特許拒絶査定不服審判
2016-013901
プラズマ処理装置
- 審判番号
- 2016-013901
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-084740
- 請求日
- 2016年09月16日
- 審決日
- 2017年07月10日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社IHI
- 【請求人代理人】特許業務法人青海特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 森林 克郎
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 伊藤 昌哉
- 分類
- P18 .121-Z (H05H) / P18 .575-Z (H05H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 84740「プラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月17日出願公開、特開2013-214445〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月3日の出願であって、平成27年12月17日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年9月16日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成28年9月16日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成28年2月15日になされた手続補正)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正する内容を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1につき、
「屈曲部もしくは湾曲部を有する被処理面を備えた処理対象にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、
前記処理室内に設けられ、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、および、前記交流電源の接地側に接続される接地側電極棒が対向配置されるとともに、前記交流電源からの電力供給によって両電極棒の周囲にプラズマを発生させる複数のアンテナ体と、
前記処理室内に処理対象を保持する処理対象保持手段と、を備え、
前記複数のアンテナ体の全部もしくは一部は、
当該アンテナ体における前記給電側電極棒の中心軸と前記接地側電極棒の中心軸とを結んで描かれる直線のうち、前記両中心軸に直交する同一平面上に描かれる直線が、隣接するアンテナ体において交差する関係を維持し、
前記給電側電極棒および接地側電極棒は、
当該各電極棒の長手方向に直交する方向に描かれる仮想線であって、前記処理対象保持手段によって保持される処理対象の被処理面に対して一定の離間距離を維持して描かれる仮想線上に配置されており、
前記接地側電極棒の内部には、前記ガス供給源から供給された前記反応ガスが流通するガス供給路が形成されており、該ガス供給路を通過した反応ガスは、該接地側電極棒に形成された噴出孔を介して前記真空チャンバに供給されることを特徴とするプラズマ処理装置。」
とあったものを、
「屈曲部もしくは湾曲部を有する被処理面を備えた処理対象にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、
前記処理室内に設けられ、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒、該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有し、該交流電源からの電力供給によって両電極棒の周囲にプラズマを発生させる複数のアンテナ体と、
前記処理室内に処理対象を保持する処理対象保持手段と、を備え、
前記複数のアンテナ体の全部もしくは一部は、
当該アンテナ体における前記給電側電極棒の中心軸と前記接地側電極棒の中心軸とを結んで描かれる直線のうち、前記両中心軸に直交する同一平面上に描かれる直線が、隣接するアンテナ体において交差する関係を維持し、
前記給電側電極棒および接地側電極棒は、
当該各電極棒の長手方向に直交する方向に描かれる仮想線であって、前記処理対象保持手段によって保持される処理対象の被処理面に対して一定の離間距離を維持して描かれる仮想線上に配置されており、
前記接地側電極棒の内部には、前記ガス供給源から供給された前記反応ガスが流通するガス供給路が形成されており、該ガス供給路を通過した反応ガスは、該接地側電極棒に形成された噴出孔を介して前記真空チャンバに供給されることを特徴とするプラズマ処理装置。」
に補正。
