特許異議申立
2016-700710
射出成形機および射出成形機の制御方法
- 審判番号
- 2016-700710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-252601外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月09日
- 審決日
- 2017年04月28日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.112-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5855075号発明「射出成形機および射出成形機の制御方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5855075号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-3〕,4について訂正することを認める。
特許第5855075号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5855075号の請求項1~4に係る特許についての出願は,平成25年12月6日になされたものであって,平成27年12月18日に特許権の設定登録がされ,平成28年2月9日にその特許公報が発行され,その後,平成28年8月9日に特許異議申立人一條淳(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 8月 9日 特許異議申立書(特許異議申立人)
同年10月28日 取消理由通知
同年12月21日 意見書・訂正請求書(特許権者)
平成29年 2月 6日 手続補正書(特許権者)
同年 2月17日 通知書
同年 3月23日 意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
特許権者は,特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成28年12月21日に訂正請求書を提出し,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~4について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。
1 訂正の内容
(1)請求項1~3に係る一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1が,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、
前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられたことを特徴とする射出成形機。」であるところ,
訂正後の請求項1である
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構と電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、
前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられたことを特徴とする射出成形機。」と訂正する。
(注:訂正部分を下線で示す。以下同じである。)
イ 訂正事項2
訂正前の請求項2が,
「前記回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。」であるところ,
訂正後の請求項2である
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、
前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられ、前記回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルであることを特徴とする射出成形機。」と訂正する。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項3が,
「前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転盤の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。」であるところ,
訂正後の請求項3である
「前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転部の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。」と訂正する。
エ 訂正事項5
明細書の【0007】に,
「本発明の請求項1に記載の射出成形機は、電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられたことを特徴とする。」とあるのを,
「本発明の請求項1に記載の射出成形機は、電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、トグル機構を用いないで型締めシリンダを用いた型締機構と電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられたことを特徴とする。」と訂正する。
オ 訂正事項6
明細書の【0008】に,
「本発明の請求項2に記載の射出成形機は、請求項1において、前記回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルであることを特徴とする。」とあるのを,
「本発明の請求項2に記載の射出成形機は、電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられ、前記回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルであることを特徴とする。」と訂正する。
カ 訂正事項7
明細書の【0009】に,
「本発明の請求項3に記載の射出成形機は、請求項1において、前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転盤の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させることを特徴とする。」とあるのを,
「本発明の請求項3に記載の射出成形機は、請求項1において、前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転部の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させることを特徴とする。」
キ 訂正事項9
明細書の【0011】に,
「本発明の電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機は、トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられているので、金型が取付けられる回転部の回転速度を減速させる際に、効率的な省エネルギー化を追及することができる。」とあるのを,
「本発明の電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機は、トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構と電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられているので、金型が取付けられる回転部の回転速度を減速させる際に、効率的な省エネルギー化を追及することができる。」と訂正する。
(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項4
訂正前の請求項4が,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の制御方法において、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を蓄電装置に充電するかまたは電源に回生する電力回生手段が備えられ、
回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、
前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。」であるところ,
訂正後の請求項4である,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の制御方法において、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ、
回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、
前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。」と訂正する。
イ 訂正事項8
明細書の【0010】に,
「本発明の請求項4に記載の射出成形機の制御方法は、電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の制御方法において、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を蓄電装置に充電するかまたは電源に回生する電力回生手段が備えられ、回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行うことを特徴とする。」とあるのを,
「本発明の請求項4に記載の射出成形機の制御方法は、電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の制御方法において、金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ、回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行うことを特徴とする。」と訂正する。
2 訂正の適否
(1)請求項1~3に係る一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は,訂正前の請求項1における「トグル機構を用いない型締機構」を「トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構」とする訂正事項を含むものであるが,「トグル機構を用いない型締機構」を「型締シリンダを用いた」ものに限定するものである。
訂正事項1は,訂正前の請求項1における「型開閉機構」を「ボールネジを用いた型開閉機構」とする訂正事項を含むものであるが,「型開閉機構」を「ボールネジを用いた」ものに限定するものである。
