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特許拒絶査定不服審判

2016-019411

双腕ロボット

審判番号
2016-019411
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-538886外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年12月26日
審決日
2018年11月13日
公報発行日
2019年05月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-538886「双腕ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年5月18日国際公開、WO2012/064949、平成25年12月9日国内公表,特表2013-544034〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,2011年(平成23年)11月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年11月10日,アメリカ合衆国,2011年3月11日,アメリカ合衆国,2011年11月10日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成27年10月 6日付け:拒絶理由通知 平成28年 4月13日  :意見書及び手続補正書提出 平成28年 8月18日付け:拒絶査定 平成28年12月26日  :審判請求書及び手続補正書提出 平成29年 1月23日  :手続補正書(方式)提出 平成30年 2月23日付け:拒絶理由通知 平成30年 8月27日  :意見書及び手続補正書提出 第2 本願発明 平成30年8月27日に提出された手続補正書によって補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。 「搬送室と, 少なくとも部分的に前記搬送室内に取り付けられた基板搬送装置と, を備える基板処理装置であって,前記基板搬送装置は, フレームと, 互いに回転可能かつ連続的に結合された,第一の上腕リンク,第一の前腕リンク,及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第一のスカラアームと, 互いに回転可能かつ連続的に結合された,第二の上腕リンク,第二の前腕リンク,及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアームであって,前記第一及び第二のスカラアームは共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている,第二のスカラアームと, 前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが前記共通の肩軸の周りで一体として独立して回転可能であり,かつ前記第一及び第二のスカラアームの他方から独立して伸張可能であるように前記第一及び第二のスカラアームに接続された同軸駆動セクションと,を含み, 前記第一及び第二のスカラアームは,前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸の周りの前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続した状態で,前記第一のスカラアームの伸張軸が前記第一及び第二のスカラアームの間の相対移動による前記第二のスカラアームの妨害に制約されて,前記第一のスカラアームの伸張軸が前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロの角度を維持するように,互いに対して配置され, 前記非ゼロの角度は,前記同軸駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームの少なくとも一方を前記第一及び第二のスカラアームのうちの他方に対して相対的に回転させることによって,可変である,基板処理装置。」(以下「本願発明」という。) 第3 拒絶の理由 平成30年2月23日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由3(進歩性)の概要は,次のとおりである。 本件補正前の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例1に記載された発明及び引用例2ないし5に示す周知の技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用例1:米国特許公開第2004/0001750号明細書 引用例2:特開2005-229087号公報(周知技術を示す文献) 引用例3:特開2000-72248号公報(周知技術を示す文献) 引用例4:特開2004-288720号公報(周知技術を示す文献) 引用例5:特開平10-156770号公報(周知技術を示す文献) 第4 各引用例の記載事項及び引用発明 1.引用例1の記載事項及び引用発明 引用例1には,以下の事項及び発明が記載されている(なお,括弧内に当審における翻訳文を付記する。)。 (1)[0128] 「A first embodiment of a robot assembly 10 according to the present invention is illustrated in FIGS. 2 and 3 . The assembly includes two arms 12 , 14 that share a common prismatic joint 20 /carriage 18 linkage. The common carriage link 18 is located within the envelope of a column 16 . Each arm further includes a limb 13 , 15 that is movable in a horizontal plane and mounted atop the common carriage link 18 . Referring to the kinematic chain illustrated