特許拒絶査定不服審判
2016-010156
タイヤ
- 審判番号
- 2016-010156
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-248872外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月05日
- 審決日
- 2017年08月16日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ブリヂストン
- 【請求人代理人】三好 秀和
- 分類
- P18 .121-WY (B60C) / P18 .537-WY (B60C) / P18 .55 -WY (B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-248872号「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 44591号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月27日に出願した特願2010-191086号の一部を、平成26年12月9日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月17日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において平成29年4月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明6」という。また、まとめて「本願発明」ということもある。)は、平成29年7月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりものと認められる。
「【請求項1】
路面と接するトレッド踏面を構成する陸部によって、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が形成されたタイヤであって、
前記周方向溝内には、前記周方向溝の溝底から前記トレッド踏面側に隆起する溝内陸部が形成され、
前記溝内陸部は、前記周方向溝の一の側面に接して形成される第1溝内陸部と、前記周方向溝の他の側面に接して形成される第2溝内陸部とからなり、
前記溝底は、トレッド幅方向において、前記第1溝内陸部と第2溝内陸部との間に位置し、
前記第1溝内陸部及び前記第2溝内陸部には、前記トレッド幅方向に延びる複数の細溝が形成され、
前記周方向溝の前記トレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面の前記トレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%であり、
前記トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、
前記溝内陸部の表面は、前記溝底に対して傾斜し、
前記溝内陸部の表面は、前記周方向溝の側面に対しても傾斜し、
前記溝内陸部の表面は、傾斜したまま周方向溝の側面及び溝底と連なっており、
前記周方向溝の側面と前記溝内陸部の表面とが接する部分は曲線状に形成され、
前記溝内陸部の表面と前記溝底とが接する部分は、曲線状に形成され、
前記細溝は、トレッド幅方向における側壁と、タイヤ径方向における底面とを有しており、トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、前記トレッド幅方向における側壁とタイヤ径方向に平行な直線とがなす角度は、前記溝内陸部の表面とタイヤ径方向に平行な直線とがなす角度よりも小さく、
前記トレッド踏面から前記底面までのタイヤ径方向における前記細溝の深さは、前記トレッド踏面から前記溝底までのタイヤ径方向における前記周方向溝の深さよりも浅いことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド幅方向及び前記タイヤ径方向に沿った断面において、
前記溝内陸部の表面は、直線状に傾斜しており、
前記第1溝内陸部の表面と前記溝底に沿った直線とがなす角度は、前記第2溝内陸部と前記溝底に沿った直線とがなす角度と異なる請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、前記溝底に沿った直線と、前記一の側面に沿った直線と、前記第1溝内陸部の表面とがなす面積は、前記溝底に沿った直線と、前記他の側面に沿った直線と、前記第2溝内陸部の表面とがなす面積と10%以上大きさが異なる請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記溝底の前記トレッド幅方向に沿った幅は、前記周方向溝の前記トレッド幅方向に沿った幅に対して5~80%である請求項1から3の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記溝底の前記トレッド幅方向に沿った幅は、前記周方向溝の前記トレッド幅方向に沿った幅に対して20~50%である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記細溝の前記タイヤ周方向に沿った幅は、1~3mmである請求項1から5の何れか1項に記載のタイヤ。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-012931号公報
