特許拒絶査定不服審判
2016-013650
車輪支持装置
- 審判番号
- 2016-013650
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-046448外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月12日
- 審決日
- 2017年05月25日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ジェイテクト
- 【請求人代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B60B) / P18 .575-Z (B60B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-46448号「車輪支持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月12日出願公開、特開2013-180675号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月2日の出願であって、平成27年10月21日付けで拒絶理由が通知されたところ、平成27年12月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成28年6月14日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成28年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされたものである。
第2 平成28年9月12日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)
「車体側に固定される固定輪、車輪が取り付けられる回転輪、及び、前記固定輪と前記回転輪との間に設けられている転動体を有するハブユニットと、
前記ハブユニットの軸方向一方側に設けられ、前記回転輪に回転トルクを伝達するトルク伝達輪を有しているジョイントと、を備え、
前記回転輪は、軸方向一方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向一方側へ向く第1の環状側面と、軸方向他方側へ向って拡径するテーパ外周面とを有し、前記テーパ外周面は前記第1の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向他方側へ向く第2の環状側面と、軸方向他方側に向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面とを有し、前記テーパ内周面は前記第2の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記テーパ外周面と前記テーパ内周面とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合うスプラインが形成されており、
前記回転輪に形成されている前記スプラインのピッチ円直径は、当該回転輪の軸方向一方側に形成されている前記環状の端面の内径の3倍以下であることを特徴とする車輪支持装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成27年12月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「車体側に固定される固定輪、車輪が取り付けられる回転輪、及び、前記固定輪と前記回転輪との間に設けられている転動体を有するハブユニットと、
前記ハブユニットの軸方向一方側に設けられ、前記回転輪に回転トルクを伝達するトルク伝達輪を有しているジョイントと、を備え、
前記回転輪は、軸方向一方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向一方側へ向く第1の環状側面と、軸方向他方側へ向って拡径するテーパ外周面とを有し、前記テーパ外周面は前記第1の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向他方側へ向く第2の環状側面と、軸方向他方側に向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面とを有し、前記テーパ内周面は前記第2の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記テーパ外周面と前記テーパ内周面とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合うスプラインが形成されていることを特徴とする車輪支持装置。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「スプライン」に関し、そのピッチ円直径について上記のとおりの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開2008-174178号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)
「【0001】
この発明は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と、等速ジョイントの外輪とがトルク伝達可能に連結された車輪支持装置に関する。」
(1b)
「【0009】
(実施例1)
この発明の実施例1を図1~図4にしたがって説明する。