schematically in FIG. 4 , four joint/link pairs are evident for each arm, with the arms sharing a prismatic joint 20 /carriage 18 . Referring to arm 12 , these pairs are prismatic joint 20 /carriage 18 , revolute joint T1 /inner link L1 , revolute joint T2 /outer link L2 , and revolute joint T3 /link E1 . Referring to arm 14 , these pairs are prismatic joint 20 /carriage 18 , revolute joint T6 /inner link L3 , revolute joint T4 /outer link L4 , and revolute joint T5 /link E2 . Thus, the limbs 13 , 15 are mounted for revolution about the axis of revolute joints T1 and T6 respectively. As a result of this arrangement, a Z-axis 22 of infinite length positioned along the axis of the joints T1 and T6 can be located and described as a common axis 22 of the carriage 18 . The limbs of both arms are able to extend and retract in a radial direction independently of each other.」 (本発明に係るロボットアセンブリ10の第1実施例が,図2及び3に示されている。アセンブリは,2つのアーム12,14を含み,それらは,共通の直動式ジョイント20/キャリッジリンク18を共有する。共通のキャリッジリンク18は,コラム16の外殻内に設置される。各アームはさらに,肢部13,15を含み,それらは水平平面内で移動可能であり,共通のキャリッジリンク18の上に取り付けられている。図4に概略的に示されている運動の連鎖図を参照すると,アームが直動式ジョイント20/キャリッジリンク18を共有することと共に,アームにおける4つのジョイント/リンクのペアが明らかに示されている。アーム12を参照すると,直動式ジョイント20/キャリッジリンク18,回転ジョイントT1/内側リンクL1,回転ジョイントT2/外側リンクL2,及び,回転ジョイントT3/リンクE1がペアとなっている。アーム14を参照すると,直動式ジョイント20/キャリッジリンク18,回転ジョイントT6/内側リンクL3,回転ジョイントT4/外側リンクL4,及び,回転ジョイントT5/リンクE2がペアとなっている。これにより,肢部13,15は,回転ジョイントT1及びT6の軸の周りにそれぞれ回転可能に配置される。この配置の結果,ジョイントT1及びT6の軸線に沿って配置された有限長さのZ軸22を,キャリッジ18の共通軸22として配置及び記載することができる。両方のアームの肢部は,相互に独立して放射方向に伸張及び収縮することができる。) (2)[0129] 「Each distalmost link E1 , E2 may support a tool. In the semiconductor industry, these links are referred to as end effector mounting flanges, and are connected in the present invention to the outer links of the manipulator via the wrist rotary joints T3 and T5 . The tools supported by the end effector mounting flanges are often called end effectors. The end effector mounting flanges may be identical or different, depending on the application. 」 (最も末端のリンクE1,E2は,ツールを支持することができる。半導体業界では,これらのリンクは,エンドエフェクタ取付フランジと呼ばれ,本発明では,手首回転ジョイントT3及びT5を介してマニピュレータの外側リンクに接続されている。エンドエフェクタ取付フランジに支持されるツールは,多くの場合,エンドエフェクタと呼ばれる。エンドエフェクタ取付フランジは,その用途に応じて,同一であったり異なっていたりする。) (3)[0132] 「As noted above, each inner link L1 , L3 is attached to the carriage 18 via a proximal, or shoulder, rotary joint T1 , T6 . The shoulder joints T1 , T6 of the two arms 12 , 14 are co-linear on the common axis 22 of the carriage 18 and vertically offset, one above the other. The end effector mounting flanges E1 , E2 move in horizontal planes that are parallel to each other, one horizontal plane offset vertically from the other horizontal plane. ・・・(中略)・・・ In this manner, the end effectors do not interfere with each other when the two arm assemblies are moving independently.」 (上記の通り,各内側リンクL1,L3は,中心に最も近い,すなわち肩の回転ジョイントT1,T6を介してキャリッジ18に取り付けられている。2つのアーム12,14の肩ジョイントT1,T6は,キャリッジ18の共通軸22と同一線上にあり,互いに垂直にオフセットされ,一方が他方の上になっている。エンドエフェクタ取付フランジE1,E2は,互いに平行な水平面内で移動し,一方の水平面は,他方の水平面から垂直にオフセットされている。・・・(中略)・・・このようにして,2つのアームは互いに独立に動いている時に,エンドエフェクタが互いに干渉することはない。) (4)[0134] 「In this embodiment, the limbs are independently rotatable about the revolute joints T1 and T6 , wherein rotation of an individual limb is a change in the θcoordinate of the end effector mounting flange, the last link of the manipulator.・・・(後略)」 (この実施例では,肢部は,回転ジョイントT1及びT6に関して独立して回転可能であり,個別の肢部の回転は,マニピュレータの最後のリンクであるエンドエフェクタ取付フランジのθ座標の変化となる。・・・(後略)) (5)[0159] 「It will be appreciated that the motion of the limbs in the above-described embodiment must be coordinated so that the elbow joints do not collide. Such coordination can be readily accomplished by a suitably programmed controller.」 (上記実施例において,肘ジョイントが衝突しないように,肢部の運動が調整されなければならないことが理解されよう。そのような調整は,適切にプログラミングされたコントローラによって容易に達成することができる。) (6)FIG.7 (7)[0003] 「Robots are used to perform many tasks in the semiconductor industry, such as the automated handling of substrate media or other objects. In the semiconductor industry, typical media and other objects include individual silicon wafers or wafer carriers, flat panel displays, and hard disk media. Robots may be used for handling media in, for example, wafer processing cluster tools, wafer inspection equipment, metrology equipment, and equipment for hard disk thin film deposition, and in transferring media between production equipment and automated material handling systems in semiconductor factories. Robots may be used in both atmospheric and vacuum environments. 」 (ロボットは,半導体産業における多くの作業,基板状の媒体やその他の対象物の自動操作など,を実行するために使用される。半導体産業において,典型的な媒体及びその他の対象物は,個別のシリコン・ウエハ又はウエハ・キャリア,フラット・パネル・ディスプレイ,及びハードディスク媒体を含む。ロボットは,例えば,ウエハ処理クラスタツール,ウエハ検査機器,測定機器,及びハードディスク薄膜蒸着装置において媒体を取り扱うために,また,半導体工場において生産設備と自動化材料取扱いシステムとの間で媒体を移動させるために使用することができる。ロボットは,大気圧及び真空の両方の環境で使用することができる。) (8)引用例1の記載事項から理解される技術的事項 上記(1)からみて,引用例1には,ロボットアセンブリ10が記載され,ロボットアセンブリ10は,コラム16内に設置されたキャリッジリンク18を有し,キャリッジリンク18の軸22を共通軸として,2つのアーム12,14が設けられ,アーム12は,回転ジョイントによって回転可能な内側リンクL1,外側リンクL2及びリンクE1を有し,アーム14は,回転ジョイントによって回転可能な内側リンクL3,外側リンクL4及びリンクE2を有し,アーム12,14は,相互に独立して放射方向に伸張及び収縮できることを理解できる。 また,上記(2)及び(3)からみて,リンクE1,E2には,エンドエフェクタが取り付けられ,エンドエフェクタは,垂直にオフセットされた水平面内で移動することを理解できる。 また,上記(4)からみて,アーム12,14は,軸22の周りを独立して回転可能であることを理解できる。 また,(5)からみて,アームの肘ジョイントが衝突しないように,肢部の運動がコントローラによって調整されることを理解できる。 また,上記(6)の図面からみて,ロボットアセンブリ10がアーム12,14を駆動するための同軸の駆動部を有することは明らかである。 (9)引用発明 上記(8)に示す技術的事項を技術常識をふまえて整理すると,引用例1には,次の発明が記載されているということができる。 「ロボットアセンブリ10であって,ロボットアセンブリ10は, キャリッジリンク18を内部に備えるコラム16と, 互いに回転可能に接合された,内側リンクL1,外側リンクL2及びエンドエフェクタを有するアーム12と, 互いに回転可能に接合された,内側リンクL3,外側リンクL4及びエンドエフェクタを有するアーム14であって,アーム12及びアーム14は共通の軸22を共有するようにコラム16に取り付けられている,アーム14と, アーム12及びアーム14のそれぞれが軸22の周りで一体として独立して回転可能であり,かつアーム12及びアーム14の他方から独立して伸張可能であるようにアーム12及びアーム14に接続された同軸の駆動部とを含み, エンドエフェクタは,垂直にオフセットされた水平面に配置され, アームの肘ジョイントが衝突しないように,肢部の運動がコントローラによって調整される,ロボットアセンブリ10。」