特許拒絶査定不服審判
2016-011246
通信システム、通信制御装置及び不正情報送信防止方法
- 審判番号
- 2016-011246
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-144038外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月26日
- 審決日
- 2017年11月27日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人名古屋大学
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 【請求人】株式会社オートネットワーク技術研究所
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 【請求人】住友電装株式会社
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 【請求人】住友電気工業株式会社
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 分類
- P18 .121-WY (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-144038「通信システム、通信制御装置及び不正情報送信防止方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 4日出願公開、特開2016- 21623、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月14日の出願であって、平成27年3月19日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月22日付けで手続補正がされ、同年7月24日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年9月28日付けで手続補正がされ、同年11月13日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成28年1月25日付けで手続補正がされ、同年4月14日付けで同年1月25日付けの補正が却下され、同年4月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由(進歩性)について
・請求項 1、5、6
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2012-249107号公報
2.畑 正人他,CANにおける不正送信阻止方式の実装と評価,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.342,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年12月5日,第15-22頁
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1、5-6に「CANプロトコルによって情報の送受信を行う」という事項を追加する補正は、請求項1、5-6の「通信システム」を限定する記載であるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、当初明細書の段落【0019】に記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成28年7月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
複数の通信装置が共通の通信線を介して接続されたCANプロトコルによって情報の送受信を行う通信システムにおいて、
前記通信装置は、
他の通信装置へ送信する情報に認証情報を付与する認証情報付与手段と、
該認証情報付与手段により前記認証情報が付された送信情報を前記通信線へ出力し、該送信情報を他の通信装置へ送信する情報送信手段と
を有し、
前記通信線に接続され、前記通信線へ出力された送信情報を取得する取得手段、該取得手段が取得した送信情報に含まれる認証情報が正しいものであるか否かを判定する認証情報判定手段、及び、前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に前記送信情報を前記通信装置に破棄させる情報破棄手段を有する通信制御装置を備え、
前記通信制御装置の前記情報破棄手段は、前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に、前記通信装置の情報送信手段が送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前に、所定の情報を前記通信線へ出力し、
前記他の通信装置は、前記通信線より前記所定の情報を受信した場合、前記通信装置から送信された前記送信情報を破棄するようにしてあること
を特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信装置の情報送信手段が送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前とは、前記送信情報に含まれるEnd Of Frameの出力期間中に、所定の情報を前記通信線へ出力し、
前記他の通信装置は、前記通信線より前記End Of Frameの期間中の1ビットを取得して前記1ビットを判定した結果、前記所定の情報を受信した場合、前記通信装置から送信された前記送信情報を破棄するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信装置及び前記通信制御装置は、鍵情報を共有し、
