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特許異議申立

2015-700234

薬注制御方法及び薬注制御装置

審判番号
2015-700234
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2010-118151
登録番号
特許第5736607号(P5736607)
請求日
2015年11月27日
審決日
2017年02月10日
公報発行日
2017年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社イワキ
  • 【権利者代理人】伊丹 勝
  • 【異議申立人】尾田 久敏
審判長/審判官
  • 審判長 千壽 哲郎
  • 審判官 窪田 治彦
  • 審判官 結城 健太郎
分類
P1651.537-YAA(F28G) / P1651.55 -YAA(F28G) / P1651.113-YAA(F28G) / P1651.121-YAA(F28G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5736607号発明「薬注制御方法及び薬注制御装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5736607号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕,〔3,4〕について訂正することを認める。 特許第5736607号の請求項3及び4に係る特許を維持する。 特許第5736607号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯の概略 1 特許第5736607号の請求項1ないし4に係る特許(以下「本件特許」という。)に関する手続の経緯は,概ね以下のとおりである。 平成22年 5月24日  出願 平成26年 1月15日  拒絶理由通知書 平成26年 3月20日  意見書及び手続補正書 平成26年 8月22日  拒絶理由通知書(最後) 平成26年10月14日  意見書及び手続補正書 平成27年 5月 1日  特許権の設定登録 平成27年 6月17日  特許公報発行 平成27年11月27日  特許異議申立書(異議申立人 尾田久敏) 平成28年 2月19日  取消理由通知書 平成28年 4月22日  訂正請求書及び意見書(特許権者) 平成28年 5月10日  通知書(訂正請求があった旨の通知) 平成28年 6月10日  意見書(異議申立人) 平成28年 7月21日  訂正拒絶理由通知書 平成28年 9月 1日  手続補正書及び意見書(特許権者) 平成28年10月 3日  取消理由通知書(決定の予告) 平成28年12月 5日  訂正請求書及び意見書(特許権者) 平成28年12月 8日  通知書(訂正請求があった旨の通知) 2 平成28年4月22日付けの訂正請求書に係る訂正の請求は,取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 以下,平成26年10月14日付けの手続補正書に係る補正を「本件出願に係る補正」といい,平成28年12月5日付けの訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。 なお,本件訂正に関し,異議申立人から意見書は提出されなかった。 第2 本件訂正の適否について 1 本件訂正の内容 本件訂正の請求は,平成28年12月5日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし4について訂正を求めるものであって,その訂正内容は次のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に, 「冷却塔におけるブロー弁の動作を制御するブロー弁動作制御手段と,」 とあるのを, 「前記循環冷却水の電導度に基づいて冷却塔におけるブロー弁の動作を制御するブロー弁動作制御手段と,」 と訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に, 「前記ブロー弁が高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない低負荷時における循環運転時に,」 とあるのを, 「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない低負荷時であって,ブロー動作が停止してから,前記ブロー弁が,ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない前記低負荷時における循環運転時に,」 と訂正する。 