特許拒絶査定不服審判
2016-004067
オプティカル効果提供媒体およびその使用、オプティカル効果提供媒体を用いて作成される光反応特性を有する物品
- 審判番号
- 2016-004067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-513803外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月16日
- 審決日
- 2017年02月08日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダウニング,エリザベス,エイ.
- 【請求人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
- 【請求人】シェリドン,ニコラス,ケイ.
- 【請求人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
- 分類
- P18 .121-Z (C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-513803「オプティカル効果提供媒体およびその使用、オプティカル効果提供媒体を用いて作成される光反応特性を有する物品」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日国際公開、WO2011/154922、平成25年 9月 9日国内公表、特表2013-534941〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)6月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年6月10日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成25年2月19日に手続補正書が提出され、平成26年12月3日付けで拒絶理由通知が通知され、平成27年5月8日に手続補正書及び意見書が提出され、同年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年5月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
オプティカル効果提供媒体であって、可視または近可視スペクトルで光反応を導出することにより1以上の選択された励起波長または波長帯(λEX)の電磁放射の入射に応答する1以上の光反応型色素または顔料(100)を有する色素粒子(10)を含むか具えるキャリア媒体(1)を具え、
前記キャリア媒体(1)の屈折率(n1)と、前記色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)とは、前記1以上の光反応型色素または顔料(100)に到達する電磁放射の入射量を最大化するよう選択され、
前記電磁放射の入射の少なくとも選択された励起波長または波長帯(λEX)において、前記キャリア媒体(1)の屈折率(n1)と、前記色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)との間の絶対差が0.5未満となるように、前記キャリア媒体(1)の屈折率(n1)および前記色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)が選択されることを特徴とするオプティカル効果提供媒体。」
3.原査定の概要
原査定の概要は、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.引用例に記載の事項
原査定の拒絶理由において引用文献1として引用された本願出願日前の刊行物である特開2008-176267号公報(以下、「引用例」という)には、「表示構造体」(発明の名称)について、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
(i)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発色機能を有する表示構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、フォトクロミック化合物が溶融された水性スクリーンインクの開発が進められている。このインクは、例えば、紫外線に反応して発色と消色の2状態に可逆的に変化することが知られている。したがって、シート上にこのインクにより印刷された模様は、紫外線が照射された場合にのみ現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現状においては、異なる色の上記水性スクリーンインクを混合してその中間色の発色を得ることは難しい。フォトクロミック化合物の固有の発色種類は限られているので、混合による中間色の発色が行えないと使用色が制限され、所望の色合いの印刷模様が得られず、またフルカラー印刷も行えない。
【0004】
発明者は、鋭意研究の結果、フォトクロミック化合物よりなる色剤をマイクロカプセルに充填することで上記問題が解消できるという知見に到達したものである。
【0005】
この発明では、フォトクロミック化合物を使用して混合による中間色の発色が可能であり、所望の色彩を持つ意匠性に優れる表示構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明では、フォトクロミック化合物よりなる色剤が充填されたマイクロカプセルが透明樹脂内に混入されたインクにより形成される表示部を持つ表示構造体を提供する。」
(ii)「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの の表示構造体としてのシートの平面図、図2はその部分拡大断面図である。
【0011】
シート1は紙製のシート基材2上に表示部としての輪状の印刷模様5が付されて構成されている。このシート1はポストカードやプレゼントカードとして用いられ、印刷模様5に加えてさらに文字、模様が適宜印刷形成されて完成されるもので、それらについては図示、説明を省略している。
【0012】
上記印刷模様5は、図2の拡大断面図に示すように、フォトクロミック化合物よりなる色剤4が充填された多数のマイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入されたインク7が印刷されて設けられている。色剤4としてはフォトクロミック化合物の粉体が水に溶融された水性スクリーンインクを用いる。」
(iii)「【0014】
上記印刷模様5は、紫外線の無いところではフォトクロミック化合物が消色の状態にあることで現れず目に触れないが、紫外線ランプ光を照射することでフォトクロミック化合物が発色し、外側から内側に至るa~eのエリアにおいて、黄色、橙色、赤色、紫色、青色のそれぞれの色を呈する。従来においては、上記エリアb、dにおけるような橙色、紫色の中間色をフォトクロミック化合物の色剤の混合することによって発色させることは困難であった。」
(iv)【図1】
(v)【図2】
5.引用例に記載の発明の認定
(a)上記(ii)で示した【0012】の記載から、引用例の「印刷模様5」は、「フォトクロミック化合物よりなる色剤4が充填された多数のマイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入されたインク7」からなるものということができる。