訂正事項1は,訂正前の請求項1における「前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段」を「前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段」とする訂正事項を含むものであるが,「共通の蓄電装置に充電する」との択一的な選択肢を削除するものである。
そうすると,訂正事項1に係るこれらの訂正事項は,いずれも,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項1の「トグル機構を用いない型締機構」を「トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構」とする訂正事項については,願書に添付した明細書(特許登録時の明細書)の【0013】に,「そして上盤19に設けられた型締シリンダ18のラム18aが可動盤20の背面に固定されている。」と記載され,また,その【0039】に,「型締装置52の固定盤56の四隅近傍にはそれぞれ型締シリンダ63が設けられ」と記載されており,「型締シリンダを用いた型締機構」は願書に添付した明細書に記載されているといえる。
訂正事項1の「型開閉機構」を「ボールネジを用いた型開閉機構」とする訂正事項については,願書に添付した明細書の【0013】には,「そしてボールネジ25がサーボモータ23の駆動軸に回転可能に接続され、ボールネジ25はボールネジナット24に挿通されている。」と記載され,【0041】には,「そして前記サーボモータ69の駆動軸には、直接またはベルトを介してボールネジ70が接続されている。」と記載され,【0048】には,「このタイプの射出成形機は回転部である回転盤の移動はボールネジを用いた型開閉機構が設けられる。」と記載されており,「ボールネジを用いた型開閉機構」は願書に添付した明細書に記載されているといえる。
訂正事項1の「前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段」を「前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段」とする訂正事項については,上記(ア)で述べたとおり,「共通の蓄電装置に充電する」との択一的な選択肢を削除するものであるから,訂正後の上記発明特定事項は,願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたといえる。
したがって,訂正事項1に係るこれらの訂正事項は,いずれも,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項1に係る訂正事項は,いずれも上記(ア)で述べたとおり,特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は,訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であるところ,訂正前の請求項1を引用するものについて,請求項1との引用関係を解消して記載するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正後の請求項2は,上記(ア)で述べたとおり,訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であるところ,訂正前の請求項1を引用するものについて,請求項1との引用関係を解消して記載するものであって,その発明特定事項は実質的に訂正前の請求項2と同じであるから,願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたといえる。
したがって,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正後の請求項2は,上記(ア)で述べたとおり,訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であるところ,訂正前の請求項1を引用するものについて,請求項1との引用関係を解消して記載するものであって,その発明特定事項は実質的に訂正前の請求項2と同じであるから,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項3は,訂正前の請求項3の「前記回転盤」を「前記回転部」と訂正するものである。
訂正前の請求項3には,「前記回転盤」の前に「回転盤」との記載はなく,また,請求項3が引用する請求項1にも「回転盤」について記載はない。その一方で,訂正前の請求項3には,「前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ」と,「回転部」のみが記載され,その「回転部」は「型開閉方向に移動」するものである。
そうすると,訂正前の請求項3の「前記回転盤の型開閉方向の移動の際」との記載における「回転盤」とは,「回転部」がその正しい記載であることは,訂正前の請求項3の記載全体からみて明らかであるから,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項3の「回転部」については,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲(出願当初の明細書,特許請求の範囲)に記載されており,明細書の【0042】に,「中間盤62や回転盤60を移動させる型開閉機構67は、可動盤58に設けられた支持部73にはサーボモータ74が固定されている。」,「回転部である回転盤60の回転時などの電力回生を行う」と記載され,その【0048】に,「また同時に行われる型開閉機構67による中間盤62や回転盤60等の移動距離は、可動盤58の移動距離の1/2(または1/2前後)となる。しかし中間盤62や回転盤60等は、軸支部を有する上に少なくとも両面に中間金型59を有するので重量が重く、これらを型開閉機構67の4基のサーボモータ74により移動させ停止させるので、停止のための減速時に発生する回生電力は大きなものとなる。」と記載されており,これらの記載からみて,回転盤である「回転部」が型開閉方向に移動し,移動の際の減速時に電力回生を行うものであることは明らかであるから,訂正後の請求項3の「前記回転部の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させる」ことは,願書に最初に添付した明細書から導くことができるといえる。
したがって,訂正事項3は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項3は,訂正前の請求項3の「前記回転盤」を「前記回転部」と訂正するものであるが,上記(ア)で述べたとおり,誤記の訂正を目的とするものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は,特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1に整合させるために,明細書の【0007】を同様に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項5の訂正内容は,訂正事項1と同じであるから,上記ア(イ)で述べたとおり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項5は,特許請求の範囲を訂正するものではなく,また,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲を拡張又は変更するものでもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
オ 訂正事項6
(ア)訂正の目的
訂正事項6は,特許請求の範囲の請求項2を訂正する訂正事項2に整合させるために,明細書の【0008】を同様に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項6の訂正内容は,訂正事項2と同じであるから,上記イ(イ)で述べたとおり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項6は,特許請求の範囲を訂正するものではなく,また,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲を拡張又は変更するものでもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
カ 訂正事項7
(ア)訂正の目的
訂正事項7は,特許請求の範囲の請求項3を訂正する訂正事項3に整合させるために,明細書の【0009】を同様に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項7の訂正内容は,訂正事項3と同じであり,上記ウ(イ)で述べた願書に最初に添付した明細書の記載は,願書に添付した明細書の記載と同じであるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項7は,特許請求の範囲を訂正するものではなく,また,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲を拡張又は変更するものでもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
キ 訂正事項9
(ア)訂正の目的
訂正事項9は,特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1に整合させるために,明細書の【0011】を同様に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項9の訂正内容は,訂正事項1と同じであるから,上記ア(イ)で述べたとおり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項9は,特許請求の範囲を訂正するものではなく,また,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲を拡張又は変更するものでもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ク 一群の請求項
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~3については,請求項1を請求項2,3が直接又は間接的に引用するものであるから,特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であり,訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3係る一群の訂正は,特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
