特許異議申立
2016-700343
建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラム
- 審判番号
- 2016-700343
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-010366
- 登録番号
- 特許第5799183号(P5799183)
- 請求日
- 2016年04月21日
- 審決日
- 2017年01月19日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社NTTファシリティーズ
- 【権利者代理人】特許業務法人 志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 クラウズ
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 小川 亮
- 分類
- P1651.121-YAA(G01M) / P1651.537-YAA(G01M) / P1651.113-YAA(G01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第44条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第44条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5799183号発明「建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5799183号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、13、14、15、16、17、18について訂正することを認める。
特許第5799183号の請求項1ないし8、10ないし18に係る特許を維持する。
特許第5799183号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5799183号の請求項1~18に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年1月9日にされた特願2013-2078号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年1月22日に新たな特許出願(特願2015-10366号)としたもの(分割出願)であって、平成27年8月28日にその特許権の設定登録がされ、平成28年4月21日に特許異議申立人 株式会社クラウズ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年8月8日付けの取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年10月7日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。
(1)請求項1~12からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する(請求項3を引用する請求項5~12も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。(請求項4を引用する請求項5~12も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出する」とあるのを、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する」に訂正する(請求項6を引用する請求項7~9、11、12も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する(訂正前の請求項9を引用する請求項11、12も同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」とあるのを、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」に訂正する(請求項10を引用する請求項11、12も同様に訂正する)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件に含めた判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」とあるのを、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」に訂正し、さらに、引用先を「請求項1又は請求項2」に変更する(請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12において、引用先を「請求項1から請求項11の何れか1項」から、「請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項」に変更する。
ク 訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された「(3)また、上記の建物安全性検証システムは、前記計測部が、前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動のデータとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出することを特徴とする。」とあるのを、また、明細書の段落【0008】に「(10)また、上記の建物安全性検証システムは、前記層間変位計測部が、前記建物の第1層の層間変位を、前記第1層の変位量と前記建物の基礎部の変位量に基づいて算出することを特徴とする。」とあるのを、また、明細書の段落【0008】に「(11)また、上記の建物安全性検証システムにおける前記建物の第1層は、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層、基礎部に近い層のうちいずれかの層であることを特徴とする。」とあるのを、いずれも、削除する。
(2)請求項14に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項14に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。
(3)請求項15に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項15に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを倫理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。
(4)請求項17に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項17に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。
(5)請求項18に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項18に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か
(1)請求項1~12からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項3では、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項3に記載の特許発明では、「建物の健全性を判定する」ことまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2
訂正前の請求項4では、「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」という広い意味で記載されており、具体的に限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項4に記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」に特定することに係る説明として、段落【0065】、【0069】~【0070】及び【図8】に記載されているから、訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項6では、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出する」という訂正前の明細書に明確には記載されていない事項を含み、かつ、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原明細書等」という。)に記載されていたとはいえない事項を包含する記載になっていた。これに対し、訂正後の請求項6では、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する」ことを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記複数の層の各層の隣接する層同士のセンサが検出した当該層の振動データの変位の差分から前記センサを設けた層の層間変位を算出する」に限定することに係る説明として、本件訂正前の明細書段落【0062】~【0064】及び【図8】に記載されているから、訂正事項3は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 訂正事項4
訂正事項4は、請求項9を削除する(訂正前の請求項9を引用する請求項11~12も同様に訂正する)ものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであることは明らかである。
また、訂正事項4は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項5
