特許拒絶査定不服審判
2019-009326
輪軸シャフトと輪軸およびその製造法
- 審判番号
- 2019-009326
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-564389
- 請求日
- 2019年07月11日
- 審決日
- 2020年06月30日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イノテック・ライトウェイト・エンジニアリング・アンド・ポリマー・テクノロジー・ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P18 .113-Z (B60B) / P18 .121-Z (B60B) / P18 .575-Z (B60B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-564389号「輪軸シャフトと輪軸およびその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月23日国際公開、WO2015/106958、平成29年4月6日国内公表、特表2017-509546号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年1月16日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成30年10月9日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月1日付けで拒絶査定がされ、令和1年7月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和1年7月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和1年7月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正後の請求項1
「 【請求項1】
ほぼ長手軸(A01)に沿って延伸する少なくとも1つのシャフト体(5)を備える輪軸シャフトであって、前記シャフト体(5)は、力および/またはトルクを機能部品(6)へ誘導および/または機能部品(6)から誘導することに使われる少なくとも1つの第1負荷連結部分(3)を備える輪軸シャフトにおいて、
前記シャフト体(5)は少なくとも担持層(12-16、L01-L20)を含み、該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与しており、各担持層(12-16、L01-L20)は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成ることを特徴とする輪軸シャフト。」
(2)補正前の請求項1
「 【請求項1】
ほぼ長手軸(A01)に沿って延伸する少なくとも1つのシャフト体(5)を備える輪軸シャフトであって、前記シャフト体(5)は、力および/またはトルクを機能部品(6)へ誘導および/または機能部品(6)から誘導することに使われる少なくとも1つの第1負荷連結部分(3)を備える輪軸シャフトにおいて、
前記シャフト体(5)は少なくとも担持層(12-16、L01-L20)を含み、各担持層(12-16、L01-L20)は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成ることを特徴とする輪軸シャフト。」
2 補正の適否
2-1 補正の目的
本件補正に係る請求項1の補正は、補正前の請求項1に記載された「担持層」という事項について、「該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与しており、」との限定を付すものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
2-2 独立特許要件
(1)引用文献に記載された事項及び発明
ア 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に刊行物1として示され、本願の優先日前に頒布された特開昭46-111号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。また、促音及び拗音については、小文字で表記する。以下同様である。)。
(1a)
「2.特許請求の範囲
1対の車輪と車軸とからなり、車軸の少くとも一部分が樹脂を予め含浸させた繊維質の材料を車軸コアに施して形成され、車輪および車軸が一体の組立体となるように、車輪の中央部が車軸から各車輪の中央部へ連続して延びる前記の繊維質材料でもって車軸に固定されている車輪組立体。
3.発明の詳細な説明
この発明は、鉄道車輛に専用されるものではないが特に鉄道車輛用の車輪および車輪組立体に関するものである。「車輪組立体」とは、車軸に固定され車軸と共に回転する1対の車輪のことを云う。」(1ページ左下欄3~15行)
(1b)
「繊維質材料は、カーボン繊維、ガラス繊維、硼素繊維およびアスベスト繊維のうちのいづれか1つの繊維またはこれら繊維を適当に組合せたものからなる。しかしながら好ましい繊維はカーボン繊維およびまたはガラス繊維である。」(1ページ右下欄18行~2ページ左上欄2行)
(1c)
「第1図について説明すれば、車輪組立体は車輪1と車軸2とからなり、車輪は車軸に固定される。
車軸2は、繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるように樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3を鋼製コア4に置いて、或は予め樹脂を含浸させた繊維フィラメントを鋼製コア4に巻き付けて先づ組立てられる。鋼製コア4は、鋼管6の端に予め機械加工されたジャーナル軸受部分5を溶接しまたは適当に結合して形成される。巻き付け角度は、特定の応力に適合し、また必要な繊維パターンを形成するようにいろいろと変化させることができる。例えば、剛性が非常に重要である場合には、らせん形の巻き付け角度をできるだけ急にし、即ち車軸のたて軸線に平行になるように近づける。」(2ページ左上欄9行~同ページ右上欄3行)