ケ 明細書の訂正
訂正事項5~7,9に係る明細書の訂正は,いずれも訂正事項1~3に係る請求項1~3に関するものであるから,当該訂正事項5~7,9と関係する全ての一群の請求項が訂正請求の対象とされており,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
コ まとめ
以上のとおりであるから,訂正事項1~3,5~7,9は,いずれも,特許法第120条の5第2項,第4項の規定に適合するととともに,同法同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
よって,訂正後の請求項1~3に係る一群の訂正を認める。
(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項4は,訂正前の請求項4における「前記電動モータから発生する回生電力を蓄電装置に充電するかまたは電源に回生する電力回生手段が備えられ」を「前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ」とする訂正事項を含むものであるが,「蓄電装置に充電する」との択一的な選択肢を削除するものである。
そうすると,訂正事項4は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項4の「前記電動モータから発生する回生電力を蓄電装置に充電するかまたは電源に回生する電力回生手段が備えられ」を「前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ」とする訂正事項については,上記(ア)で述べたとおり,「蓄電装置に充電する」との択一的な選択肢を削除するものであるから,訂正後の上記発明特定事項は,願書に添付した特許請求の範囲に記載されていたといえる。
したがって,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項4は,上記(ア)で述べたとおり,特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項8
(ア)訂正の目的
訂正事項8は,特許請求の範囲の請求項4を訂正する訂正事項4に整合させるために,明細書の【0010】を同様に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ)新規事項
訂正事項8の訂正内容は,訂正事項4と同じであるから,上記ア(イ)で述べたとおり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更
訂正事項8は,特許請求の範囲を訂正するものではなく,また,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲を拡張又は変更するものでもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 明細書の訂正
訂正事項8に係る明細書の訂正は,訂正事項4に係る請求項4に関するものであるから,当該訂正事項8に係る請求項4が訂正請求の対象とされており,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
エ まとめ
以上のとおりであるから,訂正事項4,8は,いずれも,特許法第120条の5第2項の規定に適合するととともに,同法同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
よって,訂正後の請求項4に係る訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり,本件訂正は認められるから,訂正後の本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は,平成28年12月21日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構と電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、
前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ、
前記型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の蓄電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられ、前記回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルであることを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
前記回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転部の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の制御方法において、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ、
回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、
前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。」
第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した取消理由
特許異議申立書に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。
本件発明1,3は,本件出願前に頒布され以下の甲第1,2号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明2は,本件出願前に頒布された以下の甲第1,2号証に記載された発明及び周知技術(甲第3,4号証)に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明4は,本件出願前に頒布された以下の甲第1~3号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,本件発明1~4に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2013-166378号公報
甲第2号証:特開2013-151150号公報
甲第3号証:特開2011-235523号公報
甲第4号証:特開2012-206398号公報
2 取消理由通知に記載した取消理由
当審が通知した平成28年10月28日付けの取消理由通知に記載した取消理由(以下「当審取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。
本件発明1,3は,本件出願前に頒布された以下の甲第1,2号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明4は,本件出願前に頒布された以下の甲第1~3号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,本件発明1,3,4に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2013-166378号公報
甲第2号証:特開2013-151150号公報
甲第3号証:特開2011-235523号公報
3 特許異議申立人の意見書による主張
その後,特許異議申立人は,平成29年3月23日付けの意見書で,以下の甲第5~7号証を提出して,本件発明1,3,4については,依然として当審取消理由が解消していないと主張している。
甲第5号証:特開2000-141440号公報
甲第6号証:技術総合誌 オームOHM, 2016年2月号,
株式会社オーム社, 2016年2月5日, p.4~7
甲第7号証:日経エレクトロニクス, 2007年10月号,
日経BP社, 2007年10月22日,
p.56~63,68~69
第5 当審の判断
1 当審取消理由について
(1)甲号証の記載について
ア 甲第1号証
本件出願前に頒布された甲第1号証には,以下の事項が記載されている。
(1a)「【0005】
従来の一般的な射出成形機では成形回数を重ねた際に、固定盤と可動盤の温度上昇に伴って固定盤と可動盤とが熱膨張しても型締装置全体が上方に伸びるためにさほど大きな問題にはならなかった。ところが特許文献1、特許文献2に示されるタイプの型締装置においては、固定盤には固定金型、可動盤には可動金型が取付けられ、盤の片面側から金型の温度が伝熱され固定盤および可動盤の温度が上昇されるのに対して、回転盤は、盤の両面側から金型の温度が伝熱されることになる。そのため固定盤や可動盤の温度と比較して回転盤の温度の方が上昇しやすいという問題があった。そしてそれぞれの盤は温度上昇に伴って熱膨張するため、成形当初と比較して成形回数を重ねるにつれて固定金型と中間金型、中間金型と可動金型の嵌合にずれが生じるという問題があった。そして前記の成形金型の嵌合時のずれは、金型に負荷がかかることによる金型寿命の低下や、成形金型のかじりの発生につながる可能性が強い。または精密な複合成形品においては、複合成形品に許容以上の誤差が生じる場合があった。
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、第1の金型が取付けられる第1の盤と第2の金型が取付けられる第2の盤との間に、両面に中間金型が取付けられ型開閉方向と直交する方向の回転軸を中心に回転する回転盤が設けられ、前記第1の金型と中間金型、前記第2の金型と中間金型とが型閉されてそれぞれキャビティが形成される複合成形品用射出成形機の型締装置において、前記第1の金型と中間金型、前記第2の金型と中間金型の嵌合を常に良好に行うことに配慮した複合成形品用射出成形機の型締装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の複合成形品用射出成形機の型締装置は、第1の金型が取付けられる第1の盤と第2の金型が取付けられる第2の盤との間に、両面に中間金型が取付けられ型開閉方向と直交する方向の回転軸を中心に回転する回転盤が設けられ、前記第1の金型と中間金型、前記第2の金型と中間金型とが型閉されてそれぞれキャビティが形成される複合成形品用射出成形機の型締装置において、前記回転盤には盤の熱膨張を調整する冷却媒体通路が設けられ、前記第1の金型と前記第2の金型の少なくとも一方の金型にはホットランナが設けられたことを特徴とする。」
(1b)「【0012】
