できる。
さらに、「二層鋼板(2)は軟質の地鉄部(4)と硬質の刃鋼部(3)とが一体となって構成された鋼板である」から、「刃部(2)」は「地鉄部(4)」と「刃鋼部(3)」との二層が積層したものであって、「刃部(2)」が位置する部分には「刃鋼部(3)」が存すると認められる。
そうすると、「爪」の平板状の部分及び湾曲した部分と「刃鋼部(3)」との関係をみると、「爪」の平板状の部分及び湾曲した部分には「硬質の刃鋼部(3)」が設けられているということができる。
ケ 第2図から、「爪」の湾曲した部分及び平板状の部分全体の形状をみると、平板状の部分から弯曲した部分にかけて「刄(2’)」とは反対方向に湾曲していることが看取できる。
コ 第2図からは、「刄(2’)」が「刃部(2)」の長辺方向(図中の左右方向)に沿った部分と、切っ先において、当該部分と概ね直交して「本体部(1)」の峰側に至る部分とからなっている。
そして、上記クでの検討のとおり、「刃部(2)」は「地鉄部(4)」と「刃鋼部(3)」との二層が積層したものであるから、「刃部(2)」における「刄(2’)」には、切っ先においても、「刃鋼部(3)」が存するといえる。
そうすると、側面図である第2図からは、「爪」の「湾曲した部分」は、側面視で、「爪」の切っ先側の「刃部(2)」の区域、すなわち、「刃鋼部(3)」が存する区域において最も切っ先側に位置することを看取することができる。
してみると、「爪」の「湾曲した部分」と「刃鋼部(3)」とは同じ箇所において最も切っ先側に位置すると認められるから、「刃鋼部(3)」の切っ先側部の端部は、「湾曲した部分」の切っ先側の端部と概ね同じ位置に位置するということができる。
(2)上記(1)を総合すると、甲11には次の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されていると認められる。
「トラクターの軸への取付用の爪柄部と、爪柄部に続く平板状の部分と、平板状の部分に続く湾曲した部分とを有し、
湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向であり、
平板状の部分と湾曲した部分とに刃部が設けられており、
刃部には二層鋼板を使用しており、
二層鋼板は軟質の地鉄部と硬質の刃鋼部とが一体となって構成された鋼板であり、
刃部には多少の刄を形成してあり、
湾曲した部分から平板状の部分にかけて、刄とは反対方向に湾曲しており、
刃鋼部の切っ先側の端部は、湾曲した部分の切っ先側の端部と概ね同じ位置に位置している、
トラクター用耕耘爪。」
3 甲第12号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲12には、次の記載がある。
ア 「3.発明の詳細な説明
この発明は、耕耘刃に関し、とくに耕耘時の摩擦を減少した耕耘刃に関する。
耕耘刃は、ロータリなどで代表される耕耘作業機に用いられるもので、耕土に対して切込み作用を行い、かつ放てき作用を営むなど硬い耕土との摩擦の連続であるから耐摩耗性に優れていることが必要である。」(1頁左下欄8~15行)
イ 「そこで、この発明は、耕耘刃全体が均一的な寿命となるようにするために、耕土に対する作用部域の少なくとも一側、とくに耕耘刃を構成する縦刃の外側面、言換ると横刃の屈曲方向と反対側の面と、横刃の外側面において刃縁側から一定の幅寸法で硬化層を形成し、併せて耕土に対する切込み能力を向上させた耕耘刃を提供しようとするものである。
以下、この発明の詳細を添付図面について説明する。図において符号1で示す片刃の耕耘刃は、縦刃11と、その先端を三次元的に屈曲して形成した横刃12とによつて構成されている。
そして、耕耘刃1が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分、即ち、耕耘刃が耕耘機能を果す作用部域Aが耕土と摩擦して摩耗するので、この作用部域Aにおける縦刃11の外側面11a、言換ると、縦刃11の先端に形成した横刃12の屈曲した方向と反対側の面と、この面に連続する横刃l2の外側面12aに沿つて、少なくとも硬質合金による硬化層2を層設する。この硬化層2は、望ましくは超硬質合金などによる金属により形成し、層設手段としては滲炭などの表面硬化処理のように母材の表面を硬化させるのではなく、母材と別の金属による硬化層を形成する。
とくに、耕耘刃の縦刃11に形成する硬化層2は耕耘刃の表面から突出した状態でしかも、刃縁11b側に沿つて層設し、耕土Kに対し耕耘刃を打込む際端に位置する耕耘刃の縦刃11の外側面11aが未耕地端面Kaに接触する面積を小さくしている。」
(1頁右下欄11行~2頁左上欄下から2行)
ウ 「4.図面の簡単な説明
第1図は、この発明による耕耘刃を使用態様と関連させて示す単体側面図、第2図は第1図II-II線に沿う拡大断面図である。
1…耕耘刃、11a…外側面、11b…刃縁、11c…峰縁、12…横刃、12a…外側面、12b…刃縁、12c…峰縁、2…硬化層、A…作用部域、K…耕土、Ka…未耕地端面、G…間隔。」
(2頁左下欄4~11行)
エ 第1図及び第2図は次のものである。
・第1図
[図:0001405570000017.jpg]
・第2図
[図:0001405570000018.jpg]
オ 上記エの第1図からは、「耕耘刃1」の「縦刃11」の上部に孔があることが看て取れる。
また、上記アの記載によれば、「耕耘刃は、ロータリなどで代表される耕耘作業機に用いられる」から、第1図の「耕耘刃1」は「耕耘作業機」に取り付けられるものであるといえる。
そして、耕耘作業機の技術分野における技術常識を踏まえると、第1図から看取される孔が「耕耘刃1」の「耕耘作業機」の軸への取り付けに用いられることは明らかであるから、「耕耘刃1」の「縦刃11」のうちの孔が位置する部分は、耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部であって、「縦刃11」は耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部を有しているということができる。
カ 上記エの第1図をみると、「縦刃11」のうちの取り付け部に「縦刃11」の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に「横刃12」が連続していることが看て取れる。
キ 上記エの第1図をみると、「耕耘刃1」の「横刃12」先端側に接して左横から右下に向かって矢印が記載されており、該矢印は「耕耘刃1」の回転方向を示すものと認める。そして、上記オの「耕耘作業機」の軸についての技術常識を踏まえると、第1図から、「耕耘刃1」の「縦刃11」から「横刃12」に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲していることが看取できる。
ク 上記イの記載を踏まえると、上記エの第1図からは耕耘刃1の切っ先側において硬質層2が峰縁12cに達している点、及び、硬質層2の切っ先側の端部は横刃部12の端部に達している点を看取することができる。
(2)上記(1)を総合すると、甲12には次の発明(以下「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。
「縦刃と、その先端を三次元的に屈曲して形成した横刃とによって構成されており、
縦刃は耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部を有しており、
取り付け部に縦刃の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に横刃が連続しており、
耕耘刃が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分である作用部域における縦刃の外側面、言換えると、縦刃の先端に形成した横刃の屈曲した方向と反対側の面と、この面に連続する横刃の外側面に沿って、硬質合金による硬化層であって母材と別の金属による硬化層を層設し、
縦刃から横刃に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲しており、
耕耘刃の切っ先側において硬質層が峰縁に達しており、硬質層の切っ先側の端部は横刃部の端部に達している
耕耘作業機に用いられる耕耘刃。」
4 甲第13号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲13には、次の記載がある。
ア 「3 発明の詳細な説明
この発明は、耕耘刃に関し、さらに詳しくは耕耘刃全体の耐摩耗性を均一化した耕耘刃に関する。
耕耘刃は、ロータリなどで代表される耕耘作業機に用いられるもので、耕土に対して切込み作用を行い、かつ放てき作用を営むなど硬い耕土との摩擦の連続であるから耐摩耗性に優れていることが必要である。」
(1頁左下欄9~16行)
イ 「以下、この発明の詳細を添付図面について説明する。図において符号1で示す片刃の耕耘刃は、縦刃11と、その先端を三次元的に屈曲して形成した横刃12とによつて構成されている。
そして、耕耘刃1が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分、即ち、耕耘刃が本来の機能を果す作用部域Aが耕土と摩擦して摩耗するので、この作用部域Aにおける縦刃11の外側面11a、言換えると、縦刃11の先端に形成した横刃12の屈曲した方向と反対側の面と、この面に接続する横刃12の外側面12aに沿つて、少なくとも硬質合金による硬化層2を層設する。この硬化層2は、望ましくは超硬質合金などによる金属により形成し、層設手段としては滲炭などの表面硬化処理のように母材の表面を硬化させるのではなく、母材と別の金属による硬化層を形成する。
この硬化層2の幅寸法は、耕耘刃が耕土K中を回転しながら通過する距離、即ち、挿過長によつて定める。この状態を第1図について説明すると、耕耘刃1が耕耘刃回転軸を中心としてするとき、縦刃1のα点から基部寄りが耕土K中を挿過する距離、挿過長l1は零であるから硬化層2を形成しない。実際には耕土の凹凸などにより挿過長l1=0域においても耕土中に入る場合があるので、α点をやや基部寄りに定める。
そして、縦刃1のβ点の挿過長l2に対応して縦刃1の硬化層2の幅寸法をL1と定め、γ点の挿過長l3に対応して硬化層2の幅寸法をL2と定め、次でδ点の挿過長l4に対応して硬化層2の幅寸法をL3と定める。このδ点から横刃12寄りの部分は挿過長の差が小さいので、側面全面にわたつて硬化層2を形成し、耕耘刃における各所の硬化層2の幅寸法は直線的変化とする方が製作上容易である。
次に、このように構成された耕耘刃を用いて耕耘刃を用いた耕耘作業の実際を説明する。耕耘刃のうち耕土K中を通過する作用部域Aが実際には摩耗し、この作用部域Aにおいても耕土との摩擦は耕土Kに対する掃過長lによつてそれぞれ異るので、作用部域Aに層設した硬化層2の幅寸法は掃過長と一定の関連をもたせて幅寸法を定めてあるので、耕耘刃全体が均等な寿命となる。
また、硬化層2の層設によつても耕耘刃1の母材自体は硬化されないので靭性を失わず、耕耘中の折損などのトラブルを防止する。
さらにまた、耕耘刃が耕土Kとの摩擦により刃縁11aが摩耗して峰縁11c側に後退しても、硬化層2の縁2aが必ず露出しているので、耕耘刃1の摩耗に影響なく優れた切込み能力を発揮する。
なお、以上の説明では片刃形式の耕耘刃に対し、硬化層を層設したものを示したが、第6図に示すように作用部域の両側に、掃過長に比例して硬化層を形成すると、前記片刃形式の耕耘刃同様に全体として均一な寿命で優れた切込み力を有する耕耘刃とすることができる。」
(2頁左上欄2行~左下欄第16行)
ウ 「4.図面の簡単な説明
第1図は、この発明による耕耘刃の外側面を示すと共に掃過長を示す説明図、第2図ないし第5図は第1図における指示線に対応した断面図、第6図は第4図ないし第5図に対応させた他の実施例の断面図である。
1…耕耘刃、11…縦刃、11a…外側面、11b…刃縁、11c…峰縁、12…横刃、12a…外側面、12b…刃縁、12c…峰縁、2…硬化層、2a…縁、A…作用部域、l…掃過長、L…硬化層幅、K…耕土。」
(2頁右下欄4~14行)
エ 第1図ないし第6図は次のものである。
・第1図
[図:0001405570000019.jpg]
・第2図~第6図
[図:0001405570000020.jpg]
オ 上記エの第1図からは、「耕耘刃1」の「縦刃11」の上部に孔があることが看て取れる。
また、上記アの記載によれば、「耕耘刃は、ロータリなどで代表される耕耘作業機に用いられる」から、第1図の「耕耘刃1」は「耕耘作業機」に取り付けられるものであるといえる。
そして、耕耘作業機の技術分野における技術常識を踏まえると、第1図から看取される孔が「耕耘刃1」の「耕耘作業機」の軸への取り付けに用いられることは明らかであるから、「耕耘刃1」の「縦刃11」のうちの孔が位置する部分は、耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部であって、「縦刃11」は耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部を有しているということができる。
カ 上記エの第1図をみると、「縦刃11」のうちの取り付け部に「縦刃11」の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に「横刃12」が連続していることが看て取れる。
