特許拒絶査定不服審判
2016-013336
太陽電池の製造方法
- 審判番号
- 2016-013336
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-544263外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月06日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日立化成株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人太陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-544263「太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日国際公開、WO2012/067118、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月25日(優先権主張 平成22年11月17日)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月7日付け(発送日 同年同月20日)で拒絶理由が通知され、同年12月18日付けで意見書が提出されたが、平成28年5月30日付け(送達 同年6月7日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、同年9月6日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2004-221149号公報
2.特開昭58-117号公報
第3 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成23年11月25日付けの願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし本願発明3は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
半導体基板の一方の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記半導体基板の前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される面上であって、少なくとも前記部分領域以外の領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有し、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物が付与された半導体基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程と、
前記部分領域上に電極を形成する工程と、
を有する太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記p型不純物は、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記p型不純物を含むガラス粉末は、B2O3、Al2O3及びGa2O3から選択される少なくとも1種のp型不純物含有物質と、
SiO2、K2O、Na2O、Li2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V2O5、SnO、ZrO2、TiO2、及びMoO3から選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、
を含有する請求項1または請求項2に記載の太陽電池の製造方法。」
なお、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単結晶シリコン基板および多結晶シリコン基板を用いて太陽電池セルを製造する方法に関する。」
イ 「【0008】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明を実施した、裏面電極型太陽電池の製造方法の第1の実施例を示す。まず(a)に示すようにp型の導電性を有する単結晶シリコン基板11を用意し、(b)に示すようにインクジェット法により、拡散防止用塗布剤26,高濃度n+ 用塗布剤25および低濃度n+ 用塗布剤24を一度に塗布することができる。ヘッドアッセンブリ20には塗布剤の種類に対応してヘッド22,ヘッド23,ヘッド24が取り付けられており、ヘッドアッセンブリ20が移動しながら各ヘッドが適切に設定されたタイミングで塗布剤を噴射することで所望の塗布パターンを描くことができる。拡散防止用塗布剤26,高濃度n+ 用塗布剤25および低濃度n+ 用塗布剤24は、いずれもケイ素の有機化合物を有機溶媒と混合したもので、拡散防止用塗布剤26はドーパントとしての不純物を含んでおらず、高濃度n+ 用塗布剤25は五酸化二リンを5重量パーセント、低濃度n+ 用塗布剤24は五酸化二リンを0.5重量パーセントを含んだものである。・・・
【0009】
図2に、本発明を実施した太陽電池の製造方法の第2の実施例を示す。まず(a)に示すようにp型の導電性を有する単結晶シリコン基板111を用意し、(b)に示すようにインクジェット法により、高濃度用n+ 塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗布する。高濃度n+ 用塗布剤125は第1の実施例における高濃度n+ 用塗布剤25と同じものを、低濃度n+ 用塗布剤124は第1の実施例における低濃度n+ 用塗布剤24と同じものを用いた。本実施例でも高濃度n+ 用塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗り分け、高濃度n+ 用塗布皮膜132および低濃度n+ 用塗布皮膜131を形成した。基板111を200℃で乾燥した後、1000℃で30分、窒素と酸素との混合ガス中で熱処理を行い、ドーパントであるリンを拡散した。その結果、(d)に示すように基板111には高濃度n+ 領域142および低濃度n+ 領域141が形成される。次に(e)に示すように高濃度n+ 用塗布皮膜132および低濃度n+ 塗布皮膜131をフッ酸により除去し、(f)に示すように銀から成る負電極151および正電極152をスクリーン印刷により形成して太陽電池セルとした。なお、正電極152と隣接しているアルミニウム電極153は、p+ 層154を形成するためのものである。なお、本実施例の太陽電池における受光面は負電極151側のみである。」
