特許拒絶査定不服審判
2016-011702
ワイヤレスデバイスにおけるインピーダンス整合回路の適応同調
- 審判番号
- 2016-011702
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-531932外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月04日
- 審決日
- 2017年09月20日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】クゥアルコム・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】福原 淑弘
- 【請求人代理人】井関 守三
- 【請求人代理人】岡田 貴志
- 分類
- P18 .536-WY (H04B) / P18 .537-WY (H04B) / P18 .121-WY (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-531932「ワイヤレスデバイスにおけるインピーダンス整合回路の適応同調」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日国際公開、WO2013/052277、平成26年10月 6日国内公表、特表2014-526857、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2011年(平成23年)9月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月16日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年4月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成27年10月26日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年2月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年3月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後当審において平成29年8月1日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年8月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1-24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明24」という。)は、平成29年8月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
インピーダンス整合回路の複数の設定に対する情報を記憶するように構成されたメモリと、
前記インピーダンス整合回路のための測定値および前記複数の設定に対する前記情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択するように構成された制御ユニットと、を備える装置であって、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含み、前記インピーダンス整合回路は、直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える、
装置。
【請求項2】
前記インピーダンス整合回路の性能が、前記複数の設定のうちのそれぞれについて予め特徴付けられ、前記メモリは、前記複数の設定に対する前記インピーダンス整合回路の前記性能を示す情報を記憶するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定が、ピーク性能が取得された異なった周波数に関連し、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定は、前記ピーク性能が取得された前記周波数に基づいて順序づけされる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記メモリが、前記複数の設定のうちのそれぞれのために、周波数または前記設定が適用可能である周波数の範囲、前記インピーダンス整合回路内の少なくとも1つのスイッチのための少なくとも1つのスイッチ設定、前記インピーダンス整合回路内の少なくとも1つの可変リアクタンス素子のための少なくとも1つの制御設定、またはそれらの組み合わせを示す情報を記憶するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記測定値が、送出電力、反射減衰量、および負荷インピーダンスのうちの少なくとも1つに関する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットが、ワイヤレスデバイスの動作周波数に基づいて前記インピーダンス整合回路のための初期設定を選択し、前記インピーダンス整合回路のための前記測定値に基づいて、前記複数の設定の中で次に高い設定、または次に低い設定を選択するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記インピーダンス整合回路のための前記測定値を周期的に受信し、前記測定値に基づいて、前記インピーダンス整合回路のための新規設定を選択するべきか、または現在の設定を維持するべきか、を周期的に決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御ユニットが、センサを介して取得される、ワイヤレスデバイスのためのコンテキスト情報にさらに基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
負荷回路と、
