特許拒絶査定不服審判
2016-017146
農業管理支援システム
- 審判番号
- 2016-017146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-074040外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月16日
- 審決日
- 2017年09月19日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 74040「農業管理支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開、特開2014-199516、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月29日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 1月19日付け:拒絶理由の通知
平成28年 3月28日 :意見書、及び、手続補正書の提出
平成28年 8月10日付け:拒絶査定
平成28年11月16日 :審判請求書、及び、手続補正書の提出
平成29年 2月15日 :前置報告
第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月10日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平6-162216号公報
2.特開2004-213239号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平10-313638号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平11-53674号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1、3に、「前記データ収集装置は、前記農業機械に設けられ、且つ前記携帯端末と無線通信可能であり」という事項を追加する補正、及び、「前記第1通信部から送信された農作業データ及びデータ検出時刻を受信する」を「前記第1通信部から送信された農作業データ及びデータ検出時刻を前記無線通信により受信する」とする補正がなされ、各補正事項は、「データ収集装置」が設けられる箇所を「農業機械」に限定するもの、及び、「データ収集装置」と「携帯端末」との間の通信を「無線通信」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「データ収集装置」が「農業機械」に設けられることは、当初明細書の段落【0014】に記載されており、また、「データ収集装置」と「携帯端末」との間で「無線通信」を行うことは、当初明細書の段落【0015】に記載されておりいるから、各補正事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成28年11月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-5は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
農業機械が農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集部と、前記農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部と、前記農作業データ及びデータ検出時刻を記憶する第1記憶部と、前記データ収集部で収集した農作業データ及びデータ検出時刻を送信する第1通信部と、を有するデータ収集装置と、
前記農作業を行う作業者が所持する携帯端末と、
を備え、
前記データ収集装置は前記農業機械に設けられ、且つ前記携帯端末と無線通信可能であり、
前記携帯端末は、
前記第1通信部から送信された農作業データ及びデータ検出時刻を前記無線通信により受信する第2通信部と、
時刻を算出する第2計時部と、
農作業の開始及び終了を指定する作業指定部と、
農作業の作業計画を入力する計画入力部と、
前記第2通信部が受信した農作業データ及びデータ検出時刻、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の開始時の開始時刻、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の終了時の終了時刻、前記計画入力部に入力された作業計画を記憶する第2記憶部と、
を備えていることを特徴とする農業管理支援システム。
【請求項2】
前記携帯端末は、農作業データ、前記開始時刻及び前記終了時刻、作業計画に基づいて作業報告書を作成する報告書作成部を有していることを特徴とする請求項1に記載の農業管理支援システム。
