特許拒絶査定不服審判
2016-012020
表面電位分布計測装置および表面電位分布計測方法
- 審判番号
- 2016-012020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-258147外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月09日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東芝三菱電機産業システム株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人サクラ国際特許事務所
- 【請求人】国立大学法人 東京大学
- 【請求人代理人】特許業務法人サクラ国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-258147「表面電位分布計測装置および表面電位分布計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開、特開2013-113637、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年11月25日
拒絶査定: 平成28年4月26日(送達日:同年5月10日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年8月9日
手続補正: 平成28年8月9日
拒絶理由通知: 平成29年3月29日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年4月4日)
手続補正: 平成29年5月25日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成29年5月25日
第2 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンドに施された電界緩和システムの表面電位を計測する表面電位分布計測装置であって、
レーザ光を出射するレーザと、
前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶と、
前記ポッケルス結晶の他端面に設けられ、前記ポッケルス結晶の一端面から入射された前記レーザ光を入射方向とは反対方向に反射するミラーと、
インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を入射して、前記レーザ光の光強度として、前記ポッケルス結晶の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧に対応する検出光強度を検出する光検出器と、
試験前に行われる電圧校正処理において、前記ミラーの裏面に対して各々異なる入力電圧が印加されたときに、各々異なる前記入力電圧と前記ミラーの裏面に前記入力電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧との関係を示す入力電圧対出力電圧特性が格納された電圧校正データベースと、
試験時に行われる表面電位測定処理において、前記ミラーの裏面に前記電界緩和システムの表面の一部が試験箇所として配置された場合に、前記固定子コイルに電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧を試験時出力電圧とし、前記電圧校正データベースに格納された前記入力電圧対出力電圧特性から、前記試験時出力電圧に対応する入力電圧を前記電界緩和システムの表面電位として特定する演算部と、
を具備することを特徴とする表面電位分布計測装置。」
第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2011-22007号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
「【0001】
本発明は、回転電機の固定子コイルの非線形抵抗測定方法、および、非線形抵抗測定装置に関する。」
「【0027】
図3は、固定子コイルエンド24の断面、及び、その表面電位を測定する測定システム2の構成を示す図である。
【0028】
図示するように、測定システム2は、固定子コイルエンド24の表面電位を測定する表面電位計200と、表面電位計200で測定された表面電位を用いて電界緩和テープ(電界緩和層44)の特性を推定する情報処理装置(PC)100と、固定子コイルエンド24に高電圧の試験電圧(交流電圧)を印加する電源装置50と、を備える。
【0029】
固定子コイルエンド24(固定子コイル22の端部)には、コイル導体41の外周に、マイカを主成分とする主絶縁層(対地絶縁テープ)42が施されている。
・・・
【0032】
特に、低抵抗層43の端部(端面)においては、電位傾度が著しく大きくなり、部分放電、或いは、沿面放電が発生しやすくなる。したがって、低抵抗層43の端部で発生する部分放電、或いは、沿面放電を防ぐために、主絶縁層42表面には、電位傾度を緩やかにするための電界緩和層44が施されている。ここで、電界緩和層44は、低抵抗層43端の一部をラップするように巻回される。なお、本実施形態では、電界緩和層44の素材には、非線形電界緩和特性を有するシリコンカーバイド(SiC)が用いられる。
【0033】
表面電位計200は、電界緩和層44の複数地点で表面電位を測定する。表面電位計200には、一般に供試物に接触、或いは、被接触させて測定する方法がある。何れの場合でも表面電位計200は、固定子コイルエンド24に試験電圧が印加されている状態において、測定対象の地点にプローブ51を接触、或いは、接近させ、当該地点の表面電位を測定する。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンド24に施された主絶縁層(対地絶縁テープ)42の表面に施された電界緩和層44の複数地点で表面電位を測定する表面電位計200を備える測定システム2。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平7-181211号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、帯電体の表面電位分布、特に、感光体の表面電位分布を計測するための表面電位計測装置に関する。」
