特許拒絶査定不服審判
2016-008188
立体視効果の調整用の対話型ユーザインターフェース
- 審判番号
- 2016-008188
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-512890外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月02日
- 審決日
- 2017年08月21日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】クゥアルコム・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】福原 淑弘
- 【請求人代理人】井関 守三
- 【請求人代理人】岡田 貴志
- 分類
- P18 .537-WY (H04N) / P18 .536-WY (H04N) / P18 .121-WY (H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-512890「立体視効果の調整用の対話型ユーザインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日国際公開、WO2012/162096、平成26年 7月17日国内公表、特表2014-517619、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯、原査定の概要、当審拒絶理由の概要
1 手続の経緯
本件出願は、2012年5月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月23日、米国、2011年8月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成26年 1月22日:手続補正
平成27年 5月 8日:拒絶理由の通知
平成27年 8月11日:手続補正
平成28年 1月28日:拒絶査定
平成28年 2月 2日:拒絶査定の謄本の送達
平成28年 6月 2日:拒絶査定不服審判の請求
平成28年 6月 2日:手続補正
平成29年 4月13日:拒絶理由の通知(当審、最後)
平成29年 6月30日:手続補正
2 原査定の理由の概要
この出願の請求項1~31に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、この出願の請求項1~31に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2003-284093号公報
3 当審拒絶理由の概要
(1)請求項1について
ア 明確性
(ア)「前記複数の3次元位置は、前記複数の像が表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し」(構成要件B-2)について
構成要件B-2における主語は「前記複数の3次元位置」であり、述語は「変位し」である。
しかしながら、「前記複数の3次元位置」が「変位」するとは、どのようなことを意味しているのか明確でない。「変位」するものは、「像」であり、「3次元位置」は変位するものとは認められない。
(イ)構成要件B-2における「前記複数の像が表示器の面における前記物体の動きを示す」がどのようなことを意味しているのか明確でない。
(ウ)「前記複数の像が表示器の面における前記物体の動きを示す」が、仮に、3次元位置のうち、x、yの位置を変化させ、zの位置は変化させないことを意味しているとした場合には、以下の問題点がある。すなわち、請求項1に係る発明は、前記物体の前記選択された3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応するパラメータを決定するものであり、zの位置を変化させずに、x、yの位置を変化させることにより複数の像を表示させ、その像を選択することにより、立体視効果の奥行きの範囲に対応するパラメータを決定することになるが、何故決定できるのか理解できない。
イ サポート要件、実施可能性要件
「各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され」(構成要件B-1)、「前記複数の3次元位置は、前記複数の像が表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し」(構成要件B-2)は、審判の請求と同時にした補正により追加されたものであり、請求人は、審判請求書において、補正の根拠を明細書の段落【0006】、【0026】であるとしている。
しかしながら、段落【0006】、【0026】の記載と、請求項1に係る発明との関係が明確でなく、また、発明の詳細な説明の他の記載をみても、請求項1に係る発明が記載されているとは認められない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。
また、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
(2)請求項2~27について
請求項11、15、23に係る発明は、請求項1に係る発明とカテゴリが異なる発明であり、請求項1に係る発明についての記載不備と同様の記載不備がある。
また、請求項2~10、12~14、16~22、24~27に係る発明は、請求項1、11、15又は23を、直接又は間接的に引用しているので、請求項1、11、15、23に係る発明と同様の記載不備がある。
(3)請求項2~6、12~14、16~20、24、25~27について
請求項11、15、23に係る発明は、構成要件B-2と同様の構成要件を有している。
構成要件B-2と請求項2~6、12~14、16~20、24、25~27の記載との関係が明確でないから、請求項2~6、12~14、16~20、24、25~27に係る発明は明確でない。
(4)請求項10、22について
請求項10、22における「前記パラメータは、選好指示である」は、どのようなことを意味しているのか明確でない。
したがって、請求項10、22に係る発明は明確でない。
第2 本願発明
1 当審拒絶理由について
本願発明を認定するにあたり、当審拒絶理由の理由(上記第1の3)について検討する。
(1)請求項1について
ア 明確性
(ア)平成29年6月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、請求項1の「前記複数の3次元位置は、前記複数の像が表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し」は、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し」となった(下線は補正箇所を示す。)。
この記載は、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像」が「変位」することを意味しており、明確である。
また、「前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示す」ものであり、明確である。
したがって、上記第1の3(1)ア(ア)、(イ)の拒絶理由は解消した。
(イ)本願明細書の段落【0026】には、「ユーザは、x、y、及びz平面の各々において物体を平行移動させ、入力部103を使用して位置の幾つかにおける自分の選好を指示することができる。例えば、ユーザは、物体401bを動かすために、指ジェスチャーを行うか、又はチャンネル若しくはボリューム選択キーを押下することができる。ユーザは、物体を動かすとき、奥行き方向の動きに対する自分の許容範囲(即ち異なる速度及び視差値の効果)を指示し得る。」と記載されており、物体は、x、y、及びzの3次元に動かされ、3次元画像として表示されるものであり、上記段落に記載されているようにユーザが入力部を介して指示することにより立体視効果の奥行き範囲に対応するパラメータが決定される。このことを請求項1に係る発明が意味していると認められ、明確である。
