特許拒絶査定不服審判
2015-019451
非空気入りタイヤ及び非空気入りタイヤの製造方法
- 審判番号
- 2015-019451
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-103180外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月29日
- 審決日
- 2017年01月19日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ブリヂストン
- 【請求人代理人】志賀 正武
- 【請求人代理人】高橋 詔男
- 【請求人代理人】仁内 宏紀
- 【請求人代理人】大槻 真紀子
- 分類
- P18 .121-WZ (B60B) / P18 .575-WZ (B60B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-103180号「非空気入りタイヤ及び非空気入りタイヤの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月3日出願公開、特開2013-199274号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成23年10月20日に出願した特願2011-230680号の一部を平成25年5月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年2月5日付け :拒絶理由の通知
平成27年2月20日 :意見書の提出
平成27年7月30日付け :拒絶査定
平成27年10月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年7月20日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の通知
平成28年9月23日 :意見書、手続補正書の提出
2.本願発明
本願の請求項1-5に係る発明は、平成28年9月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、および該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材と、
を備え、
前記連結部材のうち、前記外筒体に連結された一端部と、前記内筒体に連結された他端部と、の間の中央部から前記一端部にわたる一端側部分は、前記中央部から前記他端部にわたる他端側部分よりも厚さが大きくなっているとともに、前記一端側部分と前記他端側部分とは、段差なく滑らかに連なっており、
前記リング部材と前記連結部材とが樹脂材料により一体に形成されたことを特徴とする
非空気入りタイヤ。」
3.引用刊行物及び引用刊行物の記載事項
(1)刊行物1
ア 当審拒絶理由で引用された特開2009-286208号公報(以下、「刊行物1」という。)には、 図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、外周輪と内周輪との間を複数のフィンで連結したスポーク構造体を有する非空気式タイヤに関し、更に詳しくは、スポーク構造体のバックリングを防止し、接地面圧の均一化を図ることを可能にした非空気式タイヤに関する。」
(イ)「【0012】
スポーク構造体は、一体物であっても良いが、タイヤ幅方向に分割された複数の分割片から構成したり、タイヤ周方向に分割された複数の分割片から構成することが可能である。スポーク構造体をタイヤ幅方向に分割された複数の分割片から構成した場合、複数の分割片におけるフィンの位置を互いにずらすことで、バックリング防止効果を更に高めることができる。一方、スポーク構造体をタイヤ周方向に分割された複数の分割片から構成した場合、リム組み作業が容易になる。」
(ウ)「【0014】
この非空気式タイヤは、図1及び図2に示すように、同軸的に配置された外周輪11と内周輪12との間を周方向に間隔をおいて配置された複数のフィン13で連結したスポーク構造体10と、そのスポーク構造体10の外周側に装着されたトレッドリング20とから構成されている。スポーク構造体10はホイールWのリムに対して装着される。」
(エ)「【0016】
スポーク構造体10の構成材料としては、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物を使用することができる。特に、ウレタン樹脂に代表される熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。スポーク構造体10は単一のマトリクス材料から成形することが可能であるが、外周輪11、内周輪12、フィン13、連結部14の部材毎に材料を異ならせても良い。」
(オ)「【0025】
上述した実施形態では、スポーク構造体10を一体物として形成した場合について説明したが、本発明ではスポーク構造体10を複数の分割片から構成することも可能である。例えば、図7に示すように、スポーク構造体10をタイヤ幅方向に分割された複数の分割片110,120,130から構成することができる。この場合、複数の分割片110,120,130におけるフィン13のタイヤ周方向の位置を互いにずらすことで、バックリング防止効果を更に高めることができる。」
イ また、刊行物1の図面の記載からは以下の点が看取できる。
(ア) 第7図から、「外周輪11」が「内周輪12」をタイヤ径方向外側から囲繞した点。
(イ) 第7図から、「フィン13」を「内周輪12」と「外周輪11」との間にタイヤ周方向に複数配列した点。
ウ これらのことから、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ホイールWと、
ホイールWのリムに対して装着される、外周輪11と内周輪12との間を複数のフィン13で連結したスポーク構造体10と、
を備え、
スポーク構造体10は、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物からなる一体物として形成されている非空気式タイヤ。」
(2)刊行物2