訂正前の請求項10では、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を越えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を越えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」という広い意味を包含する記載になっており、具体的な条件が記載されていなかった。これに対し、訂正後の請求項10では、「前記層間変位が予め設定、された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を越えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」ことを明確にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」に特定することに係る説明として、段落【0061】~【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項5は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項5は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 訂正事項6
訂正前の請求項11では、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件に含めた判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」という広い意味を包含する記載になっていたり、具体的な条件が記載されていなかったり、曖昧な記載になっていた。また、訂正前の請求項11では、請求項3と請求項4を引用する場合に、対応関係が不明な記載になっていた。これに対し、訂正後の請求項11では、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急な調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」ことを明確にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。また、訂正後の請求項11では、対応関係が不明な記載となる請求項3と請求項4とを引用先から削減して、対応関係が明らかな記載にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、当該訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「早急な調査が必要な層」に特定することに係る説明として、段落【0022】及び【図3】~【図5】に記載されているから、訂正事項6は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ 訂正事項7
訂正事項7は、請求項12の引用先を「請求項1から請求項11の何れか1項」から、「請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項7は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ク 訂正事項8
訂正事項8は、上記訂正事項3及び4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の記載を訂正しようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ケ 一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か
訂正事項1~8は、請求項1~12に関する訂正であり、訂正前の請求項1~12は一群の請求項であるから、この訂正は一群の請求項ごとにされている。
(2)請求項14に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項14では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項14に記載の特許発明では、建物の健全性を判定することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)請求項15に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項15では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することまでは限定されていなかった。また、訂正前の請求項15では、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項15に記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、こららの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」すること及び「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0052】、【0054】、【0066】~【0070】及び【図8】に記載されており、また、この「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)請求項17に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項17では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」とは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項17に記載の特許発明では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことを明らかにすることで、特許請求の範囲を滅縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)請求項18に係る訂正
ア 訂正事項1
訂正前の請求項18では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することまでは限定されていなかった。また、訂正前の請求項18では、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項18記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」すること、及び、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0052】、【0054】、【0066】~【0070】及び【図8】に記載されており、また、この「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正の請求による訂正後の〔1~12〕、13、14、15、16、17、18について、訂正を認める。
第3 本件特許発明について
本件訂正の請求により訂正された請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明18」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~18に記載された以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項2】
前記評価部が、
前記建物の変形が予め設定された前記閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の建物安全性検証システム。
【請求項3】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項4】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項5】
前記評価部は、
地震による前記建物の傾斜の変化を前記評価の条件に含めて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の建物安全性検証システム。
【請求項6】
前記計測部は、
前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動のデータとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項7】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、地震発生後の当該建物の固有周期を求める
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項8】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求め、
前記層の振動を層ごとに検知する前記センサから前記最下層のセンサを除いたセンサ
のうちの一つのセンサは、
前記微振動センサが微振動を計測する層と同じ層に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の建物安全性検証システム。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記評価部が、
前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項11】
前記評価部が、
前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物安全性検証システム。
【請求項12】
前記センサは、前記地震による振動の加速度を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項13】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項14】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項15】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、最下層のセンサが前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項16】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。」
第4 取消理由及び申立て理由の概要
1 取消理由の概要
取消理由の概要は、以下の通りである。
