特許拒絶査定不服審判
2016-019073
安全確実なインスタント・メッセージング
- 審判番号
- 2016-019073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-032792外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月20日
- 審決日
- 2018年02月28日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 32792「安全確実なインスタント・メッセージング」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-133130、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成18年5月12日(パリ条約による優先権主張2005年6月30日(以下,「本願優先日」という。);米国)を国際出願日とする出願である特願2008-519295号の一部を,新たな特許出願として平成24年7月13日に出願された特願2012-157246号のさらに一部を,新たな特許出願として平成27年2月23日に出願された特許出願であって,平成28年4月15日付けで拒絶理由通知がされ,同年7月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年8月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ,平成29年11月17日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)がされ,平成30年1月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年8月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
『●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-2
・引用文献等 1-3
先に通知した引用文献1には,
プライマリ認証サーバが,乱数値を生成し,内部データ記憶領域に保持するステップS3-3(段落[0033],[図3])と,
既知の鍵配布手段に基づいて配布され,保持されているセカンダリン認証サーバの公開鍵で乱数値を暗号化するステップS3-4(段落[0034],[図3])と,
前記プライマリ認証サーバが,暗号化された乱数値を前記セカンダリ認証サーバに送信し(段落[0035],[図3]),前記セカンダリ認証サーバが前記暗号化された乱数値を自身の秘密鍵で復号処理し,プライマリ認証サーバが通信に関連付けられた値として生成した乱数値を取得し(段落[0036],[図3]),取得した乱数値を送信する相手先である前記プライマリ認証サーバの公開鍵で暗号化する(段落[0037],[図3])ステップS3-4~S3-9と,
前記プライマリ認証サーバが,前記セカンダリ認証サーバからの暗号データを受け取り,
前記プライマリ認証サーバが,自身の秘密鍵で暗号データを復号する復号処理の結果,乱数値を取得することになるステップS3-10と,
前記プライマリ認証サーバが,通信前に生成し保持しておいた乱数値と復号の結果取得した乱数値の一致,不一致を比較し,比較の結果,乱数値が一致すれば,前記セカンダリ認証サーバは自身の秘密鍵で前記プライマリ認証サーバが先に送信した乱数値の暗号データを復号することができたことになり(段落[0038],[図3]),よって,前記プライマリ認証サーバは前記セカンダリ認証サーバが真正に設置されたサーバであると認識することが可能となり(段落[0039]),前記セカンダリ認証サーバを信頼する(段落[0040])ステップを備えている,通信手順(段落[0032]-[0040],[図3])の発明が記載されている。
(中略)
よって,請求項1-2に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 3-18
・引用文献等 1-3
(中略)
よって,請求項3-18に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2005-165671号公報
2.米国特許出願公開第2004/0083297号明細書
3.穴澤 健明 他,コンテンツ保護の柔靭化を実現した開放型超流通基盤,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年11月30日,Vol.2001,No.118,p.31-42(周知技術を示す文献) 』
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
『1 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)平成28年7月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の「発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」について
「発行認可」が具体的にどのようなものであるのか,明細書及び図面の記載や技術常識を考慮しても不明確であり,「発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」との記載も,「暗号化鍵」が「発行認可」に登録されているものであるのか,あるいはそれ以外の「発行認可」と「暗号化鍵」の関係を意味しているのか,不明である。
同様の記載を含む請求項10,及びそれらに従属する請求項2-9,11-18についても同様である。
2 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1)請求項1-9について
(中略)
請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求項2-9については,いずれも引用文献1ないし4に記載された事項の範囲であるから,同様に,引用発明及び周知技術から,当業者が容易に想到し得たことである。
(2)請求項10-16,17,18に係る発明について
請求項10,17,18に係る発明は,請求項1に係る発明とカテゴリーが異なるだけであるから,請求項1に係る発明と同様の理由により,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求項11-16についても,請求項2-9に係る発明と同様の理由により,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-50129号公報
2.穴澤 健明 他,コンテンツ保護の柔靭化を実現した開放型超流通基盤,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年11月30日,Vol.2001,No.118,p.31-42
3.特開2001-144751号公報
4.特開2003-143130号公報 』
第4 本願発明
本願請求項1-18に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は,平成30年1月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
送信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込みメッセージを発生するために,該送信側メッセージング・デバイスのメモリに格納されている申し込み識別子を暗号化するステップであって,前記暗号化が,受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵による前記申込み識別子の暗号化を含む,ステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化申し込みメッセージを前記受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが前記暗号化申し込みメッセージを解読し,暗号化申し込み返答を発生するために,前記送信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスからの暗号化申し込み返答を受信するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記暗号化申し込み返答を解読するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するために,前記返答申し込み識別子が前記申し込み識別子と一致することを検証するステップと,