2 補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項1において、「アンテナ体」に関して、「交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、および、前記交流電源の接地側に接続される接地側電極棒が対向配置される」とあったものを、「交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒、該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有し」と補正して、「該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有」するとの限定を付加するものである。
(2)上記補正について検討する。
上記(1)の補正は限定を付加するものであるから、当該補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」「(1)」において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。
(2)刊行物の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2001-310960号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック容器の内面に炭素被覆を形成させるためのプラズマ処理装置及びプラズマを利用したプロセスによる炭素被覆形成プラスチック容器の製造方法に関する。」
(イ)「【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従来技術の実状に鑑み、装置の簡略化、操作方法の簡略化、作業時間の短縮、より均一な炭素被膜の形成などが可能な、マイクロ波プラズマを利用してプラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置、及び内面に炭素被膜を形成したプラスチック容器の製造方法を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0081】(第5の実施形態)図5及び図6は本発明の第5の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略断面説明図である。本実施形態の装置は、炭素被膜を形成するプラスチック容器であるペットボトル5の内部にペットボトル5の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で挿入可能な形状、大きさの屈曲式棒状電極29と、ガス供給手段(図示せず)とガス排気手段(図示せず)を備えた前記ペットボトル5を収納するガス置換容器(図示せず)と、屈曲式棒状電極29が高圧側、ガス置換容器が接地側となるように屈曲式棒状電極29とガス置換容器に接続した整合器(図示せず)及び高周波電源(図示せず)とを備えており、かつ屈曲式棒状電極29とペットボトル5とが該ペットボトル5の中心軸を回転軸として相対的に回転可能に構成されている。なお、ここでは接地側配線をガス置換容器に接続することとしたがこれに限定されるものではなく、プラズマ処理装置の任意の接地されている箇所、例えば装置の骨組み(架台)等としてもよい。
【0082】ガス置換容器の形状は任意である。個々のプラスチックス容器毎にガス置換容器を構成してもよいし、複数のプラスチックス容器を内包できるものでもよい。
【0083】屈曲式棒状電極29は1ケ所以上の屈曲部10を有しており、ペットボトル5内に挿入した際に、ペットボトル5の内側形状に近い形に屈曲させることができ、先端部はボトル底面に沿って中心部近傍に到達するように設置する。なお、図5に示す装置では屈曲部10の数を3ヶ所としたが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、屈曲式棒状電極29はペットボトル5内面に可能な限り沿った形状に設定するほうが好ましいので、ペットボトル5の内形状に対応して4ケ所以上の屈曲部10を設けてもよい。屈曲式棒状電極(高圧側)29の径はボトル口金径以下とするが、例えば直径1mm程度と細くし、そこに電界集中し易いようにして、プラズマ生成を容易にすることが有効と考えられる。
【0084】図5及び図6の装置には屈曲式棒状電極29が図中の矢印11のように軸中心方向で回転する機構、ペットボトル5が図中の矢印12のように軸中心方向で回転する機構、又はこれらの両方の機構(電極とボトルがそれぞれ図中の矢印13と12のように回転する)が設けられており、前記屈曲式棒状電極29とペットボトル5とが該ペットボトル5の中心軸を回転軸として相対的に回転可能に構成されている。
【0085】プラズマ点火のきっかけとして、ペットボトル5を間に挟んでピン形の接地電極(不図示)を屈曲式棒状電極(高圧側)29の近傍に設置して、その間で放電開始させることを利用したり、ペットボトル5を間に挟んで屈曲式棒状電極(高圧側)29の近傍にテスラコイルを設置し、屈曲式棒状電極29の近傍に発生する電界とテスラコイル近傍に発生する磁場の相互作用によって、局所的にプラズマ点火しやすくするのも効果的である。