キ 上記エの第1図をみると、「耕耘刃1」の「横刃12」先端側に接して左横から右下に向かって矢印が記載されており、該矢印は「耕耘刃1」の回転方向を示すものと認める。そして、上記オの「耕耘作業機」の軸についての技術常識を踏まえると、第1図から、「耕耘刃1」の「縦刃11」から「横刃12」に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲していることが看取できる。
ク 上記エの第1図をみると、耕耘刃1の切っ先側において硬質層2が峰縁12cに達している点、及び、硬質層2の切っ先側の端部は横刃12の端部に達している点を看取することができる。
(2)上記(1)を総合すると、甲13には次の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されていると認められる。
「縦刃と、その先端を三次元的に屈曲して形成した横刃とによって構成されており、
縦刃は耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部を有しており、
取り付け部に縦刃の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に横刃が連続しており、
耕耘刃が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分である作用部域における縦刃の外側面、言換えると、縦刃の先端に形成した横刃の屈曲した方向と反対側の面と、この面に連続する横刃の外側面に沿って、硬質合金による硬化層を層設し、
縦刃から横刃に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲しており、
耕耘刃の切っ先側において硬質層が峰縁に達しており、硬質層の切っ先側の端部は横刃部の端部に達している
耕耘作業機に用いられる耕耘刃。」
5 甲第14号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲14には、次の記載がある。
ア 「本発明は動力耕うん機等に装備する耕うん爪の改良に関するものであって、従来における耕うん爪は、爪全体をバネ鋼で形成し、刃先部のみに焼入等の熱処理を施していた。したがって、土壌面を耕すと刃先部がすぐに摩耗してしまい取替えなければならなかった。そこで本発明はバネ鋼などで作成された耕うん爪に、その土壌切断用刃先部の裏面に例えばタングステンカーバイド等の耐摩耗性部材を溶射して皮膜を作成し簡単に耐久性を向上させるように構成したものである。
以下本発明の実施の態様を例示図面について詳述すると、(1)は耕うん軸(2)に装着されたバネ鋼製の耕うん爪で土壌を切削する刃縁部(3)にタングステンカーバイド等の耐摩耗性部材(4)を溶射して皮膜(5)を作成している。(6)は耕うん爪を取付ける爪ホルダー、(7)はボルト・ナットである。
本発明の実施の態様は上記のような構成であって、したがって、耕うん爪の刃縁部(3)には耐摩耗性部材(4)を溶射皮膜(5)にて覆っているので、該刃縁部が、長時間連続して土を耕やしても全く摩耗することがなく、したがって、耕うん爪を長時間使用できると共に製作が簡単でありながら耕うん作業を能率的に行うことができる等のすぐれた効果を奏するものである。」
(1頁左下欄10行~2頁左上欄5行)
イ 「4 図面の簡単な説明
図面は本発明の一実施例を示すものであって、第1図は本発明に係る耕うん爪の側面図、第2図は耕うん爪の断面図、第3図は他の耕うん爪の断面図である。
(1)・・・耕うん爪 (3)・・・刃縁部
(4)・・・対摩耗性部材 (5)・・・皮膜」
(2頁左上欄6~12行)
ウ 第1図は次のものである。
・第1図
[図:0001405570000021.jpg]
・第2図、第3図
[図:0001405570000022.jpg]
エ 上記アの「動力耕うん機等に装備する耕うん爪」、「(1)は耕うん軸(2)に装着されたバネ鋼製の耕うん爪で」及び「(6)は耕うん爪を取り付ける爪ホルダー、(7)はボルト・ナットである。」との記載を踏まえると、上記ウの第1図から、耕うん爪(1)において爪ホルダー(6)に取り付けられた部分は、動力耕うん機の耕うん軸(2)への取り付け部であることが看て取れる。
オ 上記ウの第1図から、耕うん爪(1)は、取り付け部から切っ先まで連続して形成されており、また、取り付け部側から切っ先側の端部に渡って刃縁部(3)が設けられており、また、刃縁部(3)には、耐摩耗性部材(4)を溶射して作成した皮膜(5)が、耕うん爪(1)の取り付け部側から切っ先に渡って設けられ、さらに切っ先側の端部では峰部に達していることを看取することができる。
カ 上記イの第1図をみると、「耕うん爪」は、取り付け部側から切っ先に渡って、「刃縁部3」とは反対方向に湾曲していることが看取できる。
(2)上記(1)を総合すると、甲14には次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されているものと認める。
「動力耕うん機の耕うん軸に取り付けられる取り付け部を有する耕うん爪であって、
取り付け部から切っ先まで連続して形成されており、
取り付け部側から切っ先に渡って刃縁部が設けられ、
刃縁部には耐摩耗性部材を溶射した被膜が設けられ、
被膜は、取り付け部側から切っ先に渡って設けられ、さらに切っ先側の端部では峰部に達しており、
取り付け部側から切っ先に渡って、刃縁部とは反対方向に湾曲している耕うん爪。」
6 甲第6号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲6には、次の記載がある。
ア 「3 発明の詳細な説明
本発明は、ロータリ耕耘装置の耕耘軸に装着される耕耘爪に関するものである。」
(1頁左下欄11~13行)
イ 「そこで本発明は、耕耘爪の形状に改良を加えて耕耘作業と共に、培土、畦立、覆土作業などが行え、また、残耕処理用の揺動爪としても使用できる、汎用性のある耕耘爪を提供しようとするものである。
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図において,符号1はロータリ耕耘装置の耕耘軸、2は、耕耘軸1に図示しない取付機構を介して装着される耕耘爪である。この耕耘爪2は、取付部3に連続して縦刃部4、横刃部5が形成されており、縦刃部4には刃縁6が、所定の排芥角(ρ=eθcotα)を有して形成されている。また、横刃部5は、取付部3および縦刃部4を例えば食器の皿の底面に平面状に載置したとき、皿の外周傾斜部に相当するような緩い傾斜角(45度)で屈曲している。さらに横刃部5は、回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲している。」
(1頁右上欄2~下から2行)
ウ 「なお、図示の実施例では、縦刃部4の背面に薄膜の超硬金属コーテイング7を施している。
このように構成された耕耘爪2を耕耘軸1に装着して作業を行うと、縦刃部4では、上下回転方向に土壌を切削し横刃部5で側方に放てきし、この放てきされた土壌で培土、畦立、覆土などの作業が行える。またロータリ耕耘装置の電動ケースの下方位置の残耕処理用の揺動爪としても使用できる。
従つて、本発明による耕耘爪によれば、通常の耕耘作業とともに土壌を側方に放てきする作用もするので、培土、畦立、覆土などの作業のほか、ロータリ耕耘装置の伝動ケース下の残耕処理にも用いることができ、しかも土壌の切削、放てきは無理なく行われ、耕耘抵抗の少い、汎用性のある耕耘爪が得られる。」
(3頁左上欄9行~右上欄4行)
エ 「4 図面の簡単な説明
第1図は本発明の一実施例を示す耕耘爪の平面図、第2図は側面図である。」
(3頁右上欄5~7行)
オ 第1図及び第2図は次のものである。
・第1図、第2図
[図:0001405570000023.jpg]
カ 上記アの「本発明は、ロータリ耕耘装置の耕耘軸に装着される耕耘爪に関する」、上記イの「符号1はロータリ耕耘装置の耕耘軸、2は、耕耘軸1に図示しない取付機構を介して装着される耕耘爪である。この耕耘爪2は、取付部3に連続して縦刃部4、横刃部5が形成されており、」との記載を踏まえると、上記オの第1図から、耕耘爪2の取付部3は、ロータリ耕耘装置の耕耘軸に装着されることを看取できる。
キ 上記ウの「縦刃部4の背面に薄膜の超硬金属コーテイング7を施している」を踏まえると、上記オの第1図から、超硬金属コーティング7は、縦刃部4の刃縁6側であって、峰側が直線となるように設けられていることが看取できる。
ク 上記オの第1図から、上記キの超硬金属コーティング7の峰側の直線が刃縁6と交わる点と、刃縁6の取付部側の端部とが、略同じ位置にあること、が看取できる。
ケ 上記オの第1図において、「wt」と付された矢印は、「耕耘爪2」が角速度「w」で回転する方向を表すことが明らかであるから、該矢印の方向は、「耕耘軸1」の回転方向ということができる。よって、第1図から、「縦刃部4」から「横刃部5」に渡って、耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲していることが看取できる。
(2)上記(1)を総合すると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認める。
「ロータリ耕耘装置の耕耘軸に装着される取付部と、取付部に連続して形成される縦刃部及び横刃部からなる耕耘爪であって、
縦刃部には刃縁が所定の排芥角を有して形成され、
縦刃部の背面であって、かつ刃縁側に、峰側を直線に薄膜の超硬金属コーティングを施しており、
超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁と交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあり、
横刃部は、回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲しており、
縦刃部4から横刃部5に渡って、耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲している、
耕耘爪。」
7 甲第16号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲16には、次の記載がある。
ア 「第1図は耕耘刃全体の正面図を示し、一端には耕耘爪軸のホルダーに取付ける孔部(1)を有した基部(2)を形成し、該基部(2)から延出する縦刃(A1)の先端に横刃(A2)を連ねてなた刃の刀身(A)を形成するもので、該刀身(A)の回転方向前方の刃面(3)(3’)を両刃形に形成する。」
(明細書第1ページ第16行~第2ページ第2行)
イ 第1図~第5図は次のものである。
[図:0001405570000024.jpg]
8 甲第17号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲17には、次の記載がある。
・第1図
[図:0001405570000025.jpg]
・第7図
[図:0001405570000026.jpg]
9 甲第18号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の記載がある。
[図:0001405570000027.jpg]
10 甲第19号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲19には、次の記載がある。
[図:0001405570000028.jpg]
[図:0001405570000029.jpg]
(3頁)
11 甲第20号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲20には、次の記載がある。
[図:0001405570000030.jpg]
(165頁Fig.2)
12 甲第21号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲21には、次の記載がある。
[図:0001405570000031.jpg]
(2枚目上段)
13 甲第23号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲23には、次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本考案は、農耕用の改良された耕耘爪に関する。尚、本考案の耕耘爪には、代掻爪も含まれる。」
イ 「【考案を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本考案を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本考案による複数個の耕耘爪1を、図示しない耕耘機の後端に水平に配置した回転軸20に固定した状態を示す。係る回転軸20には、その軸方向に沿って、それぞれ径方向に延びる複数枚のフランジ22が設けられ、各フランジ22には、図示しない2つの貫通孔を貫通するボルト16およびこれに螺着するナット18により、耕耘爪1の固定部2が固定されている。互いに隣接するフランジ22,22には、異なる径方向に延びるように耕耘爪1が固定される。