(以下「引用発明」という。) 2.引用例2の記載事項 (1)段落【0033】 「ここで図1から明らかなように,上記両ピック部26C,28Cは互いに同一平面(水平面)上に位置されており,各ピック部26C,28Cの進行方向が異なっており,その開き角θは例えばウエハWの大きさにもよるが,60度程度に設定されている。・・・」 (2)図1 (3)段落【0041】及び【0042】 「<第2実施例> 次に、本発明の第2実施例について説明する。 図5は本発明の第2実施例を示す斜視図・・・ ・・・また先の第1実施例ではピック部26C,28Cは,同一平面上に異なる方向に向けて配置されるが,この第2実施例では上下に重ねて配置され,且つ同一方向に向けられている。このようにピック部26C,28Cが上下に重ねて配置される状態は,これ以降に説明する他の実施例も同様な構造である。」 (4)図5 3.引用例3の記載事項 (1)段落【0007】 「【発明の実施の形態】図1は本発明装置の斜視図,図2は内部構成を示す断面説明図である。31は本発明装置の駆動箱であり,軸受34及びフランジ32を介して基台33に取付けられる。・・・」 (2)図1 (3)段落【0018】 「・・・図5(A)はこの発明の他の実施形態に係る基板搬送装置を示す平面図であり,(B)はその側面図,また図6は全体斜視図である。この基板搬送装置は,同一平面において基板保持部2a,2bの取付け方向を互いの基板が干渉しないようにずらして配置したものである。・・・」 (4)図6 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 本願発明の「基板処理装置」は,「基板搬送装置」を備えているところ,引用発明の「ロボットアセンブリ10」は,エンドエフェクタを有しているから,基板を搬送する装置ということができ,引用発明の「ロボットアセンブリ10」は本願発明の「基板搬送装置」に相当し,引用発明の「ロボットアセンブリ10」は,本願発明の「基板処理装置」と対比すると,「基板搬送装置を備える装置」という点で一致する。 また,引用発明の「キャリッジリンク18を内部に備えるコラム16」が本願発明の「フレーム」に相当することは明らかであり,以下同様に,「互いに回転可能に接合」されることが「互いに回転可能かつ連続的に結合」されることに,「内側リンクL1」が「第一の上腕リンク」に,「外側リンクL2」が「第一の前腕リンク」に,「エンドエフェクタ」が「基板ホルダ」に,「アーム12」が「第一のスカラアーム」に,「内側リンクL3」が「第二の上腕リンク」に,「外側リンクL4」が「第二の前腕リンク」に,「アーム14」が「第二のスカラアーム」に,「共通の軸22」が「共通の肩軸」に,「同軸の駆動部」が「同軸駆動セクション」に相当する。 したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「基板搬送装置を備える装置であって,前記基板搬送装置は, フレームと, 互いに回転可能かつ連続的に結合された,第一の上腕リンク,第一の前腕リンク,及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第一のスカラアームと, 互いに回転可能かつ連続的に結合された,第二の上腕リンク,第二の前腕リンク,及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアームであって,前記第一及び第二のスカラアームは共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている,第二のスカラアームと, 前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが前記共通の肩軸の周りで一体として独立して回転可能であり,かつ前記第一及び第二のスカラアームの他方から独立して伸張可能であるように前記第一及び第二のスカラアームに接続された同軸駆動セクションと,を含む,基板搬送装置を備える装置。」 <相違点1> 本願発明は,「搬送室と,少なくとも部分的に前記搬送室内に取り付けられた基板搬送装置と,を備える基板処理装置」であるのに対して,引用発明は「ロボットアセンブリ10」である点。 <相違点2> 本願発明は,「前記第一及び第二のスカラアームは,前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸の周りの前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続した状態で,前記第一のスカラアームの伸張軸が前記第一及び第二のスカラアームの間の相対移動による前記第二のスカラアームの妨害に制約されて,前記第一のスカラアームの伸張軸が前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロの角度を維持するように,互いに対して配置され,前記非ゼロの角度は,前記同軸駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームの少なくとも一方を前記第一及び第二のスカラアームのうちの他方に対して相対的に回転させることによって,可変である」ものであるのに対して,引用発明は,「アームの肘ジョイントが衝突しないように,肢部の運動がコントローラによって調整される」ものであるが,その調整によって,アーム12及びアーム14の伸張軸の角度が非ゼロの角度に維持されるかどうか不明な点。 第6 判断 1.相違点1について 上記第4の1.(6)に示すように,引用例1には,基板搬送装置であるロボットを半導体工場内の基板処理装置に設けることが示されているから,引用発明のロボットアセンブリ10を搬送室内に取り付けて基板処理装置を構成することは,当業者が容易に想到できた事項である。 2.相違点2について (1)本願発明は,第一のスカラアームの伸張軸が第二のスカラアームの妨害によって制約されて,第一のスカラアームの伸張軸が第二のスカラアームの伸長軸に対して「非ゼロの角度」を維持するように配置されるという構成を含んでいる。 