特許拒絶査定不服審判
2016-011911
絶縁電線の製造方法
- 審判番号
- 2016-011911
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-125939外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月08日
- 審決日
- 2017年04月04日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-125939「絶縁電線の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-251179、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月1日の出願であって、平成28年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日付けで手続補正がされ、同年5月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・備考
引用文献1(特に、段落【0014】、【0015】、【0020】、【0021】、【0043】乃至【0045】、【0048】、【図1】の記載を参照)には、
「0.1質量%以上2.0質量%以下のスズを含有するCu-Sn合金を直径0.08~0.22mmに伸線加工する第1工程と、
前記第1工程にて得られたCu-Sn合金線を熱処理によって引張強さ300MPa以上850MPa以下に調質する第2工程と、
前記第2工程を経た7本の細線を、所定の撚りピッチ(例:φ0.45mm×30倍、φ0.45mm×40倍)で撚り合わせる第3工程と、
を備えることを特徴とする絶縁電線の製造方法。」
が開示されている。
引用文献1に開示された発明において、Cu-Sn合金を直径0.08~0.22mmに伸線加工するか、本願発明のように直径0.21mm±0.008mmに細線加工するか、
所定の撚りピッチ(例:φ0.45mm×30倍、φ0.45mm×40倍)を、本願発明のように15mm±6mmとするかは、
求められる電線の規格に応じて決定されるような設計的事項である。
引用文献1に開示された発明は、『0.30wt%以上0.39wt%以下の錫を含有する素線(錫を含んだ銅合金)を焼鈍した後の引っ張り強さが400MPa以下である』という条件と重複しているのであるから、本願発明と同様に『伸び率10%を維持できる』ものを含んでいることは明らかである。
よって、出願人が主張している点に関して、本願発明と引用文献1に開示された発明との間には差異がなく、出願人の主張は採用しない。
引用文献1の段落【0014】には、「本発明の電線のサイズは特に限定はされないが、伝s年の軽量化のために、好ましくは0.22SQ以下のサイズ、より好ましくは0.13SQ以下に設定される。」と記載(下線は当方で付加)されている。
そうすると、引用文献1に開示された0.22SQ電線においても、『絶縁体に発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いる必要があり、且つ、その厚みは0.35mm以下とし、しかも仕上り外径を1.2mm』とする必要があることは自明である。
また、絶縁体の厚みを0.27mm以上とするか否かについては、電線に求められる許容電流と軽量化というトレードオフを鑑みて決定されるような、(0.22sq電線の規格を満たす範囲内、すなわち、絶縁体の厚み0.35mm以下の範囲内で)当業者が適宜選択する設計的事項である。
(そもそも、ヒューズを取り付ける趣旨を鑑みれば、ヒューズが溶断される前に発煙するような電線を採用することは通常あり得ない。)
よって、出願人が主張している点に関して、本願発明と引用文献1に開示された発明との間には設計上の微差しかなく、出願人の主張は採用しない。
<引用文献等一覧>
1.特開2011-096505号公報
第3 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は、平成28年4月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
0.30wt%以上0.39wt%以下の錫及び不可避不純物を含有する銅合金を直径0.21mm±0.008mmに細線加工する第1工程と、
前記第1工程にて得られた細線を焼き鈍しによって伸び率10%以上25%以下、及び引張強さ300MPa以上400MPa以下に調質する第2工程と、
前記第2工程を経た7本の細線を、撚りピッチ15mm±6mmで撚り合わせる第3工程と、
前記第3工程を経て得られた撚線に対して、発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を厚さ0.27mm以上0.35mm以下にて絶縁被覆し、仕上り外径を1.2mmとする第4工程と、
を備えることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程を経て得られた撚線は、導電率が72%以上であり、導体抵抗が95Ω/m以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線の製造方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2011-96505号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0011】