ウ 「本実施例では基板211にp型の導電性を有するものを用いたが、n型の導電性を有するものを用いても良い。その場合、高濃度n+ 領域と高濃度p+ 領域との位置関係を入れ替えれば良い。」
エ 図2は次のものである。
(2)引用発明
上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「p型の導電性を有する単結晶シリコン基板111を用意し、インクジェット法により、高濃度用n+ 塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗布して、高濃度n+ 用塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗り分け、高濃度n+ 用塗布皮膜132および低濃度n+ 用塗布皮膜131を形成し、
基板111を200℃で乾燥した後、1000℃で30分、窒素と酸素との混合ガス中で熱処理を行い、ドーパントであるリンを拡散した結果、基板111には高濃度n+ 領域142および低濃度n+ 領域141が形成され、
次に高濃度n+ 用塗布皮膜132および低濃度n+ 塗布皮膜131をフッ酸により除去し、銀から成る負電極151および正電極152をスクリーン印刷により形成して太陽電池セルとした太陽電池の製造方法であって、基板にp型の導電性を有するものを用いたが、n型の導電性を有するものを用いても良くその場合は、高(低)濃度n+ 領域と高(低)濃度p+ 領域との位置関係を入れ替えれば良い、太陽電池の製造方法。」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に例えばスピンコート(回転塗布)法で半導体基板上に形成した不純物含有ガラス層を不純物拡散源とする固相-固相拡散方法に関する。
例えばバイポーラ型半導体集積回路(IC)の製造においては、従来半導体基板に埋没層を形成するには、エタノールまたはアセトンのような有機溶媒に、アンチモン(Sb)、砒素(As)、ほう素(B)、燐(P)のような不純物を含有した硅酸ガラス成分を溶融した液状体を基板上にスピンコートし、200〔℃〕程度の酸素雰囲気中で加熱して有機溶媒を飛散させ、不純物含有の硅酸ガラス膜を形成し、それを不純物拡散源として1000~1250〔℃〕の高温熱処理で不純物を拡散して埋没層を形成する。」(1頁左欄15行~右欄9行)
イ 「以下、本発明の方法の実施例を、添付図面を参照して説明する。
第1図には、シリコン半導体基板1上に約4000〔Å〕の膜厚に成長せしめられた二酸化シリコン(SiO2)膜2が通常の技術で不純物拡散層形成のための窓開きをなして示される。半導体基板1上にはまたスピンコート法によつて、例えばアンチモンの塩化物(SbCl2)を含む硅酸ガラス膜3が約2000〔Å〕の厚さに塗布されている。なお、珪酸ガラス膜3は、例えばSbCl2とエタノール(C2H5OH)またはアセトン(CH3COCH3)の如き有機溶媒を含むものである。4は後の工程で形成される拡散層を示す。」(2頁左上欄8行~最下行)
ウ 図1は次のものである。
(2)引用文献2に記載の事項
上記(1)によれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載の事項」という。)が記載されているものと認められる。
「スピンコート(回転塗布)法で半導体基板上に形成した不純物含有ガラス層を不純物拡散源とする固相-固相拡散方法において、
エタノールまたはアセトンのような有機溶媒に、アンチモン(Sb)、砒素(As)、ほう素(B)、燐(P)のような不純物を含有した硅酸ガラス成分を溶融した液状体を基板上にスピンコートし、200〔℃〕程度の酸素雰囲気中で加熱して有機溶媒を飛散させ、不純物含有の硅酸ガラス膜を形成し、それを不純物拡散源とする半導体装置の製造方法。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の、「p型の導電性を有する単結晶シリコン基板111を用意し、インクジェット法により、高濃度用n+ 塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗布して、高濃度n+ 用塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124とを塗り分け、高濃度n+ 用塗布皮膜132および低濃度n+ 用塗布皮膜131を形成」する工程(以下「工程A」という。)は、「基板にp型の導電性を有するものを用いたが、n型の導電性を有するものを用いても良くその場合は、高(低)濃度n+ 領域と高(低)濃度p+ 領域との位置関係を入れ替えれば良い」とされるから、「n型の導電性を有する単結晶シリコン基板を用意し、インクジェット法により、高濃度用p+ 塗布剤および低濃度p+ 用塗布剤とを塗布して、高濃度p+ 用塗布剤および低濃度p+ 用塗布剤とを塗り分け、高濃度p+ 用塗布皮膜および低濃度p+ 用塗布皮膜を形成」する工程(以下「工程A′」という。)であってよい。
そして、引用発明の上記工程A′の「単結晶シリコン基板」、「高濃度用p+ 塗布剤」、「低濃度p+ 用塗布剤」、「高濃度p+ 用塗布皮膜」及び「低濃度p+ 用塗布皮膜」は、本願発明1の「半導体基板」、「第1のp型拡散層形成組成物」、「(第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い)第2のp型拡散層形成組成物」、「(半導体基板の一方の面上の)部分領域(に付与された第1のp型拡散層形成組成物)」及び「(前記半導体基板の前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される面上であって、少なくとも)前記部分領域以外の領域(に付与された第2のp型拡散層形成組成物)」にそれぞれ相当するから、引用発明の上記工程Aと本願発明1の「半導体基板の一方の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記半導体基板の前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される面上であって、少なくとも前記部分領域以外の領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有し、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程」とは、「半導体基板の一方の面上の部分領域に、第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記半導体基板の前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される面上であって、少なくとも前記部分領域以外の領域に、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程」の点で一致する。