ア 当審拒絶理由で引用された特開2011-25758号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と、
タイヤ周方向に沿って複数設けられ前記取り付け体と前記リング状体とを連結する連結部材と、が備えられた非空気入りタイヤであって、
前記連結部材は、このタイヤをタイヤ幅方向の外側から見た側面視において、タイヤ周方向における一方側に向けて凸となるように湾曲した第1連結板と、他方側に向けて凸となるように湾曲した第2連結板と、を備え、
これらの両連結板それぞれにおいて、前記リング状体側の一端側部分および前記取り付け体側の他端側部分のうちの少なくとも一方の板厚は、これらの一端側部分および他端側部分の間に位置する中間部分の板厚よりも大きくなっていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」
(イ)「【0002】
・・・略・・・ そこでこのような問題を解決するために、例えば下記特許文献1、2に示されるような、車軸に取り付けられる取り付け体と、該取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と、タイヤ周方向に沿って複数設けられ取り付け体とリング状体とを連結する連結部材と、を備える非空気入りタイヤが提案されている。さらに下記特許文献1に示される非空気入りタイヤの連結部材は、このタイヤをタイヤ幅方向の外側から見た側面視において、タイヤ周方向における一方側に向けて凸となるように湾曲した第1連結板と、他方側に向けて凸となるように湾曲した第2連結板と、を備えている。
この種の非空気入りタイヤでは、例えば路面などから荷重が入力されたときに、連結板が弾性変形することでこの非空気入りタイヤに柔軟性を具備させることが可能になり、良好な乗り心地性を確保することができる。」
(ウ)「【0004】
しかしながら、前記従来の非空気入りタイヤでは、荷重の入力時に、前記両連結板それぞれにおいて、リング状体および取り付け体に各別に固定された両固定端部の各変形が規制された状態で、これらの両固定端部の間に位置する中間部分が、前述の凸となるように湾曲した曲率を小さくするように曲げ変形させられる。これにより、両固定端部と中間部部分との接続部が、その曲率が大きく変化するように変形させられることとなる。そのため、前記両連結板それぞれにおいて、リング状体側の一端側部分および取り付け体側の他端側部分に局所的に大きな負荷が生ずるおそれがあった。」
(エ)「【0007】
この発明では、両連結板それぞれにおいて、一端側部分および他端側部分のうちの少なくとも一方の板厚が、中間部分の板厚よりも大きくなっているので、前記少なくとも一方の剛性を中間部分よりも高めることが可能になり、この非空気入りタイヤに例えば路面などから荷重が入力されたときに、前記少なくとも一方が過度に大きく変形するのを抑えることが可能になる。したがって、前記少なくとも一方に局所的に大きな負荷が生ずるのを抑えることが可能になり、両連結板の強度を向上させることができる。
またこのように、一端側部分および他端側部分のうちの少なくとも一方の板厚を中間部分の板厚よりも大きくするだけで、当該連結板の強度を向上させることができるので、両連結板の強度を向上させるために当該連結板を全長にわたって厚くする場合に比べて、この非空気入りタイヤの重量が増大するのを抑制することができる。」
(オ)「【0019】
連結部材13は、この非空気入りタイヤ1をタイヤ幅方向Hの外側から見たタイヤ側面視で、タイヤ周方向における一方側に向けて凸となるように湾曲した第1連結板21と、他方側に向けて凸となるように湾曲した第2連結板22と、を備えている。なお、第1連結板21および第2連結板22はそれぞれ、ヒステリシスロスがほとんど無い例えば金属材料若しくは樹脂材料等で形成されている。これらの両連結板21、22の各一端部(固定端部)21a、22aは、リング状体12の内周面12b側に固定されるとともに、各他端部(固定端部)21b、22bは取り付け体11に固定されている。」
(カ)「【0071】
また、前記実施形態では、両連結板21、22は、本体板部21A、22Aと補強板部21B、22Bとを備えているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、両連結板21、22をそれぞれ、一枚の板部材を加工することで形成しても良い。・・・略・・・」
(イ)上記記載から、刊行物2には、次の技術(以下、「刊行物2の技術」という。)が記載されているといえる。
「車軸に取り付けられる取り付け体と、該取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と、タイヤ周方向に沿って複数設けられ、取り付け体とリング状体とを連結する連結部材と、を備える非空気入りタイヤにおいて、連結部材は樹脂材料で形成され、連結部材は一枚の板部材を加工することで形成され、連結部材の負荷が生ずる部分である、リング状体側の一端部分および取り付け体側の他端部分のうちの少なくとも一方の板厚を大きくする技術。」
4.引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ホイールW」は、車軸に取り付けられるものであることが明らかであるから、技術的、機能的にみて、本願発明の「車軸に取り付けられる取り付け体」に相当する。
引用発明の「スポーク構造体10」はホイールWのリムに対して装着されているものであるが、刊行物1の図2の記載より、スポーク構造体10の内周輪12がホイールWのリムに外側から装着、すなわち外装、されているものである。よって、引用発明の「内周輪12」は本願発明の「該取付け体に外装される内筒体」に相当する。そして、引用発明の「外周輪11」は「内周輪12」をタイヤ径方向外側から囲繞するものである(上記3.(1)イ(ア))。よって、引用発明の「外周輪11」は本願発明の「外筒体」に相当する。
結局、引用発明の「内周輪11」と「外周輪12」とで、本願発明の「リング部材」に相当する構成をなしているといえる。