【0086】図5及び図6の装置を用いて炭素被膜形成プラスチック容器を製造する場合の操作方法は次のとおりである。炭素被膜を形成するプラスチック容器であるペットボトル5の内部に該プラスチック容器の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で屈曲式棒状電極29を挿入し、ペットボトル5をガス供給手段(図示せず)とガス排気手段(図示せず)を備えたガス置換容器(図示せず)内に収納し、前記屈曲式棒状電極29と前記ガス置換容器に屈曲式棒状電極が高圧側、ガス置換容器が接地側となるように整合器(図示せず)及び高周波電源(図示せず)を接続する。
【0087】このように構成した後、ガス置換容器内の大気をパージする。この方法は真空装置にて大気を排気してもよいし、大量の窒素ガス等をブローして大気を押し出してもよい。その後、媒質ガスを供給し、大気圧に維持する。そして、屈曲式棒状電極(高圧側)29とペットボトル5を相対的に回転させながら高周波電源から整合器を介して屈曲式棒状電極(高圧側)29に高周波電力を印加し、この電極周囲にプラズマ4を生成させる。このプラズマ4によって媒質ガスが解離し、生成した製膜種がボトル内面に堆積、コーティング膜が形成される。所定の膜厚が形成された後、高周波電力印加の停止、媒質ガス供給の停止、残留ガスのパージ、窒素、希ガス、又は空気等の供給後、容器を開放してボトルを交換し、次のコーティング作業へ移る。
【0088】(第5の実施形態:応用例1)図7は本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略断面説明図である。本実施形態の装置は、上記第5の実施形態の装置(図5)の第1の応用例にあたり、図5の実施形態において屈曲式棒状電極(高圧側)29を複数設ける態様である。ここでは3本の屈曲式棒状電極を一つにまとめた形の開閉式棒状電極15を使用する。この開閉式棒状電極15は、ペットボトル5内部に挿入する時には屈曲部10を伸ばして直線状にしておき、挿入後、広げることによってペットボトル5の内側形状に近い形として使用する。この場合もペットボトル5や開閉式棒状電極15を回転させて使用するが、屈曲式棒状電極の数が多い場合には回転させなくてもよい。・・・
【0097】(第6の実施形態)図6は本発明に係るプラズマ処理装置の第6の実施態様を示す概略断面説明図である。図6の装置は、炭素被膜を形成するプラスチック容器であるペットボトル5の内部にペットボトル5の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で挿入可能な形状、大きさの高圧側の屈曲式棒状電極29と接地側の屈曲式棒状電極14とを組み合わせた一対の屈曲式棒状電極と、ガス供給手段(図示せず)とガス排気手段(図示せず)を備えたペットボトル5を収納するガス置換容器(図示せず)と、前記一対の屈曲式棒状電極の一方が高圧側、他方が接地側となるように屈曲式棒状電極に接続した整合器2及び高周波電源1とを備え、かつ前記一対の屈曲式棒状電極とペットボトル5とがペットボトル5の中心軸を回転軸として相対的に回転可能に構成されている。
【0098】この装置は、ペットボトル5内に屈曲部10を有する屈曲式棒状電極(高圧側)29と、同様の屈曲式棒状電極(接地側)14を組合せて挿入し、ガス圧力を大気圧とした状態でプラズマ4を生成させ、ボトル内面にコーティングする方法である。但し、両電極の長さ方向にわたってそれらの間隔は均等に保つことを原則とする。ガス置換容器の形状は任意である。個々のプラスチックス容器毎にガス置換容器を構成してもよいし、複数のプラスチックス容器を内包できるものでもよい。図6では、屈曲部10の数をそれぞれの屈曲式棒状電極に3ヶ所ずつとしたが、これに限るものではなく、屈曲式棒状電極29、14はペットボトル5内面になるべく沿った形に設定する方が好ましいので、ペットボトル5の内形状に対応して4ケ所以上の屈曲部10を設けてもよい。組み合わせた屈曲式棒状電極の間隔はボトル口金径以下とし各電極の径は前記第5の実施態様に示したように、例えば直径1mm程度と細くし、間隔も1mm程度と狭くした方がプラズマ生成を容易にするのに有効である。
【0099】図6の装置を用いて炭素被膜形成プラスチック容器を製造する場合の操作方法は次のとおりである。炭素被膜を形成するプラスチック容器であるペットボトル5の内部に該プラスチック容器の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で屈曲式棒状電極(高圧側)29と屈曲式棒状電極(接地側)14を組み合わせた一対又は複数対の屈曲式棒状電極を挿入し、ペットボトル5をガス供給手段(図示せず)とガス排気手段(図示せず)を備えたガス置換容器(図示せず)内に収納し、屈曲式棒状電極(高圧側)29と屈曲式棒状電極(接地側)14に整合器2及び高周波電源1を接続する。このように構成した後は、上記第5の実施形態と同様に操作する。本実施形態の場合は、高周波電源1から整合器2を介して、屈曲式棒状電極(高圧側)29に高周波電力を印加すると、この電極と屈曲式棒状電極(接地側)14との間にプラズマ4が生成する。その後の操作方法は第5の実施形態の場合と同様である。」
(エ)図5及び6は次のものである。