2 判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は,請求項1を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は,請求項2を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は,請求項3において「ブロー弁動作制御手段」が,「循環冷却水の電導度に基づいて」ブロー弁の動作を制御するものであることを限定したものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,本件特許明細書には,「ブロー動作制御部11は,・・・電導度測定部13からの情報に基づき,ブロー弁7の動作を制御する。」(【0021】),「電導度測定部13は,・・・電導度センサ15a或いは・・・電導度センサ15bからの情報に基づいて循環冷却水の電導度を測定する。」(【0023】),「電導度測定部13によって循環冷却水の電導度が測定され,ブロー動作制御部11は,この電導度測定部13からの情報に基づいて,図4に示すように,電導度が高くなって制御開始点以上となったか否かを判定する(ステップS100)。電導度が制御開始点以上となったと判定した場合(ステップS100のY)は,ブロー動作制御部11は,ブロー弁7の動作を制御してブロー動作を行う(ステップS102)。」(【0026】),「循環冷却水の水質が劣化すると電導度が高くなるという性質を利用することで,ブロー動作制御部12は,この電導度が所定の制御開始点以上となった場合にブロー弁7を開けてブロー動作を行う。こうしてブロー動作が行われると,循環冷却水の水質は改善され,電導度が低下する。」(【0027】),「そして,ブロー動作制御部11は,電導度測定部13からの情報に基づき電導度が低くなって制御停止点以下となったか否かを判定する(ステップS104)。電導度が制御停止点以下となったと判定した場合(ステップS104のY)は,ブロー動作制御部11は,ブロー弁7の動作を制御してブロー動作を停止する(ステップS106)。」(【0028】)と記載されており,図3及び4には,循環冷却水の電導度に基づいてブロー弁の動作を制御する点が記載されている。 よって,訂正事項3は,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4について ア 訂正事項4は,取消理由に対応するために,請求項3において, (ア) 「低負荷時」が,「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない」時であること (イ) 「高負荷運転時」が,「ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する」時であること (ウ) 「所定時間」が「ブロー動作が停止してから」の時間であること を明確にしたものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ そして,本件特許明細書には,「そして,薬注動作制御部12は,・・・ブロー弁7が動作しておらずブロー動作が停止している時間が所定時間Tよりも長いか否か(所定時間T以上であるか否か)を判定する(ステップS110)。図4に示すように,例えばブロー動作が行われていない場合は,冷却設備の低負荷時における循環運転が行われている場合などが相当し,ブロー動作が頻繁に行われている場合は,高負荷運転が行われている場合などが相当する。」(【0033】)と記載され,「低負荷時」には,ブロー動作が所定時間T以上停止し,「高負荷運転時」には,ブロー動作が頻繁に行われることがわかる。 また,図3に記載されたフローチャートから,循環冷却水の電導度が制御開始点以上になるとブロー動作が行われること,ブロー動作を停止した後にブロー動作停止時間が所定時間T以上となると補助薬注動作が行われることがわかる。 そして,図4に記載された冷却設備の動作を示す波形図から,ファンが動作し循環冷却水の電導度が制御開始点以上となるとブロー動作が行われること,ブロー動作が停止してからブロー動作が所定時間T以上停止している時に,循環冷却水の電導度が制御開始点まで上昇しないことがわかる。 ウ そうすると,訂正事項4は,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (5) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであって,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕,〔3,4〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などという。