特許異議申立
2016-700896
液体ストレージ部分を有する電気加熱式喫煙システム
- 審判番号
- 2016-700896
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-055789
- 登録番号
- 特許第5889941号(P5889941)
- 請求日
- 2016年09月21日
- 審決日
- 2017年11月01日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【権利者代理人】西島 孝喜
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】大塚 文昭
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】上杉 浩
- 【権利者代理人】近藤 直樹
- 【権利者代理人】豊島 匠二
- 【異議申立人】大野 芙美
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 中村 則夫
- 審判官 莊司 英史
- 分類
- P1651.121-YAA(A24F) / P1651.537-YAA(A24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5889941号発明「液体ストレージ部分を有する電気加熱式喫煙システム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5889941号の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-12〕,〔13-17〕について訂正することを認める。
特許第5889941号の請求項1,7及び9~13に係る特許を維持する。
特許第5889941号の請求項2~6,8及び14~17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5889941号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は,平成28年2月26日付けでその特許権の設定登録がされた。
そして,平成28年9月21日に特許異議申立人大野芙美より(以下「申立人」という。)全請求項に対して特許異議の申立てがされ,その後の手続の経緯は次のとおりである。
平成28年11月18日付け 取消理由通知
平成29年 2月22日付け 意見書提出(特許権者),訂正請求書
同年 4月10日付け 意見書提出(申立人)
同年 4月26日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月28日付け 意見書(特許権者),訂正請求書
同年10月 5日付け 意見書(申立人)
なお,平成29年2月22日付け訂正請求書による訂正請求については,特許法第120条の5第7項の規定により,取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者が提出した平成29年8月28日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また,本件訂正請求書による訂正を以下「本件訂正」という。)における請求の趣旨は,本件特許の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであり,その内容は本件訂正請求書によれば,それぞれ次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】
電気加熱式喫煙システムであって,
シェル(101)と,
該シェルと係合するマウスピース(201)と,
を含み,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する毛細管芯(207)であって,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記毛細管芯(207)に少なくとも部分的に接触している,前記毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路(105)は,該少なくとも1つの加熱要素(209)に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とする電気加熱式喫煙システム。」
とあるのを,
「【請求項1】
電気加熱式喫煙システムであって,
シェル(101)と,
該シェルと係合する交換可能なマウスピース(201)と,
を含み,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造の毛細管芯(207)であって,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記毛細管芯(207)に少なくとも部分的に接触している,前記毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,前記液体ストレージ部分,前記少なくとも1つの加熱要素,及び前記毛細管芯は,前記マウスピースが交換される時に替えられるものであり,
前記少なくとも1つの加熱要素は,前記毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルを有し,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路(105)は,該少なくとも1つの加熱要素(209)に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記毛細管芯の第2の端部と前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の前記コイルと該コイルによって部分的に取り囲まれた前記毛細管芯の第2の端部の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とする電気加熱式喫煙システム。」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2~6及び8を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1乃至6のいずれかに記載」
