特許拒絶査定不服審判
2016-013647
DRX(DISCONTINUOUSRECEPTION)を調整する方法
- 審判番号
- 2016-013647
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-243008外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月12日
- 審決日
- 2018年02月05日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インターデイジタル パテント ホールディングス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .55 -Z (H04W) / P18 .561-Z (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-243008「DRX(DISCONTINUOUSRECEPTION)を調整する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日出願公開,特開2015- 62318〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2011年9月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年10月1日 米国,2011年4月29日 米国,2011年8月12日 米国)を国際出願日とする出願である特願2013-531771号の一部を,平成26年12月1日に新たな特許出願(外国語書面出願)としたものであって,平成27年1月5日に手続補正がされ,同年12月14日付けで拒絶理由が通知され,平成28年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され,同年4月27日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年9月12日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。その後,審査官が同年10月6日付けで作成した前置報告書に対して,平成29年1月5日に上申書が提出された。
第2 平成28年9月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月12日にされた手続補正(以下,「本件補正1」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正1の概要
本件補正1は,平成28年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線送受信ユニット(WTRU)であって,
物理ダウンリンク共有チャネル上で異なるセルからデータを受信するように構成された回路であって,前記異なるセルは,第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル,および,第2の位置を有する少なくとも1つのセルを含み,前記第2の位置は,前記第1の位置と異なる,回路を備え,
前記回路は,前記WTRUに関連付けられた無線ネットワーク端末識別子に関連付けられたダウンリンク制御情報のために,第1のセルの物理ダウンリンク制御チャネルを監視するようにさらに構成され,前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し,
前記回路は,前記制御情報に応答して,前記ダウンリンク制御情報に応答する前記物理ダウンリンク共有チャネルからデータをリカバーするようにさらに構成される
ことを特徴とするWTRU。」を
「無線送受信ユニット(WTRU)であって,
物理ダウンリンク共有チャネル上で異なるセルからデータを受信するように構成された回路であって,前記異なるセルは,第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル,および,第2の位置を有する少なくとも1つのセルを含み,前記第2の位置は,前記第1の位置と異なる,回路を備え,
前記回路は,前記WTRUに関連付けられた無線ネットワーク端末識別子に関連付けられたダウンリンク制御情報のために,第1のセルの物理ダウンリンク制御チャネルを監視するようにさらに構成され,前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,データをリカバーするための前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し,
前記回路は,前記制御情報に応答して,前記ダウンリンク制御情報に応答する前記物理ダウンリンク共有チャネルからデータをリカバーするようにさらに構成される
ことを特徴とするWTRU。」([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)
とすることを含むものである。
2 補正の適否
(1)新規事項の有無について