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 開放循環冷却水系の循環冷却水への水処理薬剤の注入を制御する薬注制御装置であって, 前記循環冷却水の電導度に基づいて冷却塔におけるブロー弁の動作を制御するブロー弁動作制御手段と, 前記循環冷却水に前記水処理薬剤を注入する薬注装置を制御する薬注制御手段とを備え, 前記薬注制御手段は, 前記ブロー弁動作制御手段からの信号に基づいて,前記循環冷却水のブロー動作中に,前記薬注装置に薬注動作を行わせないように制御するとともに,前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない低負荷時であって,ブロー動作が停止してから,前記ブロー弁が,ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない前記低負荷時における循環運転時に,前記循環冷却水に前記水処理薬剤を所定量注入する補助薬注動作を前記薬注装置に行わせるように制御する ことを特徴とする薬注制御装置。 【請求項4】 前記薬注制御手段は,前記ブロー動作が行われた後に,前記ブロー弁の開いた時間に比例して前記薬注装置に前記薬注動作を行わせるように制御する ことを特徴とする請求項3記載の薬注制御装置。」 2 取消理由の概要 本件訂正前の本件特許に対し,平成28年10月3日付けで通知した取消理由1ないし4は,概ね,次のとおりである。 (1) 請求項1及び3において「補助薬注動作」に係る制御に関する記載が明確でないから,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 (2) 本件出願に係る補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 (3) 本件発明1ないし4は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないから,本件特許は取り消されるべきものである。 (4) 本件発明1ないし4は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用例1及び2に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件特許は取り消されるべきものである。 (引用例) 引用例1:特開2010-94624号公報(異議申立人提出の甲第1号証) 引用例2:特開平11-63746号公報(同甲第2号証) なお,本件訂正により,本件発明1及び2は削除されたので,本件発明3及び4について以下に検討する。 3 取消理由1(36条6項2号)について (1)ア 本件訂正により, (ア) 「低負荷時」が,「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない」時であること (イ) 「高負荷運転時」が,「ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する」時であること (ウ) 「所定時間」が「ブロー動作が停止してから」の時間であること が明確に特定された。 イ そして,本件特許明細書によれば,高負荷運転時にブロー動作が頻繁に行われ,循環冷却水の電導度が上昇し,それが制御開始点以上となるとブロー動作をし,その後電導度が制御停止点以下となるとブロー動作を停止するといった一連の動作を,ブロー動作停止時間が所定時間T以上となるまで,所定時間Tよりも短い間隔で周期的に繰り返すことがわかり((【0033】,【0034】,図3,4),高負荷運転時に運転条件は変動しうると解されるが,上記のような一連の動作は技術常識的な長さの間隔で周期的に繰り返されるものと認められる。 このように,本件特許明細書に開示された内容や技術常識に照らせば「高負荷運転時におけるブロー周期」を特定することができ,当該「所定時間」が,「高負荷運転時におけるブロー周期」よりも長い,高負荷運転時と低負荷時とを識別しうる長さに設定されたものであることが理解できる。 そうすると,請求項3において,「低負荷時の循環運転時」,補助薬注動作を行う時機を明確に特定することができ,「補助薬注動作」に係る制御を明確に特定することができる。 ウ 請求項3には,その他不明確なところは認められないから,本件発明3は明確である。 以上の点は,請求項3を引用する請求項4についても同様である。 