図1はこの発明の実施例1に係る車輪支持装置を示す側断面図である。図2はハブホイールのハブ軸の端面と等速ジョイントの外輪の端面との突き合せ部分を示す断面図である。図3はハブホイールのハブ軸の端面と等速ジョイントの外輪の端面とが離反した状態を示す横断面図である。図4はハブホイールのハブ軸の端面を示す正面図である。
図1に示すように、この実施例1の車輪支持装置は、ハブホイール10と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受20と、等速ジョイント50とを備えて構成されている。」
(1c)
「【0010】
図1に示すように、ハブホイール10は、円筒状をなすハブ軸13と、ハブ軸13の一端部寄り外周面に形成されたフランジ11とを一体に有している。そして、フランジ11には、ブレーキロータ(図示しない)を間に挟んで車輪(図示しない)を取り付けるための複数本のハブボルト12が所定ピッチでかつ圧入によって固定されている。
ハブ軸13の外周には、外輪30、内輪21、転動体としての複数の玉41、42及び保持器45、46を備えた複列のアンギュラ玉軸受20が組み付けられている。」
(1d)
「【0011】
この実施例1において、ハブ軸13はフランジ11側に形成された大径軸部15と、大径軸部15よりも適宜に小径でかつ大径軸部15と段差部をもって連続して形成された小径軸部16とを一体に有している。そして、大径軸部15の外周面に、外輪30の一方の軌道面31に対応する軌道面22が形成されている。
さらに、外輪30の他方の軌道面32に対応する軌道面23が外周面に形成された内輪21がハブ軸13の小径軸部16の外周面に嵌込まれた後、小径軸部16の先端部がかしめられてかしめ部17が形成されることによって、内輪21が段差部とかしめ部17との間に固定されている。」
(1e)
「【0012】
また、外輪30の両軌道面31、32と、ハブ軸13側の両軌道面22、23との間には各複数個の玉41、42と、これら各複数個の玉41、42をそれぞれ保持する保持器45、46が組み付けられる。
また、外輪30の外周面には、車両の懸架装置(図示しない)に支持された車体側部材(ナックル、又はキャリア)にボルトによって取り付けるための固定フランジ35が一体に形成されている。」
(1f)
「【0013】
図1に示すように、等速ジョイント50は、周知のツェッパー型、バーフィールド型と呼ばれている等速ジョイントが使用されており、駆動軸51の一端に一体状に連結された内輪52と、外輪60と、これら内・外輪52、60の間に配設された複数のボール53と、これら複数のボール53を保持する保持器54を備えて構成されている。
等速ジョイント50の外輪60は、椀形状の外輪筒部61と、外輪筒部61外周の端面62の中心部から一体に突出された外輪軸部63とを備え、外輪軸部63の先端には雄ねじ部65が形成されている。
そして、ハブホイール10のハブ軸13の内孔に等速ジョイント50の外輪軸部63が嵌挿された後、外輪軸部63先端の雄ねじ部65に締付ナット66が締め付けられることで、ハブホイール10と等速ジョイント50とがトルク伝達可能に結合される。」
(1g)
「【0014】
図2~図4に示すように、ハブ軸13の端面(かしめ部17の端面)と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪(外輪筒部61)60の端面62との相互には、外径側環状部分と内径側環状部分とがそれぞれ設けられている。そして、両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されている。また、両内径側環状部分には、相互に密接して環状シール部を構成する平坦面73、78がそれぞれ形成されている。」
(イ)上記記載事項から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「ハブホイール10と、転がり軸受けとしての複列のアンギュラ玉軸受20と、等速ジョイント50とを備える車輪支持装置であって、
ハブホイール10は、ハブ軸13と車輪が取り付けられるフランジ11を一体に有し、
ハブ軸13は、大径軸部15と小径軸部16とを一体に有し、
大径軸部15の外周面に、外輪30の一方の軌道面31に対応する軌道面22が形成され、さらに、外輪30の他方の軌道面32に対応する軌道面23が外周面に形成された内輪21がハブ軸13の小径軸部16の外周面に嵌込まれ、外輪30の両軌道面31、32とハブ軸13側の両軌道面22、23との間には転動体としての複数個の玉41、42が組み付けられ、
外輪30の外周面には、車両の懸架装置に支持された車体側部材にボルトによって取り付けるための固定フランジ35が一体に形成されており、
等速ジョイント50は、内輪52と、外輪60と、複数のボール53と、保持器54を備え、
ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互には、外径側環状部分と内径側環状部分とがそれぞれ設けられ、
両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されており、
両内径側環状部分には、相互に密接して環状シール部を構成する平坦面73、78がそれぞれ形成されている、
車輪支持装置。」
イ 引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由で引用された、特表2008-539387号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(2a)