【請求項3】
農業機械が農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集部と、前記農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部と、前記農作業データ及びデータ検出時刻を記憶する第1記憶部と、前記データ収集部で収集した農作業データ及びデータ検出時刻を送信する第1通信部と、を有するデータ収集装置と、
前記農作業を行う作業者が所持する携帯端末と、
を備え、
前記データ収集装置は前記農業機械に設けられ、且つ前記携帯端末と無線通信可能であり、
前記携帯端末は、
時刻を算出する第2計時部と、
農作業の開始及び終了を指定する作業指定部と、
前記第1通信部から送信された農作業データ及びデータ検出時刻を前記無線通信により受信すると共に、受信した農作業データ、データ検出時刻、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の開始時の開始時刻、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の終了時の終了時刻を設置型コンピュータに送信する第2通信部とを備え、
前記設置型コンピュータは、
農作業の作業計画を入力する計画入力部と、
前記携帯端末の第2通信部から送信された農作業データ、データ検出時刻、開始時刻、終了時刻を、前記計画入力部に入力された作業計画と共に記憶する記憶部と、
を備えていることを特徴とする農業管理支援システム。
【請求項4】
前記設置型コンピュータは、農作業データ、前記開始時刻及び前記終了時刻、作業計画に基づいて作業報告書を作成する報告書作成部を有していることを特徴とする請求項3に記載の農業管理支援システム。
【請求項5】
前記携帯端末は、測位衛星からの信号に基づいて作業位置を検出する位置検出部を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の農業管理支援システム。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)
(ア)
「【産業上の利用分野】この発明は、トラクタ、コンバイン、穀物乾燥機等の農業機械に着脱自在に取り付けて使用し、農業機械の作業データを記録及び表示するようにしたデータ収集装置に関する。」(【0001】)
(イ)
「【実施例】この発明の一実施例を図に基づき説明する。図1はシステム全体のブロック図である。1は農業機械としてのトラクタの制御装置であり、この制御装置1の演算制御部(CPU)は記憶部に記憶された内容のプログラムを実行しながら走行部および各作動部分の制御全般を司る。この制御装置1における入力情報としては、各種センサ例えば車速センサ2A,燃料流量センサ2B,ロアリンクセンサ2C,リフトアームセンサ2D等のセンサ類、操作スイッチ類3、設定ダイアル類4等があり、これらは入力インターフェース5を介してCPU6に入力される。一方、モータ,ソレノイド,バルブ等のアクチュエータを作動すべく出力信号が出力インターフェース7を介して出される。必要な入力情報や出力情報はメータやランプ等の表示機器類11に表示される。」(【0007】)
(ウ)
「12はデータ収集装置(管理端末器)で、前記制御装置1と通信可能に接続される。データ収集装置12は、CPU13,操作部14、表示部15、RAM16、漢字ROM17等を備えた本体12aと、該本体に選択的に装着するメモリ手段としてのROMカード18およびRAMカード19とからなる。このうちROMカード18には農業機械の各機種、型式ごとの制御用プログラムがそれぞれ別個に格納されている。
また、RAMカード19は所定の項目ごとにデータを記録できるようになっている。図7はデータ項目の一例を示す。データ項目はヘッダ部領域と作業データ部領域とからなり、ヘッダ部領域には作業年月日、圃場番号、作業者番号、機種コード,使用機械番号、作業コードの各項目を所定に識別符号等を割り当てて形成するファイルから選択して記録できるようになっている。このうち圃場番号は圃場識別符号として用いるもので、予め所有者等によって所定に区画された圃場区分毎に識別記号を割り当てて圃場ファイルを作成しておき、作業者が作業開始の際に呼出し表示された当該圃場ファイルの番号を選択しながら設定する構成としている。作業者番号は例えば小規模農家からの作業委託を受ける営農法人等の従業者が対象となり、予め作業者ファイルを作成しておく。機種コード,使用機械番号は当該営農法人の所有するトラクタ、コンバイン等の機種の違いおよび各機種が大型・小型等複数にわたる場合の各組合せと識別番号とから機械ファイルを作成するものである。」(【0009】-【0010】)
(エ)