本発明の実施形態の複合成形品用射出成形機11について、図1、図2を参照して説明する。複合成形品用射出成形機11は、複数の樹脂材料から複合成形品を成形する成形機であって、型締装置12とその両側に設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。射出成形機11の型締装置12は、第1の金型である固定金型19が取付けられる第1の盤である固定盤20と、第2の金型である可動金型15が取付けられる第2の盤である可動盤16との間に、両面に中間金型(第1の中間金型38と第2の中間金型39)が取付けられ型開閉方向と直交する方向の回転軸36a,36bを中心に回転する回転盤37が設けられ、前記固定金型19と第1の中間金型38(または第2の中間金型39)、前記可動金型16と第2の中間金型39(または第1の中間金型38)とが型閉されてそれぞれキャビティが形成されるようになっている。
【0013】
固定盤20の四隅近傍にはそれぞれ型締シリンダ23(図1の概略図では1個の型締シリンダ23のみ断面を記載)が設けられ、型締シリンダ23のラムがタイバ24を兼ねている。型締シリンダ23は双方向作動型のシリンダからなり、固定盤20内のタイバ24の側に大面積の型締用油室25が設けられるとともに、反タイバ側(第2の射出装置側)には小面積の強力型開用油室26が設けられている。また型締シリンダ23には毎サイクルの型締と強力型開によって変更されるタイバ24の位置を、補正するための調整手段27が設けられている。なお各型締シリンダ23は、図示しないサーボバルブ等により個別に制御されるようにすることが望ましい。前記の場合、固定盤20と各ラムの間または固定盤20の四隅と可動盤16の四隅の間には位置を検出する位置センサ(図示せず)がそれぞれ設けられ、各タイバ24の相対的な位置関係を検出および制御することにより一方の固定盤20に対して他方の可動盤16が平行制御される。また固定盤20の可動盤側の面は金型取付面となっており、固定金型19がボルトまたは他の取付機構により取付けられるようになっている。そして固定金型19には複合成形品の大面積の主要部を2次成形により成形するためのキャビティ形成面21と前記キャビティ形成面21に連通される樹脂通路22が設けられている。なお本実施形態では、固定盤20には固定盤20の熱膨張を調整する調整機構としての冷却媒体通路は設けられていないが冷却媒体通路を設けるようにしてもよく、金型取付面側に断熱板を取付け断熱板の表面が金型取付面となるようにしてもよい。」
(1c)「【0015】
次に射出成形機11の型移動機構30,42について説明する。まず型移動機構30について説明すると、固定盤20(またはベース上)に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32が前記サーボモータ31により回転可能に軸支されている。そしてボールネジ32は、前記サーボモータ31の駆動軸と直接またはベルトを介して接続されている。また可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ、前記ボールネジナット33には前記ボールネジ32が挿通されている。またサーボモータ31は、内蔵するロータリエンコーダ31aにより可動金型15および可動盤16の移動制御および位置検出が可能である。なお図1の概略図では第1の型移動機構30は省略して1基のみが記載されているが、固定盤20の側面の低位置と可動盤16の側面の低位置、および固定盤の側面の高位置と可動盤の側面の高位置にそれぞれ第1の型移動機構30が設けられている。
【0016】
次に中間盤35、回転盤37、第1の中間金型38、および第2の中間金型39について説明する。固定金型19が取付けられる固定盤20と可動金型15が取付けられる可動盤16との間には、中間盤35が型開閉方向に移動自在に配設されている。図1に示されるように中間盤35は、一定の厚みを有する盤体であり、中央部に開口部を有する額縁形状をしている。そして中間盤35の四隅近傍にはそれぞれタイバ24が挿通されている。中間盤35のうち上2本のタイバ24,24が挿通される上部梁部材35aの中央部分には貫通孔が設けられ、前記貫通孔には上側の回転軸36aが挿通されている。そして回転軸36aは、前記貫通孔に設けられた図示しないラジアルベアリング等により回転自在に軸支されている。また下2本のタイバ24,24が挿通される下部梁部材35bの中央部分の間には凹部が設けられ、前記凹部にも下側の回転軸36bが設けられている。中間盤35のうち下2本のタイバ24,24が挿通される下部梁部材35bの中央部分には凹部が設けられ、前記凹部には図示しないスラストベアリング等により自重が支承され回転軸36bが回転自在に保持されている。前記回転軸36a,36bは、上下方向(型開閉方向に直交する方向)の同軸上に設けられる。そして回転盤37等が熱膨張により伸長した際は、上部梁部材35aに対して、回転軸36aが軸方向に位置変更可能となっている。このため回転盤37が熱膨張しても上方のタイバ24、24に対して、上方向の応力が及ばない構造となっている。
【0017】
そして中間盤35の前記回転軸36a,36bには回転盤37が固定されている。そして回転盤37は、回転軸36a,36bの軸芯を中心に回転軸36a,36bと共に回転されるようになっている。従って回転盤37は、回転軸36a,36b以外の部分では中間盤35と非接触に設けられる。回転盤37は所定の厚みを有する四角形の盤体であり、盤面の厚みは、固定盤20および可動盤16の最大厚みよりも薄く形成されている。そして回転盤37の両面の金型取付面37a,37bには、それぞれ第1の中間金型38と第2の中間金型39が取付けられるようになっている。なお型締装置12の前記可動盤16、固定盤20、および回転盤37等は鉄(鋳鉄)から形成されている。」
(1d)【0023】
それぞれの中間金型38,39のキャビティ形成面は同一形状をしており、1次成形の際に1次キャビティを形成するキャビティ形成面34aと、2次成形の際に2次キャビティを形成するキャビティ形成面34bがそれぞれ形成されている。また前記第1の中間金型38と第2の中間金型39には、それぞれ成形終了した複合成形品を突出すための図示しないエジェクタ機構が内蔵されている。そして第1の中間金型38が可動金型15と型閉されて1次成形用の1次キャビティが形成されている際は、第2の中間金型39が固定金型19と型閉されて2次成形用の2次キャビティが形成され、その後に一度型開され、回転盤37が180°回転(反転)されて再び型閉されると、第1の中間金型38が固定金型19と型閉されて2次成形用の2次キャビティが形成され、第2の中間金型39が可動金型15と型閉されて1次成形用の1次キャビティが形成されるようになっている。
【0024】
そして中間盤35の上部梁部材35aの中央部の上部には回転軸36a,36bと回転盤37を回転させるためのサーボモータ40が配置されている。そしてサーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続され、サーボモータ40の回転により回転角度が制御されて回転盤36a等が回転されるようになっている。また中間盤35には、それぞれ回転盤37を位置決め固定するための位置決めピン41が少なくとも1箇所に設けられている。位置決めピン41は油圧シリンダとそのシリンダロッドが先細のテーパー形状をしたピンからなる。また回転盤37には回転盤37が固定盤等と正対した際に前記位置決めピン41を挿入可能な位置に位置決め用の穴が設けられている。そして前記位置決めピン41を突出させ位置決め用の穴に挿入することにより回転盤37が回転不能に位置固定されるようになっている。なおこの位置決ピンと位置決め用の穴の関係も、回転盤37の熱膨張が冷却機構52により抑制されることにより常時好ましい関係を維持できる。
【0025】
次に第2の型移動機構42である中間盤35の型移動機構について説明する。中間盤35と可動盤16の間には、中間盤35、回転盤37、および中間金型38,39を移動制御するとともに中間盤35等の位置を可動盤16に対して固定的に保持可能な第2の型移動機構42が備えられている。図1等の概略図では第2の型移動機構42は省略して1基のみが記載されているが、少なくとも2基以上、更に好ましくは両側に2基づつ合計4基が配設される。第2の型移動機構42については、可動盤16の四隅近傍の位置に支持部が外側に向けて固定され、前記支持部にサーボモータ43が固定され、前記サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続されている。前記サーボモータ43は、内蔵するロータリエンコーダ43aにより中間盤35の移動制御および位置検出が可能であり、またサーボモータ43をサーボロックすることにより、回転盤37を可動盤16に対して固定的に位置保持できる。
【0026】
またボールネジナット33が取付けられる中間盤35の両側にそれぞれ設けられた支持部には、それぞれボールネジナット45が固定され、前記ボールネジナット45には前記ボールネジ44が挿通されている。なお第2の型移動機構42である中間盤35の型移動機構は、固定盤20と中間盤35の間に設けてもよい。」
(1e)「【0028】
次に複合成形品用射出成形機11の型締装置の作動方法について説明する。図1に示される型締装置12は、可動金型15が取付けられた可動盤16と、中間金型38,39がそれぞれの面に取付けられた回転盤37が型開完了位置にある。そして成形が完了した複合成形品が取出され、回転盤37と中間金型38,39が回転された後の状態である。この状態から第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う。そして第1の中間金型38および可動金型15と、固定金型19および第2の中間金型39との型閉が完了すると位置決めピン41が抜かれるとともに、ハーフナット28がタイバ24の係止部29に係合される。そして型締シリンダ23の型締用油室25に作動油が供給されて型締が行われる。そして型締完了確認後に、第1の射出装置13から可動金型15と第1の中間金型38の間に形成された外枠部を成形するための1次キャビティに射出を行い1次成形を行う。本実施形態では1次成形は、一般的な射出成形で行われる。
【0029】
次に固定金型19と第2の中間金型39の間に形成された主要部を成形するための2次キャビティ(一部は1次成形品によって形成される)で1次成形とは別のタイミングで2次成形を行う。複合成形品の主要部は、外枠部と比較して大面積であって板厚が薄いので2次成形では、射出圧縮成形により成形がなされる。射出圧縮成形では、第2の射出装置14から前記2次キャビティに射出が行われると樹脂圧により2次キャビティの容積は一旦増大されるが、4個の型締シリンダ23をサーボバルブ等により個別に制御し2次キャビティ内の溶融樹脂の圧縮成形を行う。なお1次成形、2次成形ともに、成形方法は限定されず、固定金型21と中間金型38,39の間で複合成形品の主要部を1次成形により成形するようにしてもよい。
【0030】