図1は本発明の自動車用電線の一態様の横断面図(電線の軸線と直交する断面の図)であり、当該図1に示すように、本発明の自動車用電線は、複数本の導体素線1からなる撚り線2が、絶縁層3によって被覆された構成を有する。
【0012】
撚り線2を構成する複数の導体素線1の材料には、通常、純銅、銅合金等が使用されるが、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の銅系金属以外の金属も使用可能である。これらの中でも、電気特性や端子圧着性などの点から銅合金が好ましく、特に好ましくはスズ含有量が0.1~2.0質量%のCu-Sn合金が挙げられる。なお、合金の場合、不可避的不純物が含まれていてもよい。
【0013】
なお、複数本の導体素線1は通常は生産性の点から、互いに同一の材料で作製されたものが使用されるが、本発明の目的を達成できるならば、互いに異なる材料で作製されたものでもよい。
【0014】
本発明の電線のサイズは特に限定はされないが、電線の軽量化のために、好ましくは0.22SQ以下のサイズ、より好ましくは0.13SQ以下に設定される。なお、電線サイズの下限は導体抗張力などの観点から0.06SQ以上が好ましい。従って、撚り線2を構成する複数本の導体素線1は、好ましくは線径が0.22mm以下のものが使用され、より好ましくは線径が0.18mm以下のものが使用される。ただし、線径が小さすぎると、導体抗張力が不足する(断線が生じやすくなる)傾向となるので、線径の下限は0.08mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましい。なお、生産性等の点から、通常は複数本の導体素線1は同一線径のものを使用するが、互いに異なる線径のものを組み合わせて使用してもよい。
【0015】
また、複数本の導体素線1の本数は、各素線の太さにもよるが、通常37本以下であり、典型例としては、37本、19本、7本等が挙げられる。特に、本数が7本であることにより、電線の横断面での、導体(撚り線2)の面積(A1)に対する導体(撚り線2)と絶縁層3の接触部の長さ(L1)の比(L1/A1)が大きくなるので、導体(撚り線2)と絶縁層3との密着力向上に有利に作用する。
【0016】
本発明の電線では、撚り線2を構成する複数本の導体素線1において、外層線(すなわち、撚り線2中の絶縁層3に接する導体素線)中の少なくとも1本以上が引張強さが350MPa以上の導体素線で構成されていることが必要である。これにより、電線の導体抗張力を高めることができ、配索時の断線等を回避できる。なお、電線の導体抗張力を十分に高めるには外層線中の半数以上の導体素線の引張強さが350MPa以上であるのが好ましく、外層線の全導体素線の引張強さが350MPa以上であるのがより好ましい。なお、外層線中に引張強さが350MPaより小さい導体素線を含む場合、それらの引張強さは少なくとも300MPa以上であることが必要である。これは、外層線が引張強さが300MPaより小さい導体素線を含むと、撚り線の易製造性や生産性が低下するためである。
【0017】
外層線に適用する引張強さが350MPa以上の高強度の導体素線は、好ましくは引張強さが450MPa以上である。ただし、引張強さが大き過ぎると、撚り線のわらいが生じやすくなり、可とう性が劣る傾向となるため、引張強さは850MPa以下であるのが好ましい。
【0018】
撚り線における外層線以外の導体素線の引張強さは特に制限されないが、十分に高い導体抗張力を得るためには、それらの素線もある程度高い引張強さを有することが必要であり、引張強さは300MPa以上が好ましく、より好ましくは350MPa以上、さらに一層好ましくは450MPa以上である。ただし、引張強さが大き過ぎると、撚り線のわらいが生じやすくなり、可とう性が劣る傾向となるため、引張強さは850MPa以下であるのが好ましい。
【0019】
導体素線の引張強さは、常法、すなわち、素線材料の選択、鋳造、伸線、熱処理等の種々の加工の組み合わせや加工の条件、線径の変更等によって調整することができる。なお、導体素線の引張強さは、JIS C 3002に準拠して求められる。
【0020】
本発明において好適に使用される導体素線の具体例を挙げると、スズの含有率が0.1~2.0質量%のCu-Sn合金を伸線、熱処理をすることで得られる、引張強さが300~850MPaのCu-Sn合金線(線径:0.08~0.22mm)が挙げられる。
【0021】
撚り線2は、複数本の導体素線1を公知の撚り線機を使用して定法に従って撚ったものである。撚り線の撚り方は、集合撚りでも、同心撚りでもよいが、素線の本数によって可能であれば同心撚りが好ましい。集合撚りは、素線を集めて撚り合わせただけのものであり、製造コストが安いというメリットがある。同心撚りは、図1の例のように、素線を同心円状に並べて、断面が正多角形や円形に近似する形状になるように撚り合わせたものである。
(中略)
【0024】
本発明の電線では、撚り線2の撚りピッチを、層芯径の30倍以上とすることが必要である。「撚りピッチ」とは、導体素線を、撚り合わせに沿ってたどったときに、撚りが一回転する間に進む距離である。「層芯径」とは、図1中の符号Dで示す、撚り線の断面における外層線を構成する素線のうちの両者の中心間の距離が最大となる2本の素線の中心間の距離(寸法)である。」(【0011】~【0024】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)