を備えている,方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって,更に,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記申し込み識別子をランダムに発生するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記申し込み識別子をメモリに格納するステップと,
を備えている,方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって,更に,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスに向けた通信を暗号化するために,前記受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可をメモリに格納するステップと,
を備えている,方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって,更に,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に対応する使用認可を得るステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスから受信した通信を解読するために,前記使用認可を格納するステップと,
を備えている,方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって,更に,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスへの通信を発生するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,暗号化通信を発生するために,前記受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵によって前記通信を暗号化するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて前記暗号化通信を前記受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが前記暗号化通信を解読するステップと,
を備えている,方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって,更に,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,
前記受信側メッセージング・デバイスから暗号化通信を受信するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に対応する使用認可によって,前記暗号化通信を解読するステップと,
を備えている,方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて行われる前記安全確実な通信は,インスタント・メッセージを含む,方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて行われる前記安全確実な通信は,実質的にリアルタイムのピア・ツー・ピア通信を含む,方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて行われる前記安全確実な通信は,インスタント・メッセージ,ファイル転送,画像転送,テキスト系通信,オーディオ通信,ビデオ通信,またはオーディオ/ビデオ通信の内少なくとも1つを含む,方法。
【請求項10】
インスタント・メッセージング・システムであって,
ピア・ツー・ピア通信リンクと,
第1メッセージング・デバイスであって,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて当該第1メッセージング・デバイスから第2メッセージング・デバイスに通信するときに,暗号化インスタント・メッセージが安全確実であることを確認するように構成されている,第1メッセージング・デバイスと,
を備え,
第1メッセージング・デバイスは,更に,該第1メッセージング・デバイスに格納されている申し込み識別子を前記第2メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により暗号化し,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化された申し込み識別子を前記第2メッセージング・デバイスに伝達するよう構成され,
前記第2メッセージング・デバイスは,前記暗号化された申し込み識別子を解読し,暗号化申し込み返答を発生するために,前記第1メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化し,前記暗号化申し込み返答を前記第1メッセージング・デバイスに伝達するよう構成され,
前記第1メッセージング・デバイスは,更に,前記暗号化申し込み返答を解読し,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するために,前記返答申し込み識別子が前記第1メッセージング・デバイスに格納されている申し込み識別子と一致することを検証するように構成されている,
インスタント・メッセージング・システム。
【請求項11】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第1メッセージング・デバイスは,更に,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,暗号化通信が安全確実であることを確立するように構成されており,前記暗号化通信は,ファイル転送,画像転送,テキスト系通信,オーディオ通信,ビデオ通信,またはオーディオ/ビデオ通信の内少なくとも1つを含む,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項12】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第2メッセージング・デバイスは,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて当該第2メッセージング・デバイスから前記第1メッセージング・デバイスに通信するときに,暗号化インスタント・メッセージが安全確実であることを確立するように構成されている,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項13】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第1メッセージング・デバイスは,更に,
前記暗号化申し込みを発生するために,前記第2メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵によって,前記申し込み識別子を暗号化し,
前記発行認可に対応する使用認可を取得し,
前記使用認可によって,前記暗号化申込み返答を解読する,
ように構成されている,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項14】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第1メッセージング・デバイスは,更に,前記申し込み識別子をランダムに発生するように構成されている,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項15】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第1メッセージング・デバイスは,更に,
暗号化インスタント・メッセージを発生するために,前記発行認可に埋め込まれている暗号化鍵によって,インスタント・メッセージを暗号化し,
前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化インスタント・メッセージを前記第2メッセージング・デバイスに伝達する,
ように構成されている,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項16】
請求項10記載のインスタント・メッセージング・システムにおいて,前記第1メッセージング・デバイスは,更に,
