特許拒絶査定不服審判
2016-010658
車両制御装置
- 審判番号
- 2016-010658
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-261135外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月14日
- 審決日
- 2017年04月17日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (B60R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-261135号「車両制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月25日出願公開、特開2015-116911号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月18日の出願であって、平成27年10月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年12月21日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたものの、平成28年5月2日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し、平成28年7月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1~5に係る発明は、以下の引用文献1、2、4、5に基づいて、また、請求項6に係る発明は、引用文献1~5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-140015号公報
2.実願昭63-042795号(実開平01-145705号)のマイクロフィルム
3.特開2013-043575号公報
4.特開2012-153329号公報
5.特開2003-182474号公報
理由(概要)
引用文献4にもあるように、車両が走行中が停車中かを識別するのに、車速センサの検出信号だけでなく、変速機のシフト位置を検出するセンサの検出信号を用いたり、さらには、複数のセンサやスイッチの信号の組み合わせによることは周知技術であるし、また、引用文献5にもあるように、少なくとも3つ以上のセンサで車両の状態を監視し、それぞれの異常の有無を判定した上で、異常の生じていないセンサで車両の状態を判定することは周知技術であるから、引用文献1及び引用文献2に記載された発明および引用文献5で例示した周知技術に基づいて、本願請求項1に係る発明のようにすることは当業者が容易に想到し得たものである。
第3 本願発明
本願請求項1~6に係る発明は、平成28年7月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される発明であり、その請求項1に係る発明は以下のとおりである(請求項1に係る発明を以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
運転者により押圧操作可能に車室に設けられた押圧スイッチと、
車両が走行中であるか停車中であるかを判定する走行判定手段と、
前記車両が停車中であると前記走行判定手段にて判定された場合における前記押圧スイッチの通常押圧操作による前記車両の駆動源の始動・停止の切替制御又は車載機器のオン・オフの切替制御を許可し、前記車両が走行中であると前記走行判定手段にて判定された場合における前記押圧スイッチの前記通常押圧操作による前記駆動源の停止制御を禁止し且つ前記押圧スイッチの前記通常押圧操作とは異なる押圧操作である特殊押圧操作による前記駆動源の停止制御を許可する車両状態切替制御手段と、
を備える車両制御装置であって、
複数のユニットのそれぞれから前記走行判定手段に送信されて前記車両が走行中であるか停車中であるかを示す複数の走行判定信号のそれぞれにおいて異常が生じているか否かを判定する異常判定手段をさらに備え、
前記走行判定手段は、複数の前記走行判定信号のうちの少なくとも1つに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定され且つ当該異常判定手段にて異常が生じていないと判定された前記走行判定信号の全てが停車中であることを示す停車信号である場合に前記車両が停車中であると判定し、複数の前記走行判定信号の全てに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定された場合に前記車両が走行中であると判定する、
ことを特徴とする車両制御装置。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本発明は、車両用エンジン始動停止装置に関するものである。」
(1b)「【0002】
従来より、機械鍵の回動を行うことなくエンジンの始動及び停止を行うことを可能としたエンジン始動装置がある。このエンジン始動装置は、運転者に所持されるIDコードを記憶した車両キー、IDコード読み取り装置、イモビライザECU、プッシュ式のエンジン始動スイッチ、エンジンECU、エンジンECUに始動信号を出力する電源切換ECUなどを備えている。」
(1c)「【0004】
運転者がエンジン始動スイッチを押圧操作すると、電源切換ECUはイモビライザECUにIDコードの照合結果を出力するよう要求する。そして、IDコード同士が一致したとの照合結果を取得した場合に、電源切換ECUは、エンジンの始動を指示する信号をエンジンECUに送信する。」
(1d)「【0020】
また、請求項7に記載の車両用エンジン始動停止装置では、複数の接点を有し、複数の接点それぞれからオン及びオフを示す信号を出力するスイッチと、車両の車速度を検出する車速センサと、車速度が所定車速以上の時、複数の接点からの信号の論理積を行い、論理積の結果がオン信号である状態が所定時間継続する場合、エンジン停止信号を出力する制御手段と、エンジン停止信号に基づいてエンジンを停止するエンジン制御手段とを備えることを特徴とするのである。
【0021】
