特許異議申立
2016-700079
ポンプ装置
- 審判番号
- 2016-700079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-549281
- 登録番号
- 特許第5778693号(P5778693)
- 請求日
- 2016年01月29日
- 審決日
- 2017年07月28日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】グルンドフォス マネージメント アー/エス
- 【権利者代理人】小川 護晃
- 【異議申立人】株式会社 イワキ
- 【異議申立人代理人】きさらぎ国際特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 久保 竜一
- 審判官 中川 真一
- 分類
- P1651.121-YAA(F04B) / P1651.112-YAA(F04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5778693号発明「ポンプ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5778693号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について、訂正することを認める。
特許第5778693号の請求項1ないし3、5ないし18に係る特許を維持する。
特許第5778693号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5778693号の請求項1~18に係る特許についての出願は、平成27年7月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人株式会社イワキより特許異議の申立てがされ、平成28年5月13日付けで取消理由が通知され、平成28年8月15日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成28年10月4日付けで特許異議申立人から意見書が提出され、平成28年10月19日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成28年12月13日付けで意見書が提出され、平成29年1月31日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年5月2日付けで意見書の提出及び訂正請求がされたものである。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
平成29年5月2日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能であるか、又は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも1つの側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能でありかつその代わりに前記第1のハウジング(2)の外部に配置可能である」と記載されているのを、「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能に構成され、前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されることによって、少なくとも2つの異なる位置で前記第1のハウジング(2)と結合可能であり、前記異なる位置では、前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素(26、28、30)が、異なる空間方向に向く」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~請求項5のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3、請求項5及び請求項6のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~請求項12のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項12のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1~請求項13のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項13のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1~請求項14のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項14のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項16に「請求項1~請求項15のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項15のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項17に「請求項1~請求項16のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項16のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項18に「請求項1~請求項17のいずれか1つに記載のポンプ装置」と記載されているのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項17のいずれか1つに記載のポンプ装置」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1及び当該請求項を引用する請求項2,3,5~18について、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能であるか、又は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも1つの側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能でありかつその代わりに前記第1のハウジング(2)の外部に配置可能である」を「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能に構成され」ることのみに限定するとともに、当該事項について、新たに「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されることによって、少なくとも2つの異なる位置で前記第1のハウジング(2)と結合可能であり、前記異なる位置では、前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素(26、28、30)が、異なる空間方向に向く」との事項を加入することによりさらなる限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項1に新たに加入された前記事項は、訂正前の明細書の段落0012,0013及び0028、特許請求の範囲の請求項4並びに図1~4に記載されているといえるから、訂正事項1は、本件出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項3~11は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、これらの訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正を認める。
第3.特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
特許第5778693号の請求項1ないし3,5ないし18に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」,「本件特許発明5」ないし「本件特許発明18」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし3,5ないし18に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
駆動モータ(14)と、該駆動モータ(14)を操作するための制御電子装置(18)が内部に配置される第1のハウジング(2)と、を備えるポンプ装置であって、
少なくとも1つのディスプレイ要素及び/又は操作要素(26、28、30)を含んで構成される操作装置(20)を有し、
前記第1のハウジング(2)は多面体であり、
前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能に構成され、