そして主要部が射出圧縮成形により2次成形され、その冷却が完了すると次に型開に移行する。その際は中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックしておくことにより、可動盤16と中間盤35の間を固定的に保持し可動金型15と第1の中間金型38の間の1次キャビティが開かないようにして、固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開する。そして第2の中間金型39のエジェクタ機構を作動させて複合成形品の突出が行われる。その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開する。
【0031】
そして可動盤16が型開完了位置に到達すると、中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ、回転盤37と共に、1次成形品が残留した第1の中間金型38と2次成形が完了し複合成形品が残留した第2の中間金型39を180°回転(反転)させる。なお中間金型38,39の回転は、一方方向のみに回転させるものでもよく、反転させるものでもよい。
【0032】
そして再び第1の型移動機構30により可動盤16を固定盤20に向けて移動させるとともに、第2の型移動機構42により可動盤16と中間盤35との間も型閉される方向へ移動させて再び型閉を行い、型閉完了後には型締を行って再び1次成形と2次成形が行われる。次の成形では固定金型19と第1の中間金型38が型閉されて1次キャビティが形成され、第2の中間金型39と可動金型15が型閉されて一部は1次成形品で形成された2次キャビティが形成される。」
イ 甲第2号証
本件出願前に頒布された甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、型開閉用モータが少なくとも含まれる複数のモータを備える射出成形機に関する。」
(2b)「【0014】
射出成形機1は、複数のモータ(図1には、4つのモータ11~14を例示)と、複数のモータを駆動する駆動部30と、駆動部30に給電経路部40を介して電力を供給する給電部50と、蓄電部60と、給電経路部40から蓄電部60に電力を伝達する電力伝達部80とを備えている。射出成形機1は、複数のモータのうち少なくとも一つのモータにより発生した回生エネルギーを、駆動部30と給電経路部40と電力伝達部80とを介して、蓄電部60に充電する機能を有するとともに、蓄電部60からの放出エネルギーを、電力伝達部80と給電経路部40と駆動部30とを介して、複数のモータのうち少なくとも一つのモータに供給する機能を有している。このような機能によって、射出成形機1の省エネルギー化が図られている。」
(2c)「【0015】
4つのモータ11~14のうち、モータ11が型開閉用サーボモータである。それ以外のモータ12~14については、例えば、モータ12は射出用サーボモータであり、モータ13は計量用サーボモータであり、モータ14はエジェクタ用サーボモータである。型開閉用モータ11によって生成される回生エネルギーは、型開閉用モータ11の減速期間内に発生する。射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14についても同様である。
【0016】
ところが、射出用モータ12は、型開閉用モータ11よりも短い減速期間で減速動作している。そのため、射出用モータ12が電力回生を行う場合、時間積分値であるエネルギーが小さく瞬時値である電力が大きいことによって、射出用モータ12により発生した回生エネルギーの大部分が、その発生した回生エネルギーを蓄電部60に伝達する動作を電力伝達部80が行うことによって失われる場合がある。このような場合には、蓄電部60のエネルギーを再利用することによる省エネルギー効果が小さくなるおそれがある。
【0017】
また、エジェクタ用モータ14の減速期間は、射出用モータ12の減速期間よりも長いものの、エジェクタ用モータ14も、型開閉用モータ11よりも短い減速期間で減速動作している。そのため、エジェクタ用モータ14が電力回生を行う場合も同様に、蓄電部60のエネルギーを再利用することによる省エネルギー効果が小さくなるおそれがある。
【0018】
これに対し、射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14よりも減速期間が十分に長い型開閉用モータ11が電力回生を行う場合、型開閉用モータ11により発生した回生エネルギーと比べ、その発生した回生エネルギーを蓄電部60に伝達する動作を電力伝達部80が行うことによって失われるエネルギーは、無視できるほど小さい。
【0019】
そこで、本発明の一実施形態である射出成形機1は、型開閉用モータ11の駆動状態を検知する検知部70を備え、電力伝達部80は、検知部70によって型開閉用モータ11の回生状態が検知されたとき、その検知結果を用いて、給電経路部40から蓄電部60に伝達する電力を制御する構成を有している。射出成形機1は、このような構成を有していることにより、モータ11~14の回生状態の中から型開閉用モータ11の回生状態を検知し、その検知結果を、給電経路部40から蓄電部60への電力伝達制御に使用できる。その結果、モータからの回生エネルギーを給電経路部40から蓄電部60に伝達する動作によって発生するエネルギー損失を抑えることができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態である射出成形機1は、電力伝達部80が、射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14が駆動部30を介して給電経路部40に回生するときに給電経路部40から蓄電部60に電力を伝達することを、型開閉用モータ11が駆動部30を介して給電経路部40に回生するときよりも制限する構成を有していてもよい。『電力を伝達することを「制限」する』には、『電力を伝達することを「停止」する』ことも含んでよい。射出成形機1は、このような構成を有していることにより、射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14による回生エネルギーが蓄電部60に伝達される機会を減少又は無くすことができる。その結果、モータからの回生エネルギーを給電経路部40から蓄電部60に伝達する動作によって発生するエネルギー損失を抑えることができる。」
(2d)「【0074】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0075】
例えば、電力伝達部80は、型開閉用モータ11の回生時に給電経路部40から蓄電部60に電力を伝達する充電動作を行い、モータ11~14の少なくとも一つの力行時に蓄電部60から給電経路部40に電力を伝達する放電動作を行ってもよい。
【0076】
また、例えば、モータの種類は上述の種類に限ることはなく、本発明は、射出成形機に使用されるモータであれば、他のモータにも適用できる。」
(2e)「【0079】
そこで、本発明の一実施形態である射出成形機1は、型開閉用モータ11の駆動状態を検知する検知部70を備え、給電部50は、検知部70によって型開閉用モータ11の回生状態が検知されたとき、その検知結果を用いて、給電経路部40から電源90に伝達する電力を制御する構成を有してもよい。射出成形機1は、このような構成を有していることにより、モータ11~14の回生状態の中から型開閉用モータ11の回生状態を検知し、その検知結果を、給電経路部40から電源90への電力伝達制御に使用できる。その結果、モータからの回生エネルギーを給電経路部40から電源90に伝達する動作によって発生するエネルギー損失を抑えることができる。
【0080】
また、本発明の一実施形態である射出成形機1は、給電部50が、射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14が駆動部30を介して給電経路部40に回生するときに給電経路部40から電源90に電力を伝達することを、型開閉用モータ11が駆動部30を介して給電経路部40に回生するときよりも制限する構成を有していてもよい。『電力を伝達することを「制限」する』には、『電力を伝達することを「停止」する』ことも含んでよい。射出成形機1は、このような構成を有していることにより、射出用モータ12及びエジェクタ用モータ14による回生エネルギーが電源90に伝達される機会を減少又は無くすことができる。その結果、モータからの回生エネルギーを給電経路部40から電源90に伝達する動作によって発生するエネルギー損失を抑えることができる。
【0081】
給電部50は、給電経路部40から電源90に伝達する電力を制御する場合、給電経路部40と電源90との間に設けられた電源回生コンバータ(電源回生装置)として機能する。この場合、給電部50は、電源90から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を給電経路部40及び駆動部30に供給する。そして、給電部50は、駆動部30及び給電経路部40から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電源90に供給する。」
ウ 甲第3号証
本件出願前に頒布された甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
(3a)「【0013】
本発明の実施形態の縦型ロータリ射出成形機11について、図1を参照して説明する。成形機の一種である縦型ロータリ射出成形機11は、型締装置12とその両側方に設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。型締装置12は、下方に設けられた固定盤15に4本のタイバ16が直立方向に固定され、タイバ16の上方に上盤17が固定されている。またタイバ16には可動盤18が挿通され、可動盤18は上下方向に移動可能となっている。また上盤17には型締シリンダ19が設けられ、型締シリンダ19のラム20が可動盤18の背面に固定されている。また上盤17と可動盤18の間には、図示しない型開閉機構が設けられている。型開閉機構は、サーボモータとボールネジ機構を用いたものでもよく、油圧シリンダを用いたものでもよい。
【0014】
そして図1および図2に示されるように、可動盤18の下面には一定の厚みを有する円盤状の回転盤21(ロータリテーブル)が回転自在に取付けられている。回転盤21の中心には、上方に向けて中心軸22が固定され、前記中心軸22が可動盤18に設けられたベアリング等により軸支されている。そして可動盤18の側方には回転盤回転用の電動機であるサーボモータ23が取付けられている。そしてサーボモータ23の駆動軸24に固定された歯付プーリ25と回転盤21の外周面28の歯付部にはタイミングベルト26が掛け渡されている。そして前記タイミングベルト26は、可動盤18に設けられたテンションプーリ27により張設され、タイミングベルト26の歯飛びを防止している。なおサーボモータ23の駆動軸24と回転盤21は、歯車機構によって回転盤21の外周へ駆動力が伝達されるものでもよく、回転盤21の中心軸に対してタイミングベルトや歯車機構を用いた減速機構により駆動力が伝達されるものでもよい。減速機を用いたタイプでは、電動機以外に減速機の負荷容量も考慮する必要がある。また成形機に用いられる電動機はサーボモータ23が好ましいが他のモータでもよい。」
