特許拒絶査定不服審判
2016-014052
インスタントコミュニケーション音声認識方法および端末
- 審判番号
- 2016-014052
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-559078外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月20日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (G10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-559078「インスタントコミュニケーション音声認識方法および端末」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開、WO2013/127367、平成27年 5月28日国内公表、特表2015-515643〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2013年3月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年3月2日、中国(CN))を国際出願日とする出願であって、平成27年8月26日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月1日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成27年12月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
端末によって実行される、インスタントメッセージのためのスピーチ認識方法であって、
ユーザによって入力されたスピーチ情報を受信する工程と、
現在の環境情報を取得し、かつ、上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する工程と、
上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定されたとき、上記スピーチ情報をテキスト情報として認識する工程とを有し、
上記現在の環境情報は、現在のノイズ情報を有し、
上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する上記工程は、
上記ノイズ情報が、事前設定範囲内にあるか否かを判定する工程と、
上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にあるとき、上記スピーチ情報が再生される必要があると判定する工程と、
上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にないとき、上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定する工程とを有することを特徴とする方法。」
3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2007-520943号公報(以下、「引用例」という。)には、「ノイズの大きい環境における電話機の拡張された使用」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】
電話機の使用を拡張する方法であって、前記方法は、
着信通話を受信するステップと、
周囲のノイズレベルを検出するステップと、
前記検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズレベルより大きい場合に、前記着信通話が前記着信通話の受信者によってより理解可能となるように該着信通話を強調するステップと、
を有する方法。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項3】
前記強調するステップは、前記着信通話をテキストに変換し、前記着信通話の受信者に対して前記テキストを表示するステップを有する、請求項1に記載の方法。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項5】
前記電話機は携帯電話機である、請求項1に記載の方法。」
(2)「【0019】
ここで図3を参照すると、電話機100の使用を拡張する好適な方法を示すフロー図が示されている。本方法は、ステップ200において、着信通話を受信する。以上の議論されたように、着信通話の受信は、電話機100を用いた使用のため受信された信号を処理するための必要な全てのステップを有しても良い。ステップ202において、ノイズセンサ120(又は代替としてマイクロフォン108)を利用して、周囲のノイズレベルが検出される。前記周囲のノイズレベルの検出は、継続的に実行されても良いし、又は着信通話の受信の際にのみ実行されても良い。節電のため、後者が好ましい。ステップ204において、前記検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否かが決定される。前記所定の閾値ノイズレベルは、該所定の閾値ノイズレベルよりも高いノイズレベルでは電話の会話を聴き取ること及び/又は理解することが困難であるようなレベルに選択される。前記所定の閾値ノイズレベルは、記憶装置114に保存されても良いし、ユーザによってプログラム可能であっても良い。例えば、ユーザが周囲のノイズに特に敏感である場合には低い閾値を選択しても良い。斯かる値は、本分野において知られているように、キーパッド/スイッチ/ボタン112及び表示画面を用いて選択されても良い。ユーザによって変更されない限りは、前記閾値は平均的な人物の聴取能力に対応する適度な設定にデフォルト設定されていても良い。前記周囲のノイズレベルの検出は、着信通話の継続時間の間定期的に実行されても良い。勿論、検出頻度は、電話機100のバッテリの電力消費に影響を与え得る。それ故、検出頻度はユーザによって選択されプログラムされても良い。
【0020】
検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きくはないと決定された場合、本方法はステップ206に進み、着信通話がスピーカ106において通常のレベルで再生される。該通常のレベルもまた、ユーザによってプログラムされても良い。検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズより大きいと決定された場合、本方法はステップ208に進み、着信通話が強調されて、ユーザが該着信通話を理解できる見込みを向上させる。本方法は次いで、分岐208a及び208bのいずれか又は両方に進む。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0022】