とあるのを,
「請求項1に記載」
と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1乃至8のいずれかに記載」
とあるのを,
「請求項1又は7に記載」
と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10及び11に
「請求項1乃至9のいずれかに記載」
とあるのを,
「請求項1,7,9のいずれかに記載」
と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1乃至11のいずれかに記載」
とあるのを,
「請求項1,7,9,10,11のいずれかに記載」
と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に
「【請求項13】
シェル(101)と係合して電気加熱式喫煙システムを形成するマウスピース(201)であって,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路は,該少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記エーロゾル形成チャンバを通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とするマウスピース。」
とあるのを,
「【請求項13】
シェル(101)と係合して電気加熱式喫煙システムを形成する交換可能なマウスピース(201)であって,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造の毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,前記液体ストレージ部分,前記少なくとも1つの加熱要素,及び前記毛細管芯は,前記マウスピースが交換される時に替えられるものであり,
前記少なくとも1つの加熱要素は,前記毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルを有し,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路は,該少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記毛細管芯の第2の端部と前記エーロゾル形成チャンバを通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の前記コイルと該コイルによって部分的に取り囲まれた前記毛細管芯の第2の端部の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とするマウスピース。」
と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14~17を削除する。
2 訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項の有無及び一群の請求項について
(1)訂正事項1及び7について
訂正事項1及び7のうち,訂正前の請求項1及び13の「マウスピース」について,「交換可能な」ものであるという限定を付加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,これは,本件明細書の【0008】及び図3の記載に基いたものであることから,新規事項を追加するものではない。
訂正事項1及び7のうち,訂正前の請求項1及び13の「毛細管芯」について,「複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造」であるという限定を付加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,これは,本件明細書の【0019】の記載に基いたものであることから,新規事項を追加するものではない。
訂正事項1及び7のうち,訂正前の請求項1及び13に,「前記液体ストレージ部分,前記少なくとも1つの加熱要素,及び前記毛細管芯は,前記マウスピースが交換される時に替えられるものであり,」という新たな限定を付加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,これは,本件明細書の【0008】の記載に基いたものであることから,新規事項を追加するものではない。
訂正事項1及び7のうち,訂正前の請求項1及び13の「少なくとも1つの加熱要素」について,「前記少なくとも1つの加熱要素は,前記毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルを有し,」という新たな限定を付加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,これは,訂正前の請求項5や本件明細書の【0010】及び【0011】の記載に基いたものであることから,新規事項を追加するものではない。
訂正事項1及び7のうち,訂正前の請求項1及び13の「空気の流れルート」について,訂正前の「少なくとも1つの空気入口(115)から前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って」を,「少なくとも1つの空気入口(115)から前記毛細管芯の第2の端部と前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って」と経由箇所の限定を付加するとともに,その具体的な空気の流れについて,「該加熱要素(209)の前記コイルと該コイルによって部分的に取り囲まれた前記毛細管芯の第2の端部の周囲に該空気の流れを流す」という限定を付加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,これは,本件明細書の【0008】,【0021】及び図3の記載に基いたものであることから,新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2及び8について