よって,本件発明3及び4は明確でないとすることはできない。 (3) 以上のとおり,本件発明3及び4は明確であるから,本件特許に係る出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 4 取消理由2(17条の2第3項)について (1) 本件出願に係る補正により追加された,請求項3における「前記ブロー弁が高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない低負荷時における循環運転時に」補助薬注動作を行うように制御する点は,薬注制御手段が,「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない低負荷時であって,ブロー動作が停止してから,前記ブロー弁が,ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない前記低負荷時における循環運転時に・・・補助薬注動作を前記薬注装置に行わせるように制御する」ことをいうものである。 そして,以上の点は,願書に最初に添付した明細書(【0033】,【0034】)又は図面(図3,4)に記載された事項や技術常識に照らせば,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内の事項と認められる。 よって,請求項3に係る上記の点に関する補正は,新規事項の追加にあたらない。 (2) 以上のとおり,本件出願に係る補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 5 取消理由3及び4(29条1項3号及び29条2項)について (1) 引用例1に記載された事項 引用例1には,以下の事項が記載されている。 ・「【0001】 本発明は循環水系の運転制御装置,及び循環水系の運転方法に関し,より詳しくは薬剤が注入された循環水を使用して熱交換器等の被冷却装置を直接又は間接的に冷却する循環水系の運転制御装置,及び循環水系の運転方法に関する。」 ・「【0017】 本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって,循環水中の薬剤濃度を適正範囲に維持しつつ,循環水に注入された薬剤が即座に排水されて無駄に消費されてしまうのを回避することができる循環水系の運転制御装置,及び循環水系の運転方法を提供することを目的とする。」 ・「【0031】 図1は,本発明に係る循環水系としての開放式冷却塔(以下,単に「冷却塔」という。)の運転制御装置について,第1の実施の形態を示すシステム構成図である。 【0032】 冷却塔1は,冷却塔本体2が,上部に開口部3を有すると共に,該開口部3にはファン4が配設され,かつ側面には外気を導入する通気孔としてのルーバー5が傾斜状に設けられている。 【0033】 また,冷却塔本体2の下部には循環水となる補給水を貯留する貯留部6が設けられると共に,該貯留部6には循環水の一部をブロー水としてオーバーフローを利用して系外に排水するブロー管7が設けられている。 【0034】 冷却塔本体2の下部には貯留部6内の水位を管理するボールタップ式給水栓(以下,「給水栓」という。)9が配されている。そして,該給水栓9には補給水ライン10が接続されると共に,該補給水ライン10には流量計11が介装され,補給水が循環水として貯留部6に給水されるように構成されている。また,流量計11は,補給水量に応じたパルス信号(以下,「流量パルス」という。)を発し,後述する制御部に送信する。 【0035】 また,流量計11の下流側には強制給水ライン12が給水ライン10から分岐して設けられている。該強制給水ライン12には電動弁13が介装されており,給水栓9により給水停止状態にあるときであっても強制給水ライン12から補給水が貯留部6に給水されることにより,循環水の一部がブロー管7をオーバーフローするように構成され,循環水の希釈及び排水が可能とされている。すなわち,強制給水ライン12,電動弁13及びブロー管7は,強制給水による排水手段として機能するように構成されている。 ・・・ 【0037】 また,貯留部6には,電気伝導率センサ(水質検出手段)14が挿設され,循環水の電気伝導率を検出する。そして,電気伝導率が過度に大きくなると,電動弁13が開弁し,強制給水ライン12から貯留部6へ強制的に補給水を給水することにより,循環水の一部はブロー管7をオーバーフローして系外に排水されると共に,循環水が希釈される。 【0038】 このようにして循環水の濃縮倍率を低下させることができ,これにより循環水の濃縮倍率が管理される。 