引用文献2.特開2008-012969号公報
引用文献3.特開2004-161201号公報(周知技術を示す文献)
特に、本願発明1について、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 原査定の理由の判断
(1)引用文献1の記載事項
原査定で引用された上記引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)
ア 「【請求項1】
路面と接するトレッド踏面を構成する陸部によって、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が形成された空気入りタイヤであって、
前記周方向溝内には、
前記周方向溝の溝底の表面が平滑な平滑溝部と、
前記周方向溝の溝底よりも前記トレッド踏面側に隆起する溝内陸部とが形成され、
前記溝内陸部には、トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝が形成され、
前記周方向溝のトレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面のトレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%である空気入りタイヤ。」
イ 「【0026】
図1及び図2に示すように、空気入りタイヤ1Aでは、路面と接するトレッド踏面10、すなわち、トレッド部表面を構成する陸部20によって、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝30と、トレッド幅方向に沿って伸びるラグ溝40と、周方向溝30及びラグ溝40よりも細いサイプ50とが複数形成されている。
【0027】
陸部20は、タイヤ周方向及びトレッド幅方向に向かって所定間隔で複数設けられている。陸部20は、図1の右側から左側に向けて、陸部21、陸部22、陸部23、陸部24、陸部25とする。」
ウ 「【0032】
複数の周方向溝30のうちの周方向溝32は、トレッド幅方向に沿った幅が最も広い。周方向溝32のトレッド幅方向に沿った幅(以下、太溝幅W1)は、トレッド踏面のトレッド幅方向に沿った幅(以下、トレッド幅TW)に対して5~30%である。
【0033】
(周方向溝の構成)
次に、上述した周方向溝32の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る周方向溝32の一部斜視図である。図3では、サイプ50が省略されている。図4は、第1実施形態に係る周方向溝32のトレッド幅方向断面図(図3のA-A断面図)である。図5は、第1実施形態に係る周方向溝32のタイヤ周方向断面(図3のB-B断面図)である。
【0034】
図3~図5に示すように、周方向溝32内には、周方向溝32の溝底32aの表面が平滑な平滑溝部60と、周方向溝32の溝底32aよりもトレッド踏面10側に隆起する溝内陸部70とが形成されている。
【0035】
平滑溝部60は、溝内陸部70よりもタイヤ赤道面CS側に設けられている。トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った平滑溝部60の断面形状は、タイヤ周方向に沿って一定である(図4参照)とともに、平滑溝部60からタイヤ赤道面CSまでのトレッド幅方向に沿った距離Dは、タイヤ周方向に沿って一定である(図1参照)。
【0036】
溝内陸部70は、陸部22とトレッド幅方向に連続して形成されている。トレッド幅方向及びタイヤ径方向における溝内陸部70の断面は、略四角形状である(図4参照)。具体的には、該断面において、溝内陸部70の上面部72は、トレッド幅方向に沿って延びる。また、該断面において、溝内陸部70の平滑溝部60側に位置する内側端71(端部)から平滑溝部60(周方向溝32の溝底32a)に向かって伸びる溝壁73は、タイヤ径方向に延びる。」
エ 「【0039】
溝内陸部70には、陸部22から連続したラグ溝42と、トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝80とが形成されている。細溝80と、タイヤ赤道面CSに直交する直線L2とが成す角度(以下、細溝角度α)は、0~45度である(図1参照)。
・・・
【0041】
細溝80の溝底81から溝内陸部70の上面部72までの深さ(以下、細溝深さD3)は、周方向溝32の溝底32aから溝内陸部70の上面部72までの高さ(以下、溝内陸部高さH)に対して50~100%である(図5参照)。」
オ 「【0044】
また、周方向溝32内には、溝内陸部70が形成される。溝内陸部70には、トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝80が形成されている。これによれば、周方向溝32に入り込んだ雪に細溝80が引っかかる効果(いわゆる、エッジ効果)が増大するため、氷雪路における駆動性能や制動性能をさらに向上させることができる。
・・・
【0046】