「【0001】
本発明は、ボス上にはまる少なくとも1つの内レースを持つ車輪軸受装置であって、内レースが、ボスから変形されるカラーにより軸線方向に止められ、カラーが歯切り部を持ち、内レースが端面において半径方向内側に切欠きを持ち、切欠きがカラーの塑性的に押しやられる材料で満たされて、この材料が少なくとも切欠きにおいて内レースに係合するようになっており、切欠き内の材料が半径方向に内レースにより包囲されているものに関する。」
(2b)
「【0009】
図1は、ボス1上にはまる少なくとも1つの内レース2を持つ部分的に示される車輪軸受装置のボス1の部分図を示している。この装置は、ボス1の回転軸線1aに沿う縦断面図で示されている。内レース2は、ボス1から変形されるカラー3により、軸線方向にボス1上に止められている。カラー3はトルク結合用の歯切り部4を持っている。
【0010】
内レース2は、半径方向内側に端面切欠き5を備えており、この切欠き5は、カラー3の冷間で塑性的に押しやられる材料で満たされている。切欠き5は環状溝状に延び、切欠き5内の材料は、ボス1の回転軸線1aの周りに玉縁状に延びている。材料は、切欠き5の端面6で内レース2に係合している。端面6は外方へ湾曲している。内レース2は、円筒状内周面7aにより切欠き5を半径方向に区画しかつ切欠き5内の材料を半径方向に包囲する棚縁7を持っている。歯切り部4の歯8は、棚縁7により包囲される材料の一部に形成されている。
【0011】
図1aは図1の細部Zを拡大して示す。歯8は縦を半径方向に向けられ、回転軸線1aの周りに周方向に互いに隣接している。歯元10から離れている最も外側の輪郭は、各歯8の歯先9に沿って、歯先線9′により幾何学的に描かれている。歯元線10′は、歯8から材料への移行部にある幾何学的線であり、同時に歯溝の底にある頂点10を示している。頂点Pにおいてそれぞれの歯先線9′が歯元線10′に出合う。
【0012】
図1及び図1aによる歯切り部4において、歯元線10′と歯先線9′は、その間にαで示す任意に選択可能な大きさの鋭角を成している。それぞれの歯の歯先線9′は、更に歯元線10′と同じ向きに、任意に選択可能な大きさの鋭角φだけ、面Eからカラーの材料の方へ傾斜している。面Eは頂点Pを通って延びる仮想垂直面Eであり、ボス1の回転軸線1aが直角に垂直面Eを突き抜けている。この場合面Eは、歯切り部4外に延びている。歯先線9′と歯元線10′は、頂点Pから半径方向距離の増体と共に、またボス1の回転軸線1aからの半径方向距離の増大と共に、次第に大きく互いに離れている。」
(2c)
「【0013】
図2は歯切り部11の細部Zを示し、歯12の歯先線13′は垂直面Eに延びている。歯12は縦を半径方向に向けられ、かつ周方向に互いに隣接している。各歯12の歯元14から離れ歯先13に沿う最も外側の輪郭は、理論的に幾何学的歯先線13′により描かれている。歯元線14′は、歯12から材料への移行部にある幾何学的線であり、同時に歯溝の底にある頂点14を示している。図2による歯切り部11では、歯元線14′と歯先線13′がその間に任意の大きさの鋭角αをなしているので、それぞれの歯元線14′は、角αだけ垂直面Eからカラーの材料の方へ傾斜している。この場合面Eは歯切り部11の歯先側を区画している。歯先線13′と歯元線14′は、Pからの半径方向距離の増大と共に、またボス1の回転軸線1aからの半径方向間隔の増大と共に、次第に大きく互いに離れている。」
(2d)
「【0014】
図3は、ボス1上にはまる少なくとも1つの内レース2を持ちかつ部分的に示される車輪軸受装置のボス1の部分図を示している。この装置はボス1の回転軸線1aに沿う縦断面図で示されている。切欠き5において、斜めに延びる平らな端面19には、歯切り部15を持つ材料が係合している。歯18は縦を半径方向に向けられ、周方向に互いに隣接している。歯切り部15は、内レース2の棚縁7により半径方向に完全に包囲されているので、歯切り部15は、カラーの形成の際切欠き5へ押しこまれた材料に形成されている。
【0015】
各歯18の歯先16に沿って歯元17から離れている最も外側の輪郭は、歯先線16′により理論的に幾何学的に描かれている。歯元線17′は、それぞれの歯18から材料への移行部にある幾何学的線であり、同時に歯溝の底における頂点17を示している。歯元線17′と歯先線16′は、その間に任意の大きさの鋭角αをなしている。
【0016】
垂直面Eは、歯切り部15において歯先線16′と歯元線17′との間に延びている。それぞれの歯元線17′は、角φだけ垂直面Eからカラーの材料の方へ傾斜し、歯先線16′は角δだけ材料から離れるように面Eから傾斜している。歯先線16′と歯元線17′は、Pからの半径方向距離の増大と共に、従ってボス1の回転軸線1aからの半径方向距離の増大と共に、互いに次第に大きく離れている。」
(2e)
「【0017】
図4による歯切り部23の歯20は、縦を半径方向に向けられ、周方向に互いに隣接している。各歯20の歯先22に沿って歯元21から離れている最も外側の幾何学的輪郭は、幾何学的に歯先線22′によって描かれている。歯元線21′は、各歯20から材料への移行部における幾何学的線であり、同時に歯溝の底における頂点21を示している。頂点Pにおいてそれぞれの歯先線22′が歯元線21′に出合う。
【0018】
歯元線21′と歯先線22′は、その間にαで示す任意に選択可能な大きさの鋭角をなしている。それぞれの歯20の歯元線21′は、更に歯先線22′と同じ向きに、任意に選択可能な大きさの鋭角φだけ、カラーの材料から離れるように面Eから傾斜している。面Eは頂点Pを通って延びる仮想垂直面Eであり、ボスの回転軸線1aがこの垂直面Eを直角に突き抜けている。この場合面Eは、軸線方向において内レースの端面19と歯20との間に延びている。歯先線22′と歯元線21′は、Pからの半径方向距離の増大と共に互いに次第に大きく離れている。」