本件補正1後の請求項1の「前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,データをリカバーするための前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し」([当審注]:下線部は当審が付した。以下,同様。)との事項は,「前記ダウンリンク制御情報」が「物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報」及び「前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示」を有するものであるから,原査定の拒絶理由(特許法第17条の2第3項違反)をそのまま有するものである。したがって,当該事項が外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものか否かついて,以下,検討する。
ア まず,本件補正1後の請求項1の「前記異なるセルは,第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル,および,第2の位置を有する少なくとも1つのセルを含み,前記第2の位置は,前記第1の位置と異なる」との記載に照らせば,「第1の位置」と「第2の位置」とは,それぞれセルの空間的な相異なる位置であると認められる。
したがって,本件補正1後の請求項1の「前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示」は,「あるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示」ということになる。すなわち,本件補正1後の請求項1に係る発明は,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことを発明特定事項とすることを含むものであると認められる。
イ これに対し,外国語書面の翻訳文には,「位置」及び「ロケーション」に関して,以下の記載があるのみである。
「【0008】
主サービングセルと副サービングセルとの間のDRX(discontinuous reception)動作を調整する方法は,主サービングセルおよび副サービングセルのDRXパラメータを構成することと,主サービングセル内と副サービングセル内との両方でCFN(Connection Frame Number)を位置合せするために無線インターフェース同期化手順を実行することと,位置合せされたCFNを使用して主サービングセルおよび副サービングセルのDRX受信パターンを調整することとを含む。」,
「【0011】
より詳細な理解を,たとえば添付図面に関連して与えられる次の説明から得ることができる。
(中略)【図13】DRX(discontinuous reception)受信パターンの位置合せの例を示す図である。」,
「【0030】
RAN 104は,コアネットワーク106と通信しているものとすることができ,コアネットワーク106は,音声,データ,アプリケーション,および/またはVoIP(voice over internet protocol)サービスをWTRU 102a,102b,102c,102dのうちの1つまたは複数に提供するように構成された任意の種類のネットワークとすることができる。たとえば,コアネットワーク106は,呼制御,請求サービス,モバイルロケーションベースのサービス,プリペイド発呼,インターネット接続性,ビデオ配信,その他を提供し,および/またはユーザ認証などの高水準セキュリティ機能を実行することができる。図1Aには示されていないが,RAN 104および/またはコアネットワーク106を,RAN 104と同一のRATまたは異なるRATを使用する他のRANと直接または間接に通信しているものとすることができることを了解されたい。たとえば,E-UTRA無線技術を利用しているものとすることができるRAN 104に接続されることに加えて,コアネットワーク106を,GSM無線技術を使用している別のRAN(図示せず)と通信しているものとすることもできる。」,
「【0040】
プロセッサ118を,GPSチップセット136に結合することもでき,GPSチップセット136を,WTRU 102の現在ロケーションに関するロケーション情報(たとえば,経度および緯度)を提供するように構成することができる。GPSチップセット136からの情報に加えてまたはその代わりに,WTRU 102は,基地局(たとえば,基地局114a,114b)からエアインターフェース116を介してロケーション情報を受信し,および/または2つ以上の近くの基地局から受信されつつある信号のタイミングに基づいてそのロケーションを判定することができる。WTRU 102が,実施形態と一貫したままでありながら任意の適切なロケーション判定方法によってロケーション情報を獲得できることを了解されたい。」,
「【0196】
ユーザに関する電力節約の利益を最大にするために,2つのセルによって使用される受信パターンが,できる限り時間内に位置合せされるように,主サービングセルと副(支援)サービングセルとの両方でのDRX動作を調整することができる。DRXパラメータの同一のセットまたはDRXサイクルなどのDRXパラメータの1セットのみが,両方のセルで構成される。無線インターフェース同期化手順をかかわらせることによって,両方のセルのF-DPCHの送信に関連するCFN(Connection Frame Number)を,あるレベルの正確さを伴って位置合せすることができる。この位置合せされたCFNを使用することによって,制御アルゴリズムを,両方のセルに関する調整されたダウンリンクDRX受信パターンを生成するように設計することができる。異なるセルでのF-DPCH無線フレームおよびHS-SCCH無線フレームのタイミング関係の潜在的変動に起因して,追加の時間調整手順を使用して,2つの受信パターンを位置合せすることができる。」,
「【0199】