(1d)
「車軸のコア4および車輪中央のコア9の補強物の厚さが十分であるとき、このようにして形成された車軸および車輪の中央部分は組立られ、互に結合される。
加わる力に耐えるに必要な車軸の所望な全壁厚は樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10を更に施して得られる。この補強物は、車輪の中央部7の間にある車軸2の部分に置かれ、各車輪の中央部の内面に沿って連続しつぎに周縁を横切ってタイヤ11のリムを形成し、更に車輪の中央部7をこえ車軸へ延び、車軸の面に結合される。車輪1および車軸2は一体の組立体に形成される。付加的な補強物10を構成する。繊維10は車軸2のたて軸線に平行に一方向になるべく置かれる。
コア4,9上の繊維の方向は車輪組立体に加わる応力に適合するように選ばれる。例えば、車輪中央部7に加わる圧縮力に耐えるためには、織物を用いるかまたは車輪の中央コア9の環状面を弦方向に横切って繊維を巻き付けることが必要である。」(2ページ右上欄13行~同ページ左下欄7行)
(1e)
「繊維は、前に説明したように、カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維またはその他の組合せ繊維のいづれかである。小さな応力が加わる部分、例えば車輪中央部および軸軸のコアに近い部分にはガラス繊維またはこれに相当する繊維を、大きな引張り応力の加わる他の部分、例えば車軸および軸軸から車輪へ変る部分にはカーボン繊維またはその他の適当な高張力、高モジュラス繊維を用いることが経済的な組合せである。ガラスおよびカーボンの補強物の割合は、個々の等級の車輛の懸架媒介変数に従って変化する入力を当然考慮して各設計の車輪の応力に従って決めることができる。」(2ページ左下欄14行~同ページ右下欄6行)
(1f)
「繊維を含浸する代表的な長寿命エポキシド樹脂の組成は、
セル(Shell)828樹脂(100部)およびエピキュアー(Epikure)NMA(90部+BDMA2.5部)
である。この含浸剤は室温で液体であるから加熱する必要がある。」(2ページ右下欄7~13行)
(1g)
[タイヤ11は車輪中央部7に結合され保持リング12でもって固定される。保持リング12は車輪中央部7の内面に結合された薄い鋼製リング13に接する。」(2ページ右下欄14~17行)
(1h)
「前述の複合車輪組立体を用いることによって生ずる利点はつぎの通りである。
(1) 非はねより部分の重量を減じ、また一般にボギーの重量を減ずること、
(2) 従来の車輪組立体に存在するような残留応力を取除くこと、
(3) 車輪および車軸の結合が不要であること、
(4) 前記第(3)項の結果から、従来の鋼製車輪組立体に生じかつ車軸の被労破壊の原因となる振動を除くこと、
(5) 前記第(3)項の結果から、車軸から車輪へ移り変る部分のところに2車軸に集中する応力を可なり減ずること、従って高集中応力のために従来の車輪組立体に生ずるような被労破壊の可能性を減ずること、」(2ページ右下欄18行~3ページ左上欄12行。「被労破壊」は、「疲労破壊」の誤記と認め、以下、「被労破壊」を「疲労破壊」と読み替えて記載する。)
イ 引用文献に記載された発明
(ア)
摘記(1c)の「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるように樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」の「繊維」及び「樹脂」は、それぞれ、摘記(1b)の「繊維はカーボン繊維およびまたはガラス繊維である」と特定でき、摘記(1f)の「エポキシド樹脂」と特定できることが、明らかである。
また、摘記(1d)の「樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」の「繊維」及び「樹脂」は、それぞれ、摘記(1e)の「繊維は、前に説明したように、カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維のいづれかである」と特定でき、摘記(1f)の「エポキシド樹脂」と特定できることが、明らかである。
さらに、摘記(1d)の「この補強物」の「補強物」が、摘記(1d)の「繊維補強物10」を意味していることも、明らかである。
(イ)
摘記(1d)の「車軸および車輪の中央部分は組立られ、互に結合される
」構成は、摘記(1d)の記載等を参照すると、「車軸」が「車軸2」を、「車輪の中央部分」が「車輪の中央部7」を、それぞれ意味していることが明らかであり、これら「車輪の中央部分」及び「車輪の中央部7」が、摘記(1g)の「車輪中央部7」を意味していることも明らかであるから、当該構成は、「車軸2」および「車輪中央部7」が「互に結合される」「組立」体の態様となっていることが、明らかである。
(ウ)
上記(イ)、(ア)及び摘記(1a)~(1f)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体において、
車軸2は、繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3を鋼製コア4に置いて、組立てられ、繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、
車輪中央部7は、タイヤ11が結合され保持リング12でもって固定され、
加わる力に耐えるに必要な車軸2の所望な全壁厚は、エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10を更に施して得られ、