訂正事項2は,訂正前の請求項2~6及び8を削除するものであり,訂正事項8は,訂正前の請求項14~17を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を変更し,又は拡張するものでもない。また,これらは,新規事項を追加するものではない。
(3)訂正事項3~6について
訂正事項3~6はいずれも,訂正事項2により訂正前の請求項2~6及び8が削除されたことに伴い,それと整合させるように,訂正前の請求項7において訂正前の請求項2~6を引用することを削除し,訂正前の請求項9,10及び11において訂正前の請求項2~6及び8を引用することを削除するものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を変更し,又は拡張するものではない。また,これらは,新規事項を追加するものではない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2~12は,請求項1を直接又は間接に引用するものであり,訂正前の請求項1~12は一群の請求項である。そして,訂正事項1~6は,訂正前の請求項1~12に係る事項を訂正するものであるから,一群の請求項に対して請求されたものである。
また,訂正前の請求項14~17は,請求項13を直接又は間接に引用するものであり,訂正前の請求項13~17は一群の請求項である。そして,訂正事項7及び8は,訂正前の請求項13~17に係る事項を訂正するものであるから,一群の請求項に対して請求されたものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求による上記訂正事項1~8は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-12〕,〔13-17〕について訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるから,請求項1~17に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。また,それらをまとめて「本件発明」という。)は,請求項1~17に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
電気加熱式喫煙システムであって,
シェル(101)と,
該シェルと係合する交換可能なマウスピース(201)と,
を含み,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造の毛細管芯(207)であって,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記毛細管芯(207)に少なくとも部分的に接触している,前記毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,前記液体ストレージ部分,前記少なくとも1つの加熱要素,及び前記毛細管芯は,前記マウスピースが交換される時に替えられるものであり,
前記少なくとも1つの加熱要素は,前記毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルを有し,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路(105)は,該少なくとも1つの加熱要素(209)に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記毛細管芯の第2の端部と前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の前記コイルと該コイルによって部分的に取り囲まれた前記毛細管芯の第2の端部の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とする電気加熱式喫煙システム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記電気回路(105)は,ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記少なくとも1つの空気入口(115)は,前記シェル(101)に存在することを特徴とする請求項1又は7に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項10】
前記液体ストレージ部分(203)は,補充不可能であることを特徴とする請求項1,7,9のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項11】
前記液体ストレージ部分(203)は,補充可能であることを特徴とする請求項1,7,9のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項12】
前記電気回路(105)は,ユーザが吸煙を開始するための手動操作スイッチを備えることを特徴とする請求項1,7,9,10,11のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項13】
シェル(101)と係合して電気加熱式喫煙システムを形成する交換可能なマウスピース(201)であって,
前記シェルは,電源(103)及び電気回路(105)を含み,
前記マウスピースは,
液体ストレージ部分(203)と,
少なくとも1つの加熱要素(209)と,
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造の毛細管芯(207)と,
空気出口(211)と,
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と,
を含み,前記液体ストレージ部分,前記少なくとも1つの加熱要素,及び前記毛細管芯は,前記マウスピースが交換される時に替えられるものであり,
前記少なくとも1つの加熱要素は,前記毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルを有し,
