特許拒絶査定不服審判
2016-018210
電線と端子との接合構造
- 審判番号
- 2016-018210
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-083419外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月05日
- 審決日
- 2017年12月18日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01R) / P18 .113-WY (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 83419「電線と端子との接合構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開、特開2014-207108、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月11日の出願であって、平成28年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年9月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月12日付け(発送日:同年10月18日)で拒絶査定(以下、「原審拒絶査定」という。)がなされ、これに対し、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において平成29年8月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 原審拒絶査定の概要
原審拒絶査定の概要は次のとおりである。
[理由1]本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献AないしDに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
A 特開2012-28076号公報
B 特許第3119434号公報
C 特開2012-248281号公報
D 特開2004-311061号公報
第3 当審拒絶理由の概要
本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1 特開2004-311061号公報(原審拒絶査定における引用文献D)
2 特開2012-28076号公報(原審拒絶査定における引用文献A)
3 特開2012-248281号公報(原審拒絶査定における引用文献C)
第4 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年10月19日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
端子の伸延方向に直交する接合面を有する電線接合部が端子の一端に形成され、その接合面に電線の絶縁被覆が剥離された芯線部の先端面を押し当てて超音波接合されてなり、
前記芯線部の先端部は、断面が前記接合面への超音波接合前に予め矩形に成型されて加工硬化されている電線と端子との接合構造。」
「【請求項2】
前記端子の前記電線接合部の接合面に、前記芯線部の先端が嵌装可能な凹所が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線と端子との接合構造。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2004-311061号公報(引用文献1、かつ原審拒絶査定における引用文献D)には、「摩擦圧接法による電線導体と端子の接続方法」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
導体2端面を露出させた状態で電線1を固定し、前記電線1の導体2に接続される端子3の接合面と前記端面とを加圧接触させた状態で前記端子3を回転させ、所望の摩擦熱を確保したのち、前記端子3を停止させて前記導体2の端面と前記端子3の接合面とを接合することを特徴とする摩擦圧接法による電線導体と端子の接続方法。
…(中略)…
【請求項3】
前記端子の接合面に前記導体の側面に延びるリブを設け、該リブにより前記導体の端面を被覆することを特徴とする請求項1又は2記載の摩擦圧接法による電線導体と端子の接続方法。
…(後略)…」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)
(イ)「【0015】
請求項3に記載の摩擦圧接法による電線導体と端子の接続方法によれば、端子接合面側に導体端面の形状(W/H用撚り線等では円筒形)に応じたリブを形成して導体の端面をリブで拘束することにより、導体端部を補強することにより端部の剛性をも上げることができ、また、回転時に導体端面で素線がばらけてしまう事態を回避し、効率良い摩擦圧接を行うことができる。」(段落【0015】)
(ウ)「【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は電線導体と端子の接続方法を説明するための概略構成図を示している。図1(a)において、1はW/H用撚り線等の電線、2は電線1の絶縁被覆を剥離露出する導体、3は導体2と接合させる端子、4は端子3の接合部に形成され、導体端面を覆うように形成されたリブ、5は電線1と導体2を固定・把持する電線固定治具(固定部)である。
…(中略)…
【0021】