引用発明の「フィン13」は、「内周輪12」と「外周輪11」との間にタイヤ周方向に複数配設されるものであるから(上記3.(1)ア(ア)、(ウ)、3.(1)イ(イ))、本願発明の「連結部材」に相当し、また、「ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物からなる一体物として形成されている」「スポーク構造体10」の一部であること、および、路面からの衝撃を吸収するというタイヤとしての機能からみて、弾性を有するものであるといえる。よって、引用発明の「フィン13」は「内周輪12」と「外周輪11」との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、「内周輪12」と「外周輪11」の両筒体同士を相対的に弾性変形自在に連結するものであるともいえる。
結局、引用発明の「ホイールWのリムに対して装着される、外周輪11と内周輪12との間を複数のフィン13で連結したスポーク構造体10と、を備え」ることは、本願発明の「該取り付け体に外装される内筒体、および該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ径方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を相対的に弾性変形自在に連結する連結部材と、を備え」ることに相当する。
引用発明の「スポーク構造体10」は「内周輪12」と「外周輪11」と「フィン13」とから構成されており、また、「ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物からなる一体物として形成されて」いるところ「ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物」は樹脂材料を含むといえることから、引用発明の「スポーク構造体10は、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は、これらを含む組成物からなる一体物として形成されている」は本願発明の「前記リング部材と前記連結部材とが樹脂材料により一体に形成された」に相当する。
そして、引用発明の「非空気式タイヤ」は技術的にみて本願発明の「非空気入りタイヤ」に相当する。
イ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「車軸に取り付けられる取り付け体と、
該取り付け体に外装される内筒体、および該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と、
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、これらの両筒体同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材と、
を備え、
前記リング部材と前記連結部材とが樹脂材料により一体に形成されたことを特徴とする非空気入りタイヤ。」
<相違点>
「連結部材」に関して、本願発明の「前記連結部材のうち、前記外筒体に連結された一端部と、前記内筒体に連結された他端部と、の間の中央部から前記一端部にわたる一端側部分は、前記中央部から前記他端部にわたる他端側部分よりも厚さが大きくなっているとともに、前記一端側部分と前記他端側部分とは、段差なく滑らかに連なって」いるのに対し、引用発明においては「フィン13」の厚さ等については特定されていない点。
5.当審の判断
上記相違点について検討する。
上記刊行物2の技術の「連結部材」は、非空気入りタイヤにおいて、車軸に近い構造体とタイヤ外周に設けられた構造体を連結する部材であるという点で、引用発明の「フィン13」に対応する部材といえる。ここで、刊行物2の技術の「連結部材」のリング状体側の一端部分および取り付け体側の他端部分のうちの少なくとも一方の板厚を大きくするのは、非空気入りタイヤにおいて、路面からの荷重が入力されたときに、連結部材のリング状体側の一端部分および取り付け体側の他端部分が大きく変形するのを抑え、前記一端側部分および他端部分に局所的に大きな負荷が生ずるのを抑えるためである(上記3.(2)ア(ウ)、(エ))。そして、引用発明の「フィン13」においても、路面からの荷重が入力されたときに、フィンの内周輪側の端部分および外周輪側の端部分が大きく変形し、ここに局所的に大きな負荷が生ずるであろうことことは当業者であれば容易に予測し得うるといえるし、上記刊行物2の技術は、タイヤの重量抑制のために必要な部分のみ板厚を厚くするということを示唆しているといえる(上記3.(2)ア(エ))。
とするならば、この局所的に大きな負荷が生ずるのを抑えるために、フィンの内周輪側の端部分および外周輪側の端部分のうちの少なくとも一方である外周輪側の端部分の板厚を大きくし、すなわち、フィンの中央部から外周輪側の端部にわたる部分の板厚を大きくすることは当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、刊行物2には「連結部材」を一枚の板部材を加工することで形成する場合も記載されており(上記3.(2)ア(カ))、この「連結部材」を一枚の板部材を加工することで形成する場合、連結部材の板厚の薄い部分と厚くする部分とのつながり部分を応力集中が生じないような「段差なく滑らかに連なって」形成することは、機械分野において、曲げモーメントが作用する部材に段差などの隅部があると、そこに応力が集中し、破断が生じやすいので、隅部が無い形状、すなわち、段差無く滑らかな形状とすることが技術常識であることを考えると、当業者が必要に応じて設計し得たものにすぎないといえる。
以上のとおりであるから、引用発明に、刊行物2の技術を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
そして、以上の相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び刊行物2の技術の奏する作用効果から予測されるものにずぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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