【0039】 また,冷却塔本体2には薬注装置15が取り付けられている。この薬注装置15は薬剤(不図示)が貯留されると共に薬注ポンプ16aが内蔵された薬注装置本体16と,薬注ポンプ16aに接続されて貯留部6に挿設されたノズル17とを有している。そして,薬注ポンプ16aは,流量計11が発する流量パルスに応じ所定パルス幅で間欠的に駆動し,これにより必要に応じて薬剤が循環水に注入される。 ・・・ 【0042】 さらに,循環パイプ18の管路中には,循環水を冷却塔本体2の上部に還流させる循環ポンプ20と,循環水の温度を検出する温度センサ21と,熱交換器等の被冷却装置22とが配設されている。 ・・・ 【0046】 すなわち,制御部24は,制御対象となる構成部材との間でインターフェース動作を司る入出力部25と,所定の演算プログラム等が格納されたROM26と,演算結果を記憶したりワークエリアとして使用されるRAM27と,システム全体の制御を司るCPU28とを備えている。 【0047】 そして,流量計11,電気伝導率センサ14及び温度センサ21からの出力信号が入出力部25に入力され,また制御部24からの出力信号が薬注ポンプ16a,電動弁13及び循環ポンプ20に入力される。さらに,入出力部25にはインバータ装置29が電気的に接続されて該インバータ装置29との間で信号の授受を行い,モータ23の電源周波数を制御し,モータ23の回転数を変更する。」 ・「【0048】 このように構成された冷却塔は,以下のように運転制御される。 【0049】 図1において,まず,モータ23の駆動によりファン4が回転する。そしてこれにより,矢印A方向からルーバー5を介して冷却塔本体2内部に外気が流入し,また,この外気は冷却塔本体2の内部を循環して矢印Bに示すように,外部に排出される。 【0050】 そして,補給水が給水ライン10から給水栓9により給水が停止するまで冷却塔本体2に連続的に供給され,貯留部6に貯留される。これと並行して流量計11は補給水の通過に伴って流量パルスを発し,該流量パルスが制御部24に送信される。そして,流量パルスを受信した制御部24は,所定流量パルス(例えば,5パルス)毎に薬注ポンプ16aに駆動信号を送信する。この駆動信号を受信した薬注ポンプ16aは,所定パルス幅でもってノズル17から薬剤を吐出し,薬剤濃度が適正範囲となるように補給水に間欠的に注入する。 【0051】 貯留部6に貯留された補給水は,循環ポンプ20の駆動により,循環水として循環パイプ18を循環し,被冷却装置22を冷却する。 【0052】 一方,電気伝導率センサ14は循環水の電気伝導率を常時監視し,電気伝導率が第1の所定値E1を超えると循環水は過度に濃縮されたと判断し,電動弁13を開弁してブロー制御を開始する。すなわち,強制給水ライン12を介して補給水を強制的に給水して循環水を希釈しつつ,循環水の一部をブロー管7からオーバーフローさせて排水する。そして,電気伝導率が第2の所定値E2に低下すると,電動弁13を開弁して補給水の強制的な給水を停止し,ブロー制御を終了する。 【0053】 そして,本第1の実施の形態では,制御部24が,循環水の一部を系外に排水する排水期間中は薬剤の注入を禁止する薬剤注入禁止手段と,前記排水期間中の補給水量(流量パルス計数値)を記憶する補給水量記憶手段と,該補給水量記憶手段で記憶された補給水量に応じた薬剤量を前記排水期間経過後に前記循環水に補充注入する補充注入手段とを有している。」 ・「【0071】 図5は,本発明に係る循環水系としての冷却塔の運転制御装置について,第2の実施の形態を示すシステム構成図である。 【0072】 第1の実施の形態に係る冷却塔では,補給水ライン10に流量計11が介装されていたが,第2の実施の形態に係る冷却塔では,強制給水ライン12に定流量弁8(定流量化手段)が介装されている。 【0073】 図6は,第2の実施の形態に係る冷却塔の制御系を示すブロック構成図である。該第2の実施の形態では,CPU28′に内蔵されたタイマ28a′によりブロー制御中の排水期間T2を計時し,該排水期間T2と定流量弁8の設定流量から排水期間T2中の補給水量を算出し,排水期間中に給水された補給水量に応じた薬剤量を排水期間経過後に注入している。」 ・「【0074】 図7は,第2の実施の形態に係る冷却塔の運転制御手段を示すフローチャートであって,本プログラムは,第1の実施の形態と同様,冷却塔の運転により起動し,その停止により終了する。 【0075】 ステップS11では,薬注制御を行う。まず,補給水を補給水ライン10から貯留部6に給水する。そして,制御部24は,補給水量に比例した薬剤量が注入されるように一定時間間隔(例えば30分)毎に薬注ポンプ16aに駆動信号を送信し,薬注装置本体16に貯留された薬剤をノズル17から所定のパルス幅で循環水に注入する。 