図1に示すように、回転軸20およびこれに固定した複数の耕耘爪1の上方には、全体がほぼ蒲鉾形状のロータリーカバー(以下、単にカバーとする)24が覆っている。
【0013】
耕耘爪1は、例えばバネ鋼からなり、図1の一部を拡大した図2の側面図および図3の斜視図に示すように、前記回転軸20に固定される固定部2と、係る固定部2から回転軸20のほぼ径方向に沿って延びる平坦部6と、係る平坦部6の先端からカーブし且つ回転軸20のほぼ軸方向に沿って屈曲された先端部8と、を備えている。
図2,図3に示すように、固定部2には、その直線辺3に沿って前記ボルト16用の一対の貫通孔4が両側面2a,2b間を貫通している。
【0014】
また、図2,図3および図4の断面図で示すように、前記平坦部6における一対の側面6a,6bのうち、上記先端部8が屈曲しない側の側面6aのほぼ全面に耐磨耗性金属層10が被覆されている。尚、図4は、図3中のA-A線の矢視に沿った断面図である。
更に、図2,図3および図5の断面図で示すように、先端部8の両側面8a,8bのうち、アール形の凸部である外周辺に位置する刃縁7に沿って、細長い耐磨耗性金属層12がほぼ対称に被覆されている。上記刃縁7は、先端部8の両側面8a,8bの一方を斜めに成形した先尖り辺で、耕耘爪1を土壌の中に進入し易くすると共に、進入した土壌を積極的に砕土・攪拌する。
尚、図2,図3中の符号9は、先端部8の先端辺であり、図5は、図3中のB-B線の矢視に沿った断面図である。
【0015】
耐磨耗性金属層10,12は、例えば自溶性合金(Fe-20~35wt%Cr-1~3wt%C-1~5wt%Ni-1~2wt%Si-1~2wt%Mn-1~3wt%B-C系)粉末、またはコルモノイ(Ni-0.3~0.7wt%C-3wt%Fe-10~15wt%Cr-3~5wt%Si-2~3wt%B-C系)の粉末を、溶射、自溶溶着、またはプラズマ粉末肉盛溶接(PPW)などすることで、約1~数mmの厚みで形成される。
【0016】
図1に示すように、複数の耕耘爪1は、回転軸20の回転により、係る回転軸20の下側を回転する際に、その先端部8のみ、あるいは更に平坦部6の先端寄りの部分が、圃場などの土壌(図示せず)の中に進入し、固まっていた土壌を砕土・攪拌して耕作に適した状態にする。この際、回転軸20の上方に上昇する耕耘爪1の先端部8や平坦部6には、土壌中の小石や砂利を含む土塊gが付着し、カバー24の端部板26付近の内側面に付着し堆積する。
例えば、図1で回転軸20の右端21寄りに固定された耕耘爪1では、カバー24の端部板26付近の内側面に付着・堆積した土塊gが、平坦部6のうち先端部8が屈曲しない側面6aと摩擦してこれを擦する。しかし、耕耘爪1によれば、土塊gが擦っても、平坦部6の側面6aには、耐磨耗性金属層10が全面に被覆されているため、磨耗したり、変形や破損したりする事態を防止できる。
【0017】
また、回転軸20の右端および中間部に固定された各耕耘爪1は、圃場の土壌中に進入した際に、平坦部6の側面6aが土塊gと摩擦すると磨耗が生じ易い。しかし、係る側面6aには、磨耗性金属層10が被覆されているため、磨耗したり、変形や破損したりする事態を防止できる。更に、先端部8の刃縁7に沿った両側面8a,8bには、耐磨耗性金属層12が被覆されているため、刃縁7の変形および刃欠けを防ぐことができる。
従って、耕耘機の回転軸20に複数の耕耘爪1を固定して、土壌を効率良く適切に耕耘できると共に、耕耘爪1自体のメンテナンスを低減することもできる。」
ウ 「【0021】
図6は、前記耕耘爪1の応用形態である耕耘爪1aを示す正面図、図7は、係る耕耘爪1aを示す背面図である。
耕耘爪1aは、図6,図7に示すように、前記同様の固定部2、平坦部6、および先端部8を有し、平坦部6の両側面6a,6bの全面に耐磨耗性金属層10,11が被覆されていると共に、先端部8の両側面8a,8b全体にも前記耐磨耗性金属層12を含む耐磨耗性金属層13,14が被覆されている。
係る耕耘爪1aによれば、固定部2を除いた平坦部6および先端部8の全側面6a,6b,8a,8bに耐磨耗性金属層10,11,13,14が一体にして被覆されているため、耕耘機の前記回転軸20のどの位置に固定しても、耕耘時における土塊との摩擦による磨耗、変形、破損、および刃欠けを確実に防止できる。従って、土壌を効率良く耕耘したり、苗代を確実に代掻することができる。
エ 図1~図5は以下のものである。
・図1
[図:0001405570000032.jpg]
・図2
[図:0001405570000033.jpg]
・図3
[図:0001405570000034.jpg]
・図4
[図:0001405570000035.jpg]
・図5
[図:0001405570000036.jpg]
(2)上記(1)を総合すると、甲23には次の技術事項(以下「甲23技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「耕耘機の後端に水平に配置した回転軸20に固定した耕耘爪1であって、
回転軸20およびこれに固定した複数の耕耘爪1の上方には、ロータリーカバー24が覆っており、
耕耘爪1は、バネ鋼からなり、回転軸20に固定される固定部2と、係る固定部2から回転軸20のほぼ径方向に沿って延びる平坦部6と、係る平坦部6の先端からカーブし且つ回転軸20のほぼ軸方向に沿って屈曲された先端部8と、を備えており、
平坦部6における一対の側面6a,6bのうち、先端部8が屈曲しない側の側面6aのほぼ全面に耐磨耗性金属層10が被覆され、先端部8の両側面8a,8bのうち、アール形の凸部である外周辺に位置する刃縁7に沿って、細長い耐磨耗性金属層12がほぼ対称に被覆され、
回転軸20の右端21寄りに固定された耕耘爪1では、カバー24の端部板26付近の内側面に付着・堆積した土塊gが、平坦部6のうち先端部8が屈曲しない側面6aと摩擦してこれを擦するが、平坦部6の側面6aには、耐磨耗性金属層10が全面に被覆されているため、磨耗したり、変形や破損したりする事態を防止でき、
先端部8の刃縁7に沿った両側面8a,8bには、耐磨耗性金属層12が被覆されているため、刃縁7の変形および刃欠けを防ぐことができること。」
14 甲第24号証
(1)本件特許の原出願前に頒布された刊行物である甲24には、次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を耕起する耕耘爪に関するものである。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、以下(1)ないし(6)の手段を採用する。
【0008】
(1)すなわち、本発明の耕耘爪は、回転爪軸に固定される固定手段11を有して平板状のまま主として縦方向に延伸する縦刃部1と、この縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら主として横方向に延伸する横刃部2とが一体的に連なって構成される耕耘爪であって、
横刃部2の一面に、横刃部2の延伸方向に沿って形成された窪み部3と、前記窪み部3から横刃部2の下縁までを覆うようにして横刃部2の延伸方向に沿って層設された、硬質合金からなる硬化層4と、を具備し、
窪み部3は、最大窪み深部3Mから下方へ向って浅くなるように傾斜した、下傾斜面31を有することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、下縁付近の横刃部2の厚さを確保することで優れた靭性を有し、かつ硬化層4の厚みを増すことで耐摩耗性に優れたものとなる。」
ウ 「【0023】
(耕耘爪の全体構成)
本実施例の耕耘爪は、基本的に、回転爪軸への固定手段11を有してこの固定手段11から主として正面視縦方向に延伸する縦刃部1と、縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら主として正面視横方向に延伸する横刃部2と、が一体的に連なって構成される。縦刃部1は平面板からなり、横刃部2は弯曲板からなる。
【0024】
耕耘爪全体、縦刃部1、横刃部2のいずれも、延伸方向の両端のうち回転爪軸への固定手段側の端を基端側とし、その反対側の端を先端側とする。耕耘爪全体では、最基端側が、上方を向く上方基端12であり、最先端側が、正面視にて一側方を向く側方先端22である。
【0025】
そして、横刃部2の少なくとも(内弯曲面側或いは外弯曲面側のいずれか)一面には、横刃部2の延伸方向に沿って伸びる窪み部3を具備する。さらに、少なくともこの窪み部3を覆うようにして横刃部2の一面に延伸方向に沿って層設された、硬質合金からなる硬化層4を具備する。また、横刃部2の一面に、横刃部2の下縁に沿って傾斜する刃面5が形成される。以下、各実施例の各構成を説明する。」
エ 図1、図2、図6は以下のものである。
・図1
[図:0001405570000037.jpg]
・図2
[図:0001405570000038.jpg]
・図6
[図:0001405570000039.jpg]
(2)上記(1)を総合すると、甲24には次の技術事項(以下「甲24技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「回転爪軸への固定手段11を有してこの固定手段11から主として正面視縦方向に延伸する縦刃部1と、縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら主として正面視横方向に延伸する横刃部2と、が一体的に連なって構成される耕耘爪において、
縦刃部1は平面板からなり、横刃部2は弯曲板からなり、
横刃部2の少なくとも(内弯曲面側或いは外弯曲面側のいずれか)一面には、横刃部2の延伸方向に沿って伸びる窪み部3を具備し、さらに、少なくともこの窪み部3を覆うようにして横刃部2の一面に延伸方向に沿って層設された、硬質合金からなる硬化層4を具備し、また、横刃部2の一面に、横刃部2の下縁に沿って傾斜する刃面5が形成されることにより、
下縁付近の横刃部2の厚さを確保することで優れた靭性を有し、かつ硬化層4の厚みを増すことで耐摩耗性に優れたものとなること。」
第6 無効理由の判断
事案に鑑み、まず、無効理由7~無効理由11について検討し、続いて無効理由4、無効理由3、無効理由1、無効理由2、無効理由5、無効理由6、無効理由12の順に検討する。
1 無効理由7について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」は、「略」という用語を含むため、どの程度離れた位置までが含まれることになるのか、曖昧で不明確である旨(上記第3の3(8))、主張する。
(2)明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、その技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から検討することが相当である。
(3)「略同じ位置」という記載の明確性について
ア 上記「略同じ位置」に関し、請求項1には、「硬質合金部の取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており」(構成1C)と記載されている。
加えて、「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、」(構成1B)とも記載されており、硬質合金部は他の部分よりも硬度が高く摩耗しにくいことからみて、硬質合金部が存在しない側には、該硬質合金部よりも硬度が低く刃を形成する斜面が設けられているといえる。
この点について、第3耕耘爪の正面図である図5のA-A断面を示す図7(本件特許明細書段落【0010】)及び下記ウ)をみると、刃縁側には、「硬質合金部54e」が設けられた面と、刃を形成する斜面が形成された面とが表裏で存在することが理解できる。
これらのことから、請求項1の「略同じ位置に位置し」とは、「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが、耕耘爪の「硬質合金部」が設けられた面と、その反対側の「刃付け」がされている面との表裏で対応する位置に設けられていることを意味することは明らかである。
しかし、請求項1には「略同じ」と記載されているものの、どの程度「同じ」ものがこれに含まれるのかがその記載のみでは明らかでない。よって、以下、本件特許明細書の記載を参酌して検討する。
イ 本件特許明細書には、「硬質合金部の取付基部側の端部」の位置に関して、段落【0031】に「硬質合金部54eの取付基部54a側の端部は、取付基部54aの延びる方向の延長線上の近傍に位置している。」及び「ここで、硬質合金部54eの取付基部54a側の端部は、耕耘軸51に第3耕耘爪54が取り付けられた状態において、耕耘軸51の回転中心と取付基部54aの挿入孔54dの幅方向中央部の延長線上に硬質合金部54eの端部が位置することが望ましいが、取付基部54aの幅寸法の範囲内で取付基部54aの延びる方向の延長線上に硬質合金部54eの端部が交わる程度でもよい。」と記載されており、「取付基部54aの延びる方向」及び「取付基部54aの幅寸法」との関係でその位置が特定されている。
また、本件特許明細書には、「縦刃部の刃付け端部」の位置についての記載はない。
ウ 本件図面の図5ないし図7は次のものである。
・【図5】
[図:0001405570000040.jpg]