前記第2メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に対応する使用認可を取得し,
暗号化インスタント・メッセージを解読するために,前記使用認可を維持し,
前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記第2メッセージング・デバイスから暗号化インスタント・メッセージを受信し,
前記使用認可によって,前記暗号化インスタント・メッセージを解読する,
ように構成されている,インスタント・メッセージング・システム。
【請求項17】
コンピュータに請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのプログラムを記録した1つ又は2つ以上のコンピュータ読み取り可能記録媒体。
【請求項18】
コンピュータに請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのプログラム。」
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された特開2005-50129号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)
「【0001】
本発明は,情報処理システム,情報処理装置および方法,記録媒体,並びにプログラムに関し,特に,簡単かつ確実に,ネットワークを介して,特定のユーザに対してのみサービスを提供するか,または特定のユーザのみがサービスの提供を受けることができるようにした情報処理システム,情報処理装置および方法,記録媒体,並びにプログラムに関する。」
「【0054】
図1は,本発明に係るサービス提供システム11の一実施の形態の構成を示すブロック図である。ユーザ1に所有されるハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2は,インターネット3に接続され,インターネット3を介して,ユーザ4に所有されるパーソナルコンピュータ5と接続する。インターネット3は,無線または有線(光ファイバを含む)によるネットワークの一例であり,ローカルエリアネットワーク,または専用回線などを含む。
(中略)
【0060】
インスタントメッセージングシステムにおいて,サーバ6と,クライアントであるハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2とは,SSL(Secure Sockets Layer)などにより,暗号化されたメッセージを交換することにより,セキュアにメッセージを交換する。同様に,サーバ6と,クライアントであるパーソナルコンピュータ5とは,SSLなどにより,暗号化されたメッセージを交換することにより,セキュアにメッセージを交換する。
【0061】
また,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2からパーソナルコンピュータ5にメッセージを直接送る場合も,メッセージが暗号化されて,インターネット3を介して送られる。逆に,パーソナルコンピュータ5からハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2にメッセージを直接送る場合も,暗号化されたメッセージが,インターネット3介して送られる。
【0062】
すなわち,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2およびパーソナルコンピュータ5は,インターネット3およびサーバ6を介して,セキュアにメッセージを交換することができる。従って,第三者は,インターネット3を伝送されるメッセージを取得しても,復号ができないので,その内容を知ることは出来ない。
【0063】
ユーザ1またはユーザ4が,インスタントメッセージングIDおよびパスワードをサーバ6に提示してログインすることは,より具体的には,ユーザ1またはユーザ4によって操作されるハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2またはパーソナルコンピュータ5が,インスタントメッセージングIDおよびパスワードをサーバ6に送信することである。
【0064】
ユーザ1またはユーザ4は,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2またはパーソナルコンピュータ5を介して,インスタントメッセージングIDおよびパスワードをサーバ6に送信して,インスタントメッセージングシステムにログインし,サーバ6に,メッセージを交換する相手のインスタントメッセージングIDからなるリストを作成させることができる。例えば,Jabberにおいて,メッセージを交換する相手のインスタントメッセージングIDからなるリストは,Rosterと称される。以下,メッセージを交換する相手のインスタントメッセージングIDからなるリストを,ユーザ登録リストと称する。
【0065】
各ユーザは,自分自身のユーザ登録リストに,このインスタントメッセージングシステムに参加しているユーザのうちの,任意のものを指定して登録させることができる。例えば,ユーザ1は自分自身のユーザ登録リストに,ユーザ4を登録させることができる。サーバ6は,ユーザ1からそのユーザ登録リストにユーザ4を加えることが指示されたとき,そのユーザ登録リストに,ユーザ4のインスタントメッセージングIDを登録する。同様に,ユーザ4が自分自身のユーザ登録リストにユーザ1の登録を指示すると,サーバ6は,ユーザ4のユーザ登録リストに,ユーザ1のインスタントメッセージングIDを登録する。
【0066】
サーバ6にJabberを利用した場合,サーバ6はユーザ登録リストに登録された相手とのメッセージのみを中継する。従って,各ユーザは,自分自身が許可した特定のユーザとだけ安全に通信することができる。
【0067】
必要に応じて自分自身のユーザ登録リストから他のユーザの登録の抹消を指示することができ,この指示を受けたとき,サーバ6は,そのユーザのユーザ登録リストから指定されたユーザのインスタントメッセージングIDを削除する。
【0068】
ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2は,サーバ6から通知されたユーザ4のインターネット3上のアドレスによって,パーソナルコンピュータ5にアクセスし,パーソナルコンピュータ5は,サーバ6から通知されたユーザ1のインターネット3上のアドレスによって,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2にアクセスする。これにより,両者は,以後,直接(P2P(Peer to Peer)で),メッセージをやりとりすることができる。
【0069】
インスタントメッセージングIDおよびパスワードによって本人であることが証明できれば,各ユーザは,サーバ6に作成させた,ユーザ登録リストにアクセスすることができる(リストに記述されているインスタントメッセージングIDを利用することができる)。例えば,ユーザ4は,パーソナルコンピュータ5を操作することにより,自己のインスタントメッセージングIDおよびパスワードによって,インスタントメッセージングシステムにログインし,パーソナルコンピュータ5にユーザ登録リストにアクセスさせることができる。また,例えば,ユーザ4は,自分が所有するPDA7を操作することにより,自己のインスタントメッセージングIDおよびパスワードによって,パーソナルコンピュータ5を介してインスタントメッセージングシステムにログインし,PDA7に,サーバ6に作成させたユーザ登録リストにアクセスさせることができる。
【0070】
本発明のサービス提供システムにおいては,セキュアなインスタントメッセージングシステムを利用して,インターネット3に接続されている機器に認証に必要な情報を交換させ,機能を他の機器に提供する場合に,セキュアなインスタントメッセージングシステムによって交換された情報を基に,相手を認証する。」
「 【0166】
ステップS3022において,操作要求受付プログラム123は,アクセス権設定リスト124に登録されたユーザからのリクエストであるか否か,すなわち,受信された操作リクエストに付加されているインスタントメッセージングIDと同じインスタントメッセージングIDがアクセス権設定リスト124に記録されているか否かを判定し,アクセス権設定リスト124に登録されたユーザからのリクエストであると判定された場合,すなわち,インスタントメッセージングIDがアクセス権設定リスト124に記録されている場合,ステップS3023に進む。
(中略)
【0170】