(3b)「【0021】
次に回転盤回転用のサーボモータ23による回転盤21の回転速度制御とトルク(速度トルク)の関係について図4により説明する。サーボモータ23のトルクについては電力変換部40からサーボモータ23へ送られる電流値を実測することにより求められる。またサーボモータ23のトルクは、制御装置31からサーボアンプ37へ送られる速度指令信号やトルク指令信号(電圧値)を測定して演算により求めたものでもよく、他の公知のトルク検出手段でもよい。重量物である回転盤21と上加動金型29a,29bの回転についてはモータを起動させ加速時に、最もサーボモータ23へ送られる電流値が高くなりピークトルクpt1が発生する。その後高速区間ではトルクが低下し、回転盤21の回転を減速させ停止させる減速時にも、加速時と同様にピークトルクpt2が発生する。従って前記ピークトルクpt1,pt2を検出し、所定内にすることによりサーボモータ23やその減速機への負荷を軽減することができる。」
エ 甲第4号証
本件出願前に頒布された甲第4号証には,以下の事項が記載されている。
(4a)「【0012】
本発明の実施形態の金型回転式射出成形機11について、図1ないし図3を参照して説明する。射出成形機の一種である金型回転式射出成形機11は、型締装置12とその両側方に設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。型締装置12は、下方に設けられた固定盤15に4本のタイバ16が直立方向に固定され、タイバ16の上方に上盤17が固定されている。またタイバ16は可動盤18の四隅近傍に挿通され、可動盤18は固定盤15と上盤17の間で上下方向に移動可能となっている。また上盤17には型締シリンダ19が設けられ、型締シリンダ19のラム20が可動盤18の背面に固定されている。また上盤17と可動盤18の間には、図示しない型開閉機構が設けられている。型開閉機構は、サーボモータとボールネジ機構を用いたものでもよく、油圧シリンダを用いたものでもよい。また型締機構の駆動源は、型締シリンダ19に替えて電動機を用いてもよい。
【0013】
可動盤18の下面には一定の厚みを有する円盤状の回転テーブル21が可動盤18に対して回転自在に取付けられている。回転テーブル21の中心には、上方に向けて中心軸22が固定され、前記中心軸22が可動盤18に設けられたベアリング等により軸支されている。そして可動盤18における回転テーブル21の側方(中心軸から放射方向の側方)には回転テーブル回転用の電動機であるサーボモータ23が取付けられ、制御装置31により回転駆動が制御されるようになっている。そしてサーボモータ23の駆動軸24に固定された歯付駆動プーリ25と回転テーブル21の外周側の歯部が形成されたベルト係合部28の両方には前記電動機の駆動を回転テーブル21に伝達するためのタイミングベルト26(ベルト)が掛け渡されている。なお本発明において回転テーブル21の外周側とは、回転テーブル21の中心から放射方向に最も遠い外周のみを指すものではない。外周側のベルト係合部の直径よりもベルトの離脱を抑える回転テーブル21のフランジ部等の直径のほうが大きいものも当然含まれる。」
(4b)「【0018】
回転テーブル21の下面には上可動金型29a,29bがそれぞれ金型クランパにより取付けられるようになっている。また下側の固定盤15の上面にも、前記上可動金型29a,29bと対応して2個の下固定金型30a,30bが金型クランパにより取付けられるようになっている。なお回転テーブル21や対向する側の盤に取付けられる金型の数は、2個に限定されず1個でも3個以上の複数個でもよい。また回転テーブル21と可動盤18の間には、回転テーブル21の回転を固定する図示しない位置決め係合ピンが進退可能に設けられている。」
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には,「射出成形機11の型締装置12は、・・・固定金型19が取付けられる・・・固定盤20と、・・・可動金型15が取付けられる・・・可動盤16との間に、両面に中間金型(・・・38,・・・39)・・・が取付けられ型開閉方向と直交する方向の回転軸36a,36bを中心に回転する回転盤37が設けられ」ること(摘記1b参照),「固定盤20の四隅近傍にはそれぞれ型締シリンダ23・・・が設けられ」ていること(摘記1b参照),「第1の型移動機構30」は,「固定盤20・・・に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32が前記サーボモータ31により回転可能に軸支され・・・可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ、前記ボールネジナット33には前記ボールネジ32が挿通されている」こと(摘記1c参照),「第2の型移動機構42」は「可動盤16・・・に支持部が外側に向けて固定され、支持部にサーボモータ43が固定され、前記サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続され」,「中間盤35の上部梁部材35a・・・には・・・サーボモータ40が配置され・・・サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続され」ること(摘記1d参照)が記載されている。
そうすると,甲第1号証には,その装置構成として,
「射出成形機11において,
固定金型19が取付けられる固定盤20と,可動金型が取付けられる可動盤の間に,型開閉方向と直交する方向の回転軸36,36aを中心に回転する回転盤37を設け,回転盤37の両面に中間金型38,39が取り付けられ,
固定盤の四隅近傍に型締めシリンダ23が設けられ,
固定盤20に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32がサーボモータ31により回転可能に軸支され,可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ,ボールネジナット33にはボールネジ32が挿通された第1の型移動機構30と,
可動盤16に固定された支持部にサーボモータ43が固定され,サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続された第2の型移動機構42と,
中間盤35の上部梁部材35aにはサーボモータ40が配置され,サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続された」ものが記載されているといえる。
さらに,甲第1号証には,「中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックして・・・固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開する・・その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開する・・・可動盤16が型開完了位置に到達すると、中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ、回転盤37と共に、1次成形品が残留した第1の中間金型38と2次成形が完了し複合成形品が残留した第2の中間金型39を180°回転(反転)させる」こと,その後「第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う」ことが記載されている(摘記1e参照)。
そうすると,射出成形機の作動方法として,
「第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックして固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開し,その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開し,可動盤16が型開完了位置に到達すると,中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ,回転盤37と共に第2の中間金型39を180°回転(反転)させ,その後第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う」ことも記載されているといえる。
してみると,甲第1号証には,
「固定金型19が取付けられる固定盤20と,可動金型が取付けられる可動盤の間に,型開閉方向と直交する方向の回転軸36,36aを中心に回転する回転盤37を設け,回転盤37の両面に中間金型38,39が取り付けられ,
固定盤の四隅近傍に型締めシリンダ23が設けられ,
固定盤20に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32がサーボモータ31により回転可能に軸支され,可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ,ボールネジナット33にはボールネジ32が挿通された第1の型移動機構30と,
可動盤16に固定された支持部にサーボモータ43が固定され,サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続された第2の型移動機構42と,
中間盤35の上部梁部材35aにはサーボモータ40が配置され,サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続された射出成形機において,
第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックして固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開し,その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開し,可動盤16が型開完了位置に到達すると,中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ,回転盤37と共に第2の中間金型39を180°回転(反転)させ,その後第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う射出成形機」の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。