インピーダンス整合回路のための測定値および複数の設定に対する情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路のために選択された前記複数の設定のうちの1つに基づいて、前記負荷回路のためにインピーダンス整合を行うように構成された前記インピーダンス整合回路と、を備える装置であって、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含み、前記インピーダンス整合回路は、直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える、
装置。
【請求項10】
前記負荷回路がアンテナを備え、前記インピーダンス整合回路が、前記アンテナのためにインピーダンス整合を行う、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記負荷回路が電力増幅器を備え、前記インピーダンス整合回路が、前記電力増幅器のために出力インピーダンス整合を行う、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記負荷回路が、低雑音増幅器(LNA)を備え、前記インピーダンス整合回路が、前記LNAのために入力インピーダンス整合を行う、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
インピーダンス整合回路のための測定値を取得することと、
前記インピーダンス整合回路のための前記測定値および複数の設定に対する情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択することと、を備えるインピーダンス整合を行う方法であって、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含み、前記インピーダンス整合回路は、直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える、
方法。
【請求項14】
前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定に対する前記情報を記憶すること
をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記記憶することが、
前記複数の設定に対する前記インピーダンス整合回路の性能を示す情報を記憶することを備え、前記インピーダンス整合回路の前記性能は、前記複数の設定のうちのそれぞれについて予め特徴付けられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記測定値が、送出電力、反射減衰量、および負荷インピーダンスのうちの少なくとも1つに関する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記選択することが、
ワイヤレスデバイスの動作周波数に基づいて、前記インピーダンス整合回路のための初期設定を選択することと、
前記インピーダンス整合回路のための前記測定値に基づいて、前記複数の設定の中で次に高い設定または次に低い設定を選択することと
を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記測定値を取得することが、前記インピーダンス整合回路のための前記測定値を周期的に取得することを備え、前記選択することは、前記測定値に基づいて、前記インピーダンス整合回路のための新規設定を選択するべきか、または現在の設定を維持するべきか、を周期的に決定することを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
インピーダンス整合回路のための測定値を取得するための手段と、
前記インピーダンス整合回路のための前記測定値および複数の設定に対する情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択するための手段と、を備える装置であって、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含み、前記インピーダンス整合回路は、直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える、
装置。
【請求項20】
インピーダンス整合回路の前記複数の設定に対する前記情報を記憶するための手段
をさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記記憶するための手段が、
前記複数の設定に対する前記インピーダンス整合回路の性能を示す情報を記憶するための手段を備え、前記インピーダンス整合回路の前記性能は、前記複数の設定のうちのそれぞれについて予め特徴付けられる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記測定値が、送出電力、反射減衰量、および負荷インピーダンスのうちの少なくとも1つに関する、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記選択するための手段が、
ワイヤレスデバイスの動作周波数に基づいて、前記インピーダンス整合回路のための初期設定を選択するための手段と、
前記インピーダンス整合回路のための前記測定値に基づいて、前記複数の設定の中で次に高い設定または次に低い設定を選択するための手段と
を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記測定値を取得するための手段が、前記インピーダンス整合回路のための前記測定値を周期的に取得するための手段を備え、前記選択するための手段は、前記測定値に基づいて前記インピーダンス整合回路のための新規設定を選択するべきか、または現在の設定を維持するべきか、を周期的に決定するための手段を備える、請求項19に記載の装置。」
第3 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-130372号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(記載箇所は段落番号等で表示)