(オ)上記(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて、上記(エ)の図6を見ると、ペットボトル5内に設けられ、高周波電源1の高圧側に接続される屈曲式棒状電極(高圧側)29、該高周波電源1の接地側に接続されるとともに該屈曲式棒状電極(高圧側)29にペットボトル5の周方向に並んで対向配置される屈曲式棒状電極(接地側)14を有する一対の屈曲式棒状電極を有することが見てとれる。
(カ)引用発明
上記(ア)ないし(オ)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「炭素被膜を形成するプラスチック容器であるペットボトル5の内部にペットボトル5の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で挿入可能な形状、大きさの高圧側の屈曲式棒状電極29と接地側の屈曲式棒状電極14とを組み合わせた一対の屈曲式棒状電極を多数と、ガス供給手段とガス排気手段を備えたペットボトル5を収納するガス置換容器と、前記高圧側の屈曲式棒状電極29と接地側の屈曲式棒状電極14に接続した整合器2及び高周波電源1とを備えているプラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置であって、
前記接地側の屈曲式棒状電極14は、前記高圧側の屈曲式棒状電極29にペットボトル5の周方向に並んで対向配置され、
真空装置にて大気を排気してガス置換容器内の大気をパージし、
前記高周波電源1から整合器2を介して、高圧側の屈曲式棒状電極29に高周波電力を印加すると、この電極と接地側の屈曲式棒状電極14との間にプラズマ4が生成する、
プラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置。」
イ 同じく、原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2008-106362号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある)。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明による薄膜形成装置の一実施の形態を示す模式的正面図、図2はその側面図である。この薄膜形成装置1は、アンテナ式の誘導結合型プラズマCVD装置であり、しかも、例えば電力用太陽電池に充分対応可能な大型(大面積)の基板に成膜可能な比較的大型のもので、成膜室10と、成膜室10内に設置されたアレイアンテナ20と、成膜用の基板40を保持する基板ホルダ50とを備えている。
【0024】
成膜室10は、例えば1m角超級の大型の基板40に成膜するために必要な高さと幅とを有するとともに、このような基板を一度に複数枚(図示の例では6枚)同時に成膜できるように、必要な奥行きを有する空間サイズに構成されている。
【0025】
成膜室10内には、複数組のアレイアンテナ20(図示の例では3組のアレイアンテナ20a、20b、20c)が設置され、各アレイアンテナ20は、複数個(図示の例では6個)のアンテナ素子30で構成される。
【0026】
図3に示すように、各アンテナ素子30は、平行な2本の直線状導体31、35の隣接する一端(例えば下端)どうしを結合部材38によって電気的に結合することで、ほぼU字形をなす往復平行線路状に形成されたものであり、一方の直線状導体31の他端(すなわち上端)を高周波電力供給部とし、他方の直線状導体35の他端(すなわち上端)を接地部とするものである。
【0027】
直線状導体31には、中実のロッドが用いられ、その上端は例えばAl2O3等の誘電体製のフィードスルー32を介して成膜室10を貫通し、成膜室10の外方に設置された高周波電源11に接続される。また、成膜室10内における直線状導体31の周囲には、例えばAl2O3等の筒状の誘電体パイプ33が設けられ、この誘電体パイプ33の肉厚は、必要に応じて適宜設定されるものである。
【0028】
一方、直線状導体35には、周面に多数の孔36があいた中空のパイプが用いられ、その上端は成膜室10の枠体を介して接地されるとともに、成膜室10の外方に設置された原料ガス供給源12に連結される。そのため、各アンテナ素子30の中空パイプ状の直線状導体35の上端接地部が、成膜室10の原料ガス導入口として構成されている。
【0029】
このようなアンテナ素子30を複数個(図示の例では6個)用いて、これらのアンテナ素子30、30、…の各高周波電力供給部と各接地部とが交互に並ぶようにして直線状導体31と直線状導体35を交互に並べるとともに、全個数(6個)のアンテナ素子30、30、…のすべての直線状導体31、35を同一平面(アレイ平面)上に等間隔で配置することで、アレイアンテナ20を構成する。そして、このようなアレイアンテナ20(図示の例では3組のアレイアンテナ20a、20b、20c)が、互いに所定の間隔を隔てて平行になるようにして、成膜室10内に設置されている。そのため、各アレイアンテナ20のアレイ平面は、成膜室10内で互いに所定の間隔を隔てて平行に位置している。」
(イ)上記(ア)で言及される図3は次のものである。