【0076】 薬注制御を行う際の補給水量は,下記数式(1)(2)より蒸発損失量E及び飛散損失量Wを算出し,これら蒸発損失量E及び飛散損失量Wの合計値(E+W)から推定する。 【0077】 E=R×(t1-t2)/λ ・・・(1) W=R×0.001 ・・・(2) ここで,Rは循環水量(kg/h),t1は循環水入口温度(℃),t2は循環水出口温度(℃),λは蒸発潜熱(kcal/kg)である。 ・・・ 【0079】 そして,この推定された補給水量に基づき,薬注ポンプ16aに駆動信号を送信する時間間隔,及び薬剤を注入するパルス幅を予め制御部24に設定しておく。 【0080】 次に,ステップS12ではブロー制御を開始するか否かを判断する。そして,その答が否定(No)の場合はステップS11に戻る一方,その答が肯定(Yes)の場合は,ステップS13に進み,薬剤の注入を禁止し,電動弁13を開弁してブローを実行する。また,これと同時にタイマ28a′により排水期間の計時を開始し,RAM27に記憶する。 【0081】 次いで,ステップS14ではブロー制御を終了するか否かを判断する。そして,その答が否定(No)のときはブロー制御の終了を待機する一方,その答が肯定(Yes)になると,ステップS15に進み,排水期間の計時を終了して該排水期間を算出し,続くステップS16では排水期間の経時値に定流量弁8の設定流量値を乗じて排水期間の補給水量を求め,該補給水量に応じた薬剤量を算出する。そして,ステップS17ではステップS16で算出された薬剤量を補給水に補充注入する。そしてその後はステップS11に戻り,上述した薬注制御を行う。尚,ステップS12,S14におけるブロー制御の開始及び終了は,第1の実施の形態と同様に,電気伝導率センサ14で検出される電気伝導率に基づいて判断される。」 ・「【0082】 図8は,第2の実施の形態における薬注タイミングとブロータイミングとの関係を示すタイムチャートであり,第1の実施の形態(図4)と同様,T2がブロー制御を行っている排水期間であり,T1,T3がブロー制御を行わずに薬注制御を行っている非排水期間である。 【0083】 非排水期間T1,T3では,図8(b)に示すように,一定時間間隔,例えば30分毎に薬剤が所定パルス幅で循環水に注入される。 【0084】 そして,時間の経過と共に循環水の濃縮倍率が高くなって電気伝導率が上昇し,図8(a)に示すように,電気伝導率が第1の所定値E1に達すると,図8(c)に示すように,排水期間T2となる。この排水期間T2では,薬剤の注入を禁止する一方,補給水を強制給水ライン12から貯留部6に給水して循環水を希釈し,かつ該循環水の一部をブロー管7からブローする。一方,排水期間T2に突入するとタイマ28a′が計時を開始し,ブローの終了により排水期間T2が算出される。そして排水期間T2に定流量弁8の設定流量値を乗じて排水期間T2中の補給水量を求め,該補給水量に応じた薬剤量が算出し,ブロー制御の終了する排水期間T2の経過後,前記補給水量に応じた薬剤量を一括して循環水に補充注入する。」 ・「【0085】 このように本第2の実施の形態では,排水期間T2と補給水の設定流量から前記排水期間T2中の補給水量を算出し,さらに該補給水量に応じた薬剤量を算出して該薬剤量を排水期間の経過後に補給水に補充注入するので,第1の実施の形態と同様,注入したばかりの薬剤がブロー水と共に排水されることもなく,薬剤が無駄に消費されるのを回避することができ,しかも循環水の薬剤濃度を常に適正範囲に維持することが可能となる。 【0086】 すなわち,本第2の実施の形態においても,第1の実施の形態と同様,薬剤注入とブロー制御とが時間的に重なり合わないように薬剤注入とブロー制御とを連携させて運転制御し,かつブロー制御後に所要量の薬剤を補填するので,薬剤濃度を適正濃度に維持しつつ,薬剤が無駄に消費されるのを回避することができ,使用薬剤量の最適化を図ることが可能となる。」 (2) 引用発明 引用例1の記載からすると,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (引用発明) 「循環水系の循環水に薬剤を注入する制御部24であって, ファン4が動作し前記循環水の電気伝導率が上昇し第1の所定値E1を超えると,開放式冷却塔1における強制給水ライン12に設けた電動弁13の動作を制御するブロー制御を実行する手段と, 前記循環水に前記薬剤を注入する薬注装置15を制御する手段とを備え, 前記制御部24は, 前記ブロー制御が開始されると,前記循環水のブロー制御中に,前記循環水への前記薬剤の薬注動作を行わないように制御するとともに,前記電動弁13が動作していない非排水期間T1,T3に,前記循環水に一定時間間隔で前記薬剤を所定量注入する動作を前記薬注装置15に行わせるように,薬注制御をするものであって, 前記ブローが行われた後に,前記電動弁13の開弁時間に前記強制給水ライン12に設けた定流量弁8の設定流量を乗じた値に基づいて決定された薬剤量を補助注入するように制御する, 制御部24。」 (3) 引用例2に記載された事項 引用例2には,以下の事項が記載されている。 ・「【0012】上記構成からなる冷却水濃縮防止装置の作用を第1図及び第2図により説明する。濃縮度検知センサ21は,水槽2内の冷却水の電気伝導度を検知し,この信号は制御装置22の濃縮度判定手段22aに送られ,ここで濃縮度が所定値以上であると判定された場合には,電磁弁出力手段22bにより第1の電磁弁MV1及び第2の電磁弁MV2を開く信号が出力される。その結果,給水管19から第1の電磁弁MV1を経てブロー水補給用給水管15に新水が供給されると同時に,水槽2の下部の高濃度の冷却水は,冷却水低温側配管12,冷凍機6の凝縮器,冷却水高温側配管11,排水管13及び第2の電磁弁MV2及び調整弁24を経て排水される。新水の供給により水槽2内の冷却水の電気伝導度が所定値以下になると,電磁弁出力手段22bにより第1の電磁弁MV1及び第2の電磁弁MV2が閉じる信号が出力される。 【0013】第1の電磁弁MV1(=第2の電磁弁MV2)の開時間は,電磁弁開時間計測手段22cで計測され,注入ポンプ運転時間計算手段22dにおいて,電磁弁開時間に応じた注入ポンプの運転時間が計算され,この運転時間に基づいて注入ポンプ出力手段22eにより水処理剤注入ポンプ10が運転される。本発明においては,冷却水高温側配管11側から冷却水をブローするので,このブロー中に水処理剤注入ポンプ10を運転すると水処理剤が無駄に排出されてしまう。そこで,両電磁弁MV1,MV2が開いているとき,すなわちブロー中は水処理剤注入ポンプ10の運転がされないようにインターロックするようにし,水処理剤の無駄な排出を防止する。」 (4) 本件発明3について ア 対比 本件発明3と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「制御部24」は本件発明3の「薬注制御装置」に相当し,以下同様に,「開放式冷却塔1」は「冷却塔」に,「電動弁13」は「ブロー弁」に,「ブロー制御を実行する手段」は「ブロー弁動作制御手段」に,「薬注装置15」は「薬注装置」に,「薬注装置15を制御する手段」は「薬注制御手段」に,それぞれ相当する。 そうすると,本件発明3と引用発明とは,以下の点で一致し,相違する。 (一致点) 「開放循環冷却水系の循環冷却水への水処理薬剤の注入を制御する薬注制御装置であって, 前記循環冷却水の電導度に基づいて冷却塔におけるブロー弁の動作を制御するブロー弁動作制御手段と, 前記循環冷却水に前記水処理薬剤を注入する薬注装置を制御する薬注制御手段とを備え, 前記薬注制御手段は, 前記循環冷却水のブロー動作中に,前記薬注装置に薬注動作を行わせないように制御する 薬注制御装置。」 (相違点1) 「前記循環冷却水のブロー動作中に,前記薬注装置に薬注動作を行わせないように制御する」点に関し,本件発明3は,「前記ブロー弁動作制御手段からの信号に基づいて,・・・制御する」のに対し,引用発明は,「ブロー制御を実行する手段」からの信号に基づいて制御するものであるか不明である点。 (相違点2) 本件発明3は,「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない低負荷時であって,ブロー動作が停止してから,前記ブロー弁が,ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない前記低負荷時における循環運転時に,前記循環冷却水に前記水処理薬剤を所定量注入する補助薬注動作を前記薬注装置に行わせるように制御する」ものであるのに対し,引用発明は,「前記電動弁13が動作していない非排水期間T1,T3に,前記循環水に一定時間間隔で前記薬剤を所定量注入する動作を前記薬注装置15に行わせるように,薬注制御をする」ものである点。 イ 判断 (ア) まず,上記相違点1についてみるに,引用発明は「前記ブロー制御が開始されると,前記循環水のブロー制御中に,前記循環水への前記薬剤の薬注動作を行わないように制御する」ものであり,ブロー弁の動作を制御する手段からの何らかの信号に基づいて当該制御をしていることは技術的に明らかであるから,この点で,本件発明3と引用発明とが相違するとはいえない。 (イ) 次に,相違点2についてみる。 