分岐208bを進むと、前記強調は、ステップ214において、着信通話をテキストに変換し、該着信通話の受信者に該テキストを表示するステップを有し得る。音声認識は本分野において良く知られており、それ故詳細な説明はここでは省かれる。一般に、音声認識は、記憶装置114に含まれる命令及びデータのセットから、プロセッサ104によって実行される。プロセッサ104及び記憶装置114は、単に例として、単一の構成要素として示されている。当業者は、同様のものが、2つ以上のプロセッサ及び/記憶装置として構成されうることを認識するであろう。例えば、前記電話機は、電話機100の通常の機能を実行するためのプロセッサ及び/又は記憶装置と、本発明の方法の幾つか又は全てを実行するための他のプログラム及び/又は記憶装置とを持っても良い。
【0023】
表示画面110において着信通話のテキストを表示することに加えて、ユーザは該着信通話がスピーカ106において増幅されることを所望し得る。このことは、前記音声認識のチェックとして働き得、又は単にユーザの好みを反映するものであり得る。表示画面110において着信通話のテキストを表示することによって、及び/又はスピーカ106における着信通話の増幅によって、着信通話を強調する要求は、本分野において知られているように、ユーザによって選択及びプログラムされても良い。ステップ216において、増幅も所望されていることが決定された場合、本方法は、以上に議論されたようにステップ212に(又は直接ステップ210に)進む。増幅が所望されていない場合には、本方法はステップ206に進み、着信通話がスピーカ106において通常のレベルで再生される。代替として、着信通話に対応するテキストが表示画面110に表示されている間には、バッテリパワーを節約するためにスピーカ106がディスエーブルにされても良い。」
・上記引用例に記載の「ノイズの大きい環境における電話機の拡張された使用」は、上記(1)の【請求項1】、(2)の記載事項、及び図3によれば、電話機の使用を拡張する方法に関するものであり、着信通話を受信するステップ、周囲のノイズレベルを検出するステップ、検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否かを決定するステップ、及び検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズレベルより大きくはないと決定された場合、着信通話を再生し、検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズより大きいと決定された場合、着信通話がユーザ(受信者)によってより理解可能となるように着信通話を強調するステップと、を有するものである。
・上記(1)の【請求項2】、(2)の記載事項によれば、着信通話を強調するステップは、着信通話をテキストに変換し、該テキストを表示するステップを有するものであり、さらに上記(2)の段落【0022】の記載事項によれば、着信通話のテキストへの変換は、音声認識の実行によって行われるものである。そして、上記(2)の段落【0023】の記載事項によれば、着信通話に対応するテキストが表示されている間には、スピーカがディスエーブルにされても良いものである。
・上記(2)の段落【0019】によれば、所定の閾値ノイズレベルは、例えば記憶装置に保存されても良いし、ユーザによってプログラム可能であっても良く、また、ユーザによって変更されない限りデフォルト設定されていても良いものであり、いずれしても、事前設定されてなるものである。
・上記(1)の【請求項3】の記載事項によれば、電話機は携帯電話機である。
したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「携帯電話機の使用を拡張する方法であって、
着信通話を受信するステップと、
周囲のノイズレベルを検出するステップと、
前記検出された周囲のノイズレベルが事前設定された所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否かを決定するステップと、
前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きくはないと決定された場合、前記着信通話を再生するステップと、
前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きいと決定された場合、前記着信通話を音声認識の実行によってテキストに変換し、該テキストを表示するとともに、スピーカをディスエーブルにするステップと、を有する方法。」
4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「着信通話を受信するステップと」によれば、
引用発明の「着信通話」は、携帯電話機の通話のことであり、ユーザ(送信者)による入力であることは明らかであるから、本願発明の「スピーチ情報」に相当し、
本願発明と引用発明とは、「ユーザによって入力されたスピーチ情報を受信する工程と」を有するものである点で一致する。
(2)引用発明における「周囲のノイズレベルを検出するステップと」によれば、
引用発明の「周囲のノイズレベル」は、本願発明の「現在の環境情報」及び「現在のノイズ情報」に相当し、
本願発明と引用発明とは、「現在の環境情報を取得」する工程を有し、「上記現在の環境情報は、現在のノイズ情報を有し」ている点で一致する。
(3)引用発明における「前記検出された周囲のノイズレベルが事前設定された所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否かを決定するステップと、・・・・前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きいと決定された場合、前記着信通話を音声認識の実行によってテキストに変換し、該テキストを表示するとともに、スピーカをディスエーブルにするステップと」によれば、
(a)引用発明にあっても、「周囲のノイズレベル」に応じて着信通話が再生される必要があるか否かを決定(判定)しているといえることから、
本願発明と引用発明とは、「上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する工程と」を有するものである点で一致する。
(b)さらに、引用発明の「前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きいと決定された場合」は、スピーカがディスエーブルにされることから、本願発明でいう「上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定されたとき」に相当するといえ、
また、引用発明の「テキスト」は、本願発明の「テキスト情報」に相当し、音声認識の実行によって着信通話をテキストとして認識していることは明らかであるから、
本願発明と引用発明とは、「上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定されたとき、上記スピーチ情報をテキスト情報として認識する工程と」を有するものである点で一致する。