「前記制御装置1とデータ収集装置12の通信は通信インターフェース29,30を介して行う。図例は光通信による方法であって、データ収集装置本体の取付溝31の底面部に光インターフェース32が設けられていると共に、制御装置側の通信インターフェースユニット33にも同様の光インターフェースが設けられている。データ収集装置本体12aを通信インターフェースユニット33に取り付けると、両光インターフェースが正対するようになり、両装置間の情報授受が可能となる。」(【0012】)
(オ)
「次いでヘッダ部領域の各項目を行うが先ず、入力キー24操作によって作業年月日を入力し(ステップ50)、その後圃場番号、作業者番号、機種コード,使用機械番号、作業コードの各項目を入力する。これらの入力の方法は、順次個別に作成したファイル内容が画面表示されるので該当項目を選択入力するものである。圃場ファイルでは圃場区分毎にその圃場に付した識別番号と所有者とが関係づけて表示され(ステップ60)、画面から該当の番号を選択設定するものである(ステップ70)。このほか作業者ファイル、機械ファイル各内容等が順次画面表示されて夫々選択設定できる(ステップ80)」(【0014】)
(カ)
「例えば、ヘッダ部項目の入力操作が完了して開始スイッチ23Aを押すと、作業開始時刻が記録される(ステップ100~110)。所定圃場区画の作業が完了し終了スイッチ23Bを押すと(ステップ120)、図7に記載の項目即ち、全作業時間,実作業時間…等の時間項目、及び作業面積,走行距離等,燃料消費料等の作業実行データに基づく数値項目、が各種センサの検出結果等をもとに算出され記録される(ステップ130~160)。例えばリフトアームセンサ2Dの昇降動作点とクロックパルスとの組合せでトラクタの回行時間を割り出され、走行距離が図外車速センサの検出パルス数によって算出され、燃料流量が図外燃料流量センサの検出流量パルス数によって算出される。
尚、終了ステップ23Bを押すと終了時刻も記録される(ステップ170)。上記データはデータ収集装置12のRAMに一旦記憶されるが、上記作業終了スイッチ23B操作により、当該データはRAMカード19に記録され、すべての収集データを一旦液晶表示部25に表示し、作業内容、特にヘッダ部領域の各項目のチェックを促す。ここでヘッダ部領域の各項目に誤りがあるときはこれを修正する。但し、RAM部分に記録された内容のうち、ヘッダ部領域の構成内容のみ修正可能に構成し、作業者の入力ミス等に対処しうるものとし、作業データの各項目は無闇に修正を行うことができずデータ信頼性を確保している(図10)。」(【0016】-【0017】)
(キ)
「さらに、パソコン42に入力されたデータが、ヘッダ部領域の項目を主な検索ワードとして分析できる。殊に、圃場ファイルの採用により、圃場単位でデータを記録し後のデータ分析が可能であるため、所有者(委託者)、品種、作業内容等の区分が当該圃場単位であることと相俟って、受託による営農管理が容易となる。出力様式としては例えば、図9に示すように、圃場番号「1」,「2」…毎に所有者、作業時間、施肥量…のように出力され、圃場の違いによる比較が容易となって、作物の成育管理,肥培管理等に有効であるのみならず、作業担当者の就労管理のほかこれらのデータを次年度の営農管理に反映させることも可能となる。」(【0021】)
したがって、上記(ア)ないし(キ)の記載から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「制御装置1は、農業機械としてのトラクタの制御装置であり、
制御装置1の演算制御部(CPU)は記憶部に記憶された内容のプログラムを実行し、
制御装置1における入力情報としては、各種センサがあり、
データ収集装置(管理端末器)12は、制御装置1と通信可能に接続され、
制御装置1とデータ収集装置12の通信は、通信インターフェース29,30を介して、光通信による方法で行われ、
データ収集装置12は、該本体に選択的に装着するメモリ手段としてのRAMカード19を備え、
RAMカード19は所定の項目ごとにデータを記録できるようになっており、
データ項目はヘッダ部領域と作業データ部領域とからなり、
ヘッダ部領域の各項目に、入力キー24操作によって作業年月日、圃場番号、作業者番号、機種コード、使用機械番号、作業コードを入力し、
ヘッダ部項目の入力操作が完了して開始スイッチ23Aを押すと、作業開始時刻が記録され、
所定圃場区画の作業が完了し終了スイッチ23Bを押すと、全作業時間、実作業時間等の時間項目、及び、作業面積、走行距離等、燃料消費料等の作業実行データに基づく数値項目が各種センサの検出結果等をもとに算出され記録され、
作業終了ステッチ23Bを押すと終了時刻も記録され、
上記作業終了スイッチ23B操作により、当該データはRAMカード19に記録されるシステム。」
なお、上記(カ)において摘記した引用文献1の「終了ステップ23Bを押すと終了時刻も記録され」との記載における「終了ステップ23B」は、「作業終了スイッチ23B」の明らかな誤記と認められるため、本審決では、「終了ステップ23B」は、「作業終了スイッチ23B」と表記する。