ステップS3025において,このユーザに権限が与えられていると判定された場合,すなわち,アクセス権設定リスト124において,操作リクエストに付加されているインスタントメッセージングIDと同じインスタントメッセージングIDに関係して,「権限あり」のアクセス権限が記録されていると判定された場合,ステップS3026に進み,操作要求受付プログラム123は,パーソナルコンピュータ5のユーザ4が正規のユーザであり,パーソナルコンピュータ5からの要求を受け付ける旨が設定されているので,パーソナルコンピュータ5からの操作リクエストを受け付けて,要求された処理,例えば,予約録画の処理または記録されている映像データの送信などの処理を実行して,サービス提供の処理は終了する。」
「【0223】
図19は,チャレンジアンドレスポンス方式の認証を行う場合のサービス提供の処理を説明するフローチャートである。ステップS1061において,サービス要求プログラム151の操作要求プログラム172は,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2に認証を要求する。この場合,インスタントメッセージングIDがパーソナルコンピュータ5からハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2に送信される。
【0224】
パーソナルコンピュータ5から認証が要求されると,ステップS3061において,サービス提供プログラム101の受信制御プログラム126は,チャレンジアンドレスポンス方式の認証処理を実行する。そして,ステップS1062において,操作要求プログラム172は,チャレンジアンドレスポンス方式の認証処理を実行する。
【0225】
より具体的には,受信制御プログラム126は,パーソナルコンピュータ5から送信されてきたインスタントメッセージングIDに関係付けられて記録されている鍵を鍵リスト125から読み出す。受信制御プログラム126は,乱数を生成し,生成した乱数をチャレンジコードとして,パーソナルコンピュータ5に送信する。
【0226】
操作要求プログラム172は,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2から,チャレンジコードが送信されてくると,チャレンジコードを受信して,受信したチャレンジコードをアドレス/鍵リスト173に記録されている鍵で暗号化して,レスポンスを生成する。操作要求プログラム172は,生成したレスポンスをハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2に送信する。
【0227】
受信制御プログラム126は,パーソナルコンピュータ5からレスポンスが送信されてくると,レスポンスを受信し,受信したレスポンスと,生成した乱数を鍵で暗号化した値とを比較し,受信したレスポンスと生成した乱数を鍵で暗号化した値とが一致した場合,パーソナルコンピュータ5を適正な相手として認証する。受信制御プログラム126は,受信したレスポンスと生成した乱数を鍵で暗号化した値とが一致しない場合,パーソナルコンピュータ5を適正な相手として認証しない(不適正な相手であると認証する)。
【0228】
ステップS1063において,操作要求プログラム172は,通信部29に,インターネット3を介して,ユーザ4のインスタントメッセージングIDおよび鍵を付加した操作リクエストを,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置2のアドレスに宛てて送信させる。
【0229】
パーソナルコンピュータ5が認証された場合,ステップS3062において,受信制御プログラム126は,通信部79に,パーソナルコンピュータ5から送信されてきた,ユーザ4のインスタントメッセージングIDおよび鍵が付加された操作リクエストを受信させ,ステップS3063に進む。
【0230】
パーソナルコンピュータ5が認証されない場合,ステップS3062において,受信制御プログラム126は,受信した操作リクエストを破棄し,以下の処理はスキップされ,操作リクエストに対する処理は実行されない。
【0231】
ステップS3063乃至ステップS3068の処理のそれぞれは,図13のステップS3022乃至ステップS3027の処理のそれぞれと同様なので,その説明は省略する。」
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「簡単かつ確実に,ネットワークを介して,特定のユーザに対してのみサービスを提供するか,または特定のユーザのみがサービスの提供を受けることができるようにした情報処理方法において,
各ユーザは,ハードディスクレコーダ付きテレビジョン受像装置(以下,「受像装置」という。)またはパーソナルコンピュータ(以下,「PC」という。)を介して,インスタントメッセージングIDおよびパスワードをサーバに送信して,インスタントメッセージングシステムにログインし,サーバに,メッセージを交換する相手のインスタントメッセージングIDからなるリストを作成させ,それにより,サーバはユーザ登録リストに登録された相手とのメッセージのみを中継することで,各ユーザは,自分自身が許可した特定のユーザとだけ安全に通信することができ,
受像装置は,サーバから通知された相手ユーザのインターネット上のアドレスによって,PCにアクセスし,PCは,サーバから通知された相手ユーザのインターネット上のアドレスによって,受像装置にアクセスして,両者は,以後,直接(P2P(Peer to Peer)で),メッセージをやりとりすることができ,
また,受像装置からPCにメッセージを直接送る場合も,PCから受像装置にメッセージを直接送る場合も,暗号化されたメッセージが,インターネットを介して送られることで,受像装置およびPCは,インターネットおよびサーバを介して,セキュアにメッセージを交換することができ,第三者は,インターネットを伝送されるメッセージを取得しても,復号ができないので,その内容を知ることは出来ず,
これにより,セキュアなインスタントメッセージングシステムを利用して,インターネットに接続されている機器に認証で必要な情報を交換させ,機能を他の機器に提供する場合に,セキュアなインスタントメッセージングシステムによって交換された情報を基に,相手を認証するものであり,
サービス提供のための認証として,チャレンジアンドレスポンス方式の認証を行う場合に,
PCから認証が要求されると,受像装置におけるサービス提供プログラムの受信制御プログラムは,PCから送信されてきたインスタントメッセージングIDに関係付けられて記録されている鍵を鍵リストから読み出すとともに,乱数を生成し,生成した乱数をチャレンジコードとして,PCに送信し,
PCにおける操作要求プログラムは,受像装置からチャレンジコードが送信されてくると,チャレンジコードを受信して,受信したチャレンジコードをアドレス/鍵リストに記録されている鍵で暗号化して,レスポンスを生成するとともに,生成したレスポンスを受像装置に送信し,
受像装置における受信制御プログラムは,PCからレスポンスが送信されてくると,レスポンスを受信し,受信したレスポンスと,生成した乱数を鍵で暗号化した値とを比較し,受信したレスポンスと生成した乱数を鍵で暗号化した値とが一致した場合,PCを適正な相手として認証し,
PCが認証された場合,受像装置における受信制御プログラムは,通信部に,PCから送信されてきた,インスタントメッセージングIDおよび鍵が付加された操作リクエストを受信させ,当該操作リクエストをもとに,要求されたサービス提供の処理を実行する,方法。」
2.引用文献2ないし4,及び,原査定で引用した引用文献A,Bについて
(1)当審拒絶理由に引用され,原査定の拒絶理由にも引用された,穴澤 健明 他,コンテンツ保護の柔靭化を実現した開放型超流通基盤,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年11月30日,Vol.2001,No.118,p.31-42(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「3. UDAC-MB:DRM間相互運用基盤
(中略)
3.1. サービスモデル
UDAC-MBの基本サービスモデルを図-1に示す。モデル上,DRMは配信システム,記録メディア及びコンテンツ再生システムの内部に存在し,それぞれをサーバDRM,メディアDRM及びデコーダDRMと呼ぶ。これらのうち,メディアDRMとデコーダDRMにはTRM化が必要である。