(4)引用発明における「前記検出された周囲のノイズレベルが事前設定された所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否かを決定するステップと、前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きくはないと決定された場合、前記着信通話を再生するステップと、前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きいと決定された場合、前記着信通話を音声認識の実行によってテキストに変換し、該テキストを表示するとともに、スピーカをディスエーブルにするステップと」によれば、
(a)引用発明の「前記検出された周囲のノイズレベルが所定の閾値ノイズレベルよりも大きいか否か」というのは、検出された周囲のノイズレベルが事前設定範囲内にあるか否かともいうことができ、
(b)引用発明の「前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きくはないと決定された場合」における「所定の閾値ノイズレベルより大きくはない」とは、事前設定された所定の閾値ノイズレベル以下のことであり、本願発明でいう「上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にある」ことを意味し、
引用発明の「前記検出された周囲のノイズレベルが前記所定の閾値ノイズレベルより大きいと決定された場合」における「所定の閾値ノイズレベルより大きい」とは、本願発明でいう「上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にない」ことを意味するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する上記工程は、上記ノイズ情報が、事前設定範囲内にあるか否かを判定する工程と、上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にあるとき、上記スピーチ情報が再生される必要があると判定する工程と、上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にないとき、上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定する工程とを有する」点で一致する。
(5)そして、引用発明の「携帯電話機の使用を拡張する方法であって」によれば、
引用発明の「携帯電話機」は、本願発明の「端末」に相当し、
また、引用発明は、上記(3)で述べたように、着信通話をテキストとして認識しているから、「携帯電話機の使用を拡張する方法」とは、携帯電話機による着信通話の認識方法を含むものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「端末によって実行されるスピーチ認識方法」である点で共通する。
ただし、本願発明では、「インスタントメッセージ」のためのものである旨特定するのに対し、引用発明では、携帯電話機の着信通話のためのものであるものの、「インスタントメッセージ」のためのものとまでは特定がない点で相違しているといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、
「端末によって実行されるスピーチ認識方法であって、
ユーザによって入力されたスピーチ情報を受信する工程と、
現在の環境情報を取得し、かつ、上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する工程と、
上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定されたとき、上記スピーチ情報をテキスト情報として認識する工程とを有し、
上記現在の環境情報は、現在のノイズ情報を有し、
上記スピーチ情報が再生される必要があるか否かを上記現在の環境情報に応じて判定する上記工程は、
上記ノイズ情報が、事前設定範囲内にあるか否かを判定する工程と、
上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にあるとき、上記スピーチ情報が再生される必要があると判定する工程と、
上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にないとき、上記スピーチ情報が再生される必要がないと判定する工程とを有することを特徴とする方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
当該スピーチ認識方法について、本願発明では、「インスタントメッセージ」のためのものである旨特定するのに対し、引用発明では、携帯電話機の着信通話のためのものであるものの、「インスタントメッセージ」のためのものとまでは特定がない点。
5.判断
上記相違点について検討する。
携帯通信装置を介したインスタントメッセージ伝達は、例えば原査定の拒絶の理由で引用された特開2011-250475号公報(段落【0003】を参照)、さらには特表2008-534999号公報(段落【0023】~【0028】、図6、図7を参照)に記載されているように周知の技術事項であるところ、引用発明は、携帯電話機(携帯通信装置)の使用に関する発明であり、当該引用発明においても、インスタントメッセージのためのものとすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
なお、請求人は審判請求書において、「本願の請求項1に係る発明の技術的設計思想は、環境の音声レベルが、より高い事前設定値を超えるかまたはより低い事前設定値を下回る(事前設定範囲内にない)ときに、音声メッセージの再生を弱め、それをテキストに直接変換し、テキストをユーザに示すことです。引用文献4(引用例)は音声を強調することに関していますが、引用文献4(引用例)は、静かな場所で音声をテキストに変換する必要性について、如何なる情報をも開示していません。」などと主張している。
しかしながら、本願発明は、「ノイズ情報が、事前設定範囲内にあるか否かを判定する・・・上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にあるとき・・・上記ノイズ情報が上記事前設定範囲内にないとき」と特定されているにすぎず、「事前設定範囲内」とは、所定のレベル以下の範囲、つまり、0レベルから所定のレベルまでの範囲も含み得るものであるから、請求人による上記主張は、特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づかないものであるといえ、採用することはできない。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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