この繊維補強物10は、車輪中央部7の間にある車軸2の部分に置かれ、各車輪中央部7の内面に沿って連続しつぎに周縁を横切ってタイヤ11のリムを形成し、更に車輪中央部7をこえ車軸2へ延び、車軸2の面に結合され、繊維は、カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維のいづれかである、
車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体。」
(2)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア
車軸が、ほぼ長手軸に沿って延伸することは、技術常識であるから、引用発明の「車軸2」についても同様のことがいえる。
そうすると、「車軸2」を含んでいる、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」も、ほぼ長手軸に沿って延伸することが明らかである。
したがって、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」は、本件補正発明の「ほぼ長手軸に沿って延伸する少なくとも1つのシャフト体」に相当し、本件補正発明の「ほぼ長手軸に沿って延伸する少なくとも1つのシャフト体を備える輪軸シャフト」にも相当する。
なお、本件補正発明の「輪軸」が、鉄道車輪のためのものであったとしても、摘記(1a)の「この発明は、鉄道車輛に専用されるものではないが特に鉄道車輛用の車輪および車輪組立体に関するものである。」という記載から、引用発明は、鉄道用のものであってもよく、上記の相当関係がいえることは、明らかである。
イ
引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の「車輪中央部7」は、「タイヤ11が結合され保持リング12でもって固定され」ているから、力ないしトルクを「タイヤ11」(「タイヤ11」が、レールなどの軌道上ないし路面上を回転するようになっていることは、明らかである。)から誘導することに使われる負荷連結部分といえる。
また、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の「車軸2」が、駆動力を伝達するように機能する場合には、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の「車輪中央部7」は、力ないしトルクを「タイヤ11」に誘導することに使われる負荷連結部分となることが明らかである。
そして、引用発明の「タイヤ11」は、本件補正発明の「機能部品」に相当する。
したがって、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の、「タイヤ11が結合され保持リング12でもって固定され」ている「車輪中央部7」は、本件補正発明の「力および/またはトルクを機能部品へ誘導および/または機能部品から誘導することに使われる少なくとも1つの第1負荷連結部分」に相当する。
ウ
上記ア及びイから、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体において」、「車輪中央部7は、タイヤ11が結合され保持リング12でもって固定され」る構成は、本件補正発明の「前記シャフト体は、力および/またはトルクを機能部品へ誘導および/または機能部品から誘導することに使われる少なくとも1つの第1負荷連結部分を備える輪軸シャフト」の構成に相当する。
エ
(ア)
引用発明の「車軸2は、繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3を鋼製コア4に置いて、組立てられ、繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、」という構成における、「カーボン繊維およびまたはガラス繊維であ」る「繊維」、及び、「エポキシド樹脂」は、それぞれ、本件補正発明の「ほぼ非金属の第2材質から成る繊維」及び「1つの第1材質」に相当する。
引用発明において、「車軸2は、繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3を鋼製コア4に置いて、組立てられ」ること、及び、エポキシド樹脂が熱硬化性樹脂であることが技術常識であることから、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の態様をとる際に、このエポキシド樹脂を熱硬化させていることが明らかである(摘記(1f)の「繊維を含浸する」「エポキシド樹脂」に関して、「この含浸剤は室温で液体であるから加熱する必要がある」という記載も参照)。
要は、引用発明の「エポキシド樹脂」が硬化することにより、引用発明の「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるように」「鋼製コア4に置いて、組立てられ」る「エポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」は、「鋼製コア4」の表面を「鋼製コア4」と一体となって覆う、繊維強化プラスチック(FRP)の態様、すなわち、強度を向上させた強化プラスチックの態様となっていることが明らかであり、「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」に加わる力やトルクを担持している担持層となっているといえる。
これらのことから、引用発明の「繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、」「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」の構成は、本件補正発明の「担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成る」構成に相当する。
(イ)