前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されることによって、少なくとも2つの異なる位置で前記第1のハウジング(2)と結合可能であり、前記異なる位置では、前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素(26、28、30)が、異なる空間方向に向くことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記操作装置(20)は、前記制御電子装置(18)と信号接続されることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)と着脱可能に結合可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の、異なる方向に向けられた少なくとも2つの面に配置されて、前記第1のハウジング(2)と結合可能であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記第1のハウジング(2)は直方体形状であることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記第1のハウジンク(2)は第1の壁(38)を含んで構成され、該第1の壁(38)を通して前記操作装置(20)との信号接続がもたらされ、前記操作装置(20)は2つの接触面(44、48)を含んで構成され、これら接触面のうち第1の接触面(44)は、前記第1のハウジング(2)の前記第1の壁(38)と接触し、第2の接触面(48)は、前記第1の壁(38)に隣接する前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの側壁(32、34、36)と選択的に接触することを特徴とする請求項1~請求項3、請求項5及び請求項6のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記操作装置(20)の前記2つの接触面(44、48)は互いに角度が付けられて延在することを特徴とする請求項7に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素(26、28、30)は前面(24)に配置され、該前面(24)は、前記操作装置(20)の前記2つの接触面(44、48)の少なくとも一方に対して角度が付けられて延在することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記前面(24)は、5°~80°の範囲内の角度αで前記2つの接触面(44、48)の少なくとも一方に対して角度が付けられることを特徴とする請求項9に記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記第1のハウジング(2)の前記第1の壁(38)には開口(40)が形成されており、該開口(40)を通って信号線(45)が前記操作装置(20)につながることを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記開口(40)の中心点(A)は、前記第1の壁(38)に隣接し、かつ、前記操作装置(20)が位置決めされ得る少なくとも2つの側壁(32、34、36)の各々の縁から同じ距離で離隔していることを特徴とする請求項11に記載のポンプ装置。
【請求項13】
前記第1のハウジング(2)は、内部に前記駆動モータ(14)が配置されるモータハウジングであるか、又は、端子箱であることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項12のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項14】
前記ポンプ装置は、定量ポンプ装置であるか、又は、遠心ポンプ装置であることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項13のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記第1のハウジング(2)は、内部に前記駆動モータ(14)が配置され、かつ、一側でポンプ(4)と結合されるモータハウジングであり、前記操作装置(20)は、前記モータハウジング(2)の、前記ポンプ(4)から離れた2つの側壁(32、34、36)に選択的に位置決め可能であることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項14のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項16】
前記操作装置(20)は、該操作装置(20)によって覆われる前記第1のハウジング(2)の壁(32、34、36、38)の少なくとも一部分と離隔して配置されることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項15のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項17】
前記制御電子装置(18)は、前記駆動モータ(14)の回転数制御のための周波数変換器を備えることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項16のいずれか1つに記載のポンプ装置。
【請求項18】
前記駆動モータ(14)はステッピングモータであることを特徴とする請求項1~請求項3及び請求項5~請求項17のいずれか1つに記載のポンプ装置。」
2.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要の概要
当審において、訂正前の請求項1~3,6,13,14,16~18に係る特許に対して平成29年1月31日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア.甲第6号証(米国特許出願公開第2006/0129088号明細書)に記載されている発明により、請求項1~3,6,13,14,16~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)甲第6号証の記載
(2-1)取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第6号証には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
(ア)「[0007] There is shown in FIG. 1 an example of a metering pump system according to the invention. The system may include a metering pump 10 mounted on a base 13. The pump 10 may be driven by a motor 16. The pump 10 may be controlled via a human interface device 19 that is selectively attachable/detachable to a bracket 22. FIG. 2 depicts an interface device 19 and bracket 22 that is in keeping with the invention. The bracket 22 may be attached to the pump base 13. The human interface device 19 may be used to communicate changes in the stroke length and/or the motor speed of the metering pump 10, and thereby adjust the amount of material pumped by the metering pump 10, or the timing at which the pump 10 pumps material, or both.
[0008] The pump base 13 may serve as a housing for control electronics. The control electronics may accept signals provided by the human interface device 19, interpret those signals from the human interface device 19, and provide control signals to the metering pump 10, motor 16, or both in order to alter the amount of material pumped, timing at which the pump 10 pumps material, or both. The control electronics may be mounted on the inside surface of the maintenance door 31.