・【図6】
[図:0001405570000041.jpg]
・【図7】
[図:0001405570000042.jpg]
エ 上記アで説明したとおり、図5のA-A断面図(本件特許明細書段落【0010】)である図7から「第3耕耘爪」に「硬質合金部54e」が設けられている側と設けられていない側とがあることが看て取れる。
そして、これを踏まえてそれぞれ第3耕耘爪の正面図(同上)である図5及び第3耕耘爪の背面図(同上)である図6をみると、「硬質合金部54e」が表れている図6は「第3耕耘爪」の「硬質合金部54e」が設けられている側の図であり、「背面図」である図6に対してその反対側を示した正面図である図5は「硬質合金部54e」が設けられていない側の図であることが理解できる。
そして、図6からは、「硬質合金部54e」が取付基部側において刃縁と交わる箇所が「硬質合金部の取付基部側の端部」であることが分かる。
一方、図7からは「硬質合金部54e」が設けられていない側の刃縁部には斜面状の部分があることが看て取れるところ、技術常識を踏まえると、この部分は刃付けがされた部分であると解される。そして、図5と図7とを対照すると、図5においては刃縁部に位置する弓状の区画が当該刃付けがされた部分であって、刃付けがされた部分(弓状の区画)が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「縦刃部の刃付け端部」であることが分かる。
オ 上記イのとおり、本件特許明細書には「縦刃部の刃付け端部」の位置についての記載はないものの、「硬質合金部の取付基部側の端部」の位置が「取付基部54aの延びる方向」及び「取付基部54aの幅寸法」との関係で特定されていることに鑑み、同様の観点に着目すると、図5からは「縦刃部の刃付け端部」が「硬質合金部の取付基部側の端部」と同様に取付基部54aの幅寸法の範囲内で取付基部54aの延びる方向の延長線上にあることが看取できること等からして、図5には「硬質合金部の取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」とが概ね同じ箇所に位置する状態が示されており、この状態をもって「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いると理解することは自然である。
カ そして、硬質合金部の取付基部側の端部と縦刃部の刃付け端部との位置関係には、寸法誤差、設計誤差等によりある程度の相違が生じることは技術常識であるといえるから、硬質合金部の取付基部側の端部と縦刃部の刃付け端部の位置関係がこのような程度の相違の範囲にとどまるものを「略同じ位置」と理解することができる。
キ そうすると、特許請求の範囲の請求項1における「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており」との事項は、上記アないしカで検討したように理解することができ、それ以外の観点から位置関係を特定していると解することはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、当業者は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、出願当時における技術常識を基礎として、本件特許請求の範囲の請求項1の「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており」という記載の意味を理解することができるから、当該記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。
2 無効理由8について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、請求項1に記載された「略同じ位置」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、サポート要件を満たしていない旨(上記第3の3(9))、主張する。
(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。
(3)「略同じ位置」が発明の詳細な説明に記載されているかについて
上記1(3)で検討したとおり、本件の明細書及び図面の記載を考慮することにより、当業者は「略同じ位置」(構成1C)の意味を理解することができ、本件発明1は発明の課題を解決することができるものであって、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるから、サポート要件を満たすものと認められる。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
3 無効理由9について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、請求項1には、耕耘爪がカバー体に隣接する位置に取り付けられることについて何ら規定(限定)されておらず、当該カバー体の隣接位置以外に取り付けられた場合には、本件明細書の【0042】記載の課題を解決できないから、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものである旨(上記第3の3(10))、主張する。
(2)サポート要件の判断基準
上記2(2)で説明したとおりである。
(3)本件発明1の構成について
まず、本件発明1の構成からみて、構成1A、構成1B、構成1C、構成1D及び構成1Eは、本件明細書及び本件図面から十分に理解できるものであり、本件発明1は「発明の詳細な説明に記載された発明」であるといえる。
(4)請求項1の記載は発明の詳細な説明に記載の課題を解決するための手段が反映されているかについて
ア 次に、課題の点からみると、一般に、発明の詳細な説明の記載から複数の課題が把握できる場合、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が請求項に反映されているというためには、その複数の課題のうちのいずれかの課題を解決するための手段が請求項に反映されていれば足りると解される。
イ これを本件特許についてみると、本件明細書の段落【0003】に「背景技術」として、「前記耕耘爪は、耕土に接触する横刃部の刃縁部に他の部分よりも硬度が高い硬質合金部を設け」ているところ、「カバー体の内面に付着した土に縦刃部は接触し続けると、横刃部よりも縦刃部が大きく摩耗する偏摩耗が生じる。」(段落【0006】)との「課題」があることから、「本発明の目的とするところは、偏摩耗を生じにくくすることで、長寿命化を図ると共に耕耘性能の低下を防止することのできる耕耘爪を提供することにある。」(段落【0007】)ものであって、「耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪として用いた場合に、・・・横刃部に対して縦刃部が大きく摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができ、長寿命化を図るとともにロータリ耕耘装置の耕耘性能の低下を防止することが可能となる。」(段落【0009】)、との効果を奏するものである。
ウ そして、本件発明は、上記課題に対応するために「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、」との手段を備えるものであるところ、上記イの「偏摩耗を生じにくくすること」との課題を、「横刃部よりも縦刃部が大きく摩耗する偏摩耗が生じる」ことに限定するのではなく、耕耘爪全体におけるあらゆる部分の偏摩耗の発生を抑制しようとすることを課題として把握することができるから、耕耘爪全体において、特に、縦刃部内における刃付け端部付近の摩耗の不均一をも解決するための手段として、「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており」との手段を採用するものと認められる。
エ 上記アのとおり、本件発明の解決すべき課題は、本件明細書の特定の記載のみから把握するのではなく、本件明細書全体をみれば、上記ウで説明した課題も理解することができるから、請求人の上記主張は採用することができない。
(5)小括
そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
4 無効理由10について
(1)請求人の主張の概略
請求人は、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」が不明確あるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、明確性要件を満たしていない旨(上記第3の3(11))、主張する。
(2)明確性要件の判断基準
上記1(2)で説明したとおりである。
(3)判断
上記1(3)で検討したとおり、技術常識を勘案し、図5及び図7を参酌すれば、「縦刃部の刃付け端部」の位置は、刃付けがされた部分(図7に示された斜面状の部分)が縦刃部において刃縁と交わる箇所であることを理解することができる。
より詳細に説明すると、図7からは「硬質合金部54e」が設けられていない側の刃縁部には斜面状の部分があることを読み取ることができ、技術常識を勘案すれば、この斜面状の部分が刃付けがされた部分であると理解することができる。このことを踏まえると、図5において刃縁部に位置する弓状の区画が「刃付けがされた部分」であって、「刃付けがされた部分」が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「刃付け部の刃付け端部」であると理解することができる。
請求人は、「「縦刃部の刃付け端部」が不明確である理由として、「図7からは、図5のA-A線に沿う断面が把握されるのみで、それ以外の箇所の断面がどのようになっているかは不明である。しかも、図4(a)及び(b)からは、「刃付け」された部分を有しない第1~第3耕耘爪52,53,54しか看て取れず、そもそも、縦刃部52b,53b,54bに対して「刃付け」がされているか否かが不明である。それゆえ、本件発明1の構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」がどこに位置するのか不明であるから、構成1Cの「縦刃部の刃付け端部」は不明確である。」とも主張する(上記第3の3(11))が、上記で検討したとおり、当業者であれば、本件特許明細書及び本件図面の記載、技術常識を参酌すれば、「縦刃部の刃付け端部」を理解することができるから、請求人の主張は採用できない。
5 無効理由11について
(1)請求人の主張の概略
請求人は、概略、本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1に記載された「縦刃部の刃付け端部」という文言が発明の詳細な説明に記載されていないから、サポート要件を満たしていない旨(上記第3の3(12))、主張する。
(2)サポート要件の判断基準
上記2(2)で説明したとおりである。
(3)「縦刃部の刃付け端部」が発明の詳細な説明に記載されているかについて
上記5で検討したとおり、当業者が本件明細書及び本件図面の記載、技術常識を参酌すれば、「縦刃部の刃付け端部」は、図5に示された「刃付けがされた部分」が縦刃部において刃縁と交わる箇所が「刃付け部の刃付け端部」であることを理解することができる。
したがって、「縦刃部の刃付け端部」は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求人の本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないとの主張には理由がない。
6 無効理由4について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲13発明を対比する。
(ア)甲13発明の「耕耘刃」、「耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘爪」、「耕耘軸に取り付けられる取付基部」に相当する。
(イ)甲13発明において、「取り付け部に縦刃の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に横刃が連続して」いるから、当該「縦刃の他の部分」及び「横刃」は、本件発明1の「前記取付基部から連続して延びる縦刃部」及び「前記縦刃部から連続して延びる横刃部」にそれぞれ相当する。
(ウ)甲13発明の「縦刃から横刃に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲して」いることは、本件発明1の「前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ」たことに相当する。
また、甲13発明において、「横刃」は、「縦刃の他の部分」に「連続し」たものであって、「その先端を三次元的に屈曲して形成した」ものであり、また、「横刃」と特定されていることから、「縦刃の他の部分」に対して耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲したものであるといえる。よって、甲13発明の「横刃」を「縦刃の他の部分」に対して耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲したことは、本件発明1の「前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に弯曲させた」ことに相当する。