引用発明の「加わる力に耐えるに必要な車軸2の所望な全壁厚は、エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10を更に施して得られ、この繊維補強物10は、車輪中央部7の間にある車軸2の部分に置かれ、各車輪中央部7の内面に沿って連続しつぎに周縁を横切ってタイヤ11のリムを形成し、更に車輪中央部7をこえ車軸2へ延び、車軸2の面に結合され、繊維は、カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維のいづれかである、」構成における、「カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維のいづれかである」「繊維」、及び、「エポキシド樹脂」は、それぞれ、本件補正発明の「ほぼ非金属の第2材質から成る繊維」及び「1つの第1材質」に相当する。
そして、当該構成における「エポキシド樹脂」に関しては、上記(ア)と同様のことがいえるから、引用発明の、「加わる力に耐えるに必要な車軸2の所望な全壁厚」が「得られ」るように「更に施し」、「車輪中央部7の間にある車軸2の部分に置かれ、各車輪中央部7の内面に沿って連続しつぎに周縁を横切ってタイヤ11のリムを形成し、更に車輪中央部7をこえ車軸2へ延び、車軸2の面に結合され」る、「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」は、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」の態様をとる際に、このエポキシド樹脂を熱硬化させていることが明らかである。
要は、引用発明の「エポキシド樹脂」が硬化することにより、引用発明の「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」は、「車軸2」及び「車輪中央部7」の表面に施され、「車軸2」と「車輪中央部7」が一体となるようにそれらを覆う、繊維強化プラスチック(FRP)の態様、すなわち、強度を向上させた強化プラスチックの態様となっていることが明らかであり、「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」に加わる力やトルクを担持している担持層となっているといえる。
これらのことから、引用発明の「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」の構成も、本件補正発明の「担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成る」構成に相当する。
(ウ)
本件補正発明は、「各担持層」を特定しているから、本件補正発明の「少なくとも担持層を含み」の「少なくとも担持層」は、「少なくとも」複数の「担持層」を特定しているものと理解できる。
上記(ア)で述べた引用発明の「繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、」「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」の構成、及び、(イ)で述べた引用発明の「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」の構成は、いずれも、本件補正発明の「担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成る」構成に相当するから、両者の構成は、本件補正発明の「少なくとも担持層」の構成に相当し、いずれかの構成は、本件補正発明の「各担持層」の構成に相当する。
このことと、上記アを踏まえると、
引用発明の、
「車軸2は、繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3を鋼製コア4に置いて、組立てられ、繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、
加わる力に耐えるに必要な車軸2の所望な全壁厚は、エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10を更に施して得られ、
この繊維補強物10は、車輪中央部7の間にある車軸2の部分に置かれ、各車輪中央部7の内面に沿って連続しつぎに周縁を横切ってタイヤ11のリムを形成し、更に車輪中央部7をこえ車軸2へ延び、車軸2の面に結合され、繊維は、カーボン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維およびガラス繊維の組合せ繊維のいづれかである、
車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」と、
本件補正発明の、
「前記シャフト体は少なくとも担持層を含み、該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与しており、各担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成ることを特徴とする輪軸シャフト」とは、
「前記シャフト体は少なくとも担持層を含み、各担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成る輪軸シャフト」において、共通している。
以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で一応相違する。
<一致点>
「ほぼ長手軸に沿って延伸する少なくとも1つのシャフト体を備える輪軸シャフトであって、前記シャフト体は、力および/またはトルクを機能部品へ誘導および/または機能部品から誘導することに使われる少なくとも1つの第1負荷連結部分を備える輪軸シャフトにおいて、
前記シャフト体は少なくとも担持層を含み、各担持層は、ほぼ非金属の第2材質から成る繊維が少なくとも部分的に埋め込まれている、少なくとも1つの第1材質から成る輪軸シャフト。」