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反)
本件特許発明3~12、14、15、17及び18に係る特許は、以下のア及びイにより、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 本件特許発明3~12、14、15、17及び18について
図8のフローチャートにおけるS31~S35と、請求項3~12、14、15、17及び18で特定されている「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」こととの対応関係が、明確であるとはいえない。
イ 本件特許発明11及び12について
請求項11及び12の「特定の層」と「特定の層より上の層の対応」の特定は、発明の詳細な説明と対応しない。
(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号違反)
本件特許発明1~18に係る特許は、以下の理由により、いずれも特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
本件特許発明6及び9は、原明細書等に記載した事項の範囲内のものではないから、原明細書等に記載されていない発明について特許出願がなされており、特許法第44条第1項の分割要件を満たしていないので、特許法第44条第2項の適用がなく、その出願日は、本件特許に係る出願の現実の出願日である平成27年1月22日であると認める。
その結果、原出願の公開公報である特開2014-134436号公報(以下「引用文献1」という。)は、平成26年7月24日に公開されているから、本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物であると認められ、本件特許発明1~18は、引用文献1に記載された発明であるといえる。
2 取消理由以外の申立ての理由の概要
特許異議申立人は、上記取消理由に関連しないものとして、以下の理由(1)~(3)を申立てていた。
(1)理由1(特許法第29条第2項違反、特許異議申立書第3~35頁の(4)欄)
本件特許発明1~18は、いずれも、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1~7号証を以下に示す。
甲第1号証:「多世代利用住宅の維持管理・流通を支える構造ヘルスモニタリング技術の利用ガイドライン(案)」平成23年12月 国土技術政策総合研究所(多世代利用総プロ 管理技術WG)国土交通省 国土技術政策総合研究所 HP掲載(2012年8月15日配信開始日)
http://www.nilim.go.jp/cgi-bin/mailmag/backnumber.cgi?no=123
http://www.nilim.go.jp/lab/ieg/tasedai/seika/shmguideline.pdf
甲第2号証:特開2008-281435号公報
甲第3号証:特開2003-344213号公報
甲第4号証:特開2008-224338号公報
甲第5号証:特開2011-149249号公報
甲第6号証:特開2004-93579号公報
甲第7号証:計測と制御 第46巻 第8号 2007年8月号 p632~636
(3)理由2(特許法第36条第6項第2号違反、特許異議申立書第35~37頁の(5)欄)
本件特許発明3~12、14、15、17、18は、以下のア~ウにより、いずれも、特許を受けようとする発明が明確でない。
ア 請求項3~12、14、15、17、18に記載の「論理的に組み合わせて判定」は、その定義がなく技術的意義が不明である。
イ 請求項9に記載の「前記建物の特定の層の層間変位を、前記特定の層の変位量と前記建物の基礎部の変位量に基づいて算出する」は、その技術的意義が不明である。
ウ 請求項11に記載の「特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」は、その技術的意義が不明である。
第5 当審の判断
1 取消理由についての検討
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反)について
アについて
訂正後の本件特許発明3~8、10~12、14、15、17及び18(請求項9は削除)は、 訂正前の本件特許発明3~12、14、15、17及び18に記載の「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」を、「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」と訂正するとともに、各々の本件特許発明において、図8のフローチャートにおけるS31~S35との対応関係を明確にする訂正をした。これにより、訂正後の本件特許発明3~8、10~12、14、15、17及び18(請求項9は削除)は、発明の詳細な説明との対応関係が明確になった。
イについて
訂正後の本件特許発明11及び12は、 訂正前の本件特許発明11及び12に記載の「特定の層」を、「早急な調査が必要な層」と訂正したことで、発明の詳細な説明との対応関係が明確になった。
(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号違反)について
訂正後の本件特許発明6(請求項9は削除)は、原明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第44条第1項の分割要件を満たしているので、本件特許に係る出願日は、原出願の平成25年1月9日に遡及するものと認める。
その結果、引用文献1は、本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物ではないので、本件特許発明1~8、10~18は、引用文献1に記載された発明であるといえない。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおりであるから、もはや、取消理由1及び2によっては、本件請求項1~18(請求項9は削除)に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由以外の申立ての理由についての検討
(1)理由1(特許法第29条第2項違反)について
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。
(ア)「本書は、多世代利用住宅の振動特性の変化を把握する新たな診断技術として、構造へルスモニタリング技術(SHM: Structural Health Monitoring)の普及・利活用のための計測・評価、情報の蓄積・管理等に関するガイドラインを与えるものである。」(1頁「1.1 本書の適用範囲」の上段の枠囲い)
(イ)「一般にSHMは、構造物の強振動(大規模地震・強風)や微小振動(風・中小地震・常時微動)の計測データから振動特性等を推定し、その経時・経年変化等を踏まえ、構造物の損傷・劣化の有無・箇所・度合い等を評価し、ユーザが行う補修等の対策の意思決定を支援する技術である。構造物にSHMシステムを実装することにより、例えば壁面に生じている亀裂やひび割れが構造物全体にどの程度の影響を与えるものであるか、また、外観からは把握できない構造物内部に蓄積・進展した損傷・劣化がどのような状況であるかについて、評価できる。これにより、構造物性能のうち主に「安全性」「耐久性」について、使用期間を通じて目標内容以上に維持管理し続けることを目的としている。」(2頁「(1)SHMの基本概念」の1ないし8行)
(ウ)図17
(エ)表20~22
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求めることが理解できる。
(イ)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求めることが理解できる。
(ウ)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき、避難の要否が情報提供されることが理解できる。
(エ)構造へルスモニタリング技術は、上記ア(ウ)によれば、SHMサービス事業者のサーバを用いた構造へルスモニタリングのための支援システム、支援方法、支援プログラムであるといえる。
(オ)上記(ア)~(エ)を含む上記(1)の記載を総合すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「多世代利用住宅の振動特性の変化を把握する構造へルスモニタリング(SHM: Structural Health Monitoring)システム(方法、プログラム)であって、
SHMは、構造物の強振動(大規模地震・強風)や微小振動(風・中小地震・常時微動)の計測データから振動特性等を推定し、その経時・経年変化等を踏まえ、構造物の損傷・劣化の有無・箇所・度合い等を評価し、ユーザが行う補修等の対策の意思決定を支援するシステムであり、
災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求め、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求め、前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき、避難の要否が情報提供される、構造へルスモニタリングシステム(方法、プログラム)。」(以下、「甲1発明」という。)
ウ 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比
a 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサ」は、本件特許発明1の「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサ」に相当する。
b 甲1発明の「災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求め」ることは、本件特許発明1の「前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部」に相当する。