ここで,CFN_DRX0は,主サービングセルに関し,対応するF-DPCH無線フレームに関連するHS-SCCHの無線フレーム番号であり,これは,無線インターフェース同期化手順を介して2つのサービングセルの間で位置合せされる。S_DRX0は,0から4までの範囲の,1つの無線フレームの中での主サービングセルのHS-SCCHサブフレーム番号である。UE_DRXサイクルは,HS-SCCH受信パターンの反復サイクルを指定する,上位層によって構成されるパラメータである。」
「【0206】
WTRUでは,受信パターンが,タイミング調整手順の結果として位置合せされ,またはほぼ位置合せされるので,WTRUは,セルのいずれかで提供されるタイミングカウンタに従って受信パターンの1つのセットを計算する共通の状態機械を実施することだけが必要である。状態機械が,WTRUをウェイクアップすべきタイムインターバルであると判定した後に,WTRUは,潜在的なデータ受信について両方のセルからのHS-SCCHを監視し始める。異なるセルの受信パターンの間のわずかな残留オフセットのゆえにデータ送信を潜在的に見逃すことを避けるために,WTRUは,受信インターバルの周囲の1つまたは少数のさらなる追加のサブフレームを監視することができる。あるいは,WTRUは,上の式に従って他のセルのHS-SCCH監視が完了し,WTRUが受信機をオフに切り替えなければならない場合であっても,わずかにオフセットされたセルのHS-SCCH全体が監視されることを保証することができる。
【0207】
受信パターンを位置合せする例が,図13に示され,図13では,パラメータは,UE_DRX_cycle=4,τDRX0=1subframe,τDRX1=2subframesとしてセットされ,タイミングオフセットパラメータは,制約(UE_DTX_DRX_Offset0-UE_DTX_DRX_Offset1)=1を満たさなければならない。」,
「【0235】
実施形態
1.主サービングセルと副サービングセルとの間のDRX(discontinuous reception)動作を調整する方法であって,主サービングセルおよび副サービングセルのDRXパラメータを構成するステップと,主サービングセル内と副サービングセル内との両方でCFN(Connection Frame Number)を位置合せするために無線インターフェース同期化手順を実行するステップと,位置合せされたCFNを使用して主サービングセルおよび副サービングセルのDRX受信パターンを調整するステップとを含むことを特徴とする方法。」
上記【0008】,【0011】,【0196】,【0199】,【0206】,【0207】,【0235】の「位置」は,時間的なタイミングを意味するものであり,セルの空間的な位置を意味するものではない。
また,上記【0030】,【0040】の「ロケーション」は,WTRUの空間的な位置を意味するものであって,セルの空間的な位置を意味するものではない。
そして,外国語書面の翻訳文の上記記載をみても,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことは,記載も示唆もされておらず,自明でもない。
ウ そして,請求人は,平成28年4月13日に提出された意見書において,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの拒絶理由に対する意見として,【0101】,【0102】,【0103】,【0113】,【0143】を挙げているが,【0101】~【0115】,【0143】には以下のとおり記載されている。
「【0101】
異なる動作モードの間での動的な切替を可能にする1つの解決策では,2つのHS-SCCHが,元々はRRCによって構成された各セルに関連する異なるスクランブリング符号を用いて送信され,その結果,これらを,WTRUで正しく復調できるようになる。両方のセルのHS-SCCHについて同一のスクランブリング符号を使用するために,WTRUは,WTRUで2つのHS-SCCHを区別するために十分な空間ダイバーシティに頼るために少なくとも2つのアンテナを備えなければならない。両方のHS-SCCHを,同一のまたは異なるH-RNTIを適用することによって同一のWTRUにアドレッシングすることができる。WTRUが,副HS-DSCHセルからそのWTRUにアドレッシングされたHS-SCCHを検出する場合に,そのWTRUは,マルチポイント送信が行われつつあると判定し,両方のHS-DSCHセル上で対応するHS-PDSCHの受信を開始する。
【0102】
第1の方法では,ネットワークは,再構成なしに,データ送信に関する動作モードのうちの1つを動的に判定することができる。動作モードについてWTRUに知らせるために,副サービングセルによって送信されたHS-SCCH内のチャネライゼーション指示フィールド全体を再利用して,動作モードを示すことができる。より具体的には,副HS-SCCH内でxccs,1,xccs,2,…,xccs,7によって表されるチャネライゼーション符号セット情報ビットを,異なる動作モードをシグナリングするために再定義することができる。このフィールド内で2ビットを使用する一例を,表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
副HS-SCCH内の他のフィールドを,同一の使用法を用いて維持することができる。たとえば,トランスポートブロックサイズ情報を,それでも,副HS-PDSCHのトランスポートブロックサイズを示すというその元々の目的のために使用することができる。
【0105】