さらに、図2を参照して電線1及び導体2について説明する。電線1は、導体2を被覆する絶縁被覆を剥いで電線1から導体2を露出させる。電線固定治具5は、電線1及び露出した導体2のうち先端部分の接合部2aを除く電線保持部2bを保持し、接合部2aが電線固定治具5から僅かに露出するようにセットしてチャッキング固定する。
【0022】
電線1の導体2と端子3との関係をみると、図1(b)に示されるように、導体2の端面2aと端子3の接合部3aに形成されたリブ4とが、互いに向き合うように、位置決めセンサ等を用いて固定される。
【0023】
上述のようにして電線1を電線固定治具5にチャッキング固定し、端子3を端子・固定回転部6に固定し、それぞれ対向配置した状態で(図1(a))、圧接接続を開始する。まず、端子固定・回転部6を前進方向へ駆動して、導体2の端面2aと端子3のリブ4面を完全に接触させ、更に、圧力センサ等を用いて所定の荷重が掛かるように駆動する。所定荷重を加えたのち、所定速度で端子3を回転させる。導体2の接合面2aとリブ4とを加圧下で接触させ回転させることで、接合面2aにのみ摩擦熱が発生する。摩擦熱が所定温度に達して接合面が溶融し始めた時点で回転軸のモータを停止させる。回転停止と同時、若しくは相前後するタイミングで更に加圧を増大させて(アップセット加圧)、接合部2aにおける接合を完了する。これにより、電線1と端子3とを導体2の接合部2aのみで接合させることができる(図3)。」(段落【0018】ないし【0023】)
(エ)上記(ウ)の段落【0023】に記載された「端面2a」に関し、「接合部2a」(段落【0021】及び【0023】)並びに「接合面2a」(段落【0023】)との記載もあるが、段落【0023】の記載「まず、端子固定・回転部6を前進方向へ駆動して、導体2の端面2aと端子3のリブ4面を完全に接触させ」を図1(b)に照らし合わせれば、導体2の端の面であることが分かる(以下、「導体2の端の面」を「端面2a」という。)。
(2) 引用発明
上記(1)の記載事項及び認定事項を総合し、本願の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「端子3の接合部3aに、電線1の絶縁被覆を剥離露出した導体2の端面2aを加圧接触させて摩擦圧接接合されてなる電線導体と端子の接合構造。」
2 引用文献2
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2012-28076号公報(引用文献2、かつ原審拒絶査定における引用文献A)には、「電線付き端子金具およびその製造方法」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0008】
本発明の電線付き端子金具においては、端子金具の底部の一側部から他側部に連なる壁部に、底部側に垂下する補助壁部が設けられており、補助壁部は電線の端末とともに底部に接合されているから、電線に流れる電流は底部だけでなく、補助壁部にも流れる。そして、底部と補助壁部に流れる電流は、底部の一端と補助壁部の一端からそれぞれ延出された接続舌片に流れて相手方の端子と電気的に接続される。
つまり、本発明においては、電線を流れる電流が底部と補助壁部とに分かれて流れるので、電流の集中を防止することができ、大電流通電時における発熱も発生し難い。
その結果、本発明によれば、電流の集中を防止し大電流通電時における発熱の発生を防止した電線付き端子金具を提供することができる。
【0009】
また、本発明によれば、電線の端末は底部と接合されるだけでなく、底部側に垂下する補助壁部にも接合されるので、精度よく電線の位置決めを行うことができる。」(段落【0008】及び【0009】)
(イ)「【0018】
本実施形態の電線付き端子金具10は、図1に示すように、端子金具20と端子金具20の底部22に接続された電線11とを備える。
電線11は複数の金属素線からなる芯線12と、芯線12の外周を覆う合成樹脂製の絶縁被覆13とを備える。芯線12は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。本実施形態においては、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。電線11の端末11Aは、絶縁被覆13を剥離除去することで芯線12が露出しており、この露出状態の芯線12は扁平形状をなしている。」(段落【0018】)
(ウ)「【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、抵抗溶接によりろう付けを行って、補助壁部27(当審注:段落【0028】ないし【0030】及び図2等の記載からみて、「補助壁部26」の明らかな誤記。以下同じ。)を、電線11の端末11Aとともに底部22に接合する方法を示したが、本発明は、これに限定されない。例えば、超音波溶接や、半田付けにより、補助壁部27を電線11の端末11Aとともに底部22に接合してもよい。
(2)上記実施形態では、補助壁部27と電線11の端末11Aと底部22との接合を一工程で行う方法を示したが、電線11の端末11Aと底部22とを接合した後に補助壁部27を接合してもよい。要は、補助壁部27が、電線11の端末11Aとともに底部22に接合されていればよい。
…(後略)…」(段落【0031】)
3 引用文献3
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2012-248281号公報(引用文献3、かつ原審拒絶査定における引用文献C)には、「基板用端子およびそれを用いた基板用コネクタ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0035】