また,このように射出成形機を作動させているから,甲第1号証には,
「固定金型19が取付けられる固定盤20と,可動金型が取付けられる可動盤の間に,型開閉方向と直交する方向の回転軸36,36aを中心に回転する回転盤37を設け,回転盤37の両面に中間金型38,39が取り付けられ,
固定盤の四隅近傍に型締めシリンダ23が設けられ,
固定盤20に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32がサーボモータ31により回転可能に軸支され,可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ,ボールネジナット33にはボールネジ32が挿通された第1の型移動機構30と,
可動盤16に固定された支持部にサーボモータ43が固定され,サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続された第2の型移動機構42と,
中間盤35の上部梁部材35aにはサーボモータ40が配置され,サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続された射出成形機の作動方法において,
第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックして固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開し,その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開し,可動盤16が型開完了位置に到達すると,中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ,回転盤37と共に第2の中間金型39を180°回転(反転)させ,その後第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う射出成形機の作動方法」の発明(以下「甲1発明B」という。)も記載されているといえる。
(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aの「型締めシリンダ23」は,油圧で作動するものであって(摘記1b参照),2つのリンクと1つのスライダーから構成される「トグル機構」ではないから,本件発明1の「トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構」に相当する。
甲1発明Aの「固定盤20に設けられた支持部にはサーボモータ31が固定されるとともにボールネジ32がサーボモータ31により回転可能に軸支され,可動盤16にはボールネジナット33の支持部が設けられ,ボールネジナット33にはボールネジ32が挿通された型移動機構30」及び「可動盤16に固定された支持部にサーボモータ43が固定され,サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続された型移動機構42」はともに,本件発明1の「電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構」に相当する。
甲1発明Aの「回転盤37の両面に中間金型38,39が取り付けられ」た「回転盤37」は本件発明1の「金型が取付けられる回転部」に相当する。
甲1発明Aの「中間盤35の上部梁部材35aにはサーボモータ40が配置され,サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続された」との構成は,回転盤37の回転軸36aにサーボモータ40の回転をベルトまたは減速機等を介して動力を伝えるものであるから,本件発明1の「回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構」に相当する。
甲1発明Aの「第2の型移動機構42のサーボモータ43をサーボロックして固定金型19に対して第2の中間金型39を移動させて第2の中間金型39を型開し,その後にサーボモータ43のサーボロックを解除して第1の中間金型38と可動金型15の間を型開し,可動盤16が型開完了位置に到達すると,中間盤35の上部梁部材35aに設けられた回転盤回転用のサーボモータ40を駆動させ,回転盤37と共に第2の中間金型39を180°回転(反転)させ,その後第1の型移動機構30のサーボモータ31と中間盤35の第2の型移動機構42のサーボモータ43を駆動させて固定金型19と中間金型39、中間金型38と可動金型15の型閉を行う」ことは,本件発明1の「型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われ」ることに相当する。
そして,甲1発明Aの「射出成形機」は,上記のとおり「サーボモータ」により型移動機構や回転盤の回転が行われているから,本件発明1の「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1発明Aとは,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いないで型締シリンダを用いた型締機構と電動モータにより可動盤を移動させるボールネジを用いた型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われることを特徴とする射出成形機。」である点で一致し,以下の点で相違する。
相違点(i):本件発明1では,「型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられた」ものであるのに対して,甲1発明Aでは,このような電力回生手段が備えられていない点
イ 相違点の検討
甲第2号証には,射出成形機において,複数のモータのうち少なくとも一つのモータにより発生した回生エネルギーを,駆動部と給電経路部と電力伝達部とを介して,蓄電部に充電する機能(以下「回生電力充電機構」という。)を有するとともに,蓄電部からの放出エネルギーを,電力伝達部と給電経路部と駆動部とを介して,複数のモータのうち少なくとも一つのモータに供給する機能を有し,このような機能によって,射出成形機の省エネルギー化を図ることが記載されている(摘記2b参照)。
また,甲第2号証には,射出成形機において,型開閉用モータの回生電力を,給電経路部から電源に伝達し,射出用モータ及びエジェクタ用モータの回生電力も給電経路部から電源に伝達する構成(以下「回生電力電源伝達機構」という。)を設けること,給電部は給電経路部から電源に伝達する電力を制御する場合,電源回生コンバータとして機能することが記載されている(摘記2e参照)ので,回生電力電源伝達機構によっても射出成形機の省エネルギー化を図ることが理解できる。
そして,射出成形機の省エネルギー化を図ることは,当業者にとって一般的な技術課題であって,甲第2号証には,「本発明は、型開閉用モータが少なくとも含まれる複数のモータを備える射出成形機に関する。」との記載(摘記2a参照)からみて,型開閉用モータが少なくとも含まれる複数のモータを備える射出成形機である甲1発明Aの射出成形機において,その省エネルギー化を図るために,甲第2号証に記載される回生電力電源伝達機構を適用する動機付けはあるものといえる。
しかしながら,甲第2号証のみならず,いずれの証拠にも,射出成形装置において,電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力を回収することについて記載がない。甲第3,4号証にはそもそも回生電力に関する記載はなく,特許異議申立人が意見書で提出した甲第5号証には,型締用モータ,射出用モータから回生電力を回収することは記載されているが,回転部を回転させるモータから回生電力を回収することについて記載はない。また,甲第6号証(本件出願前に頒布されたものではない),甲第7号証には,電力回生に関する一般的な記載があるのみで,射出成形装置における回転部を回転させるモータから,その回転速度を減速させる際に発生する回生電力を回収することを示唆する記載はない。
また,甲第2号証には,「モータの種類は上述の種類に限ることはなく,本発明は,射出成形機に使用されるモータであれば,他のモータにも適用できる」と記載されている(摘記2d参照)ものの,回転部を回転させるモータについて全く記載のない甲第2号証に基いて,射出成形機のモータとして回転部を回転させるモータが含まれ得ることを直ちに想起できるとはいえない。
さらに,甲第3号証には,射出成形機の回転盤が重量物であることは記載されているものの,回転盤を回転させるサーボモータが回転盤の加速時及び減速時に過大なトルクとならないように回転速度を制御することが記載されている(摘記3b参照)ことからすると,回転盤を回転させるモータにおいては,過大なトルクが生じないよう回転速度の変動を抑えるという技術思想がむしろ示唆されているといえ,回転盤が重量物であるからといって,回転盤を回転させるモータで急速な減速をして回収に適した回生電力を発生させて使用することまで当業者に認識できたとはいえない。
そうすると,甲第2号証の記載に接した当業者であっても,甲第2号証に記載された,型開閉用モータ等の回生電力を,電源回生コンバータとして機能する給電経路部から電源に伝達する機能を甲1発明Aに適用するに際して,回転盤を回転させる電動モータに着目し,かつその減速時の回生電力を用いることについて容易に想起したということはできない。
したがって,甲1発明Aにおいて,甲第1,2号証のみならず,甲第3~7号証の記載をさらに参酌したとしても,相違点(i)を構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ まとめ
以上のとおり,甲1発明Aにおいて,甲第1,2号証の記載に基いて,相違点(i)を構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない以上,本件発明1の効果について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明A及び甲第1,2号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3-2)本件発明3
本件発明3は,本件発明1において,「回転部は固定盤と可動盤の間に設けられ、型開閉方向に直交する軸を中心に回転され、前記回転部の少なくとも二面に金型がそれぞれ取付けられるとともに、回転部を電動モータにより型開閉方向に移動させる型開閉機構が設けられ、前記回転盤の型開閉方向の移動の際の減速時には前記電動モータから回生電力を発生させること」をさらに限定したものである。