前記通信装置の認証情報付与手段は、前記鍵情報に基づいて認証情報を生成して送信情報へ付与し、
前記通信制御装置の前記認証情報判定手段は、前記鍵情報に基づいて前記送信情報に含まれる前記認証情報の判定を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記複数の通信装置は、それぞれ異なる前記鍵情報を有し、
前記通信制御装置は、各通信装置の前記鍵情報を有していること
を特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
複数の通信装置が接続された共通の通信線に接続され、CANプロトコルによって情報の送受信を行う通信制御装置であって、
前記通信線へ出力された送信情報を取得する取得手段と、
該取得手段が取得した送信情報に含まれる認証情報が正しいものであるか否かを判定する認証情報判定手段と、
前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に前記送信情報を前記通信装置に破棄させる情報破棄手段と
を備え、
前記情報破棄手段は、前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に、前記通信装置の情報送信手段が送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前に、所定の情報を前記通信線へ出力して、前記所定の情報を受信した前記通信装置に前記送信情報を破棄させるようにしてあること
を特徴とする通信制御装置。
【請求項6】
複数の通信装置が共通の通信線を介して接続されたCANプロトコルによって情報の送受信を行う通信システムにて、前記通信線に対する不正な情報送信を防止する不正情報送信防止方法であって、
前記通信装置は、他の通信装置へ送信する情報に認証情報を付与して前記通信線へ出力し、
前記通信線へ出力された送信情報を通信制御装置が取得し、
取得した送信情報に含まれる認証情報が正しいものであるか否かを前記通信制御装置が判定し、
前記認証情報が正しいものでないと判定した場合に、前記通信装置の情報送信手段が送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前に、前記通信制御装置が所定の情報を前記通信線へ出力し、
前記他の通信装置は、前記通信線より前記所定の情報を受信した場合、前記通信装置から送信された前記送信情報を破棄すること
を特徴とする不正情報送信防止方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-249107号公報(以下「引用文献1」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0009】
(第1実施形態)
図1から図10は、第1実施形態に係る図である。図1は、本実施形態の通信システムの構成例を示す図である。本実施形態の通信システム1は、複数の通信装置100及び少なくとも1つの認証装置200を含み、各装置は通信線等のネットワークNWを介して接続される。
【0010】
本実施形態の通信システム1は、通信装置100がメッセージを送信する際に、送信するメッセージのデータフィールドの空き領域を検出する。空き領域が検出された場合に当該通信装置100が送信する複数のメッセージを入力データとして送信側メッセージ認証子を生成して送信側メッセージ認証子を空き領域に格納したメッセージを送信する。ネットワークNWを介して接続する認証装置は、1つの認証子を用いた複数のメッセージを対象とするメッセージ認証処理を遂行する。」
【図1】
「【0011】
図2は、本実施形態の通信システム1で送受信されるメッセージのデータ構造の一例を示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態のメッセージ構造は、へッダ、データフィールド、トレーラの各フィールドから構成される。」
「【0014】
本実施形態のメッセージは、データ本体Dのデータ長d2がデータフィールドのデータ長d1よりも小さい場合、データフィールド内に未使用領域が含まれ、例えば、データ本体Dが1バイトであれば、データフィールドの残り7バイトは、利用可能な領域(空き領域)となる。
【0015】
本実施形態では、この利用可能なデータフィールドの空き領域を利用し、複数のメッセージデータを対象とした1つのメッセージ認証子Tが当該空き領域に格納される。データ本体D及びメッセージ認証子Tを含むメッセージは、送信元である通信装置100から送信先の通信装置100と認証装置200とに伝送され、認証装置200においてメッセージ認証子Tを用いたメッセージ認証が遂行される。」
「【0019】
図2(d)は、認証子付きメッセージM3の一例を示す図である。認証子付きメッセージM3は、例えば、図2(c)で示したデータフィールド内の空き領域にメッセージ認証子Tが格納されたメッセージである。空き領域には、当該空き領域のデータ長以下のデータ長のメッセージ認証子Tが格納され、空き領域のデータ長よりも短いメッセージ認証子Tも格納される。」
【図2】
「【0021】
通信装置100は、通信部101、制御部102、記憶部103、鍵管理部104、認証子生成部105、認証子付与部106、及びアプリケーション部107を含んで構成される。これらの各部は、制御部102によって制御される。また、記憶部103、鍵管理部104、認証子生成部105、及び認証子付与部106は、本実施形態のメッセージ認証子処理手段として機能する。
【0022】
通信部101は、ネットワークNWとの間の通信インタフェース制御を遂行し、ネットワークNWに生成されたメッセージデータを出力して他の通信装置100及び認証装置200に伝送したり、他の通信装置100からネットワークNWに出力されたメッセージを受信する通信制御を行う。」
「【0028】