支援送信が,主データ送信とは異なるサブフレームで送信される場合には,フィールド内の追加ビットを,たとえば表2に示されているように使用して,主サービングセルからのデータが送信されるサブフレームへのオフセットを示すことができ,または,HARQプロセスIDを指定することができる。
【0106】
【表2】
【0107】
動作モードの切替を,TTIごとに行うことができる。というのは,HS-SCCHが送信される限り,動作モードを,すべてのTTIに更新することができるからである。
【0108】
第2の方法では,チャネライゼーション符号セット情報ビットが,マルチポイント送信をシグナリングするのに部分的に使用される。ネットワークは,それでも,支援送信について異なるチャネライゼーション符号を示すことができる。Oが,開始符号を表し,Pが,データ送信に使用される符号の個数を表すものとすると,Oだけが,両方のセルについて同一であることを要求される場合がある。副サービングセルは,支援データ送信に使用される異なる個数のチャネライゼーション符号を示すことができる。したがって,異なるトランスポートブロックサイズを,副サービングセルを介してスケジューリングすることができる。具体的には,チャネライゼーション符号セット情報フィールドからのビットを,次のように,副サービングセルのために使用することができる。
【0109】
xccs,1が最上位ビット(MSB)である最初の3ビット(符号グループインジケータ)について,
xccs1,xccs2,xccs3=min(P-1,15-P)
であり,第4のビットは,
【0110】
【数1】
【0111】
によって定義される。
【0112】
オプションで,xccs,1がMSBである最初の4ビット(符号グループインジケータ)について
xccs,1,xccs,2,xccs,3,xccs,4=P-1
である。
【0113】
チャネライゼーション符号セット情報フィールド内のビットの残りを使用して,動作モードをシグナリングすることができ,または,オプションで,支援データが主セルとは異なるサブフレーム内で送信される場合に,サブフレームオフセットをシグナリングすることができる。そのような使用の一例を,表2に関連して表3に示し,この例では,1ビットが,動作モードを示すのに使用され,2ビットが,サブフレームオフセットをシグナリングするのに使用される。
【0114】
【表3】
【0115】
xccs,5=0によって示される動作モードでは,異なるRVを,それでも,副サービングセルの支援送信で使用することができ,これを,副サービングセルからのHS-SCCH上で冗長性およびコンステレーションバージョンフィールドキャリア(constellation version field carrier)内でシグナリングすることができる。」,
「【0143】
WTRUに,TTIごとに(動的に),副サービングセルからのデータ(支援送信とも称する)を受信しなければならないのか否かを知らせることができる。第1の方法では,WTRUは,サービングHS-DSCHセルからのHS-SCCH(潜在的に,1つより多いチャネライゼーション符号)を監視する。HS-SCCHは,WTRUが異なるセルからのHS-PDSCHを組み合わせるかまたは復号するための特殊な指示を搬送する。この手法は,ソフトコンバイニング動作とソースマルチプレクシング(マルチフロー)動作との両方に適用することができる。関連付けられたHS-PDSCHが受信される前にこの指示が復号されるように,この指示を,HS-SCCHの第1の部分で搬送することができる。」
これらの記載から,副サービングセルによって送信されたHS-SCCH内のチャネライゼーション指示フィールド全体を再利用して,動作モード及びサブフレームオフセットを示すことが認められる。しかしながら,当該「動作モード」は,「両方のセルを介する同一の信号の同時送信」,「両方のセルを介する同一のトランスポートブロックの,異なるRVを用いる同時送信」,「両方のセルを介する異なるトランスポートブロックの送信」のいずれかであって,「両方のセル」は,「第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル」を含むものであって必ずしもその空間的な位置が異なるとは限らない。また,上記「動作モード」において両方のセルの空間的な位置を示す必然性も見出せない。したがって,上記動作モードの表示と「物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示」とは技術的に異なるものであることは明らかである。また,当該「サブフレームオフセット」は,時間的なタイミングに関するものであって,セルの空間的な位置に関するものではない。
したがって,請求人が上記意見書にて挙げた外国語書面の翻訳文の記載箇所をみても,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことは,記載も示唆もされておらず,自明でもない。
エ ここで,外国語書面の翻訳文の【0090】,【0091】には,以下の記載がある。
「【0090】
一実装形態では,新しいレイヤ1メッセージは,WTRUが現在監視しているHS-DSCHセルを変更するようにWTRUに命令することができる。このレイヤ1メッセージは,新しいHS-SCCH命令に対応することができる。これを,新しい命令タイプ,たとえば,命令タイプxodt,1,xodt,2,xodt,3=‘010’を導入することによって実行することができる。その後,命令ビットを,それらが,アクティブであることができるまたはWTRUが監視を開始することのできるHS-DSCHセルを示すようにセットすることができる。たとえば,