(エ)甲13に、「層設手段としては滲炭などの表面硬化処理のように母材の表面を硬化させるのではなく、母材と別の金属による硬化層を形成する」(上記第5の4(1)イ)と記載されているから、甲13発明の「硬質合金による硬化層」が「母材」よりも硬度が高いことは明らかである。
そうすると、甲13発明の「耕耘刃が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分である作用部域における縦刃の外側面、言換えると、縦刃の先端に形成した横刃の屈曲した方向と反対側の面と、この面に連続する横刃の外側面に沿って、硬質合金による硬化層を層設し」たことは、本件発明1の「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」たことに相当する。
(オ)甲13発明の「硬質層の切っ先側の端部は横刃部の端部に達している」ことは、本件発明1の「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している」ことに相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明1と甲13発明とは、
「耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している耕耘爪。」の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点ア〕
本件発明1では「前記硬質合金部の取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いるのに対して、甲13発明では「硬質合金による硬化層」の取り付け部側の端部と、「縦刃」の刃縁の端部とが略同じ位置に位置しているのか不明な点。
(キ)請求人の主張について
「前記硬質合金部の取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」(構成1C)に関する請求人の主張について、以下検討する。
a 請求人は、構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲13には構成1Cが記載されている旨(上記第3の3(4)ア)、主張する。
しかしながら、上記第5の4(2)で示した甲13発明において、本件発明1の「刃付け端部」に相当するものの位置を認定することができない、つまり不明であるから、「硬質合金による硬質層」の「取り付け部」側の端部の位置と「略同じ位置に位置する」かどうかを特定することができないし、仮に、本件発明1の「刃付け端部」に相当するものの位置が特定できたとしても、請求人が主張する「広義の意味」がどの程度の位置が相違する範囲までを含むのか不明であるから、広義の意味であることを前提とする「略同じ位置」を含む構成1Cを、甲13発明が備えているとは認められない。
b 次に、請求人は、甲13の第1図に図示された作用部域Aは、耕耘刃が本来の機能を果す領域であって、耕耘刃の摩耗に影響なく優れた切込み能力を発揮する部分であるから、傾斜状の刃付け面がその作用部域Aの全長にわたって形成されていることは明らかである旨(上記第3の3(4)ア)、及び、甲13の第1図の「「11b(2a)」という記載は、刃付け部の縁である「刃縁11b」の位置が、括弧内の「硬化層2の縁2a」の位置と一致することを意味している。」旨(上記第3の3(6)ア(ア)a)、主張する。
(a)しかしながら、「作用部域A」について、甲13には「耕耘刃1が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分、即ち、耕耘刃が本来の機能を果す作用部域Aが耕土と摩擦して摩耗する」(上記第5の4(1)イ)との記載があるものの、「作用部域A」が耕耘刃1の刃が形成される範囲との関係を特定しているものではない。この記載によれば、「作用部域A」は耕土との関係で、耕耘刃として機能する範囲を特定するに過ぎないから、「作用部域A」の範囲と「刃縁11b」の範囲が同一であるかどうかは不明である。
この点についてさらに検討すると、甲13発明の「硬質合金による硬化層」は、「耕耘刃」に「層設」するものであって、「硬化層」が層設されるであろう「作用部域A」は、上記したとおり、耕土との関係で、耕耘刃として機能する範囲を特定するものであるから、「硬化層」を「層設」する前の「耕耘刃」の構成である「刃縁11b」の範囲とは直接関係がないといえ、そのために、刃縁11bの取り付け部側の端部の位置については、「作用部域A」の取り付け部側の端部からさらに取り付け部方向にまで設けられていることも当然含まれるものである。
(b)また、甲13には、「耕耘刃1が耕耘刃回転軸を中心としてするとき、縦刃1のα点から基部寄りが耕土K中を挿過する距離、挿過長l1は零であるから硬化層2を形成しない。実際には耕土の凹凸などにより挿過長l1=0域においても耕土中に入る場合があるので、α点をやや基部寄りに定める。」(上記第5の4(1)イ)と記載され、また第1図をみると、作用部域Aの一番基部寄りの点に「α」と記載されている。
この記載から、縦刃1の作用部域Aの一番基部寄りであるα点よりもさらに基部寄りは、縦刃1が耕土K中を通過しない部分であるから、縦刃1のα点は、縦刃1が耕土K表面と接する位置とすることが基本であるところ、挿過長l1=0域においても耕土中に入る場合には、耕土K表面に接する位置よりもさらに基部寄りにα点を定めているといえるので、該α点は、あくまで耕土Kとの関係で定めているに過ぎず、縦刃部1の刃縁11bの位置との関係で定義するものではないことは、上記(a)で検討したことと同様である。
(c)さらに、第1図の「11b(2a)」との記載について、当該「11b(2a)」からの引き込み線が示す部位においては、請求人が主張するように、「刃縁11b」と「硬化層2の縁2a」の両方を示しているが、「作用部域A」の取り付け部側においても、同様に「刃縁11b」と「硬化層2の縁2a」の両方を示している、つまり、「刃縁11b」の取り付け部側の端部と、「硬化層2の縁2a」の取り付け部側の端部が略同じ位置に位置するとは認められない。
(d)以上のとおり、「縦刃部1」の「刃縁11b」の取り付け部側の端部が不明であるから、請求人の主張は採用できない。
c さらに請求人は、耕耘爪における縦刃部の刃付け端部の位置に関する当業者の技術常識(例えば甲第16号証ないし甲第21号証等)を考慮すると、甲13に上記構成1Cが記載されていること明らかである旨(上記第3の3(4)ア)、及び、耕耘爪の技術分野において、刃付け部の刃付け面が作用部域Aと略同じ領域、すなわち「縦刃部の取付基部側の端部の位置(α点及びその近傍位置)から横刃部の切っ先側の端部の位置までの領域」にわたって形成されていることは、当業者の技術常識である旨(上記第3の3(6)ア(ア)b)、主張する。
しかしながら、甲16ないし甲21には、甲13発明の作用部域や甲13に記載の「α点」に相当する記載はなく、刃付け部の刃付け面が縦刃部の取付基部付近から横刃部の切っ先側の端部まで形成された図が示されているに過ぎないことから、請求人が主張するような技術常識が存在するとは認められず、該技術常識を前提とする甲13に構成1Cが記載されているとの主張は、採用することができない。
d 以上のとおりであるから、請求人の主張は採用することができず、本件発明1と甲13発明とは、上記(カ)で示した〔相違点ア〕で相違しており、本件発明1は甲13に記載された発明であるということはできない。
イ 判断
上記相違点アについて検討する。
(ア)上記相違点アに係る本件発明1の構成は、請求人が提示する甲6以外の証拠には記載も示唆もされていない。
また、甲6発明は、「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成を備えており、当該構成のみをみると、上記相違点アに係る本件発明1の構成に相当するといえる。
しかしながら、甲6発明の「耕耘爪」は、甲6の記載によれば、「通常の耕耘作業とともに土壌を側方に放てきする作用もする」(上記第5の6(1)ウ)ものであって、「縦刃部4では、上下回転方向に土壌を切削し横刃部5で側方に放てきし、この放てきされた土壌で培土、畦立、覆土などの作業が行」(同上)われることからすると、甲13発明の「耕耘刃」と甲6発明の「耕耘爪」とは、横刃部において、土壌に対する機能が異なっている。
しかも、甲13発明の「硬化層」は、甲13の記載によれば、「作用部域Aに層設した硬化層2の幅寸法は掃過長と一定の関連をもたせて幅寸法を定めてある」(上記第5の4(1)イ)ものであって、特に「このδ点から横刃12寄りの部分は挿過長の差が小さいので、側面全面にわたつて硬化層2を形成し、耕耘刃における各所の硬化層2の幅寸法は直線的変化とする方が製作上容易である。」(同上)のに対し、甲6発明の「耕耘爪」の「超硬金属コーティング」は、横刃部には設けられておらず、かつ縦刃部には、「縦刃部の背面であって、かつ刃縁側に、峰側を直線に」「施し」た程度のものであって、甲6発明の「超硬金属コーティング層」に関する「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成についても、単に図面上で示されたものに過ぎず、それらを略同じ位置とする理由は甲6には記載されていない。
以上のことから、上記の横刃部の土壌に対する機能や、甲13発明の「硬化層」と甲6発明の「超硬金属コーティング」とが、その設けられた位置や形状が相違していることから、甲13や甲6に接した当業者が甲6発明の「超硬金属コーティング」の構成を甲13発明の「硬化層」に適用することを想起するものではない。
その上、上記で説明した甲6発明の「超硬金属コーティング」に関する記載を勘案すると、「超硬金属コーティング」の基部側の端部に関する構成のみを抜き出して甲13発明に適用する動機付けも存在しないから、甲6発明に基いて、本件発明1の構成1Cを導き出すことは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のことから、甲13発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点アに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)構成1Cが設計的事項または想到容易であるとの請求人の主張について
a 請求人は、「耐摩耗性の向上を図るために、耕耘爪の設計の際に両位置が「略同じ位置」に位置するように設計して、薄い刃付け部の取付基部側の端部を硬質合金部で覆うようなことは、当業者が適宜行う設計的事項に過ぎない。」旨(上記第3の3(6)イ)、主張する。
しかしながら、硬質合金部を設ける目的を勘案すると、摩耗される可能性がある刃付け部については、硬質合金部で覆うようにすることは当業者が適宜行う設計的事項であると仮定したとしても、硬質合金部が形成される前の耕耘爪の刃付け部の範囲や、実際に耕耘軸に取り付けられる耕耘爪と土壌の位置関係等によって、摩耗される可能性がある部位が、耕耘爪の刃付け部の位置と同一であるとは限らないから、実際に摩耗される部位における取り付け部側の端部の位置と刃付け部の端部の位置とが同じ位置であるかどうか不明と言わざるを得ない。
b 請求人は、甲13発明に甲6に記載の構成1Cを適用する動機付けについて、甲13発明と甲6に記載された技術事項とは、技術分野、作用及び機能、課題が共通しており、また、甲13には、第1図に「11b(2a)」という符号や作用部域Aが両方向矢印で示され、「作用部域Aに層設した硬化層2」という文言も存在することから、甲6記載の構成1Cを甲13発明に適用する動機付けがある旨(上記第3の3(6)ウ(ア))、主張する。
しかしながら、上記(ア)で検討したように、土壌に対する機能や、甲13発明の「硬化層」の位置や形状、及びその意義と、甲6発明の「超硬金属コーティング」を設ける位置や形状を勘案すると、甲6発明の「超硬金属コーティング層」であって、そのうちの「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成のみを取り出して、甲13発明に適用する動機付けは存在しない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、甲13発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明1は、甲13に記載された発明ではなく、また、甲13発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、上記(1)で検討したとおり、本件発明1は、甲13に記載された発明ではなく、また、甲13発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲13に記載された発明ではなく、また、本件発明2~本件発明7は、甲13発明、甲6発明及び甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 無効理由3について