前記シェルとマウスピースが係合した時に,前記少なくとも1つの加熱要素(209)は,前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し,
該回路は,該少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され,
空気の流れルートが,少なくとも1つの空気入口(115)から前記毛細管芯の第2の端部と前記エーロゾル形成チャンバを通って前記空気出口(211)まで形成され,該流れルートは,該加熱要素(209)の前記コイルと該コイルによって部分的に取り囲まれた前記毛細管芯の第2の端部の周囲に該空気の流れを流す,
ことを特徴とするマウスピース。
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
(削除)」
第4 取消理由と当審の判断
1 取消理由の概要
本件特許に対し,平成28年11月18日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1-1
本件特許の請求項1~17に係る発明は,甲第1号証及び甲第2~12号証に示されるように,その優先日前日本国内または外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,上記請求項に係る特許は,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
(2)取消理由1-2
本件特許の請求項1~17に係る発明は,甲第8号証の1及び甲第1~7,9の1~12号証に示されるように,その優先日前日本国内または外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,上記請求項に係る特許は,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
<甲号証一覧>
甲第1号証 特開平11-89551号公報(以下「引用例1」という)
甲第2号証 米国特許第2057353号明細書(以下「引用例2という)及び訳文
甲第3号証 特許第3325028号公報(以下「引用例3」という)
甲第4号証 特開平3-277265号公報(以下「引用例4」という)
甲第5号証 特表2005-537918号公報(以下「引用例5」という)
甲第6号証 特開昭62-262981号公報(以下「引用例6」という)
甲第7号証 特開2008-35742号公報(以下「引用例7」という)
甲第8号証の1 国際公開第2007/131450号(以下「引用例8」という)
甲第8号証の2 特表2009-537120号公報(甲第8号証の1のパテントファミリ-文献)
甲第9号証の1 国際公開第2007/131449号(以下「引用例9」という)
甲第9号証の2 特表2009-537119号公報(甲第9号証の1のパテントファミリー文献)
甲第10号証 特表平8-511966号公報(以下「引用例10」という)
甲第11号証 新村出編,「広辞苑」,第6版,株式会社岩波書店発行,2008年1月11日,2626頁及び奥付(以下「引用例11」という。)
甲第12号証 見城尚志,高橋久著,「電子回路入門講座」,株式会社電波新聞社発行,2003年10月10日,138-139頁及び奥付(以下「引用例12」という。)
(3)取消理由2-1
請求項3及び15に記載される「自由端」が毛細管芯のどこを意味しているのか不明確であり,請求項3~12に係る発明及び請求項15~17に係る発明は明確でないから,上記請求項に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
(4)取消理由2-2
請求項8に記載される「所定の時間間隔」が電流パルスの何を意味しているのか不明確であり,請求項8~12に係る発明は明確でないから,上記請求項に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
2 取消理由1-1についての当審の判断
(1)本件発明1の進歩性について
ア 対比
引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「疑似喫煙を楽しむための香味発生装置100であって,
上部チャンバ121と下部チャンバ122とが,それぞれ別々のチャンバを構成し,下部チャンバ122は傾斜した上面を有し,その傾斜した上面に沿って全体として一端(下端)が閉じた円筒形状の上部チャンバ121が対応して傾斜して取り付けられており,
下部チャンバ122は,隔壁131により,制御回路46を収容する上部サブチャンバ122aと,電源44を収容する下部サブチャンバ122bに区画化されており,
上部チャンバ121には,
使用者の吸引動作を検出するためのセンサー52が設けられ,
円筒形状の吸口を有するマウスピース161が装着され,
液状香味発生源34を収容する交換可能な液体容器32が設けられ,
この液体容器32中の液状香味発生源34と流体連通して,液状香味発生源34のための液体流路371が設けられ,液体流路371は,その間に毛細管力が働くような間隙をもって離間して平行に配置されている2つの平行平板361および362の間に規定され,
液体流路371の先端部は,平板361および362に連設された2つの板状電気ヒーター421および422により加熱され,その後端部は,液体容器32の中に延び,
板状電気ヒーター421および422と吸口との間に流路が形成され,板状電気ヒーター421および422と電源44は,制御回路46により駆動制御され,
板状電気ヒーター421および422を強制的に始動させることができる,一般的な小型の押下式スイッチであるヒーター用スイッチ48を備え,
上部チャンバ121の閉塞端面に穿設された空気取込口18から吸引動作により取り込まれた空気を空気流通路104に沿って案内し,液体流路371の出口端において気化された香味発生源を包み込むようにして当該空気を吸口方向に流す,
疑似喫煙を楽しむための香味発生装置100。」