予約済み,xord,1,xord,2=xres,1,xres,2
監視すべきHS-DSCHセルxord,3=xhs-dsch,1
【0091】
xhs-dsch,1=‘0’である場合には,WTRUは,主セルのHS-SCCHを監視する。xhs-dsch,1=‘1’である場合には,WTRUは,副セルのHS-SCCHを監視する。他の命令ビットは,将来の使用のためにまたは他の副セルの使用のために予約済みとすることができる。たとえば,単一の周波数内の2つより多いHS-DSCHセルが構成される場合には,xord,2ビットを,xord,3に類似する形で使用することができる。」
これらの記載から,レイヤ1メッセージ中のxhs-dsch,1が‘0’か‘1’かにより主セルのHS-SCCHを監視するか副セルのHS-SCCHを監視するかが区別し得ることが認められる。しかしながら,HS-SCCHは制御チャネルであって「物理ダウンリンク共有チャネル」ではない。また,異なるセルは,「第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル」を含むものであって,主セルと副セルとがその空間的な位置は同じでキャリア周波数が異なることもあり,上記の区別がされたとしても必ずしも空間的な位置が特定され得るものではない。
このため,【0090】,【0091】の記載を参酌しても,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことは,記載も示唆もされておらず,自明でもない。
オ また,請求人が,審判請求書において,審判請求時の「前記物理ダウンリンク共有チャネル」を「データをリカバーするための前記物理ダウンリンク共有チャネル」とした補正の根拠として挙げた【0101】,【0143】には,以下の記載がある。
「【0101】
異なる動作モードの間での動的な切替を可能にする1つの解決策では,2つのHS-SCCHが,元々はRRCによって構成された各セルに関連する異なるスクランブリング符号を用いて送信され,その結果,これらを,WTRUで正しく復調できるようになる。両方のセルのHS-SCCHについて同一のスクランブリング符号を使用するために,WTRUは,WTRUで2つのHS-SCCHを区別するために十分な空間ダイバーシティに頼るために少なくとも2つのアンテナを備えなければならない。両方のHS-SCCHを,同一のまたは異なるH-RNTIを適用することによって同一のWTRUにアドレッシングすることができる。WTRUが,副HS-DSCHセルからそのWTRUにアドレッシングされたHS-SCCHを検出する場合に,そのWTRUは,マルチポイント送信が行われつつあると判定し,両方のHS-DSCHセル上で対応するHS-PDSCHの受信を開始する。」,
「【0143】
WTRUに,TTIごとに(動的に),副サービングセルからのデータ(支援送信とも称する)を受信しなければならないのか否かを知らせることができる。第1の方法では,WTRUは,サービングHS-DSCHセルからのHS-SCCH(潜在的に,1つより多いチャネライゼーション符号)を監視する。HS-SCCHは,WTRUが異なるセルからのHS-PDSCHを組み合わせるかまたは復号するための特殊な指示を搬送する。この手法は,ソフトコンバイニング動作とソースマルチプレクシング(マルチフロー)動作との両方に適用することができる。関連付けられたHS-PDSCHが受信される前にこの指示が復号されるように,この指示を,HS-SCCHの第1の部分で搬送することができる。」
しかしながら,これらの記載をみても,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことは,記載も示唆もされておらず,自明でもない。
また,【0101】,【0143】を含め外国語書面の翻訳文には「リカバー」なる記載表現は存在せず,「リカバー」を「復号」の意味と解したとしても,復号するための特殊な指示を搬送するのは制御チャネルであるHS-SCCHであって,本件補正1後の請求項1の「前記物理ダウンリンク共有チャネルからデータをリカバーする」のとおり,データチャネルであるHS-PDSCH(物理ダウンリンク共有チャネル)(で搬送されるデータ)は復号されるものである。すなわち,「物理ダウンリンク共有チャネル」は「データがリカバーされる」ものであって,むしろ,「HS-SCCH(制御チャネル)」が「データをリカバーするための」のものと解するのが,日本語の解釈として自然である。
カ 更に,平成29年1月5日に提出された上申書の「(2)拒絶理由について」の項で挙げられた外国語書面の翻訳文の【0014】,【0068】,【0069】,【0155】には以下のとおり記載されている。
「【0014】
Node Bからの高速支援情報を用いるマルチポイントHSDPA動作の機構を説明する。本明細書で言及される時に,用語「マルチポイントHSDPA」は,同一周波数または異なる周波数でのマルチポイント動作を指すことができる。説明を単純にするために,方法の多くは,2ソースの文脈で説明されるが,これらの概念を,複数のソースにたやすく拡張できることを理解されたい。いくつかの実施形態を,デュアルセルマルチポイントHSDPA動作の文脈で説明するが,これらの実施形態は,ダウンリンク動作に関するマルチセルマルチポイント動作(HSDPA)またはアップリンク動作に関するマルチセルマルチポイント動作(High-Speed Uplink Packet Access,HSUPA)に同等に適用可能である。さらに,これらの実施形態のいくつかは,マルチポイントLTE(Long-Term Evolution)動作にも適用可能である可能性があり,HS-DPSCHは,PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と同等とすることができ,HS-SCCH(High-Speed Shared Control Channel)は,PDCCH(Physical Downlink Control Channel)と同等とすることができる。」,