したがって、上記第1の3(1)ア(ウ)の拒絶理由は解消した。
イ サポート要件、実施可能要件
上記アのとおり明確性についての拒絶の理由は解消し、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明の段落【0006】、【0026】に記載されていると認められる。
また、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
(2)請求項2~27について(上記第1の3(2))
請求項11、15、23に係る発明は、請求項1とカテゴリが異なる発明であり、本件補正により、請求項1と同様な補正がなされたので、請求項1の記載不備の解消と同様に請求項11、15、23の記載不備も解消した。
請求項2~10、12~14、16~22、24~27の記載不備は、請求項1、11、15又は23の記載不備の解消により、解消した。
(3)請求項2~6、12~14、16~20、24、25~27について(上記第1の3(3))
本件補正により、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し」との構成になり、請求項2~6、12~14、16~20、24、25~27の記載との関係は明確になった。
したがって、上記第1の3(3)の拒絶の理由は解消した。
(4)請求項10、22について(上記第1の3(4))
本件補正により、請求項10、22における「選考指示」は「選考の指示」になった。
平成29年6月30日付け意見書において
「4 請求項10、22について
請求項10,22の「選考指示」を「選考の指示」と補正しました。段落[0026]に記載されていますように入力部を使用して位置の幾つかにおける自分の選好を指示することを意図しています。具体的には、段落[0016]に記載されていますように立体視像の表示に関するユーザの選好を決定します。」
と主張しているように、「選考の指示」は、自分の選好を指示することを意味していると認められ、明確でないとはいえない。
したがって、上記第1の3(4)の拒絶の理由は解消した。
2 本願発明
本願の請求項1~27に係る発明(以下、それぞれの発明を項番を用いて「本願発明1」等という。)は、平成26年1月22日付け、平成27年8月11日付け、平成28年6月2日付け、平成29年6月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~27に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
立体視効果用のパラメータを決定するための、電子機器上で実施される方法であって、
複数の像をユーザに表示することと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され、前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し、
前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取ることと、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され、
前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定することと、前記パラメータは、前記物体の選択された前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、
を備える、方法。
【請求項2】
前記複数の位置は、正の奥行き位置を有する位置を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の像は、第2の物体の立体視効果をさらに備え、前記第2の物体は前記複数の像によって第2の複数の位置に示され、前記第2の複数の位置は負の奥行き位置を有する位置を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の像は、前記表示器の前記面における前記物体の動きを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の像は、少なくとも表示器のスクリーン幾何形状に基づいて動的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の像は、少なくとも表示器からの前記ユーザの距離に基づいて動的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータをメモリに記憶することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータに基づいて前記物体の奥行きに関する最大範囲を決定することをさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電子機器は、携帯電話を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パラメータは、選好の指示である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
実行されたとき、プロセッサに以下のステップを実行させる命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体であって、前記ステップは、
複数の像をユーザに表示することと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の位置に示され、複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し、
前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取ることと、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択される、
前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定することと、前記パラメータは、前記ユーザによって好まれる前記物体の前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記複数の位置は、正の奥行き位置を有する位置を備える、請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記複数の像は、第2の物体の立体視効果をさらに備え、前記第2の物体は前記複数の像によって第2の複数の位置に示され、前記第2の複数の位置は負の奥行き位置を有する位置を備える、請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記複数の像の動きは、前記表示器の前記面における前記物体の動きを示す、請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
電子機器内の電子立体視システムであって、
表示器と、
複数の像を表示するように構成された第1のモジュールと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の位置に示され、複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが前記表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し、
前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択をユーザから受け取るように構成された入力部と、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され、
前記ユーザの前記選択に従ってさらなる像を表示するために使用され、前記選択に関連するパラメータを記憶するように構成されたメモリと、前記パラメータは、前記ユーザによって好まれる前記物体の前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、