第1実施形態では、細溝幅W2は、1~8mmである。細溝幅W2が1mmよりも大きいことによって、周方向溝32に入り込んだ雪に細溝80が引っかかる効果(いわゆる、エッジ効果)が増大するため、氷雪路における駆動性能や制動性能をさらに向上させることができる。一方、細溝幅W2が8mmよりも小さいことによって、周方向溝32に入り込んだ雨水などの抵抗が増大し過ぎることがないため、排水性の低下を抑制することができる。」
カ 「【0049】
第1実施形態では、細溝深さD3は、溝内陸部高さHに対して50~100%である。細溝深さD3が溝内陸部高さHに対して50%よりも大きいことによって、周方向溝32に入り込んだ雪に細溝80が引っかかる効果(いわゆる、エッジ効果)が確保されるため、氷雪路における駆動性能や制動性能をさらに向上させることができる。一方、細溝深さD3が溝内陸部高さHに対して100%よりも小さいことによって、溝内陸部60の剛性が低下することなく、周方向溝32に入り込んだ雪に細溝80が引っかかる効果(いわゆる、エッジ効果)が確保されるため、氷雪路における駆動性能や制動性能をさらに向上させることができる。」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の【図3】及び【図4】の記載から、周方向溝32の側面と溝内陸部70とが接する部分は曲線状に形成されていることが看取できる。
以上のことと上記(1)及び【図1】~【図5】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「路面と接するトレッド踏面10を構成する陸部22、23によって、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝32が形成された空気入りタイヤ1Aであって、
前記周方向溝32内には、
前記周方向溝32の溝底32aの表面が平滑な平滑溝部60と、
前記周方向溝32の溝底32aよりも前記トレッド踏面10側に隆起する溝内陸部70とが形成され、
前記溝底32aの平滑溝部60は、前記溝内陸部70よりもタイヤ赤道面CS側に設けられ、
前記溝内陸部70には、トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝80が形成され、
前記周方向溝32のトレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面10のトレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%であり、
トレッド幅方向及びタイヤ径方向における断面において、
溝内陸部70は略四角形状であり、
前記周方向溝32の側面と溝内陸部70とが接する部分は曲線状に形成され、
細溝80の溝底81から溝内陸部70の上面部72までの深さは、周方向溝32の溝底32aから溝内陸部70の上面部72までの高さに対して50~100%である空気入りタイヤ1A。」
(3)引用文献2の記載事項
原査定で引用された上記引用文献2には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】
タイヤ周方向に連続する周方向溝と、当該周方向溝に少なくとも一方の端部が連通するラグ溝とにより区画されたブロックがトレッド部に複数形成されている空気入りタイヤにおいて、
タイヤ径方向における断面形状がタイヤ内部に向かって凸形状であり、かつ前記各ブロックの側壁面が延在する延在方向に延在するとともに、当該各ブロックの側壁面のうちいずれか1以上に形成される突出部を有し、
前記突出部は、前記延在方向と直交する直交方向に形成される突出部サイプを当該延在方向に1以上有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記突出部は、対向する側壁面にそれぞれ形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。」
イ 「【0029】
突出部3、4は、各ブロックの側壁面のうちいずれか1以上に形成される。この実施例では、突出部3は、長方形ブロック23の2つのタイヤ幅方向側壁面23a,23a、2つのタイヤ周方向側壁面23b,23bおよび平行四辺形ブロック24の2つのタイヤ幅方向側壁面24a,24aにそれぞれ形成されている。一方、突出部4は、平行四辺形ブロック24の2つの傾斜方向側壁面24b,24bにそれぞれ形成されている。従って、突出部3は、対向する長方形ブロック23の2つのタイヤ周方向側壁面23a,23aに、対向する長方形ブロック23のタイヤ幅方向側壁面23aと平行四辺形ブロック24のタイヤ幅方向側壁面24aとに、それぞれ形成されている。一方、突出部4は、対向する平行四辺形ブロック24の2つの傾斜方向側壁面24b,24bに形成されている。つまり、突出部3,4は、対向する側壁面にそれぞれ形成されている。」
ウ 「【0030】