イ 上記「ア」より、引用発明の「基板111を200℃で乾燥した後、1000℃で30分、窒素と酸素との混合ガス中で熱処理を行い、ドーパントであるリンを拡散した結果、基板111には高濃度n+ 領域142および低濃度n+ 領域141が形成され」る工程は、「高(低)濃度n+ 領域と高(低)濃度p+ 領域との位置関係を入れ替え」ることが想定されるから、本願発明1の「前記第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物が付与された半導体基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程」に相当する。
ウ 引用発明の「銀から成る負電極151および正電極152をスクリーン印刷により形成」する工程は、本願発明1の「前記部分領域上に電極を形成する工程」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「半導体基板の一方の面上の部分領域に、第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記半導体基板の前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される面上であって、少なくとも前記部分領域以外の領域に、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物が付与された半導体基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程と、
前記部分領域上に電極を形成する工程と、
を有する太陽電池の製造方法。」
(相違点)本願発明1の「第1のp型拡散層形成組成物」及び「第2のp型拡散層形成組成物」は「p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する」のに対し、引用発明の「高濃度用p+ 塗布剤」及び「低濃度p+ 用塗布剤」は、「ガラス粉末」を含有するするものと特定されない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明の「高濃度用n+ 塗布剤125および低濃度n+ 用塗布剤124」に関して、引用文献1には「高濃度n+ 用塗布剤25および低濃度n+ 用塗布剤24は、いずれもケイ素の有機化合物を有機溶媒と混合したもので、・・・高濃度n+ 用塗布剤25は五酸化二リンを5重量パーセント、低濃度n+ 用塗布剤24は五酸化二リンを0.5重量パーセントを含んだものである」(上記「第4」「1」「(1)」「イ」)と記載されており、ガラス粉末を含有することの記載及び示唆はない。
また、引用文献2には、「スピンコート(回転塗布)法で半導体基板上に形成した不純物含有ガラス層を不純物拡散源とする固相-固相拡散方法において、エタノールまたはアセトンのような有機溶媒に、アンチモン(Sb)、砒素(As)、ほう素(B)、燐(P)のような不純物を含有した硅酸ガラス成分を溶融した液状体を基板上にスピンコートし、200〔℃〕程度の酸素雰囲気中で加熱して有機溶媒を飛散させ、不純物含有の硅酸ガラス膜を形成し、それを不純物拡散源とする半導体装置の製造方法」(引用文献2に記載の事項)が記載されているところ、当該「エタノールまたはアセトンのような有機溶媒に、アンチモン(Sb)、砒素(As)、ほう素(B)、燐(P)のような不純物を含有した硅酸ガラス成分を溶融した液状体」となす「硅酸ガラス成分」は、エタノールまたはアセトンのような有機溶媒に溶融した液状体となるべく有機基を有するものであって、この場合は、「硅酸ガラス成分」は「溶融」しているから、「ガラス粉末」とはいえない。
これに対して、相違点に係る本願発明1の「ガラス粉末」は、引用文献2に記載された事項の「溶融」している「硅酸ガラス成分」とは異なり、引用文献2に記載されたものではないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された事項から、相違点に係る本願発明1の「第1のp型拡散層形成組成物」及び「第2のp型拡散層形成組成物」は「p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する」という構成を容易に想到することはできない。
そして、本願発明1は、「第1のp型拡散層形成組成物」及び「第2のp型拡散層形成組成物」は「p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する」ことで、「ガラス粉末中のp型不純物は焼成中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によってp型拡散層形成組成物を付与した部分のみでなく裏面や側面にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。」(本願明細書段落【0013】)という顕著な効果を奏する。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、本願発明1の「第1のp型拡散層形成組成物」及び「第2のp型拡散層形成組成物」は「p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する」との構成を備えるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-013336