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特許異議申立

2016-700970

ゴムクローラ

審判番号
2016-700970
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-066177
登録番号
特許第5901375号(P5901375)
請求日
2016年10月06日
審決日
2017年08月08日
公報発行日
2017年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ブリヂストン
  • 【権利者代理人】中島 淳
  • 【権利者代理人】加藤 和詳
  • 【権利者代理人】福田 浩志
  • 【異議申立人】住友ゴム工業株式会社
  • 【異議申立人代理人】住友 慎太郎
  • 【異議申立人代理人】浦 重剛
  • 【異議申立人代理人】苗村 潤
  • 【異議申立人代理人】石原 幸信
審判長/審判官
  • 審判長 氏原 康宏
  • 審判官 出口 昌哉
  • 審判官 島田 信一
分類
P1651.121-YAA(B62D) / P1651.113-YAA(B62D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5901375号発明「ゴムクローラ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5901375号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について、訂正することを認める。 特許第5901375号の請求項1及び3~6に係る特許を維持する。 特許第5901375号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5901375号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成24年3月22日の出願であって、平成28年3月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人住友ゴム工業株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1~6に対して特許異議の申立てがされ、平成29年1月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月27日に意見書の提出及び訂正請求があり、同年4月21日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年5月26日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年3月27日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の(1)~(10)のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限するゴム突起と、 前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、 を有するゴムクローラ。」とあるのを、 「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、 前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、 を有するゴムクローラ。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の記載を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記窪み部は、互いに隣り合う前記ゴム突起間から前記ゴム体幅方向外側へ延出している請求項1又は請求項2に記載のゴムクローラ。」とあるのを、「前記窪み部は、互いに隣り合う前記ゴム突起間から前記ゴム体幅方向外側へ延出している請求項1に記載のゴムクローラ。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「前記ゴム体内周面に形成された車輪転動面の前記ゴム体幅方向外側端部の前記ゴム体外周側にメインコードが埋設されている、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のゴムクローラ。」とあるのを、「前記ゴム体内周面に形成された車輪転動面の前記ゴム体幅方向外側端部の前記ゴム体外周側にメインコードが埋設されている、請求項1、請求項3、請求項4の何れか1項に記載のゴムクローラ。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「前記ゴム体外周面にはラグが形成され、前記ラグは前記ゴム体外周側から見て一部が前記ゴム突起に重なる、請求項1~請求項5の何れか1項に記載のゴムクローラ。」とあるのを、「前記ゴム体外周面にはラグが形成され、前記ラグは前記ゴム体外周側から見て一部が前記ゴム突起に重なる、請求項1、請求項3~請求項5の何れか1項に記載のゴムクローラ。」に訂正する。 (6)訂正事項6 願書に添付した明細書(以下、「明細書」という。)の【0007】に 「本発明の請求項1に記載のゴムクローラは、複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限するゴム突起と、前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、を有している。」とあるのを、 「本発明の請求項1に記載のゴムクローラは、複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、を有している。」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0012】の記載を削除する。 (8)訂正事項8 明細書の【0013】に 「本発明の請求項2に記載のゴムクローラでは、窪み部をゴム体内周面の互いに隣り合うゴム突起間に亘って形成していることから、ゴム体が車輪に巻き掛かるときの巻き掛け抵抗を効果的に低減することができる。」とあるのを、 「また、窪み部をゴム体内周面の互いに隣り合うゴム突起間に亘って形成していることから、ゴム体が車輪に巻き掛かるときの巻き掛け抵抗を効果的に低減することができる。」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の【0014】に 「本発明の請求項3に記載のゴムクローラは、請求項1又は請求項2に記載のゴムクローラにおいて、前記窪み部は、互いに隣り合う前記ゴム突起間から前記ゴム体幅方向外側へ延出している。」とあるのを、 「本発明の請求項3に記載のゴムクローラは、請求項1に記載のゴムクローラにおいて、前記窪み部は、互いに隣り合う前記ゴム突起間から前記ゴム体幅方向外側へ延出している。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の【0019】に 「本発明の請求項5に記載のゴムクローラは、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記ゴム体内周面に形成された車輪転動面の前記ゴム体幅方向外側端部の前記ゴム体外周側にメインコードが埋設されている。」とあるのを、 「本発明の請求項5に記載のゴムクローラは、請求項1、請求項3、請求項4の何れか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記ゴム体内周面に形成された車輪転動面の前記ゴム体幅方向外側端部の前記ゴム体外周側にメインコードが埋設されている。」に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0021】~【0023】、【0050】、【0053】、【0054】、【0058】、【0064】にそれぞれ「第1実施形態」とあるのを、それぞれ「参考例」に訂正し、明細書の段落【0025】、【0031】、【0035】~【0037】、【0039】、【0040】、【0043】にそれぞれ「本実施形態」とあるのを、それぞれ「本参考例」に訂正し、明細書の段落【0021】、【0053】、【0058】、【0061】、【0062】、【0064】にそれぞれ「第2実施形態」とあるのを、それぞれ「第1実施形態」に訂正する。 (12)訂正事項12 明細書の段落【0063】の記載を削除する。 2 訂正の適否 2-1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、明細書の段落【0024】の「図1に示すように、ゴムクローラ10は、機体としてのクローラ車の駆動軸に連結された駆動輪100とクローラ車に回転自在に取付けられた遊動輪102とに巻き掛けられて用いられる。また、ゴムクローラ10の内周を、駆動輪100と遊動輪102の間に配置され且つクローラ車に回転自在に取り付けられた複数の転輪104が転動するようになっている。なお、駆動輪100、遊動輪102、及び転輪104は、それぞれ本発明の車輪の一例である。」