(1) 「【0010】
以下、図面を参照して本発明による整合器を、空中線及び無線機からなる無線通信装置に適用する実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図である。図1に示す整合器20は、無線機10と複数のHF(high frequency)アンテナA~N間のインピーダンス整合を取るための整合器である。
(中略)
【0014】
整合回路22及び前置整合回路23は、制御部24によってデジタル方式でリレー制御される整合回路である。整合回路22及び前置整合回路23の回路定数は、制御部24からのリレー駆動信号により切替えられる。
本実施形態では、整合回路22は理論上最も整合範囲が広いL型整合回路を具備しているものとする。図2及び図3は、L型整合回路の例を示す回路図である。整合回路22は、図2に示すL型整合回路221及び図3に示すL型整合回路222の一方又は両方を備えているものとする。
(中略)
【0017】
図2及び図3に示すL型整合回路のように理論上最も整合範囲が広い回路を採用した場合であっても、可変コンデンサC1,C2及び可変コイルL1,L2の可変範囲は有限である。図1に示すように、アンテナインピーダンスの範囲が0.1Ω~10kΩ程度と広いHFアンテナA~Nが複数備えられていると、整合回路22のみでは整合がとれないインピーダンス範囲が生じる。前置整合回路23は、この整合が取れない範囲を補完するために設けられる。前置整合回路23は、整合回路22の可変コイル及び可変コンデンサの可変範囲内で、HFアンテナA~Nのアンテナインピーダンスと整合が取れるようにするための補助整合回路である。
【0018】
図4は、前置整合回路23に備えられる整合回路素子を図示した回路図の一例を示す。図4に示す回路(以下、並列整合回路231と称する)では、コイルL11、コイルL12、コンデンサC13、C14及びC15が信号ラインと接地の間に並列に接続されている。コイルL11、コイルL12、コンデンサC13、C14及びC15はそれぞれ、スイッチS11、S12、S13、S14、及びS15を介して信号ラインに接続されている。コイルL11とL12の間に、これらのコイルと並列に1つ以上のコイル又はコンデンサが接続されていてもよい。また、同様にコンデンサC14とC15の間に、これらのコンデンサと並列に1つ以上のコイル又はコンデンサが接続されていてもよい。
【0019】
図5は、前置整合回路23に備えられる整合回路素子を図示した回路図の他の一例を示す。図5に示す回路(以下、直列整合回路232と称する)では、コイルL21、コイルL22、コンデンサC23及びC24が信号ラインと直列に接続されている。また、コイルL21、コイルL22、コンデンサC23及びC24それぞれに並列に、スイッチS21、S22、S23及びS24が接続されている。コイルL21とL22の間に、これらのコイルと直列に1つ以上のコイル又はコンデンサが接続されていてもよい。また、同様にコンデンサC23とC24の間に、これらのコンデンサと直列に1つ以上のコイル又はコンデンサが接続されていてもよい。
【0020】
制御部24は、図示しないマイクロプロセッサ(MPU)、プログラムメモリ、及びワークメモリを備え、整合器20の動作全体を制御する。制御部24は、誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロとなるように、整合回路22及び前置整合回路23へ供給されるリレー駆動信号を制御する。整合回路22では、リレー駆動信号に応じて可変コイルL1と可変コイルL2のインダクタンス、及び可変コンデンサC1と可変コンデンサC2のキャパシタンスが変更される。また、前置整合回路23では、リレー駆動信号に応じて各スイッチが切り替えられる。
【0021】
制御部24は、記憶部25、アンテナ検出部28、周波数検出部29、整合処理部30、及びテーブル書き換え部31を備えている。
記憶部25は、例えばフラッシュメモリ等の記憶装置からなり、アンテナ情報記憶部26及び順番テーブル27を所定の記憶領域に格納している。アンテナ情報記憶部26は、整合器20に接続されるHFアンテナA~Nのインピーダンス特性の情報を予め記憶している。順番テーブル27は、前置整合回路23における回路定数の設定順序を記憶している。前置整合回路23の回路特性は、このプリセットテーブル27に記憶された順序に従って、上述の各スイッチが切り替えられることで順次設定される。
【0022】
前置整合回路23の回路定数は、周波数及び接続されているHFアンテナによって最適な値が異なる。このため、整合器20に接続されているHFアンテナ及び電波信号の周波数に応じて、前置整合回路23の回路定数を、後述の整合動作によって設定する必要がある。
(中略)
【0031】
続いて、以上のように構成された整合器20において行なわれる整合動作について説明する。
図6は、制御部24の制御の下で行なわれるインピーダンス整合処理を示すフローチャートである。
まず、アンテナ検出部28が、整合器20に接続されているHFアンテナを検出する(ステップS61)。このステップS61は、整合器20において初めて整合動作を行う場合に実行される。アンテナ検出部28は、誤差検出回路21において検出された誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)から、現在接続されているHFアンテナのインピーダンス特性を検出し、アンテナ情報記憶部26に記憶された各HFアンテナの特性と比較する。比較結果から、整合器20に電気的に接続されているHFアンテナが検出される。
【0032】
次に、周波数検出部29が、無線信号の周波数を検出する(ステップS62)。信号の周波数は、例えば誤差検出回路21に入力された信号を周波数カウンタによって検出したり、外部入力される信号に基づいて検出される。 整合処理部30は、整合回路22及び前置整合回路23にリレー駆動信号を供給して整合動作を行なう(ステップS63)。整合動作の詳細は図7に示される。