(1)本件発明1について
(ア)甲12発明の「耕耘刃」、「耕耘作業機の軸に取り付けられる取り付け部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘爪」、「耕耘軸に取り付けられる取付基部」に相当する。
(イ)甲12発明においては「取り付け部に縦刃の他の部分が連続し、当該縦刃の他の部分に横刃が連続して」いるから、当該「縦刃の他の部分」及び「横刃」は、本件発明1の「前記取付基部から連続して延びる縦刃部」及び「前記縦刃部から連続して延びる横刃部」にそれぞれ相当する。
(ウ)甲12発明の「縦刃から横刃に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲して」いることは、本件発明1の「前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ」たことに相当する。
また、甲12発明において、「横刃」は、「縦刃の他の部分」に「連続し」たものであって、「その先端を三次元的に屈曲して形成」されており、また、「横刃」と特定されていることから、「縦刃の他の部分」に対して耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲したものであるといえる。
(エ)甲第12号証に、「層設手段としては滲炭などの表面硬化処理のように母材の表面を硬化させるのではなく、母材と別の金属による硬化層を形成する」(上記第5の3(1)イ)と記載されているから、甲12発明の「硬質合金による硬化層」が「母材」よりも硬度が高いことは明らかである。
そうすると、甲12発明の「耕耘刃が実際の耕耘作業時に耕土中に潜る部分である作用部域における縦刃の外側面、言換えると、縦刃の先端に形成した横刃の屈曲した方向と反対側の面と、この面に連続する横刃の外側面に沿って、硬質合金による硬化層であって母材と別の金属による硬化層を層設」することは、本件発明1の「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ることに相当する。
(オ)甲12発明の「硬質層の切っ先側の端部は横刃部の端部に達している」は、本件発明1の「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置しており」に相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明1と甲12発明とは、
「耕耘機に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している耕耘爪。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点あ〕
本件発明1では「硬質合金部の取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いるのに対して、甲12発明では「硬質合金による硬化層」の取り付け部側の端部と、「縦刃」の刃縁の端部とが略同じ位置に位置しているのか不明な点。
イ 判断
上記相違点あについて検討する。
上記相違点あは、実質的に上記6(1)アで示した上記相違点アと同じものであり、また甲12は甲13と同様の記載があるのみである。
そして、上記6で検討したように、甲13には、上記相違点アに係る本件発明1の構成は記載されておらず、また、甲13発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点アに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、同様の理由により、甲12には、上記相違点あに係る本件発明1の構成は記載されておらず、また、甲12発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点あに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
なお、請求人の主張については、上記6で主引用発明を甲13発明として検討したことと同様である。
よって、本件発明1は、甲12に記載された発明ではなく、また、甲12発明、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、本件発明1は、上記(1)で検討したとおり、甲12に記載された発明ではなく、また、甲12発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲12に記載された発明ではなく、また、本件発明2~本件発明7は、甲12発明、甲6発明及び甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
8 無効理由1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「耕耘機の爪」、「耕耘機の軸に取り付けられる取り付け部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘爪」、「耕耘軸に取り付けられる取付基部」に相当する。
(イ)甲1発明の「耕耘機の爪」のうちの「取り付け部に続く平板状の部分」及び「平板状の部分に続く湾曲した部分」は、本件発明1の「前記取付基部から連続して延びる縦刃部」及び「前記縦刃部から連続して延びる横刃部」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明において、湾曲した部分は、平板状の部分に続くものであって、「湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向であ」ることから、耕耘軸と耕耘爪の配置の技術常識を勘案すると、湾曲状した部分は、平板状の部分に対して耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲したものであるといえる。してみると、甲1発明の「湾曲した部分」の湾曲方向は、本件発明1の「前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた」ことに相当する。
(ウ)甲1発明の「硬質金属薄板」は、「鋼より硬い、耐磨耗性の大なる金属に依って構成される」もので、「磨耗の激しい刃板類の刃先線の土との摩擦が激しい一側面」に取り付けられるものであるところ、「鋼より硬い、耐磨耗性の大なる金属に依って構成される」「硬質金属薄板」が「磨耗の激しい刃板類の刃先線」より高い硬度を有することは明らかである。
そうすると、甲1発明の「磨耗の激しい刃板類の刃先線の土との摩擦が激しい一側面に鋼より硬い、耐磨耗性の大なる金属に依って構成される硬質金属薄板を溶着して取付け、硬質金属薄板は平板状の部分及び湾曲した部分に設けられて」いることは、本件発明1の「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ることに相当する
(エ)甲1発明の「硬質金属薄板がある側では硬質金属薄板の切っ先側の端部が湾曲した部分の端部に位置している」ことは、本件発明1の「硬質合金部の切っ先側の端部は、横刃部の端部近傍に位置している」ことに相当する。
(オ)以上を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、
「耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している耕耘爪。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点A〕
耕耘爪が、本件発明1では「前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ」たのに対して、甲1発明では、そのように湾曲させたかどうか明らかでない点。
〔相違点B〕
本件発明1では「硬質合金部の取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いるのに対して、甲1発明では「硬質金属薄板」の「取り付け部」側の端部」と「平板状の部分」の「刃先線の端部」との位置関係が明らかでない点。
(カ)請求人の主張について
請求人は、(a)構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲1には上記構成1Cが記載されている旨、(b)甲1における「刃先線(1)´の一側の硬質金属薄板(2)側の磨耗が少なく、他側の鋼材側の磨耗が多くなって、刃先線(1)´が常に尖った良く切れる状態に保たれ」るとの記載からも、甲1に構成1Cが記載されていることは明らかである旨(共に、上記第3の3(1)ア)、主張する。
しかしながら、(a)請求人の主張する「広義の意味」が、どの程度の範囲を意味するのか不明であるので、構成1Cが甲1に記載されているとは認められない。
また、(b)請求人が挙げた記載によれば、硬質金属薄板(2)の存在により、刃先線(1)´が常に尖った良く切れる状態に保たれるのであるものの、当該記載が硬質金属薄板(2)と刃先線(1)´が略同じ位置に位置していることを意味しているとは認められない(例えば、刃先線(1)´の全ての位置に硬質親族薄板(2)が配置されてないものも排除されていない。)ことから、構成1Cが甲1に記載されているとは認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。
イ 判断
事案に鑑みて、相違点Bから検討する。
上記相違点Bに係る本件発明1の構成は、請求人が提示する甲6以外の証拠には記載も示唆もされていない。
また、甲6発明は、「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成を備えており、当該構成のみをみると、上記相違点Bに係る本件発明1の構成に相当するといえる。
しかしながら、甲6発明の「耕耘爪」は、甲6の記載によれば、「通常の耕耘作業とともに土壌を側方に放てきする作用もする」(上記第5の6(1)ウ)ものであって、「縦刃部4では、上下回転方向に土壌を切削し横刃部5で側方に放てきし、この放てきされた土壌で培土、畦立、覆土などの作業が行」(同上)われることからすると、上述した「通常の耕耘作業」を行うとされる甲1発明の「耕耘機の爪」と甲6発明の「耕耘爪」とは、横刃部において、土壌に対する機能が異なっている。
しかも、甲1発明の「硬質金属薄板」は、「平板状の部分」に加えて「湾曲した部分」にも設けられ、さらに「切っ先側の端部が湾曲した部分の端部に位置して」いるものであるのに対して、甲6発明の「超硬金属コーティング」は、横刃部には設けられておらず、また、甲1発明の「硬質金属薄板」は、「摩耗の激しい刃板類の刃先線」に取り付けられるものの、甲1には取り付け部側の端部に関する課題等は記載されておらず、甲6においても、「超硬金属コーティング」を設ける意義、特には、取り付け部側の端部に関する課題等は記載されていない。
以上のことから、上記の横刃部の土壌に対する機能や、甲1発明の「硬質金属薄板」と甲6発明の「超硬金属コーティング」とが、その設けられた位置や形状が相違し、さらにそれらを設ける意義について共通するか不明であることから、甲1や甲6に接した当業者が甲6発明の「超硬金属コーティング」の構成を甲1発明の「硬質金属薄板」に適用することを想起するものではない。
その上、上記で説明した甲6発明の「超硬金属コーティング」に関する記載を勘案すると、「超硬金属コーティング」の基部側の端部に関する構成のみを抜き出して甲1発明に適用する動機付けも存在しないから、甲6発明に基づいて、本件発明1の構成1Cを導き出すことは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、甲1発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、相違点Aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、本件発明1は、上記(1)で検討したとおり、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2~本件発明7は、甲1発明、甲6発明及び甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
9 無効理由2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲11発明とを対比する。
(ア)甲11発明の「耕耘爪」、「トラクターの軸への取付用の爪柄部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘爪」、「耕耘軸に取り付けられる取付基部」に相当する。
(イ)甲11発明の「爪柄部に続く平板状の部分」及び「平板状の部分に続く湾曲した部分」は、本件発明1の「前記取付基部から連続して延びる縦刃部」及び「前記縦刃部から連続して延びる横刃部」にそれぞれ相当する。
また、甲11発明において、湾曲した部分は、平板状の部分に続くものであって、「湾曲した部分が湾曲する方向は、平板状の部分の面に対して略垂直方向であ」ることから、耕耘軸と耕耘爪の配置の技術常識を勘案すると、平板状の部分に対して耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲したものであるといえる。してみると、甲11発明の「湾曲した部分」の湾曲方向は、本件発明1の「前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた」ことに相当する。