そうすると,上記(3-1)で検討したとおり,本件発明1は,甲1発明A及び甲第1,2号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたといえない以上,本件発明3も,甲1発明A及び甲第1,2号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(3-3)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲1発明Bとを対比する。
甲1発明Bの「回転盤37の両面に中間金型38,39が取り付けられ」,「中間盤35の上部梁部材35aにはサーボモータ40が配置され,サーボモータ40の駆動軸と回転軸36aはベルトまたは減速機等を介して接続された」ことは,本件発明4の「金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ」たことに相当する。
甲1発明Bの「射出成形機」は,「サーボモータ」により型移動機構や回転盤の回転が行われているから,本件発明4の「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機」に相当する。
そして,本件発明4の「射出成形機の制御方法」は,射出機成形機の作動方法の一種である。
そうすると,本件発明4と甲1発明Bとは,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機の作動方法において、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられた、
射出成形機の作動方法」である点で一致し,以下の点で相違している。
相違点(iii):本件発明4が「前記電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に、前記電動モータから発生する回生電力を電源に回生する電力回生手段が備えられ」るのに対し,甲1発明Bでは,このような電力回生手段が備えられていない点
相違点(iv):本件発明4が「回転速度上昇時の電動モータのピークトルクを検出することにより前記電動モータが過負荷になっているかを検出するとともに、
前記回転部の回転後半の回転速度の減速時に電力回生を行う制御方法」であるのに対して,甲1発明Bはこのような電動モータの過負荷の検出及び電力回生を行う制御をしていない点
イ 相違点の検討
上記(3-1)イで述べたとおり,甲第2号証を含めいずれの証拠にも,射出成形装置において,電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力を回収することについて記載がなく,また,回転盤が重量物であるからといって,回転盤を回転させるモータで急速な減速をして,回収に適した回生電力を発生させることまで当業者に認識できるとはいえないから,甲第2号証の記載に接した当業者であっても,甲第2号証に記載された,型開閉用モータ等の回生電力を電源回生コンバータとして機能する給電経路部から電源に伝達する機能を甲1発明Aに適用するに際して,回転盤を回転させる電動モータに着目し,かつその減速時の回生電力を用いることについて容易に想起したということはできない。
したがって,当業者が甲1発明Bにおいて,甲第1~3号証のみならず,甲第4~7号証の記載を参酌したとしても,相違点(iii)を構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ まとめ
上記イで検討したとおり,甲1発明Bにおいて,甲第1~3号証の記載に基いて,相違点(iii)を構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない以上,相違点(iv)や本件発明4の効果について検討するまでもなく,本件発明4は,甲1発明B及び甲第1~3号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)特許異議申立人の主張
(ア)特許異議申立人の主張の概要
甲1発明において,金型及び金型を載置する型盤は金属の塊であって大重量物であることは周知であり,これらの一例でしかない回転盤は大きい慣性質量を持つことは明らかなことから,回転盤回転用のサーボモータの回転速度を減速させる際に回生電力が発生して回収できることは当業者に明らかである。
(イ)検討
上記(3-1)イ,(3-3)イで述べたとおり,射出成形装置の回転盤は重量物であるが,甲第3号証に,射出成形機の回転盤を回転させるサーボモータでは,回転盤の加速時及び減速時に過大なトルクとならないように回転速度を制御することが記載されていたことからすると,回転盤を回転させるモータにおいては,むしろ過大なトルクが生じないよう回転速度の変動を抑えるという技術思想が示唆されているといえ,回転盤が重量物であるからといって,回転盤を回転させるモータで急速な減速をして回収に適した回生電力を発生させて使用することまで当業者に認識できたとはいえない。
また,特許異議申立人が意見書で提出した甲第6,7号証をみても,電力回生に関する一般的な記載があるのみで,射出成形装置における回転部を回転させるモータにより,その回転速度を減速させる際に発生する回生電力を使用できることについて示唆する記載はない。
なお,甲第6号証は本件出願日前に頒布された刊行物ではなく,その記載内容が直ちに,本件出願時の技術常識として認定できるものでもない。
(5)小括
以上のとおり,本件発明1,3,4は,本件出願前に頒布された甲第1~4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたとはいえず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって,本件発明1,3,4に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してなされたものとはいえず,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものとはいえない。
2 特許異議申立書に記載した取消理由について
本件発明1,3,4について,特許異議申立書に記載した取消理由は,上記「第4」で示したとおり,当審取消理由と同じであるので,以下,本件発明2についてのみ判断を示す。
(1)甲号証の記載について
上記1(1)で示したとおりである。
(2)甲号証に記載された発明
上記1(2)に示したとおりである。
(3)対比・判断
ア 対比
上記1(3)(3-1)アで示した本件発明1と甲1発明Aとの対比関係からみて,
本件発明2と甲1発明Aとは,
「電動モータにより少なくとも一部の機構が作動される射出成形機において、
トグル機構を用いない型締機構と電動モータにより可動盤を移動させる型開閉機構とがそれぞれ備えられるとともに、
金型が取付けられる回転部と前記回転部を回転させる電動モータと前記回転部と電動モータの間で動力を伝達する動力伝達部を有する金型回転機構が備えられ、
前記型開閉機構による型開工程と前記金型回転機構による回転部を回転させる工程、または前記金型回転機構による回転部を回転させる工程と前記型開閉機構による型閉工程は連続した工程として行われることを特徴とする射出成形機。」である点で一致し,以下の点で相違する。
相違点(i’):本件発明2では,「型開閉機構の電動モータにより可動盤の移動速度を減速させる際に前記型開閉機構の電動モータから発生する回生電力と前記回転部を回転させる電動モータにより回転部を回転させ回転速度を減速させる際に前記電動モータから発生する回生電力とを、共通の充電装置に充電するかまたは共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生するか若しくは共通の充電装置に充電後に共通の電源回生型のコンバータを介して電源に回生する電力回生手段が備えられ」るのに対し,甲1発明Aでは,このような電力回生手段が備えられていない点
相違点(v):本件発明2は,「回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルである」のに対して,甲1発明Aは,固定盤と可動盤の間に回転盤を設け,回転盤37の両面に中間金型が取り付けられている点
イ 相違点の検討
相違点(v)について検討する。
甲第3号証には,射出成形機において,可動盤の下面に回転盤が回転自在に取り付けられ,回転盤の下面には上可動金型が取り付けられ,回転盤をサーボモータで回転させる構成が記載されている(摘記3a参照)。
また,甲第4号証には,射出成形機において,可動盤の下面に回転テーブルが回転自在に取り付けられ,回転テーブルの下面には上可動金型が取り付けられ,回転テーブルをサーボモータで回転させる構成が記載されている(摘記4a,4b参照)。
しかしながら,甲1発明Aは,固定金型が設けられた固定盤と可動金型が設けられた可動盤の間に,中間金型がその両面に設けられた回転盤が存在し,両側から金型の温度が伝熱されるために回転盤が熱膨張を起こし,中間金型と固定金型や可動金型との嵌合にずれが生じるとの課題があったため,回転盤に熱膨張を調整する冷却媒体通路を設けることを前提としたもの(摘記1a参照)であるから,甲1発明Aにおいて,回転盤の両面に存在した金型を,甲第3,4号証に記載されるように,可動盤の下面に取り付けられた回転盤の下面に金型を設ける構成,すなわち,本件発明2の「回転部は可動盤に設けられ、型開閉方向に直交する一面に金型が少なくとも1個以上取付けられる回転テーブルである」との構成に変更する動機付けがあるとはいえない。
よって,甲1発明Aにおいて,甲第3,4号証の記載に基づいて,上記相違点(v)を構成することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ まとめ
以上のとおり,甲1発明Aにおいて,甲第3,4号証の記載に基づいて相違点(v)を構成することが当業者が容易になし得たこととはいえないから,相違点(i’)を構成することが容易か否かにかかわらず,本件発明2は,甲1発明A及び甲第1~4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(4)小括
以上のとおり,本件発明2は,本件出願前に頒布された甲第1~4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたとはいえず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって,本件発明2に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してなされたものとはいえず,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり,本件発明1~4に係る特許は,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した取消理由によっては,取り消すことができない。
また,ほかに本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700710