「【0004】一方、電気光学結晶を有する材料による表面電位センサを用い、そのポッケルス効果を利用することで感光体の表面電位分布を測定するようにしたものも提案されている。即ち、電気光学結晶内の屈折率分布(ポッケルス効果によって生ずるリターデイションの空間的な変化)を精度よく測定することで、感光体の表面電位分布を高分解能で測定し得るというものである。
【0005】図5を参照して、ポッケルス効果を利用した表面電位計の構成・動作について説明する。まず、電気光学結晶1を有する材料をベースとして感光体等の帯電体2に近接対向される表面電位センサ3は、前記電気光学結晶1の片面に誘電体ミラー4、他面に透明電極5を装着してなる。ここに、電気光学結晶1の点群と方位とを適当に選ぶことにより帯電体2に対して垂直な電界成分だけに対してポッケルス効果が生ずるように構成されている。また、表面電位センサ3に用いる電気光学結晶としては、KDP,ADP,BSO,LiNbO3 などが用いられる。
【0006】このような表面電位センサ3は光源6からのプローブ光に対して誘電体ミラー4の位置における電位分布に対応した偏光状態の変化(リターデイション)を生じさせることができる。まず、光源6から出射された光は偏光ビームスプリッタ7を通過することにより、その偏光子機能により、直線偏光となり、表面電位センサ3に入射される。表面電位センサ3からの反射光(出射光)は、再び偏光ビームスプリッタ7に入射することにより入射光と分岐されるとともに、その検光子機能により、表面電位センサ3で生ずる電気光学効果によって光の偏光状態が変化している場合には、光源6側からの偏光方向と直角な方向に偏光された光が生ずることになる。即ち、偏光ビームスプリッタ7を用いて偏光状態の変化を光強度変化に変換することで、表面電位を光強度の変化として観測することができる。この光強度を検出する受光素子(光電変換部)8としては、フォトダイオードを用いる方法や、CCDなどのカメラで2次元の情報として観測する方法がある。」
「【0028】しかして、図1はこのような基本思想に基づき請求項1,2,3及び5記載の発明に相当する実施例として構成した例を示すものであり、まず、光源6としては半導体レーザ6aが用いられいる。より具体的には、帯電体2として用いられている感光体(近赤外の半導体レーザ用感光体)2aが感光しないように1300nm,1500nmといった長波長の半導体レーザが用いられる。このような半導体レーザ6aにはその注入電流を制御する半導体レーザ変調回路9が変調手段として接続されている。これにより、半導体レーザ6aは一定なる変調周波数にて光強度変調された光を表面電位センサ3側に向けて出射することになる。」
したがって、上記引用文献2には、
「半導体レーザ6aが用いられる光源6と、
光源6から出射された光が入射される、ポッケルス効果が生ずるように構成されている電気光学結晶1を有する表面電位センサ3と、
電気光学結晶1の片面に装着される誘電体ミラー4と、
表面電位を光強度の変化として観測することができる受光素子(光電変換部)8と、
を有する表面電位計測装置。」
という技術的事項が記載されていると認められる。
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平5-196672号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真装置の感光体の表面電位を測定するために用いられる電位計の校正方法、及び電位計の異常検知方法に関するものである。」
「【0043】上記の構成において、電位センサ校正モードの実行により、電位センサ51の検出値VS を感光体21の表面電位VF に変換するために用いられる変換特性線Lの校正が行われる。この電位センサ校正モードを、マスターCPU40の制御動作を示す図8のフローチャートに基づいて、以下に説明する。尚、本実施例では、電位センサ51の電位出力特性がリニア(直線)のものについて記載するが、その特性が曲線の場合でも同様にして電位センサ51の校正が実施可能である。
【0044】電位センサ校正モードに入ると、マスターCPU40は、先ず、リレー47の接点をAからBに切り換え(S1)、現像バイアス電圧が感光体21のドラムボディに印加できるようにする。さらに、マスターCPU40は、帯電ユニット50にバイアス出力ON信号(REM)を出力する(S2)。
【0045】次に、マスターCPU40は、基準電圧印加動作が終了か否かの判断を行う(S3)。本実施例の場合、基準電圧印加動作を4回実行するようにプログラムされており、上記S3の判断を経て、先ず1回目の基準電圧印加動作が行われる。即ち、マスターCPU40は、基準電圧用PWM信号として、デューティ比αが40%のPWM信号を帯電ユニット50に出力する(S4)。
【0046】これにより、帯電ユニット50からは、図6に示すように、200Vのバイアス電圧が出力され、このバイアス電圧が感光体21に印加される。そして、このときの感光体21の表面電位が電位センサ51により検出されて所定のアナログ値に変換された検出値VS1が、マスターCPU40のA/Dポートに入力される(S5)。マスターCPU40は、上記A/Dポートでディジタル値に変換された検出値VS を、一旦RAMに格納する(S6)。
【0047】この後、再びS3へ戻り、上記S3~S5の処理が繰り返され、2回目以降の基準電圧印加動作が順次行われる。この場合、S4において、2回目はデューティ比αが60%、3回目はデューティ比αが80%、4回目はデューティ比αが100%のPWM信号が基準電圧用PWM信号として出力される。したがって、帯電ユニット50からは、図6に示すように、2回目は300V、3回目は400V、4回目は500Vのバイアス電圧が出力され、感光体21に印加される。
【0048】上記4回の基準電圧印加動作により、図1に示すように、感光体21の表面電位がVF1~VF4(VF1=200V、VF2=300V、VF3=400V、VF4=500V)のときの電位センサ51の検出値VS1~VS1が得られ、S3において基準電圧印加動作の終了が判断された後、マスターCPU40は、上記の検出値VS1~VS1からリニアリティを計算(傾き、切片を演算)して、変換特性線Lを求める。尚、電位センサ51の検出特性が直線ではなく曲線の場合、曲線情報を算出する。
【0049】そして、マスターCPU40は、算出した変換特性線Lの情報、即ち、傾きおよび切片を図4のRAM75に格納し(S8)、リレー47の接点をBからAに切り換える(S9)。」