(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
「アンテナ式の誘導結合型プラズマCVD装置において、各アンテナ素子30は、平行な2本の直線状導体31、35の隣接する一端(下端)どうしを結合部材38によって電気的に結合することで、ほぼU字形をなす往復平行線路状に形成されたものであり、一方の直線状導体31の他端を高周波電力供給部とし、他方の直線状導体35の他端を接地部とするものであって、
前記直線状導体35には、周面に多数の孔36があいた中空のパイプが用いられ、その上端は成膜室10の枠体を介して接地されるとともに、成膜室10の外方に設置された原料ガス供給源12に連結され、各アンテナ素子30の中空パイプ状の直線状導体35の上端接地部が、成膜室10の原料ガス導入口として構成されることで、アレイアンテナ20を構成する点。」
(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「プラスチック容器であるペットボトル5」は、「プラスチック容器の内面に炭素被膜を形成する」ものであるから、本願補正発明の、「屈曲部もしくは湾曲部を有する被処理面を備えた処理対象」に相当する。
(イ)引用発明の「ガス置換容器」は、「ガス供給手段とガス排気手段を備えたペットボトル5を収納する」ものであって「真空装置にて大気を排気してガス置換容器内の大気をパージ」するから、本願補正発明の、「真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給され」、「前記処理室内に処理対象を保持する処理対象保持手段と、を備え」る「真空チャンバ」に相当する。
(ウ)引用発明の「一対の屈曲式棒状電極」は、「高圧側の屈曲式棒状電極29と接地側の屈曲式棒状電極14とを組み合わせた」ものであって、「前記接地側の屈曲式棒状電極14は、前記高圧側の屈曲式棒状電極29にペットボトル5の周方向に並んで対向配置され、前記高周波電源1から整合器2を介して、高圧側の屈曲式棒状電極29に高周波電力を印加すると、この電極と接地側の屈曲式棒状電極14との間にプラズマ4が生成する」ものであるから、本願補正発明の「前記処理室内に設けられ、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒、該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有し、該交流電源からの電力供給によって両電極棒の周囲にプラズマを発生させる複数のアンテナ体」と、「前記処理室内に設けられ、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒を有し、該交流電源からの電力供給によって両電極棒の周囲にプラズマを発生させる複数のアンテナ体」である点で一致する。
(エ)引用発明の「プラズマ処理装置」は、「プラズマ4が生成する」ことで「プラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置」であるから、本願補正発明の、「被処理面を備えた処理対象にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置」に相当する。
(オ)以上(ア)ないし(エ)での検討によれば、本願補正発明と引用発明は、
「屈曲部もしくは湾曲部を有する被処理面を備えた処理対象にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、
前記処理室内に設けられ、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒を有し、該交流電源からの電力供給によって両電極棒の周囲にプラズマを発生させる複数のアンテナ体と、
前記処理室内に処理対象を保持する処理対象保持手段と、を備えるプラズマ処理装置。」
である点で一致し、下記各点で相違する。
a 本願補正発明の「アンテナ体」は、「該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有するのに対して、引用発明の「一対の屈曲式棒状電極」は、屈曲式棒状電極(高圧側)29及び屈曲式棒状電極(接地側)14の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有するとは特定されない点(以下「相違点1」という。)。
b 本願補正発明の「アンテナ体」は、「全部もしくは一部は、当該アンテナ体における前記給電側電極棒の中心軸と前記接地側電極棒の中心軸とを結んで描かれる直線のうち、前記両中心軸に直交する同一平面上に描かれる直線が、隣接するアンテナ体において交差する関係を維持し、前記給電側電極棒および接地側電極棒は、当該各電極棒の長手方向に直交する方向に描かれる仮想線であって、前記処理対象保持手段によって保持される処理対象の被処理面に対して一定の離間距離を維持して描かれる仮想線上に配置されて」いるのに対して、引用発明の「多数」の「一対の屈曲式棒状電極」は、「ペットボトル5の内部にペットボトル5の口金部から底面の中心部近傍まで、ほぼボトル内壁面に沿った形で挿入可能な形状、大きさの高圧側の屈曲式棒状電極29と接地側の屈曲式棒状電極14とを組み合わせた一対の屈曲式棒状電極」と特定されるにとどまる点(以下「相違点2」という。)。