(2f)
「【0019】
図5による歯切り部25の歯32の歯元線24は、歯先線26に対して平行に、また垂直面Eに対して平行に又は垂直面内に延びている。半径方向において歯切り部25と内レース28の棚縁27との間に、カラー31の形成の際端面を段付けされた内レース28の切欠き29へ押込まれた材料から成る中実の環状部分30が形成されている。環状部分30は歯切り部25を半径方向に包囲し、棚縁27により半径方向に包囲されている。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「外輪30」は、その「外周面には、車両の懸架装置に支持された車体側部材にボルトによって取り付けるための固定フランジ35が一体に形成されて」いるものであるから、車体側に固定されているといえる。
また、引用発明の「ハブホイール10」は、「ハブ軸13と車輪が取り付けられるフランジ11を一体に有し」ているものであるから、車輪が取付けられているといえる。
さらに、引用発明の「ハブホイール10」の「ハブ軸13」は、「大径軸部15と小径軸部16とを一体に有し、大径軸部15の外周面に、外輪30の一方の軌道面31に対応する軌道面22が形成され、さらに、外輪30の他方の軌道面32に対応する軌道面23が外周面に形成された内輪21がハブ軸13の小径軸部16の外周面に嵌込まれ、外輪30の両軌道面31、32とハブ軸13側の両軌道面22、23との間には転動体としての複数個の玉41、42が組み付けられ」ているから、外輪30とハブホイール10(のハブ軸13)および内輪21との間には、転動体としての複数の玉41、42が設けられているといえる。
よって、引用発明の「外輪30」は本件補正発明の「固定輪」に相当し、引用発明の「ハブホイール10」と「ハブホイール10のハブ軸13に小径軸部16の外周面に嵌込まれ」た「内輪21」との両者で、本件補正発明の本件補正発明の「固定輪」に相当し、さらに、引用発明の「転動体としての複数の玉41、42」は、本件補正発明の「転動体」に相当することとなり、したがって、引用発明である「車輪支持装置」は、本件補正発明の「ハブユニット」に相当する構成を備えているといえる。
(イ)引用発明の「等速ジョイント50」は、「内輪52と、外輪60と、複数のボール53と、保持器54を備え」ており、また、引用発明の「ハブホイール10」の「ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互には、外径側環状部分と内径側環状部分とがそれぞれ設けられ、両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されて」いる。
よって、引用発明の「等速ジョイント50」および「外輪60」は、本件補正発明の「ジョイント」および「トルク伝達輪」に相当する。
そして、引用発明の「等速ジョイント50」は、その外輪60の端面62が、ハブホイール10のハブ軸13の端面と突き合わされていることから、ハブホイール10の軸方向一方側に設けられているといえる。したがって、引用発明の「等速ジョイント50」は、引用発明の「外輪30」と、「ハブホイール10」と「ハブホイール10のハブ軸13に小径軸部16の外周面に嵌込まれ」た「内輪21」、および、「転動体としての複数の玉41、42」とを有する構成(上記(ア)で説示のとおり、これらで本件補正発明の「ハブユニット」に相当する構成となる。)の軸方向一方側に設けられているといえる。
(ウ)引用発明の「ハブホイール10」の「ハブ軸13の端面」「には、外径側環状部分と内径側環状部分とが」「設けられ」ているとともに、引用発明の「外輪60の端面62」「には、外径側環状部分と内径側環状部分とが」「設けられ」ており、「両外径側環状部分」は、「相互に噛み合」っている。よって、引用発明の「ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互には、外径側環状部分と内径側環状部分とがそれぞれ設けられ」ていることは、本件補正発明の「前記回転輪は、軸方向一方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向一方側へ向く第1の環状側面と、軸方向他方側へ向って拡径するテーパ外周面とを有し、前記テーパ外周面は前記第1の環状側面の径方向外側領域に形成され、前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向他方側へ向く第2の環状側面と、軸方向他方側に向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面とを有し、前記テーパ内周面は前記第2の環状側面の径方向外側領域に形成され」ていることとの対比において、「前記回転輪は、軸方向一方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向一方側へ向く第1の環状側面と、それ以外の面とを有し、前記それ以外の面は前記第1の環状側面の径方向外側領域に形成され、前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向他方側へ向く第2の環状側面と、前記それ以外の面に対向する面とを有し、前記それ以外の面に対向する面は前記第2の環状側面の径方向外側領域に形成され」ている限度で一致するといえる。