各突出部3は、タイヤ周方向側壁面23bから対向するタイヤ周方向側壁面23bに、タイヤ幅方向側壁面23aから対向するタイヤ幅方向側壁面24aに向かって、タイヤ幅方向側壁面24aから対向するタイヤ幅方向側壁面23aに向かって、それぞれ突出して形成されている。図2に示すように、タイヤ幅方向側壁面23a,24aに形成される各突出部3は、タイヤ幅方向側壁面23a,24aが延在する延在方向であるタイヤ周方向に延在して形成されている。また、タイヤ周方向側壁面23bに形成される各突出部3は、タイヤ周方向側壁面23bが延在する延在方向であるタイヤ幅方向に延在して形成されている。また、各突出部3は、この実施例では、上記各側壁面の延在方向における両端部まで延在して形成されている。また、この各突出部3は、タイヤ径方向における断面形状がタイヤ内部、ここでは長方形ブロック23あるいは平行四辺形ブロック24の内部に向かって凸形状に形成されている(同図S1,S2参照)。また、各突出部3は、延在方向における一端から他端に向かってタイヤ径方向における断面積が一定に形成されている。従って、各突出部3の一端側におけるタイヤ径方向における断面積S1と、他端側におけるタイヤ径方向における断面積S2とが同面積となる。」
エ 「【0032】
ここで、各突出部3,4には、突出部サイプ31,41が延在方向に1以上形成されている。この実施例では、突出部サイプ31,41は、1つの突出部3,4に対して延在方向に3つ形成されている。この各突出部サイプ31,41は、延在方向と直交する直交方向に形成されている。従って、この発明にかかる空気入りタイヤ1では、トレッド部2におけるエッジ部を増加することができる。これにより、エッジ効果を向上することができるので、雪上性能を向上することができる。また、各突出部サイプ31,41は、波形状に形成されている。従って、この発明にかかる空気入りタイヤ1では、各突出部サイプ31,41のエッジ部を増加することができる。これにより、エッジ効果をさらに向上することができるので、雪上性能をさらに向上することができる。ここで、各突出部サイプ31,41は、直線的なジグザグ形状や、サイン波形状のいずれか波形状であっても良い。また、各突出部サイプ31,41は、波形状に限られず、直線形状であっても良い。」
オ 「【0052】
なお、上記実施例では、トレッド部2に形成される複数のブロックのうち、隣り合うブロックの対向した側壁面のそれぞれに突出部3,4を形成するがいずれか一方のみに形成しても良い。」
(4)本願発明1と引用発明との対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「トレッド踏面10」は前者の「トレッド踏面」に相当し、以下同様に、「陸部22、23」は「陸部」に、「周方向溝32」は「周方向溝」に、「溝底32a」は「溝底」に、「空気入りタイヤ1A」は「タイヤ」にそれぞれ相当する。
イ 後者の「前記周方向溝32内には、前記周方向溝32の溝底32aの表面が平滑な平滑溝部60と、前記周方向溝32の溝底32aよりも前記トレッド踏面10側に隆起する溝内陸部70とが形成され、前記溝底32aの平滑溝部60は、前記溝内陸部70よりもタイヤ赤道面CS側に設けられ、前記溝内陸部70には、トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝80が形成され、」という事項と、前者の「前記周方向溝内には、前記周方向溝の溝底から前記トレッド踏面側に隆起する溝内陸部が形成され、前記溝内陸部は、前記周方向溝の一の側面に接して形成される第1溝内陸部と、前記周方向溝の他の側面に接して形成される第2溝内陸部とからなり、前記溝底は、トレッド幅方向において、前記第1溝内陸部と第2溝内陸部との間に位置し、前記第1溝内陸部及び前記第2溝内陸部には、前記トレッド幅方向に延びる複数の細溝が形成され、」という事項とは、「前記周方向溝内には、前記周方向溝の溝底から前記トレッド踏面側に隆起する溝内陸部が形成され、前記溝内陸部には、前記トレッド幅方向に延びる複数の細溝が形成され、」の限度で一致するといえる。
ウ 後者の「前記周方向溝32のトレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面10のトレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%であり、」は、前者の「前記周方向溝の前記トレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面の前記トレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%であり、」に相当し、同様に、後者の「トレッド幅方向及びタイヤ径方向における断面において、」は、前者の「トレッド幅方向及びタイヤ径方向における断面において、」に相当する。
エ 上記イのとおり、前者の「溝内陸部」は「第1溝内陸部」と「第2溝内陸部」からなるものであるので、後者の「前記周方向溝32の側面と溝内陸部70とが接する部分は曲線状に形成され、」という事項と、前者の「前記周方向溝の側面と前記溝内陸部の表面とが接する部分は曲線状に形成され、」という事項とは、「前記周方向溝の側面と前記溝内陸部の少なくとも一つの表面とが接する部分は曲線状に形成され、」の限度で一致するといえる。
オ 後者の「細溝80の溝底81から溝内陸部70の上面部72までの深さは、周方向溝32の溝底32aから溝内陸部70の上面部72までの高さに対して50~100%である」という事項について、当該数値範囲において100%未満の場合、細溝80の深さがトレッド踏面10から溝底32aの深さより浅いことになることは明らかといえる。