これによれば、スイッチの複数の接点の全てからオン信号が所定時間継続して出力されなければ、エンジンは停止されない。従って、体の一部が不注意にスイッチに触れた場合などにエンジンを停止させてしまうことを防止できる。また、1つの接点のオン故障で誤ってエンジンを停止させてしまうことを防止できる。」
(1e)「【0024】
車載機1は、スタート/ストップスイッチ2、イモビライザECU3、ACCリレー5、IGリレー6、ブレーキスイッチ7、車速センサ8、エンジンECU9、及びこれらと接続する電源切換ECU4を備える。」
(1f)「【0029】
また、電源切換ECU4は、エンジン始動待機状態(車速0km)の場合に、ブレーキペダルが踏まれている状態でスタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされ、SW1及びSW2の少なくとも一方からオン信号が入力されると、イモビライザECU3が保持しているIDコードの照合結果を取得する。そして、取得した照合結果が一致したとの照合結果である場合には、電源切換ECU4は、エンジンECU9にエンジンを始動するエンジン始動信号を出力する。また、電源切換ECU4は、エンジン停止待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされ、SW1及びSW2の少なくとも一方からオン信号が入力されると、IGリレー6にエンジン停止信号を出力する。
【0030】
更に、車両走行中(車速0km以外)においては、電源切換ECU4は、スタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされ、SW1及びSW2からオン信号が入力される時間が所定時間継続したときに、IGリレー6にエンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する。」
(1g)「【0054】
ステップS34では、図5に示すように、電源切換ECU4は、SW1、SW2共にオン信号が入力される時間Taが所定時間T1以上であればIGリレー6へエンジン停止信号を出力する。
【0055】
ステップS35では、IGリレー6は、電源切換ECU4からのエンジン停止信号を取得すると、IGリレー6を非接続状態とし、スターターモータなどと車載バッテリーのプラス電源端子とを非通電状態とする。
【0056】
このように、車両走行中(車速0km以外)において、SW1とSW2の出力信号の論理積をおこない、SW1、SW2共にオン信号が入力される時間Taが所定時間T1以上継続される場合にエンジンを停止させる。従って、体の一部が不注意にプッシュスイッチに触れた場合などにエンジンを停止させてしまうことを防止できる。また、1つの接点のオン故障で誤ってエンジンを停止させてしまうことを防止できる。」
以上より、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「スタート/ストップスイッチ2と、
エンジン始動待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされるとエンジンECU9にエンジンを始動するエンジン始動信号を出力し、エンジン停止待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされるとIGリレー6にエンジン停止信号を出力し、車両走行中(車速0km以外)においては、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされ、押圧動作が所定時間継続したときに、IGリレー6にエンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する電源切換ECU4と、
を備える車載器1。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)「(1) 車体及び車輪間の相対変位を変更可能な指令値に応じて制御するサスペンションと、車体の姿勢変化に応じた姿勢変化情報を検出する姿勢変化検出手段とを備え、前記姿勢変化情報に基づき前記指令値を変更制御するようにした能動型サスペンション装置において、
複数の車速センサを具備した車速検出手段と、この車速検出手段の検出値に基づき何れかの車速センサが故障状態か否かを判断する故障判断手段と、この故障判断手段の判断結果が故障状態でない場合には前記車速検出手段による検出値を車速値として設定し、且つ、当該判断結果が故障状態である場合には前記複数の車速センサによる検出値の内、最高値を強制的に車速値として設定する車速設定手段と、この車速決定手段により設定された車速値に基づき車両が走行状態か又は停車状態かを判断する運転状態判断手段と、この運転状態判断手段により走行状態であると判断された場合には前記姿勢変化情報に応じて前記指令値を変更制御し、且つ、停車状態であると判断された場合には前記指令値の制御を中止する指令値制御手段とを備えたことを特徴とする能動型サスペンシヨン装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(2b)「まず、第6図のステップ(1)(当審注:○の中に1、以下、ステップ後のかっこ付き数字の場合には、同様に、○の中に数字)において、マイクロコンピュータ70の演算処理装置78は、パルス信号でなる車速信号v1,v2を各々読み込み、ステップ(2)に移行する。ステップ(2)では、読み込んだ車速信号v1,v2の単位時間当たりのパルス数又はパルス間隔を演算することによって、各々、車速V1,V2を算出してこれを一時記憶する。
次いでステップ(3)では、車速V1,V2に対して、車速センサ19A,19Bの故障をチェックするために、│V1-V2│>αか否かを判断する。ここで、αは、車速センサ19A,19Bの検出値のばらつきに対して、何れか一方の検出値が例えば零になる等、その正常,異常(故障)を弁別でき得る所定車速値に設定されている。このステップ(3)の判断において、│V1-V2│≦αの場合には、両方のセンサ19A,19Bの検出値の差は単なるばらつきに起因するもので大差がなく、両者とも正常に作動していると判断し、ステップ(4)~(6)の処理に移行する。