「【0053】プロセス設定モードに入ると、マスターCPU40は、先ず、リレー47の接点をA側に切り換え(S21)、帯電ユニット50にバイアス出力ON信号(REM)を出力する(S22)と共に、所定のデューティ比αの基準PWM信号を出力する(S23)。
【0054】これにより、帯電ユニット50からは、デューティ比αに応じた所定のバイアス電圧が出力され、感光体21が帯電される。そして、このときの感光体21の表面電位が電位センサ51により検出され、この検出値VS がマスターCPU40に入力される(S24)。
【0055】このとき、マスターCPU40は、電位センサ校正モードにおいてRAM75にメモリした傾きおよび切片のデータから、感光体21の表面電位VF を算出する(S25)。そして、マスターCPU40は、算出された表面電位VF が所定の電位範囲にあるか否かを判定し(S26)、所定範囲から外れていればトラブルルーチンへ移行する(S27)。
【0056】一方、表面電位VF が所定の電位範囲にあれば、マスターCPU40は、算出された表面電位VF を目標値と比較し、表面電位VF を目標値に一致させるように帯電ユニット50へのPWM信号を調整しながら、複写プロセス条件を求める(S28)。そして、求めた複写プロセス条件をRAMにメモリし(S29)、プロセス設定モードを終了して主制御ルーチンへRETURNする(S30)。」
したがって、上記引用文献3には、
「表面電位を測定するために用いられる電位計の校正方法であって、
表面電位がVF1~VF4のときの電位センサ51の検出値VS1~VS1が得られ、上記の検出値VS1~VS1からリニアリティを計算(傾き、切片を演算)して、変換特性線Lを求め、算出した変換特性線Lの情報、即ち、傾きおよび切片をRAM75に格納し、
表面電位が電位センサ51により検出され、RAM75にメモリした傾きおよび切片のデータから、感光体21の表面電位VF を算出する方法。」
という技術的事項が記載されていると認められる。
4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特表2004-525361号公報)には、図面(Fig.1)とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、請求項1の上位概念にもとづく、電気光学媒体を用いて電圧を測定する方法、ならびに請求項8の上位概念にもとづく、電圧を測定するための装置に関する。」
「【0012】
図1は、角柱形のBGO結晶1の構成図を示し、そのBGO結晶は、二つの端面上に、電極2,3を構成するために、光を透過する導電性の材料から成る被膜を配備している。この一方の電極2は、地電位端子4として機能し、もう一方の電極3は、高電位端子5として配備されている。これらの電極2,3の間に印加される電圧は、Vで表記する。BGO結晶1の電極3を構成する端面上には、偏向用プリズム6が配置される一方、BGO結晶1の電極2を構成する端面上には、二つの直線偏光子(または検光子)9または10があり、それらにはコリメーター7または8が接続されている。
【0013】
偏光子9,10は、結晶の中心軸に対して45度の方向に向けられている。これらは、互いに平行とするか、または90度の角度で交差させることができる。
【0014】
発光ユニット13で生成された異なる波長λ1 ,λ2 の二つの光線11が、コリメーター7に入射される。これらの光線は、偏光子9を通過する。これらの光線は、電極2で偏光されて、BGO結晶1に入り、電極3を通って進み、偏向用プリズム6の境界面で反射されて、その後電極3、BGO結晶1、電極2、検光子10として機能する偏光子、およびコリメーター8を通り抜ける。これらの出力された光線は、数字12で表記されている。これらの光線は、検出・評価ユニット15内において、光線分割器14で分割され、それらの信号は、検出・評価ユニット15で個別に検出、評価される。信号の評価のために、検出・評価ユニット15は、評価手段16を有する。すなわち、この評価手段16において、方程式A1 =f1 (T,V)とA2 =f2 (T,V)を解いて、温度Tと電圧Vの値を求める。」
5.引用文献6について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開平6-342017号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電界強度測定装置に関し、詳しくは電気光学結晶の電界による屈折率の変化を利用し表面電位測定にも応用できる電界強度測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の電界強度測定装置には、静電誘導を用いたものや、電界の力やイオンの運動を利用したものなど種々のものがある(特開平4-359165号公報を参照)。最近では、その応答性の速さから電気光学効果を利用した方法が、高速な電子デバイスの評価方法として利用されている。上記方法は、電気光学結晶などの電気光学効果を有する光学素子を電子デバイスからの漏れ電界を検知する電界センサーとし、該センサの複屈折によるプローブ光の位相変化や偏光状態の変化を検出することにより電界の有無及びその強度を測定する方法である。上記方法による電界強度測定装置は、現在では帯域あたり1mV程度の最小検出電圧値が得られている。然し、電気光学結晶を用いた電界強度測定装置では、電気光学定数の大きな電気光学結晶が得られていないために、電界検出感度が低いという不具合があった。」
第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「電界緩和層44」は、本願発明1における「電界緩和システム」に相当する。また、引用発明の「測定システム2」は「複数地点で表面電位を測定する」ものであるから、表面電位の分布を測定するものといえ、本願発明の「表面電位分布計測装置」に相当する。