そうすると、後者の上記事項は、前者の「前記トレッド踏面から前記底面までのタイヤ径方向における前記細溝の深さは、前記トレッド踏面から前記溝底までのタイヤ径方向における前記周方向溝の深さよりも浅い」という事項とは、「前記トレッド踏面から前記底面までのタイヤ径方向における前記細溝の深さは、前記トレッド踏面から前記溝底までのタイヤ径方向における前記周方向溝の深さよりも浅い範囲を含む」という限度で一致するといえる。
カ 以上のことから、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「路面と接するトレッド踏面を構成する陸部によって、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が形成されたタイヤであって、
前記周方向溝内には、前記周方向溝の溝底から前記トレッド踏面側に隆起する溝内陸部が形成され、前記溝内陸部には、前記トレッド幅方向に延びる複数の細溝が形成され、
前記周方向溝の前記トレッド幅方向に沿った幅は、前記トレッド踏面の前記トレッド幅方向に沿った幅に対して5~30%であり、
トレッド幅方向及びタイヤ径方向における断面において、
前記周方向溝の側面と前記溝内陸部の少なくとも一つの表面とが接する部分は曲線状に形成され、
前記トレッド踏面から前記底面までのタイヤ径方向における前記細溝の深さは、前記トレッド踏面から前記溝底までのタイヤ径方向における前記周方向溝の深さよりも浅い範囲を含むタイヤ。」
〔相違点1〕
「溝内陸部」、「溝底」及び「細溝」について、
本願発明1が「前記周方向溝の一の側面に接して形成される第1溝内陸部と、前記周方向溝の他の側面に接して形成される第2溝内陸部とからなり、前記溝底は、トレッド幅方向において、前記第1溝内陸部と第2溝内陸部との間に位置し」というものであり、トレッド幅方向に延びる複数の細溝も「前記第1溝内陸部及び前記第2溝内陸部」に形成され、「前記溝内陸部の表面は、前記溝底に対して傾斜し、前記溝内陸部の表面は、前記周方向溝の側面に対しても傾斜し、前記溝内陸部の表面は、傾斜したまま周方向溝の側面及び溝底と連なっており、前記周方向溝の側面と前記溝内陸部の表面とが接する部分は曲線状に形成され、前記溝内陸部の表面と前記溝底とが接する部分は、曲線状に形成され、前記細溝は、トレッド幅方向における側壁と、タイヤ径方向における底面とを有しており、トレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、前記トレッド幅方向における側壁とタイヤ径方向に平行な直線とがなす角度は、前記溝内陸部の表面とタイヤ径方向に平行な直線とがなす角度よりも小さく」しているのに対し、
引用発明は「前記溝底32aの平滑溝部60は、前記溝内陸部70よりもタイヤ赤道面CS側に設けられ」るものであって、周方向溝32の2つの側面に接して形成されるものではなく、「トレッド幅方向に沿って延びる複数の細溝80」も、当該タイヤ赤道面CS側と反対側に設けられた「溝内陸部70」に形成され、「溝内陸部70は略四角形状であり、前記周方向溝32の側面と溝内陸部70とが接する部分は曲線状に形成され」ているものであり、「溝内陸部70」の表面と「溝底32aの平滑溝部60」とが接する部分が曲線状であるかも明らかでなく、さらに、「細溝80」の断面形状も明らかでない点。
〔相違点2〕
「細溝の深さ」について、
本願発明1が「前記トレッド踏面から前記底面までのタイヤ径方向における前記細溝の深さは、前記トレッド踏面から前記溝底までのタイヤ径方向における前記周方向溝の深さよりも浅い」のに対し、
引用発明は「細溝80の溝底81から溝内陸部70の上面部72までの深さは、周方向溝32の溝底32aから溝内陸部70の上面部72までの高さに対して50~100%」というものであり、トレッド踏面から溝底81までの深さが、周方向溝32と同じ深さ(細溝80の溝底81から溝内陸部70の上面部72までの深さが、周方向溝32の溝底32aから溝内陸部70の上面部72までの高さに対して100%)まで含む数値範囲のものである点。
(5)本願発明1の進歩性の判断
まず、上記相違点1について検討する。
ア 引用文献1には、段落【0065】に「実施形態では、平滑溝部60は、溝内陸部70よりもタイヤ赤道面CS側に設けられているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、位置が逆、すなわち溝内陸部70よりもトレッドショルダー部側に設けられていても勿論よい。」との記載があるが、溝内陸部70を周方向溝32の両方の側面に設けることの記載ないし示唆はない。
イ そして、引用発明は、引用文献1の段落【0004】に記載される「溝幅が広い周方向溝が形成されると、トレッド踏面を構成する陸部(ブロック)の面積やサイプの数などが減少する。このため、排水性向上や氷雪路における横滑りの抑制は図られるものの、氷雪路における駆動性能や制動性能を向上させることはできない問題があった。」ということを解決しようとする課題としているところ、第1実施形態の変更例として、段落【0054】~【0057】に「溝内陸部70と、溝内陸部70と近接する陸部22との間には、空隙90が生成されている」ものとすることにより、「周方向溝32内において、平滑溝部60に加えて、空隙90を確保することができる。従って、排水性向上をさらに図ることができる。」としているものが記載されており、本来の課題の一つである排水性を考慮すれば、溝内の空間部をある程度大きくした方が望ましいことが示唆されているといえ、言い換えれば溝内陸部70を周方向溝に対しあまり大きくならないようにすることが望ましいことが示唆されているといえる。