まず、ステップ(4)では車速V1,V2の平均値VAVを算出し、ステップ(5)では平均値VAVを車速値Vにセットする。次いで、ステップ(6)において車速値Vが零か否かを判断し、零でない場合には走行中であるとして、ステップ(7)~(10)にかかるロール制御を行う。」(明細書第13ページ第2行~第14ページ第7行)
(2c)「一方、前記ステップ(3)において│V1-V2│>αと判断された場合は、第1,第2車速センサ19A,19Bの内、何れか一方に断線等の故障が生じて、その検出値v1(又はv2)が零となり、差値の絶対値│V2-V2│が基準値αを越えた状態である。そこで、直ちにステップ(11)に移行し、車速センサ故障の警報発令を行うように警報器23に指令した後、ステップ(12)~(14)に移行する。
ステップ(12)では、車速値の大きさを比較するため、│V1│>│V2│か否かを判別する。そして、│V1│>│V2│の場合には、ステップ(13)に移行して車速値Vに第1車速センサ19Aにかかる値V1をセットし、│V1│≦│V2│の場合には、ステップ(14)に移行して車速値Vに第2車速センサ19Bにかかる値V2をセットし、この後、何れの場合でも前述したステップ(6)~(10)の処理に付される。この結果、走行中において、仮に、第1車速センサ19Aが故障であり車速値V1が零の場合、第2車速センサ19Bにかかる車速値V2が車速値Vに強制的にセットされる。反対に第2車速センサ19Bが故障の場合、車速値V1が車速値Vにセットされる。」(明細書第15ページ第1行~第16ページ第3行)
(2d)「また、車速検出手段に含める車速センサの数は、必ずしも前述した実施例の二個に限定されるものではなく、場合によっては三個以上であってもよい。
さらに、前述した故障判断手段を構成する第6図のステップ(3)の処理では、個々の車速の平均値の求め、この平均値と個々のセンサの検出値との差を演算し、この差値が所定値を越えているか否かによって車速センサの断線,大きな検出誤差等の異常を判断するようにしてもよい。」(明細書第20ページ第9~18行)
第5 対比・判断
1.本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「スタート/ストップスイッチ2」は、当業者における技術常識より、車両の運転者により操作可能に車室に設けられたスイッチであるといえる。また、引用発明の「スタート/ストップスイッチ2」は押圧動作がなされるものである。よって、引用発明の「スタート/ストップスイッチ2」は、本願発明の「運転者により押圧操作可能に車室に設けられた押圧スイッチ」に相当する。
引用発明の「電源切換ECU4」は車速に応じてエンジン始動信号あるいはエンジン停止信号を出力するものであるから、車両が走行中か停車中であるかを判定する走行判定手段を備えることは、当業者には明らかである。
引用発明の「電源切換ECU4」は「エンジン始動待機状態(車速0km)の場合に、、スタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされるとエンジンECU9にエンジンを始動するエンジン始動信号を出力し、エンジン停止待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされるとIGリレー6にエンジン停止信号を出力」するものであるところ、この場合(車速0kmの場合)の押圧動作がエンジンスタート/ストップのための通常押圧操作であることは明らかであるから、引用発明の「エンジン始動待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧操作がなされるとエンジンECU9にエンジンを始動するエンジン始動信号を出力し、エンジン停止待機状態(車速0km)の場合に、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされるとIGリレー6にエンジン停止信号を出力」することは、本願発明の「前記車両が停車中である」「場合における前記押圧スイッチの通常押圧操作による前記車両の駆動源の始動・停止の切換制御又は車載機器のオン・オフの切替制御」「を許可」することに相当する。
引用発明の「電源切換ECU4」は「車両走行中(車速0km以外)においては、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされ、押圧動作が所定時間継続したときに、IGリレー6にエンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する」ものであるところ、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作が所定時間継続したということは、通常押圧操作とは異なる押圧操作がされたといえ、この場合に、駆動源であるエンジンの停止信号を出力するものといえるし、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作が所定時間継続しない操作、すなわち、通常操作がされた場合には、この操作を無視し、駆動源であるエンジンの停止制御を禁止するものであるといえる。よって、引用発明の「車両走行中(車速0km以外)においては、スタート/ストップスイッチ2の押圧動作がなされ、押圧動作が所定時間継続したときに、IGリレー6にエンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する」は、本願発明の「前記車両が走行中である」「場合における前記押圧スイッチの前記通常押圧操作による前記駆動源の停止制御を禁止し且つ前記押圧スイッチの前記通常押圧操作とは異なる押圧操作である特殊押圧操作による前記駆動源の停止制御を許可する」に相当する。
そして、上記より引用発明の「電源切換ECU4」は、本願発明の「車両状体切換制御手段」に相当し、引用発明の「車載器1」は、本願発明の「車両制御装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「運転者により押圧操作可能に車室に設けられた押圧スイッチと、
車両が走行中であるか停車中であるかを判定する走行判定手段と、