という記載、段落【0027】の「図1に示すように、駆動輪100は、クローラ車の駆動軸に連結される円盤状の一対の輪部100Aを有している。この輪部100Aは、外周面100Bが後述するゴムクローラ10の車輪転動面16に接触して転動するようになっている。また、一対の輪部100Aには、互いの周縁部に架け渡されるようにピン部(不図示)が円周方向に一定間隔で形成されている。このピン部は、後述するゴム突起14に係合する(噛み合う)ようになっており、ゴム突起14と係合することでクローラ車からの駆動力をゴムクローラ10に伝達するようになっている。」という記載、段落【0063】の「第1、第2実施形態では、駆動輪100のピン部(不図示)がゴム突起14に係合してクローラ車からの駆動力をゴムクローラに伝達する構成としている・・・。」という記載及び図1を根拠として、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ゴム突起」を、「前記車輪のうち駆動輪と係合する」ことにさらに限定し、また、訂正前の請求項2の「前記窪み部は、前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成されている請求項1に記載のゴムクローラ。」という記載、明細書の段落【0041】の「また、窪み部22は、ゴムベルト12の内周面12Aの互いに隣り合うゴム突起14間全体に亘って形成されている(図7参照)。」という記載及び図7を根拠として、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に形成され」る「窪み部」を、「前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され」る「窪み部」に限定するものであり、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3~5について 訂正事項3~5は、請求項2の削除(上記(2))に合わせて、請求項3、5及び6の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項3~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項6~12について 訂正事項6~12は、訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正に合わせて、明細書の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正事項6~12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 2-2 一群の請求項 訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は、直接又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~6に対する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2-3 明細書の訂正 訂正事項6~12による明細書の訂正は、請求項1~6に関係するから、訂正事項6~12による明細書の訂正に係る請求項は請求項1~6であり、訂正事項6~12は、これらの請求項を含む一群の請求項である請求項1~6の全てを対象とするものであり、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。 2-4 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1~6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は、訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、 前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、 を有するゴムクローラ。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記窪み部は、互いに隣り合う前記ゴム突起間から前記ゴム体幅方向外側へ延出している請求項1に記載のゴムクローラ。 【請求項4】 前記窪み部は、底部が前記ゴム体外周側に向かって円弧状に湾曲している請求項1に記載のゴムクローラ。 【請求項5】 前記ゴム体内周面に形成された車輪転動面の前記ゴム体幅方向外側端部の前記ゴム体外周側にメインコードが埋設されている、請求項1、請求項3、請求項4の何れか1項に記載のゴムクローラ。 【請求項6】 前記ゴム体外周面にはラグが形成され、前記ラグは前記ゴム体外周側から見て一部が前記ゴム突起に重なる、請求項1、請求項3~請求項5の何れか1項に記載のゴムクローラ。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1~6に係る特許に対して平成29年1月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 [取消理由] 本件特許の請求項1~6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布されたないし電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 引用文献 (1)国際公開第2008/096749号 (以下、「引用文献1」ともいう。) (2)特開2008-189142号公報 (以下、「引用文献2」ともいう。) (3)特開平9-207840号公報 (以下、「引用文献3」ともいう。) なお、特許異議申立人は、平成28年10月6日付けの特許異議申立書に甲第1~9号証(以下、それぞれ「甲1~9」という。)を添付して提出しているところ、上記の引用文献1、2及び3は、それぞれ、甲8、6及び9である。 3 当審の判断 3-1 取消理由(特許法第29条第2項)について (1)引用文献に記載された事項及び発明 (1-1)引用文献1に記載された事項及び発明 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図1~10とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同様。)。 (1a) 「                請求の範囲 [1] 無限軌道を構成する無端帯状のゴム弾性体と、 前記ゴム弾性体の内周面から周方向に沿って等間隔で突設された複   数の突起部と、 前記突起部の根元に位置し、転輪が従動する転輪通過面に形成され   た溝部と、 を有することを特徴とするゴムクローラ。」 (1b) 「[0007] この突起部の根元に位置する転輪通過面に溝部を形成する。これにより、ゴム弾性体に転輪等を巻き掛けるときに突起部の根元に生じる引張り歪み或いは圧縮歪みを緩和させることができる。また、ゴムクローラが蛇行した場合においても、転輪が突起部の根元に接触しないため、横応力に起因する転輪からの突起部への横方向の圧力で突起部の根元に生じる引張り歪みを緩和することができる。また、突起部の根元へ土砂が侵入した場合でも、該溝部が土砂の逃げ溝として機能するため、突起部の根元への損傷を防止することができる。 [0008] また、本発明は、前記溝部は前記転輪通過面に連続して設けられたことを特徴とする。 上記の態様では、転輪通過面に連続して溝部を設けることで、突起部の根元のみに溝部を形成した場合と比較して、より効果的である。」 (1c) 「[0026] ブルドーザー等に使用される、スプロケット及び複数の転輪で構成される無限軌道駆動装置には、図1に示すようなゴム弾性体で形成されたクローラ10が装着されている。このクローラ10は、軌道上において均一な強度特性を発揮させるため、補強コード12を埋設した無端状としている。 [0027] ここで、補強コード12は、クローラ10の内周面側に位置しクローラ10の周方向に沿って複数のコード16Aを配列して形成されたメインコード層16を有している。メインコード層16の上部には、クローラ10の周方向に対して所定のバイアス角度で傾斜した複数のコード18Aを配列して形成された第1バイアスコード層18が設けられている。」 (1d) 「[0030] 一方、クローラ10の外周面には、クローラ10の幅方向に対して所定の角度を有する四角錐台状のラグ10Aが、クローラ10の幅方向の端部から中央部まで延出して設けられている。このラグ10Aはクローラ10の幅方向の左右で互い違いとなるように配置され、クローラ10の外周面の全域に渡って形成されている。このラグ10Aによって、機体の重量が支えられ、クローラ10の幅方向において推進力をもたらしている。」 (1e) 「[0031] ところで、クローラ10の内周面には、四角錐台状を成す複数の駆動突起(突起部)24が、クローラ10の周方向に沿って等間隔に設けられており、駆動突起24の根元には、クローラ10の周方向の全周に渡って、図2に示すように、幅(W)及び深さ(H)が10mmの溝部26が形成されている。」 (1f) 「[0032] また、駆動突起24には図示しないスプロケットが係合しており、駆動力を伝達することでクローラ10が走行する。そして、図1及び図3に示すように、クローラ10の内側には、駆動突起24を跨ぐようにして形成された転輪14が設けられており、スプロケットに従動して、通過する該駆動突起24を案内し、クローラ10が外れないようにしている。 [0033] 転輪14には互いに略対面する一対のガイド面14Aが設けられており、該ガイド面14Aが、クローラ10の周方向に沿った、駆動突起24の側面24Aと略対面するようになっている。そして、このガイド面14Aに略直交して転動面14Bが設けられ、該転動面14Bがクローラ10の内周面と当接するようになっている。 [0034] ここで、図3に示すように、転輪14のガイド面14A間の距離は、駆動突起24の側面24A間の距離よりも若干広くなっており、クローラ10が直線走行しているとき、転輪14のガイド面14Aが駆動突起24の側面24Aに当らないようにして、駆動突起24に横応力が作用しないようにしている。 [0035] 一方、クローラ10の蛇行等により、転輪14に対する駆動突起24の位置がズレた場合、図4に示すように、駆動突起24の一方の側面24Aが転輪14のガイド面14Aに当接することとなるが、駆動突起24の根元には溝部26が形成されているため、ガイド面14Aと転動面14Bとの間を繋ぐR部14Cが駆動突起24の根元と接触することはない。」 (1g) 「[0036] つまり、駆動突起24の根元に、クローラ10の周方向に沿って溝部26を設けることで、クローラ10に転輪14等を巻き掛けるときに駆動突起24の根元に生じる引張り歪み或いは圧縮歪みを緩和させることができる。 (1h) [0037] また、クローラ10が蛇行した場合においても、転輪14が駆動突起24の根元に接触しないため、横応力に起因する転輪14からの駆動突起24への横方向の圧力で駆動突起24の根元に生じる引張り歪みを緩和することができる。 さらに、図5に示すように、駆動突起24の根元へ土砂27が侵入した場合でも、該溝部26が土砂27の逃げ溝として機能するため、駆動突起24の根元への損傷を防止することができる。」 (1i) 「[0040] また、ここでは、クローラ10の周方向に沿った、駆動突起24の側面24Aの根元に溝部26を形成したが、クローラ10の幅方向に沿った駆動突起24の側面24B(図1参照)側の根元にもさらに溝部(図示省略)を形成しても良い。」 イ 引用文献1に記載された発明 (ア) 上記ア(1a)及び(1g)から、「クローラ10」の「無端帯状のゴム弾性体」は、「転輪14等」に「巻き掛け」られていることが、明らかである(図1からも、看取できる。)。 (イ) 上記ア(1a)及び(1b)の「突起部」、「転輪」、「溝部」及び「ゴムクローラ」は、それぞれ、実施例(上記ア(1c)~(1i)及び図1~7)の「駆動突起24」、「転輪14」、「溝部26」及び「ゴムクローラ10」を意味している。 (ウ) 図3から、溝部26が駆動突起24を挟んで位置していることが看取できる。 (エ) 上記(ア)~(ウ)、並びに、上記ア(1a)~(1i)及び図1~7の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「転輪14等に巻き掛けられる、無限軌道を構成する無端帯状のゴム弾性体と、 ゴム弾性体の内周面から周方向に沿って等間隔で突設された複数の駆動突起24と、 幅方向に沿った駆動突起24の側面24B側の根元に形成された溝部と、 駆動突起24を挟んで駆動突起24の側面24Aの根元に位置し、転輪14が従動する転輪通過面に周方向の全周に渡って形成された溝部26と、 を有し、 駆動突起24には、スプロケットが係合しており、駆動突起24を跨ぐようにして形成された転輪14が設けられておりスプロケットに従動して通過する該駆動突起24を案内し、転輪14に対する駆動突起24の位置がズレた場合、駆動突起24の一方の側面24Aが転輪14のガイド面14Aに当接することとなり、クローラ10が外れないようにし、 内周面側に位置し周方向に沿って複数のコード16Aを配列して形成されたメインコード層16を有し、 外周面には、幅方向に対して所定の角度を有する四角錐台状のラグ10Aが、幅方向の端部から中央部まで延出して設けられ、幅方向の左右で互い違いとなるように配置され、外周面の全域に渡って形成されている、 ゴムクローラ10。」 (1-2)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0008】 ここで、ゴム弾性体の周方向に沿って隣り合う突起の根元部に渡って第1窪み部を形成している。これにより、ゴム弾性体をスプロケット等に巻掛ける際に発生するゴム弾性体の屈曲時の、突起の根元部に生じる圧縮歪み等を緩和することができる。」 (2b) 「【0027】 ところで、図2に示すように、クローラ10の周方向に沿って隣り合う突起16の根元部に渡って、窪み部(第1窪み部)30を形成し、また、クローラ10の周方向に沿って隣り合うガイド突起18の根元部に渡って、窪み部(第2窪み部)34を形成している。 そして、ガイド突起18の転輪26の通過面28の反対側の根元部には、クローラ10の周方向に沿って溝部36を形成している。」 (2c) 「【0028】 クローラ10をスプロケット24、転輪26(図1参照)等に巻掛ける際、突起16及びガイド突起18の根元部には圧縮歪み或いは引張歪みが生じるが、突起16或いはガイド突起18の根元部に窪み部30、34を設けることで、これらの歪みを緩和することができる。 ・・・ 【0030】 また、ガイド突起18の転輪26の通過面28の反対側の根元部に、クローラ10の周方向に沿って溝部36を設けることで、ガイド突起18の根元部に生じる歪みを緩和以外に、クローラ10の外周面に設けたラグ12(図1参照)が短い場合に発生する、ラグ12部分の外周方向の引張りで生じる引張り歪みを緩和することができる。」 (2d) 「【0034】 一方、図5に示すように、ガイド突起18間の根元部に設けた窪み部34において、該窪み部34の深さをdを1/3t以上とすることで、d=0にした場合と比較して、圧縮歪みを25%低減させることができる。 【0035】 さらに、ガイド突起18の突起幅をeとし、窪み部34の開口幅W3を0.2e以上として、転輪26の通過面28の反対側に設けた溝部36の開口幅W4を0.35e以上とすることで、圧縮歪みの低減率を30%に上げることができる。」 (1-3)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (3a) 「【0002】 【従来の技術】従来より、ゴムクロ-ラの内周面に一定ピッチをもって突起を形成し、この突起をスプロケットと係合してなる突起駆動型ゴムクロ-ラは存在する。図10はこのゴムクロ-ラの側面図であり、図11はその幅方向の断面図である。図中、符号11はゴムクロ-ラ、12はこのゴムクロ-ラの基体となる無端状ゴム弾性体、13はその長手方向に埋設された抗張体としてのスチ-ルコ-ド、14は無端状ゴム弾性体1の内周面の中央に一定ピッチをもって形成した突起、15はこの外周面に形成したゴムラグである。」 (3b) 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、転輪等とゴムクロ-ラとの間の脱転の発生を防止することを目的とするものであり、特に突起と突起との間にあっても転輪等の横ずれを防止し、しかもゴムクロ-ラがスプロケットやアイドラ-に巻き掛けする際の屈曲抵抗を低減したゴムクロ-ラを提供するものである。 ・・・ 【0007】本発明において、ゴムクロ-ラの内周面に連続する台部の存在は巻き掛けの際の屈曲抵抗を増加することとなるが、この対策として突起と突起の間における台部にゴムクロ-ラの幅方向に向けて溝部を形成し、台部を形成するゴムの圧縮歪をこの溝部によって逃がすことによって屈曲抵抗を低減するものである。この溝部は好ましくは突起の基底部に備えられるのがよい。」 (3c) 「【0009】 【実施例】以下、本発明のゴムクロ-ラを図面をもって更に詳細に説明する。図1は本発明のゴムクロ-ラの内周側平面図、図2は外周側平面図、図3はその側面図である。そして図4は図1のA-A線での断面図であり、図5はB-B線での断面図である。図中、符号1はゴムクロ-ラ、2はゴムクロ-ラの基体となるゴム弾性体、3はその内周面の中央で長手方向に連続的に形成された台部であり、4はその台部3上に一定ピッチをもって形成された突起である。又、5はゴム弾性体の外周面に幅方向にZ字状に形成したゴムラグである。 【0010】図例にあっては台部3上の突起4の基底部に溝部6を形成したものである。そして7はスプロケットを示すものであり、突起4と係合してゴムクロ-ラ1に駆動力を伝達すると共に、そのスプロケット7の両端70 が台部3を跨いでゴム弾性体2の内周面に接触するものである。図示しない転輪も同様である。そして抗張体としてのスチ-ルコ-ド8は、ゴム弾性体2の長手方向に沿って埋設され、その埋設の幅W0 は台部3の幅W1 より大きくするものであり、この幅W0 を大きくすれば、それだけゴムクロ-ラ1の捩れ等を阻止する力となる。 