TRM化が必要なDRMの製造者は配信サービス参入に当たって機器種別ごとにDRM種別公開鍵と秘密鍵のペアを生成し,公開鍵のみを認証局(CA:Certification Authority)に提出する。認証局ではこの種別公開鍵に認証局の秘密鍵を用いてディジタル署名を施し,DRM種別公開鍵の証明書を生成,発行する。DRMの製造者は,この証明書を自身が製造するDRMに埋め込む。」(第33頁右欄6行~第34頁左欄2行)
「3.3.2. DRM認証とライセンス転送
対抗手段2)としてのDRM認証は認証対象のDRMに埋め込まれたDRM種別公開鍵の証明書を用いてチャレンジレスポンス方式で行われる。またこの認証の結果,ラインセンス転送元(配信システムまたはメディア)と認証された転送先DRM(メディアまたはデコーダ)とでセッション鍵(一時的な暗号鍵)が秘密裏に共有される。DRM認証プロトコルの安全性に関しては3.5.-で詳述する。
ライセンスは,図-2に示すように,DRM認証で共有したセッション鍵およびDRM個別公開鍵を用いて暗号化してから,転送先DRMに送信される。DRM個別公開鍵は製造したメディアDRM一個一個に割り当てられる。」(第35頁左欄25行~39行)
(2)当審拒絶理由に引用された,特開2001-144751号公報(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は総当り攻撃を事実上防ぐ認証方式を考案した。
(イ)認証を受ける側があらかじめ公開鍵暗号方式の公開鍵を認証する側の電算機に登録しておく。
(ロ)認証を受けようとするものが認証をする電算機(以下サーバという)に認証要求をしてきたら,まずランダムなデータを作成する。
(ハ)それをあらかじめ登録されている認証を受けようとする者の公開鍵で暗号化する。
(ニ)その暗号化されたデータを認証要求してきたものに送信する。
(ホ)認証を受けようとするものは送られてきたデータを自分の秘密鍵で復号化し,サーバ側の公開鍵で暗号化しサーバに送り返す。
(ヘ)サーバ側は自分の秘密鍵で送られてきたデータを復号化し,先ほどランダムに生成したデータと比較し,一致した場合は本人であると認証し,一致しない場合は偽者として認証しない。」
(3)当審拒絶理由に引用された,特開2003-143130号公報(以下,これを「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0033】図3において,情報端末機器1は,まず認証キー情報となる乱数Rrを発生させ,更に,その乱数Rrに暗号化を施し,認証キー送信部12,I/Oインターフェース部11経由でICカードR/W3側に送信する(ステップS301)。これを受けたICカードR/W3側(ICカード2)では,復号処理を行って解凍し,更に暗号化処理を施して情報端末機器1に応答を返す(ステップS302)。
【0034】情報端末機器1では,その応答をI/Oインターフェース部11経由,応答受信部13で受信し,復号化を施して認証キー照合部14へ供給する。認証キー照合部14には,先に送信された乱数Rrが比較対象の認証キー情報として提供されており,ここで,受信した応答とを照合することにより,乱数Rrの認証が行なわれる。そして,その認証結果をI/Oインターフェース部11経由でICカードR/W3側に送信する(ステップS303)。
【0035】これを受けたICカードR/W3側では,認証キー情報となる乱数Rcを発生させ,更にその乱数Rcに暗号を施して情報端末機器1に送信する(ステップS304)。情報端末機器1は,I/Oインターフェース部11経由で応答受信部13を介して暗号化された乱数Rcを受信し,復号処理を行って解凍し,更に暗号化処理を施し,認証キー送信部12,I/Oインターフェース部11経由でICカードR/W3側に応答を返す(ステップS305)。ICカードR/W3側では,その応答を受信し,復号したうえで乱数Rcの認証を行う。そして,その認証結果を情報端末機器1に送信し(ステップS306),認証が得られた後は,情報端末機器1にICカード2に対する所定の処理をうながす。以上の繰り返しにより常時認証が行なわれるが,情報端末機器1でのICカード2に対する処理時間に比較して短い周期,ここでは,0.1~0.01秒間隔で認証キー情報となる乱数の更改が行われ,常時認証が行なわれることとする。
【0036】図4において,ICカードR/W3側(情報端末機器1)は,まず認証キー情報となる乱数Rrを発生させ,更にその乱数Rrに暗号を付し,ICカード2に送信する(ステップS401)。ICカード2は,暗号化された乱数Rrを無線通信インターフェース部21経由応答受信部23で受信し,復号処理を行って解凍し,更に暗号化処理を施してICカードR/W3に応答を返す(ステップS402)。ICカードR/W3側では,その応答を受信し,復号処理を施して認証キーの照合を行い,その結果情報をICカード2へ送信する(ステップS403)。その認証結果を得たICカード2では,認証キー情報となる乱数Rtを発生させ,更にその乱数Rtに暗号を施してICカードR/W3に送信する(ステップS404)。
【0037】ICカードR/W3側では,暗号化された乱数を受信し,復号したRtに更に暗号化してICカード2に応答を返す(ステップS405)。ICカード2は,その応答を無線通信インターフェース部21経由,応答受信部23で受信し,復号化を施して認証キー照合部24へ供給する。認証キー照合部24には,先に送信された乱数Rtが比較対象の認証キー情報として提供されており,ここで,受信した応答と照合することにより,乱数Rtの認証が行なわれる。そして,その認証結果を無線通信インターフェース部21経由でICカードR/W3側に送信する(ステップS406)。」
(4)原査定の拒絶理由に引用された,特開2005-165671号公報(以下,「引用文献A」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は,複数のPCやデバイスとこれらを使用するユーザの認証を行い,かつリソースへのアクセスを制御する認証サーバの機能をバックアップする多重化(冗長化)システムに関する。また,当該多重化システムによって構成される複数の認証サーバに信頼性を与え,かつこれを確認する多重化方法に関する。」
「【0032】
図3は,本発明にかかる認証サーバの多重化システムにおいて,チャレンジ・アンド・レスポンス方式に基づく通信手順を示すラダーチャートである。
図3において,3-1および3-2は,それぞれプライマリ認証サーバおよびセカンダリ認証サーバの各処理工程を示すものである。また,図3において,プライマリ認証サーバ3-1は,図1におけるプライマリ認証サーバ1-4に該当し,セカンダリ認証サーバ3-2は,図1におけるセカンダリ認証サーバ1-5に該当する。
【0033】
図3において,ステップS3-3は,プライマリ認証サーバ(3-1)が乱数を生成し,これをサーバ自身の内部データ記憶領域に保持する工程である。この乱数は所定のデータ長を有しており,通信を行うたびに毎回異なる値が生成される。そして,サーバ自身のデータ記憶領域にこの値が保持される。
【0034】
図3において,ステップS3-4は,セカンダリ認証サーバ(3-2)の公開鍵で前述の乱数値を暗号化する工程である。認証サーバには,その設置時にあらかじめ公開鍵暗号方式に基づく暗号鍵のペア,すなわち公開鍵と秘密鍵が作られていて,公開鍵は既知の鍵配布手段に基づいて他の認証サーバに配布され,保持されている。この工程(ステップS3-4)では,セカンダリ認証サーバのみが復号しうるデータとして暗号化するため,先にプライマリ認証サーバ(3-1)で生成し保持しておいた乱数値を,セカンダリ認証サーバ(3-2)の公開鍵で暗号化する。公開鍵暗号化方式としては,既知の暗号アルゴリズムを利用することができる。
【0035】
暗号化された乱数値は,所定の通信プロトコルに従ってセカンダリ認証サーバに送信される(ステップS3-5)。所定の通信プロトコルは,例えば公開された標準プロトコルとして,FTP,HTTPなどがあるが,独自のプロトコルに従うことも可能である。
【0036】
セカンダリ認証サーバ(3-2)は,暗号化された乱数値を自身の秘密鍵で復号処理し,プライマリ認証サーバ(3-1)がこの通信に関連付けられた値として生成した乱数値を取得する(ステップS3-6)。秘密鍵とは,所定の公開鍵暗号アルゴリズムに基づく暗号鍵のうちの秘密鍵のことをいう。暗号アルゴリズムは,認証サーバの設置時に事前に指定しておいても良いが,本発明にかかる多重化システムにおいては,通信時にハンドシェイク処理時に,どの暗号アルゴリズムを適用するかが指定される。これは,認証サーバの種類によって対応しているアルゴリズムに相違のある場合があるからである。なお,乱数値は通信ごとにプライマリ認証サーバによって生成される。
【0037】