(エ)引用発明の「サイドフェーススプライン71、76」は、機能的にみて本件補正発明の「スプライン」に相当する。また、引用発明の「ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互には、外径側環状部分と内径側環状部分とがそれぞれ設けられ」ているところ、その「両内径側環状部分には、相互に密接して環状シール部を構成する平坦面73、78がそれぞれ形成されいる」ものである一方で、「両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されて」いるものであるから、ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60は両外径側部分でのみ、フェーススプライン71、76によって相互に噛み合っているといえる。
よって、引用発明の、「両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されており、両内径側環状部分には、相互に密接して環状シール部を構成する平坦面73、78がそれぞれ形成されいる」ことは、上記(ウ)での対比も参照すると、本件補正発明の「前記テーパ外周面と前記テーパ内周面とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合うスプラインが形成されて」いることとの対比において、「前記それ以外の面と前記それ以外の面に対向する面とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合うスプラインが形成されて」いる限度で一致するといえる。
(オ)引用発明である「車輪支持装置」は、本件補正発明の「ハブユニット」に相当する構成と「ジョイント」に相当する構成を備えているといえるから(上記(ア)(イ))、本件補正発明の「車輪支持装置」に相当する。
イ 上記(ア)~(オ)より、本件補正発明と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「車体側に固定される固定輪、車輪が取り付けられる回転輪、及び、前記固定輪と前記回転輪との間に設けられている転動体を有するハブユニットと、
前記ハブユニットの軸方向一方側に設けられ、前記回転輪に回転トルクを伝達するトルク伝達輪を有しているジョイントと、を備え、
前記回転輪は、軸方向一方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向一方側へ向く第1の環状側面と、それ以外の面とを有し、前記それ以外の面は前記第1の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の端面を有し、この端面は、軸方向他方側へ向く第2の環状側面と、前記それ以外の面に対向する面とを有し、前記それ以外の面に対向する面は前記第2の環状側面の径方向外側領域に形成され、
前記それ以外の面と前記それ以外の面に対向する面とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合うスプラインが形成されている、
車輪支持装置。」
<相違点1>
回転輪の軸方向一方側端面およびトルク伝達輪の軸方向他方側端面のそれぞれの径方向外側領域に形成された面に関し、本件補正発明では、回転輪においては、「軸方向他方側へ向かって拡径するテーパ外周面」であり、トルク伝達輪においては、「軸方向他方側へ向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面」であり、その「それぞれにおいて」「相互に噛み合うスプラインが形成されて」いるものであるのに対し、引用発明では、「ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互には」、「外径側環状部分」「がそれぞれ設けられ」、その「両外径側環状部分には、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76がそれぞれ形成されて」いるものの、軸方向他方側へ向かって拡径するテーパ外周面とこれに対向するテーパ内周面とはなっていない点。
<相違点2>
本件補正発明では「回転輪に形成されているスプラインのピッチ円直径は、当該回転輪の軸方向一方側に形成されている前記環状の端面の内径の3倍以下である」のに対し、引用発明のサイドフェーススプライン71のピッチ円直径については規定されていない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア <相違点1>について
引用例2には、引用発明である車輪支持装置と同じ車輪軸受装置の、内レース2をボス1(本件補正発明の「回転輪」に相当する。)にボス1から変形されるカラー3により軸線方向にボス1上に止めたものであって、このカラー3がトルク結合用の歯切り部4(本件補正発明の「スプライン」に相当する。)を持つ構成において、その歯の歯先線9’が歯元線10’と同じ向きに、任意に選択可能な大きさの鋭角φだけ、仮想垂直面Eからカラーの材料の方へ傾斜しているという技術的事項が記載されているといえる(上記(2)イ(2a)、図1、図1a)。
また、引用例2には上記技術的事項と同時に、歯切り部4の歯の歯先線13’が垂直面Eに延びている態様(上記(2)イ(2c)、(2f)、図2、図5)、および、歯先線16’が垂直面Eからカラーの材料の方とは逆の方へ傾斜している態様(上記(2)イ(2d)、(2e)、図3、図4)も併せて記載されている。