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ク)
「【発明の属する技術分野】
この発明は、トラクタやコンバインといった農作業車や各種建設機械の作業管理装置の構成に関するものである。」(【0001】)
(ケ)
「以上のように構成した管理端末機10では、図4乃至図6に示すように、地図データ加工制御が行われる。
まず、前記管理端末機10では、前記電源ONスイッチ11により電源を投入すると、前記GPS受信機30から現在位置を算出すると共に、前記DVD-ROM13から地図データ4を読み出す(STEP1~2)。」(【0024】)
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(コ)
「【発明の属する技術分野】本発明は、作物を収穫する作物収穫機、その作物収穫機にて収穫された作物を収穫後において後処理する為の作物処理設備、並びに、それらを用いた作物処理システム及び作物処理方法に関する。」(【0001】)
(サ)
「(3)上記実施形態では、前記作物状態計測手段SKの計測情報を、位置検出装置12の検出情報に対応つけて出力させる構成としたが、このような構成に代えて、あるいは、この構成に加えて、作物状態計測手段SKの計測情報を、その計測時点の時刻、又は、計測時点からの経過時間と対応付けて出力させるように構成するものでもよい。具体的には、図4に示す計測情報に各データの計測時間を加える構成でもよく、あるいは、記憶媒体自体に経過時間を計測する計時手段が備えられ、その計測結果も併せて出力可能に構成するや、コンバイン側に計時手段が備えられて、無線通信するときに同時に情報を通信するような構成であってもよい。」(【0057】)
(シ)
「前記情報出力手段は、前記作物状態計測手段の計測情報を、その計測時点の時刻、又は、計測時点からの経過時間と対応つけて出力可能に構成されている請求項1又は2記載の作物収穫機。」(【請求項3】)
4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ス)
「【発明の属する技術分野】本発明は、収穫される作物の品質等の作物に関する情報を収集管理するための作物の情報管理システムに関する。」(【0001】)
(セ)
「(2)上記実施形態では、前記作物品質計測手段SKの計測情報を、位置検出装置12の検出情報に対応つけて出力させる構成としたが、このような構成に加えて、作物品質計測手段SKの計測情報を、その計測時点の時刻、又は、計測時点からの経過時間と対応付けて出力させるように構成するものでもよい。具体的には、図4に示す計測情報に各データの計測時間を加える構成でもよく、あるいは、記憶媒体自体に経過時間を計測する計時手段が備えられ、その計測結果も併せて出力可能に構成するや、コンバインKO側に計時手段が備えられて、無線通信するときに同時に情報を通信するような構成であってもよい。」(【0034】)
第6 対比・判断
1.本願発明1について
1-1.対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)
引用発明では、「所定圃場区画の作業が完了し終了スイッチ23Bを押すと、全作業時間、実作業時間等の時間項目、及び、作業面積、走行距離等、燃料消費料等の作業実行データに基づく数値項目が各種センサの検出結果等をもとに算出され」るのであり、前記「「第5」の「1.」の(カ)」において摘記した記載には、算出例として、「リフトアームセンサ2Dの昇降動作点とクロックパルスとの組合せでトラクタの回行時間を割り出され、走行距離が図外車速センサの検出パルス数によって算出され、燃料流量が図外燃料流量センサの検出流量パルス数によって算出される」ことが示されているのであるから、引用発明の「各種センサの検出結果」は、農業機械であるトラクタの作業データであることは明らかであるので、本願発明1でいうところの『農業機械が農作業を行ったときの農作業データ』に対応するといえる。
また、引用発明では「制御装置1における入力情報としては、各種センサがあ」るのであり、引用発明の「制御装置」は、「各種センサの検出結果」のデータを入力情報として収集することになるので、引用発明の「制御装置」は、本願発明1でいうところの『農業機械が農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集部』を有しているといえる。
(2)
引用発明では、「制御装置1とデータ収集装置12の通信は、通信インターフェース29,30を介して」行われるのであるから、当該「通信インターフェース」を介して、「制御装置」から「データ収集装置」へ「各種センサの検出結果」が送信されることは明らかであり、引用発明の「制御装置」は、本願発明1でいうところの『データ収集部で収集した農作業データを送信する第1通信部』を有しているといえる。