次に,セカンダリ認証サーバ(3-2)は,取得した乱数値を自身の所有する秘密鍵を利用して電子署名処理を施す(ステップS3-7)。電子署名は,送信するデータに改ざんが無いことと,本人性を証明することを目的として行われる。電子署名の方法として,本発明にかかるシステムは,例えば,次に示す手順と工程に従った処理が実行される。すなわち,セカンダリ認証サーバの処理として,乱数値を,署名データを送信する相手先認証サーバの公開鍵で暗号化する。この後,セカンダリ認証サーバは暗号データをプライマリ認証サーバに送信する(ステップS3-9)。
【0038】
暗号データを受け取ったプライマリ認証サーバは,自身の秘密鍵で暗号データを復号する。復号処理の結果,プライマリ認証サーバは乱数値を取得することになる(ステップS3-10)。ここで,プライマリ認証サーバは通信前に生成しておいた乱数値を保持しており,この値と復号の結果取得した乱数値の一致,不一致を比較する。比較の結果,乱数値が一致すれば,セカンダリ認証サーバは自身の秘密鍵でプライマリ認証サーバが先に送信した乱数値の暗号データを復号することができたことになる。
【0039】
正しく復号するためには,セカンダリ認証サーバは,プライマリ認証サーバが保持している公開鍵に対応する正しい秘密鍵を利用して暗号データを復号しなければならない。このことから,正しく復号できたと判断できる場合には,セカンダリ認証サーバはプライマリ認証サーバが意図する真正な秘密鍵を保有していることになり,よって,プライマリ認証サーバはセカンダリ認証サーバが真正に設置されたサーバであると認識することが可能となる(ステップS3-11)。
【0040】
このあと,プライマリ認証サーバ(3-1)は,セカンダリ認証サーバ(3-2)が真正に設置されたサーバであると判断すれば,引き続き当該セカンダリ認証サーバ(3-2)を信頼する。しかし,セカンダリ認証サーバ(3-2)が真正に設置されたものではないと判断した場合,その結果を監査し,システム管理者への警告メッセージの発行と,セカンダリ認証サーバのシステムからの切り離しを行う(ステップS3-12)。」
したがって,上記引用文献Aには次の事項が記載されていると認められる。
多重化システムによって構成される複数の認証サーバに信頼性を与え,かつこれを確認する多重化方法において,
プライマリ認証サーバが,乱数を生成し,これをサーバ自身の内部データ記憶領域に保持するステップと,
プライマリ認証サーバが,セカンダリ認証サーバの公開鍵で乱数値を暗号化するステップであり,認証サーバには,その設置時にあらかじめ公開鍵暗号方式に基づく暗号鍵のペア,すなわち公開鍵と秘密鍵が作られていて,公開鍵は既知の鍵配布手段に基づいて他の認証サーバに配布され保持されているものであり,上記暗号化は,先にプライマリ認証サーバで生成し保持しておいた上記乱数値を,セカンダリ認証サーバの公開鍵で暗号化するものである,ステップと,
プライマリ認証サーバが,上記暗号化された乱数値を,所定の通信プロトコルに従ってセカンダリ認証サーバに送信するステップと,
セカンダリ認証サーバが,上記暗号化された乱数値を自身の秘密鍵で復号処理し,プライマリ認証サーバがこの通信に関連付けられた値として生成した乱数値を取得するステップと,
セカンダリ認証サーバが,上記取得した乱数値を,署名データを送信する相手先認証サーバの公開鍵で暗号化し,プライマリ認証サーバに送信するステップと,
プライマリ認証サーバが,セカンダリ認証サーバからの暗号データを受け取るステップと,
プライマリ認証サーバが,自身の秘密鍵で上記暗号データを復号する復号処理の結果,乱数値を取得することになるステップと,
プライマリ認証サーバが,通信前に生成しておいた乱数値を保持しており,この値と上記復号の結果取得した乱数値の一致,不一致を比較し,比較の結果,乱数値が一致すれば,セカンダリ認証サーバは自身の秘密鍵でプライマリ認証サーバが先に送信した乱数値の上記暗号データを復号することができたことになり,よって,プライマリ認証サーバはセカンダリ認証サーバが真正に設置されたサーバであると認識することが可能となり,セカンダリ認証サーバが真正に設置されたサーバであると判断されれば,引き続きセカンダリ認証サーバを信頼する,ステップと,
を備える,方法。
(5)原査定の拒絶理由に引用された,米国特許出願公開第2004/0083297号明細書(以下,「引用文献B」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。
「A system providing real-time communication over an electronic communication network between two or more users includes a client application associated with each user, a first authentication application having authentication information for at least one user and associated with at least one of the client applications, and a messaging service application maintaining the connection status of all of the users. The first authentication application and the client applications associated with the first authentication application reside on a first private network in communication with a public network. A second authentication application associated with at least one of the client applications and having authentication information for at least one other user reside on a second private network in communication with public network. The authentication applications can receive authentication information from directory services of their private networks. Communication between the authentication applications and the messaging service application is preferably via a secure communications connection. 」(Abstract)
(当審訳:「2かそれ以上のユーザ間で電子通信ネットワーク上でのリアルタイムコミュニケーションを提供するシステムであり,それぞれのユーザと結びつけれたクライアントアプリケーション,少なくとも1つのユーザーのための認証情報を有し,少なくとも1つのクライアントアプリケーションと結びつけられた1番目の認証アプリケーション,及び,すべてのユーザと接続ステータスを維持するメッセージングサービスアプリケーション,を含む。1番目の認証アプリケーションと,1番目の認証アプリケーションと結び付けられたクライアントアプリケーションは,公衆回線上でのコミュニケーションで最初のプライベートなネットワークに存在する。少なくとも1つのクライアントアプリケーションと結びつけられ,少なくとも1つの他のユーザーのための認証情報を有する,2番目の認証アプリケーションは,公衆回線上でのコミュニケーションで2番目のプライベートなネットワークに存在する。それら認証アプリケーションは,それらのプライベートなネットワークのディレクトリサービスから,認証情報を受け取ることができる。認証アプリケーションとメッセージングサービスアプリケーションの間のコミュニケーションは,なるべく安全な通信接続によるものである。」)
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「PC」,「受像装置」は,メッセージを送受信するデバイスであるから,メッセージング・デバイスの一態様である。
また,本願発明1の「送信側メッセージング・デバイス」が送信する対象は,請求項9の「安全確実な通信は,インスタント・メッセージ,ファイル転送,画像転送,テキスト系通信,オーディオ通信,ビデオ通信,またはオーディオ/ビデオ通信の内少なくとも1つを含む」の記載からすると,画像データやビデオデータを含むことから,引用発明の,映像データを提供するデバイス,すなわち,画像データやビデオデータを送信する「受像装置」は,本願発明1の「送信側メッセージング・デバイス」に相当する。