「【0068】
代替の方法では,データを,変調が実行された後に送信ポイントにまたがって異なるレイヤに分割することができる。より具体的には,変調された信号を,送信ポイントにまたがって所定のルールに従って分割することができる。
【0069】
データをどのように分割しなければならないのかを,HS-SCCHシグナリングを介してWTRUに明示的に示すことができる。より具体的には,別々のトランスポートブロックサイズまたはサイズを示す別々のビット数を,WTRUにシグナリングすることができる。WTRUは,それに応じてHS-DPSCHを復号する。あるいは,WTRUは,1つのHS-SCCH(たとえば,主)からすべての情報を受信し,および所定のルールを使用して各セルを介して送信されるビット数を判定する。WTRUを,この送信方式を用いて半静的にまたは動的に構成することができ,ここで,TBが分割されたか否かは,事前に決定されるルールのいずれかに従って明示的に示される。この指示を受信した時に,WTRUは,各ポイントまたはセルからのデータを独立に復号し,データを組み合わせることができる。」,
「【0155】
代替の解決策では,支援送信または副セル上の送信の存在が,特定のH-RNTIを介してNode BによってWTRUに示される。より具体的には,WTRUを,2つのH-RNTIすなわち主H-RNTIおよび副H-RNTIを用いて構成することができる。WTRUは,主HS-DSCHセルを介して2つのH-RNTIのうちの1つについて,構成されたHS-SCCHセットを監視することができる。WTRUは,主セルのみを介する送信がスケジューリングされるときに主H-RNTIを用いてアドレッシングされ,副H-RNTIは,主セルおよび副セルを介する送信をスケジューリングするのに使用される。WTRUが,副H-RNTIを有するHS-SCCHを検出するときに,WTRUは,支援送信または副セル上の送信が行われつつあると判定する。」
これらの記載によれば,WTRUが副H-RNTIを有するHS-SCCHを検出するときに,WTRUは,支援送信または副セル上の送信が行われつつあると判定し得ることが認められる。しかしながら,副セルの空間的な位置についてはなんら言及されておらず,副セルは,「第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル」を含むものであって,主セルと副セルとがその空間的な位置は同じでキャリア周波数が異なることもあり,上記判定がされたとしても,必ずしも空間的な位置が特定され得るものではない。
したがって,これらの記載は,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことの根拠とはなり得ない。
また,上記上申書に提示された請求項1の補正案の「前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,データをリカバーするための前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置のみに関連付けられるかそれとも前記第1の位置と前記第2の位置との両方に関連付けられるかの表示を有し」との補正も,同様の理由で,外国語書面の翻訳文に記載も示唆もされておらず,自明でもない。
キ 以上のとおり,外国語書面の翻訳文には,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」ことは,記載も示唆もされておらず,自明でもない。
そして,本願補正1は,「ダウンリンク制御情報が,物理ダウンリンク共有チャネルがあるセルの空間的な位置である前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記あるセルとは異なるセルの前記第1の位置とは異なる空間的な位置である前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有する」という,新たな技術事項を導入するものである。
したがって,本件補正1は,外国語書面の翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでない。
なお,審判請求書の「(2)拒絶理由に対する意見」をみても,「請求項1,7,13の「前記物理ダウンリンク共有チャネル」を「データをリカバーするための前記物理ダウンリンク共有チャネル」に補正しました。そのため,“データをリカバーするための物理ダウンリンク共有チャネル”が,第1の位置に関連づけられるか,それとも,第2の位置に関連付けられるかの表示であることが明確になったものと思料します。したがって,拒絶理由は解消されたものと思料します。」のとおり,原査定の拒絶理由(特許法第17条の2第3項違反)に対する釈明は為されていない。
3 結語