を備える、電子立体視システム。
【請求項16】
前記複数の位置は、正の奥行き位置を有する位置を備える、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項17】
前記複数の像は、第2の物体の立体視効果をさらに備え、前記第2の物体は前記複数の像によって第2の複数の位置に示され、前記第2の複数の位置は負の奥行き位置を有する位置を備える、請求項16に記載の立体視システム。
【請求項18】
前記複数の像は、前記表示器の前記面における前記物体の動きを示す、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項19】
前記複数の像は、少なくとも前記表示器のスクリーン幾何形状に基づいて動的に生成される、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項20】
前記複数の像は、少なくとも前記表示器からの前記ユーザの距離に基づいて動的に生成される、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項21】
前記電子機器は、携帯電話を備える、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項22】
前記パラメータは、選好の指示である、請求項15に記載の立体視システム。
【請求項23】
電子機器内の立体視システムであって、
複数の像をユーザに表示するための手段と、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の位置に示され、複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し、
好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取るための手段と、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され、
前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定するための手段と、
前記パラメータは、前記ユーザによって好まれる前記物体の前記3次元位置に基づいて前
記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、
を備える、立体視システム。
【請求項24】
前記表示する手段は表示器を備え、前記示す手段は複数の像を備え、選好指示を受け取
るための前記手段は入力部を備え、立体視パラメータを決定するための前記手段は、好ま
しい範囲を記憶するように構成されたソフトウェアモジュールを備える、請求項23に記
載の立体視システム。
【請求項25】
前記ユーザに表示することは、前記物体が示される前記複数の3次元位置が前記物体に
よって横切られている3次元パスに含まれるように、前記ユーザによって導かれる前記3
次元パスを横切っている前記物体を表示することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記選択を受け取ることは、異なる奥行き位置によって引き起こされる前記ユーザによ
って経験される異なる快適度に対応する前記複数の3次元位置のうちの2つを受け取るこ
とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記奥行きの範囲は、前記ユーザが前記奥行きの範囲の外側の範囲に関してかなり低減
された不快感を経験する範囲に対応する、請求項1に記載の方法。」
3 本願発明1の分説
本願発明1を分説すると次のとおりである。
(本願発明1)
(A)立体視効果用のパラメータを決定するための、電子機器上で実施される方法であって、
(B)複数の像をユーザに表示することと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され、前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位し、
(C)前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取ることと、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され、
(D)前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定することと、前記パラメータは、前記物体の選択された前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、
(E)を備える、方法。
((A)~(E)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)
第4 原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づく容易想到性について
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-284093号公報(上記引用文献1)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0066】第1の立体画像処理装置100は、立体表示した画像に対するユーザからの応答をもとに立体感を調整する立体感調整部112と、立体感調整部112で特定された適正視差を保存する視差情報保持部120と、視差情報保持部120から適正視差を読みだし、オリジナルデータから適正視差を有する視差画像を生成する視差制御部114と、表示装置のハードウエア情報を取得し、また立体表示の方式を取得する機能を有する情報取得部118と、情報取得部118で取得した情報をもとに、視差制御部114で生成された視差画像の形式を変更するフォーマット変換部116を含む。オリジナルデータを単に三次元データとよぶが、厳密にはワールド座標系で記述されたオブジェクトおよび空間のデータがこれに当たる。」
「【0069】立体感調整部112は指示取得部122と視差特定部124を有する。指示取得部122は、立体表示された画像に対してユーザが適正視差の範囲を指定したとき、これを取得する。視差特定部124は、その範囲をもとに、ユーザがこの表示装置を用いたときの適正視差を特定する。適正視差は、表示装置のハードウエアに依存しない表現形式で表される。適正視差を実現することにより、ユーザの生理に適合した立体視が可能になる。」
「【0079】以上の構成における各立体画像処理装置100の各部の処理動作とその原理は以下のとおりである。図14(a)、図14(b)は、第1の立体画像処理装置100の立体感調整部112による適正視差の特定のプロセスにおいてそれぞれ表示された左眼画像200、右眼画像202を示す。それぞれの画像には5個の黒丸が表示されており、上にいくほど近置かつ大きな視差、下へいくほど遠置かつ大きな視差が付けられている。
【0080】図15はこれら5個の黒丸を表示したとき、ユーザ10に感知される距離感を模式的に示す。ユーザ10はこれら5個の距離感の範囲を「適正」と応答しており、この応答を指示取得部122が取得する。同図では、視差が異なる5個の黒丸が同時に、または順に表示され、許容できる視差であるか否かをユーザ10が入力していく。一方、図16では表示自体は1個の黒丸で行うが、その視差を連続的に変更し、ユーザ10が遠置と近置それぞれの方向において許容する限界にきたとき、応答する。応答は通常のキー操作、マウス操作、音声による入力等、それ自体は既知の技術を利用すればよい。
【0081】図15、図16のいずれの場合でも、指示取得部122は適正視差を範囲として取得でき、その近置側および遠置側の限界視差が決まる。近置最大視差は、自分に最も近い位置に見える点に許す近さに対応する視差、遠置最大視差は、自分から最も遠い位置に見える点に許す遠さに対応する視差である。ただし、一般にはユーザの生理上の問題から近置最大視差をケアすべきことが多く、以下、近置最大視差のみを限界視差とよぶ場合もある。」