前記車両が停車中であると前記走行判定手段にて判定された場合における前記押圧スイッチの通常押圧操作による前記車両の駆動源の始動・停止の切替制御又は車載機器のオン・オフの切替制御を許可し、前記車両が走行中であると前記走行判定手段にて判定された場合における前記押圧スイッチの前記通常押圧操作による前記駆動源の停止制御を禁止し且つ前記押圧スイッチの前記通常押圧操作とは異なる押圧操作である特殊押圧操作による前記駆動源の停止制御を許可する車両状態切替制御手段と、
を備える車両制御装置。」
<相違点>
本願発明の「車両制御装置」は「複数のユニットのそれぞれから前記走行判定手段に送信されて前記車両が走行中であるか停車中であるかを示す複数の走行判定信号のそれぞれにおいて異常が生じているか否かを判定する異常判定手段をさらに備え、
前記走行判定手段は、複数の前記走行判定信号のうちの少なくとも1つに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定され且つ当該異常判定手段にて異常が生じていないと判定された前記走行判定信号の全てが停車中であることを示す停車信号である場合に前記車両が停車中であると判定し、複数の前記走行判定信号の全てに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定された場合に前記車両が走行中であると判定する」ものであるのに対し、引用発明の電源切換ECU4ではこのような構成を備えていない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
上記第4 2.(2a)より、引用文献2には、複数の車速センサを具備した車速検出手段と、その車速検出手段の検出値に基づき何れかの車速センサが故障状態か否かを判断する故障判断手段と、この故障判断手段の判断結果が故障状態である場合には、前記複数の車速センサによる検出値の内、最高値を強制的に車速値として設定する車速設定手段と、この車速設定手段により設定された車速値に基づき車両が走行状態か又は停車状体かを判断する運転状態判断手段とを備えるという技術的事項が記載されている。
また、上記第4 2.(2d)の記載内容も加味すると、引用文献2に記載の上記技術的事項の故障判断手段は、何れかの車速センサが故障状態か否かを判断することに代えて、複数の車速センサのそれぞれにおいて故障状態か否かを判断するものとしてもよいものといえる。
よって、引用文献2に記載の上記技術的事項は、本願発明の「複数のユニットのそれぞれから前記走行判定手段に送信されて前記車両が走行中であるか停車中であるかを示す複数の走行判定信号のそれぞれにおいて異常が生じているか否かを判定する異常判定手段」に相当する構成を備えているものといえる。
しかしながら、引用文献2に記載の上記技術的事項では、故障判断手段で複数の車速センサのいずれかが故障と判断されるという条件と、故障していない車速センサで検出される車速値が零(停車中)であるという条件の両者を同時に満たす場合が存在しない(上記第4 2.(2b)、(2c)の記載内容より、引用文献2の図6のフローチャートにおいて、故障している車速センサでの車速の検出値が零あり、故障していない車速センサの検出値も零であった場合には、ステップ(3)で各車速センサは正常であるとみなされ、故障判断手段で複数の車速センサのいずれかが故障とは判断されないため)。よって、引用文献2に記載の上記技術的事項は、本願発明の「前記走行判定手段は、複数の前記走行判定信号のうちの少なくとも1つに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定され且つ当該異常判定手段にて異常が生じていないと判定された前記走行判定信号の全てが停車中であることを示す停車信号である場合に前記車両が停車中であると判定」するという構成を備えていないしそれを示唆するものでもない。また、引用文献2に記載の上記技術的事項は、本願発明の「複数の前記走行判定信号の全てに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定された場合に前記車両が走行中であると判定する」という構成も備えていないしそれを示唆するものでもない。
したがって、引用文献2に記載の上記技術的事項を引用発明に適用しても、相違点に係る本願発明の構成に達し得ない。
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者といえど引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4、5においても、上記相違点に係る本願発明の構成については記載も示唆もされていない。
2.請求項2~6に係る発明について
請求項2~6に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、当業者といえど引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本願発明の「前記走行判定手段は、複数の前記走行判定信号のうちの少なくとも1つに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定され且つ当該異常判定手段にて異常が生じていないと判定された前記走行判定信号の全てが停車中であることを示す停車信号である場合に前記車両が停車中であると判定し、複数の前記走行判定信号の全てに異常が生じていると前記異常判定手段にて判定された場合に前記車両が走行中であると判定する」という事項は、上記「第5 対比・判断」で説示のとおり、原査定において引用された引用文献1および引用文献2には、記載も示唆もされていないし、その他の原査定において引用された引用文献3~5においても記載も示唆もされていない。
よって、本願請求項1~5に係る発明は、原査定において引用された引用文献1、2、4、5に基づいて、また、請求項6に係る発明は、原査定において引用された引用文献1~5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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