c 本願補正発明の「接地側電極棒」は、「内部には、前記ガス供給源から供給された前記反応ガスが流通するガス供給路が形成されており、該ガス供給路を通過した反応ガスは、該接地側電極棒に形成された噴出孔を介して前記真空チャンバに供給される」のに対して、引用発明の「接地側の屈曲式棒状電極14」は、このように特定されない点(以下「相違点3」という。)。
イ 判断
(ア)相違点1及び3について検討する。
引用文献2に記載の事項の「直線状導体31」、「直線状導体35」、「結合部材」及び「直線状導体35」に形成された「多数の孔36」は、本願補正発明における「給電側電極棒」、「接地側電極棒」、「接続部材」及び「噴出孔」にそれぞれ相当することから、「引用文献2に記載の事項」は、上記相違点1及び3に係る本願補正発明の構成を備えるといえるところ、引用発明と引用文献2に記載の事項は、プラズマ処理装置という同じ技術分野に属しており、かつ、給電側電極棒と接地側電極棒とからなるアンテナ体を複数有している点においても共通するから、引用発明に引用文献2に記載の事項を採用し、上記相違点1及び3に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)相違点2について検討する。
a 引用発明に係り、引用文献1に、「本発明はこのような従来技術の実状に鑑み、・・・より均一な炭素被膜の形成・・・が可能な、マイクロ波プラズマを利用してプラスチック容器の内面に炭素被膜を形成するプラズマ処理装置、及び内面に炭素被膜を形成したプラスチック容器の製造方法を提供することを目的とする。」(上記「(2)」「ア」「(イ)」)と記載されているから、引用発明は、均一な成膜を目的とするものである。
b そうすると、引用発明において発明を実施するに際して「多数」の「一対の屈曲式棒状電極」をペットボトルに挿入する場合は、均一な成膜となすために、すべての「一対の屈曲式棒状電極」がペットボトルの形状に合わせてペットボトルの内面から等距離となるように配置することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、一般にペットボトルが円筒状、角筒状であることを考慮すれば、上記ペットボトルに、すべての「一対の屈曲式棒状電極」がペットボトルの形状に合わせてペットボトルの内面から等距離となるように配置した構成では、上記相違点2に係る本願補正発明の構成と同一の構成となることは明らかである。
(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正却下の決定についてのむすび
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成28年2月15日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。
2 刊行物の記載及び引用発明
上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」「(2)」「ア」のとおりである。
3 対比・判断
本願発明について
上記「第2」[理由]「2 補正の目的」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、「アンテナ体」に関して、「交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、および、前記交流電源の接地側に接続される接地側電極棒が対向配置される」とあったものを、「交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、該交流電源の接地側に接続されるとともに該給電側電極棒に対向配置される接地側電極棒、該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有し」と補正して、「該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有」するとの限定を付加するものである。
したがって、本願発明は、上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」で検討した本願補正発明を特定するための事項である「アンテナ体」に関しての「該給電側電極棒および該接地側電極棒の下端同士を通電可能に接続する接続部材を有」するとの限定を省いたものである。
これに対して、上記「第2][理由]「3」「(3)」「イ」で検討したとおり、上記限定を含む本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、上記限定を省いたものである本願発明は、上記「第2」[理由]「3」での検討と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができるものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013901