このことから、車輪支持装置の回転輪において、その端面(一般的には、軸受を構成する内輪部材を回転輪に止める変形部が含まれる。)にトルク伝達のためのスプラインを形成する場合、スプラインの歯先の傾斜の設定については、当業者が必要に応じて適宜選択できる事項であるということができる。そして、スプラインの歯先を傾斜させれば傾斜のないものよりも歯長が長くなり、それだけスプラインが伝達するトルクも大きくなることは当業者には明らかな技術的事項であって、上記「必要に応じて」の一つになり得ることは当業者であれば容易に想到しうる。また、引用発明も引用例2に記載の上記技術的事項も、どちらも、回転輪の端面に形成された(軸受を構成する内輪部材をかしめ固定する)変形部に設けられたスプラインに関する技術であるという点で同じである。
そうだとすれば、引用発明において、ハブ軸13の端面と、端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端面62との相互に、それぞれ設けられた、外径側環状部分のそれぞれに、相互に噛み合うことでハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン71、76を形成する際、引用例2に記載の上記技術的事項(歯切り部4の歯先線9’が歯元線10’と同じ向きに、任意に選択可能な大きさの鋭角φだけ、仮想垂直面Eからカラーの材料の方へ傾斜しているという技術的事項)を採用し、ハブ軸13の端面の外径側環状部分に形成されるサイドフェーススプライン71の歯先をハブ軸13側へ傾斜する形状とし、これに対向する等速ジョイント50の外輪60の端面62の外径側環状部分に形成されるサイドフェーススプライン76の歯先をハブ軸13側へ傾斜する形状とすることによって、スプラインの歯長を長くし、スプラインが伝達するトルクの大きさを確保することは、当業者であれば容易に想到し得たものといえる。
そしてその結果、ハブ軸13の端面の外径側環状部分は、ハブ軸13側に向かって拡径するテーパ外周面となり、これと対向する等速ジョイント50の外輪60の端面62の外径側環状部分は、ハブ軸13側に向かって拡径するテーパ内周面となる。また、ハブ軸13の端面の内径側環状部分は、等速ジョイント50側へ向く環状側面となり、等速ジョイント50の外輪60の端面62の内径側環状部分は、ハブ軸13側へ向く環状側面となる。
イ <相違点2>について
引用発明において、引用例1の図1を参照すると、サイドフェーススプライン71のピッチ円直径はハブ軸13の端面の内径側環状部分の内径の3倍以下となっていることが看取できる。
このように、回転輪の一方側である等速ジョイント側に形成されているスプラインのピッチ円直径を、回転輪の一方側である等速ジョイント側に形成されている環状の端面の内径の3倍以下とすることは、車輪支持装置おいて通常採用されている寸法関係であるものといえる。
この点に関しさらに検討するに、本件補正発明において、「回転輪に形成されている前記スプラインのピッチ円直径」を「当該回転輪の軸方向一方側に形成されている前記環状の端面の内径の3倍以下である」としたのは、回転輪に形成されているスプラインの径方向の大きさを限定するためであるといえる(明細書段落【0014】)。しかし、上記スプラインの径方向の大きさを限定するためには、上記寸法関係に加え、回転輪の軸方向一方側に形成されている環状の端面の内径Bの大きさを限定する必要がある。よって、本件補正発明において、回転輪の軸方向一方側に形成されている環状の端面の内径Bの大きさを限定しないで、「回転輪に形成されている前記スプラインのピッチ円直径」を「当該回転輪の軸方向一方側に形成されている前記環状の端面の内径の3倍以下である」とすることによっては、スプラインの径方向の大きさを限定することはできず、本件補正発明において、「回転輪に形成されている前記スプラインのピッチ円直径」を「当該回転輪の軸方向一方側に形成されている前記環状の端面の内径の3倍以下である」とした点は、スプラインの径方向の大きさと環状の端面の内径の大きさが一定の関係性をもつという単なる設計事項を規定しているにすぎないものであり、当業者であれば適宜定めうるものであるともいえる。
したがって、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が引用発明に基いて適宜なし得たものである。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明および引用例2に記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明および引用例2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年9月12日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年12月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1~2およびその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「スプライン」に関し、そのピッチ円直径についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明および引用例2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明および引用例2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013650