同様に,引用発明の画像データやビデオデータを受信する「PC」は,本願発明1の「受信側メッセージング・デバイス」に相当する。
また,本願発明1の「申し込み識別子」は,本願明細書の段落【0036】の「ブロック402(図4A)において,申し込み識別子をランダムに発生し」との記載からすると,乱数であることから,引用発明の「受像装置」において生成され記録された「乱数」(「チャレンジコード」)は,本願発明1の「申し込み識別子」に相当する。
また,引用発明の「受像装置」から「PC」に送信される「乱数」が暗号化されて送信されるかは特定されていないものの,「乱数」情報を送信するものであり,一方,本願発明1の「暗号化申し込みメッセージ」も,乱数である「申し込み識別子」の情報を送信するものであることから,両者は,「申し込み識別子」の情報を送信する点で共通するといえる。
また,引用発明の「受像装置」から「PC」に送信される「乱数」は,「直接(P2P(Peer to Peer)で),メッセージをやりとりする」対象となるものであるから,引用発明の「受像装置」から「PC」へ「乱数」を送信する際に,「直接(P2P(Peer to Peer)で),メッセージをやりとりする」対象とすることは,本願発明1の「ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて」「申し込みメッセージ」を「伝達」することに相当する。
また,引用発明の「PC」において生成される「レスポンス」は,「PCから受像装置にメッセージを直接送る場合」の「暗号化」の対象となるものであるから,引用発明の「PC」において「チャレンジコードを受信して,受信したチャレンジコードをアドレス/鍵リストに記録されている鍵で暗号化して,レスポンスを生成する」ことは,本願発明1の「受信側メッセージング・デバイスが」「暗号化申し込み返答を発生するために」,「暗号化鍵により」「申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化する」ことに相当する。
以上から,後記する点で相違するものの,本願発明1の「送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化申し込みメッセージを前記受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが前記暗号化申し込みメッセージを解読し,暗号化申し込み返答を発生するために,前記送信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップ」と,引用発明の「受像装置におけるサービス提供プログラムの受信制御プログラム」が「生成した乱数をチャレンジコードとして,PCに送信し」,「PCにおける操作要求プログラムは,受像装置からチャレンジコードが送信されてくると,チャレンジコードを受信して,受信したチャレンジコードをアドレス/鍵リストに記録されている鍵で暗号化して,レスポンスを生成する」ことは,“送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,申し込み識別子の情報を受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込み返答を発生するために,暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップ”である点で共通している。
イ 引用発明の「受像装置における受信制御プログラムは,PCからレスポンスが送信されてくると,レスポンスを受信」することは,本願発明1の「前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスからの暗号化申し込み返答を受信するステップ」に相当するといえる。
ウ 引用発明は,「受像装置における受信制御プログラムは,PCからレスポンスが送信されてくると,レスポンスを受信し,受信したレスポンスと,生成した乱数を鍵で暗号化した値とを比較」するものであるから,受信したレスポンス(暗号化された申し込み識別子)と生成した申し込み識別子を暗号化した値が一致するか検証することで,最終的に受信した申し込み識別子と生成した申し込み識別子が一致するか検証できることは明らかである。
また,「送信側メッセージング・デバイス」が通信相手を認証するこで,通信が安全確実となるといえる。
以上から,後記する点で相違するものの,本願発明1の「前記送信側メッセージング・デバイスが,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するために,前記返答申し込み識別子が前記申し込み識別子と一致することを検証するステップ」と,引用発明の「受像装置における受信制御プログラム」が「受信したレスポンスと,生成した乱数を鍵で暗号化した値とを比較し,受信したレスポンスと生成した乱数を鍵で暗号化した値とが一致した場合,PCを適正な相手として認証し」,「PCが認証された場合,受像装置における受信制御プログラムは,通信部に,PCから送信されてきた,インスタントメッセージングIDおよび鍵が付加された操作リクエストを受信させ,当該操作操作リクエストをもとに,要求されたサービス提供の処理を実行する」ことは,“前記送信側メッセージング・デバイスが,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するために,前記返答申し込み識別子が前記申し込み識別子と一致することを最終的に検証するステップ”である点で共通するといえる。
エ 上記アないしウの対比によれば,本願発明1と引用発明とは次の点で一致し,そして相違する。
[一致点]
送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,申し込み識別子の情報を受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込み返答を発生するために,暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記受信側メッセージング・デバイスからの暗号化申し込み返答を受信するステップと,
前記送信側メッセージング・デバイスが,前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するために,前記返答申し込み識別子が前記申し込み識別子と一致することを最終的に検証するステップと,
を備えている,方法。
〈相違点1〉
本願発明1は,送信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込みメッセージを発生するために,該送信側メッセージング・デバイスのメモリに格納されている申し込み識別子を暗号化するステップを有しているのに対し,
引用発明では,そのようなステップを有することは特定されていない点。
〈相違点2〉
本願発明1における,申し込み識別子を暗号化するステップの暗号化は,受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵による申込み識別子の暗号化を含むのに対して,
引用発明では,PCに対応付けられたディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵による暗号化を含むことは特定されていない点。
〈相違点3〉
暗号化鍵により申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップに関し,
本願発明1では,暗号化の前に,受信側メッセージング・デバイスが伝達されてきた暗号化申し込みメッセージを解読するとともに,送信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵を用いて暗号化を行って返答申し込み識別子としているのに対して,
引用発明では,そのような特定は行われていない点。
〈相違点4〉
本願発明1では,送信側メッセージング・デバイスが,前記暗号化申し込み返答を解読するステップを有するのに対して,
引用発明では,そのようなステップを有しない点。
〈相違点5〉
送信側メッセージング・デバイスが,返答申し込み識別子が申し込み識別子と一致することを検証する際に,
本願発明1では,返答申し込み識別子が申し込み識別子と一致することを直接検証しているのに対して,