【0011】転輪、アイドラ、スプロケットとゴムクロ-ラ1との脱輪の発生にあって、本発明においては、従来の構造によるゴムクロ-ラの突起との係合だけでなく、連続する台部3との係合も行われるため、特に突起4のない部位でも脱輪防止機能をもたらすものである。 【0012】そしてこの台部3の存在はゴムクロ-ラ1がアイドラ-やスプロケットに巻き掛けされる際に生じる屈曲抵抗を大きくするが、この対策として台部3に溝部6を形成することによって屈曲抵抗を低減させたものである。即ち、溝部6は台部3の圧縮歪の吸収緩和に役立つこととなる。」 (3d) 「【0013】図6~図9は本発明のゴムクロ-ラ1の溝部5の配置例を示すものであり、図6は突起4の左右の基底部に溝部6、6及び突起4、4間に溝部60 を形成したものである。この図例における溝部6、60 はいずれも略同一断面形状をもつものである。 【0014】図7にあっては、突起4の左右の基底部における溝部6、6は突起4、4間における溝部60 の断面形状より小さくしたものであり、図8はこの逆の形状をもつ溝部6、6、60 の例である。図9は突起4、4間にのみ溝部60 を形成した例である。このように、本発明において台部3に形成する溝部の形状は、ゴムクロ-ラの大きさや巻き掛け半径、更には突起の間隔やゴムクロ-ラの使用状況によって任意に選択されるものである。これら溝部6、60 はいずれも台部3にのみ形成されたもので、ゴム弾性体2の内周面に達しないのが好ましい。」 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明の「転輪14等」は、「無限軌道を構成する無端帯状のゴム弾性体」が「巻き掛けられる」ものであり、技術常識に照らして、複数の車輪を意味しているといえるから、引用発明の「転輪14等」は、本件発明1の「複数の車輪」に相当する。 (イ) 上記(ア)を踏まえると、引用発明の「転輪14等に巻き掛けられる、無限軌道を構成する無端帯状のゴム弾性体」は、本件発明1の「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体」に相当する。 (ウ) 引用発明は、「駆動突起24には、スプロケットが係合しており、駆動突起24を跨ぐようにして形成された転輪14が設けられておりスプロケットに従動して通過する該駆動突起24を案内し、転輪14に対する駆動突起24の位置がズレた場合、駆動突起24の一方の側面24Aが転輪14のガイド面14Aに当接することとなり、クローラ10が外れないようにし」ていること、及び、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「駆動突起24」は、「転輪14のガイド面14Aに当接する」こと、すなわち、「転輪14」の車輪と当接することで、車輪の幅方向への移動を制限しているといえる。 (エ) 上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明の「ゴム弾性体の内周面から周方向に沿って等間隔で突設された複数の駆動突起24」及び「駆動突起24には、スプロケットが係合しており、駆動突起24を跨ぐようにして形成された転輪14が設けられておりスプロケットに従動して通過する該駆動突起24を案内し、転輪14に対する駆動突起24の位置がズレた場合、駆動突起24の一方の側面24Aが転輪14のガイド面14Aに当接することとなり、クローラ10が外れないようにし」ている構成は、本件発明1の「前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起」に相当する。 (オ) 引用発明の「幅方向に沿った駆動突起24の側面24B側の根元に形成された溝部」は、上記(1)(1-1)ア(1g)及び(1i)を踏まえると、「溝部26」と同様の機能(歪みを緩和させる機能)の溝部であることが明らかであり、この溝部の窪み方の態様は、図2及び3に示す「転輪通過面に形成された溝部26」の窪み方の態様と同様の態様であるといえるから、ゴム弾性体の外周側に窪んでいるといえる。 (カ) 引用発明の「駆動突起24の側面24B側の根元」は、互いに隣り合う駆動突起24間に位置しているといえるから、引用発明の「幅方向に沿った駆動突起24の側面24B側の根元に形成された溝部」は、互いに隣り合う駆動突起24間に形成されているといえる。 (キ) 上記(オ)及び(カ)を踏まえると、引用発明の「幅方向に沿った駆動突起24の側面24B側の根元に形成された溝部」と、本件発明1の「ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部」とは、「ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部」の限りで共通する。 (ク) 引用発明の「無限軌道を構成する無端帯状のゴム弾性体」は、「転輪14等」に「巻き掛けられる」ものであり、その「転輪14が従動する転輪通過面」は、「無端帯状のゴム弾性体」の内側の面であり、ゴム体内周面であるといえるから、引用発明の「駆動突起24を挟んで駆動突起24の側面24Aの根元に位置し、転輪14が従動する転輪通過面に周方向の全周に渡って形成された溝部26」と、本件発明1の「前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝」とは、「前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延びる周方向溝」の限りで共通する。 (ケ) 引用発明の「ゴムクローラ10」は、本件発明1の「ゴムクローラ」に相当する。 以上から、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、 前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延びる周方向溝と、 を有するゴムクローラ。」 <相違点> 本件発明1は、「前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成さ」る「窪む窪み部と、」「前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、を有する」のに対して、引用発明は、窪み部及び周方向溝が、そのように特定されていない点。 イ 判断 以下、相違点について検討する。 (ア) 引用文献2(上記(1)(1-2)(2c))の「窪み部(第2窪み部)34」は、駆動輪と係合するゴム突起間に亘って形成される窪み部ではないから、その「窪み部34」に対する「溝部36」は駆動輪と直接関連するものではなく、本件発明1の周方向溝のような機能を備えているものとはいえない。 引用文献3(上記(1)(1-3)(3d))の「溝部6、6、60」「の形状は」、「任意に選択されるものである」が、駆動輪と係合するゴム突起間に亘って形成される窪み部まで想定しているものとはいえないし、引用文献3には、本件発明1の周方向溝に対応する構成は存在していない。 このように、上記相違点に係る本件発明1の構成が備える、窪み部と周方向溝との関係(特に、駆動輪と係合するゴム突起間に亘って形成される窪み部に対する、周方向溝の深さの関係)を特定する構成については、引用文献2~3に記載されていない。 (イ) したがって、引用発明に引用文献2~3に記載された技術事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明1の構成に至るものでもないから、本件発明1は、引用発明及び引用文献2~3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-2)本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を減縮した発明であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2-1)イで述べたとおり、引用発明及び引用文献2~3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 よって、本件発明1及び3~6は、引用発明及び引用文献2~3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由(特許異議申立理由の理由4、特許法第29条第2項)は解消した。 3-2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、理由1として、本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである旨、また、理由2として、本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された技術事項(周知技術)に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである旨主張するから、これらついて、以下、検討する。 甲1:特開2011-73651号公報 甲2:特開2008-201254号公報 甲3:特開平11-222169号公報 甲4:特開平11-79015号公報 (1)甲1~4に記載された事項及び発明 (1-1)甲1に記載された事項及び発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (1A) 「【0017】 このゴムクローラ1はいわゆる内周駆動型のゴムクローラであり、外周面側に路面に作用するラグ2を有し、内周面側にはゴムクローラそれ自身に駆動力を伝達するための係合部が形成してある。