特許異議申立
2016-701178
食器篭
- 審判番号
- 2016-701178
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-057975
- 登録番号
- 特許第5952037号(P5952037)
- 請求日
- 2016年12月26日
- 審決日
- 2017年09月06日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社中西製作所
- 【権利者代理人】板谷 康夫
- 【権利者代理人】板谷 真之
- 【異議申立人】笹倉 康助
- 審判長/審判官
- 審判長 高木 彰
- 審判官 関谷 一夫
- 審判官 内藤 真徳
- 分類
- P1651.55 -YAA(A47G) / P1651.537-YAA(A47G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5952037号発明「食器篭」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5952037号の特許請求の範囲を、平成29年6月22日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。
特許第5952037号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第5952037号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成24年3月14日に特許出願され、平成28年1月29日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月11日付けで意見書とともに手続補正書が提出がされ、特許請求の範囲及び明細書について手続補正されたところ、同年6月17日にその特許権の設定登録がされ、同年7月13日にその掲載公報が発行された。
これに対し、平成28年12月26日付けで特許異議申立人笹倉康助(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年4月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)がされた。
2 訂正の適否についての判断
(1)本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の食器篭に積み重ねて収納した複数の食器の洗浄方法であって、
前記食器篭の前面が上方となるように、食器の積み重ね方向を水平方向として所定の速度で移動させ、前記移動する食器の重ね方向に順次洗浄水を噴射し、隣り合う食器間の間隔に入った洗浄水の流動により食器の汚れを除去することを特徴とする食器の洗浄方法。」
とあるのを、
「請求項4又は5に記載の食器篭に積み重ねて収納した複数の食器の洗浄方法であって、
前記食器篭の前面が上方となるように、食器の積み重ね方向を水平方向として所定の速度で移動させ、前記移動する食器の重ね方向に順次洗浄水を噴射し、隣り合う食器間の間隔に入った洗浄水の流動により食器の汚れを除去することを特徴とする食器の洗浄方法。」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての判断
本件訂正は、訂正前の請求項6が請求項1乃至5のいずれか一項の記載を引用していたものを、請求項4及び5だけを引用するよう訂正するもの、すなわち請求項1乃至3との引用関係を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合する。また、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するので、訂正後の請求項6について訂正することを認める。
3 特許異議の申立てについて
(1)本件訂正発明
上記2のとおり、本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1~6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明6」という。)は、平成29年6月22日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
収納される食器の積み重ね方向を上下方向としたとき、上方端及び下方端に位置し、かつ、1辺が食器の外形よりも大きい食器篭の外郭を規制する、線材より構成される平面視略矩形状の上枠及び下枠と、これら上枠及び下枠の間を連結し、かつ、積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する線材より構成される食器支持部と、を備えた食器篭であって、
前記上枠は、4辺のうちの食器篭の前面となる1辺のみが上面及び前面に対して食器を出し入れするための空間を形成するように一部開口しており、当該1辺の線材は前記開口を形成するためにその両コーナー部より中央寄り位置において内側に入り込んだ部分を有し、それら入り込んだ部分の内方端と前記食器支持部のうちの2つの線材の上端とが連続的に繋がり、
前記下枠は、4辺のうちの食器篭の前面となる1辺の線材が前記食器支持部のうちの2つの線材の下端に連結されており、前記食器支持部のうちの少なくとも残りの1つの線材の上端及び下端が、前記上枠及び下枠の各後面となる1辺に連結され、さらに、前記食器支持部の下方側に、積み重ね収納される食器の最底部に位置する食器を支持する下規制部、又は前記最底部に位置する食器の位置を調整可能に支持する食器位置調整部を備えていることを特徴とする食器篭。
【請求項2】
前記下枠の4辺のうちの食器篭の前面となる1辺の線材がその両コーナー部より中央寄り位置において内側に入り込んだ部分を有し、それら入り込んだ部分の内方端に前記食器支持部のうちの2つの線材の下端が連続的に繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の食器篭。
【請求項3】
前記食器篭は、前面視で左右略対称の形状をなし、前記上枠及び下枠の各後面となる1辺に連結されている前記食器支持部の線材と前記下規制部又は前記食器位置調整部とを除き、前記左右略対称の形状はそれぞれ1本の線材を折り曲げることにより構成され、一方の対称形状の線材両端部と他方の対称形状の線材両端部とは、前記上枠及び下枠の各後面となる1辺において連結されていることを特徴とする請求項2に記載の食器篭。
【請求項4】
前記上枠には、積み重ねて収納した食器が食器篭の上面の開口から脱落することを防止するために、収納した食器の最上部に位置する食器の表面側を規制するための上規制部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の食器篭。
【請求項5】
前記上規制部は、復元性と撓み性を有する線材で構成された前記上枠の後面の1辺に回動自在となる支持部と、その両側にある2つの回動自由端部とを有し、この2つの回動自由端部が、前記上枠の開口の内側より外側に回り込んで前記開口を狭める方向に付勢するように、前記上枠の内側に入り込んだ部分にそれぞれ係合することを特徴とする請求項4に記載の食器篭。
【請求項6】
請求項4又は5のいずれか一項に記載の食器篭に積み重ねて収納した複数の食器の洗浄方法であって、
前記食器篭の前面が上方となるように、食器の積み重ね方向を水平方向として所定の速度で移動させ、前記移動する食器の重ね方向に順次洗浄水を噴射し、隣り合う食器間の間隔に入った洗浄水の流動により食器の汚れを除去することを特徴とする食器の洗浄方法。
(2)取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る特許(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。)に対して、平成29年4月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下ア、イのとおりである。
ア 取消理由1
平成28年4月11日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、その特許は取り消すべきものである。
イ 取消理由2
本件特許発明6は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)当審の判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)取消理由1について