そして,引用発明1と本件発明1とを対比すると,両者は少なくとも次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1では,毛細管芯は,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造であって,少なくとも1つの加熱要素は,毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルであるのに対して,引用発明1では,液体流路は,対向する平行平板で規定され,ヒーターは,液体流路の先端部の,対向する平行平板に連設された2つの板状電気ヒーターである点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
上記相違点1に関連して,引用例1には次の記載がある。
(1a)「【0011】本発明において,毛細管力により液状香味発生源が輸送されるところの液体流路は,少なくとも1つの毛細管の内部により,少なくとも2つの平行平板間の間隙により,または少なくとも1つの囲いの内部に充填された連通空隙構造体により構成することができる。連通空隙構造は,空隙を有し,その空隙を通って液体が毛細管力により液体容器に収容された液状香味発生源と流体連通する流路の入口端から流路の出口端まで上昇し得る構造をいい,その代表的な例は連続気泡発泡構造,繊維の集束構造等であるが,これらに限定されるものではない。」
(1b)「【0064】図14は,本発明の香味発生装置における,液状香味発生源のための液体流路の別の態様を示す断面図である。この場合,液体流路372は,先に延べたような囲い301内に充填された連通空隙構造302により構成される。囲い301は,管または互いに離間して配置され側面が封止された2つの平板によって提供され得る。この場合,図示しないヒーターは,図1,図10,図11に示すように配置することができる。また,図15に示すように,連通空隙構造302を囲い301の先端から突出させることもでき,その場合には,ヒーター425を連通空隙構造の突出先端に配置することができる。」
これより,上記(1a)には,毛細管力により液状香味発生源が輸送されるところの流体流路を,2つの平行平板間の間隙の他に,囲いの内部に充填した連通空隙構造体で構成することが記載され,当該連通空隙構造体として,連続気泡発泡構造や繊維の集束構造が例示されている。また,上記(1b)には,図14を示しながら,液体流路を囲い内に充填した連通空隙構造により構成すること,及び,囲いを管とすることが記載され,図15を示しながら,連通空隙構造を囲いの先端から突出させることもできること,その場合には,ヒーターをその突出先端に配置することができることが記載されている。
そこで,まず毛細管芯の構造についてみると,集束とは一般に「光線の束などが一点に集まること」(広辞苑第6版)であり,集束構造とは,物を集めてバラバラにならないようにまとめた構造を意味すると解されるところ,上記(1a)の繊維の集束構造は,本件発明1の「複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造」と必ずしも同じ構造ではない。また,上記のような繊維状構造は,方向性を有する効率的な搬送に効果があるといえるから,設計的事項ともいえない。さらに,引用例2~12をみても,香味発生装置における流体流路を,上記のような繊維状構造で構成することは開示されていない。
次に,液体流路が,繊維の集束構造等の連通空隙構造である場合の加熱要素についてみると,上記(1b)に示されるように,連通空隙構造は囲いの存在を前提にしている。そして,加熱要素は当該前提に応じた板状のヒーターが示唆され,コイルのように連通空隙構造体の端部を取り囲む加熱要素はそもそも想定し得ない。すなわち,図14の液体流路の場合,連通空隙構造302の先端は囲い301で囲まれるから,板状のヒーターを,連通空隙構造302の端部を取り囲むコイルに変更することはできない。また,図15の液体流路の場合,ヒーター425は,囲い301の先端から突出した連通空隙構造の先端面に接触して配置されるが,上記(1b)の「図15に示すように,連通空隙構造302を囲い301の先端から突出させることもでき,その場合には,ヒータ-425を連通空隙構造の突出先端に配置することができる」という記載からして,これは,ヒータ425を連通空隙構造の先端面に配置するがゆえの態様である。そうすると,その突出の程度はコイルの配設に適切であるとはいえず,この態様においても,ヒーター425をコイルに変更する理由は認められない。
したがって,引用例2,8及び9に加熱要素としてコイルを用いることが記載されていても,引用発明にこれを適用する動機付けは見出せない。
よって,引用発明1をして上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上より,本件発明1は,引用発明1及び引用例2~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明7及び9~12の進歩性について
本件発明7及び9~12は,本件発明1の特定事項を全て含み,本件発明1を更に減縮したものである。
よって,本件発明7及び9~12は,上記(1)に示したのと同様の理由により,引用発明1及び引用例2~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明13の進歩性について
引用例1には,引用発明1と同様の構成を備えた上部チャンバ及びマウスピースに係る発明(以下「引用発明1’」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明1’と本件発明13とを対比すると,両者は少なくとも上記相違点1と同様の点で相違する。そして,その判断については上記(1)イに示したのと同様である。
よって,本件発明13は,引用発明1’及び引用例2~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由1-2についての当審の判断
(1)本件発明1の進歩性について
ア 対比
引用例8には,次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「電池アセンブリ,アトマイザアセンブリ及びたばこ容器アセンブリを有するエミュレーションエアロゾル吸入器であって,