以上のとおり,平成28年9月12日にされた手続補正(本件補正1)は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年9月12日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1~14に係る発明は,平成28年4月13日にされた手続補正(以下,「本件補正2」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載されたとおりものと認められる。
そして,本件補正2は,平成27年1月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線送受信ユニット(WTRU)であって,
物理ダウンリンク共有チャネル上で異なるセルからデータを受信するように構成された回路であって,前記異なるセルは,第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル,および,第2の位置を有する少なくとも1つのセルを含み,前記第2の位置は,前記第1の位置と異なる,回路を備え,
前記回路は,前記WTRUに関連付けられた無線ネットワーク端末識別子に関連付けられたダウンリンク制御情報のために,第1のセルの物理ダウンリンク制御チャネルを監視するようにさらに構成され,前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの指示を有し,
前記回路は,前記制御情報に応答して,前記ダウンリンク制御情報に応答する前記物理ダウンリンク制御チャネルからデータをリカバーするようにさらに構成される
ことを特徴とするWTRU。」
を
「無線送受信ユニット(WTRU)であって,
物理ダウンリンク共有チャネル上で異なるセルからデータを受信するように構成された回路であって,前記異なるセルは,第1の位置を有するが異なるキャリア周波数を有する複数のセル,および,第2の位置を有する少なくとも1つのセルを含み,前記第2の位置は,前記第1の位置と異なる,回路を備え,
前記回路は,前記WTRUに関連付けられた無線ネットワーク端末識別子に関連付けられたダウンリンク制御情報のために,第1のセルの物理ダウンリンク制御チャネルを監視するようにさらに構成され,前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し,
前記回路は,前記制御情報に応答して,前記ダウンリンク制御情報に応答する前記物理ダウンリンク共有チャネルからデータをリカバーするようにさらに構成される
ことを特徴とするWTRU。」([当審注]:下線部は,補正箇所を示す。)
と補正することを含むものである。
2 拒絶査定の理由
拒絶査定の理由である,平成27年12月14日付け拒絶理由通知の理由は,概略,以下のとおりである。
(新規事項)平成27年1月5日付けでした手続補正は,下記の点で外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
「前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの指示を有し」が,翻訳文に記載された事項ではない。
「物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報」,「物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの指示」のそれぞれが,翻訳文に係るどの記載・情報・指示に対応するか特定できない。さらに,これらの情報及び指示を備えるダウンリンク制御情報が,翻訳文に係るどの記載・制御情報に対応するか特定できない。よって,翻訳文に記載した事項といえない。
そして,平成28年4月27日付けの拒絶査定のコメントは以下のとおりである。
1.請求項1-14に係る発明は,翻訳文に記載した事項ではない。また,請求項1-14に係る発明は,明確ではない。
出願人は意見書3(1)欄で,請求項の記載と翻訳文との対応関係を説明している。この説明を参照しても,請求項の「前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し」が,翻訳文に記載されたものといえない。
とくに「前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示」が,翻訳文に存在しない。
3 当審の判断
上記「第2 平成28年9月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項の「2 補正の適否」の項の「(1)新規事項の有無について」の項と同様の理由により,「前記ダウンリンク制御情報は,物理ダウンリンク共有チャネルについてのリソース割り当て情報を有し,および,前記物理ダウンリンク共有チャネルが前記第1の位置に関連付けられるかそれとも前記第2の位置に関連付けられるかの表示を有し」は,外国語書面の翻訳文に記載も示唆もされておらず,自明でもなく,新たな技術事項を導入するものである。
してみると,平成27年1月5日付けでした手続補正は外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの拒絶理由は,本件補正2によっても解消されておらず,本件補正2も依然として有するものである。
したがって,本件補正2は,外国語書面の翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでない。
4 むすび
以上のとおり,平成28年4月13日にされた手続補正(本件補正2)は,特許法第17条の2第3項の規定に規定する要件を満たしていないから,本件出願は特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-013647