取消理由1に係る平成28年4月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。))は、新たに請求項6を付加したことを含むものであって、その内容は上記2(1)に示した訂正前の請求項6のとおりである。
これに対し、取消理由1は、本件当初明細書等には、「上規制部」を備えていない請求項1~3に記載された食器篭に収納した食器の洗浄方法に関して、本件補正の請求項6に特定された「食器篭の前面が上方となるように、食器の積み重ね方向を水平方向として所定の速度で移動させ、前記移動する食器の重ね方向に順次洗浄水を噴射し、隣り合う食器間の間隔に入った洗浄水の流動により食器の汚れを除去すること」という事項は、記載も示唆もないから、本件補正に係る請求項6において、「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の食器篭」とした点は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないというものである。
しかしながら、上記2で認められた本件訂正により、請求項6における請求項1~3の引用は削除されたから、取消理由1は理由がないものとなった。
よって、本件特許は、取消理由1によって取り消すべきものでない。
(イ)取消理由2について
取消理由2は、取消理由1と同様の理由により、「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の食器篭」との記載を含む本件特許発明6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないというものである。
しかしながら、上記2で認められた本件訂正により、請求項6における請求項1~3の引用は削除されたから、取消理由2は理由がないものとなった。
よって、本件特許は、取消理由2によって取り消すべきものでない。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、以下(ア)、(イ)の理由を主張しているが、いずれも理由がない。
(ア)取消理由3(特許法第36条第6項第1号違反)
申立人の主張する取消理由3は、本件特許発明1は、線材より構成される食器支持部が、「積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する」ものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「食器支持部」が、積み重ね収納される食器が食器篭内の所定の位置に収められるように、当該積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で前後両側から同時に支持するものであることによって、本件特許発明1の課題を解決できることが記載されており、本件特許発明1の課題を解決する手段が反映されていないから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2乃至6も、同様に発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであって、本件特許は取り消すべきであるというものである。(特許異議申立書第9頁~第13頁第6行)
そして、申立人は本件特許発明1が、その課題を解決する手段を反映していない例として、参考図1及び2を挙げて説明している。
しかしながら、参考図1及び2は、いずれも、「後側の別体食器支持部を食器の外縁から離すことによって・・・前側の一体食器支持部のみで食器の外縁を支持される」もの(特許異議申立書第11頁)であって、本件訂正発明1の「積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する線材より構成される食器支持部」を備えるという発明特定事項を備えていないことが明らかであるから、本件訂正発明1が、その課題を解決できないことを示す根拠とはいえない。
そして、本件訂正発明1は、「積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する線材より構成される食器支持部」を備え、その食器支持部は、「食器篭の前面となる1辺の」・・・「線材は」・・・「その両コーナー部より中央寄り位置において内側に入り込んだ部分を有し、それら入り込んだ部分の内方端と前記食器支持部のうちの2つの線材の上端とが連続的に繋がり、」・・・「前記食器支持部のうちの少なくとも残りの1つの線材の上端及び下端が、前記上枠及び下枠の各後面となる1辺に連結され、」と特定されている、すなわち、当該食器支持部は前面側の2つの線材と後面側の少なくとも1つの線材からなることが特定されており、かつ、当該食器支持部は、食器を「支持」するものであることは明らかであることをふまえれば、本件訂正発明1が「食器篭にたくさんの食器を積み重ねて安全に運搬できることと、かつ、食器が食器篭の外枠よりはみ出して食器を壊すことなく、簡単な構成で丈夫な食器篭を提供する」(本件特許明細書段落[0008])との課題を解決するものといえるから、発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。
よって、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載されたものであり、また、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2乃至6も同様であるから、本件訂正発明1~6は特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであって、本件特許は取り消すべきものでない。
(イ)取消理由4(特許法第36条第6項第2号違反)
申立人の主張する取消理由4は、本件特許発明1は、「積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する」と特定されているところ、これは少なくとも3点で前後両側から同時に支持することを意味するのか、或いは、そのような意味ではなく、同時でない支持を含むのか不明瞭であり、その結果、本件特許発明1の範囲が不明確となっており、また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2乃至6も、同様に不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであって、本件特許は取り消すべきであるというものである。(特許異議申立書第13頁第7~19行)
上記(ア)で指摘したとおり、本件訂正発明1は、「積み重ね収納される食器の外縁を少なくとも3点で支持する線材より構成される食器支持部」を備え、その食器支持部は、前面側の2つの線材と後面側の少なくとも1つの線材からなることが特定されており、かつ、当該食器支持部は、食器を「支持」するものであることは明らかであって、本件訂正発明1が不明確であるとはいえない。
よって、本件訂正発明1は明確であり、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2乃至6も同様であるから、本件訂正発明1~6は特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものであって、本件特許は取り消すべきものでない。
(4)付記
申立人は、特許異議申立書において特許法第120条の5第5項に係る意見書の提出を希望しているが、同項ただし書によれば、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りではないとされている。
本件についてみると、本件訂正は、上記2(2)で述べたとおり、請求項間の引用関係を一部削除するものであって、実質的な内容の変更を伴うものでなく、本件特許異議の申立てについての実質的な判断に影響を与えるものでないから、上記特別の事情があるときに該当する。
よって、申立人に意見書を提出する機会を与えないものとする。
4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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