認証子付与部106は、アプリケーション部107で生成されるデータ本体Dのデータ長d2からデータ本体Dが格納されるメッセージのデータフィールドの空き領域を検出する。認証子付与部106は、データ本体Dのデータ長d2がデータフィールドのデータ長d1に基づく所定値よりも小さいか否かを判別する処理を遂行し、当該データ本体Dに対応するメッセージのデータフィールドに所定値以上の空き領域が存在するか否かを検出する。
【0029】
認証子付与部106は、データフィールドに所定値以上の空き領域が検出された場合に、認証子生成部105に制御部102を介してメッセージ認証子生成命令を送信する。また、認証子付与部106は、認証子生成部105で生成されたメッセージ認証子Tを、空き領域が所定値以上と判別されたデータフィールドの当該空き領域に格納する。
【0030】
アプリケーション部107は、通信装置100が備える不図示のタイマー部からの時刻通知や他の通信装置100からのメッセージ受信などのイベントを契機として、送信するメッセージに含まれるデータ本体Dを生成する機能を遂行する。例えばCAN通信の場合、このデータ本体Dは、他の通信装置100に送信する制御データである。」
「【0048】
本実施形態では、生成されたメッセージ認証子を圧縮処理によりメッセージ認証子Tのデータ容量(データ長)を低減し、圧縮メッセージ認証子σをデータフィールドの空き領域に格納した認証子付きメッセージを生成する。」
「【0060】
図5は、本実施形態の通信装置100のメッセージ送信処理の動作フローの一例を示す図である。また、図6は認証子付与処理、図7は認証子生成処理の動作フローの一例を示す図であり、本実施形態のメッセージ送信処理は、認証子付与処理及び認証子生成処理が含まれる。」
「【0068】
認証子生成部105から圧縮メッセージ認証子σが出力されると、図6において認証子付与部106は、圧縮メッセージ認証子σをメッセージM(n)のデータフィールドにおけるデータ本体D(n)の直後に格納する(S204)。認証子付与部106は、圧縮メッセージ認証子σを格納した後、認証子付与処理を終了し、メッセージM(n)のデータフィールドを認証子付与部106から制御部102へ出力する。
【0069】
制御部102は、図5においてメッセージM(n)のデータフィールド以外の部分であるヘッダH及びトレーラCを生成し(S104)、通信部101のインタフェースを通じてネットワークNWに、認証子付きメッセージとしてメッセージM(n)を送信する(S105)。制御部102は、メッセージM(n)の記憶部103に記憶されているメッセージ送信履歴情報を、送信時刻Tsに現在時刻を書き込み確認し、メッセージM(n)のメッセージステータスSmを“送信済”に更新する(S106)。」
「【0075】
次に、本実施形態の認証装置200について説明する。
【0076】
図1に示すように、認証装置200は、通信部201、制御部202、記憶部203、鍵管理部204、認証子検証部205を含んで構成される。これらの各部は、制御部202によって制御される。また、記憶部203、鍵管理部204、認証子検証部205は、本実施形態の認証手段として機能する。」
「【0091】
図9に示すように、認証装置200は、通信装置201を介してネットワークNWから通信装置100から送信されるメッセージを受信し、メッセージM(n)を受信したことを契機に、メッセージ受信処理を開始する(S401)。」
「【0097】
認証子検証部205は、メッセージM(n)のデータフィールドに格納されている圧縮メッセージ認証子σと、生成した圧縮メッセージ認証子σ’とを比較し、両者が一致する場合には、制御部202に検証成功の旨の検証結果を通知し、一致しない場合には、制御部202に検証失敗の旨の検証結果を通知する(S507)。
【0098】
制御部202は、認証子検証部205からの検証結果に基づいて、検証成功の場合には(S404のYES)、記憶部203のメッセージM(m),…,M(n)の全ての検証ステータスSvを“検証成功”に更新し(S406)、検証失敗の場合には(S404のNO)、記憶部203のメッセージM(m),…,M(n)の全ての検証ステータスSvをエラー処理(S405)をして“検証失敗”に更新する(S406)。圧縮メッセージ認証子σ’が検出されたメッセージM(n)のデータ本体D(n)に対応する検証ステータスSvのみを“検証成功”又は“検証失敗”に更新してもよい。
【0099】
制御部202は、検証失敗の場合(S404のNO)、関連する通信装置100、ステップS405のエラー処理として、例えば、記憶部203の送信元情報Isから特定されるメッセージ送信元の通信装置100に通信部201のインタフェースを介してエラーメッセージ(例えば、再送メッセージ)を送信したり、記憶部203のメッセージIDから特定されるメッセージ送信先の通信装置100に通信部201のインタフェースを介してエラーメッセージ(例えば、該当メッセージに関する処理中止メッセージなど)を送信する、エラー処理を遂行できる。」
「【0102】
このように本実施形態の通信システム1は、通信負荷を抑制したメッセージ認証を行うことができる。
【0103】
すなわち、複数のメッセージを入力データとしてメッセージ認証子を生成し、メッセージ認証子をデータフィールドに空き領域があるメッセージにのみ付与するので、ネットワークの通信負荷を最小限に抑えつつ、メッセージの完全性を保証した通信環境を実現できる。
【0104】
送受信されるメッセージに格納可能なデータのデータ長が短い通信、例えば、自動車の制御システムなどに利用されるCAN通信(Controller Area Network)通信のような、データを格納するデータフィールドが8バイトと短く、リアルタイム制御を要求される場合であっても、本実施形態の通信システムを車両用の電子制御装置(ECU)に適用することで、メッセージの種別を問わずに複数のメッセージを入力データとする1つのメッセージ認証子を生成してデータ量を低減させつつ、データ本体Dを含むメッセージのデータフィールドの空き領域を利用してメッセージ認証子を送信することで、ネットワークの通信負荷を最小限に抑えたメッセージ認証を実現することが可能となる。」