(ウ)甲11発明においては、「刃部には二層鋼板を使用しており」、「二層鋼板は軟質の地鉄部と硬質の刃鋼部とが一体となって構成された鋼板であ」るところ、「硬質の刃鋼部」が「軟質の地鉄部」より高い硬度を有することは明らかである。
そうすると、甲11発明の「平板状の部分及び湾曲した部分には硬質の刃鋼部が設けられて」いることは、本件発明1の「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ることに相当する。
(エ)甲11発明の「刃鋼部の切っ先側の端部は、湾曲した部分の切っ先側の端部と概ね同じ位置に位置している」ことは、本件発明1の「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している」ことに相当する。
(オ)以上を総合すると、本件発明1と甲11発明とは、
「耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している耕耘爪。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点a〕
本件発明1では「縦刃部から横刃部に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ」たのに対して、甲11発明では、そのように湾曲させたかどうか明らかでない点。
〔相違点b〕
本件発明1では「硬質合金部の取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いるのに対して、甲11発明では「刃鋼部」の「爪柄部」側の端部と「平板状の部分」の「刄」の端部との位置関係が明らかでない点。
(カ)請求人の主張について
a 請求人は、構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲11には上記構成1Cが記載されている旨(上記第3の3(2)ア)、主張する。
しかしながら、請求人の主張する「広義の意味」が、どの程度の位置が相違する範囲を意味するのか不明であるので、構成1Cが甲11に記載されているとは認められない。
b また、請求人は、【比較図1】を示して、本件特許の図面と甲11の図面を比較して、ずれ量がほとんど差がなく実質的に同じであるから、甲11に構成1Cが記載されていることは明らかである旨(上記第3の3(2)ア)、主張する。
しかしながら、本件特許の図面は、設計図面ではないことから、硬質合金部の取付基部側の端部の位置と、縦刃部の刃付け端部の位置とにずれがあるように見えたとしても、上記1で検討したとおり、本件特許明細書の記載等を併せて読むことにより、両位置が略同じ位置にあるものと認められる。
これに対して、甲11において、「刃部(2)には二層鋼板を使用して」おり、「二層鋼板(2)は軟質の地鉄部(4)と硬質の刃鋼部(3)とが一体となって構成された鋼板である」ところ、「刃部(2)には多少の刄(2’)を形成してある」程度のものであるから、刃鋼部(3)の幅方向の長さからみて刄(2’)の幅方向の長さは短いものと認められる。この点を踏まえて甲11の第2図をみても、刃鋼部(3)の峰側の位置は、刄(2’)から近いとも認められない。
これらのことを勘案すると、請求人が示した【比較図1】の下側の図の2つの赤丸の位置は、略同じ位置に位置するとはいえない。
c 以上のことから、請求人の主張は採用できない。
イ 判断
事案に鑑み、相違点bから検討する。
上記相違点bに係る本件発明1の構成は、請求人が提示する甲6以外の証拠には記載も示唆もされていない。
また、甲6発明は、「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成を備えており、当該構成のみをみると、上記相違点bに係る本件発明1の構成に相当するといえる。
しかしながら、甲11発明において、「刃部には二層鋼板を使用しており、二層鋼板は軟質の地鉄部と硬質の刃鋼部とが一体となって構成された鋼板であり、刃部には多少の刄を形成し」たものであるから、「硬質の刃鋼部」の幅方向の長さ、及び「刄」が多少であることからすると、刃部の爪柄部側の端部において、「硬質の刃鋼部」の爪柄部側の端部の位置と、「刄」の爪柄部側の端部の位置とが、離れることが前提となるといえる。
この点は、請求人が提示する【比較図1】の下側の図における2つの赤丸の位置からも確認ができる。
このような構造を有する甲11発明において、甲6に接した当業者といえども、甲11発明の「硬質の刃鋼部」の爪柄部側の端部の位置と、「刄」の爪柄部側の端部の位置とを、略同じ位置とすることは、容易になし得たこととはいえない。
したがって、甲11発明に甲6発明を適用することにより、上記相違点bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲11に記載された発明ではなく、また、甲11発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、本件発明1は、上記(1)で検討したとおり、甲11に記載された発明ではなく、また、甲11発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲11に記載された発明ではなく、また、本件発明2~本件発明7は、甲11発明、甲6発明及び甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
10 無効理由5について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲14発明を対比する。
(ア)甲14発明の「耕うん軸」、「耕うん爪」、「耕うん軸に取り付けられる取り付け部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘軸」、「耕耘爪」、「耕耘軸に取り付けられる取付基部」に相当する。
また、甲14発明の「耐摩耗性部材を溶射した被膜」は、本件発明1の「硬質合金部」に相当する。
(イ)甲14発明には、縦刃部や横刃部の特定がないことから、本件発明1の「前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して連続して延びる横刃部」と、甲14発明の「取り付け部から切っ先まで連続して形成されて」いる部分とは「取付基部から切っ先まで連続して形成されている部分」で共通する。
(ウ)本件発明1の「前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ていることと、甲14発明の「取り付け部側から切っ先に渡って刃縁部が設けられ、刃縁部には耐摩耗性部材を溶射した被膜が設けられ」ていることとは、「取付部側から切っ先に渡って刃縁部が設けられ、刃縁部には、他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ることで共通し、本件発明1の「前記硬質合金部の切っ先側の端部は、前記横刃部の端部近傍に位置している」ことと、甲14発明の「被膜は、取り付け部側から切っ先側の端部に渡って設けられ」ていることとは、「硬質合金部の切っ先側の端部は、耕耘爪の端部近傍に位置している」の点で共通する。
(エ)以上を総合すると、本件発明1と甲14発明とは、
「耕耘軸に取り付けられる取付基部と、取付基部から切っ先まで連続して形成された部分と、を有し、
取付基部側から切っ先側の刃縁側には、他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
硬質合金部の切っ先側の端部は、耕耘爪の端部近傍に位置している耕耘爪。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明1は、取付基部から連続して延びる縦刃部と、縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、縦刃部から横刃部に渡って耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、縦刃部に対して横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させたのに対し、甲14発明は、縦刃部と横刃部が特定されておらず、そのため湾曲方向も不明な点。
〔相違点2〕本件発明1は、硬質合金部が、前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って設けられるのに対し、甲14発明は、刃縁部に設けられた耐摩耗性部材を溶射した皮膜が、縦刃部及び横刃部に関連した位置の特定がされていない点。
〔相違点3〕本件発明1は、硬質合金部について、取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており、切っ先側の端部は、横刃部の端部近傍に位置しているのに対し、甲14発明は、刃縁部に設けられた耐摩耗性部材を溶射した皮膜の端部が、刃縁部の端部や横刃部の端部近傍に位置しているかどうか不明な点。
(オ)請求人の主張について
a 特に相違点3の「硬質合金部の取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置して」いる構成(構成1C)についてみると、請求人は、構成1Cの「略同じ位置」は広義の意味であるから、甲14には上記構成1Cが記載されている旨(上記第3の3(5)ア)、主張する。
しかしながら、請求人の主張する「広義の意味」が、どの程度の位置が相違する範囲を意味するのか不明であるので、構成1Cが甲14に記載されているとは認められない。
b また、請求人は、【比較図3】を示して、本件特許の図面と甲14の図面を比較して、ずれ量がほとんど差がなく実質的に同じであるから、甲14に構成1Cが記載されていることは明らかである旨(上記第3の3(2)ア)、主張する。
しかしながら、本件特許の図面は、設計図面ではないことから、硬質合金部の取付基部側の端部の位置と、縦刃部の刃付け端部の位置とにずれがあるように見えたとしても、上記1で検討したとおり、本件特許明細書の記載等を併せて読むことにより、両位置が略同じ位置にあるものと認められる。
これに対して、甲14について請求人が提示した【比較図3】において、下側の図の2つの赤丸の位置は離れていることが明らかであって、しかも両位置についての説明は甲14には見当たらないことから、それらが略同じ位置に位置するとはいえない。
c 以上のことから、請求人の主張は採用できない。
イ 判断
事案に鑑みて、相違点3から検討する。
上記相違点3に係る本件発明1の構成のうち、硬質合金部について、取付基部側の端部は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置している構成は、請求人が提示する甲6以外の証拠には記載も示唆もされていない。
また、甲6発明は、「超硬金属コーティングの峰側の直線が刃縁とが交わる点と、刃縁の取付部側の端部とが、略同じ位置にあ」るとの構成を備えており、当該構成のみをみると、上記相違点3に係る本件発明1の上記構成に相当するといえる。
しかしながら、上記アで検討したとおり、甲14発明において、本件発明1の「硬質合金部」の「取付基部側の端部」と「縦刃部の刃付け端部」に相当する両部位は離れており、略同じ位置に位置するとは認められない。
そして、甲14発明において、当該両部位に関する意義等は、甲14に記載されておらず、甲6にも、同様に記載されていない。
よって、上記の意義等が記載されていないことからみて、甲6発明の「超硬金属コーティング」における取付部側の端部の構成のみを抜き出して、甲14発明の「被膜」の取り付け部側の端部に適用する動機付けは存在しないから、甲6発明に基づいて、上記相違点3に係る本件発明1のうちの「前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しており」との構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のことから、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではなく、よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲14に記載された発明ではなく、また、甲14発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、本件発明1は、上記(1)で検討したとおり、甲14に記載された発明ではなく、また、甲14発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲14に記載された発明ではなく、また、本件発明2~本件発明7は、甲14発明、甲6発明及び甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
11 無効理由6について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明を対比する。