b)「【0029】
本発明の電線は自動車用であり、撚り線2を被覆する絶縁層3には高い難燃性能が必要である。したがって、絶縁層3には、通常、ベース成分である熱可塑性ポリマーに少なくとも難燃剤を配合した絶縁性材料が適用される。熱可塑性ポリマーとしては、ハロゲンフリー(HF)材料として、例えば、ポリプロピレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体(α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等)等のオレフィン系樹脂;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族系ポリエステル等の芳香族系ポリマー等が挙げられる。また、ハロゲンフリー(HF)でない材料としては、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性に優れる点で、ポリプロピレン、芳香族系ポリマー、ポリ塩化ビニルが好ましい。また、絶縁層にポリプロピレンを使用すると、ハーネスの組立て作業性も向上する。また、ポリプロピレンは撚り線2と絶縁層3との密着力を高める観点から、MFR(メルトフローレート)が0.1~10g/10min.の範囲にあるものが好ましい。なお、ここでいうMFRはJIS K 6760で定められた押出し形プラストメータを用い、JIS K 7210の測定方法に準拠して測定される。
(中略)
【0032】
絶縁層3の厚みは、特に限定されないが、耐摩耗性および難燃性が必要であることから、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましい。しかし、厚みが大きすぎる場合、軽量化、生産コスト(材料費)低減等において支障をきたすので、その上限は0.3mm以下が好ましく、0.25mm以下がより好ましい。なお、本発明でいう絶縁層3の厚みは、以下のようにして測定する。
電線の任意の4箇所の断面のそれぞれにおいて、絶縁層3の撚り線2の外層線を構成する個々の導体素線を被覆する部分の最小厚み部の厚みを測定し、それらの平均値を算出して絶縁層の厚みとし、さらにかかる4箇所の断面での絶縁層の厚みの平均値を計算する。
(中略)
【0035】
次に、撚り線を通電加熱機等を用いて100~250℃程度に加熱しておき、電線押出し機に上述の熱可塑性ポリマーを主成分とする絶縁性材料を投入し、加熱された撚り線上に絶縁性材料を押出す。この際、絶縁性材料の押出し温度は熱可塑性ポリマーの融点以上の温度であるが、熱可塑性ポリマーの融点よりも100℃を超えて高くならない範囲が一般的である。」
c)「【0043】
(実施例1~10、比較例1~6)
Cu-Sn合金(スズ含有量0.3質量%)を使用し、伸線加工、熱処理を行うことで、引張強さが異なる7種の素線(素線1:350MPa、素線2:380MPa、素線3:400MPa、素線4:450MPa、素線5:480MPa、素線6:520MPa素線7:300MPa)を作製した。なお、いずれの素線も線径は0.17mmとした。
【0044】
これら7種の素線と、絶縁性材料として、ポリプロピレン(MFR:5g/10min.)100質量部に対して水酸化マグネシウム(難燃剤)を150質量部配合したポリプロピレン組成物を使用して、図1の7本同心撚りの撚り線が絶縁層で被覆された構造からなる、表1に示す物性の実施例1~10及び比較例1~6の電線(層芯径:0.34mm、絶縁層の厚み:0.2mm、電線サイズ:0.13SQ)を製造した。
【0045】
なお、撚り線は、実施例1~9、比較例1~6では、表中の素線No.の素線を7本使用して同心撚りした後、内径(φ)が0.45mmの丸ダイスを使用して、円形圧縮加工を施した。実施例10では、素線1を1本と、素線7を6本の合計7本の素線を使用して、素線1が外層線に含まれるように、同心撚りした後、内径(φ)が0.45mmの丸ダイスを使用して、円形圧縮加工を施した。
【0046】
撚り線上への絶縁性材料の押出しは、電線押出し機(φ:30mm)に難燃性ポリプロピレン組成物を投入し、押出スピード500mm/min、押出し温度230℃で、100℃に加熱した撚り線上に押出した。
【0047】
絶縁性材料の冷却は、湯冷ゾーンと水冷ゾーンが区画された冷却槽にポリプロピレン組成物で外周が覆われた撚り線を湯冷ゾーンの側から通過させて、水冷ゾーンでポリプロピレン組成物を20℃まで冷却させることで行った。なお、その際、撚り線の走行速度(線速)を変更して、水冷ゾーンでのポリプロピレン組成物の低下温度をコントロールした。表1には、絶縁性材料(ポリプロピレン組成物)の水冷ゾーン進入時の温度と、水冷ゾーンでの絶縁性材料(ポリプロピレン組成物)の低下温度を示す。」
d)【0048】の表示1には、実施例1として、素線No.1,素線の引張強さ(MPa)350、撚りピッチ(層芯径の倍数)30の例が記載されている。
そして、【0024】の撚りピッチに関する記載及び【0044】の「層芯径:0.34mm」なる記載より、実施例1の撚りピッチは、10.2mmである。
上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献には、自動車用電線の製造方法として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数本の導体素線1からなる撚り線2が、絶縁層3によって被覆された構成を有する自動車用電線の製造方法であり、