【0104】には、CAN通信のような場合であっても、本実施形態の通信システムを適用することが出来る旨記載されているから、引用文献1の通信システムは、「CAN通信によって情報の送受信を行う」通信システムであるといえる。
通信装置100が、他の通信装置100に送信するにあたり、認証子付与部106は、対応するメッセージのデータフィールドに所定値以上の空き領域が存在するか否かを検出し、検出された場合に、認証子生成部105で生成されたメッセージ認証子Tを圧縮処理した圧縮メッセージ認証子σを、空き領域が所定値以上と判別されたデータフィールドの当該空き領域に格納するから、通信装置100は、「他の通信装置100へ送信するメッセージのうち空き領域のあるメッセージに圧縮メッセージ認証子を付与する認証子付与部106」を有しているといえる。
また、通信装置100の制御部102が、認証子付与部106が制御部102へ送信したメッセージM(n)のデータフィールドにヘッダH及びトレーラCを生成して、通信部101のインタフェースを通じてネットワークNWに、認証子付メッセージとしてメッセージM(n)を送信するから、通信装置100の通信部101は、認証子付メッセージM(n)をネットワークに送信していることは明らかである。
つまり通信装置100は、「認証子付与部106により前記認証子付メッセージをネットワークへ出力し、該認証子付メッセージを他の通信装置へ送信する通信部101」を有しているといえる。
また、認証装置200は、通信部201を介してネットワークNWから通信装置100から送信されるメッセージを受信する装置であって、通信装置100から送信されるメッセージは、認証子付メッセージであるから、認証装置200は、「前記ネットワークNWに接続され、前記ネットワークNWへ出力された認証子付メッセージを受信する通信部201」を有しているといえる。
また、認証装置200の認証子検証部205は、メッセージM(n)のデータフィールドに格納されている圧縮メッセージ認証子σと、生成した圧縮メッセージ認証子σ’とを比較して、検証成功か検証失敗かを制御部202に通知するから、認証装置200は、「該受信した認証子付メッセージに含まれる圧縮メッセージ認証子が正しいものであるか否かを判定する認証子検証部205」を有していることは明らかである。
さらに、認証装置の制御部202は、検証失敗の場合にメッセージ送信先の通信装置100に該当メッセージに関する処理中止メッセージなどのエラーメッセージを送信するエラー処理を遂行するから、認証装置200は、「認証子検証部205から検証失敗を通知された場合に前記他の通信装置100に対するエラー処理を遂行する制御部202」を有している。
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「複数の通信装置100が共通の通信線のネットワークNWを介して接続されたCAN通信によって情報の送受信を行う通信システムにおいて、
前記通信装置100は、
他の通信装置100へ送信するメッセージのうち空き領域のあるメッセージに圧縮メッセージ認証子を付与する認証子付与部106と、
該認証子付与部106により前記圧縮メッセージ認証子が付された認証子付メッセージを前記ネットワークNWへ出力し、該認証子付メッセージを前記他の通信装置100へ送信する通信部101と
を有し、
前記ネットワークNWに接続され、前記ネットワークNWへ出力された前記認証子付メッセージを受信する通信部201、該受信した認証子付メッセージに含まれる圧縮メッセージ認証子が正しいものであるか否かを判定する認証子検証部205、及び、認証子検証部205から検証失敗を通知された場合に前記他の通信装置100に対するエラー処理を遂行する制御部202を有する認証装置200を備え、
前記認証装置200の前記制御部202は、前記圧縮メッセージ認証子が正しいものでないと前記認証子検証部205が判定した場合に、エラーメッセージを前記ネットワークNWを介して前記他の通信装置100に送信し、
前記他の通信装置100は、該当メッセージに関する処理中止を行うこと
を特徴とする通信システム。」
2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された、畑 正人他,CANにおける不正送信阻止方式の実装と評価,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.342,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年12月5日,第15-22頁(以下「引用文献2」という。下線は当審が付与。)には、
「4.2.基本アイディア
基本アイディアとしては、各ECUがバス上を流れるデータを監視し、自らが送信するメッセージのIDが自分以外のECUがバス上に送信した際に、これを不正メッセージとして検知する。そして、不正メッセージの送信を検知した場合は、即座にエラーフレームの送信を行うことで、その不正メッセージ送信を中断させる。このように、不正に送信されるデータフレームの送信自体を阻止することができる点がこの方式の特徴である。なお、不正送信阻止方式はメッセージ送信機能をもつ全てのECUに適用することもできるが、特に重要なメッセージを送るECUにのみ適用することもできる。実際に、不正なメッセージを中断させるためには、フレーム単位ではなく、ビットレベルでの処理が必要であり、さらに一般的にはエラーフレームの送信処理がCANコントローラーで行われるため、CANコントローラの追加機能として方式を導入する。」
の記載があるから、