【0033】
整合処理部30は、誤差検出回路21が検出する誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロとなるように、整合回路22及び前置整合回路23の回路定数を制御する(ステップS72)。すなわち、整合処理部30は、検出された周波数に(更に初回の整合時には検出されたアンテナにも)応じて、順番テーブル27において1番目に設定されている回路定数の組合せが前置整合回路23で設定されるように、整合回路22及び前置整合回路23にリレー駆動信号を供給する。
【0034】
そして、整合処理部30は、誤差検出回路21によって検出される誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロになったか否かを判定する(ステップS73)。誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロではない場合(ステップS73でNo)、整合処理部30は、順番テーブル27に記憶された順序に従って、回路定数の次の組合せを前置整合回路23に設定する(ステップS72)。
【0035】
一方、誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロとなった場合(ステップS73でYes)、整合処理部30は、整合回路22及び前置整合回路23に供給されるリレー制御信号を固定する(ステップS74)。
続いて整合処理部30は、誤差検出回路21の進行波電力(Pf)と反射波電力(Pr)を取り込む(ステップS75)。整合処理部30は、進行波電力(Pf)と反射波電力(Pr)からVSWR(電圧定在波比)の値を算出し、算出したVSWRの値が所定の閾値より小さいか否かを判定する(ステップS76)。
【0036】
算出されたVSWRの値が処理の閾値以上であれば(ステップS76でNo)、ステップS72の処理に戻り、順番テーブル27に記憶された順序に従って前置整合回路23の回路定数を設定し、誤差信号の抵抗成分(R)と位相成分(φ)がゼロとなるよう以降の処理を繰り返す。
【0037】
一方、算出されたVSWRの値が処理の閾値より小さければ(ステップS76でYes)、インピーダンス整合を完了する。 整合動作が完了したら図6の処理に戻り、テーブル書き換え部31は、整合処理部30による整合処理結果に基づいて、順番テーブル27に格納された回路定数の設定順序を変更する(ステップS64)。テーブル書き換え部31は、整合が取られた回路定数の組合せを、全ての周波数について、順番テーブル27で1番目の順序となるようにする。すなわち、整合がとれた回路定数の組合せを常に順番テーブル27の1番目とすることで、整合時間を短縮する。
【0038】
図8及び図9は、順番テーブル27の書き換えの一例を示す図である。図8は、書き換え前の順番テーブル27の記憶内容の一例を示す。図8に示す例ではでは、各周波数(F1,F2,…,Fn)について、HFアンテナAに対応する回路定数の組合せ(a1,a2,…,an)が1番目に、HFアンテナBに対応する回路定数の組合せ(b1,b2,…,bn)が2番目に、HFアンテナCに対応する回路定数の組合せ(c1,c2,…,cn)が3番目に格納されている。」
(2)
(3)
2 引用発明
(1) 段落0010及び0014の記載から、引用文献1には、「整合器20は、無線機10と複数のHF(high frequency)アンテナA~N間のインピーダンス整合を取るための整合器であり、整合回路22及び前置整合回路23は、制御部24によってデジタル方式でリレー制御される整合回路であり、整合回路22及び前置整合回路23の回路定数は、制御部24からのリレー駆動信号により切替えられ」る装置が記載されているといえる。
(2) 段落0038の記載から、順番テーブル27は、HFアンテナA-Cに対応する回路定数の組合せに対する情報を記憶するように構成された順番テーブル27といえる。
(3) 段落0035ないし段落0037の記載から、引用文献1の整合処理部30は、VSWR及び回路定数の組合せに対する情報に基づいて、整合回路の複数の設定のうちの1つを選択するように構成された整合処理部30といえる。
(4) 図4、図5及び段落0018及び段落0019の記載から、引用文献1の前置整合回路23は、スイッチS11ないしS15を介して信号ラインに接続された、信号ラインと接地の間に並列に接続されたコイルL11及びコイルL12、コンデンサC13、C14及びC15、又は、他の一例として、スイッチS21ないしS24と並列に、信号ラインと直列に接続されたコイルL21及びL22、コンデンサC23及びC24を備えているといえる。
以上を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「整合器20は、無線機10と複数のHF(high frequency)アンテナA~N間のインピーダンス整合を取るための整合器であり、整合回路22及び前置整合回路23は、制御部24によってデジタル方式でリレー制御される整合回路であり、整合回路22及び前置整合回路23の回路定数は、制御部24からのリレー駆動信号により切替えられ、
HFアンテナA-Cに対応する回路定数の組合せに対する情報を記憶するように構成された順番テーブル27と、
VSWR及び前記回路定数の組合せに対する情報に基づいて、整合回路の複数の設定のうちの1つを選択するように構成された整合処理部30と、を備える装置であって、
前置整合回路23は、スイッチS11ないしS15を介して信号ラインに接続された、信号ラインと接地の間に並列に接続されたコイルL11及びコイルL12、コンデンサC13、C14及びC15、又は、他の一例として、スイッチS21ないしS24と並列に、信号ラインと直列に接続されたコイルL21及びL22、コンデンサC23及びC24を備えている
を備える、装置。」
3 引用文献2-6について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-109708号公報)の請求項1及び3の記載からみて、当該引用文献2には、