撚り線2を構成する複数の導体素線1の材料には、不可避的不純物が含まれるスズ含有量が0.1~2.0質量%のCu-Sn合金が挙げられ、
電線のサイズを0.22SQ以下のサイズに設定するため、撚り線2を構成する複数本の導体素線1は、線径が0.22mmより好ましくは0.18mm以下0.08mmより好ましくは0.12mm以上であり、
複数本の導体素線1の本数は、7本等が挙げられ、
撚り線2を構成する複数本の導体素線1において、引張強さは300MPa好ましくは450MPa以上850MPa以下であり、
導体素線の引張強さは、素線材料の選択、鋳造、伸線、熱処理等の種々の加工の組み合わせや加工の条件、線径の変更等によって調整し、
撚り線2は、複数本の導体素線1を公知の撚り線機を使用して定法に従って撚り、
撚り線2の撚りピッチを、層芯径(撚り線の断面における外層線を構成する素線のうちの両者の中心間の距離が最大となる2本の素線の中心間の距離)の30倍以上とし、
撚り線2を被覆する絶縁層3には、難燃剤を配合したポリ塩化ビニル等が挙げられ、
絶縁層3の厚みは、耐摩耗性および難燃性が必要であるから、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.3mm以下が好ましく、
加熱された撚り線上に絶縁性材料を押出され、
実施例としては、
Cu-Sn合金(スズ含有量0.3質量%)を使用し、伸線加工、熱処理を行うことで、引張強さが350MPa、線径は0.17mmの素線を作製し、
撚り線は、素線を7本使用して同心撚りし、撚りピッチは、10.2mmとし、
撚り線上への絶縁性材料の押出しは、難燃性ポリプロピレン組成物を撚り線上に押出し、層芯径:0.34mm、絶縁層の厚み:0.2mm、電線サイズ:0.13SQとした、
自動車用電線の製造方法。」
第5 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「複数の導体素線1」は「不可避的不純物が含まれるスズ含有量が0.1~2.0質量%のCu-Sn合金」を「鋳造、伸線」して「線径が0.22mmより好ましくは0.18mm以下0.08mmより好ましくは0.12mm以上」に製造されており、実施例としては「Cu-Sn合金(スズ含有量0.3質量%)を使用」しているから、引用発明は、本願発明1の「0.30wt%以上0.39wt%以下の錫及び不可避不純物を含有する銅合金を直径0.21mm±0.008mmに細線加工する第1工程」と「0.30wt%以上0.39wt%以下の錫及び不可避不純物を含有する銅合金を細線加工する第1工程」である点で共通する工程を備えるといえる。
イ.引用発明の「複数の導体素線1」は、「引張強さは300MPa好ましくは450MPa以上850MPa以下」であり、「引張強さは、素線材料の選択、鋳造、伸線、熱処理等の種々の加工の組み合わせや加工の条件、線径の変更等によって調整」されるものであり、実施例としては「伸線加工、熱処理を行うことで、引張強さが350MPa」とされているから、引用発明は、本願発明1の「前記第1工程にて得られた細線を焼き鈍しによって伸び率10%以上25%以下、及び引張強さ300MPa以上400MPa以下に調質する第2工程」と「前記第1工程にて得られた細線を焼き鈍しによって引張強さ300MPa以上400MPa以下に調質する第2工程」である点で共通する工程を備えるといえる。
ウ.引用発明の「撚り線2」は、「複数本の導体素線1を公知の撚り線機を使用して定法に従って撚り」、実施例としては「素線を7本使用して同心撚りし、撚りピッチは、10.2mm」とされるものであるから、引用発明は、本願発明1の「前記第2工程を経た7本の細線を、撚りピッチ15mm±6mmで撚り合わせる第3工程」に相当する工程を備えるといえる。
エ.引用発明の「絶縁層3」は、「撚り線2を被覆する」もので「難燃剤を配合したポリ塩化ビニル等が挙げられ」、「厚みは、耐摩耗性および難燃性が必要であるから、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.3mm以下が好ましく」、「加熱された撚り線上に絶縁性材料を押出」されるものであるから、引用発明は、本願発明1の「前記第3工程を経て得られた撚線に対して、発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を厚さ0.27mm以上0.35mm以下にて絶縁被覆し、仕上り外径を1.2mmとする第4工程」と「前記第3工程を経て得られた撚線に対して、ポリ塩化ビニル樹脂組成物を絶縁被覆する第4工程」である点で共通する工程を備えるといえる。
オ.引用発明の「自動車用電線の製造方法」は、本願発明1の「絶縁電線の製造方法」に相当する。
したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。
〈一致点〉
「0.30wt%以上0.39wt%以下の錫及び不可避不純物を含有する銅合金を細線加工する第1工程と、
前記第1工程にて得られた細線を焼き鈍しによって引張強さ300MPa以上400MPa以下に調質する第2工程と、
前記第2工程を経た7本の細線を、撚りピッチ15mm±6mmで撚り合わせる第3工程と、
前記第3工程を経て得られた撚線に対して、ポリ塩化ビニル樹脂組成物を絶縁被覆する第4工程と、