この係合部は、ゴムクローラ1の周方向に一定のピッチをもって埋設した硬質の係合部材と、この係合部材の間毎に配置した凹部3とを含んでいる。 なお、説明の便宜上、ゴムクローラ1の回転方向を周方向(ゴムクローラ周方向)CD、これと直角な方向を幅方向(ゴムクローラ幅方向)RDと称して説明に用いる。 【0018】 ゴムクローラ1には、硬質の係合部材である複数の芯金5がこのゴムクローラの幅方向RDへの延在姿勢で、周方向CDに間隔をおいて所定ピッチで埋設されている。 芯金5の構造については後に詳述するが、図示のように中央部分の内周面側に、ゴムクローラ幅方向同一位置に一対の角部5a、5aが形成されている。すなわち、一対で二股状に形成した角部5a,5aがゴムクローラ1の内周面から内側(ゴムクローラ内周側)に向けて突出しており、これがゴムクローラと同じゴム材で覆われて突起部4となっている。」 (1B) 「【0019】 そして、芯金5の外側に配置してある層はスチールコード(図示せず)を含み、それぞれの芯金5を取り囲むように周方向CDへエンドレス(無端ベルト状)に延在する補強層 である。 スチールコードはゴムクローラ1内に埋設される抗張部材で、ゴムクローラ1の周方向CDへの伸びを規制しつつ、スプロケット100から受ける駆動力に基づいてゴムクローラ1がスムーズに回転するように補助する。 【0020】 また、ゴムクローラ1の内周面には、スプロケット100の歯部101を受け入れる複数の凹部3が形成してある。この凹部3は、前述したような標準的な内周面に対し、ゴムクローラ1の内周面を接地面側(外側)にへこませた形状であり、スプロケット100の歯部101の入り込みを許容するように形成されている。」 (1C) 「【0022】 また、転輪(図示せず)は、荷重を支持しつつゴムクローラ1をガイドして安定駆動するために配備される荷重支持輪で、駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラ(図示せず)との間に必要に応じて配される。」 (1D) 「【0023】 図2は、ゴムクローラ1とスプロケット100との係合部分を拡大して示した部分断面図である。また、図3はゴムクローラ1の内周面側の展開平面図である。これらの図を参照してゴムクローラ1の構造を更に詳細に説明する。 【0024】 前記芯金5の基部はその平面形状が大略で長方形であって、その長手方向を幅方向RDに延在させてゴムクローラ1内に埋設されている。そして、芯金5の中央部分には前述した一対の角部5a、5aが相互の離隔状態で形成されている。 この芯金5の角部5aは、幅方向RDの寸法よりも周方向CDの寸法の方が大きい、周方向に長尺の形状をなし、一対の角部5a、5a間でスプロケット100や前述した転輪を円滑にガイドできるように構成してある。 【0025】 上記一対の角部5a、5aの間隔は、スプロケット100がスムーズに回転できる間隔を確保するようにして設定されている。ただし、金属などの硬質材で形成されている芯金5の角部5aはゴムクローラと同じゴム素材で覆われ、外観においてはゴム状の突起部4となる。よって、2つの突起部4の間をスプロケット100がガイドされながら回転する形態となる。 したがって、上記一対の角部5a相互の間隔は被覆するゴムの厚みを見込んだ分だけ大きく設定してある。」 (1E) 「【0026】 さて、ゴムクローラ1は、図2で明示されているように、スプロケット100の歯部101と係合して駆動力を受ける係合部が、硬質の係合部材となる芯金5とその間毎に配置した凹部3とを含んで構成されている。 【0027】 より詳細には、芯金5が周方向CDにおいて等ピッチに配設されて、その間毎(ごと)に凹部3がスプロケットの歯部を受け入れるように、これも等ピッチで二点鎖線状に配置されている。この凹部3は、ゴムクローラ1の標準的な内周面10を窪ませたように形成されている。 そして、凹部3は幅方向RDにおける中央位置で周方向CDへ等ピッチとして配置されている。 【0028】 上記の構造ではスプロケット100からゴムクローラ1へ伝達される駆動力は、スプロケット100の歯部101が、内周面に設けた凹部3に進入して、凹部3の壁面に係合(当接)したときに伝達される。 すなわち、ゴムクローラ1の内周面に一定ピッチで配置してあるそれぞれの凹部3に、回転するスプロケット100の歯部101が順に進入する動作を繰り返すことで凹部3の壁面を順に押圧してゴムクローラ1を回転させる。」 (1F) 「【0029】 ここで説明した図2の構造は、前述したように一定のピッチをもって埋設されている芯金5の間毎に、凹部3が配置されている。換言すると、この構造は周方向CDで凹部3の前後に芯金5が位置しているので、凹部3はその前後を位置決めされている。そして、凹部3の背部が硬質の芯金5で支持されているような強固な構造となる。したがって、スプロケット100の歯部101を、凹部3の変形下で、間接的に芯金5に係合させて駆動力を確実に伝達できる。 【0030】 また、本実施形態に係るゴムクローラ1では標準的な内周面10の位置から外周面側へ窪ませるように形成した凹部3に、スプロケット100の歯部101を係合させる。従って、歯部101の係合による結合部の損傷を確実に抑制できる。 よって、ゴムクローラ1の耐久性が大幅に向上している。 【0031】 また、このように標準的な内周面10より外周面側へ窪ませた凹部3を設けると、スプロケット100の歯部101が係合する係合位置(駆動伝達点)が下がることによりスチールコード(図示せず)からこの係合位置までの距離が短くなるので、駆動力の伝達効率の良いゴムクローラとすることができる。」 (1G) 「【0039】 以下、このゴムクローラ1に噛み合うスプロケット100の構造例について説明する。 図1、図4、図5に示すように、スプロケットは、ゴムクローラ1の内周面に形成した凹部3内に進入可能な歯部101を備える構造であることが求められる。よって、図1、図2で示すように、歯部101がスプロケットの本体となる円形基部部分より径方向外方へ突出する構造とすればよい。歯部101の形状については特に限定するものではなく、凹部3に進入したときに接触面積を広く確保して面圧を低減できるものが望ましい。 【0040】 スプロケット100には、ゴムクローラ1の突起部4のゴムクローラ幅方向位置を規定する規制部30が形成されている。この規制部30は、隣り合う歯部101同士の間に形成されている。また、規制部30は、スプロケット100の両サイド側に形成されている。 規制部30の表面形状は、ゴムクローラ1とスプロケット100とのゴムクローラ幅方向の相対位置のずれが許容範囲に到達したときにゴムクローラ1の突起部4の内壁面形状に接触するようにスプロケット厚み方向RDに張り出した形状とされている。この接触は点接触でもよいが面接触であることが好ましい。 【0041】 図4(A)及び(B)に示すように、歯部101のスプロケット厚み方向中央位置CTと、ゴムクローラ1の幅方向中央位置CGとが一致しているときにおいて、スプロケット厚み方向の一方側で、規制部30のスプロケット厚み方向外側30Eと突起部4のゴムクローラ幅方向内側4Eとのゴムクローラ幅方向距離L1が、歯部101のスプロケット厚み方向外側101Eと凹部3のゴムクローラ幅方向内側3Eとのゴムクローラ幅方向距離L2よりも小さいことが好ましい。スプロケット厚み方向の他方側でも同様である。これにより、図5に示すように、凹部3のゴムクローラ幅方向外側に形成されている隆起表面20にスプロケット100の歯部101が乗り上げることが、確実に防止される。」 (1H) 「【0043】 また、歯部101が凹部3内に進入したときに、その上側の一部が突起部4の基部(突出している部分の根元付近)4BSに当接する。従って、凹部3を浅めに形成することができるので、ゴムクローラ1の内周面の加工を容易化できる。なお、この場合、歯部101は突起部4の基部に係合し、突起部4を倒すような力が作用しないので前述した従来の問題は殆ど生じない。」 イ 甲1に記載された発明 (ア) 技術常識に鑑みると、甲1のゴムクローラ1は、駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラとに巻き掛けられるゴムクローラ1であるといえる。 (イ) 図4~5において「凹部3のゴムクローラ幅方向内側3E」の示す箇所を参照すると、幅方向において凹部3がゴム状突起部4と重なっているといえること、及び、図1~5の図示内容を総合すると、凹部3は、ゴム状突起部4間に亘って形成されているといえる。