そうすると、引用発明における「回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンド24に施された主絶縁層(対地絶縁テープ)42の表面に施された電界緩和層44の複数地点で表面電位を測定する表面電位計200を備える測定システム2。」は、本願発明における「回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンドに施された電界緩和システムの表面電位を計測する表面電位分布計測装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンドに施された電界緩和システムの表面電位を計測する表面電位分布計測装置。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は「レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶と」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)本願発明1は「前記ポッケルス結晶の他端面に設けられ、前記ポッケルス結晶の一端面から入射された前記レーザ光を入射方向とは反対方向に反射するミラーと、インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を入射して、前記レーザ光の光強度として、前記ポッケルス結晶の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧に対応する検出光強度を検出する光検出器と」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点3)本願発明1は「試験前に行われる電圧校正処理において、前記ミラーの裏面に対して各々異なる入力電圧が印加されたときに、各々異なる前記入力電圧と前記ミラーの裏面に前記入力電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧との関係を示す入力電圧対出力電圧特性が格納された電圧校正データベースと、試験時に行われる表面電位測定処理において、前記ミラーの裏面に前記電界緩和システムの表面の一部が試験箇所として配置された場合に、前記固定子コイルに電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧を試験時出力電圧とし、前記電圧校正データベースに格納された前記入力電圧対出力電圧特性から、前記試験時出力電圧に対応する入力電圧を前記電界緩和システムの表面電位として特定する演算部と」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
上記引用文献2に記載されている技術的事項のうち、「半導体レーザ6aが用いられる光源6と、光源6から出射された光が入射される、ポッケルス効果が生ずるように構成されている電気光学結晶1を有する表面電位センサ3と」を有する点は、相違点1に係る構成のうち、「レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され」る「ポッケルス結晶と」を備える点と共通するといえる。しかしながら、相違点1に係る構成のうち、ポッケルス結晶が「レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶」であるとされている構成は、上記引用文献2,3,4,6のいずれにも記載されておらず、周知であるともいえない。
ここで、上記引用文献4のFig.1に示された「角柱形のBGO結晶1」(ポッケルス結晶)は、光伝搬方向に沿って長手方向に延びた形状を成しているようにも見えるのであるが、Fig.1の記載が実際のBGO結晶の形状を写したものであるのか、機能説明のための単なる模式図に過ぎないのかは不明である。また、Fig.1の記載が実際の形状を表すものであるとしても、そのような形状とする目的、理由は引用文献4中において何ら説明されておらず、そのような形状のBGO結晶を引用発明に適用しようとする動機を見いだすことはできない。そして、本願発明1は、相違点1に係る構成とすることにより、測定対象が高電圧でも測定可能とできるという特有の効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2、3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1ないし5、及び原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2ないし9について
本願請求項2ないし9は、本願請求項1を直接または間接的に引用するものであって、本願発明2ないし9も、本願発明1の「レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、上記引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明10について
本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、上記引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、本件補正前の請求項1-7,9-11について上記引用文献1ないし6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本件補正により補正された請求項1、10は、それぞれ「レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶」という事項とそれに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-10は、当業者であっても、上記引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
(1)当審では、請求項3の「前記ディテクタは、・・・」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正により、「前記光検出器は、・・・」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
(2)当審では、請求項4の「前記演 算部は、・・・」、「・・・との関係を示す試験 箇所対表面電位特性を生成する」、また請求項5の「前記演 算部は、・・・」、「・・・前記試験箇所対表面電位特性 を生成する、」なる記載が半角スペースを含んでおり不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正により当該半角スペースが削除された結果、この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-10は、当業者が引用文献1ないし6に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-012020