「送信部で変調した信号を送信用アンテナから電波として送信する無線送信機であって、
外部からの電子制御に応じて、前記送信部と前記送信用アンテナとの間のインピーダンス整合(マッチング)をとるマッチング部と、
前記送信部及び前記マッチング部を制御する制御部と、
前記送信用アンテナから放出された電波を受信する受信用アンテナと、
前記受信用アンテナにより受信された信号の出力レベルを測定する測定部とを備え、
前記制御部は、前記送信部を制御してテスト信号を生成させ前記送信用アンテナから送信させ、前記受信用アンテナにより受信され前記測定部により測定されたテスト信号の出力レベルに応じて、その出力レベルが最大となるように前記マッチング部を電子制御するマッチング調整を行う無線送信機であって、 前記制御部は、定期的に前記マッチング調整を行う無線送信機。」という技術的事項が記載されていると認められる。
(2) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2000-124718号公報)の要約の記載からみて、当該引用文献3には、「【課題】 信頼性かつ耐久性のある非接触方式で携帯電話機の本体に挿脱可能なアンテナの位置を検出するアンテナ位置検出装置を提供する。
【解決手段】 携帯電話機の本体に挿脱可能なホイップアンテナ30を非接触式かつ可動部のない検出手段、たとえば、マグネット71と磁気感応センサ72とからなる磁気的センサが検出する。携帯電話機はセンサで検出したアンテナ位置に応じて整合回路を設定して、アンテナ位置に応じた整合をとる。検出手段としては、発光素子と受光素子とからなる光学的センサ、超音波センサなどを用いることができる。」という技術的事項という技術的事項が記載されていると認められる。
(3) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平4-368022号公報)の段落0007、及び第5図の記載からみて、当該引用文献4には、「回路構成を切替えるための切換器12と、この切換器12を制御する制御手段13を備えた整合回路」という技術的事項が記載されていると認められる。
(4) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2008-061116号公報)の段落0021-0023、及び第2図の記載からみて、当該引用文献5には、「各スイッチ(SW1~6)は制御部6から出力される制御信号により各スイッチを切り替え制御され、スイッチ(SW1)とスイッチ(SW2)、スイッチ(SW4)とスイッチ(SW5)の切り替えでインダクタ、キャパシタ、整合素子(受動素子)を選択しないとの選択可能であり、スイッチ(SW3)の各入力とグランド(GND)間、スイッチ(SW6)の各入力とグランド(GND)間にはそれぞれ並列に選択可能なキャパシタとインダクタが設けられている整合回路。」という技術的事項が記載されていると認められる。
(5) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平8-195684号公報)の段落0017、及び第2図の記載からみて、当該引用文献6には、「整合器3を誘導性とするための可変直列インダクタンスL(以下、単に「L」という。)と、容量性とするための可変分岐キャパシタンスC(以下、単に「C」という。)と、実抵抗が送信機1の公称インピーダンスより低い場合のCL結合とするための可変分岐キャパシタンス結合手段K1(以下、単に「K1」という。)と、実抵抗が送信機1の公称インピーダンスより高い場合のLC結合とするための可変分岐キャパシタンス結合手段K2(以下、単に「K2」という。)とからなる整合器3。」という技術的事項が記載されていると認められる。
第4 対比・判断
1 本願発明1-12、及び、本願発明19-24について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の、「整合回路22」及び「前置整合回路23」は、制御部24によってデジタル方式でリレー制御される「整合回路」であり、整合回路22及び前置整合回路23の回路定数を、制御部24からのリレー駆動信号により切替えることにより、整合器20は、無線機10と複数のHF(high frequency)アンテナA~N間のインピーダンス整合を取るから、引用発明の整合回路22及び前置整合回路23を含む「整合回路」は、本願発明1にいう「インピーダンス整合回路」に対応する。
引用発明の、HFアンテナA-Cに対応する回路定数の組合せに対する情報を記憶するように構成された「順番テーブル27」は、本願発明1が備えるのと同様の「インピーダンス整合回路の複数の設定に対する情報を記憶するように構成されたメモリ」といえる。
引用発明の「VSWR及び前記回路定数の組合せに対する情報に基づいて、整合回路の複数の設定のうちの1つを選択するように構成された整合処理部30」は、本願発明1が備えるのと同様の「インピーダンス整合回路のための測定値および複数の設定に対する前記情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択するように構成された制御ユニット」といえる。
引用発明の「前置整合回路23」が備える、「スイッチS11ないしS15を介して信号ラインに接続された、信号ラインと接地の間に並列に接続されたコイルL11及びコイルL12、コンデンサC13、C14及びC15」はシャント素子として再構成可能に接続可能なリアクタンス素子といえ、また、他の一例である「スイッチS21ないしS24と並列に、信号ラインと直列に接続されたコイルL21及びL22、コンデンサC23及びC24」は、直列素子として再構成可能に接続可能なリアクタンス素子といえるから、引用発明の「整合回路」は、本願発明1の「インピーダンス整合回路」と同様に「直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含む」といえる。
以上を踏まえると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 インピーダンス整合回路の複数の設定に対する情報を記憶するように構成されたメモリと、