a 本件発明3は,「前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇しない低負荷時」に「補助薬注動作」を行うものであるところ,本件特許明細書によれば,「ブロー動作が停止している時間が所定時間Tよりも長い・・・場合・・・は,循環冷却水中の薬剤濃度が低下し続けてしまい悪影響となるため」(【0034】),これを防止するために,「ブロー動作が停止してから,前記ブロー弁が,ファンが動作し前記循環冷却水の電導度が前記ブロー動作の開始まで上昇する高負荷運転時におけるブロー周期よりも長い所定時間動作していない」か否かを監視し,「所定時間動作していない」場合に,「補助薬注動作」を行うものである。 これに対し,引用発明は,「前記電動弁13が動作していない非排水期間T1,T3に,前記循環水に一定時間間隔で前記薬剤を所定量注入する動作を前記薬注装置15に行わせるように,薬注制御をする」ものであるが,これは「ファン4が動作し前記循環水の電気伝導率が上昇」するような運転状況,すなわち,本件発明3における「高負荷運転時」に行われる制御である。そのため,当該「一定時間間隔」は,蒸発損失量及び飛散損失量から推定された補給水量に基づいて,例えば30分程度の間隔に決定されているものである(引用例1【0076】~【0079】,【0083】)。 このように,引用発明における当該「一定時間間隔で前記薬剤を所定量注入する動作」は,本件発明3の「補助薬注動作」とは性質が異なるものであるから(なお,引用例1図8において,「高負荷運転時」の周期(T1+T2)に比べ,当該「一定時間間隔」は明らかに短いことが理解できる。),上記相違点2は実質的な相違点であって,引用発明は,上記相違点2に係る本件発明3の構成を備えるものとは認められない。 b そして,引用例1には,循環水の電気伝導率が第1の所定値E1まで上昇しないような状況,すなわち,本件発明3における「低負荷時」に関する記載は特段認められず,「低負荷時」における課題に関する示唆もない。この点は,引用例2についても同様である。 そうすると,引用発明において,電動弁13が,「高負荷運転時」の周期よりも長い所定時間動作していない「低負荷時」における循環運転時に,循環水に水処理薬剤を所定量注入する補助薬注動作を薬注装置15に行わせるように制御する,すなわち,上記相違点2に係る構成に想到するための動機付けは特段認められない。 また,本件発明3は,上記相違点2に係る構成を備えることで,ブロー動作が停止している時間が所定時間Tよりも長い場合に,循環冷却水中の薬剤濃度が低下し続けてしまうことを防止し,「循環冷却水中の薬剤濃度は,冷却設備の高負荷運転或いは低負荷運転に関わりなく水処理薬剤が有効な状態となる濃度を維持することが可能となった。」(【0036】),「複雑な演算処理や制御を行うことなく循環冷却水の水処理薬剤の薬剤濃度を有効な状態に維持することができる。」(【0037】)といった格別の効果を奏するものであるから,この点は単なる設計的事項とも認められない。 したがって,引用発明において,上記相違点2に係る本件発明3の構成を備えるものとすることは,当業者が容易に想到できる事項であるとも認められない。 (ウ) 以上のとおり,引用発明は,上記相違点2に係る本件発明3の構成を備えるものとは認められないとともに,引用発明において,上記相違点2に係る本件発明3の構成を備えるものとすることは,当業者が容易に想到できる事項であるとも認められない。 ウ よって,本件発明3は,引用例1に記載された発明とは認められず,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 (2) 本件発明4について 上記のとおり,本件発明3が,引用例1に記載された発明とは認められず,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明3を特定するための事項をすべて含む本件発明4は,その余の事項を検討するまでもなく,同様に,引用例1に記載された発明とは認められず,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,前記取消理由によっては,本件特許(請求項3及び4に係る特許)を取り消すことができない。 また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件発明1及び2に係る特許は,本件訂正により削除されたので,本件特許の請求項1及び2に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2015-700234

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