このような構造とされた基板用端子16aは、図4に示すように、電線固着部28に被覆電線32の芯線34が固着可能とされている。被覆電線32は、従来公知の単芯線や撚り線等であり、例えば銅等からなる芯線34が絶縁性皮膜で覆われた構造とされている。そして、被覆電線32の一方の端部において芯線34が露出されて、電線固着部28に重ね合わされた状態で固着される。本実施形態における芯線34は、芯線収容凹溝30に収容されることで電線固着部28に対して位置決めされており、電線固着部28に溶着されている。芯線34の溶着方法としては、抵抗溶接やレーザー溶接等が適宜に採用可能であり、本実施形態においては、超音波溶接が用いられている。即ち、芯線34を電線固着部28に重ね合わせた状態で、図示しない超音波溶着装置のホーンとアンビルで挟んで超音波振動を加えることによって、芯線34と電線固着部28の相互の接触面が溶着される。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「接合部3a」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「電線接合部」に相当し、以下同様に、「導体2」は「芯線部」に、「端面2a」は「先端面」に、「加圧接触させて」は「押し当てて」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「摩擦圧接」は、「接合」という限りにおいて、本願発明1における「超音波接合」に一致する。
さらに、引用発明における「電線導体と端子の接合構造」は、その技術的意義からみて、本願発明1における「電線と端子との接合構造」に相当する。
したがって、両者は、次の点で一致する。
「 端子の伸延方向に直交する接合面を有する電線接合部が端子の一端に形成され、その接合面に電線の絶縁被覆が剥離された芯線部の先端面を押し当てて接合されてなる電線と端子との接合構造。」
そして、両者は、次の点で相違する。
(a)「電線と端子との接合」に関し、本願発明1においては「超音波接合」であるのに対して、引用発明においては「摩擦圧接接合」である点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願発明1においては「芯線部の先端部は、断面が接合面への超音波接合前に予め矩形に成型されて加工硬化されている」のに対し、引用発明においては導体2の端面2aが成型及び加工されているか否かが不明である点(以下、「相違点2」という。)。
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2について検討すれば、刊行物1には、導体2の端面2aの形状がW/H用撚り線等では円筒形である旨が記載されている(上記第5の1(1)(イ)参照。)が、導体2と端子3との接合前に予め断面が矩形になるように成型し、加工硬化することの記載及び示唆はない。
また、引用文献2には、露出状態の芯線12が扁平形状である旨が記載されている(上記第5の2(イ)参照。)が、芯線12と補助壁部26との接合前に予め断面が矩形になるように成型し、加工硬化することの記載及び示唆はない。
さらに、引用文献3にも、芯線34と電線固着部28との接合前に予め断面が矩形になるように成型し、加工硬化することの記載及び示唆はない。
そして、電線と端子との接合構造において、芯線部の先端部を、その断面が矩形となるように接合面への超音波接合前に予め成型して加工硬化することが、本願の出願前における周知技術であったということはできない。
したがって、引用発明において、引用文献2及び3の記載事項を適用することが当業者にとって容易であったとしても、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項を想到することが容易であったとすることはできない。
よって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、引用発明並びに引用文献2及び3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を直接的に引用し本願発明1を更に限定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原審拒絶査定についての判断
平成29年10月19日の手続補正によって、補正後の請求項1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとなった。そして、当該発明特定事項は、原審拒絶査定で引用された引用文献AないしDには記載されておらず、本願の出願前における周知技術でもない。
ゆえに、本願発明1が引用文献Aに記載された発明であるということはできない。
また、本願発明1及び2は、当業者であっても、引用文献AないしDに基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原審拒絶査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原審拒絶査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
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