たばこ容器アセンブリは,たばこ液容器を有し,アトマイザアセンブリはアトマイザを有し,
たばこ容器アセンブリは,アトマイザアセンブリの一方端部へ差し込まれ,これにより1つのたばこタイプ又はシガータイプ本体部を形成し,
電池アセンブリの一方の端部には雄ネジ電極が配置されており,また,アトマイザアセンブリの一方の端部には雌ネジ電極が配置されており,
電池アセンブリとアトマイザアセンブリとは,ねじ電極によって接続され,
電池アセンブリは,電池,MOSFET電気回路基板,センサ,第1ねじ電極,第1負圧キャビティ,及び第1シェルを有し,更にシリカゲル波状メンブレンを有し,センサは,スイッチバネによって,シリカゲル波状メンブレンに接続されており,
第1シェルの一方の端部上には雄ネジ電極が配され,他方の端部には,電池及びMOSFET電気回路基板が連続的に接続されており,
センサは,MOSFET電気回路基板に配置され,
アトマイザアセンブリは,雌ネジ電極,アトマイザ及び第2のシェルを有し,第2シェルの一方の端部は,接続のためにたばこ容器アセンブリに差し込まれて,他方の端部は,第2負圧キャビティ内に雌ネジ電極を有し,
アトマイザは,細孔含浸アトマイザとすることができ,その内部に加熱体を有し,
加熱体は,ニッケル‐クロム合金ワイヤ,鉄‐クロム合金ワイヤ,白金ワイヤを備えたマイクロポーラスセラミックスよりなるか,又は,導電性セラミックス又はPTCセラミックスからなるとともに焼結電極が設けられ,
加熱体は,細孔含侵アトマイザと接触し,
電池は,内部電極及び雄ネジ電極とともに,細孔含侵アトマイザ内部の加熱体にMOSFET電気回路基板を通じて通電し,
たばこ容器アセンブリは,たばこ液ボトル,繊維及び吸引ノズルを有し,たばこ液を含む繊維は,たばこ液ボトルの一方の端部に配置され,かつ,この端部は,第2のシェルに差し込まれて細孔含侵アトマイザに接し,
吸引ノズルは,たばこ液ボトルの他方の端部に配置され,
たばこ液ボトルの内壁と繊維との間には,空気取り入れ孔を有し,
加熱体上で蒸発したたばこ液は,空気取り入れ口を通って流入した空気流に吸収され凝集してエアロゾルとなり,エアロゾルは,空気取り入れ孔及び吸入ノズルを通ってホワイトミストタイプのエアロゾルを形成する,
エミュレーションエアロゾル吸入器。」
そして,引用発明8と本件発明1とを対比すると,両者は少なくとも次の点で相違する。
[相違点2]
本件発明1では,毛細管芯は,複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造であって,少なくとも1つの加熱要素は,毛細管芯の第2の端部を部分的に取り囲むワイヤのコイルであるのに対して,引用発明8では,たばこ液は繊維を通じてアトマイザに浸漬し,加熱体は,コイル状で,アトマイザの内部に配設される点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
まず,毛細管芯の構造についてみると,引用発明8において,本件発明1の「毛細管芯」に対応するのは,「繊維」と「アトマイザ」とを合わせたものである。しかしながら,アトマイザは,繊維と別体の部材であって,内部にマイクロポーラスセラミックを有するものであり,両者を合わせたものは,上記相違点2の「複数の内腔又はチューブを形成する整列した複数の繊維又はより線を含む繊維状構造」であるとはいえない。さらに,引用例2~12をみても,エミュレーションエアロゾル吸入器における液体搬送手段を,上記のような繊維状構造で構成することは開示されていない。
また,引用発明8の加熱体は,コイル状であるが,アトマイザの内部に配設されるものであって,アトマイザを部分的に取り囲むものではない。そして,引用発明8のアトマイザにおける加熱原理上,加熱体をアトマイザを部分的に取り囲むように配設することは想定し得ない。
よって,引用発明8をして上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上より,本件発明1は,引用発明8及び引用例1~7,9~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明7及び9~12の進歩性について
本件発明7及び9~12は,本件発明1の特定事項を全て含み,本件発明1を更に減縮したものである。
よって,本件発明7及び9~12は,上記(1)に示したのと同様の理由により,引用発明8及び引用例1~7,9~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明13の進歩性について
引用例8には,引用発明8と同様の構成を備えたアトマイザアセンブリ及びたばこ容器アセンブリに係る発明(以下「引用発明8’」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明8’と本件発明13とを対比すると,両者は少なくとも上記相違点2と同様の点で相違する。そして,その判断については上記(1)イに示したのと同様である。
よって,本件発明13は,引用発明8’及び引用例1~7及び9~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 取消理由2-1及び2-2についての当審の判断
取消理由2-1及び2-2の対象である請求項3,8及び15は,本件訂正により削除された。
第5 むすび
以上のとおりであるから,上記取消理由1-1又は1-2によっては,請求項1,7及び9~13に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1,7及び9~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,上記第2のとおり本件訂正が認められることにより,請求項2~6,8及び14~17は削除され,それらの特許に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しないものとなった。したがって,請求項2~6,8及び14~17に対しての特許異議の申立ては不適法であって,その補正をすることができないものであるから,特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700896