(b)上記(iii)で示した【0014】の記載から、「フォトクロミック化合物よりなる色剤4」は、紫外線の無いところでは消色の状態にあることで目に見えず、紫外線ランプ光を照射することで発色し、黄色、橙色、赤色、紫色、青色のそれぞれの色を呈することがわかる。
(c)そうすると、引用例には、
「フォトクロミック化合物よりなる色剤4が充填された多数のマイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入された、紫外線の無いところでは消色の状態にあることで目に見えず、紫外線ランプ光を照射することで発色し、黄色、橙色、赤色、紫色、青色のそれぞれの色を呈する、印刷模様5に用いられるインク7。」(以下、「引用発明」という。)記載されていると認められる。
6.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「フォトクロミック化合物よりなる色剤4」は、「紫外線の無いところでは消色の状態にあることで目に見えず、紫外線ランプ光を照射することで発色し、黄色、橙色、赤色、紫色、青色のそれぞれの色を呈する」のであるから、引用発明の「紫外線」、「照射」、「発色」及び「黄色、橙色、赤色、紫色、青色のそれぞれの色」は、本願発明の「可視または近可視スペクトルで光反応を導出することにより1以上の選択された励起波長または波長帯(λEX)の電磁放射の入射に応答する1以上の光反応色素または顔料」の「1以上の選択された励起波長または波長帯(λEX)の電磁放射」、「入射」、「光反応」、「可視または近可視スペクトル」に、それぞれ相当するということができる。
したがって、引用発明の「フォトクロミック化合物よりなる色剤4」は、本願発明の「可視または近可視スペクトルで光反応を導出することにより1以上の選択された励起波長または波長帯(λEX)の電磁放射の入射に応答する1以上の光反応型色素または顔料(100)」に相当する。
(2)引用発明の「フォトクロミック化合物よりなる色剤4が充填された多数のマイクロカプセル6」は、本願発明の「1以上の光反応型色素または顔料(100)を有する色素粒子(10)」に相当する。
(3)引用発明は、「マイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入された」「インク7」であるから、「インク7」は、「マイクロカプセル6」を含む、といえ、引用発明の「多数のマイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入された」構成における「混入された」は、本願発明の「1以上の光反応型色素または顔料(100)を有する色素粒子(10)を含むか具える」構成における「含むか具える」に相当する。
また、引用発明の「インク7」は、「該マイクロカプセル6が透明樹脂8内に混入された」ものであるから、引用発明の「透明樹脂8」は、「該マイクロカプセル6」を担持する基材といえ、本願発明の「キャリア媒体(1)」に相当する。
そして、引用発明の「インク7」は「印刷模様5」に用いられることから、「オプティカル効果」を提供するものといえ、しかも、該「インク7」は「透明樹脂8」を具えているから、該「インク7」は、本願発明の「キャリア媒体(1)を具え」た「オプティカル効果提供媒体」に相当する。
(4)以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、
「オプティカル効果提供媒体であって、可視または近可視スペクトルで光反応を導出することにより1以上の選択された励起波長または波長帯(λEX)の電磁放射の入射に応答する1以上の光反応型色素または顔料(100)を有する色素粒子(10)を含むか具えるキャリア媒体(1)を具えたオプティカル効果提供媒体。」という点で一致し、本願発明と引用発明とは、次の相違点で相違する。
(相違点)
本願発明では、「キャリア媒体(1)の屈折率(n1)と、色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)とは、1以上の光反応型色素または顔料(100)に到達する電磁放射の入射量を最大化するよう選択され、
前記電磁放射の入射の少なくとも選択された励起波長または波長帯(λEX)において、前記キャリア媒体(1)の屈折率(n1)と、前記色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)との間の絶対差が0.5未満となるように、前記キャリア媒体(1)の屈折率(n1)および前記色素粒子(10)の屈折率(n2;n3)が選択される」のに対し、引用発明の「マイクロカプセル6」及び「透明樹脂8」の屈折率の絶対差は明らかではなく、それらの屈折率がどのように選択されるかは不明な点。
7.判断
相違点について検討する。
引用発明は、透明樹脂8内のマイクロカプセル6内の色剤4のフォトクロミック化合物に紫外線を照射することで、フォトクロミック化合物を発色させるものであり、マイクロカプセル6内に必要最大量の紫外線が入射する必要があることは当然のことであり、ここで、透明樹脂8及びマイクロカプセル6の屈折率が大きく異なれば、照射された紫外線は、マイクロカプセル6の表面において反射ないし散乱されやすくなることは技術常識であるから(例えば、特開昭63-291002号公報の「本発明に用いられる架橋性有機ポリマー粒子の屈折率Ndは、分散させる透明樹脂の屈折率Nmとの間に、0.003≦|Nm-Nd|≦0.08の関係が成立する必要があるが、好ましくは、0.005≦|Nm-Nd|≦0.05であり、更に好ましくは、0.01≦|Nm-Nd|≦0.03である。0.003>|Nm-Nd|の場合は、ホットスポットや輝線の発生が認められる。一方|Nm-Nd|>0.08の場合は、屈折率差が大きいので粒子界面での全反射や光路変更が大きくなり、結果として全光線透過率が低下してしまう。」(2頁左下欄13行~右下欄3行)と記載され、有機ポリマー粒子の屈折率Ndと分散させる透明樹脂の屈折率Nmとの絶対差が0.08より大きいと、全光線透過率(入射率)の低下が生じることが記載されている。)、引用発明の実施に当たっては、マイクロカプセル内への紫外線の入射量が必要最大量になるように、つまり、透明樹脂8及びマイクロカプセル6の屈折率の絶対差が小さくなるように(例えば、0.08以下となるように)、透明樹脂8及びマイクロカプセル6の屈折率を選択すること、すなわち、上記相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願発明の光反応型の色素や顔料が保護され、それらが、色素粒子内の局所的に安定環境に留まって残ることが保証されること(【0007】)は、引用発明においても、マイクロカプセル6によって奏される効果であり、本願発明が、引用発明に比較して、格別顕著な作用効果を奏するものであるとはいえない。
(まとめ)
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2ないし38に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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