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)、並びに、上記ア(1A)~(1H)及び図1~5の記載から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラとに巻き掛けられるゴムクローラ1であって、 ゴムクローラ1には、係合部材である複数の芯金5がこのゴムクローラの幅方向RDへの延在姿勢で、周方向CDに間隔をおいて所定ピッチで埋設され、芯金5の、中央部分の内周面側に、ゴムクローラ幅方向同一位置に、一対で二股状に形成した角部5a,5aがゴムクローラ1の内周面からゴムクローラ内周側に向けて突出しており、これがゴムクローラと同じゴム材で覆われてゴム状突起部4となっており、 芯金5が周方向CDにおいて等ピッチに配設されて、その間毎に凹部3がスプロケットの歯部を受け入れるように、等ピッチで配置され、この凹部3は、ゴムクローラ1の内周面10を接地面側(外側)に窪ませたように形成され、ゴム状突起部4間に亘って形成され、 スプロケット100からゴムクローラ1へ伝達される駆動力は、スプロケット100の歯部101が、内周面に設けた凹部3に進入して、凹部3の壁面に当接したときに伝達され、歯部101が凹部3内に進入したときに、その上側の一部がゴム状突起部4の基部4BSに当接し、 スプロケット100には、ゴムクローラ1のゴム状突起部4のゴムクローラ幅方向位置を規定する規制部30が形成され、規制部30の表面形状は、ゴムクローラ1とスプロケット100とのゴムクローラ幅方向の相対位置のずれが許容範囲に到達したときにゴムクローラ1のゴム状突起部4の内壁面形状に接触するようにスプロケット厚み方向RDに張り出した形状とされている、 ゴムクローラ1。」 (1-2)甲2に記載された事項 甲2には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (2A) 「【0022】 図1に示すように、ゴムクローラ100は、機体に備えられたスプロケット300及びアイドラー(図示略)に巻きかけられている。ゴムクローラ100は、周方向に沿って所定の間隔を持って貫通孔320が中央部分に設けられている。そして、スプロケット300が貫通孔320に係合して駆動力が伝達される。更に機体に備えられた転輪302がゴムクロ-ラ100の内周面に設けられた転輪通過面110、111を走行する。 【0023】 ゴムクローラ100は、無端帯状のゴム弾性体102を有している。ゴム弾性体102の外周面には、周方向に対して一定のラグ傾斜角度を持ったゴムラグ104が、周方向に所定の間隔を持って形成されている。 【0024】 また、ゴム弾性体102の中には、周方向にスチールコード106A、Bが埋設されている。ゴム弾性体102のスチールコード106A,Bの内周側には、周方向に間隔を持って一定ピッチで芯金10が埋設されている。 【0025】 図2に示すように、芯金10の幅方向中央部12の幅方向両端部には、内周面側に突出するガイド突起部32、33が形成されている。更に芯金10は幅方向中央部12から幅方向両外側に張り出した略水平の一対の翼部22、23が形成されている。また、ガイド突起部32、33と翼部22、23と境界部分は、滑らかな曲線となったR形状部54、55が形成されている。なお、ガイド突起部32とガイド突起部32との間は、スプロケット300(図1参照)が通過するスプロケット係合部15である。」 (2B) 「【0026】 図1と図2とに示すように、ゴム弾性体102の内周面におけるガイド突起部32、33の幅方向両外側、すなわち、ガイド突起部32、33の根元部分には、周方向を溝方向とする溝部40、41が形成されている。そして、この溝部40、41の幅方向両外側に、前述した転輪通過面110、111が形成されている。なお、翼部32、33の内周側が転輪通過面110、111となる。」 (2C) 「【0032】 次に、本実施形態の作用について説明する。 【0033】 ゴムクローラ100は、ガイド突起32、33の根元部分に溝40、41が設けられている。そして、転輪302の接地部302Aの幅方向の幅は、転輪通過面110、111よりも幅狭である。よって、転輪通過面110、111の面圧が高くならない。更に、溝部40、41が捌け口となって土砂800(図8参照)などが排出される。このため、転輪通過面110、111への土砂等の噛み込みや表面破壊などによる虫食いが防止される。 【0034】 更に、溝部40、41よって幅方向の歪みが逃がされる(吸収される)。したがって、特に、ガイド突起部32、33の根元部分を発端とする圧壊が防止されると共に、ここを発端する虫食いが防止される。 【0035】 また、溝部40、41の深さH(図3参照)はゴム厚Lの1/2以上、1未満となっている。つまり、溝部40、41は十分に深く形成されている。よって、溝部40、41を捌け口として、十分に土砂800(図8参照)等が排出されると共に、幅方向の歪みが十分に逃がされる(吸収される)。」 (1-3)甲3に記載された事項 甲3には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (3A) 「【0012】 【実施例】以下、本発明を実施例をもって更に詳細に説明する。図1は本発明のゴムクロ-ラの内周側平面図、図2は外周側平面図、図3は右側面図である。図中、符号20はゴムクロ-ラであり、これは無端状のゴム弾性体21を基体とし、芯金10の翼部11がここに埋設され、これらを外囲いしてスチ-ルコ-ド22が共に埋設されている。そして芯金10の角部12に対してはその前後面にゴム弾性体21と一体としたゴム部材23がこれを覆って形成されたものであり、この角部12とゴム部材23とによって駆動突起24が形成されている。 【0013】芯金10について更に言えば、角部12は一対形成され、この角部12の芯金左右幅方向の幅は前後方向の幅よりも大きく構成され、しかも前者の幅は駆動突起24の左右方向の幅と略同一とされている。尚、角部12、12間の中央部13の厚さはスプロケットが係合しないために翼部11とやや厚い程度である。 (3B) 「【0015】図4はA-A線での断面図、図5はB-B線での部分断面図、図6はC-C線での断面図である。この図例でも分かるように、芯金10の中央部13はゴムクロ-ラの内周面と略同一平面とされ、この部位に連なるゴム部30にはその界面に凹部として凹溝26が形成されるが、これは前記したように下モ-ルド1に一対の突条を備えることによって形成されたものである。尚、凹部26の形状は凹溝に限定されることはなく、例えば下モ-ルドに一つ或いは複数の突起を備えておくことによってこれに対応した凹部が形成されるものである。凹溝26を構成したゴム部30は芯金10の中央部13よりやや内周側に背丈を高くしておくのがよい。 ・・・ 【0017】しかるに、本発明のゴムクロ-ラは、芯金10の中央部13の幅方向縁部にそって凹溝26が形成されることから、スプロケットやアイドラ-は中央部13から芯金10の存在しないゴム部30に移動する際、及びゴム部30から芯金10の中央部13へ乗り上げる際に、特にゴム部30に集中する歪みをこの凹溝26にて吸収しかつ歪みを分散することとなり、ゴム部30への亀裂が低減され、両者の界面剥離を生ずることなく走行することができることとなったものである。そして、機体重量に基づくゴム部30の沈み込みに対してかかるゴム部30を内周側に背丈を高くすることによってスプロケットやアイドラ-の転動をスム-ズになし、オペレ-タ-に対する振動の低減をももたらすものである。」 (1-4)甲4に記載された事項 甲4には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (4A) 「【0012】さて、本発明のゴムクロ-ラは上記した芯金をその長手方向に一定ピッチをもって横並べしてゴム中に埋設されたものであり、図4はゴムクロ-ラ1の内周側平面図、図5は外周側平面図、図6は側面図、図7はB-B線断面図、図8はC-C線断面図である。 【0013】図中、符号1はゴムクロ-ラであり、2は芯金10の翼部11を外囲いしてゴム中に埋設されたスチ-ルコ-ドである。そしてゴムクロ-ラの外周面に備えられたゴムラグ3、4は、芯金10の埋設部位に重なるようにして形成されたものであり、この例ではゴムクロ-ラ1の幅端縁に達する大ラグ3と、中央部にのみ存在する小ラグ4とが交互に配置され、大ラグ3の中央部5は切り欠かれた状態とされている。そしてゴムクロ-ラ1の耳部6はゴムクロ-ラ1の中央域よりも内周側に形成されたものであり、この間を偏曲部7にて結んだものである。即ち、かかる耳部6は図示するように偏曲部7によってゴムクロ-ラの内周側に配置され、断面皿型形状とされている。」 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア) 甲1発明の「ゴムクローラ1」は、「駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラとに巻き掛けられる」ものであって、無端状であることが明らかであるから、甲1発明の「駆動輪となるスプロケット100と従動輪となるアイドラとに巻き掛けられるゴムクローラ1」は、本件発明1の「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体」に相当する。 また、甲1発明の「ゴムクローラ1」は、本件発明1の「ゴムクローラ」に相当する。 (イ) 甲1発明の「ゴム状突起部4」は、「ゴムクローラの幅方向RDへの延在姿勢で、周方向CDに間隔をおいて所定ピッチで埋設され」た「係合部材である複数の」「芯金5の、中央部分の内周面側に、ゴムクローラ幅方向同一位置に、一対で二股状に形成した角部5a,5aがゴムクローラ1の内周面からゴムクローラ内周側に向けて突出しており、これがゴムクローラと同じゴム材で覆われ」るから、「芯金5の」「角部5a,5a」と同じ位置に設けられているものであり、上記(ア)を踏まえると、甲1発明の「ゴム状突起部4」は、前記ゴム体(ゴムクローラ1)内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出しているゴム状突起部4であるといえる。 (ウ) 甲1発明の「凹部3」は、「芯金5が周方向CDにおいて等ピッチに配設され」ることを前提として、「その間毎に」「スプロケットの歯部を受け入れるように、等ピッチで配置され」、「ゴムクローラ1の内周面10を接地面側(外側)に窪ませたように形成され、ゴム状突起部4間に亘って形成され」るものである。 したがって、甲1発明の「凹部3」は、「スプロケットの歯部を受け入れる」から、ゴム体(ゴムクローラ1)幅方向に沿って延びているといえるし(図1~5も参照)、「ゴムクローラ1の内周面10を接地面側(外側)に窪ませたように形成され」ているから、ゴム体(ゴムクローラ1)外周側に窪んでいるといえる。 さらに、甲1発明の「凹部3」は、「周方向CDにおいて等ピッチに配設されて」いる「芯金5」の角部5a,5aを覆う「ゴム状突起部4間に亘って形成され」ているから、上記(イ)をも踏まえると、ゴム体内周面の互いに隣り合うゴム突起間に亘って形成されているといえる。 したがって、甲1発明の「芯金5が周方向CDにおいて等ピッチに配設されて、その間毎に凹部3がスプロケットの歯部を受け入れるように、等ピッチで配置され、この凹部3は、ゴムクローラ1の内周面10を接地面側(外側)に窪ませたように形成され、ゴム状突起部4間に亘って形成され」ている構成の「凹部3」は、本件発明1の「前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部」に相当する。 (エ) 甲1発明において、「スプロケット100からゴムクローラ1へ伝達される駆動力は、スプロケット100の歯部101が、内周面に設けた凹部3に進入して、凹部3の壁面に当接したときに伝達され、歯部101が凹部3内に進入したときに、その上側の一部がゴム状突起部4の基部4BSに当接」するから、「ゴム状突起部4」は、「駆動輪となる」「スプロケット100の歯部101」と当接するものであり、甲1発明の「ゴム状突起部4」は、車輪のうちの駆動輪と係合するゴム状突起部4であるといえる。 (オ) 甲1発明は、「スプロケット100には、ゴムクローラ1のゴム状突起部4のゴムクローラ幅方向位置を規定する規制部30が形成され、規制部30の表面形状は、ゴムクローラ1とスプロケット100とのゴムクローラ幅方向の相対位置のずれが許容範囲に到達したときにゴムクローラ1のゴム状突起部4の内壁面形状に接触するようにスプロケット厚み方向RDに張り出した形状とされている」ことから、甲1発明の「ゴム状突起部4」が、駆動輪(スプロケット100)と当接して該駆動輪のゴム体(ゴムクローラ1)幅方向への移動を制限するゴム状突起部4をなすことは、技術的に明らかである。 (カ) 上記(イ)、(エ)及び(オ)から、甲1発明の「ゴム状突起部4」は、本件発明1の「前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起」に相当するといえる。 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点甲1> 「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、 前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 を有するゴムクローラ。」 <相違点甲1> 本件発明1は、 「前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝を有する」のに対して、 甲1発明は、そのように特定されていない点。 イ 判断 以下、相違点甲1について検討する。 (ア) 甲1においては、図1~5等を参照しても、周方向溝(本件発明1の周方向溝と同様の機能を備える溝)自体が存在するのか否かも定かではなく、甲1発明では、上記相違点甲1に係る本件発明1の構成が備える、窪み部と周方向溝との関係(特に、駆動輪と係合するゴム突起間に亘って形成される窪み部に対する、周方向溝の深さの関係)を特定することはできない。 また、上記相違点甲1に係る本件発明1の構成は、甲2~4に記載されていない(甲2には「貫通孔320」及び「溝部40、41」(上記(1)(1-2))が、甲3には「凹溝26」(上記(1)(1-3))が、甲4には「中央部5」(上記(1)(1-4))が、それぞれ記載されているにすぎない。)。 (イ) したがって、甲1発明に甲2~4に記載された技術事項を適用しても、相違点甲1に係る本件発明1の構成に至るものでもないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-2)本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を減縮した発明であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2-1)イで述べたとおり、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び甲2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)小括 以上から、本件発明1、3~4及び6は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し特許を受けることができないとはいえないから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の理由1(特許法第29条第1項第3号)は、理由がない。 また、本件発明1及び3~6は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の理由2(特許法第29条第2項)は、理由がない。 3-3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の理由3(特許法第29条第2項)について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、理由3として、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲5に記載された発明及び甲6~7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである旨主張するから、これについて、以下、検討する。 甲5:実願昭53-165472号(実開昭55-81475号) のマイクロフィルム 甲6:特開2008-189142号公報 甲7:特開2006-62391号公報 (1)甲5~7に記載された事項及び発明 (1-1)甲5に記載された事項及び発明 ア 甲5に記載された事項 甲5には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (5A) 「図において、1はクローラの走行装置で、3は駆動軸5に固着して回転する駆動輪、7は遊動輪、9は従動輪を示す。11は駆動輪3,遊動輪7,従動輪9にかけまわされて回転するゴム材質の履帯である。13,13は履帯本体15の上部に突出して設けた突出部であり、その上面を遊動輪7の転動部が転動するよう構成されている。17は突出部13,13の間に設けられた係合孔で、前記駆動輪3の歯部19が係合して履帯11を駆動するものである。21,21は履帯本体15の下面に突出して設けられた接地ラグである。23,23は駆動輪3の両側のエツジ部を示し、25,25は前記駆動輪3の両側のエツジ部23,23が接し転動する位置において、前記履帯本体15の上面に、履帯11の全周にわたつて突出させて設けた突起郁である。」(明細書2頁3~18行) (5B) 「以上の構成において、駆動軸5の原動力は駆動輪3の歯部19から履帯11の係合孔11に伝達され、履帯11を回転駆動して走行を行う。履帯本体15の上面における、駆動輪3の両側のエツジ部23,23が接し転動する部分は、履帯11の全周にわたって設けた突起部25,25により、切損、磨滅が防止され、又前記突起部25,25により履帯11のたわみを防止することができるものである。」(明細書2頁19行~3頁7行) (5C) 「以上のように本考案は、履帯の全周にわたって、駆動輪の両側のエツジ部の接し転動する位置における履帯本体の上面に突起部を設けたことを特徴とする履帯であるから、駆動輪の両側のエツジ部との接触による履帯本体の欠損、摩滅が防止される。さらに本考案によれば、履帯のたわみを防止することができるほか、クローラの走行による振動の発生を軽減することができる。これは履帯本体に設けた突起部によって弾性が強化され、クッション効果が増大したことが大きく寄与しているものと考えられる。」(明細書3頁8~18行) イ 甲5に記載された発明 (ア) 甲5の「11は駆動輪3,遊動輪7,従動輪9にかけまわされて回転するゴム材質の履帯である。