引用発明では,申し込み識別子自体を,完全な平文状態ではなく暗号化状態で一致することを検証している点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記相違点1ないし3についてまとめて検討する。
引用発明は,「受像装置における受信制御プログラムは,PCからレスポンスが送信されてくると,レスポンスを受信し,受信したレスポンスと,生成した乱数を鍵で暗号化した値とを比較し,受信したレスポンスと生成した乱数を鍵で暗号化した値とが一致した場合,PCを適正な相手として認証」し,それよって,認証された「PC」に対して「受像装置における受信制御プログラム」が,「通信部に,PCから送信されてきた,インスタントメッセージングIDおよび鍵が付加された操作リクエストを受信させ,当該操作操作リクエストをもとに,要求されたサービス提供の処理を実行する」ものであり,相違点1ないし3に係る本願発明1の構成である,「権利管理(DRM)サービス」による当該「発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」を,「送信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込みメッセージを発生するために,該送信側メッセージング・デバイスのメモリに格納されている申し込み識別子を暗号化するステップ」と,「受信側メッセージング・デバイス」による「暗号化鍵により申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップ」の両方に用いること,すなわち,「メッセージング・デバイス」どうしが「前記ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて通信するときに,該通信が安全確実であることを確立するため」に,送信側メッセージングデバイスから受信側メッセージングデバイスへの申し込み識別子(乱数)の送信と,受信側メッセージングデバイスから送信側メッセージングデバイスへのレスポンスの送信の両方において,「ディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可」に登録されている「暗号化鍵」を用いて暗号化することは行っていない。
そして,上記相違点1ないし3に係る本願発明1の構成は,上記引用文献2ないし4にも記載されておらず,また,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
そうすると,引用発明に基づいて,相違点1ないし3に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
したがって,本願発明1は,相違点4及び5を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-18について
本願発明2-9は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また,本願発明10,17,18は,本願発明1を別のカテゴリーで表現するものであり,同様に,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また,本願発明11-16は,本願発明10を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
1.特許法第29条第2項について
平成30年1月10日付けの補正により,補正後の請求項1は,「送信側メッセージング・デバイスが,暗号化申し込みメッセージを発生するために,該送信側メッセージング・デバイスのメモリに格納されている申し込み識別子を暗号化するステップであって,前記暗号化が,受信側メッセージング・デバイスと対応付けられたディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵による前記申込み識別子の暗号化を含む,ステップ」及び「前記送信側メッセージング・デバイスが,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化申し込みメッセージを前記受信側メッセージング・デバイスに伝達し,該受信側メッセージング・デバイスが前記暗号化申し込みメッセージを解読し,暗号化申し込み返答を発生するために,前記送信側メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化するステップ」という技術的事項を有し,また,請求項10は「第1メッセージング・デバイスは,更に,該第1メッセージング・デバイスに格納されている申し込み識別子を前記第2メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により暗号化し,ピア・ツー・ピア通信リンクを通じて,前記暗号化された申し込み識別子を前記第2メッセージング・デバイスに伝達するよう構成され」及び「前記第2メッセージング・デバイスは,前記暗号化された申し込み識別子を解読し,暗号化申し込み返答を発生するために,前記第1メッセージング・デバイスと対応付けられたDRMサービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵により前記申し込み識別子を返答申し込み識別子として暗号化し,前記暗号化申し込み返答を前記第1メッセージング・デバイスに伝達するよう構成され」という技術的事項を有するものとなった。(下線は補正部分。)
原査定の拒絶理由に引用された引用文献Aに記載の「多重化システムによって構成される複数の認証サーバに信頼性を与え,かつこれを確認する多重化方法」(上記第5の2.(4)を参照)は,「プライマリ認証サーバが,セカンダリ認証サーバの公開鍵で乱数値を暗号化するステップであり,認証サーバには,その設置時にあらかじめ公開鍵暗号方式に基づく暗号鍵のペア,すなわち公開鍵と秘密鍵が作られていて,公開鍵は既知の鍵配布手段に基づいて他の認証サーバに配布され保持されているものであり,上記暗号化は,先にプライマリ認証サーバで生成し保持しておいた上記乱数値を,セカンダリ認証サーバの公開鍵で暗号化するものである,ステップ」及び「セカンダリ認証サーバが,上記取得した乱数値を,署名データを送信する相手先認証サーバの公開鍵で暗号化し,プライマリ認証サーバに送信するステップ」を有し,この場合のプライマリ認証サーバが乱数値の暗号化に用いるセカンダリ認証サーバの公開鍵,及び,セカンダリ認証サーバが取得した乱数値の暗号化に用いるプライマリ認証サーバの公開鍵は,「既知の鍵配布手段に基づいて他の認証サーバに配布され」るものであるものの,具体的にどのような仕組みによって,どのような態様で配布されるかについては特定されておらず,いずれも「ディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」に当たるものであるとはいえない。そして,当該技術事項は,原査定の拒絶理由に引用された引用文献B及び2にも記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1,10は,当業者であっても,原査定の拒絶理由に引用された引用文献A,B,及び2に記載された事項に基づいて容易に発明できたものではない。本願発明1又は10をさらに限定する本願発明2-9,11-16,及び,本願発明1を別のカテゴリーで表現した本願発明17,18についても同様である。
したがって,原査定を維持することはできない。
第8 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第2号について
当審では,請求項1の「発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」という点は,記載が明確でないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年1月10日付けの補正において,「ディジタル権利管理(DRM)サービスの発行認可に埋め込まれている暗号化鍵」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
2.特許法第29条第2項について
上記「第6 対比・判断」で検討のとおり,平成30年1月10日付けの補正により,この拒絶の理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり,本願発明1-18は,当業者が引用発明,引用文献2ないし4,及び,引用文献A,Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-019073