本願の明細書の発明の詳細な説明には「非ゼロの角度」という文言の説明はないが,平成30年8月27日提出の意見書の第4ページの(4-1)欄によれば,端部作動体が同一水平面上にない場合には,端部作動体の伸張/後退の通路は互いの上を通って擦れ違うことができる旨を説明しているから,アームの伸張軸が「非ゼロの角度」を維持するように配置することは,第一のスカラアームの伸張軸と第二のスカラアームの伸長軸が上下に重ならないように,角度をもって配置することと解される。 そして,請求人は,上記意見書の第4及び5ページの(4-3)及び(4-4)欄において,本願発明における第二のスカラアームの妨害には,第二のスカラアームの基板ホルダの妨害以外に,アームリンクの妨害が含まれる旨を主張しているが,少なくとも,第一のスカラアームの基板ホルダと,第二のスカラアームの基板ホルダが同一水平面にある場合には,それぞれのアームの伸張軸を上下に重ねようとしても,基板ホルダ同士が干渉して重ねることができないから,アームの伸張軸が「非ゼロの角度」を維持するように配置しなければならないことは,当業者にとって自明である。 (2)そうすると,仮に引用発明において,第一のスカラアームの基板ホルダと,第二のスカラアームの基板ホルダを同一水平面に配置することが容易想到であれば,基板ホルダ同士の干渉を避けるために,当業者であれば上記相違点2に係る構成を当然に採用せざるを得ないというほかない。 そこで,引用発明において,第一のスカラアームの基板ホルダと,第二のスカラアームの基板ホルダを同一水平面に配置することの容易想到性を以下検討する。 (3)まず,基板搬送装置の技術分野において,基板ホルダを上下にオフセットした面に配置する形式(以下「オフセット形式」という。)のものは,上記第4の2.(3)及び(4)並びに上記第4の3.(1)及び(2)に示すように従来周知であり,基板ホルダを同一の水平面上に配置する形式(以下「同一平面形式」という。)のものも,上記第4の2.(1)及び(2)並びに上記第4の3.(3)及び(4)に示すように従来周知である。 (4)そして,引用例2には,アームを駆動する機構(引用例2の請求項1に係る機構)をオフセット形式の装置に適用すること(図5ないし図8に係る第2実施例)だけでなく,同一平面形式の装置に適用すること(図1ないし図4に係る第1実施例)についても記載され,引用例3には,アームを駆動する機構(引用例3の請求項1に係る機構)をオフセット形式の装置に適用すること(図1に係る実施の形態)だけでなく,同一平面形式の装置に適用すること(図6に係る実施の形態)についても記載されていることから,アームを駆動する機構として同一のものを用いた上で,オフセット形式のもの及び同一平面形式のものに適用することは十分に可能であり,本願の優先日前の基板搬送装置の当業者にとって,オフセット形式の装置と同一平面形式の装置は,相互に置換することができ,具体的な基板搬送の形態に応じて,いずれかの形式を自由に選択することができると認識されていたというべきである。 (5)また,引用発明は,2つのアームが共通の肩軸を共有する駆動機構を採用することで,2つのアームを独立して駆動させることができるというものであり,当該駆動機構をオフセット形式の装置だけに適用する旨の記載や,同一平面形式の装置への適用を排除する記載がないことから,引用発明に接した当業者であれば,引用発明における上記の駆動機構について,オフセット形式の装置だけに適用すると理解することはなく,当業者が通常用いている基板搬送装置が同一平面形式であれば,その駆動機構として,引用発明の駆動機構を適用することは十分に想到し得る事項にすぎない。そして,具体的に引用発明の2つのアームを配置する構成として,従来周知の同一平面形式を採用することに困難性は認められない。 (6)さらに,引用発明は,肘ジョイントが衝突しないように,肢部の運動をコントローラで調整するものであるが,基板搬送装置を同一平面形式とすれば,基板ホルダについても衝突しないようにアームの運動を調整すべきことは,当業者が当然に想到する事項であり,その基板ホルダの衝突が,本願発明における「前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸の周りの前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続した状態で,前記第一のスカラアームの伸張軸が前記第一及び第二のスカラアームの間の相対移動による前記第二のスカラアームの妨害に制約」されることにほなならない。 また,上記(1)に示すように,基板ホルダの衝突を避けるためには,アームの伸張軸が「非ゼロの角度」を維持するように配置しなければならないことは,当業者にとって自明であり,そのような配置を引用発明のコントローラで行うためには,同軸駆動セクションが第一及び第二のスカラアームの少なくとも一方を第一及び第二のスカラアームのうちの他方に対して相対的に回転させることによって,可変となるようにする以外に方法はない。 (7)したがって,上記相違点2に係る構成は,引用発明,引用例1記載の事項並びに引用例2及び3に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものである。 3.平成30年8月27日提出の意見書について 請求人は,平成30年8月27日提出の意見書において,引用例2及び3の基板搬送装置のスカラアームの具体的な駆動機構が本願発明と相違することを理由として,本願発明が容易想到でない旨を主張している。 しかし,上記2.(3)で説示したように,基板搬送装置の技術分野において,オフセット形式と同一平面形式のいずれの装置も従来周知であり,上記2.(4)で説示したように,引用例2及び3は,オフセット形式と同一平面形式のいずれの装置に対しても同一の駆動機構を適用している例として引用しているのであり,引用例2及び3の具体的な駆動機構を引用発明に適用しようとして引用しているわけではないから,請求人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明,引用例1記載の事項並びに引用例2及び3に示す周知の技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-019411

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