[0009] Communication between the human interface device 19 and the electronics in the pump base 13, may be via wired or wireless connections. In FIG. 1, there is shown a wired connection in which an input communication line 25 and two output communication lines 28 A, 28 B are shown.」
(イ)「[0012] The embodiment of the invention described above allows the pump 10 to be controlled via the human interface device 19, regardless of whether the human interface device 19 is attached to the bracket 22. In this fashion, the human interface device 19 may be stored on the bracket 22, but allow an operator to remove the human interface device 19 from the bracket 22 and control the pump 10 from a location that is distant from the pump 10. This may improve safety for the operator, for example where the pump 10 is used to pump hazardous material, or where the pump 10 is in a noisy environment.」
さらに、特にFIG. 1の記載から、以下の事項が看取できる。
(ウ)ポンプベース(a pump base)13が多面体である。
また、記載事項(ア)、特に「The bracket 22 may be attached to the pump base 13.」の記載から、甲第6号証にはブラケット(a bracket)22がポンプベース(a pump base)13に取り付けられるものも記載されている。さらに、記載事項(イ)、特に「the human interface device 19 may be stored on the bracket 22, but allow an operator to remove the human interface device 19 from the bracket 22 and control the pump 10 from a location that is distant from the pump 10.」を併せ考慮すれば、甲第6号証には、以下の事項が記載されていると理解できる。
(エ)ブラケット(a bracket)22は、ポンプベース(a pump base)13に取り付けられ、ヒューマン・インタフェース装置(a human interface device)19は、前記ブラケットに保持され得るが、操作者は、該ヒューマン・インターフェース装置を前記ブラケットから取り外し、前記ポンプベースから離れた場所から定量ポンプ(a metering pump)10を制御することができる。
(2-2)以上のことから、甲第6号証には、本件特許発明に倣って整理すれば、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「定量ポンプ(a metering pump)10を含み、該定量ポンプはポンプベース(a pump base)13上に設置されるとともにモータ(a motor)16により駆動され、前記ポンプベースは制御電子装置(control electronics)のハウジングとして用いられる、定量ポンプシステム(a metering pump system)であって、
前記定量ポンプは、ヒューマン・インタフェース装置(a human interface device)19を介して制御され、前記制御電子装置は、該ヒューマン・インターフェース装置から信号を受け、該信号を解釈し、前記定量ポンプ及び前記モータに制御信号を与え、
前記ポンプベース13は、多面体であり、
ブラケット(a bracket)22は、前記ポンプベースに取り付けられ、前記ヒューマン・インタフェース装置は、前記ブラケットに保持され得るが、操作者は、前記ヒューマン・インターフェース装置を前記ブラケットから取り外し、前記ポンプベースから離れた場所から前記定量ポンプを制御することができる、定量ポンプシステム。」
(3)対比・判断
ア.本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明は、「操作装置は、第1のハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されて前記第1のハウジングと結合可能に構成され、前記操作装置は、前記第1のハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されることによって、少なくとも2つの異なる位置で前記第1のハウジングと結合可能であり、前記異なる位置では、前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素が、異なる空間方向に向く」とする事項を有していない。そして、当該事項により、本件特許発明1は、「取付け位置もしくは設置場所に応じて操作装置の位置決めもしくは配置をきわめて簡単に変更することができ、例えば異なる取付け場所のために異なるポンプ装置を提供する必要がない」(明細書段落0006)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件特許発明2,3,5ないし18について
本件特許発明2,3,5ないし18は、本件特許発明1を減縮したものであり、本件特許発明1と同様の理由(前記「第3 2.(3)ア.」参照)で、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
3.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった理由の概要
ア.特許法第29条第1項第2号(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証~甲第5号証で特定される公然実施発明である.
イ.特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1~15,17,18に係る発明は、甲第1号証~甲第5号証で特定される公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証:「cav(chemie-anlagen +verfahren), 2009年8月号,Konradin Verlag R. Kohlhammer GmbH 発行」の表紙、第58頁及び奥付けの写し並びに部分訳文
甲第2号証:「イワキ製品カタログ(IWAKI PUMPEN PRODUKTFUEHRER 2009年発行)」の写し及び部分訳文(当審注:UEは、ウー・ウムラウトの代替表示。)
甲第3号証:「Intertek Listing Constructional Data Report (CDR) Report No. JY09080092-E02 DRAFT 2009年10月26日」の写し及び部分訳文
甲第4号証:「Intertek Listing Constructional Data Report (CDR) Report No. JY09080092-E02 2010年6月23日」の写し及び部分訳
甲第5号証:「イワキ製品カタログ(IWAKI IX series Hi-Techno Pump 2010年発行)」の写し及び部分訳文
(2)対比・判断
ア.本件特許発明1について