<相違点>
「担持層」に関して、本件補正発明は、「該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与して」いるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
(3)判断
上記相違点について検討する。
ア
本願明細書の段落【0096】には、「担持層」に関して、「その際担持層とは、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに使われ、それによって輪軸シャフトの運転時に生じる力とトルクとを担持することになる層、すなわち担持機能に使われる層と理解される。担持層は好適には、第1材質と第2材質とから作られている。」と記載されている。
この記載によると、上記相違点に係る本件補正発明の「該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与して」いるという構成は、「該担持層」は、「輪軸シャフトの運転時に生じる力とトルクとを担持すること」に寄与している構成を意味していると一応理解できる。
イ
そうすると、「担持層」であれば、「輪軸シャフトの運転時に生じる力とトルクとを担持する」(上記(2)エ参照)、すなわち、「輪軸シャフトの運転時に生じる力とトルクとを担持すること」に寄与する構成となっているといえるから、「輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与して」いる構成となっており(上記ア)、上記相違点は、実質的な相違点とはいえない。
ウ
また、仮に、上記相違点に係る本件補正発明の「輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与して」いる構成が、「輪軸シャフトの運転時に生じる力とトルクとを担持すること」に寄与する構成とは別のことを意味しているとしても、引用発明の「車軸2および車輪中央部7が互いに結合される組立体」(輪軸シャフト、上記(2)ア参照)は、その外側が、「繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、」「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」及び「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」(担持層、上記(2)エ参照)で補強されているといえるから、残留応力を取除くこと、疲労破壊の原因となる振動を除くこと、高集中応力のために車輪組立体に生ずるような疲労破壊の可能性を減ずること等ができ(摘記(1h)参照)、要は、破損が防止でき、構造力学的に安定したものとなっていることは、明らかである。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点とはいえない。
エ
さらに、仮に、上記相違点が実質的な相違点であったとしても、当業者が、良好な動力伝達や破損防止のために、「輪軸シャフトを構造力学的に安定させること」は、技術常識であるから、この技術常識を踏まえ、引用発明において、「繊維は、カーボン繊維およびまたはガラス繊維であり、」「繊維が鋼製コア4の周囲にらせん形に延びるようにエポキシド樹脂を予め含浸させたテープまたは織物3」及び「エポキシド樹脂を予め含浸したフィラメント繊維織物またはテープの何れかの形の繊維補強物10」(担持層、上記(2)エ参照)を、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与するように構成して、上記相違点に係る本件補正発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
オ
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)であるか(上記ア~ウ参照)、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから(上記エ参照)、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)とはいえない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成31年1月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(2)補正前の請求項1」に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
(1)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開昭46-111号公報
3 引用文献
補正前の請求項1について、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(刊行物1)及びその記載事項等は、上記「第2 2 2-2(1)」に記載したとおりである。
4 当審の判断
本願発明は、上記「第2[理由]1(2)補正前の請求項1に記載されたとおりのものであり、本件補正発明から、上記「第2[理由]2 2-1」で述べた「担持層」に関連する「該担持層は、輪軸シャフトを構造力学的に安定させることに寄与しており、」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2 2-2(3)」で述べたとおり、引用発明であるか、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明であるか、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるか、あるいは、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-009326