「各ECUがバス上を流れるデータを監視し、自らが送信するメッセージのIDが自分以外のECUがバス上に送信した際に、これを不正メッセージとして検知して、即座にエラーフレームの送信を行うこと。」(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)
が記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「通信装置100」は、本願発明1の「通信装置」に、
引用発明の「CAN通信」は、本願発明の「CANプロトコル」に、
引用発明の「共通の通信線のネットワークNW」は、本願発明1の「共通の通信線」に、
引用発明の「圧縮メッセージ認証子」は、本願発明1の「認証情報」に、
引用発明の「認証子付与部106」は、本願発明1の「認証情報付与手段」に、
引用発明の「通信部101」は、本願発明1の「情報送信手段」に、
引用発明の「認証装置200」は、本願発明1の「通信制御装置」に、
引用発明の「通信部201」は、本願発明1の「取得手段」に、
引用発明の「認証子検証部205」は、本願発明1の「認証情報判定手段」に、
引用発明の「検証失敗」は、本願発明の「認証情報が正しいものでない」に、
それぞれ含まれる。
また、引用発明の「制御部202」と本願発明1の「情報破棄手段」は、どちらも「認証情報が正しいものでないと認証情報判定手段が判定した場合に所定の処理を行う手段」で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「複数の通信装置が共通の通信線を介して接続されたCANプロトコルによって情報の送受信を行う通信システムにおいて、
前記通信装置は、
他の通信装置へ送信する少なくとも一部の情報に認証情報を付与する認証情報付与手段と、
該認証情報付与手段により前記認証情報が付された送信情報を前記通信線へ出力し、該送信情報を他の通信装置へ送信する情報送信手段と
を有し、
前記通信線に接続され、前記通信線へ出力された送信情報を取得する取得手段、該取得手段が取得した送信情報に含まれる認証情報が正しいものであるか否かを判定する認証情報判定手段、及び、前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に所定の処理を行う手段を有する通信制御手段を備え、
前記通信制御手段の所定の処理を行う手段は、
前記認証情報が正しいものでないと前記認証情報判定手段が判定した場合に、所定の情報を前記通信線へ出力し、
前記他の通信装置は、前記通信線より前記所定の情報を受信した場合、前記所定の情報に対応する処理を行う
通信システム。」
(相違点)
(相違点1)
一致点の「少なくとも一部の情報」が本願発明1では送信する情報各々であるのに対し、引用発明では、「送信するメッセージのうち空き領域のあるメッセージ」に限定される点。
(相違点2)
一致点の「所定の処理を行う手段」が、本願発明1では「前記送信情報を前記通信装置に破棄させる情報破棄手段」であるのに対し、引用発明では、「前記他の通信装置100に対するエラー処理を遂行する手段」である点。それに伴い、一致点の「所定の情報」を出力するタイミングが、本願発明では「前記通信装置の情報送信手段が送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前」であるのに対し、引用発明では「空き領域のあるメッセージを受信した後」である点。
(相違点3)
一致点の「前記所定の情報に対する処理」が、本願発明1は、前記通信装置から送信された前記送信情報を破棄するのに対し、引用発明は、他の通信装置は該当メッセージに対する処理中止を行う点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず上記相違点1について検討する
本願発明1は、「送信情報の全てを前記通信線へ出力し終える前」に所定の情報を出力することで、「他の通信装置」が「前記通信装置から送信された前記送信情報を破棄する」ものであり、そのため各フレーム(各「情報」)に対して個別に認証を行うことを前提としているのに対し、他方、引用発明は、「空き領域のあるメッセージ」である認証子付メッセージM(n)の認証子を使用して検証を行い、認証が「検証失敗」の場合に、該当メッセージに関する処理中止メッセージなどのエラーメッセージを送信しており、引用発明の「該当メッセージ」とは、引用文献1の【0032】【0098】に記載される「データ本体D」を構成する「メッセージM(m)、・・・M(n)」であるから、複数のメッセージに対して「空き領域のあるメッセージ」により一括して認証を行うことを前提としている点で両者の発明の前提となる構成が異なっている。
そして、引用発明の「空き領域のあるメッセージ」以外の「メッセージ」は、そもそも認証子が物理的に格納できない構造であることから、本願発明のように各メッセージについて認証できるようにする余地がないことは明らかである。
なお、引用文献2記載の技術的事項は、各ECUがバス上を流れるデータを監視し、自らが送信するメッセージのIDが自分以外のECUがバス上に送信した際に、これを不正メッセージとして検知して、即座にエラーフレームの送信を行うものであって、上記相違点1に係る技術とは関係しない。
したがって、相違点2、3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、容易に発明することができたとはいえない。
2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明5-6について
本願発明5-6も、相違点1に係る構成を備えるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
「第6 対比・判断」の項に記載した理由により、本願発明1-6は当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-011246