前記インピーダンス整合回路のための測定値および前記複数の設定に対する前記情報に基づいて、前記インピーダンス整合回路の前記複数の設定のうちの1つを選択するように構成された制御ユニットと、を備える装置であって、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、直列素子またはシャント素子のどちらかとして再構成可能に接続可能な少なくとも1つのリアクタンス素子を含む、
装置。」
(相違点)
本願発明1のインピーダンス整合回路は、「直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(2) 相違点についての判断
相違点に係る本願発明1のインピーダンス整合回路の「直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、および“T”構成をサポートし、ここにおいて、前記インピーダンス整合回路は、2つの回路の組を備え、前記組の各々は、第1の回路と第2の回路を含み、前記第1の回路はバラクタと前記バラクタに並列に接続された第1のスイッチを含み、前記第2の回路はインダクタと前記インダクタに直列に接続された第2のスイッチを含み、前記2つの組は直列に接続され、前記組の各々における前記第1の回路と前記第2の回路は並列に接続され、前記第1のスイッチは、開かれている状態及び閉じられている状態に切り替え可能であり、前記第2のスイッチは、前記インダクタを、接地状態、フロート状態、及び、前記第2の回路が前記第1の回路に並列に接続される状態に切り替える」という構成(以下、「相違点に係る構成」という。)は、上記引用文献2-6には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明1に従属する本願発明2-8、本願発明9-12、及び、本願発明19-24についても、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明13-18について
本願発明13-18は、本願発明19-24に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第5 原査定の概要および原査定についての判断
原査定(平成28年3月30日付け拒絶査定)は、請求項1-26について、上記引用文献1ないし6に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年8月14日付け手続補正により補正された請求項1-24は、それぞれ上記相違点に係る事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-24は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審の平成29年8月1日付け拒絶理由について
1 当審では、「1.請求項1-26について」として、「図4及び、図5Aないし図5Fに示された回路では“Pi”構成をサポートし得ず、また、明細書(発明の詳細な説明)段落0034の記載、及び、技術常識を考慮しても、「直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、“Pi”構成、および“T”構成」をすべてサポートし得る具体的な回路が開示されているとはいえない」から、「直列構成、シャント構成、“L”構成、“R”構成、“Pi”構成、および“T”構成をサポート」し得るインピーダンス整合回路がどのような回路なのか、明細書(発明の詳細な説明)及び図面、並びに出願時の技術常識を考慮しても不明であり、発明が明確とはいえず、また、当該発明を当業者が実施し得る程度に発明の詳細な説明が記載されているとはいえず、加えて、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月14日付けの補正において、請求項1、9、13、19から「“Pi”構成」を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。
2 当審では、「2.請求項1-26について」とし、「「なお」とは、「ある事柄を述べた後で他の事柄を言い添える時に使う語。」(広辞苑第六版)であり、請求項1、9、15、21において、「なお、」で接続された発明特定事項と、それぞれの請求項に記載された装置又は方法との関係が明らかでない。」との拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月14日付けの補正において、請求項1、9、19の当該箇所が「~を備える装置であって、ここにおいて、~」と、また、請求項13の当該箇所を「~を備えるインピーダンス整合を行う方法であって、ここにおいて、~」と補正された結果この拒絶の理由は解消した。
3 当審では、「3.請求項1-26について」として「請求項1、9、15、21には、誤記と思われる「前記前記インピーダンス整合回路は」との記載があり発明が明確とはいえない。 」との拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月14日付けの補正において、請求項1、9、13、19の当該箇所が「前記インピーダンス整合回路は」と補正された結果この拒絶の理由は解消した。
4 当審では、「 4.請求項10、11について 」として、請求項10に記載された発明特定事項と、請求項10が引用する請求項9に記載された発明特定事項とが、また、請求項11に記載された発明特定事項と、請求項11が引用する請求項9に記載された発明特定事項とが、それぞれ技術的に整合せず、発明が明確とはいえないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月14日付けの補正において、補正前の請求項10及び11を削除する補正がされた結果この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-011702