「【図14】
【図15】
【図16】
」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された「立体画像処理装置」における適正視差を特定する動作を方法の発明として認定する。
当該方法は、「適正視差を特定するための、立体画像処理装置で実施される方法」といえる(段落【0066】)。
当該方法は、次の動作を行う。
適正視差の特定のプロセスにおいて、上にいくほど近置かつ大きな視差、下へいくほど遠置かつ大きな視差が付けられている5個の黒丸が表示される(段落【0079】)。
許容できる視差であるか否かのユーザ入力を取得し、適正視差を範囲として取得し(段落【0080】、【0081】)、前記範囲をもとに、適正視差を特定する(段落【0069】)。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
(a)適正視差を特定するための、立体画像処理装置で実施される方法であって、
(b)適正視差の特定のプロセスにおいて、上にいくほど近置かつ大きな視差、下へいくほど遠置かつ大きな視差が付けられている5個の黒丸が表示され、
(c)許容できる視差であるか否かのユーザ入力を取得し、適正視差を範囲として取得し、
(d)前記範囲をもとに、適正視差を特定する
(e)方法。
なお、(a)~(e)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。
2 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)構成要件Aと構成aとを対比する。
引用発明の「特定視差を特定する」、「立体画像処理装置で実施される」は、それぞれ、本願発明1の「立体視効果用のパラメータを決定する」、「電子機器上で実施される」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは「立体視効果用のパラメータを決定するための、電子機器上で実施される方法」として一致する。
(2)構成要件Bと構成bとを対比する。
引用発明における「5個の黒丸」は、「上にいくほど近置かつ大きな視差、下へいくほど遠置かつ大きな視差が付けられて」「表示」されるから、「複数の像をユーザに表示する」といえ、「各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され」るといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「複数の像をユーザに表示することと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され」る点で共通する。
しかしながら、本願発明1においては、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位」するのに対し、引用発明においては、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位」するものではない点で相違する。
(3)構成要件Cと構成cとを対比する。
引用発明の「許容できる視差であるか否かのユーザ入力を取得し、適正視差を範囲として取得」することは、「前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取ることと、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され」るといえる。
(4)構成要件Dと構成dとを対比する。
引用発明の「前記範囲をもとに、適正視差を特定する」ことは、「前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定すること」といえ、引用発明の特定された「適正視差」は、「前記物体の選択された前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する」といえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定することと、前記パラメータは、前記物体の選択された前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する」として一致する。
(5)構成要件Eと構成eとを対比すると、「方法」として一致する。
(6)以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
立体視効果用のパラメータを決定するための、電子機器上で実施される方法であって、
複数の像をユーザに表示することと、各像は、物体の立体視効果を備え、前記物体は、前記複数の像によって複数の3次元位置に示され、
前記物体の好ましい3次元位置を有する好ましい像の選択を前記ユーザから受け取ることと、前記好ましい3次元位置は前記ユーザに表示される前記複数の3次元位置から選択され、
前記選択に基づいてさらなる像の立体視表示用のパラメータを決定することと、前記パラメータは、前記物体の選択された前記3次元位置に基づいて前記立体視効果の奥行きの範囲に対応する、
を備える、方法。
(相違点)
本願発明1においては、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位」するのに対し、
引用発明においては、「前記複数の3次元位置に表示された前記複数の像は、前記複数の像の動きが表示器の面における前記物体の動きを示すように互いに変位」するものではない点
3 相違点の判断
引用文献1の段落【0080】(上記1(1)ア参照)には、「視差が異なる5個の黒丸が」「順に表示され、許容できる視差であるか否かをユーザ10が入力していく」こと及び「表示自体は1個の黒丸で行うが、その視差を連続的に変更し、ユーザ10が遠置と近置それぞれの方向において許容する限界にきたとき、応答する」ことが記載されているが、これらの記載は1つの像に関するものであって、複数の像が変位することを示唆していない。
また、好ましい像の選択をユーザが行う際に,複数の像を変位させることが自明の事項とも認められない。
したがって、「複数の像」に相当する引用発明における「5個の黒丸」を「互いに変位」させることは、当業者であっても,容易に想到し得るものではない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
4 小括
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明2~10は、請求項1を直接又は間接的に引用しているので、本願発明1と同じ理由で、本願発明2~10は、原査定の理由で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
また、本願発明11、15、23は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明11、15、23は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明12~14は、請求項11を直接又は間接的に引用しているので、本願発明11と同じ理由で、本願発明12~14は、原査定の理由で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明16~22は、請求項15を直接又は間接的に引用しているので、本願発明15と同じ理由で、本願発明16~22は、原査定の理由で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明24~27は、請求項23を直接又は間接的に引用しているので、本願発明23と同じ理由で、本願発明24~27は、原査定の理由で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-008188