(3)
前記「「第5」の「1.」の(ア)」において摘記した記載に、「トラクタ、コンバイン、穀物乾燥機等の農業機械に着脱自在に取り付けて使用し、農業機械の作業データを記録及び表示するようにしたデータ収集装置」とあるように、引用発明の「データ収集装置」は、「農業機械に着脱自在に取り付けて使用」されるのであり、「農業機械」を用いて農作業を行う作業者によって使用される端末であることは明らかであるから、引用発明に係る「データ収集装置」は、本願発明1でいうところの『農作業を行う作業者が所持する携帯端末』に対応するといえる。
(4)
引用発明の「制御装置1」は、「農業機械としてのトラクタの制御装置」であるため、引用発明の「制御装置」が、トラクタ、すなわち、「農業機械」に設けられていることは明らかである。
(5)
前記「(2)」で前述したことから、引用発明の「データ収集装置」は、「各種センサの検出結果」を「通信インターフェース」により「制御装置」から受信するのであり、引用発明の「データ収集装置」は、本願発明1でいうところの『第1通信部から送信された農作業データを受信する第2通信部』を有しているといえる。
(6)
本願発明1でいう『農作業の作業計画を入力する計画入力部』ついては、本願明細書の【0019】段落に、「作業計画画面Nは、例えば、農作業を行う日付を入力する日付入力部N1、農作業を行う圃場(圃場名)を入力する圃場入力部N2、農作業を行う農業機械の有無を入力する機械入力部N3、例えば、代掻き、田植え、耕耘などの作業項目を入力する作業項目入力部N4を備えている。」と記載されていることから、「農作業を行う日付」、「圃場名」、「農作業を行う農業機械の有無」、「作業項目」を『農作業の作業計画』として入力されるものと認められる。
このとき、引用発明では、「ヘッダ部領域の各項目に、入力キー24操作によって作業年月日、圃場番号、作業者番号、機種コード、使用機械番号、作業コードを入力」するのであり、「作業年月日」、「圃場番号」、「機種コード、使用機械番号」、「作業コード」は、それぞれ、前記「農作業を行う日付」、「圃場名」、「農作業を行う農業機械の有無」、「作業項目」に相当するものであるから、引用発明の「ヘッダ部領域」に入力されるのは、本願発明1でいうところの『農作業の作業計画』といえる。
そして、引用発明の「ヘッダ部領域」は、データ収集装置の入力キーによって入力されるのであるから、引用発明の「データ収集装置」は、本願発明1がいうところの『農作業の作業計画を入力する計画入力部』を備えているといえる。
(7)
引用発明では、「ヘッダ部項目の入力操作が完了して開始スイッチ23Aを押すと、作業開始時刻が記録され」、「作業終了スイッチ23Bを押すと終了時刻も記録され」るのであり、引用発明の「作業開始時刻」及び「終了時刻」は、本願発明1でいうところの『農作業の開始時の開始時刻』及び『農作業の終了時の終了時刻』に対応することは明らかである。
また、引用発明では、データ収集装置の「開始スイッチ23A」と「作業終了スイッチ23B」の押下によって「作業開始時刻」と「終了時刻」が記録されるのであるから、引用発明の「データ収集装置」は、本願発明1がいうところの『時刻を算出する第2計時部』及び『農作業の開始及び終了を指定する作業指定部』を備えているといえる。
(8)
引用発明の「RAMカード」は、「所定の項目ごとにデータを記録できるようになっており、データ項目はヘッダ部領域と作業データ部領域とからな」るのであるから、引用発明の「RAMカード」は、「ヘッダ部領域」に入力されているデータを記憶していることは明らかである。
また、引用発明において、「作業開始時刻」及び「終了時刻」が記録されるのは「RAMカード」であることも明らかである。
そして、前記(6)で前述したように引用発明の「ヘッダ部領域」に入力されるのは、本願発明1でいうところの『農作業の作業計画』なのであるから、引用発明の「RAMカード」は、本願発明1でいうところの『第2記憶部』に対応し、両者は、『第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の開始時の開始時刻、第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の終了時の終了時刻、計画入力部に入力された作業計画を記憶する』点で共通している。
(9)
前記「「第5」の「1.」の(キ)」において摘記した記載に、「受託による営農管理が容易となる。」及び「作業担当者の就労管理のほかこれらのデータを次年度の営農管理に反映させることも可能となる。」とあることから、引用発明における「システム」が農業管理を支援し得ることは明らかであるから、引用発明の「システム」は、本願発明1でいうところの『農業管理支援システム』に対応する。