を備える絶縁電線の製造方法。」
〈相違点〉
〈相違点1〉
「第1工程」において、本願発明1は、「直径0.21mm±0.008mmに細線加工」するものであるのに対し、引用発明は、「線径が0.22mmより好ましくは0.18mm以下0.08mmより好ましくは0.12mm以上」にするものであり、実施例としては「線径は0.17mmの素線を作製」するものである点。
〈相違点2〉
「第2工程」において、本願発明1は、「伸び率10%以上25%以下」に「調質する」ものであるのに対し、引用発明は、どのような伸び率に調質するのか特定されていない点。
〈相違点3〉
「第4工程」において、本願発明1は、「発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を厚さ0.27mm以上0.35mm以下にて絶縁被覆し、仕上り外径を1.2mm」とするものであるのに対し、引用発明は、絶縁性材料のポリ塩化ビニル樹脂の発煙温度が特定されておらず、絶縁層の厚みは、耐摩耗性および難燃性が必要であるから、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.3mm以下が好ましく、またポリ塩化ビニル樹脂を絶縁性材料として用いた場合の電線の外形は特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1,3について検討する。
本願明細書の【0014】に「この絶縁電線の製造方法によれば、0.22sq電線においては、絶縁体に発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いる必要があり、且つ、その厚みは0.35mm以下とし、しかも仕上り外径を1.2mmとしないと規格を満足しない。」、【0036】に「なお、発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いる点、絶縁層20の厚さが0.35mm以下である点、及び、仕上り外径を1.2mmとする点は規格であるため、本実施形態では、その規格を満足するように製造されることとなる。」と記載されるように、「絶縁体に発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用い、絶縁層20の厚さが0.35mm以下、仕上り外径を1.2mm」とすることは、0.22sq電線の規格であるから、「電線のサイズを0.22SQ以下のサイズに設定」するものである引用発明においても、ポリ塩化ビニル等の絶縁層3として発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用い、絶縁層の厚さが0.35mm以下、電線の仕上り外径を1.2mmとすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
また、本願明細書の【0031】に「この導体10の断面積は、素線11の直径が0.21mm-0.008mmである場合、・・・すなwち(当審注:「すなwち」は「すなわち」の誤記と認める。)、実質の断面積は0.22mm2よりもやや大きくなる。」と記載されており、0.22sqサイズの電線が略0.22mm2の導体断面積を有するものであるから、「電線のサイズを0.22SQ以下のサイズに設定」するものである引用発明においても、「直径0.21mm±0.008mmに細線加工」することも、当業者であれば容易になし得たことである。
しかしながら、引用発明は、難燃性の点から、絶縁層の厚さが0.15mm以上がより好ましいものであって、引用文献には、直径0.21mm±0.008mmの細線を撚り合わせた撚線に対して、発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を厚さ0.27mm以上にて絶縁被覆することは、記載も示唆もされておらず、引用発明において、撚り線2を被覆する発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物の絶縁層の厚みを0.27mm以上に限定することが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本願発明1は、発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を厚さ0.27mm以上にて絶縁被覆することにより、どのような電流が導体に流れたとしても、7.5Aヒューズと共に用いた場合に、発煙より先にヒューズが切れるようになっており、電線が発煙しないという明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.請求項2について
請求項2は請求項1を引用する請求項であり、本願発明2も、本願発明1の「細線の直径を0.21mm±0.008mm」とする構成及び「撚線に対して」「発煙温度170度のポリ塩化ビニル樹脂組成物を0.27mm以上にて絶縁被覆する」構成と同一の構成を備えるものである。
したがって、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基づいて容易に発明できたものとは認められない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1,2は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-011911