(ア)甲6発明の「耕耘軸」、「耕耘爪」は、それぞれ本件発明1の「耕耘軸」、「耕耘爪」に相当する。
甲6発明の「ロータリ耕耘装置の耕耘軸に装着される取付部」、「取付部に連続して形成される縦刃部」、「縦刃部に連続して形成される横刃部」は、それぞれ、本件発明1の「耕耘軸に取り付けられる取付基部」、「前記取付基部から連続して延びる縦刃部」、「前記縦刃部から連続して延びる横刃部」に相当する。
(イ)甲6発明の「超硬金属コーティング」は、本件発明1の「硬質合金部」に相当するから、甲6発明の「縦刃部の背面であって、かつ刃縁側に、峰側を直線状に薄膜の超硬金属コーティングを施している」ことは、本件発明1の「前記縦刃部の刃縁側には、」「他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ」ていることに相当する。
(ウ)甲6発明の「縦刃部から横刃部に渡って、耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲している」こと、「横刃部は、回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲して」いることは、それぞれ、本件発明1の「前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ」ること、「前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた」ことに相当する。
(エ)以上を総合すると、本件発明1と甲6発明とは
「耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、
前記縦刃部の刃縁側には、他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられている耕耘爪。」で一致するものの、次の点で相違している。
(相違点甲)
硬質合金部について、本件発明1は、前記縦刃部及び横刃部の刃縁側に設けられ、切っ先側の端部が、横刃部の端部近傍に位置しているのに対し、甲6発明は、縦刃部の刃縁側に設けられているものの、横刃部の刃縁側には設けられておらず、さらに、切っ先側の端部が、横刃部の端部近傍に位置していない点。
(相違点乙)
硬質合金部の取付基部側の端部が、本件発明1は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しているのに対し、甲6発明は、縦刃部の刃付け端部と略同じ位置に位置しているかどうか不明な点。
イ 判断
上記相違点甲について検討する。
(ア)甲6発明の「耕耘爪」の機能について、甲6に、「通常の耕耘作業とともに土壌を側方に放てきする作用もする」(上記第5の6(1)ウ)、「縦刃部4では、上下回転方向に土壌を切削し横刃部5で側方に放てきし、この放てきされた土壌で培土、畦立、覆土などの作業が行える。」(同上)と記載されていることからみて、甲6発明の「耕耘爪」は、縦刃部においては、通常の耕耘作業である上下回転方向に土壌を切削し、横刃部においては、土壌を側方に放てきする作用を行っており、その機能を奏するにあたって、甲6発明は、「横刃部5は、回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲」する構成を備えているものと認められる。
また、甲6の上記記載を踏まえると、甲6発明の「横刃部」の構成を備えていない「耕耘爪」では、縦刃部に加えて横刃部においても、耕耘作業である上下回転方向に土壌を切削する機能を備えるものと認められる。
そして、甲6発明は、縦刃部に超硬金属コーティングが施されているものの、横刃部には超硬金属コーティングが施されておらず、甲6には、超硬金属コーティングの有無についての理由の記載はないが、該有無をみると、縦刃部には必要であって、横刃部には必要がないか、または、その構造上、横刃部に設けることが出来ない、等の何らかの理由の存在が考えられる。
してみると、仮に、横刃部に硬質合金部を設けることが、本件特許の出願前に公知または周知技術であったとしても、甲6発明において「横刃部」が「回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲」する構成を備えることにより、通常の耕耘作業である上下回転方向に土壌を切削する縦刃部の機能ではなく、土壌を側方に放てきする作用を行っていることからみて、甲6発明の横刃部に、硬質合金部を設けることは、当業者が容易になし得たこととは認められない。
(イ)上記(ア)のとおり、甲6発明の横刃部に、硬質合金部を設けることは、当業者が容易になし得たこととは認められないが、請求人が主張するように、甲12~甲14、甲23、甲24の構成1B及び構成1Dが記載されていると仮定して、甲6発明に構成1B及び1Dを適用可能かについて、以下検討する。
a 甲13において、「硬質層」は、「作用部域Aに層設した硬化層2の幅寸法は掃過長と一定の関連をもたせて幅寸法を定めてある」(上記第5の4(1)イ)ものであって、特に「このδ点から横刃12寄りの部分は挿過長の差が小さいので、側面全面にわたつて硬化層2を形成し、耕耘刃における各所の硬化層2の幅寸法は直線的変化とする方が製作上容易である。」(同上)。
してみると、甲6発明の「耕耘爪」において、甲13に記載されたような掃過長に関する課題は存在しないし、しかも、横刃部は、土壌を側方に放てきする作用を行うために、「回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲して」いる構成を有しており、通常の耕耘作業である上下に回転方向に土壌を切削する縦刃部とは、機能の違いからその形状は相違しており、縦刃部から横刃部に渡って、「側面全面にわたつて硬化層2を形成し、耕耘刃における各所の硬化層2の幅寸法は直線的変化とする方が製作上容易である。」とされる甲13に記載の硬化層2を、機能が異なる刃部を有する甲6発明に適用することは、相当な困難を要するものと認められる。
また、甲12においても、甲13と同様の記載があり、上記した理由と同様の理由により、甲12に記載の硬化層2を、甲6発明に適用することは、相当な困難を要するものと認められる。
b 甲14において、耕うん爪1は、耐摩耗性部材4の溶射被膜5が、刃縁部3に沿って切っ先まで設けられているが、横刃部を備えるかどうか明確ではない。
たしかに、耕耘爪は、縦刃部に加えて横刃部も備えることが一般的であるから、上記切っ先が横刃部の先端を意味し、該溶射被膜5が、横刃部及び切っ先まで設けられていることが甲14に記載されていると仮定したとしても、甲6発明の耕耘爪は、上記aで説明したように縦刃部と横刃部とは形状が相違しており、また、超硬金属コーティングは、縦刃部に設けられ、しかも「峰側を直線に」施したものである。
甲6発明の耕耘爪と甲14記載の耕うん爪1とは、両形状が相違がしており、さらに甲6発明の超硬金属コーティングと甲14記載の溶射被膜5とは、設けられた位置や形状が相違することから、甲14に接した当業者が、甲14に記載の溶射被膜5の構成を、甲6発明の超硬金属コーティングに適用することは、当業者が容易になし得たこととは認められない。
c 甲23には、上記第5の13(2)に示した甲23技術事項が記載されており、甲23技術事項の「耕耘爪1」は、「平坦部6」と、「平坦部6の先端からカーブし」て「屈曲された先端部8」を備えており、「先端部8」には「刃縁7に沿った両側面8a,8bには、耐摩耗性金属層12が被覆されているため、刃縁7の変形及び刃欠けを防ぐことができる」ものである。
これに対し、甲6発明の耕耘爪は、「縦刃部の背面であって、かつ刃縁側に、峰側を直線に薄膜の超硬金属コーティングを施し」たものの、甲6発明の「超硬金属コーティングを施」す理由は、甲6には記載されていないが、「縦刃部の背面」(縦刃部の片面)にしか施されていないことからみて、甲23技術事項のように「刃縁7の変形及び刃欠けを防ぐ」ことを目的とするものとは認められない。
よって、甲6発明と甲23技術事項とは、超硬金属コーティング及び耐摩耗性金属層12を設ける目的が相違するから、甲23技術事項において、横刃部に相当する「先端部8」の「刃縁7に沿った両側面8a,8bに」被覆した、「耐摩耗性金属層12」を、甲6発明の横刃部に設ける動機付けは存在しない。
また、甲6発明の横刃部は、通常の耕耘作業であるである上下回転方向に土壌を切削する縦刃部と違い、横方向に土壌を側方に放てきする作用を有するものであるから、甲23技術事項の「耐摩耗性金属層12」のように「刃縁7に沿った両側面8a,8bに」被覆することを適用する課題があるとも認められない。
d 甲24には、上記第5の14(2)に示した甲24技術事項が記載されており、甲24技術事項の「耕耘爪」は、縦刃部1と、縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら主に正面視横方向に延伸する横刃部2と、が一体に連なって構成される」ものであって、「横刃部2の一面に沿って延伸方向に沿って層設された、硬質合金からなる硬化層4」は、本件発明1の構成1Bの「前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部」に相当する。
しかしながら、甲24技術事項の硬化層4は、「横刃部2の延伸方向に沿って伸びる窪み部3」「を覆うようにして横刃部2の一面に」「層設され」るものであるから、甲24技術事項の「窪み部3」に相当する構成を備えていない甲6発明において、甲24技術事項の硬化層4を適用する動機付けは存在しない。
そもそも、甲6発明の横刃部は、「土壌を側方に放てきする作用」を備えるために、「回転方向に関し外側にクリアランス角βを有して彎曲」する構成を有するものであるから、甲6発明の横刃部が、甲24技術事項の「窪み部3」に相当する構成を備えるようにすることも、困難性を伴っていると言わざるを得ない。
e 以上のとおり、甲12~甲14、甲23、甲24に記載の事項からみて、構成1B及び構成1Dが周知技術または公知技術であったとしても、甲6発明に適用することによって、上記相違点甲に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、相違点乙について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明、及び甲12~甲14、甲23、甲24に記載された公知技術または周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~本件発明7について
本件発明2~本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定を加えた発明である。
そして、本件発明1は、上記(1)で検討したとおり、甲6発明及び甲12~甲14、甲23、甲24に記載された公知技術または周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2~本件発明7は、甲6発明及び甲12~甲14、甲23、甲24に記載された公知技術または周知技術、甲2ないし甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
12 無効理由12
請求人は、本件発明1の構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言は、本件明細書のみならず、そもそも原出願(平成25年10月18日に出願された特願2013-217312号:親出願)の出願当初の明細書等にも記載及び示唆がないから、本件特許の出願(孫出願)は分割要件を満たしておらず、出願日が遡及しない。それゆえ、本件発明1ないし7は、親出願の公開公報である甲第15号証に記載された発明と同一(実質同一)である。また、仮に同一でないとしても、本件発明1ないし7は、甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨(上記第3の3(13))、主張する。
しかしながら、構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言が本件明細書及び本件図面に記載されていることは、上記2及び5で検討したとおりであって、原出願の出願当初の明細書及び図面は、本件特許の明細書及び図面と同じである。
したがって、構成1Cの「略同じ位置」及び「縦刃部の刃付け端部」という文言は、本件明細書のみならず、原出願の出願当初の明細書等にも記載されたものであり、本件特許の出願は(孫出願)は、分割要件を満たしており、出願日が原出願の出願日に遡及する。
よって、本件特許の出願(孫出願)が分割要件を満たさず、出願日が遡及しないことを前提として、本件発明が原出願の公開公報である甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとする請求人の主張には理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、無効理由1~12はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし7についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800051