13,13は履帯本体15の上部に突出して設けた突出部であり、その上面を遊動輪7の転動部が転動するよう構成されている。17は突出部13,13の間に設けられた係合孔で、前記駆動輪3の歯部19が係合して履帯11を駆動するものである。」(上記ア(5A))という記載及び第2~4図を踏まえると、「突出部13,13の間に設けられた係合孔で、前記駆動輪3の歯部19が係合して履帯11を駆動する」場合には、技術的に、駆動輪3の歯部19が突出部13,13にも係合して履帯11を駆動すると理解すべきであり、また、突出部13,13によって駆動輪3の前記ゴム材質の履帯11幅方向への移動が制限されていること(特に第4図)が明らかであるといえる。 したがって、甲5の突出部13,13は、ゴム材質の履帯11内周面に該ゴム材質の履帯11周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム材質の履帯11内周側に突出し、駆動輪3と当接して駆動輪3の前記ゴム材質の履帯11幅方向への移動を制限すると共に前記駆動輪と係合する突出部13,13であるといえる。 (イ) 上記(ア)、並びに、上記ア(5A)~(5C)及び第1~4図の図示内容を参照し、本件発明1の発明特定事項に則って整理すると、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲5発明] 「駆動輪3,遊動輪7,従動輪9にかけまわされて回転するゴム材質の履帯11と、 前記ゴム材質の履帯11内周面に該ゴム材質の履帯11周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム材質の履帯11内周側に突出し、駆動輪3と当接して駆動輪3の前記ゴム材質の履帯11幅方向への移動を制限すると共に前記駆動輪と係合する突出部13,13と、 突出部13,13の間に設けられた係合孔17と、 を有するクローラ。」 (1-2)甲6に記載された事項 甲6(上記引用文献2)には、上記3-1(1)(1-2)のとおりの事項が記載されている。 (1-3)甲7に記載された事項 甲7には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (7A) 「【0015】 図6はゴムクロ-ラ20の構造を示すものであって、中央部にスチ-ルコ-ド列21が埋設され、外周側にゴムラグ22が、内周側の中央に一定のピッチをもってゴム突起23が形成されたものである。そして、内周側の輪体11、12の外表面11a、12aが接触・転動する面20a、20bの部位をTだけ厚く形成したものである。」 (7B) 「【0016】 図7はこの両者を噛み合わせた状態の図であり、この図にても分かるように内周面20a、20bの厚さTの分だけ(T=T0 )ピン13の位置を外側に配置することによって元の噛み合わせに戻ることとなったものであり、更に、T<T0 とすることにより噛み合わせがより深くなり、スチ-ルコ-ド列21に近づくこととなったものである。」 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比する。 (ア) 甲5発明の「駆動輪3,遊動輪7,従動輪9」は、本件発明1の「複数の車輪」に相当する。 (イ) 上記(ア)を踏まえると、甲5発明の「駆動輪3,遊動輪7,従動輪9にかけまわされて回転するゴム材質の履帯11」は、本件発明1の「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体」に相当する。 (ウ) 上記(ア)を踏まえると、甲5発明の「駆動輪3」は、本件発明1の「複数の車輪」のうちの1つの「車輪」、すなわち、「駆動輪」に相当する。 (エ) 甲5発明の「突出部13,13」は、「ゴム材質の履帯11内周側に突出し」ており、ゴム材質の履帯11の一部を構成するものであることが明らかであるから(第3図等)、ゴム材質であるといえること、及び、上記(ア)~(ウ)を踏まえると、甲5発明の「前記ゴム材質の履帯11内周面に該ゴム材質の履帯11周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム材質の履帯11内周側に突出し、駆動輪3と当接して駆動輪3の前記ゴム材質の履帯11幅方向への移動を制限すると共に前記駆動輪と係合する突出部13,13」は、本件発明1の「前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起」に相当する。 以上から、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点甲5> 「複数の車輪に巻き掛けられる無端状のゴム体と、 前記ゴム体内周面に該ゴム体周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記ゴム体内周側に突出し、前記車輪と当接して該車輪の前記ゴム体幅方向への移動を制限すると共に前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起と、 を有するゴムクローラ。」 <相違点甲5> 本件発明1は、 「前記ゴム体内周面の互いに隣り合う前記ゴム突起間に亘って形成され、前記ゴム体幅方向に沿って延び、前記ゴム体外周側に窪む窪み部と、 前記ゴム体内周面の前記ゴム突起を挟んで前記ゴム体幅方向両側に前記ゴム突起の根元に隣接して形成され、前記ゴム体周方向に延び、前記ゴム体周方向に互いに隣り合う前記窪み部の前記ゴム体幅方向の端部側同士を連結する、前記窪み部の深さよりも溝深さが浅い周方向溝と、 を有する」のに対して、 引用発明は、 「突出部13,13の間に設けられた係合孔17を有する」点。 イ 判断 以下、相違点甲5について検討する。 (ア) 甲5には、周方向溝自体が存在していない(突起部25が設けられているにすぎない。)。 そして、上記相違点甲5に係る本件発明1の構成が備える、窪み部と周方向溝との関係(特に、駆動輪と係合するゴム突起間に亘って形成される窪み部に対する、周方向溝の深さの関係)を特定する構成は、甲6~7(上記3-1(2)(2-1)イ(ア)の引用文献2についての記載、及び、上記(1)(1-3))には記載されていない。 (イ) したがって、甲5発明に甲6~7に記載された技術事項を適用しても、相違点甲5に係る本件発明1の構成に至るものでもないから、本件発明1は、甲5発明及び甲6~7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-2)本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を減縮した発明であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2-1)イで述べたとおり、甲5発明及び甲6~7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 以上から、本件発明1及び3~6は、甲5発明及び甲6~7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の理由3(特許法第29条第2項)は、理由がない。 3-4 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、平成29年5月26日付けの意見書において、請求項1において、「前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起」とした訂正に関して、「しかしながら、上記段落0027には、駆動輪として、一対の輪部と、当該一対の輪部の周縁部に架け渡されたピン部とを有する態様が開示されているに過ぎません。一方、訂正された本件発明1の駆動輪には、例えば、特許権者が提示した乙第1号証の図3、乙第2号証の図10及び乙第3号証の図5に開示されているような駆動輪を含むものであり、新たな技術的事項を導入するものであります。これは、たとえ駆動輪の態様として、乙第1号証ないし乙第3号証の態様が周知技術であったとしても、一対の輪部と、当該一対の輪部の周縁部に架け渡されたピン部とを有する駆動輪の周知技術として開示されているものではないことから、本件の出願当初の明細書等に記載された駆動輪を上位概念化するものであり、やはり新たな技術的事項を導入するものであります。」と主張している。 しかしながら、請求項1において、「前記車輪のうち駆動輪と係合するゴム突起」とした訂正は、ゴム突起が、駆動輪と係合する必要がなかったものを、駆動輪と係合するゴム突起とするものであり、特許請求の範囲の減縮に該当し(第2 2 2-1(1))、上位概念化して新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、上記主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び3~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項2に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700970

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