したがって、上記(1)から(9)で対比した様に、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「農業機械が農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集部と、前記農作業データを記憶する第1記憶部と、前記データ収集部で収集した農作業データを送信する第1通信部と、を有するデータ収集装置と、
前記農作業を行う作業者が所持する携帯端末と、
を備え、
前記データ収集装置は前記農業機械に設けられ、且つ前記携帯端末と通信可能であり、
前記携帯端末は、
前記第1通信部から送信された農作業データを前記通信により受信する第2通信部と、
時刻を算出する第2計時部と、
農作業の開始及び終了を指定する作業指定部と、
農作業の作業計画を入力する計画入力部と、
前記第2通信部が受信した農作業データ、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の開始時の開始時刻、前記第2計時部で計時された時刻であって作業指定部によって指定された農作業の終了時の終了時刻、前記計画入力部に入力された作業計画を記憶する第2記憶部と、
を備えていることを特徴とする農業管理支援システム」
(相違点)
(相違点1)本願発明1の『データ収集装置』は『農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部』を有しているのに対し、引用発明の「制御装置」は計時部を有していない点。
(相違点2)本願発明1の『データ収集装置』は『農作業データ及びデータ検出時刻を記憶する第1記憶部』を有しているのに対し、引用発明の「制御装置」が有するのは、CPUが実行するためのプログラムが記憶された「記憶部」である点。
(相違点3)本願発明1の『データ収集装置』は『携帯端末と無線通信可能』であるのに対し、引用発明の「制御装置」は「データ収集装置」と光通信により通信している点
(相違点4)本願発明1の『携帯端末』は『農作業データ及びデータ検出時刻』を受信しているのに対し、引用発明の「データ収集装置」は『データ検出時刻』を受信していない点。
(相違点5)本願発明1の『第2記憶部』は『第2通信部が受信した農作業データ及びデータ検出時刻』を記憶しているのに対し、引用発明では、『データ検出時刻』は受信しれおらず、また、「各種センサの検出結果」を「RAMカード」に記録するのか不明である点
1-2.相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の『農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部』という構成は、上記「「第5」の2.及び3.」の引用文献3、4に記載されているとおり、本願出願日前において周知技術であったといえる。
しかしながら、引用発明では、データ収集装置が備える計時部によって、「全作業時間、実作業時間等の時間項目」が記録されるのであり、その様な引用発明において、データ収集装置が備える計時部において、農作業データを検出したときのデータ検出時刻の算出を行わずに、制御装置に計時部を別途設けて、農作業データを検出したときのデータ検出時刻の算出を行うことの必然性はなく、引用発明において、制御装置が計時部を有するという構成を当業者といえども導き出せるものではない。
なお、引用文献3、4に記載された周知技術は、作物の状態又は品質を計測するために、農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出しているのであるから、引用文献3、4に記載された周知技術における農作業データは、作物の状態又は品質に関するものである。一方、引用発明における農作業データは、「各種センサの検出結果」であり、農業機械であるトラクタの作業データである。
そうすると、引用文献3、4に記載された周知技術と引用発明とは、検出対象であるデータが明らかに異なるため、引用発明に、引用文献3、4に記載された周知技術を付加する動機付けもない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の『データ収集装置』は『農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部』を有するという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-5は、それぞれ『データ収集装置』は『農作業データを検出したときのデータ検出時刻を算出する第1計時部』を有していると同一の構成を備えるものであるから、上記「第5 引用文献、引用発明等」から「第6 対比・判断」で言及したとおり、本願発明1-5は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-017146