c 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求め」ることに、建物の最上層の加速度センサの計測データを用いて1次モード振動数を求めることが含めれていることは明らかである。このこと(1次モード振動数を求めること)が、上記イ(エ)における表20の推定対象が全体レベルの場合の損傷指標となっていることからも裏付けられる。また、1次モード振動数の逆数が1次モード周期である。
これらの点に鑑みると、甲1発明の係る特定事項は、本件特許発明1の「前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部」に相当する。
d 甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることは、本件特許発明1の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部」に相当する。
e 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサ」は、共同住宅の最下層にも設けることは明らかであるから、本件特許発明1の「前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し」するものを含むといえる。
f 甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明1の「前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」こととは、
「前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とにより、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」点で共通する。
g 甲1発明の「構造へルスモニタリングシステム(方法、プログラム)」は、本件特許発明1の「建物安全性検証システム」に相当する。
(イ)本件特許発明1と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とにより、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する
建物安全性検証システム。」
(相違点)
本件特許発明1では、前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを「組み合わせて」判定し、「前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。
(ウ)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、建物の変形と固有周期とを「組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2~7号証(以下、「甲2~7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件特許発明3について
(ア)本件特許発明3と甲1発明との対比
本件特許発明3の「評価部」と甲1発明との対比を示す。
甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明3の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」、
「前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」こととは、
「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」る点で共通する。
(イ)本件特許発明3と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の2点で相違する。
(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する、
建物安全性検証システム。」
(相違点1)
本件特許発明3では、「前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部」を備えているのに対し、甲1発明では、この点が明確でない。
(相違点2)
本件特許発明3では、前記建物の変形と前記固有周期と「前記建物の傾斜角」とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、
「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。
(ウ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、固有周期の判定結果と傾斜角の判定結果とを「論理的に組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2~7号証(以下、「甲2~7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、上記相違点1について検討するもでもなく、本件特許発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 本件特許発明4について
(ア)本件特許発明4と甲1発明との対比
本件特許発明4の「評価部」と甲1発明との対比を示す。
甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明4の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」、
「前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」こととは、
「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」る点で共通する。
(イ)本件特許発明4と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の2点で相違する。
(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する、
建物安全性検証システム。」
(相違点1)
本件特許発明4では、「前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部」を備えているのに対し、甲1発明では、この点が明確でない。
(相違点2)
本件特許発明4では、前記建物の変形と前記固有周期と「前記建物の傾斜角」とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、
「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。
(ウ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、固有周期の判定結果と傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と層間変位の判定結果とを「論理的に組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2~7号証(以下、「甲2~7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、上記相違点1について検討するもでもなく、本件特許発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ 本件特許発明2、5~8、10~12について
本件特許発明1、3及び4は、上記ウ~オで検討したとおり、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件特許発明1、3及び4のいずれか1項をさらに限定する特許発明2、5~8、10~12も、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
キ 本件特許発明13~18について
本件特許発明13及び16は、本件特許発明1に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。
また、本件特許発明14及び17は、本件特許発明3に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。
また、本件特許発明15及び18は、本件特許発明4に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1、3及び4が、上記ウ~オで検討したとおり、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件特許発明13~18は、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
アについて
請求項3~12、14、15、17、18に記載の「論理的に組み合わせて判定」という記載は、日本語として明確であり、その意味も把握できるので、不明瞭であるとはいえない。
イについて
請求項9は、本件訂正の請求により削除されたので、この理由は解消されている。
ウについて
訂正後の請求項11における「早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」という記載は、日本語として明確であり、その意味も把握できるので、不明瞭な記載とはいえない。
以上のとおりであるから、本件特許発明3~12、14、15、17、18は、いずれも、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
(3)小括
上記(1)及び(2)で検討したとおりであるから、取消理由以外の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1~8、10~18に係る特許を取り消すことはできない。
第6 結び
以上のとおりであるから、取消理由及び申立ての理由によっては、本件特許発明1~8、10~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~8、10~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許発明9に係る特許は、本件訂正の請求により削除されたので、請求項9に係る特許に対する申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700343