そうだとすると、引用文献1の記載に接した当業者であるなら、引用発明において周方向溝32の片方の側面に設けられている溝内陸部70を、該周方向溝32の両方の側面に設けて周方向溝の空間部が減少する方向の変更はしないと考えるのが自然である。
ウ したがって、引用文献1の段落【0066】に「実施形態では、トレッド幅方向及びタイヤ径方向における溝内陸部70の断面は、略四角形状であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、略三角形状や略台形状であってもよいことは勿論である。」との記載があり、上記(3)より、引用文献2に「周方向溝21の一の側面に接して形成される突出部3と、前記周方向溝21の他の側面に接して形成される突出部3を形成し、各突出部3には、トレッド幅方向に延びる複数の突出部サイプ31が形成され、各突出部3は、タイヤ径方向における断面形状がタイヤ内部に向かって凸形状である」との技術的事項が記載されていることが把握できたとしても、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けは見当たらない。
エ さらに、引用文献1の段落【0047】には「第1実施形態では、第1溝深さD1は、第2溝深さD2に対して60~95%である。第1溝深さD1が第2溝深さD2に対して60%よりも大きいことによって、周方向溝32の体積を減少させ過ぎることがないため、排水性の低下を抑制することができる。一方、第1溝深さD1が第2溝深さD2に対して95%よりも小さいことによって、周方向溝32に入り込んだ雪に細溝80が引っかかる効果(いわゆる、エッジ効果)を確保できるため、氷雪路における駆動性能や制動性能をさらに向上させることができる。」と記載されている。一方、引用文献2の段落【0039】には「各突出部3,4の最大高さdmaxは、長方形ブロック23あるいは平行四辺形ブロック24のブロックの高さをDとした際に、0.5D≦dmaxであることが好ましい。さらには、最大高さdmaxは、0.7D≦dmax≦0.9Dであることが好ましい。これは、0.5D未満であると、ブロック剛性向上に対する寄与が小さくなるためである。なお、最大高さdmaxとは、ブロック高さDの基準、例えば溝底から各突出部3,4において最もタイヤ径方向外側の位置までの高さである。この実施例では、各突出部3,4の最大高さdmaxとは、延在方向のうち一端における高さである。」と記載されている。
引用文献1の「溝内陸部70」と引用文献2の「突出部3」とは断面形状が異なり、また、周溝の側面の一方のみの配置または両方への配置という前提条件の違いがあるため、直接的な数値の比較はできないものの、引用文献1においては、排水性の低下を抑制するため、溝内陸部70の高さHを、周方向溝32の第2深さD2に対して5~40%(=(100-95)~(100-60))としているのに対し、引用文献2においては、ブロック剛性向上のため、突出部3の最大高さdmaxをブロックの高さD(周方向溝21の深さに相当)に対し50%以上(70%以上90%以下が好ましい)ものとしており、全体として、引用文献2の方が本願発明1の「溝内陸部」に相当する部材を高くすることが示唆されており、このことは、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することの少なくとも動機付けとはなり得ないし、むしろ阻害要因となり得るものといえる。
オ したがって、引用発明において、少なくとも上記相違点1に係る本願発明1の事項を有するものとすることが、当業者にとって容易になし得たということはできないから、本願発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)小括
以上検討したとおり、本願発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2~6は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
[理由1] 平成28年1月25日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
[理由2] この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由3] この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 当審拒絶理由の判断
平成29年7月5日に提出された手続補正書により、本願の請求項1~6の記載は、上記第2に示すとおりに補正され、指摘した新規事項及び特許請求の範囲の記載の不備はいずれも解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-010156