(ア)甲第1号証~甲第5号証のいずれにも、「操作装置は、第1のハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されて前記第1のハウジングと結合可能に構成され、前記操作装置は、前記第1のハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されることによって、少なくとも2つの異なる位置で前記第1のハウジングと結合可能であり、前記異なる位置では、前記少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素が、異なる空間方向に向く」点が開示されていない。
(イ)本件特許発明1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4に係る発明に相当するものである。
そして、特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1に係る発明について、
「甲第1号証には、「多機能操作ユニット」(コントローラユニット)について、「ユーザフレンドリーな多言語LCDディスプレイによって、駆動モード“手動、バッチ、パルス、時間、アナログ及びプライム”が選択される。」(中央欄7行~11行、翻訳文28行~29行)と記載されている。
このコントローラユニットに関し、甲第3号証の17頁の図面において、後部ケース(119)、コントローラ上部ケース(121)及びコントローラケースカバー(122)、並びにそれらの内部に収容された構成が、本件特許発明1における「操作装置(20)」に相当する。
甲第1号証及び甲第2号証の写真には、「上部ケース」(116)及び「下部ケース」(117)からなるハウジングが多面体であることが開示されている。
甲第1号証には、「コントローラユニットは、6つの位置に調整可能であり、これにより設置状況に関わらず常にポンプへの最適なアクセスが可能になる。」(中央欄11行~15行、翻訳文29行~31行)と記載されている。また、甲第2号証には、コントローラユニットがポンプのハウジングの上面に取り付けられたもの(左)と、側面に取り付けられたものが記載されている。なお、同様の構成は、甲第3号証の第3頁及び甲第4号証の第3頁にも開示されている。さらに、甲第5号証の第5頁には、コントローラユニットがポンプのハウジングの上面から背面に亘って背面に向けて傾斜して取り付けられる態様(TB Type)と、ハウジングの上面から右側面に亘って取り付けられる態様(TR Type)と、ハウジングの右側面から背面に亘って取り付けられる態様(RF Type)と、ハウジングの上面から背面に亘って正面に向けて傾斜して取り付けられる態様(TF Type)と、ハウジングの左側面から背面に亘って取り付けられる態様(LF Type)と、ハウジングの上面から左側面に亘って取り付けられる態様(TL Type)との6つの取り付け態様が開示されている。
よって、公然実施発明は、本件特許発明1(当審注:訂正前の請求項1に係る発明)のように、「前記操作装置(20)は、前記第1のハウジング(2)の少なくとも2つの異なる側壁(32、34、36)に配置されて前記第1のハウジング(2)と結合可能である」構成となっている。」
と主張し(特許異議申立書第16ページ第26行~第17ページ第26行参照)、訂正前の請求項4に係る発明に対し、
「甲第1号証には、「コントローラユニットは、6つの位置に調整可能であり、これにより設置状況に関わらず常にポンプへの最適なアクセスが可能になる。」(中央欄11行~15行、翻訳文29行~31行)と記載されている。また、甲第2号証には、コントローラユニットが上面と側面のそれぞれに配置され、それぞれの位置でハウジングと結合可能であり、それぞれの位置では、ディスプレイと操作要素とが異なる空間方向に向いている。
よって、本件特許発明4(当審注:訂正前の請求項4に係る発明)は、上記公然実施発明に該当し、特許法第29条第1項第2号の規定により、特許を受けることはできない。」
と主張している(特許異議申立書第18ページ第27行~第19ページ第5行参照)。
(ウ)これらの主張について検討すると、特に甲第5号証の第5頁から、甲第1号証~甲5号証から特定される発明のポンプには、(1)コントローラ(Controller)がポンプの上面に、その文字LCD(a character LCD)及びキーパッド(keypad)が配置された面(以下、「操作面」という。)がポンプの背面に向けて傾斜する方向に配置される形式(TB Type)、(2)前記コントローラがポンプの上面に、その操作面がポンプの右側面に向けて傾斜する方向に配置される形式(TR Type)、(3)前記コントローラがポンプの右側面に配置される形式(RF Type)、(4)前記コントローラがポンプの上面に、その操作面がポンプの前面に向けて傾斜する方向に配置される形式(TF Type)、(5)前記コントローラがポンプの左側面に配置される形式(LF Type)及び(6)前記コントローラがポンプの上面に、その操作面がポンプの左面に向けて傾斜する方向に配置される形式(TL Type)という、ポンプの6つの形式があることが理解できる。
しかしながら、甲第1号証には、操作部(Bedieneinheit)の位置が6つに調整可能である旨記載されているが、操作部の位置を調整可能としている具体的な構造は開示されていない。
また、甲第2号証には、前記操作部がポンプのハウジングの上面に配置された形式のポンプと前記操作部がポンプのハウジングの側面に配置された形式のポンプの2つが記載されているが、前記操作部とポンプのハウジングとの具体的な結合構造は開示されていない。
さらに、甲第3号証(特に第3頁参照)、甲第4号証(特に第3頁参照)及び甲第5号証(特に第5頁参照)を併せて参照すれば、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明において、ポンプのハウジングの上面に配置される前記操作部とポンプのハウジングの側面に配置される前記操作部は、その外観形状が異なっていることから、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明は、ポンプのハウジングの上面に配置される前記操作部がポンプのハウジングの側面にも配置可能であるものではない。
そうすると、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明において、本件特許発明1の「操作装置」に相当する部材が、ポンプハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されて前記ポンプハウジングと結合可能に構成され、ポンプのハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されることによって少なくとも2つの異なる位置で該ハウジングと結合可能であり、前記異なる位置では、少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素が異なる空間方向に向くとはいうことはできない。
(エ)以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明であるとはいえない。さらに、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明において、本件特許発明1の「操作装置」に相当する部材を、ポンプハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されて前記ポンプハウジングと結合可能に構成し、ポンプのハウジングの少なくとも2つの異なる側壁に配置されることによって少なくとも2つの異なる位置で該ハウジングと結合可能であり、前記異なる位置では、少なくとも1つのディスプレイ要素又は操作要素が異なる空間方向に向くようにする動機付けは存在しないから、本件特許発明1は、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるともいえない。
イ.本件特許発明2,3,5~18について
本件特許発明2,3,5~18は、本件特許発明1を減縮したものであり、本件特許発明1と同様の理由(前記「第3 3.(2)ア.」参照)で、本件特許発明2,3,5~18は、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明であるとも、甲第1号証~甲第5号証で特定される発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるともいえない。
第4 結び
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし3,5ないし18に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1ないし3,5ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項4に対して特許異議申立人株式会社イワキがした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700079